説明

電気光学装置および電子機器

【課題】画素の位置に応じて異なる駆動制御および異なる映像処理によらずに、走査方向に応じた階調ムラを視認されにくくすること。
【解決手段】電気光学装置は、2次元配置された複数の画素と、開状態又は閉状態になる右目右眼用の第1シャッターおよび左目用の第2シャッターを有する3D眼鏡における第1シャッターおよび第2シャッターの開閉の制御を行う制御手段と、複数の画素を第1方向に走査して一の画素群を選択する選択手段であって、第1シャッターおよび第2シャッターの双方が閉状態である第1期間ならびに第1シャッターおよび第2シャッターの少なくとも一方が開状態である第2期間の少なくとも一方の期間において、第1方向および第1方向と異なる第2方向の2方向に複数の画素を走査して一の画素群を選択する選択手段と、選択手段により選択されている一の画素群に対応する階調値を示す信号を、一の画素群に供給する供給手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D表示を行う電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3D表示(立体表示)を行う技術が開発されている。特許文献1は、左目用画像と右目用画像とを時分割で表示する技術を開示している。ユーザは、シャッター付きの眼鏡(以下「シャッター眼鏡」という)を介してこの映像を視認する。左目用画像が表示されているときは眼鏡の右目部のシャッターが閉じられ、右目用画像が表示されているときは眼鏡の左目部のシャッターが閉じられる。この装置を用いることにより、左目および右目で異なる画像が視認され、3D映像が知覚される。
【0003】
シャッター眼鏡を用いて3D映像を視聴する場合、いわゆるクロストークが発生する問題が知られている。クロストークとは、右目用画像の一部が左目に、左目用画像の一部が右目に、それぞれ漏れる現象をいう。クロストークを抑制する方法として、表示装置を例えば2D表示時の4倍という高速で駆動する方法がある。この場合、表示装置は、左目用画像および右目用画像をそれぞれ2回ずつ繰り返して表示する。シャッター眼鏡は、画像が繰り返し表示される期間のうち、例えば2回目の一部期間のみシャッターを開く。この方法を用いることにより、原理的にはクロストークを抑制することができる。しかし、例えば液晶表示装置のように、表示素子の光学状態が変化する応答時間が無視できない場合、この応答時間に起因して、表示装置の面内で階調に分布(ムラ)が生じてしまうことがある。より具体的な例としては、パネルの上から下に向かって画素を1行ずつ走査して書き込みを行う液晶表示装置において、最下行の画素の書き込みを行った直後は、その画素の光学状態は所望の状態には変化しておらず、同じ階調にしようとしても、最上行の画素と差が生じてしまう。この問題を解決する方法として、パネルの走査方向に応じて階調を補償する技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−138384号公報
【特許文献2】特開2010−239474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された技術においては、画素の位置に応じて異なる駆動制御を行ったり、異なる映像処理(画像処理)を行う必要があった。
これに対し本発明は、画素の位置に応じて異なる駆動制御および異なる映像処理によらずに、走査方向に応じた階調ムラを視認されにくくする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2次元配置された複数の画素と、開状態又は閉状態になる右目用の第1シャッターおよび開状態又は閉状態になる左目用の第2シャッターを有する3D眼鏡における前記第1シャッターおよび前記第2シャッターの開閉の制御を行う制御手段と、前記複数の画素を第1方向に走査して一の画素群を選択する選択手段であって、前記第1シャッターおよび前記第2シャッターの双方が閉状態である第1期間ならびに前記第1シャッターおよび前記第2シャッターの少なくとも一方が開状態である第2期間の少なくとも一方の期間において、第1方向および前記第1方向と反対方向の第2方向の2方向に前記複数の画素を走査して一の画素群を選択する選択手段と、前記選択手段により選択されている前記一の画素群に対応する階調値を示す信号を、前記一の画素群に供給する供給手段とを有する電気光学装置を提供する。
この電気光学装置によれば、複数の画素を1方向のみに走査する場合と比較して、走査方向に応じた階調ムラを視認されにくくすることができる。
