説明

電気光学装置および電子機器

【課題】表現できる階調数を増加させること。
【解決手段】液晶パネル100は、あらかじめ決められた不視認期間において視界を遮断する遮断手段を介して視認される。変換手段21は、複数のフレームに区分された映像を示す映像信号に基づいて、a個のサブフィールドから構成されるフレーム毎に入力された階調値を、不視認期間外の視認期間に含まれるb個(2≦b≦a)のサブフィールドおよび不視認期間に含まれるc個(1≦c≦b)のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードに変換する。駆動手段22は、変換手段21により変換されたサブフィールドコードに基づいて複数の電気光学素子の各々の光学状態を制御する信号を供給することによって複数の電気光学素子を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブフィールド駆動方式により階調表示制御を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶等の電気光学素子を用いた電気光学装置における階調表現の方法として、いわゆるサブフィールド駆動が知られている。サブフィールド駆動において、1フレームは複数のサブフィールドに分割される。サブフィールド駆動とは、これら複数のサブフィールドのオンおよびオフの組み合わせによって、時間的な積分値として階調表現を行う方法である。サブフィールド駆動において表現できる階調の数は、原理的には、サブフィールドの数によって決まっている。すなわち、階調数を増やすには、1フレームあたりのサブフィールドの数を増やす必要がある。これに対し特許文献1は、液晶の過渡的な応答特性を利用して、1フレームあたりのサブフィールドの数を増やすことなく、表現できる階調の数を増やす技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−148417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、3次元映像を視認させるシステムが開発されている。3次元映像を視認させる方法の一つに、フレームシーケンシャル方式がある。フレームシーケンシャル方式は、表示装置において左目用画像と右目用画像とを時分割で交互に表示し、ユーザーは、その映像と同期して左目用および右目用のシャッターが開閉する眼鏡を介してその映像を見る方法である。2次元映像の場合は1フレームの全サブフィールドを使って階調表現できるが、3次元映像の場合は、1フレームで左目用画像と右目用画像とを表示するので、最大でも2次元映像の場合の半分の数のサブフィールドしか使うことができない。さらに、フレームシーケンシャル方式においては、左目用画像と右目用画像とのクロストークを低減するため、左目用および右目用のシャッターが両方とも閉じている期間が設けられるので、この期間のサブフィールドも階調表現に使うことができない。このように階調表現に使えるサブフィールド数が制限される問題は、3次元映像システムだけではなく、動画の質を向上させるために映像と同期して照明をパルス的に消灯するシステム等においても発生する。この問題は、あらかじめ決められた不視認期間において視界を遮断する遮断手段を介して映像が視認されるシステムにおける共通の問題である。
【0005】
これに対し本発明は、あらかじめ決められた不視認期間において視界を遮断する遮断手段を介して映像が視認されるシステムにおいて、表現できる階調数を増加させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、あらかじめ決められた不視認期間において視界を遮断する遮断手段を介して視認され、各々が供給される信号に応じた光学状態になる複数の電気光学素子と、複数のフレームに区分された映像を示す映像信号に基づいて、a個のサブフィールドから構成される前記フレーム毎に入力された階調値を、前記不視認期間外の視認期間に含まれるb個(2≦b≦a)のサブフィールドおよび前記不視認期間に含まれるc個(1≦c≦b)のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードに変換をする変換手段と、前記変換手段により変換されたサブフィールドコードに基づいて前記複数の電気光学素子の各々の光学状態を制御する前記信号を供給することによって前記複数の電気光学素子を駆動する駆動手段とを有する電気光学装置を提供する。
この電気光学装置によれば、視認期間のサブフィールドのみを使用して階調表現する場合と比較して、表現できる階調数を増加させることができる。
【0007】
好ましい態様において、前記変換手段は、前記複数のフレームのうち処理対象となっている現フレームの階調値について、前記現フレームにおける階調値および前記現フレームの1フレーム前の直前フレームにおける前記電気光学素子の光学状態に基づいて、前記変換を行ってもよい。
この電気光学装置によれば、直前フレームの光学状態も考慮して、階調を制御することができる。
【0008】
別の好ましい態様において、この電気光学装置は、階調値と前記サブフィールドコードとの組を、前記直前フレームの光学状態ごとに記録したテーブルを記憶した記憶手段を有し、前記変換手段は、前記記憶手段に記憶されている前記テーブルを参照して前記変換を行ってもよい。
この電気光学装置によれば、テーブルを用いてサブフィールドコードへの変換をすることができる。
【0009】
さらに別の好ましい態様において、前記テーブルは、前記サブフィールドコードの各々について、当該階調値に応じた光学状態を示す識別子を含み、前記記憶手段は、前記直前フレームにおける前記識別子を記憶し、前記変換手段は、前記記憶手段に記憶されている前記識別子および前記テーブルに基づいて前記変換を行ってもよい。
この電気光学装置によれば、テーブルに含まれる識別子を、直前フレームの光学状態を示す情報として用いることができる。
【0010】
さらに別の好ましい態様において、前記電気光学素子の応答時間が、前記サブフィールドよりも長くてもよい。
この電気光学装置によれば、応答時間がサブフィールドより長い電気光学素子を用いるシステムにおいて、視認期間のサブフィールドのみを使用して階調表現する場合と比較して、表現できる階調数を増加させることができる。
