説明

電気光学装置および電子機器

【課題】右眼用画像と左眼用画像との混在が観察者に知覚されることを抑制しながら表示画像の明度を向上させる。
【解決手段】複数の画素PIXは、複数の走査線32と複数の信号線34との各交差に対応して配置される。駆動回路40は、右眼用画像GRと左眼用画像GLとを表示期間P毎に交互に複数の画素PIXに表示させる。gたいてきには、駆動回路40は、各表示期間P内の準備期間SAにおいて走査線32を順次に選択するとともに選択状態の走査線32に対応する各画素PIXに所定階調G0(例えば黒階調)に対応する所定電位を供給し、各表示期間Pのうち準備期間SA内で最後の走査線32の選択前に開始する駆動期間SBにおいて走査線32を順次に選択するとともに選択状態の走査線32に対応する各画素PIXに当該画素PIXの指定階調に応じた階調電位を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者が立体感を知覚するように相互に視差が付与された右眼用画像と左眼用画像とを表示する技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
右眼用画像と左眼用画像とを時分割で交互に表示するフレームシーケンシャル方式の立体視方法が従来から提案されている。右眼用画像および左眼用画像の一方が他方に更新される期間では右眼用画像と左眼用画像とが混在するから、観察者が画像を視認すると明確な立体感を認識することが困難となる(クロストーク)。以上の問題を解決するために、例えば特許文献1には、右眼用画像および左眼用画像の一方が他方に変化する期間(すなわち右眼用画像と左眼用画像とが混在する期間)において立体視用眼鏡の右眼用シャッターおよび左眼用シャッターの双方を閉状態として観察者に画像を視認させない技術が開示されている。
【0003】
図15に示すように、右眼用画像の表示期間PRと左眼用画像の表示期間PLとが交互に設定される。各表示期間P(PR,PL)は単位期間U1と単位期間U2とに区分される。表示期間PR内の単位期間U1では表示画像が左眼用画像から右眼用画像に更新されるとともに直後の単位期間U2では右眼用画像が表示され、表示期間PL内の単位期間U1では表示画像が右眼用画像から左眼用画像に更新されるとともに直後の単位期間U2では左眼用画像が表示される。各表示期間Pの単位期間U1では、右眼用シャッターおよび左眼用シャッターの双方が閉状態に制御される。したがって、右眼用画像と左眼用画像との混在は観察者に知覚されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−25436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術のもとでは、観察者が実際に画像を視認できる期間が、各表示期間Pの単位期間U2(すなわち約半分)に制限される。したがって、表示画像の明度を充分に確保することが困難であるという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、右眼用画像と左眼用画像との混在が観察者に知覚されることを抑制しながら表示画像の明度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の電気光学装置は、右眼用画像と左眼用画像とを表示期間毎に交互に表示する電気光学装置であって、複数の走査線と複数の信号線との各交差に対応して配置された複数の画素と、各表示期間内の準備期間において走査線を順次に選択するとともに選択状態の走査線に対応する各画素に所定電位を供給し、各表示期間のうち準備期間内で最後の走査線の選択前に開始する駆動期間において走査線を順次に選択するとともに選択状態の走査線に対応する各画素に当該画素の指定階調に応じた階調電位を供給する駆動回路とを具備する。所定階調は、表示画像の内容とは無関係に選定された階調である。典型的には黒階調(最低階調)が所定階調として好適に選定される。
【0007】
以上の構成では、各表示期間の準備期間において各画素の表示階調が所定階調に設定されるから、右眼用画像と左眼用画像との混在(クロストーク)を防止することが可能である。また、準備期間内での複数の走査線の選択の完了前に駆動期間内での各画素に対する階調電位の供給が開始されるから、準備期間での複数の走査線の選択の完了後に駆動期間が開始する構成と比較して、表示期間内の駆動期間の時間長を長く確保できる。したがって、右眼用画像と左眼用画像との混在が観察者に知覚されることを防止しながら表示画像の明度を向上することが可能である。
【0008】
本発明の好適な態様において、駆動回路は、前記各表示期間の前記駆動期間内の複数の単位期間のうち最初の単位期間において、前記走査線を複数本ずつ順次に選択するとともに、選択状態の複数本のうちの何れかの走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記選択状態の複数本の走査線に対応する各画素に供給する。以上の構成では、駆動期間内の最初の単位期間にて走査線が複数本ずつ選択されて各画素に階調電位が供給される。したがって、例えば駆動期間内の最初の単位期間にて走査線を1本ずつ選択して各画素に階調電位を供給する構成と比較して、各画素の表示階調が直前の所定階調から画像の指定階調に更新されるまでの時間が短縮されるという利点がある。
【0009】
本発明の好適な態様において、複数の走査線は、交互に配列された第1走査線および第2走査線を含み、駆動回路は、第1書込期間において、相互に隣合う2本ずつ複数の走査線を区分した第1組を順次に選択するとともに選択状態の第1組のうち第1走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給し、かつ、第1書込期間の経過後の第2書込期間において、各第2走査線を順次に選択するとともに選択状態の第2走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給する第1駆動と、第1書込期間において、第1組とは異なる組合せで複数の走査線を相互に隣合う2本ずつ区分した第2組を順次に選択するとともに選択状態の第2組のうち第2走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給し、かつ、第2書込期間において、各第1走査線を順次に選択するとともに選択状態の第1走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給する第2駆動とを実行可能であり、右眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて第1駆動を実行するとともに当該駆動期間のうち第1単位期間の経過後の第2単位期間にて第2駆動を実行し、左眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて第2駆動を実行するとともに当該駆動期間内の第2単位期間にて第1駆動を実行する。以上の構成では、各表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間の第1書込期間にて走査線を2本ずつ順次に選択して各画素に階調電位を供給するから、例えば第1単位期間にて走査線を1本ずつ選択する構成と比較して、直前の準備期間で各画素PIXに設定された所定階調が表示画像の指定階調に更新されるまでの時間が短縮される。したがって、表示画像の明度を向上することが可能である。しかも、第1単位期間/第2単位期間と第1駆動/第2駆動との関係が右眼用画像の表示期間と左眼用画像の表示期間とで逆転するから、画素に対する印加電圧の極性の偏りが右眼用画像の表示期間と左眼用画像の表示期間とで相殺される。したがって、直流成分の印加に起因した画素の特性劣化を抑制することが可能である。
【0010】
本発明の好適な態様において、駆動回路は、各表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間内の第1書込期間および第2書込期間では、各画素に対する印加電圧の極性を第1極性に設定し、各表示期間内の駆動期間のうち第2単位期間内の第1書込期間および第2書込期間では、各画素に対する印加電圧の極性を、第1極性とは逆の第2極性に設定する。以上の構成では、画素に対する印加電圧の極性が単位期間毎に反転されるから、例えば印加電圧の極性を表示期間毎に反転させる構成と比較して極性反転の周期が短縮される。したがって、印加電圧の極性差に起因した表示階調の変動(フリッカ)が観察者に知覚され難いという利点がある。
【0011】
本発明の好適な態様において、駆動回路は、相前後する右眼用画像の表示期間と左眼用画像の表示期間とを各々が含む複数の制御期間のうちの第1制御期間において、右眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて第1駆動を実行するとともに当該駆動期間内の第2単位期間にて第2駆動を実行し、かつ、左眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて第2駆動を実行するとともに当該駆動期間内の第2単位期間にて第1駆動を実行し、複数の制御期間のうち第1制御期間とは異なる第2制御期間において、右眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて第2駆動を実行するとともに当該駆動期間内の第2単位期間にて第1駆動を実行し、かつ、左眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて第1駆動を実行するとともに当該駆動期間内の第2単位期間にて第2駆動を実行する。以上の態様では、第1単位期間/第2単位期間と第1駆動/第2駆動との関係が第1制御期間と第2制御期間とで反転されるから、画素に対する印加電圧の極性の偏り(直流成分の残留)に起因した画素の特性劣化を抑制できるという前述の効果は格別に顕著となる。