【0007】
好ましい態様において、前記複数の画素は、列方向である前記第1方向および前記第1方向と直交する行方向に沿って2次元配置され、前記選択手段は、前記複数の画素のうち、奇数行の画素および偶数行の画素の一方を前記第1方向に走査し、他方を前記第2方向に走査して、前記一の画素群を選択してもよい。
この電気光学装置によれば、階調ムラを複数の画素の全体的に視認されにくくすることができる。
【0008】
別の好ましい態様において、前記選択手段は、前記第2期間において、前記2方向に前記複数の画素を走査して一の画素群を選択してもよい。
この電気光学装置によれば、第2期間において2方向の走査を行わない場合と比較して、走査方向に応じた階調ムラを視認されにくくすることができる。
【0009】
さらに別の好ましい態様において、前記選択手段は、前記第1期間において、前記2方向に前記複数の画素を走査して一の画素群を選択してもよい。
この電気光学装置によれば、第1期間において2方向の走査を行わない場合と比較して、走査方向に応じた階調ムラを視認されにくくすることができる。
【0010】
また、本発明は、上記いずれかの電気光学装置を有する電子機器を提供する。
この電子機器によれば、複数の画素を1方向のみに走査する場合と比較して、走査方向に応じた階調ムラを視認されにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】プロジェクター2000の構成を示す図。
【図2】電気光学装置2100の機能構成を示す図。
【図3】電気光学装置2100の回路構成を示す図。
【図4】画素111の等価回路を示す図。
【図5】液晶パネル100の駆動方法を示すタイミングチャート。
【図6】走査信号Yを例示する図。
【図7】左目用画像ブロックにおける液晶パネル100の状態を示す模式図。
【図8】比較例に係る液晶パネルの駆動方法を示すタイミングチャート。
【図9】左目用画像ブロックにおける比較例に係る液晶パネルの状態を示す模式図。
【図10】変形例1に係る駆動方法を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.構成)
図1は、一実施形態に係るプロジェクター2000(電子機器の一例)の構成を示す平面図である。プロジェクター2000は、入力された映像信号に応じた画像をスクリーン3000に投射する装置である。プロジェクター2000は、ライトバルブ210、ランプユニット220、光学系230、ダイクロイックプリズム240、および投射レンズ250を有する。ランプユニット220は、例えばハロゲンランプの光源を有する。光学系230は、ランプユニット220から射出された光を複数の波長帯、例えばR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離する。より詳細には、光学系230は、ダイクロイックミラー2301、ミラー2302、第1マルチレンズ2303、第2マルチレンズ2304、偏光変換素子2305、重畳レンズ2306、レンズ2307、および集光レンズ2308を有する。ランプユニット220から射出された投射光は、第1マルチレンズ2303、第2マルチレンズ2304、偏光変換素子2305、重畳レンズ2306を通過し、2枚のダイクロイックミラー2301および3枚のミラー2302によってR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離される。分離された各光は、集光レンズ2308を介して、各原色に対応するライトバルブ210R、210Gおよび210Bにそれぞれ導かれる。なお、B光は、R光、G光と比較すると、光路が長いことによる損失を防ぐために、3枚のレンズ2307を用いたリレーレンズ系を介して導かれる。
【0013】
ライトバルブ210R、210G、および210Bは、光を変調する装置であり、それぞれ、液晶パネル100R、100G、および100Bを有する。液晶パネル100には、各色の縮小画像が形成される。液晶パネル100R、100G、100Bによってそれぞれ形成された縮小画像、すなわち、変調光は、ダイクロイックプリズム240に3方向から入射する。ダイクロイックプリズム240において、R光およびB光は90度に反射され、G光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、スクリーン3000には、投射レンズ250によってカラー画像が投射される。
【0014】