【0011】
さらに別の好ましい態様において、前記映像信号が、時分割で交互に切り替わる左目用画像および右目用画像を含む3次元映像を示してもよい。
この電気光学装置によれば、3次元映像を表示するシステムにおいて、視認期間のサブフィールドのみを使用して階調表現する場合と比較して、表現できる階調数を増加させることができる。
【0012】
さらに別の好ましい態様において、前記遮断手段は、前記視認期間において点灯され、前記不視認期間において消灯される光源を有し、前記複数の電気光学素子は、前記光源からの光を前記光学状態に応じて変調してもよい。
この電気光学装置によれば、擬似インパルス表示をするシステムにおいて、視認期間のサブフィールドのみを使用して階調表現する場合と比較して、表現できる階調数を増加させることができる。
【0013】
また、本発明は、上記いずれかの電気光学装置を有する電子機器を提供する。
この電子機器によれば、視認期間のサブフィールドのみを使用して階調表現する場合と比較して、表現できる階調数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】シャッター眼鏡におけるシャッターの開閉タイミングを例示する図。
【図2】不視認期間のサブフィールドコードが階調に与える影響を例示する図。
【図3】透過率の時間変化を示す図。
【図4】プロジェクター2000の構成を示す平面図。
【図5】電気光学装置2100の機能構成を示す図。
【図6】電気光学装置2100の回路構成を示すブロック図。
【図7】画素111の等価回路を示す図。
【図8】液晶パネル100の駆動方法を示すタイミングチャート。
【図9】映像処理回路30の構成を示す図。
【図10】プロジェクター2000の動作を示すフローチャート。
【図11】LUT3011を例示する図。
【図12】直前フレームの透過率が現フレームの平均透過率に与える影響を示す図。
【図13】透過率の時間変化を示す図。
【図14】映像処理回路30の第2実施形態に係る構成を示す図。
【図15】LUT3012を例示する図。
【図16】LUT3012の別の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.第1実施形態
1−1.サブフィールド駆動を用いた3次元表示システムの問題点
本実施形態に係る映像表示システムの説明に移る前に、サブフィールド駆動を用いた3次元(3D)映像表示システムの問題点を説明する。3次元映像表示システムは、表示装置およびシャッター眼鏡を有する。3次元映像信号は、時分割で交互に切り替わる左目用画像および右目用画像を含む3次元映像を示す。表示装置は、3次元映像信号に応じて、左目用画像および右目用画像を時分割で交互に表示する。シャッター眼鏡は、それぞれ独立して制御される左目シャッターおよび右目シャッターを有する。ユーザーは、表示される映像を、シャッター眼鏡(3D眼鏡または立体視眼鏡)を介して視認する。左目シャッターは左目に入る光を、右目シャッターは右目に入る光を遮蔽するシャッターである。左目シャッターおよび右目シャッターの開閉は、左目用画像および右目用画像と同期するように制御される。
【0016】
図1は、シャッター眼鏡におけるシャッターの開閉タイミングを例示する図である。図1において、同期信号Syncは垂直同期信号を示す。透過率Tは、シャッター眼鏡におけるシャッターの透過率を、特に、透過率TLは左目シャッターの透過率を、透過率TRは右目シャッターの透過率を、それぞれ示す。図1下段のSFは、サブフィールドの構成を示す。この例において、1フレームは20サブフィールドに区分(分割)される。1フレームが16.6ミリ秒である場合、1サブフィールドは0.833ミリ秒である。この例では、これら20個のサブフィールドは同一の時間長を有する。すなわち、1フレームは20個のサブフィールドに等分される。このうち、前半の10サブフィールド(以下「左目フレーム」という)において左目用画像が、後半の10サブフィールド(以下「右目フレーム」という)において右目用画像が表示される。
【0017】
この表示システムにおいて2次元(2D)映像を表示する場合、1枚の画像の表示に20サブフィールドが用いられる。すなわち、階調表現に用いることができるサブフィールドの数は20個である。20個のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせ(正確には順列)は、220=1,048,576通りである。すなわち、20サブフィールドを使えば、理論的には最大1,048,576階調の表現能力があるといえる。このシステムで3次元映像を表示する場合、左目フレームおよび右目フレームはそれぞれ10サブフィールドである。すなわち、階調表現に用いることができるサブフィールドの数は10個である。10個のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせは、210=1,024通りである。すなわち、このシステムにおいて時間長が半分になると、それだけで表現能力は約1/1000になってしまう。
【0018】
3次元映像表示システムにおいては、フレームの時間長が半分になる問題に加え、さらに、不視認期間の問題もある。この例で、シャッター眼鏡は、液晶パネルをシャッターとして用いている。液晶パネルが高透過率(例えば透過率90%以上)になったときがシャッターが開いた状態で、液晶パネルが低透過率(例えば透過率10%以下)になったときがシャッターが閉じた状態である。
【0019】
図1(A)の例では、左目フレームの第10サブフィールドにおいて、左目シャッターを閉じ、右目シャッターを開くための信号が供給される。この例で、液晶パネルの応答時間はミリ秒のオーダーであり、1サブフィールドよりも長い。応答時間とは、シャッターが開状態から閉状態に遷移するのに要する時間、またはシャッターが閉状態から開状態に遷移するのに要する時間をいう。この例では、シャッターが開状態から閉状態に遷移するのに1サブフィールド以上2サブフィールド未満の時間がかかり、閉状態から開状態に遷移するのに2サブフィールド以上3サブフィールド未満の時間がかかる。したがって、左目フレームの第10サブフィールドおよび右目フレームの第1サブフィールドにおいて、左目用シャッターと右目用シャッターとが共に開いている状態になる。このときユーザーは左目で左目用画像および右目用画像の双方を視認している(右目も同様)。これは、クロストークが発生している状態である。