【0012】
第1組および第2組を構成する走査線の本数をQ本(Qは2以上の自然数)として一般化した場合、駆動回路は、第1書込期間において、相互に隣合うQ本ずつ複数の走査線を区分した第1組を順次に選択するとともに選択状態の第1組内の第1番目の走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給し、かつ、第1書込期間の経過後の各第q書込期間(q=2〜Q)において、各第1組内の第q番目の走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給する第1駆動と、第1書込期間において、第1組とは異なる組合せで複数の走査線を相互に隣合うQ本ずつ区分した第2組を順次に選択するとともに選択状態の第2組内の第1番目の走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給し、かつ、各第q書込期間において、各第2組内の第q番目の走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給する第2駆動とを実行する要素として表現される。
【0013】
本発明の好適な態様において、複数の走査線は、交互に配列された第1走査線および第2走査線を含み、駆動回路は、各表示期間の駆動期間内の第1単位期間および第2単位期間の一方において、相互に隣合う2本ずつ複数の走査線を区分した第1組を順次に選択するとともに選択状態の第1組のうち第1走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給し、第1単位期間および第2単位期間の他方において、第1組とは異なる組合せで複数の走査線を相互に隣合う2本ずつ区分した第2組を順次に選択するとともに選択状態の第2組のうち第2走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給する。以上の態様の具体例は例えば第4実施形態として後述される。更に好適な態様では、駆動回路は、右眼用画像の各表示期間内の第1単位期間において、第1組を順次に選択して各画素に階調電位を供給するとともに、当該表示期間の第2単位期間において、第2組を順次に選択して各画素に階調電位を供給し、左眼用画像の各表示期間内の第1単位期間において、第2組を順次に選択して各画素に階調電位を供給するとともに、当該表示期間の第2単位期間において、第1組を順次に選択して各画素に階調電位を供給する。
【0014】
本発明の好適な態様において、駆動回路は、準備期間において複数の走査線を複数本ずつ選択する。以上の態様では、準備期間にて走査線が複数本ずつ選択されて各画素に所定階調に応じた電位が供給されるから、準備期間にて走査線を1本ずつ選択する構成と比較して準備期間の時間長が短縮される。したがって、表示画像の明度が向上するという効果は格別に顕著である。
【0015】
本発明の好適な態様は、右眼用シャッターと左眼用シャッターとを含む立体視用眼鏡で立体視される右眼用画像および左眼用画像を表示する電気光学装置であって、各表示期間内の準備期間の少なくとも一部を含む期間にて右眼用シャッターおよび左眼用シャッターの双方を閉状態に制御し、右眼用画像の表示期間内の駆動期間の少なくとも一部を含む期間にて右眼用シャッターを開状態に制御するとともに左眼用シャッターを閉状態に制御し、左眼用画像の表示期間内の駆動期間の少なくとも一部を含む期間にて左眼用シャッターを開状態に制御するとともに右眼用シャッターを閉状態に制御する眼鏡制御回路を具備する。
【0016】
以上の各態様に係る電気光学装置は表示体として各種の電子機器に採用される。例えば、以上の各態様に係る電気光学装置と、眼鏡制御回路が制御する立体視用眼鏡とを具備する立体視表示装置が、本発明の電子機器として例示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る立体視表示装置のブロック図である。
【図2】画素回路の回路図である。
【図3】立体視表示装置の動作の説明図である。
【図4】準備期間における駆動回路の動作の説明図である。
【図5】第1駆動の説明図である。
【図6】第2駆動の説明図である。
【図7】第1実施形態の効果を説明するための表示例の模式図である。
【図8】各画素の液晶素子に対する印加電圧の時間変化の説明図である。
【図9】第2実施形態の動作の説明図である。
【図10】第3実施形態の動作の説明図である。
【図11】第4実施形態の動作の説明図である。
【図12】電子機器(投射型表示装置)の斜視図である。
【図13】電子機器(パーソナルコンピュータ)の斜視図である。
【図14】電子機器(携帯電話機)の斜視図である。
【図15】従来の技術における立体視動動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る立体視表示装置100のブロック図である。立体視表示装置100は、観察者に立体感を知覚させる立体視画像をアクティブシャッター方式で表示する電子機器であり、電気光学装置10と立体視用眼鏡20とを具備する。電気光学装置10は、相互に視差が付与された右眼用画像GRと左眼用画像GLとを時分割で交互に表示する。なお、以下の説明では、右眼用画像GRおよび左眼用画像GLを画像Gi(i=R,L)と包括的に表現する場合がある。
【0019】
立体視用眼鏡20は、電気光学装置10が表示する立体視画像の視認時に観察者が装着する眼鏡型の器具であり、観察者の右眼の前方に位置する右眼用シャッター22と左眼の前方に位置する左眼用シャッター24とを具備する。右眼用シャッター22および左眼用シャッター24の各々は、照射光を透過させる開状態(透過状態)と照射光を遮断する閉状態(遮光状態)とに制御される。例えば印加電圧に応じて液晶の配向方向を変化させることで開状態および閉状態の一方から他方に変化する液晶シャッターが右眼用シャッター22および左眼用シャッター24として採用され得る。
【0020】
図1の電気光学装置10は、電気光学パネル12と制御回路14とを具備する。電気光学パネル12は、複数の画素(画素回路)PIXが配列された画素部30と、各画素PIXを駆動する駆動回路40とを含む。画素部30には、x方向に延在するM本の走査線32と、x方向に交差するy方向に延在するN本の信号線34とが形成される(MおよびNは自然数)。画素部30内の複数の画素PIXは、走査線32と信号線34との各交差に対応して縦M行×横N列の行列状に配列される。
【0021】
図2は、各画素PIXの回路図である。図2に示すように、各画素PIXは、液晶素子CLと選択スイッチSWとを含む。液晶素子CLは、相互に対向する画素電極62および共通電極64と両電極間の液晶66とで構成された電気光学素子である。画素電極62と共通電極64との間の印加電圧に応じて液晶66の透過率(表示階調)が変化する。選択スイッチSWは、走査線32にゲートが接続されたNチャネル型の薄膜トランジスターで構成され、液晶素子CLと信号線34との間に介在して両者の電気的な接続(導通/絶縁)を制御する。なお、液晶素子CLに並列に補助容量を接続した構成も採用され得る。
【0022】
図1の制御回路14は、電気光学パネル12を制御する表示制御回路142と、立体視用眼鏡20を制御する眼鏡制御回路144とを具備する。なお、表示制御回路142と眼鏡制御回路144とを単体の集積回路に搭載した構成や、表示制御回路142と眼鏡制御回路144とを別体の集積回路に分散した構成が採用され得る。表示制御回路142は、相互に視差が付与された右眼用画像GRと左眼用画像GLとが時分割で交互に画素部30に表示されるように駆動回路40を制御する。
【0023】
駆動回路40は、各画素PIXの表示階調を制御する駆動信号X[n]を各画素PIXに供給する回路であり、走査線駆動回路42と信号線駆動回路44とを具備する。走査線駆動回路42は、各走査線32に対応する走査信号Y[1]〜Y[M]の供給で各走査線32を順次に選択する。走査信号Y[m](m=1〜M)が所定の選択電位に設定される(すなわち第m行の走査線32が選択される)ことで、第m行の各画素PIXにおける選択スイッチSWが同時にオン状態に遷移する。
【0024】
信号線駆動回路44は、走査線駆動回路42による走査線32の選択に同期してN本の信号線34の各々に駆動信号X[1]〜X[N]を供給する。各画素PIX(液晶素子CL)は、走査線32の選択時(選択スイッチSWがオン状態に制御されたとき)に信号線34に供給されている駆動信号X[n](n=1〜N)の電位に応じた階調を表示する。
【0025】
図3は、電気光学装置10の動作の説明図である。図3に示すように、電気光学装置10の動作期間は、複数の制御期間Tに区分される。各制御期間Tは、所定長の2個の表示期間Pi(右眼用表示期間PRおよび左眼用表示期間PL)に区分される。右眼用表示期間PRでは画素部30に右眼用画像GRが表示され、左眼用表示期間PLでは画素部30に左眼用画像GLが表示される。右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとは時間軸上で交互に配列する。すなわち、相前後する右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとで1個の制御期間Tが構成される。制御期間Tの時間長は、例えば60Hzのフレームレートに対応する約1/60秒に設定され、各表示期間Piの時間長は約1/120秒(約8ミリ秒)に設定される。