なお、液晶パネル100R、100G、100Bには、ダイクロイックミラー2301によって、R色、G色、B色のそれぞれに対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。また、液晶パネル100R、100Bの透過像は、ダイクロイックプリズム240により反射した後に投射されるのに対し、表示パネル100Gの透過像はそのまま投射される。したがって、液晶パネル100R、100Bによる水平走査方向は、表示パネル100Gによる水平走査方向と逆向きにされており、液晶パネル100R、100Bには左右を反転させた像が表示される。
【0015】
図2は、プロジェクター2000に含まれる電気光学装置2100の機能構成を示す図である。電気光学装置2100は、液晶パネル100と、眼鏡制御手段21(制御手段の一例)と、選択手段22と、供給手段23とを有する。また、シャッター眼鏡4000は、シャッター制御手段41と、左目用シャッター42と、右目用シャッター43とを有する。左目用シャッター42および右目用シャッター43は、それぞれ左目用および右目用のシャッターであり、独立して開状態または閉状態になる。眼鏡制御手段21は、左目用シャッター42および右目用シャッター43の開閉の制御を行う。より具体的には、眼鏡制御手段21は、左目用シャッター42および右目用シャッター43の開閉のタイミングを示す同期信号を出力する。シャッター制御手段41は、眼鏡制御手段21から出力された同期信号に応じて、左目用シャッター42および右目用シャッター43の開閉の制御を行う。液晶パネル100は、後述するように複数の画素を有する。選択手段22は、複数の画素を走査して一の画素群を選択する。選択手段22は、左目用シャッター42および右目用シャッター43の双方が閉状態である第1期間ならびに左目用シャッター42および右目用シャッター43の少なくとも一方が開状態である第2期間の少なくとも一方の期間において、第1方向および第1方向と異なる第2方向の2方向に複数の画素を走査して一の画素群を選択する。供給手段23は、選択手段22により選択されている一の画素群に対応する階調値を示す信号を、一の画素群に供給する。
【0016】
この例で、複数の画素は、すなわち、列方向および行方向に沿って2次元配置されている。選択手段22は、複数の画素のうち、奇数行の画素および偶数行の画素の一方を第1方向に走査し、他方を第1方向と反対方向の第2方向に走査して、一の画素群を選択する。
【0017】
図3は、電気光学装置2100の回路構成を示すブロック図である。プロジェクター2000は、制御回路10と、シャッター眼鏡制御部50と、液晶パネル100と、走査線駆動回路130と、走査線駆動回路131と、データ線駆動回路140とを有する。プロジェクター2000は、上位装置から供給される映像信号Vid−inにより示される画像を、同期信号Syncに基づいたタイミングで、液晶パネル100に表示する装置である。
【0018】
液晶パネル100は、供給される信号に応じた画像を表示する装置である。液晶パネル100は、表示領域101を有する。表示領域101には、複数の画素111が配置されている。この例では、m行n列の画素111がマトリクス状に配置されている。液晶パネル100は、素子基板100aと、対向基板100bと、液晶層105とを有する。素子基板100aおよび対向基板100bは一定の間隔を保って貼り合わせられている。素子基板100aおよび対向基板100bの間隙には、液晶層105が挟まれている。素子基板100aには、m行の走査線112およびn本のデータ線114が設けられている。走査線112およびデータ線114は、対向基板100bと対向する面に設けられている。走査線112とデータ線114とは、電気的に絶縁されている。走査線112とデータ線114との交差に対応して、画素111が設けられている。液晶パネル100は、m×n個の画素111を有する。以下において、複数の走査線112を区別する場合には、図3において上から順に、第1、第2、第3、…、第(m−1)、第m行の走査線112という。同様に、複数のデータ線114を区別する場合には、図3において左から順に、第1、第2、第3、…、第(n−1)、第n列のデータ線114という。なお、図3において、素子基板100aの対向面は紙面裏側であるので、この対向面に設けられる画素111、走査線112、およびデータ線114については破線で示すべきであるが、見難くなるので、それぞれ実線で示している。
【0019】