【0020】
クロストークを低減するには、左目シャッターおよび右目シャッターが共に閉じた期間を設ける必要がある、図1(B)の例では、左目フレームの第8サブフィールドにおいて左目シャッターを閉じるための信号が供給され、右目フレームの第1サブフィールドにおいて右目シャッターを閉じるための信号が供給される。シャッターが閉状態から開状態に遷移するのに3サブフィールド程度の時間を要するので、左目フレームの第8サブフィールドから右目フレームの第3サブフィールドまでの5サブフィールドは、不視認期間である。不視認期間とは、左目および右目の両方とも、開状態ではない期間をいう。これに対し、左目および右目の少なくとも一方が開状態である期間を視認期間という。この例のように5サブフィールドが不視認期間である場合、視認されるのは5サブフィールドであり、この期間だけで階調表現しようとすると、サブフィールドのオンまたはオフの組み合わせは、25=32通りである。別の例で、不視認期間が3サブフィールドである場合、視認される7サブフィールドだけで階調表現しようとすると、サブフィールドのオンまたはオフの組み合わせは、27=128通りである。いずれにしても、10サブフィールドすべてを階調表現に使える場合、さらには2次元表示の場合と比較すると、表現能力は大幅に低下してしまう。一般化すると、1枚の画像を表示する期間がa個のサブフィールドに区分される場合において、a個のサブフィールドの全てを使って階調表現した場合、表現能力は最大で2a階調である。視認期間にb個のサブフィールドが含まれ、不視認期間にc個のサブフィールドが含まれる場合において、視認期間だけで階調表現しようとするときは、表現能力は最大でも2b階調になってしまう。
【0021】
1−2.本実施形態における階調表現の概要
以上の説明ではシャッター眼鏡の応答時間のみに着目したが、表示装置においても応答時間が存在する。この応答時間が1サブフィールドよりも長い場合、視認期間における表示素子の光学状態は、その前の不視認期間において表示素子に印加された電圧の影響を受ける。換言すると、不視認期間における表示素子の状態が、視認期間における表示素子の光学状態に影響を及ぼす。本実施形態においては、この特性を利用して階調表現が行われる。
【0022】
いま、表示装置において、表示素子の光学状態が暗状態(輝度が10%以下)から明状態(輝度が90%以上)に遷移する応答時間および明状態から暗状態に遷移する応答時間が、共に2.0ミリ秒である例を用いて説明する。簡単のため、シャッター眼鏡の透過率が、開状態または閉状態に遷移させるための信号を受けてから2.5ミリ秒後に矩形波的に変化する例を用いる。すなわち、10サブフィールドのうち、第1〜第3サブフィールドが不視認期間であり、第4〜第10サブフィールドが視認期間である。
【0023】
図2は、不視認期間のサブフィールドコードが階調に与える影響を例示する図である。サブフィールドコード(図においては「SFコード」)とは、サブフィールドにおける表示素子のオン(第1電圧が印加される状態)またはオフ(第2電圧が印加される状態)の組み合わせを示す符号をいう。この例で、「1」はオン状態を、「0」はオフ状態を示す。図2は、視認期間のサブフィールドコードを「1110100」で固定し、不視認期間のサブフィールドコードを変化させた場合の平均透過率、すなわち表示される階調を示している。平均透過率は、視認期間における透過率の平均値である。このフレームの前のフレームにおける透過率はゼロである。縦軸は平均透過率を、横軸は不視認期間のサブフィールドコードを、それぞれ示している。この例では、不視認期間のサブフィールドコードが「000」である場合の階調が最も低く、「111」である場合の階調が最も高く、その差は約0.46である。不視認期間のサブフィールドコードの差に応じて、最大0.46の透過率の差が生じている。
【0024】
図3は、透過率の時間変化を示す図である。縦軸は透過率を、横軸は時間を、それぞれ示している。図3には、図2で例示したもののうち、不視認期間のサブフィールドコードが「001」である場合(実線)と、「100」である場合(破線)とが示されている。図3の透過率−時間曲線を時間で積分したもの(正確には、この積分値を視認期間の時間長で除したもの)が、図2の平均透過率に相当する。不視認期間のサブフィールドコードが「001」である場合の透過率の立ち上がりは「100」である場合よりも早く、この影響により、視認期間のサブフィールドコードが同一であっても、サブフィールドコードが「001」である場合の透過率の方が高い状態を維持している。本実施形態において、プロジェクター2000は、この特性を利用して階調制御を行う。
【0025】
例えば、γ=2.2の256階調(8ビット)を表現する場合、上記の例で不視認期間のサブフィールドコードとして「001」を用いれば第111階調を表現でき、「100」を用いれば第83階調を表現することができる。
【0026】
1−3.構成
図4は、一実施形態に係るプロジェクター2000(電子機器の一例)の構成を示す平面図である。プロジェクター2000は、入力された映像信号に応じた画像をスクリーン3000に投射する装置である。プロジェクター2000は、ライトバルブ210、ランプユニット220、光学系230、ダイクロイックプリズム240、および投射レンズ250を有する。ランプユニット220は、例えばハロゲンランプの光源を有する。光学系230は、ランプユニット220から射出された光を複数の波長帯、例えばR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離する。より詳細には、光学系230は、ダイクロイックミラー2301、ミラー2302、第1マルチレンズ2303、第2マルチレンズ2304、偏光変換素子2305、重畳レンズ2306、レンズ2307、および集光レンズ2308を有する。ランプユニット220から射出された投射光は、第1マルチレンズ2303、第2マルチレンズ2304、偏光変換素子2305、重畳レンズ2306を通過し、2枚のダイクロイックミラー2301および3枚のミラー2302によってR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離される。分離された各光は、集光レンズ2308を介して、各原色に対応するライトバルブ210R、210Gおよび210Bにそれぞれ導かれる。なお、B光は、R光、G光と比較すると、光路が長いことによる損失を防ぐために、3枚のレンズ2307を用いたリレーレンズ系を介して導かれる。