【0026】
図3に示すように、各表示期間Pi(PR,PL)は、準備期間SAと駆動期間SBとを含んで構成される。駆動期間SBは、外部回路から供給される画像信号が各画素PIXに指定する階調(以下「指定階調」という)に応じた階調電位を各画素PIXに供給する期間である。他方、準備期間SAは、所定階調G0に応じた電位(以下「準備電位」という)を各画素PIXに供給する期間である。所定階調G0は、各画素PIXの指定階調とは無関係に設定された階調である。例えば黒色(最低階調)が所定階調G0として好適に採択される。
【0027】
図4は、各表示期間Pi(PR,PL)の準備期間SAにおける駆動回路40の動作の説明図である。図4に示すように、各表示期間Piの準備期間SAにおいて、走査線駆動回路42は、M行の走査線32を相互に隣合う2行ずつ区分した複数の組(以下「第1組」という)の各々を選択期間HA毎に順次に選択する。第1組は、偶数行(第2k行)の1本の走査線32と、その走査線32に対してy方向の負側に隣合う奇数行(第(2k-1)行)の1本の走査線32とで構成される。走査線駆動回路42は、準備期間SA内の1個の選択期間HAにて走査信号Y[2k-1]および走査信号Y[2k]を選択電位に設定することで第1組の2行の走査線32を同時に選択する。例えば、準備期間SA内の第1番目の選択期間HAでは第1行および第2行の走査線32が同時に選択され、準備期間SA内の第2番目の選択期間HAでは第3行および第4行の走査線32が同時に選択される。
【0028】
信号線駆動回路44は、各表示期間Pi(PR,PL)の準備期間SA内の各選択期間HAにおいて、所定階調G0に応じた準備電位の駆動信号X[n]を各信号線34に供給する。したがって、図4に示すように、準備期間SA内の各選択期間HAでは、画像Giとは無関係に選択された準備電位が各画素PIXに供給されて各画素PIXが所定階調G0(黒階調)に制御される。
【0029】
他方、駆動期間SBは、図3に示すように、相等しい時間長の2個の単位期間U(U1,U2)に区分される。単位期間U2は単位期間U1に後続する。各単位期間U(U1,U2)は、第1書込期間W1と第2書込期間W2とを含んで構成される。第2書込期間W2は第1書込期間W1に後続する。
【0030】
駆動回路40は、各表示期間Pi内の駆動期間SBの単位期間U毎に、図5の第1駆動と図6の第2駆動とを選択的に実行することが可能である。第1駆動は、図5に示すように、M本の走査線32を相互に隣合う2本ずつ区分した複数の第1組の各々を駆動対象とする駆動方式である。他方、第2駆動は、図6に示すように、第1組とは相違する組合せでM本の走査線32を相互に隣合う2本ずつ区分した複数の組(以下「第2組」という)の各々を駆動対象とする駆動方式である。第2組は、偶数行(第2k行)の1本の走査線32と、その走査線32に対してy方向の正側に隣合う奇数行(第(2k+1)行)の1本の走査線32とで構成される。すなわち、第1組と第2組とは走査線32の1本分だけy方向にずれた関係にある。第1駆動および第2駆動の各々について以下に詳述する。
【0031】
<第1駆動>
第1駆動は、単位期間U内の第1書込期間W1にて第1組を順次に選択するとともに選択状態の第1組のうち奇数行(第(2k-1)行)の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位を各信号線34に供給し、かつ、単位期間U内の第2書込期間W2にて偶数行(第2k行)の走査線32を順次に選択するとともに選択状態の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位を各信号線34に供給する駆動方式である。第1駆動の実行時における走査線駆動回路42および信号線駆動回路44の動作を以下に詳述する。
【0032】
図5に示すように、走査線駆動回路42は、第1書込期間W1内の選択期間HB毎に各第1組を順次に選択する。すなわち、走査線駆動回路42は、第1書込期間W1内の第k番目の選択期間HBにて走査信号Y[2k-1]および走査信号Y[2k]を選択電位に設定することで、第1組を構成する第(2k-1)行および第2k行の2本の走査線32を同時に選択する。例えば、第1書込期間W1内の第1番目の選択期間HBでは第1行および第2行の2本の走査線32が同時に選択され、第2番目の選択期間HBでは第3行および第4行の2本の走査線32が同時に選択される。
【0033】
表示期間Pi(PR,PL)内の各単位期間Uの第1書込期間W1のうち第1組を構成する第(2k-1)行および第2k行の2本の走査線32が選択される選択期間HBにおいて、信号線駆動回路44は、画像Giのうち第(2k-1)行の各画素PIXの指定階調Gi[2k-1]に応じた階調電位の駆動信号X[n]を各信号線34に供給する。例えば、右眼用表示期間PR内の第1書込期間W1のうち第1番目の選択期間HBでは、右眼用画像GRのうち第1行の各画素PIXの指定階調GR[1]に応じた階調電位の駆動信号X[n]が各信号線34に供給され、第2番目の選択期間HBでは、右眼用画像GRのうち第3行の各画素PIXの指定階調GR[3]に応じた階調電位の駆動信号X[n]が各信号線34に供給される。
【0034】
したがって、第1書込期間W1の第k番目の選択期間HBでは、図5に示すように、画像Giのうち第(2k-1)行の指定階調Gi[2k-1]に応じた階調電位が第(2k-1)行および第2k行の各画素PIXに共通に供給される。以上の動作の結果、第1書込期間W1が終了する時点では、y方向の解像度を半分に低下させた画像Giが画素部30に表示される。
【0035】
他方、第2書込期間W2では、走査線駆動回路42は、図5に示すように、選択期間HB毎に偶数行の各走査線32を順次に選択する。すなわち、M本の走査線32が1本おきに選択される。具体的には、走査線駆動回路42は、図5に示すように、第2書込期間W2内の第k番目の選択期間HBにて走査信号Y[2k]を選択電位に設定することで第2k行の1本の走査線32を選択する。例えば、第2書込期間W2内の第1番目の選択期間HBでは第2行の走査線32が選択され、第2番目の選択期間HBでは第4行の走査線32が選択される。奇数行の走査線32は第2書込期間W2では選択されない。
【0036】
第2書込期間W2のうち第2k行の1本の走査線32が選択される選択期間HBでは、信号線駆動回路44は、画像Giのうち第2k行の各画素PIXの指定階調Gi[2k]に応じた階調電位の駆動信号X[n]を各信号線34に供給する。例えば、図5に示すように、右眼用表示期間PR内の第2書込期間W2のうち第1番目の選択期間HBでは、右眼用画像GRのうち第2行の各画素PIXの指定階調GR[2]に応じた階調電位の駆動信号X[n]が各信号線34に供給され、第2番目の選択期間HBでは、右眼用画像GRのうち第4行の各画素PIXの指定階調GR[4]に応じた階調電位の駆動信号X[n]が各信号線34に供給される。
【0037】
したがって、第2書込期間W2の第k番目の選択期間HBでは、図5に示すように、画像Giのうち第2k行の指定階調Gi[2k]に応じた階調電位の駆動信号X[n]が第2k行の各画素PIXに供給される。他方、奇数行の各画素PIXにおける液晶素子CLの印加電圧は直前の第1書込期間W1での設定電圧に保持される。以上の動作の結果、第1書込期間W1の終点ではy方向に半分の解像度で表示されていた画像Giが、第2書込期間W2の終点では所期の解像度(縦M行×横N列)の画像Giに更新される。
【0038】
<第2駆動>
第2駆動は、単位期間U内の第1書込期間W1にて第2組を順次に選択するとともに選択状態の第2組のうち偶数行(第2k行)の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位を各信号線34に供給し、かつ、単位期間U内の第2書込期間W2にて奇数行(第(2k+1)行)の走査線32を順次に選択するとともに選択状態の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位を各信号線34に供給する駆動方式である。第2駆動の実行時における走査線駆動回路42および信号線駆動回路44の動作を以下に詳述する。
【0039】
図6に示すように、走査線駆動回路42は、第1書込期間W1内の選択期間HB毎に各第2組を順次に選択する。すなわち、走査線駆動回路42は、第1書込期間W1内の第k番目の選択期間HBにて走査信号Y[2k]および走査信号Y[2k+1]を選択電位に設定することで、第2組を構成する第2k行および第(2k+1)行の2本の走査線32を同時に選択する。例えば、第1書込期間W1内の第1番目の選択期間HBでは第2行および第3行の2本の走査線32が同時に選択され、第2番目の選択期間HBでは第4行および第5行の2本の走査線32が同時に選択される。
【0040】
表示期間Pi(PR,PL)内の各単位期間Uの第1書込期間W1のうち第2組を構成する第2k行および第(2k+1)行の2本の走査線32が選択される選択期間HBにおいて、信号線駆動回路44は、画像Giのうち第2k行の各画素PIXの指定階調Gi[2k]に応じた階調電位の駆動信号X[n]を各信号線34に供給する。したがって、第1書込期間W1の第k番目の選択期間HBでは、図6に示すように、画像Giのうち第2k行の指定階調Gi[2k]に応じた階調電位が第2k行および第(2k+1)行の各画素PIXに共通に供給される。