対向基板100bには、コモン電極108が設けられている。コモン電極108は、素子基板100aと対向する1面に設けられている。コモン電極108は、すべての画素111について共通である。すなわち、コモン電極108は、対向基板100bのほぼ全面にわたって設けられている、いわゆるベタ電極である。
【0020】
図4は、画素111の等価回路を示す図である。画素111は、TFT116、液晶素子120、および容量素子125を有する。TFT116は、液晶素子120への電圧の印加を制御するスイッチング手段の一例であり、この例ではnチャネル型の電界効果トランジスターである。液晶素子120は、印加される電圧に応じて光学状態が変化する素子である。この例で、液晶パネル100は透過型の液晶パネルであり、変化する光学状態は透過率である。液晶素子120は、画素電極118、液晶層105、およびコモン電極108を有する。画素電極118は、各画素111に個別に設けられている。第i行第j列の画素111において、TFT116のゲートおよびソースは、それぞれ、第i行の走査線112および第j列のデータ線114に接続されている。TFT116のドレインは、画素電極118に接続されている。容量素子125は、画素電極118に書き込まれた電圧を保持する素子である。容量素子125の一端は画素電極118に接続されており、他端は容量線115に接続されている。
【0021】
第i行の走査線112にHレベルの電圧を示す信号が入力されると、TFT116のソース・ドレイン間は導通する。TFT116のソース・ドレイン間が導通すると、画素電極118は、(TFT116のソース・ドレイン間のオン抵抗を無視すれば)第j列のデータ線114と同電位になる。第j列のデータ線114には、映像信号Vid−inに応じて、第i行第j列の画素111の階調値に応じた電圧(以下、「データ電圧」といい、データ電圧を示す信号を「データ信号」という)が印加される。コモン電極108には、図示しない回路により、共通電位LCcomが与えられる。容量線115には、図示しない回路により、時間的に一定の電位Vcom(この例では、Vcom=LCcom)が与えられる。すなわち、液晶素子120には、データ電圧と共通電位LCcomとの差に応じた電圧が印加される。以下、液晶層105がVA(Vertical Alignment)型であり、電圧無印加時において液晶素子120の階調が暗状態(黒状態)となるノーマリーブラックモードである例を用いて説明する。なお、特に説明しない限り、図示を省略した接地電位を電圧の基準(ゼロV)とする。
【0022】
再び図3を参照する。制御回路10は、走査線駆動回路130、走査線駆動回路131およびデータ線駆動回路140を制御するための信号を出力する制御装置である。制御回路10は、走査制御回路20、映像処理回路30、およびフレームメモリー40を有する。走査制御回路20は、同期信号Syncに基づいて、制御信号Xctr、制御信号Yctr、および制御信号Ictrを生成し、生成した信号を出力する。制御信号Xctrは、データ線駆動回路140を制御するための信号であり、例えば、データ信号を供給するタイミング(水平走査期間の始期)を示す。制御信号Yctrは、走査線駆動回路130および走査線駆動回路131を制御するための信号であり、例えば、走査信号を供給するタイミング(垂直走査期間の始期)を示す。制御信号Ictrは、映像処理回路30を制御するための信号であり、例えば、信号処理のタイミングおよび印加電圧の極性を示す。映像処理回路30は、デジタル信号である映像信号Vid−inを、制御信号Ictrにより示されるタイミングで処理して、アナログ信号であるデータ信号Vxとして出力する。映像信号Vid−inは、画素111の階調値をそれぞれ指定するデジタルデータである。このデジタルデータにより示される階調値は、同期信号Syncに含まれる垂直走査信号、水平走査信号およびドットクロック信号に従った順番で、データ信号Vxにより供給される。フレームメモリー40は、1フレーム分(または複数フレーム分)の画像データを記憶するメモリーである。
【0023】
走査線駆動回路130および走査線駆動回路131は、制御信号Yctrに従って、走査信号Yを出力する回路である。この例で、走査線駆動回路130は、奇数行すなわち第(2g+1)行の走査線112に対し、走査信号Yを出力する。走査線駆動回路131は、偶数行すなわち第(2g+2)行の走査線112に対し、走査信号Yを出力する。なお、gは0を含む自然数である。第i行の走査線112に供給される走査信号を、走査信号Yiという。この例で、走査信号Yiは、m本の走査線112の中から一の走査線112を順次排他的に選択するための信号である。走査信号Yiは、選択される走査線112に対しては選択電圧(Hレベル)となり、それ以外の走査線112に対しては非選択電圧(Lレベル)となる信号である。