【0027】
ライトバルブ210R、210G、および210Bは、光を変調する装置であり、それぞれ、液晶パネル100R、100G、および100Bを有する。液晶パネル100には、各色の縮小画像が形成される。液晶パネル100R、100G、100Bによってそれぞれ形成された縮小画像、すなわち、変調光は、ダイクロイックプリズム240に3方向から入射する。ダイクロイックプリズム240において、R光およびB光は90度に反射され、G光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、スクリーン3000には、投射レンズ250によってカラー画像が投射される。
【0028】
なお、液晶パネル100R、100G、100Bには、ダイクロイックミラー2301によって、R色、G色、B色のそれぞれに対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。また、液晶パネル100R、100Bの透過像は、ダイクロイックプリズム240により反射した後に投射されるのに対し、表示パネル100Gの透過像はそのまま投射される。したがって、液晶パネル100R、100Bによる水平走査方向は、表示パネル100Gによる水平走査方向と逆向きにされており、液晶パネル100R、100Bには左右を反転させた像が表示される。
【0029】
図5は、プロジェクター2000に含まれる電気光学装置2100の機能構成を示す図である。プロジェクター2000は、液晶パネル100と、変換手段21と、駆動手段22と、記憶手段23とを有する。液晶パネル100は、各々が供給される信号に応じた光学状態になる複数の液晶素子(電気光学素子の一例)を有する。液晶パネル100は、あらかじめ決められた不視認期間において視界を遮断する遮断手段(例えばシャッター眼鏡)を介して視認される。変換手段21は、複数のフレームに区分された映像を示す映像信号に基づいて、a個のサブフィールドから構成されるフレーム毎に入力された階調値を、不視認期間外の視認期間に含まれるb個(2≦b≦a)のサブフィールドおよび不視認期間に含まれるc個(1≦c≦b)のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードに変換する。駆動手段22は、変換手段21により変換されたサブフィールドコードに基づいて複数の電気光学素子の各々の光学状態を制御する信号を供給することによって複数の電気光学素子を駆動する。記憶手段23は、階調値とサブフィールドコードとの組を記録したテーブルを記憶している。変換手段21は、記憶手段23に記憶されているテーブルを参照して変換を行う。
【0030】
図6は、電気光学装置2100の回路構成を示すブロック図である。プロジェクター2000は、制御回路10と、液晶パネル100と、走査線駆動回路130と、データ線駆動回路140とを有する。プロジェクター2000は、上位装置から供給される映像信号Vid−inにより示される画像を、同期信号Syncに基づいたタイミングで、液晶パネル100に表示する装置である。
【0031】
液晶パネル100は、供給される信号に応じた画像を表示する装置である。液晶パネル100は、表示領域101を有する。表示領域101には、複数の画素111が配置されている。この例では、m行n列の画素111がマトリクス状に配置されている。液晶パネル100は、素子基板100aと、対向基板100bと、液晶層105とを有する。素子基板100aおよび対向基板100bは一定の間隔を保って貼り合わせられている。素子基板100aおよび対向基板100bの間隙には、液晶層105が挟まれている。素子基板100aには、m行の走査線112およびn本のデータ線114が設けられている。走査線112およびデータ線114は、対向基板100bと対向する面に設けられている。走査線112とデータ線114とは、電気的に絶縁されている。走査線112とデータ線114との交差に対応して、画素111が設けられている。液晶パネル100は、m×n個の画素111を有する。画素111の各々に対応して、素子基板100aには、個別の画素電極118およびTFT(Thin Film Transistor、薄膜トランジスター)116が設けられている。以下において、複数の走査線112を区別する場合には、図6において上から順に、第1、第2、第3、…、第(m−1)、第m行の走査線112という。同様に、複数のデータ線114を区別する場合には、図6において左から順に、第1、第2、第3、…、第(n−1)、第n列のデータ線114という。なお、図6において、素子基板100aの対向面は紙面裏側であるので、この対向面に設けられる走査線112、データ線114、TFT116および画素電極118については破線で示すべきであるが、見難くなるので、それぞれ実線で示している。
【0032】
対向基板100bには、コモン電極108が設けられている。コモン電極108は、素子基板100aと対向する1面に設けられている。コモン電極108は、すべての画素111について共通である。すなわち、コモン電極108は、対向基板100bのほぼ全面にわたって設けられている、いわゆるベタ電極である。
【0033】
図7は、画素111の等価回路を示す図である。画素111は、TFT116、液晶素子120、および容量素子125を有する。TFT116は、液晶素子120への電圧の印加を制御するスイッチング手段の一例であり、この例ではnチャネル型の電界効果トランジスターである。液晶素子120は、印加される電圧に応じて光学状態が変化する素子である。この例で、液晶パネル100は透過型の液晶パネルであり、変化する光学状態は透過率である。液晶素子120は、画素電極118、液晶層105、およびコモン電極108を有する。第i行第j列の画素111において、TFT116のゲートおよびソースは、それぞれ、第i行の走査線112および第j列のデータ線114に接続されている。TFT116のドレインは、画素電極118に接続されている。容量素子125は、画素電極118に書き込まれた電圧を保持する素子である。容量素子125の一端は画素電極118に接続されており、他端は容量線115に接続されている。