【0041】
例えば、右眼用表示期間PR内の第1書込期間W1のうち第1番目の選択期間HBでは、右眼用画像GRのうち第2行の各画素PIXの指定階調GR[2]に応じた階調電位が第2行および第3行の各画素PIXに供給され、第2番目の選択期間HBでは、右眼用画像GRのうち第4行の各画素PIXの指定階調GR[4]に応じた階調電位が第4行および第5行の各画素PIXに供給される。以上の動作の結果、第1書込期間W1が終了する時点では、y方向の解像度を半分に低下させた画像Giが画素部30に表示される。
【0042】
他方、第2書込期間W2では、走査線駆動回路42は、図6に示すように、選択期間HB毎に奇数行の各走査線32を順次に選択する。具体的には、走査線駆動回路42は、図6に示すように、第2書込期間W2内の第k番目の選択期間HBにて走査信号Y[2k-1]を選択電位に設定することで第(2k-1)行の1本の走査線32を選択する。例えば、第2書込期間W2内の第1番目の選択期間HBでは第1行の走査線32が選択され、第2番目の選択期間HBでは第3行の走査線32が選択される。偶数行の走査線32は第2書込期間W2では選択されない。
【0043】
第2書込期間W2のうち第(2k-1)行の1本の走査線32が選択される選択期間HBでは、信号線駆動回路44は、画像Giのうち第(2k-1)行の各画素PIXの指定階調Gi[2k-1]に応じた階調電位の駆動信号X[n]を各信号線34に供給する。したがって、第2書込期間W2の第k番目の選択期間HBでは、図6に示すように、画像Giのうち第(2k-1)行の指定階調Gi[2k-1]に応じた階調電位が第(2k-1)行の各画素PIXに供給される。例えば、右眼用表示期間PR内の第2書込期間W2のうち第1番目の選択期間HBでは、右眼用画像GRのうち第1行の各画素PIXの指定階調GR[1]に応じた階調電位が第1行の各画素PIXに供給され、第2番目の選択期間HBでは、右眼用画像GRのうち第3行の各画素PIXの指定階調GR[3]に応じた階調電位が第3行の各画素PIXに供給される。以上の動作の結果、第1書込期間W1の終点ではy方向に半分の解像度で表示されていた画像Giが、第2書込期間W2の終点では所期の解像度(縦M行×横N列)の画像Giに更新される。
【0044】
以上が第1駆動および第2駆動の説明である。図3に示すように、駆動回路40は、第1駆動/第2駆動と単位期間U1/単位期間U2との組合せを右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとで逆転させる。すなわち、駆動回路40は、右眼用表示期間PR内の駆動期間SBのうち単位期間U1にて第1駆動を実行するとともにその駆動期間SB内の単位期間U2にて第2駆動を実行し、左眼用表示期間PL内の駆動期間SBのうち単位期間U1にて第2駆動を実行するとともにその駆動期間SB内の単位期間U2にて第1駆動を実行する。
【0045】
また、駆動回路40は、各画素PIXの液晶素子CLに対する印加電圧の極性が周期的に反転するように所定の基準電位に対する階調電位の極性を単位期間U毎に順次に反転させる。具体的には、液晶素子CLに対する印加電圧の極性は、図3に示すように、各表示期間Piの単位期間U1にて正極性(+)に設定され、各表示期間Piの単位期間U2にて負極性(-)に設定される。
【0046】
以上のように第1実施形態では液晶素子CLに対する印加電圧の極性が単位期間U毎に反転するから、液晶素子CLに対する印加電圧の極性と第1駆動/第2駆動との関係が右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとで逆転すると換言することも可能である。すなわち、右眼用表示期間PRでは、液晶素子CLの印加電圧が正極性である場合(単位期間U1)に第1駆動が実行されるとともに印加電圧が負極性である場合(単位期間U2)に第2駆動が実行され、左眼用表示期間PLでは、液晶素子CLの印加電圧が正極性である場合(単位期間U1)に第2駆動が実行されるとともに印加電圧が負極性である場合(単位期間U2)に第1駆動が実行される。
【0047】
図3には、表示期間Pi内で選択される走査線32(第1行〜第M行)の時間的な遷移が便宜的に直線で図示されている。図3では、走査線32の2本ずつの選択(準備期間SAおよび第1書込期間W1での走査線32の選択)が実線で図示され、走査線32の1本おきの選択(第2書込期間W2での走査線32の選択)が破線で図示されている。
【0048】
図3から理解されるように、駆動期間SBは、準備期間SAの始点から時間長Δtだけ遅延した時点から開始する。時間長Δtは、準備期間SA内の選択期間HAで第m行の走査線32の選択が開始される時点から、駆動期間SB内の選択期間HBで第m行の走査線32の選択が開始される時点までの時間長(準備期間SAと駆動期間SBとの時間差)である。時間長Δtは準備期間SAの時間長と比較して短い時間に設定される。したがって、準備期間SAの末尾の区間と駆動期間SBの先頭の区間とは時間軸上で相互に重複する。すなわち、準備期間SA内におけるM本の走査線32の選択の完了前(すなわち、第(M-1)行および第M行の走査線32の選択の終了前)に、駆動期間SBの単位期間U(第1書込期間W1)での走査線32の選択が開始される。準備期間SAと駆動期間SBとが相互に重複する期間では、選択期間HA内での走査線32の選択と選択期間HB内での走査線32の選択とが交互に実行される。
【0049】
駆動回路40は、表示制御回路142から供給される指示に応じて時間長Δtを可変に設定する。具体的には、準備期間SA内の選択期間HAにて所定階調G0に応じた準備電位の供給を開始してから時間長Δtにわたる期間内で液晶素子CLの表示階調が実際に所定階調G0に到達するように、液晶66の応答特性(応答速度)に応じて時間長Δtは可変に設定される。具体的には、液晶66の応答速度が早いほど時間長Δtは短い時間に設定される。前述の例示のように各表示期間Piの時間長を8ミリ秒(約1/120秒)に設定した場合、例えば、準備期間SAの時間長と各単位期間Uの第1書込期間W1および第2書込期間W2の各々の時間長とは1.75ミリ秒に設定され、時間Δtは1ミリ秒に設定される。
【0050】
図1の制御回路14の眼鏡制御回路144は、立体視用眼鏡20の右眼用シャッター22および左眼用シャッター24の各々の状態(開状態/閉状態)を電気光学パネル12の動作に同期して制御する。具体的には、眼鏡制御回路144は、図3に示すように、各表示期間Piの準備期間SAにて右眼用シャッター22および左眼用シャッター24の双方を閉状態に制御する。また、眼鏡制御回路144は、右眼用表示期間PRのうち準備期間SAの終点にて右眼用シャッター22を開状態に制御するとともに左眼用シャッター24を閉状態に維持し、左眼用表示期間PLのうち準備期間SAの終点にて左眼用シャッター24を開状態に制御するとともに右眼用シャッター22を閉状態に維持する。
【0051】
したがって、右眼用表示期間PR内の駆動期間SBにて画素部30に表示される右眼用画像GRは右眼用シャッター22を透過して観察者の右眼に到達するとともに左眼用シャッター24で遮断される。他方、左眼用表示期間PL内の駆動期間SBにて画素部30に表示される左眼用画像GLは左眼用シャッター24を透過して観察者の左眼に到達するとともに右眼用シャッター22で遮断される。右眼用シャッター22を透過した右眼用画像GRを右眼で視認するとともに左眼用シャッター24を透過した左眼用画像GLを左眼で視認することで、観察者は表示画像に立体感を知覚する。
【0052】
以上に説明した第1実施形態では、各表示期間Piの準備期間SAにおいて、各画素PIXの表示階調が、右眼用画像GRや左眼用画像GLとは無関係の所定階調G0に制御されるから、右眼用画像GRと左眼用画像GLとの混在(クロストーク)は発生しない。すなわち、右眼用画像GRと左眼用画像GLとが確実に右眼および左眼に分離されるから、観察者に明確な立体感を知覚させることが可能である。
【0053】
ところで、階調電位の供給前に各画素PIXを所定階調G0に制御する構成としては、例えば、準備期間SAにて全部の走査線32の選択が完了してから各画素PIXに対する階調電位の供給を開始する構成(以下「対比例」という)も想定され得る。すなわち、対比例では、準備期間SAと駆動期間SBとが時間軸上で重複しない。第1実施形態では、各表示期間Pの準備期間SAにおける走査線32の選択の完了前に駆動期間SBでの各画素PIXに対する階調電位の供給が開始されるから、表示期間Pi内の駆動期間SBの時間長を対比例と比較して長く確保できる。すなわち、表示期間Pi内で時間的に早い時点から階調電位の書込が開始され、M行分の画素PIXの表示階調を、対比例と比較して早い時点で、所定階調G0から表示画像Giの指定階調に更新することが可能である。したがって、観察者が視認する表示画像の明度を対比例と比較して向上することが可能である。
【0054】
しかも、第1実施形態では、所定階調G0に応じた準備電位が2行単位で各画素PIXに供給されるから、例えば準備期間SAにて走査線32を1本ずつ順次に選択する構成と比較して準備期間SAの時間長が短縮される。したがって、観察者が認識する表示画像の明度を向上できるという効果は格別に顕著である。
【0055】
また、第1実施形態では、駆動期間SB内の単位期間U1の第1書込期間W1にて走査線32を2本ずつ選択して各画素PIXに階調電位を供給する。したがって、例えば単位期間U1にて走査線32を1本ずつ選択して各画素PIXに階調電位を供給する構成と比較して、M行分の画素PIXの表示階調が直前の所定階調G0から画像Giの指定階調に更新されるまでの時間が短縮されるという利点がある。