【0024】
データ線駆動回路140は、制御信号Xctrに従って、データ信号Vxをサンプリングしてデータ信号Xを出力する回路である。第j列のデータ線114に供給されるデータ信号を、データ信号Xjという。
【0025】
シャッター眼鏡制御部50は、シャッター眼鏡4000におけるシャッターの開閉動作のタイミングを示す同期信号を生成し、生成した同期信号を出力する。シャッター眼鏡4000は、左目用シャッター42および右目用シャッター43を有している。左目用シャッター42および右目用シャッターは43、それぞれ、透過型の液晶パネルにより形成され、電気信号により開状態または閉状態になる。開状態とは、透過率が所定のしきい値(例えば90%)以上である状態をいう。閉状態とは、透過率が所定のしきい値(例えば10%)以下である状態をいう。左目用シャッター42および右目用シャッター43の開閉状態は、それぞれ独立に制御される。
【0026】
シャッター眼鏡制御部50は、眼鏡制御手段21の一例である。走査線駆動回路130および走査線駆動回路131は、選択手段22の一例である。データ線駆動回路140は、供給手段23の一例である。
【0027】
(2.動作)
図5は、液晶パネル100の駆動方法を示すタイミングチャートである。画像は1フレームごとに(この例では1フレームに複数回)書き替えられる。例えば、フレーム速度は60フレーム/秒、すなわち垂直同期信号Syncの周波数は60Hzであり、1フレーム期間(以下、単に「1フレーム」という)は16.7ミリ秒(1/60秒)である。この例で、1フレームは第1〜第4ブロックの4つのブロックに分割される。これら4つのブロックの時間長は等しく、それぞれ1/4フレームである。これら4つのブロックのうち、第1ブロックおよび第3ブロックはクロストーク対策ブロック(第1期間の一例)であり、第2ブロックは左目用画像ブロックであり、第4ブロックは右目用画像ブロックである(左目用画像ブロックおよび右目用画像ブロックは、第2期間の一例)。各ブロックにおいて、データ信号Vxは、それぞれ対応する画像を示す。クロストーク対策ブロックにおいては、クロストーク対策画像が表示される。クロストーク対策画像とは、右目と左目とのクロストークを低減するための画像であり、この例では全面が黒の画像が用いられる。透過率TLおよびTRは、それぞれ、シャッター眼鏡4000における左目用シャッター42および右目用シャッター43の透過率を示している。左目用シャッター42は左目用画像ブロックで開状態になり、右目用シャッター43は右目用画像ブロックで開状態になる。それ以外のブロックでは、左目用シャッター42および右目用シャッター43はともに閉状態になる。
【0028】
図6は、走査信号Yを例示する図である。ここでは、液晶パネル100が768本の走査線112を有する例(すなわちm=768である例)を示している。各ブロックにおいて、走査線112は図3のY軸正方向(以下「上から下」という)およびY軸負方向(以下「下から上」という)の2方向、すなわち、走査線の番号が増加する方向と減少する方向の2方向に走査される。より具体的には、奇数行の走査線112は、上から下に走査され、偶数行の走査線112は、下から上に走査される。走査線112は、第1行、第768行、第3行、第766行、第5行、第764行、…、第763行、第6行、第765行、第4行、第767行、第6行の順番で走査される。
【0029】
図7は、左目用画像ブロックにおける液晶パネル100の状態を示す模式図である。ここでは、左目用画像として全面が白の画像が書き込まれた例を用いて説明する。パネル上部(図7(A))においては、奇数行の画素111への書き込みはブロックの初期に行われ、偶数行の画素111への書き込みはブロックの終期に行われる。奇数行においては書き込みが行われてから十分な時間が経過しており、階調は白になっている。偶数行においては書き込みが行われてから十分な時間が経過しておらず、階調は黒のままである。なお、実際には偶数行の階調は完全に黒のままではないが、ここでは説明のため極端な例を示している。パネル下部(図7(B))においては、パネル上部と逆に、偶数行の画素111への書き込みはブロックの初期に行われ、奇数行の画素111への書き込みはブロックの終期に行われる。偶数行においては書き込みが行われてから十分な時間が経過しており、階調は白になっている。奇数行においては書き込みが行われてから十分な時間が経過しておらず、階調は黒のままである。パネル中部(図7(C))においては、奇数行および偶数行の画素111への書き込みは、ほぼ同時期(ブロックの中期)に行われる。書き込みが行われてから中間の時間が経過しており、階調は中間調になっている。このように、パネル上部、中部、および下部のいずれにおいても、平均してみれば中間調になっている。