【0034】
第i行の走査線112にH(High)レベルの電圧を示す信号が入力されると、TFT116のソース・ドレイン間は導通する。TFT116のソース・ドレイン間が導通すると、画素電極118は、(TFT116のソース・ドレイン間のオン抵抗を無視すれば)第j列のデータ線114と同電位になる。第j列のデータ線114には、映像信号Vid−inに応じて、第i行第j列の画素111の階調値に応じた電圧(以下、「データ電圧」といい、データ電圧を示す信号を「データ信号」という)が印加される。コモン電極108には、図示しない回路により、共通電位LCcomが与えられる。容量線115には、図示しない回路により、時間的に一定の電位Vcom(この例では、Vcom=LCcom)が与えられる。すなわち、液晶素子120には、データ電圧と共通電位LCcomとの差に応じた電圧が印加される。以下、液晶層105がVA(Vertical Alignment)型であり、電圧無印加時において液晶素子120の階調が暗状態(黒状態)となるノーマリーブラックモードである例を用いて説明する。なお、特に説明しない限り、図示を省略した接地電位を電圧の基準(ゼロV)とする。
【0035】
液晶パネル100はサブフィールド駆動されるので、液晶素子120に印加される電圧の絶対値は、VH(第1電圧の一例、例えば5V)またはVL(第2電圧の一例、例えばゼロV)の2値のいずれかである。
【0036】
再び図6を参照する。制御回路10は、走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140を制御するための信号を出力する制御装置である。制御回路10は走査制御回路20および映像処理回路30を有する。走査制御回路20は、同期信号Syncに基づいて、制御信号Xctr、制御信号Yctr、および制御信号Ictrを生成し、生成した信号を出力する。制御信号Xctrは、データ線駆動回路140を制御するための信号であり、例えば、データ信号を供給するタイミング(水平走査期間の始期)を示す。制御信号Yctrは、走査線駆動回路130を制御するための信号であり、例えば、走査信号を供給するタイミング(垂直走査期間の始期)を示す。制御信号Ictrは、映像処理回路30を制御するための信号であり、例えば、信号処理のタイミングおよび印加電圧の極性を示す。映像処理回路30は、デジタル信号である映像信号Vid−inを、制御信号Ictrにより示されるタイミングで処理して、アナログ信号であるデータ信号Vxとして出力する。映像信号Vid−inは、画素111の階調値をそれぞれ指定するデジタルデータである。このデジタルデータにより示される階調値は、同期信号Syncに含まれる垂直走査信号、水平走査信号およびドットクロック信号に従った順番で、データ信号Vxにより供給される。
【0037】
走査線駆動回路130は、制御信号Yctrに従って、走査信号Yを出力する回路である。第i行の走査線112に供給される走査信号を、走査信号Yiという。この例で、走査信号Yiは、m本の走査線112の中から一の走査線112を順次排他的に選択するための信号である。走査信号Yiは、選択される走査線112に対しては選択電圧(Hレベル)となり、それ以外の走査線112に対しては非選択電圧(L(Low)レベル)となる信号である。なお、一の走査線112を順次排他的に選択される駆動に代わり、複数の走査線112が同時に選択される、いわゆるMLS(Multiple Line Selection)駆動が用いられてもよい。
【0038】
データ線駆動回路140は、制御信号Xctrに従って、データ信号Vxをサンプリングしてデータ信号Xを出力する回路である。第j列のデータ線114に供給されるデータ信号を、データ信号Xjという。
【0039】
図8は、液晶パネル100の駆動方法を示すタイミングチャートである。画像は1フレームごとに(この例では1フレームに複数回)書き替えられる。例えば、フレーム速度は60フレーム/秒、すなわち垂直同期信号(図示略)の周波数は60Hzであり、1フレームは16.7ミリ秒(1/60秒)である。液晶パネル100はサブフィールド駆動により駆動される。サブフィールド駆動において、1フレームは複数のサブフィールドに分割される。図8は、1フレームが、SF1〜SF20の20個のサブフィールドに分割される例を示している。スタート信号DYは、サブフィールドの始期を示す信号である。スタート信号DYとしてHレベルのパルスが供給されると、走査線駆動回路130は、走査線112の走査を開始、すなわち、m本の走査線112に走査信号Yi(1≦i≦m)を出力する。1つのサブフィールドにおいて、走査信号Yは、順次排他的に選択電圧になる信号である。選択電圧を示す走査信号を選択信号といい、非選択電圧を示す走査信号を非選択信号という。また、第i行の走査線112に選択信号が供給されることを、「第i行の走査線112が選択される」という。第j列のデータ線114に供給されるデータ信号Xjは、走査信号と同期している。例えば、第i行の走査線112が選択されているときは、第i行第j列の画素111の階調値に対応する電圧を示す信号がデータ信号Xjとして供給される。
【0040】
図9は、映像処理回路30の構成を示す図である。映像処理回路30は、メモリー301と、変換部302と、フレームメモリー303と、制御部304とを有する。メモリー301は、LUT3011を記憶している。LUT3011は、階調値と、サブフィールドコードとの組を複数記録したテーブルである。変換部302は、映像信号Vid−inが示す映像のうち、処理対象となる画素について、階調値をサブフィールドコードに変換する。この例で、制御部304は、メモリー301に記憶されているLUT3011を参照して、階調値をサブフィールドコードに変換する。フレームメモリー303は、1フレーム分の(m×n個の画素の)サブフィールドコードを記憶するメモリーである。変換部302は、変換により得られたサブフィールドコードをフレームメモリー303に書き込む。制御部304は、フレームメモリー303からサブフィールドコードを読み出し、読み出したサブフィールドコードに応じた電圧の信号を、データ信号Vxとして出力する。