【0056】
なお、以上のように走査線32を2本ずつ選択して各画素PIXに階調電位を供給する構成のもとでは、各単位期間Uの第1書込期間W1において、画像信号が示す本来の表示画像のy方向の解像度を半減させた画像が表示される。しかし、直後の第2書込期間W2では走査線32が1本おきに選択されて各画素PIXに階調電位が供給されるから、第1書込期間W1での表示画像の解像度の低下は観察者に知覚され難い。特に第1実施形態では、第1書込期間W1での階調電位の供給対象が単位期間U1と単位期間U2とで相違する。例えば、単位期間U1にて第1組の各画素PIXに階調電位が供給された場合、単位期間U2では、第1組とは1行分だけずれた第2組の各画素PIXに階調電位が供給される。したがって、例えば単位期間U1および単位期間U2の双方において第1組毎に階調電位を供給する構成と比較して第1書込期間W1における表示画像の解像度の低下が観察者に知覚され難いという効果は格別に顕著である。
【0057】
ところで、時間長Δtが所定値に固定された構成では、例えば液晶66の応答速度が遅い場合に、準備電位の供給の開始から時間長Δtが経過した時点では各画素PIXの表示階調が完全には所定階調G0に到達せず、直前の表示画像(クロストーク)が観察者に知覚される可能性がある。第1実施形態では、時間長Δtが可変に設定されるから、各画素PIXの表示階調が所定階調G0に確実に到達するように時間長Δtを液晶66の応答特性に応じて適切に設定することが可能である。したがって、右眼用画像GRと左眼用画像GLとの混在が観察者に知覚されることを確実に防止しながら表示画像の明度を確保できるという利点がある。
【0058】
また、指定階調が共通する場合でも、階調電位が正極性に設定された場合と負極性に設定された場合とでは、液晶素子CLに対する印加電圧(各画素PIXの表示階調)が相違する場合がある。液晶素子CLの印加電圧の極性反転周期が長い場合(例えば表示期間Pi毎に極性を反転させる場合)、印加電圧の極性差に起因した表示階調の変動(すなわちフリッカ)が観察者に知覚され易いという問題がある。第1実施形態では、単位期間Uという短い周期で液晶素子CLの印加電圧の極性が反転するから、印加電圧の極性差に起因した表示階調の変動が知覚され難いという利点がある。
【0059】
次に、図7に示すように、奇数行の各画素PIXに最低階調(黒色)を表示させるとともに偶数行の各画素PIXに最高階調(白色)を表示させる場合に各画素PIXの液晶素子CLに印加される電圧を検討する。最低階調を表示させる各画素PIXの液晶素子CLには電圧が印加されず(±0V)、最高階調を表示させる各画素PIXの液晶素子CLには±5Vの電圧が印加されるノーマリーブラックモードを以下の説明では例示的に想定する。
【0060】
図8は、偶数行(第2k行)および奇数行(第(2k+1)行)の各画素PIXの液晶素子CLに対して以上の前提のもとで駆動期間SB内にて印加される電圧の時間変化の説明図である。単位期間U1の第1書込期間W1では、奇数行の指定階調(最低階調)に応じた正極性の階調電位が第1組の各画素PIXに供給されるから、第2k行および第(2k+1)行とも液晶素子CLの印加電圧は0Vに設定される。単位期間U1の第2書込期間W2では、偶数行の指定階調(最高階調)に応じた正極性の階調電位が偶数行の各画素PIXに供給されるから、第2k行の液晶素子CLには+5Vの電圧が印加され、非選択の第(2k+1)行の液晶素子CLの印加電圧は直前の電圧(0V)に維持される。
【0061】
単位期間U2の第1書込期間W1では、偶数行の指定階調(最高階調)に応じた負極性の階調電位が第2組の各画素PIXに供給されるから、第2k行および第(2k+1)行とも液晶素子CLの印加電圧は−5Vに設定される。また、単位期間U2の第2書込期間W2では、奇数行の指定階調(最低階調)に応じた負極性の階調電位が奇数行の各画素PIXに供給されるから、第(2k+1)行の液晶素子CLの印加電圧は0Vに設定され、非選択の第2k行の液晶素子CLの印加電圧は直前の電圧(−5V)に維持される。
【0062】
以上に説明したように、第2k行の液晶素子CLの印加電圧は、表示期間Pi内で0V→+5V→−5V→−5Vと変化し、第(2k+1)行の液晶素子CLの印加電圧は、表示期間Pi内で0V→0V→−5V→0Vと変化する。すなわち、奇数行および偶数行の何れにおいても液晶素子CLに負極性の電圧が印加される時間が長いという傾向がある。したがって、右眼用表示期間PRおよび左眼用表示期間PLの双方において単位期間U1で第1駆動を実行するとともに単位期間U2で第2駆動を実行する構成では、液晶素子CLの印加電圧が片方の極性に偏り、直流成分の印加に起因した液晶素子CLの特性劣化が発生する可能性がある。
【0063】
第1実施形態では、単位期間U1/単位期間U2と第1駆動/第2駆動との関係が右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとで反転されるから、右眼用画像GRと左眼用画像GLとで表示内容が近似することを前提とすれば、図8を参照して説明した極性の偏りは右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとで相殺される。したがって、直流成分の印加に起因した液晶素子CLの特性劣化が有効に抑制されるという格別の効果が実現される。
【0064】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0065】
図9は、第2実施形態の動作の説明図である。図9に示すように、相前後する右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとで構成される複数の制御期間Tは、制御期間T1と制御期間T2とに区別される。制御期間T1と制御期間T2とは時間軸上で交互に配列する。
【0066】
図9から理解されるように、単位期間U1/単位期間U2と第1駆動/第2駆動との関係が制御期間T内の右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとで逆転する構成は第1実施形態と同様である。第2実施形態の駆動回路40は、単位期間U1/単位期間U2と第1駆動/第2駆動との関係が、制御期間T1内の右眼用表示期間PRと制御期間T2内の右眼用表示期間PRとで逆転するとともに制御期間T1内の左眼用表示期間PLと制御期間T2内の左眼用表示期間PLとで逆転するように各単位期間U1で第1駆動または第2駆動を実行する。
【0067】
すなわち、制御期間T1では、駆動回路40は、右眼用表示期間PR内の単位期間U1にて第1駆動を実行するとともに単位期間U2にて第2駆動を実行し、かつ、左眼用表示期間PL内の単位期間U1にて第2駆動を実行するとともに単位期間U2にて第1駆動を実行する。他方、制御期間T2では、駆動回路40は、右眼用表示期間PR内の単位期間U1にて第2駆動を実行するとともに単位期間U2にて第1駆動を実行し、かつ、左眼用表示期間PL内の単位期間U1にて第1駆動を実行するとともに単位期間U2にて第2駆動を実行する。
【0068】
駆動回路40は、液晶素子CLに対する印加電圧の極性を第1実施形態と同様に単位期間U毎に反転させる。すなわち、液晶素子CLの印加電圧の極性(階調電位の極性)は、制御期間T1および制御期間T2の何れにおいても、各表示期間Pi(PR,PL)の単位期間U1にて正極性に設定されるとともに単位期間U2にて負極性に設定される。したがって、第2実施形態では、液晶素子CLに対する印加電圧の極性と第1駆動/第2駆動との関係が、制御期間T1内の右眼用表示期間PRと制御期間T2内の右眼用表示期間PRとで逆転するとともに制御期間T1内の左眼用表示期間PLと制御期間T2内の左眼用表示期間PLとで逆転すると換言することも可能である。
【0069】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態では、表示期間Piにおける単位期間U1/単位期間U2と第1駆動/第2駆動との関係が制御期間T1と制御期間T2とで逆転するから、図7で説明した極性の偏りが制御期間T1と制御期間T2とで相殺される。したがって、直流成分の印加に起因した液晶素子CLの特性劣化が有効に抑制されるという効果は格別に顕著となる。
【0070】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態の動作の説明図である。図10に示すように、第3実施形態の各表示期間Piの駆動期間SBは単位期間U1と単位期間U2とに区分される。単位期間U1および単位期間U2の各々は、M個の選択期間HBを含んで構成される。走査線駆動回路42は、M本の走査線32の各々を選択期間HB毎に1本ずつ選択し、信号線駆動回路44は、選択状態の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位の駆動信号X[n]を各信号線34に供給する。液晶素子CLに対する印加電圧の極性は単位期間U毎に反転される。具体的には、液晶素子CLの印加電圧の極性は、各表示期間Piの単位期間U1にて正極性(+)に設定されるとともに単位期間U2にて負極性(-)に設定される。
【0071】