【0030】
図8は、比較例に係る液晶パネルの駆動方法を示すタイミングチャートである。各ブロックにおいて、走査線112は、上から下の1方向のみに走査される。
【0031】
図9は、左目用画像ブロックにおける比較例に係る液晶パネルの状態を示す模式図である。ここでは、図7の例と同様に、左目用画像として全面が白の画像が書き込まれた例を用いて説明する。パネル上部(図9(A))においては、画素111への書き込みはブロックの初期に行われる。書き込みが行われてから十分な時間が経過しており、階調は白になっている。パネル下部(図9(B))においては、パネル上部と逆に、画素111への書き込みはブロックの終期に行われる。書き込みが行われてから十分な時間が経過しておらず、階調は黒のままである。パネル中部(図7(C))においては、奇数行および偶数行の画素111への書き込みは、ほぼ同時期(ブロックの中期)に行われる。書き込みが行われてから中間の時間が経過しており、階調は中間調になっている。このように、比較例においては、パネル上部は全体的に白っぽく、下部に向かうにつれ徐々に黒っぽい階調になっている。
【0032】
比較例によれば、走査線112の走査方向に応じて、液晶パネルにおいて表現される階調は、場所によって異なっていた。具体的には、ブロックの初期に選択される走査線112に対応する領域の階調はより黒っぽく、ブロックの初期に選択される走査線112に対応する領域の階調はより白っぽくなってしまった(図9)。しかし、本実施形態によれば、全体として階調は均一になり、走査方向に応じた階調ムラは視認されにくくなる。
【0033】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例のうち2つ以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
【0034】
(変形例1)
図10は、液晶パネル100の変形例1に係る駆動方法を示すタイミングチャートである。液晶パネル100の駆動方法は、図5で例示したものに限定されない。この例で、クロストーク対策ブロックと左目用画像ブロック(右目用画像ブロック)との時間長は同一ではなく、クロストーク対策ブロックの方が短い。また、各ブロックにおいて、走査線112の走査は複数回行われる。図10には、クロストーク対策ブロックにおいて2回、左目用画像ブロックおよび右目用画像ブロックにおいて6回、走査線112の走査が行われる。走査線112の走査は、実施形態で説明したように2方向に行われる。このような駆動方法においても、上から下の1方向のみの走査を行う場合と比較して、走査方向に応じた階調ムラは視認されにくくなる。
【0035】
(変形例2)
2方向走査の具体例は、実施形態で説明したものに限定されない。例えば、第1行、第3行、第768行、第766行、第5行、第7行、第764行、第762行、…というように、奇数行は上から下に2行ずつ、偶数行は下から上に2行ずつ走査されてもよい。別の例で、第1行、第768行、第2行、第767行、第3行、第766行、…というように、奇数行と偶数行とを分けず、上から下に1行ずつ、下から上に1行ずつの走査を交互に行ってもよい。なおこの例では、パネル中部と上部および中部と下部を比較すると階調ムラが視認される可能性があるが、パネル上部と下部の階調ムラは、1方向走査と比較して視認されにくい。
【0036】
(変形例3)
実施形態では、1フレームの全期間に渡って2方向走査が行われる例を説明したが、1フレームの一部の期間のみにおいて2方向走査が行われ、他の期間は1方向走査が行われてもよい。例えば、クロストーク対策ブロックにおいて2方向走査が行われ、左目用画像ブロックおよび右目用画像ブロックにおいて1方向走査が行われてもよい。別の例で、クロストーク対策ブロックにおいて1方向走査が行われ、左目用画像ブロックおよび右目用画像ブロックにおいて2方向走査が行われてもよい。いずれの場合も、1方向走査のみが行われる場合と比較して、階調ムラを視認されにくくすることができる。
【0037】
(変形例4)
クロストーク対策ブロックにおいて表示される画像は、全面が黒の画像に限定されない。クロストーク対策ブロックにおいて、全面が白の画像が表示されてもよい。別の例で、クロストーク対策ブロックにおいて、次のブロックで表示される画像が表示されてもよい。すなわち図5の例で、第1ブロックにおいて左目用画像が、第3ブロックにおいて右目用画像が、それぞれ表示されてもよい。