【0041】
変換部302は、変換手段21の一例である。制御部304、走査線駆動回路130、およびデータ線駆動回路140は、駆動手段22の一例である。メモリー301は、記憶手段23の一例である。
【0042】
1−4.動作
図10は、プロジェクター2000の動作を示すフローチャートである。ステップS100において、映像処理回路30の変換部302は、映像信号Vid−inにより示される画像のうち対象画素の階調値を、サブフィールドコードに変換する。具体的には以下のとおりである。変換部302は、階調値に対応するサブフィールドコードを、メモリー301に記憶されているLUT3011から読み出す。
【0043】
図11は、LUT3011を例示する図である。LUT3011は、階調値とサブフィールドコードとの組を、p個含んでいる。pは階調数に相当する数であり、この例ではp=256である。図11においては、説明のため、不視認期間のサブフィールドコードと視認期間のサブフィールドコードとをハイフンで区切って示している。
【0044】
再び図10を参照して説明する。例えば、映像信号Vid−inにより示される階調値が「83」である場合、変換部302は、LUT3011の中から、階調値「83」に対応するサブフィールドコードとして「100−1110100」を読み出す。変換部302は、読み出したサブフィールドコードを、フレームメモリー303のうち、対象画素の記憶領域に書き込む。
【0045】
ステップS110において、制御部304は、対象画素のサブフィールドコードに応じた信号を生成し、この信号をデータ信号Vxとして出力する。より詳細には、制御部304は、スタート信号DYにより示されるタイミングで、対応するサブフィールドのコードをフレームメモリー303から読み出す。例えば、スタート信号DYにより第1サブフィールドのタイミングが示されると、制御部304は、対象画素のサブフィールドコード「100−1110100」のうち、第1サブフィールドのコード「1」をフレームメモリー303から読み出す。制御部304は、コード「1」に対応する電圧(例えば電圧VH)の信号を生成し、この信号をデータ信号Vxとして出力する。別の例で、スタート信号DYにより第2サブフィールドのタイミングが示されると、制御部304は、対象画素のサブフィールドコード「100−1110100」のうち、第2サブフィールドのコード「0」をフレームメモリー303から読み出す。制御部304は、コード「0」に対応する電圧(例えば電圧VL)の信号を生成し、この信号をデータ信号Vxとして出力する。
【0046】
データ線駆動回路140は図示せぬラッチ回路を有しており、1行分のデータを保持する。制御部304は、第1〜第n列の画素111に対するデータ信号Vxを順次出力し、データ線駆動回路140は、第1〜第n列のデータを保持する。データ線駆動回路140が第i行第1〜第n列の第kサブフィールドのデータを保持したタイミングで、走査線駆動回路130は、第i行の走査線112を選択する。こうして、第i行の画素111に、第kサブフィールドのデータが書き込まれる。第m行までのデータの書き込みが終了すると、次に第(k+1)サブフィールドのデータが順次書き込まれる。以上の処理が繰り返されることにより、液晶素子120は、サブフィールドコードに応じた透過率を示す。
【0047】
本実施形態によれば、視認期間のサブフィールド数がb個であっても、不視認期間のうちc個のサブフィールドのデータ信号を制御することにより、bビット(2b通り)より多階調の表現をすることができる。
なお、LUT3011に記憶されているサブフィールドコードを全階調にわたってみた場合に、ある階調の不視認期間のc個のサブフィールドの少なくとも1つと、別の階調のc個のサブフィールドの少なとも1つとで、状態(オンまたはオフ)が異なる場合がある。すなわち、不視認期間のc個のサブフィールドの状態は、全ての階調について同一ではなく、ある階調と別の階調とで異なる場合がある。
【0048】
2.第2実施形態
あるフレームにおける液晶素子120の平均透過率は、そのフレームにおける不視認期間および視認期間のデータ信号だけでなく、1フレーム前のフレーム(以下、「直前フレーム」という)における透過率(階調値)の影響を受ける場合がある。本実施形態において、階調値からサブフィールドコードへの変換は、直前フレームの透過率を考慮して行われる。第2実施形態において、すなわち、変換手段21は、複数のフレームのうち処理対象となっている現フレームの階調値について、現フレームにおける階調値および現フレームの1フレーム前の直前フレームにおける電気光学素子の光学状態に基づいて、変換を行う。より具体的には、記憶手段23は、階調値とサブフィールドコードとの組を、直前フレームの光学状態ごとに記録したテーブルを記憶している。変換手段21は、記憶手段23に記憶されているテーブルを参照して変換を行う。
【0049】
図12は、直前フレームの透過率が、現フレームの平均透過率に与える影響を例示する図である。縦軸は平均透過率を、横軸は直前フレームの透過率を、それぞれ示している。「直前フレームの透過率」とは、直前フレームの最後の瞬間(現フレームの直前の瞬間)における透過率を意味するものであって、直前フレームの平均透過率を意味するものではない。図12は、現フレームのサブフィールドコードを「001−1110100」に固定し、直前フレームの透過率を変化させた場合の、現フレームの平均透過率を示している。それ以外の条件は第1実施形態の図2で説明したものと同様である。直前フレームの透過率に応じて、現フレームの平均透過率が変化することがわかる。
【0050】
図13は、透過率の時間変化を示す図である。縦軸は現フレームの透過率を、横軸は時間を、それぞれ示している。直前フレームの透過率が、1.0、0.75、0.5、0.25、およびゼロの場合のそれぞれについて、透過率−時間曲線が示されている。直前フレームの透過率が1.0の場合、現フレームの第1サブフィールドおよび第2サブフィールドでゼロのデータを書き込んでも透過率がゼロ付近まで下がるにはミリ秒オーダーの時間がかかる。一方で、直前フレームの透過率がゼロの場合、第1サブフィールドでゼロのデータを書き込めば透過率はゼロのままである。この差が、平均透過率の差として視認される。
【0051】