他方、準備期間SAでは、所定階調G0に応じた準備電位が1行単位で各画素PIXに供給される。すなわち、走査線駆動回路42は、M本の走査線32の各々を準備期間SA内の選択期間HA毎に1本ずつ選択し、信号線駆動回路44は、準備電位に設定された駆動信号X[n]を選択期間HA毎に各信号線34に供給する。したがって、第1実施形態と同様に、右眼用画像GRと左眼用画像GLとの混在(クロストーク)を防止することが可能である。
【0072】
また、第1実施形態と同様に、準備期間SAと駆動期間SBとは部分的に重複する。具体的には、図10に示すように、準備期間SAのうち最後(第M行)の走査線32の選択の完了前に駆動期間SBでの各画素PIXに対する階調電位の供給が開始される。すなわち、準備期間SAの経過後に駆動期間SBが開始する構成(対比例)と比較して、表示期間Pi内の早い時点から各画素PIXに対する階調電位の供給を開始することが可能である。したがって、観察者が視認する表示画像の明度を対比例と比較して向上するという利点がある。すなわち、第3実施形態においても第1実施形態と同様に、右眼用画像と左眼用画像との混在が観察者に知覚されることを抑制しながら表示画像の明度を向上させることが可能である。
【0073】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態の動作の説明図である。図11に示すように、各表示期間Pi(PR,PL)は、以上の各形態と同様に相互に部分的に重複する準備期間SAと駆動期間SBとを含んで構成される。準備期間SAでは第1実施形態と同様に、駆動回路40は、M本の走査線32を第1組(第(2k-1)行および第2k行の2本)毎に各選択期間HAにて順次に選択するとともに選択状態の第1組(2行分)の各画素PIXに所定階調G0の準備電位を供給する。
【0074】
各表示期間Pi内の駆動期間SBは単位期間U1と単位期間U2とに区分される。各画素PIXの液晶素子CLに対する印加電圧の極性が単位期間U毎に反転される構成は第1実施形態から第3実施形態と同様である。駆動期間SB内の各単位期間Uでは、駆動回路40は、M本の走査線32を複数本毎に順次に選択して各画素PIXに階調電位を供給する。
【0075】
具体的には、右眼用表示期間PR内の駆動期間SBの単位期間U1では、駆動回路40は、図5に例示した第1駆動時の第1書込期間W1と同様に、M本の走査線32を第1組毎に各選択期間HBにて順次に選択し、右眼用画像GRのうち第(2k-1)行の指定階調GR[2k-1]に応じた階調電位を選択状態の第1組(第(2k-1)行および第2k行)の各画素PIXに供給する。また、右眼用表示期間PR内の駆動期間SBの単位期間U2では、駆動回路40は、図6に例示した第2駆動時の第1書込期間W1と同様に、M本の走査線32を第2組毎に各選択期間HBにて順次に選択し、右眼用画像GRのうち第2k行の指定階調GR[2k]に応じた階調電位を選択状態の第2組(第2k行および第(2k+1)行)の各画素PIXに供給する。
【0076】
他方、左眼用表示期間PLでは、単位期間U1/単位期間U2と第1組/第2組の組合せが左眼用表示期間PRとは逆転する。すなわち、左眼用表示期間PL内の駆動期間SBの単位期間U1では、駆動回路40は、選択期間HB毎に各第2組を順次に選択し、左眼用画像GLのうち第2k行の指定階調GL[2k]に応じた階調電位を選択状態の第2組(第2k行および第(2k+1)行)の各画素PIXに供給する。また、左眼用表示期間PL内の駆動期間SBの単位期間U2では、駆動回路40は、選択期間HB毎に各第1組を順次に選択し、左眼用画像GLのうち第(2k-1)行の指定階調GL[2k-1]に応じた階調電位を選択状態の第1組(第2k-1)行および第2k行)の各画素PIXに供給する。
【0077】
第4実施形態においても準備期間SAと駆動期間SBとが部分的に重複するから、第1実施形態と同様の効果が実現される。なお、各表示期間Pi内の単位期間U1および単位期間U2の各々では、画像信号が示す本来の表示画像のy方向の解像度を半減させた画像が表示される。しかし、右眼用表示期間PR内の単位期間U1にて奇数行の指定階調GR[2k-1]に応じて第1組毎に表示された画像が、直後の単位期間U2では、第1組とは1行分だけずれた第2組を単位として偶数行の指定階調GR[2k]に応じた画像に順次に更新される。左眼用表示期間PLにおいても同様である。したがって、各単位期間Uにおける表示画像の解像度の低下が観察者に知覚され難いという利点がある。
【0078】
また、第4実施形態では、単位期間U1/単位期間U2(液晶素子CLの印加電圧の正極性/負極性)と第1組/第2組との関係が右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとで逆転する。すなわち、右眼用表示期間PRでは、単位期間U1(正極性)にて第1組毎に階調電位が供給されるとともに単位期間U2(負極性)にて第2組毎に階調電位が供給され、左眼用表示期間PLでは、単位期間U1(正極性)にて第2組毎に階調電位が供給されるとともに単位期間U2(負極性)にて第1組毎に階調電位が供給される。したがって、液晶素子CLに対する印加電圧の極性の差異(直流成分の残留)が右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとで相殺され、直流成分の印加に起因した液晶素子CLの特性劣化を抑制できるという利点がある。ただし、右眼用表示期間PRおよび左眼用表示期間PLの双方において、単位期間U1にて第1組の各画素PIXに階調電位を供給するとともに単位期間U2にて第2組の各画素PIXに階調電位を供給することも可能である。
【0079】
<変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。
【0080】
(1)駆動期間SBにおいて各画素PIXに階調電位を供給する方法は本発明において任意である。例えば、駆動期間SBの単位期間U1において奇数行および偶数行の一方の走査線32を順次に選択して指定階調に応じた階調電位を各画素PIXに供給し、単位期間U2において奇数行および偶数行の他方の走査線32を順次に選択して階調電位を各画素PIXに供給する構成も採用され得る。
【0081】
(2)前述の各形態では、第1駆動の実行時に、奇数行(第(2k-1)行)の指定階調Gi[2k-1]に応じた階調電位を第1書込期間W1にて第1組の各画素PIXに供給するとともに偶数行(第2k行)の指定階調Gi[2k]に応じた階調電位を第2書込期間W2にて偶数行の各画素PIXに供給し、第2駆動の実行時に、偶数行(第2k行)の指定階調Gi[2k]に応じた階調電位を第1書込期間W1にて第2組の各画素PIXに供給するとともに奇数行(第(2k-1)行)の指定階調Gi[2k-1]に応じた階調電位を第2書込期間W2にて奇数行の各画素PIXに供給したが、第2書込期間W2にて階調電位が供給される各画素PIX(奇数行/偶数行)や、第1書込期間W1および第2書込期間W2の各々で階調電位に反映される指定階調G(奇数行/偶数行)は以上の例示に限定されない。例えば、第1駆動の実行時に、偶数行(第2k行)の指定階調Gi[2k]に応じた階調電位を第1書込期間W1にて第1組の各画素PIXに供給するとともに奇数行(第(2k-1)行)の指定階調に応じた階調電位を第2書込期間W2にて奇数行の各画素PIXに供給し、第2駆動の実行時に、奇数行(第(2k-1)行)の指定階調Gi[2k-1]に応じた階調電位を第1書込期間W1にて第2組の各画素PIXに供給するとともに偶数行(第2k行)の指定階調Gi[2k]に応じた階調電位を第2書込期間W2にて偶数行の各画素PIXに供給することも可能である。すなわち、M本の走査線32を、交互に配列する第1走査線32と第2走査線32とに区分した場合、第1駆動は、第1走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位を第1書込期間W1にて第1組の各画素PIXに供給するとともに第2走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位を第2書込期間W2にて各画素PIXに供給する動作として包括され、第2駆動は、第2走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位を第1書込期間W1にて第2組の各画素PIXに供給するとともに第1走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位を第2書込期間W2にて各画素PIXに供給する動作として包括され、第1走査線32および第2走査線32の奇偶(奇数行/偶数行)は任意である。
【0082】
また、前述の各形態では、第(2k-1)行および第2k行を第1組として第2k行および第(2k+1)行を第2組としたが、M本の走査線32の区分の方法は適宜に変更される。例えば第2k行および第(2k+1)行を第1組として第(2k-1)行および第2k行を第2組とした構成も採用される。したがって、単位期間U1の第1書込期間W1にて偶数行(第2k行)の指定階調Gi[2k]に応じた階調電位を第1組の各画素PIXに供給するとともに第2書込期間W2にて奇数行(第(2k+1)行)の指定階調Gi[2k+1]に応じた階調電位を奇数行の各画素PIXに供給し、単位期間U2の第1書込期間W1にて奇数行(第(2k-1)行)の指定階調Gi[2k-1]に応じた階調電位を第2組の各画素PIXに供給するとともに第2書込期間W2にて偶数行(第2k行)の指定階調Gi[2k]に応じた階調電位を偶数行の各画素PIXに供給することも可能である。
【0083】