【0038】
(電子機器)
本発明に係る電子機器はプロジェクターに限定されない。テレビジョン、ビューファインダー型・モニタ直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、タッチパネルを備えた機器等に本発明が用いられてもよい。
【0039】
電気光学装置2100の構成は、図3で例示したものに限定されない。図2の機能を実現できるものであれば、電気光学装置2100は、どのような構成を有していてもよい。例えば、電気光学装置2100に用いられる電気光学素子は、液晶素子120に限定されない。液晶素子120に代わり、有機EL(Electro-Luminescence)素子等、他の電気光学素子が用いられてもよい。
実施形態で説明したパラメーター(例えば、フレーム速度、画素数など)および信号の極性やレベルはあくまで例示であり、本発明はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0040】
10…制御回路、20…走査制御回路、21…眼鏡制御手段、22…選択手段、23…供給手段、30…映像処理回路、41…シャッター制御手段、42…左目用シャッター、43…右目用シャッター、50…シャッター眼鏡制御部、100…液晶パネル、101…表示領域、105…液晶層、108…コモン電極、111…画素、112…走査線、114…データ線、116…TFT、118…画素電極、120…液晶素子、125…容量素子、130…走査線駆動回路、131…走査線駆動回路、140…データ線駆動回路、210…ライトバルブ、220…ランプユニット、230…光学系、240…ダイクロイックプリズム、250…投射レンズ、2000…プロジェクター、2100…電気光学装置、2301…ダイクロイックミラー、2302…ミラー、2303…第1マルチレンズ、2304…第2マルチレンズ、2305…偏光変換素子、2306…重畳レンズ、2307…レンズ、2308…集光レンズ、3000…スクリーン、4000…シャッター眼鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元配置された複数の画素と、
開状態又は閉状態になる右目用の第1シャッターおよび開状態又は閉状態になる左目用の第2シャッターを有する3D眼鏡における前記第1シャッターおよび前記第2シャッターの開閉の制御を行う制御手段と、
前記複数の画素を第1方向に走査して一の画素群を選択する選択手段であって、前記第1シャッターおよび前記第2シャッターの双方が閉状態である第1期間ならびに前記第1シャッターおよび前記第2シャッターの少なくとも一方が開状態である第2期間の少なくとも一方の期間において、第1方向および前記第1方向と反対方向の第2方向の2方向に前記複数の画素を走査して一の画素群を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択されている前記一の画素群に対応する階調値を示す信号を、前記一の画素群に供給する供給手段と
を有する電気光学装置。
【請求項2】
前記複数の画素は、列方向である前記第1方向および前記第1方向と直交する行方向に沿って2次元配置され、
前記選択手段は、前記複数の画素のうち、奇数行の画素および偶数行の画素の一方を前記第1方向に走査し、他方を前記第2方向に走査して、前記一の画素群を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記選択手段は、前記第2期間において、前記2方向に前記複数の画素を走査して一の画素群を選択する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記第1期間において、前記2方向に前記複数の画素を走査して一の画素群を選択する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の電気光学装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−64919(P2013−64919A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204294(P2011−204294)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】