例えば、現フレームの階調値が第118階調(8ビット)である場合において、直前フレームの透過率が0.75であるときは、サブフィールドコードとして「100−1110100」を用いればよい。同じサブフィールドコード「100−1110100」を用いても、直前フレームの透過率が1であった場合、現フレームの透過率は第120階調相当のものになってしまう。現フレームの階調値が第118階調である場合において、直前フレームの透過率が1であるときは、サブフィールドコードとして「000−1110100」を用いればよい。
【0052】
図14は、映像処理回路30の第2実施形態に係る構成を示す図である。映像処理回路30は、メモリー301と、変換部302と、フレームメモリー303と、制御部304と、フレームメモリー305とを有する。第1実施形態と共通の構成については説明を省略する。本実施形態において、メモリー301は、LUT3012を記憶している。変換部302は、LUT3012を参照して、階調値をサブフィールドコードに変換する。フレームメモリー305は、直前フレームの階調値を記憶するメモリーである。この例では、直前フレームの透過率を示す情報として、直前フレームの階調値が用いられる。
【0053】
本実施形態におけるプロジェクター2000の動作を、図10を参照して説明する。ステップS100において、映像処理回路30の変換部302は、映像信号Vid−inにより示される画像のうち対象画素の階調値を、サブフィールドコードに変換する。具体的には以下のとおりである。変換部302は、対象画素の直前フレームにおける階調値を、フレームメモリー305から読み出す。直前フレームの階調値を読み出すと、変換部302は、現フレームの階調値をフレームメモリー305に書き込む。このようにして、第kフレームの処理が開始する前の時点で、フレームメモリー305には第(k−1)フレームの階調値が記憶されている。変換部302は、直前フレームの階調値および現フレームの階調値に対応するサブフィールドコードを、メモリー301に記憶されているLUT3012から読み出す。
【0054】
図15は、LUT3012を例示する図である。LUT3012は、直前フレームの階調値および現フレームの階調値のそれぞれに対応するサブフィールドコードが記録された、2次元テーブルである。すなわち、現フレームの一の階調値に対応するサブフィールドコードは、直前フレームの階調値に応じて複数記録されている。この例で、直前フレームの階調値は、10段階に区分されている。例えば、直前フレームの階調値「255」の行は、直前フレームの階調値Pが229<P≦255である場合に相当する。同様に、直前フレームの階調値「229」の行は、直前フレームの階調値Pが203<P≦229である場合に相当する。
【0055】
再び図10を参照して説明する。例えば、映像信号Vid−inにより示される現フレームの階調値が「118」であり、かつ、直前フレームの階調値が「255」であった場合、変換部302は、LUT3012の中から、現フレームの階調値「255」および直前フレームの階調値「118」に対応するサブフィールドコードとして「000−1110100」を読み出す。変換部302は、読み出したサブフィールドコードを、フレームメモリー303のうち、対象画素の記憶領域に書き込む。
【0056】
ステップS110において、制御部304は、対象画素のサブフィールドコードに応じた信号を生成し、この信号をデータ信号Vxとして出力する。
【0057】
本実施形態によれば、視認期間のサブフィールド数がb個であっても、直前フレームの階調値を考慮して不視認期間のうちc個のサブフィールドのデータ信号を制御することにより、bビット(2b通り)より多階調の表現をすることができる。また、直前フレームの光学状態を考慮しない場合と比較して、より正確に階調を制御することができる。
【0058】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例のうち2つ以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
【0059】
遮断手段は、シャッター眼鏡に限定されない。本発明は、例えば、2次元映像を擬似インパルス表示する映像表示システムに用いられてもよい。この場合、遮断手段は、視認期間において点灯され、不視認期間において消灯される光源を有する。複数の電気光学素子は、この光源からの光を光学状態に応じて変調する。この映像表示システムにおいては、液晶テレビ等、直視型の表示装置が用いられる。この表示装置において、液晶パネルのバックライト(照明)が間欠的に消灯される(すなわちバックライトはパルス的に点灯する)。この場合、遮断手段は、バックライトの点灯および消灯を制御する装置である。この表示システムにおいて、バックライトが消灯している間は不視認期間である。視認期間のサブフィールドのみを使って階調表現しようとすると、バックライトを消灯しない場合と比較して、使えるサブフィールド数が減ってしまうが、上述の実施形態で説明した階調制御技術を用いれば、視認期間のサブフィールド数以上の階調表現が可能である。
【0060】
図16は、LUT3012の別の例を示す図である。この例において、LUT3012は、10ビットのサブフィールドコードに加え、4ビットの透過率識別子を含んでいる。透過率識別子は、透過率の範囲を示す。すなわち、LUT3012は、対応するサブフィールドコードに従って表示素子に電圧が印加された場合に、次のフレームの直前において、その表示素子が、その透過率識別子で示される範囲に属することを示している。LUT3012において、直前フレームの光学状態の区分の数(図15の例では10段階)は、液晶素子120の特性や、表示装置に要求される特性に応じて決定される。例えば図15のように直前フレームの光学状態を10段階で区分するのであれば、4ビットの透過率識別子を用いればよい。この例において、フレームメモリー305に書き込まれるのは階調値ではなく、透過率識別子である。変換部302は、対象画素の直前フレームにおける透過率識別子を、フレームメモリー305から読み出す。変換部302は、直前フレームの透過率識別子および現フレームの階調値に対応するサブフィールドコードおよび透過率識別子を、メモリー301に記憶されているLUT3012から読み出す。変換部302は、読み出した透過率識別子をフレームメモリー305に書き込む。このようにして、第kフレームの処理が開始する前の時点で、フレームメモリー305には第(k−1)フレームの透過率識別子が記憶される。