(3)前述の各形態では、第2駆動の実行時の第1書込期間W1にて第1行の各画素PIXに階調電位を供給しない場合を便宜的に例示したが、第1行の各画素PIXに当該行の指定階調Gi[1]に応じた階調電位や所定の階調(例えば黒階調や中間調)に応じた階調電位を供給することも可能である。
【0084】
(4)右眼用シャッター22および左眼用シャッター24を開閉する時期は以上の例示に限定されない。例えば、前述の各形態では、右眼用表示期間PR内の準備期間SAの終点にて右眼用シャッター22を閉状態から開状態に変化させたが、右眼用シャッター22を閉状態から開状態に変化させる時期は適宜に変更される。具体的には、右眼用表示期間PR内の準備期間SAの終点以前に右眼用シャッター22を開状態に変化させる構成では、準備期間SA内で直前の左眼用画像GLの一部(準備期間SA内でまだ所定階調G0に更新されていない部分)が観察者に知覚され得るが、表示画像の明度を向上させることが可能である。他方、右眼用表示期間PRの準備期間SAの終点以降の時点で右眼用シャッター22を開状態に変化させる構成では、表示画像の明度は低下するが、直前の左眼用画像GLが右眼用表示期間PR内で観察者に知覚されることを確実に防止することが可能である。同様に、右眼用シャッター22を開状態から閉状態に変化させる時期を、右眼用表示期間PRの終点の前後に設定した構成も採用され得る。例えば、右眼用表示期間PRの直後の左眼用表示期間PLのうち駆動期間SBの始点(すなわち、右眼用表示期間PRの終点から時間長Δtが経過する時点)まで右眼用シャッター22を開状態に維持することも可能である。なお、表示画像のクロストークが観察者に知覚され難い開閉の時期は、右眼用シャッター22および左眼用シャッター24の応答特性と電気光学パネル12(液晶素子CL)の応答特性との関係にも依存する。したがって、右眼用シャッター22の開閉の時期は、観察者にクロストークが知覚されることの防止と表示画像の明度の確保との優先度(バランス)や、立体視用眼鏡20の応答特性と電気光学パネル12の応答特性との関係といった種々の要因を考慮して選定される。なお、以上の説明では右眼用シャッター22に言及したが、左眼用シャッター24の開閉の時期についても同様の事情が妥当する。
【0085】
以上の説明から理解されるように、右眼用シャッター22が開状態に維持される期間は、右眼用表示期間PR内の駆動期間SBの少なくとも一部を含む期間(直前の準備期間SAの一部を含むか否かは不問)として包括される。同様に、左眼用シャッター24が開状態に維持される期間は、左眼用表示期間PLの駆動期間SBの少なくとも一部を含む期間(直前の準備期間SAの一部を含むか否かは不問)として包括される。また、右眼用シャッター22および左眼用シャッター24の双方が閉状態に維持される期間は、各表示期間Pi(PR,PL)のうち準備期間SAの少なくとも一部を含む期間(直後の駆動期間SBの一部を含むか否かは不問)として包括される。
【0086】
(5)第1実施形態や第2実施形態において、第1組および第2組を構成する走査線32の本数は2本に限定されない。すなわち、第1組および第2組は、相異なる組合せでM本の走査線32を相互に隣合うQ本(Qは2以上の自然数)ずつ区分した集合として包括される。第1組および第2組をQ本の走査線32の集合として一般化した場合、駆動期間SB内の単位期間U1および単位期間U2の各々はQ個の書込期間W1〜WQで構成される。第1駆動は、単位期間U内の最初の書込期間W1において各第1組を選択期間HB毎に順次に選択するとともに選択状態の第1組内の第1番目の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位を各信号線34に供給し、かつ、単位期間U内の書込期間W2〜WQの各々において、第1組のQ本の走査線32のうち第q番目の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位を各信号線34に供給する動作として包括される。同様に、第2駆動は、単位期間U内の最初の書込期間W1において各第2組を選択期間HB毎に順次に選択するとともに選択状態の第2組内の第1番目の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位を各信号線34に供給し、かつ、単位期間U内の書込期間W2〜WQの各々において、第2組のQ本の走査線32のうち第q番目の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位を各信号線34に供給する動作として包括される。
【0087】
(6)準備期間SA内の各選択期間HAにて同時に選択される走査線32の本数は2本に限定されない。例えば、第1実施形態や第2実施形態のもとで準備期間SA内の選択期間HA毎に1本ずつ走査線32を選択する構成や、3本以上の走査線32を準備期間SA内の選択期間HA毎に選択する構成も採用される。ただし、走査線駆動回路42の動作や構成を簡素化する観点からは、準備期間SA内で同時に選択する走査線32の本数と、駆動期間SB内の第1書込期間W1で同時に選択する走査線32の本数(第1組および第2組の本数)とを一致させ、準備期間SAと第1書込期間W1および第2書込期間W2とを同等の時間長に設定した構成が好適である。
【0088】
(7)第1実施形態では、単位期間U1/単位期間U2(階調電位の正極性/負極性)と第1駆動/第2駆動との関係を右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとで逆転させた構成(以下「構成A」という)を例示し、第2実施形態では、単位期間U1/単位期間U2と第1駆動/第2駆動との関係を制御期間T1と制御期間T2とで逆転させた構成(以下「構成B」を第1実施形態に追加した構成を例示したが、構成Aは構成Bに必須の要件ではなく、構成Bは単独でも実現され得る。すなわち、単位期間U1/単位期間U2と第1駆動/第2駆動との関係を、制御期間T内の右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとで共通させるとともに制御期間T1と制御期間T2とで反転させた構成も採用され得る。例えば、制御期間T1内の右眼用表示期間PRおよび左眼用表示期間PLでは、単位期間U1にて第1駆動を実行するとともに単位期間U2にて第2駆動を実行し、制御期間T2内の右眼用表示期間PRおよび左眼用表示期間PLでは、単位期間U1にて第2駆動を実行するとともに単位期間U2にて第1駆動を実行する。
【0089】
(8)駆動期間SB内の各選択期間HA内において各画素PIXに対する階調電位の供給前に、所定のプリチャージ電位を各信号線34に供給することも可能である。準備期間SA内の各選択期間HAで各画素PIXに供給される準備電位(直前の表示画像を所定階調G0に更新する電位)と駆動期間SB内の各選択期間HBで信号線34に供給されるプリチャージ電位(階調電位の供給前に各信号線34を所定電位に初期化する電位)とは、両者の目的の相違に起因して、各画素PIXに対する供給時期や電位値が相違し得る。
【0090】
(9)電気光学素子は液晶素子CLに限定されない。例えば、電気泳動素子を電気光学素子として利用することも可能である。すなわち、電位光学素子は、電気的な作用(例えば電圧の印加)に応じて光学的な特性(例えば透過率)が変化する表示素子として包括される。
【0091】
<応用例>
以上の各形態に例示した電気光学装置10は、各種の電子機器に利用され得る。図12から図14には、電気光学装置10を採用した電子機器の具体的な形態が例示されている。
【0092】
図12は、電気光学装置10を適用した投射型表示装置(3板式のプロジェクター)4000の模式図である。投射型表示装置4000は、相異なる表示色(赤色,緑色,青色)に対応する3個の電気光学装置10(10R,10G,10B)を含んで構成される。照明光学系4001は、照明装置(光源)4002からの出射光のうち赤色成分rを電気光学装置10Rに供給し、緑色成分gを電気光学装置10Gに供給し、青色成分bを電気光学装置10Bに供給する。各電気光学装置10は、照明光学系4001から供給される各単色光を表示画像に応じて変調する光変調器(ライトバルブ)として機能する。投射光学系4003は、各電気光学装置10からの出射光を合成して投射面4004に投射する。観察者は、投射面4004に投射された立体視画像を立体視用眼鏡20(図12では図示略)で視認する。
【0093】
図13は、電気光学装置10を採用した可搬型のパーソナルコンピューターの斜視図である。パーソナルコンピューター2000は、各種の画像を表示する電気光学装置10と、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。
【0094】
図14は、電気光学装置10を適用した携帯電話機の斜視図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する電気光学装置10とを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置10に表示される画面がスクロールされる。
【0095】
なお、本発明に係る電気光学装置が適用される電子機器としては、図12から図14に例示した機器のほか、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants),デジタルスチルカメラ,テレビ,ビデオカメラ,カーナビゲーション装置,車載用の表示器(インパネ),電子手帳,電子ペーパー,電卓,ワードプロセッサ,ワークステーション,テレビ電話,POS端末,プリンター,スキャナー,複写機,ビデオプレーヤー,タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【符号の説明】