【0061】
実施形態において、複数のサブフィールドが同一の時間長を有する例を説明した。しかし、複数のサブフィールドは、同一の時間長を有していなくてもよい。すなわち、1フレームにおける各サブフィールドの時間長は、所定の規則によって重み付けされ、それぞれ異なっていてもよい。この場合において、電気光学素子の応答時間は、1フレームにおける第1サブフィールド(1フレームにおける最初のサブフィールド)よりも長い。
【0062】
本発明に係る電子機器はプロジェクターに限定されない。テレビジョン、ビューファインダー型・モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、タッチパネルを備えた機器等に本発明が用いられてもよい。
【0063】
変換手段21は、記憶手段23に記憶されたテーブルによらずに、階調値をサブフィールドコードに変換してもよい。この場合は、変換手段21が、テーブルを参照せずに階調値をサブフィールドコードに変換するようにプログラムされている。
【0064】
電気光学装置2100の構成は、図6、図9および図14で例示したものに限定されない。図5の機能を実現できるものであれば、電気光学装置2100は、どのような構成を有していてもよい。例えば、電気光学装置2100に用いられる電気光学素子は、液晶素子120に限定されない。液晶素子120に代わり、有機EL(Electro-Luminescence)素子等、他の電気光学素子が用いられてもよい。
実施形態で説明したパラメーター(例えば、サブフィールド数やフレーム速度、画素数など)および信号の極性やレベルはあくまで例示であり、本発明はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0065】
10…制御回路、20…走査制御回路、21…変換手段、22…駆動手段、23…記憶手段、30…映像処理回路、100…液晶パネル、101…表示領域、105…液晶層、108…コモン電極、111…画素、112…走査線、114…データ線、115…容量線、116…TFT、118…画素電極、120…液晶素子、125…容量素子、130…走査線駆動回路、140…データ線駆動回路、210…ライトバルブ、220…ランプユニット、230…光学系、240…ダイクロイックプリズム、250…投射レンズ、301…メモリー、302…変換部、303…フレームメモリー、304…制御部、305…フレームメモリー、2000…プロジェクター、2100…電気光学装置、2301…ダイクロイックミラー、2302…ミラー、2303…第1マルチレンズ、2304…第2マルチレンズ、2305…偏光変換素子、2306…重畳レンズ、2307…レンズ、2308…集光レンズ、3000…スクリーン、3011…LUT、3012…LUT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ決められた不視認期間において視界を遮断する遮断手段を介して視認され、各々が供給される信号に応じた光学状態になる複数の電気光学素子と、
複数のフレームに区分された映像を示す映像信号に基づいて、a個のサブフィールドから構成される前記フレーム毎に入力された階調値を、前記不視認期間外の視認期間に含まれるb個(2≦b≦a)のサブフィールドおよび前記不視認期間に含まれるc個(1≦c≦b)のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードに変換をする変換手段と、
前記変換手段により変換されたサブフィールドコードに基づいて前記複数の電気光学素子の各々の光学状態を制御する前記信号を供給することによって前記複数の電気光学素子を駆動する駆動手段と
を有する電気光学装置。
【請求項2】
前記電気光学素子の応答時間が、前記a個のサブフィールドのうち、前記フレームにおける最初のサブフィールドよりも長い
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記変換手段は、前記複数のフレームのうち処理対象となっている現フレームの階調値について、前記現フレームにおける階調値および前記現フレームの1フレーム前の直前フレームにおける前記電気光学素子の光学状態に基づいて、前記変換を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
階調値と前記サブフィールドコードとの組を、前記直前フレームの光学状態ごとに記録したテーブルを記憶した記憶手段を有し、
前記変換手段は、前記記憶手段に記憶されている前記テーブルを参照して前記変換を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記テーブルは、前記サブフィールドコードの各々について、当該階調値に応じた光学状態を示す識別子を含み、
前記記憶手段は、前記直前フレームにおける前記識別子を記憶し、
前記変換手段は、前記記憶手段に記憶されている前記識別子および前記テーブルに基づいて前記変換を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記映像信号が、時分割で交互に切り替わる左目用画像および右目用画像を含む3次元映像を示す
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記遮断手段は、前記視認期間において点灯され、前記不視認期間において消灯される光源を有し、
前記複数の電気光学素子は、前記光源からの光を前記光学状態に応じて変調する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の電気光学装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−88473(P2013−88473A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226003(P2011−226003)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】