【0096】
100……立体視表示装置、10……電気光学装置、12……電気光学パネル、14……制御回路、142……表示制御回路、144……眼鏡制御回路、20……立体視用眼鏡、22……右眼用シャッター、24……左眼用シャッター、30……画素部、PIX……画素、CL……液晶素子、SW……選択スイッチ、32……走査線、34……信号線、40……駆動回路、42……走査線駆動回路、44……信号線駆動回路。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
右眼用画像と左眼用画像とを表示期間毎に交互に表示する電気光学装置であって、
複数の走査線と複数の信号線との各交差に対応して配置された複数の画素と、
各表示期間内の準備期間において前記走査線を順次に選択するとともに選択状態の走査線に対応する各画素に所定階調に対応する準備電位を供給し、各表示期間のうち準備期間内で最後の走査線の選択前に開始する駆動期間において前記走査線を順次に選択するとともに選択状態の走査線に対応する各画素に当該画素の指定階調に応じた階調電位を供給する駆動回路と
を具備する電気光学装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記各表示期間の前記駆動期間内の複数の単位期間のうち最初の単位期間において、前記走査線を複数本ずつ順次に選択するとともに、選択状態の複数本のうちの何れかの走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記選択状態の複数本の走査線に対応する各画素に供給する
請求項1の電気光学装置。
【請求項3】
前記複数の走査線は、交互に配列された第1走査線および第2走査線を含み、
前記駆動回路は、
第1書込期間において、相互に隣合う2本ずつ前記複数の走査線を区分した第1組を順次に選択するとともに選択状態の前記第1組のうち前記第1走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給し、かつ、第1書込期間の経過後の第2書込期間において、前記各第2走査線を順次に選択するとともに選択状態の前記第2走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給する第1駆動と、
第1書込期間において、前記第1組とは異なる組合せで前記複数の走査線を相互に隣合う2本ずつ区分した第2組を順次に選択するとともに選択状態の前記第2組のうち前記第2走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給し、かつ、第2書込期間において、前記各第1走査線を順次に選択するとともに選択状態の前記第1走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給する第2駆動とを実行可能であり、
右眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて前記第1駆動を実行するとともに当該駆動期間のうち第1単位期間の経過後の第2単位期間にて前記第2駆動を実行し、左眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて前記第2駆動を実行するとともに当該駆動期間内の第2単位期間にて前記第1駆動を実行する
請求項2の電気光学装置。
【請求項4】
前記駆動回路は、各表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間内の第1書込期間および第2書込期間では、前記各画素に対する印加電圧の極性を第1極性に設定し、各表示期間内の駆動期間のうち第2単位期間内の第1書込期間および第2書込期間では、前記各画素に対する印加電圧の極性を、前記第1極性とは逆の第2極性に設定する
請求項3の電気光学装置。
【請求項5】
前記駆動回路は、
相前後する右眼用画像の表示期間と左眼用画像の表示期間とを各々が含む複数の制御期間のうちの第1制御期間において、右眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて前記第1駆動を実行するとともに当該駆動期間内の第2単位期間にて前記第2駆動を実行し、かつ、左眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて前記第2駆動を実行するとともに当該駆動期間内の第2単位期間にて前記第1駆動を実行し、
複数の制御期間のうち第1制御期間とは異なる第2制御期間において、右眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて前記第2駆動を実行するとともに当該駆動期間内の第2単位期間にて前記第1駆動を実行し、かつ、左眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて前記第1駆動を実行するとともに当該駆動期間内の第2単位期間にて前記第2駆動を実行する
請求項3または請求項4の電気光学装置。
【請求項6】
前記駆動回路は、
第1書込期間において、相互に隣合うQ本(Qは2以上の自然数)ずつ前記複数の走査線を区分した第1組を順次に選択するとともに選択状態の前記第1組内の第1番目の走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給し、かつ、第1書込期間の経過後の各第q書込期間(q=2〜Q)において、前記各第1組内の第q番目の走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給する第1駆動と、
第1書込期間において、前記第1組とは異なる組合せで前記複数の走査線を相互に隣合うQ本ずつ区分した第2組を順次に選択するとともに選択状態の前記第2組内の第1番目の走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給し、かつ、各第q書込期間において、前記各第2組内の第q番目の走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給する第2駆動とを実行可能であり、
右眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて前記第1駆動を実行するとともに当該駆動期間のうち第1単位期間の経過後の第2単位期間にて前記第2駆動を実行し、左眼用画像の表示期間内の駆動期間のうち第1単位期間にて前記第2駆動を実行するとともに当該駆動期間内の第2単位期間にて前記第1駆動を実行する
請求項2の電気光学装置。
【請求項7】
前記複数の走査線は、交互に配列された第1走査線および第2走査線を含み、
前記駆動回路は、前記各表示期間の前記駆動期間内の第1単位期間および第2単位期間の一方において、相互に隣合う2本ずつ前記複数の走査線を区分した第1組を順次に選択するとともに選択状態の前記第1組のうち前記第1走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給し、前記第1単位期間および前記第2単位期間の他方において、前記第1組とは異なる組合せで前記複数の走査線を相互に隣合う2本ずつ区分した第2組を順次に選択するとともに選択状態の前記第2組のうち前記第2走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給する
請求項2の電気光学装置。
【請求項8】
前記駆動回路は、右眼用画像の各表示期間内の第1単位期間において、前記第1組を順次に選択して前記各画素に階調電位を供給するとともに、当該表示期間の第2単位期間において、前記第2組を順次に選択して前記各画素に階調電位を供給し、左眼用画像の各表示期間内の第1単位期間において、前記第2組を順次に選択して前記各画素に階調電位を供給するとともに、当該表示期間の第2単位期間において、前記第1組を順次に選択して前記各画素に階調電位を供給する
請求項7の電気光学装置。
【請求項9】
前記駆動回路は、前記準備期間において前記複数の走査線を複数本ずつ選択する
請求項1から請求項8の何れかの電気光学装置。
【請求項10】
右眼用シャッターと左眼用シャッターとを含む立体視用眼鏡で立体視される右眼用画像および左眼用画像を表示する電気光学装置であって、
各表示期間内の準備期間の少なくとも一部を含む期間にて前記右眼用シャッターおよび前記左眼用シャッターの双方を閉状態に制御し、右眼用画像の表示期間内の駆動期間の少なくとも一部を含む期間にて前記右眼用シャッターを開状態に制御するとともに前記左眼用シャッターを閉状態に制御し、左眼用画像の表示期間内の駆動期間の少なくとも一部を含む期間にて前記左眼用シャッターを開状態に制御するとともに前記右眼用シャッターを閉状態に制御する眼鏡制御回路
を具備する請求項1から請求項9の何れかの電気光学装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10の何れかの電気光学装置を具備する電子機器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−64824(P2013−64824A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202805(P2011−202805)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】