電気光学装置の製造方法
【課題】描画不良の発生を低減し、且つ描画タクト時間の大幅な短縮を図ることができるようにする。
【解決手段】複数の基板形成領域20を有する第1大型基板120に対して、少なくとも各基板形成領域20にシール材52を描画するシール材描画工程と、第1大型基板120に対しシール材52を介して第2大型基板110を貼り合わせる大型基板貼り合わせ工程とを備え、シール材描画工程では、予め設定した描画パターンに従い、互いに隣接して配設されている複数の基板形成領域20に対し、往路において基板形成領域20の一部にシール材52を連続描画し、往路の終端に連続する折り返し点RPを経て復路へ移動し、復路において基板形成領域20の残部に対してシール材52を連続描画する。
【解決手段】複数の基板形成領域20を有する第1大型基板120に対して、少なくとも各基板形成領域20にシール材52を描画するシール材描画工程と、第1大型基板120に対しシール材52を介して第2大型基板110を貼り合わせる大型基板貼り合わせ工程とを備え、シール材描画工程では、予め設定した描画パターンに従い、互いに隣接して配設されている複数の基板形成領域20に対し、往路において基板形成領域20の一部にシール材52を連続描画し、往路の終端に連続する折り返し点RPを経て復路へ移動し、復路において基板形成領域20の残部に対してシール材52を連続描画する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基板形成領域を有する第1大型基板にシール材を連続描画する電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶装置は、対向する一対の基板がそれぞれの基板の周縁部においてシール材を介して貼着され、これら一対の基板とシール材とによって囲まれた空間に液晶が封入された構成を有している。液晶装置を製造する方法としては、2枚の基板をシール材を介して貼り合わせた後、両基板とシール材との間に形成された空隙に、真空注入法などの手法を用いて液晶を注入する液晶注入方式が知られている。又、最近では、少なくとも一方の基板上に液晶を滴下した後、その液晶を挟持するように他方の基板をシール材を介して貼り合わせる液晶滴下注入方式(ODF)も採用されている。
【0003】
液晶滴下方式では、一対の基板を貼り合わせる前に液晶を滴下するので、シール材に液晶注入口を形成する必要がない。従って、大型基板を用いて複数の基板形成領域を一括して製造する前工程においては、大型基板どうしを貼り合わせることができる。
【0004】
図11に大型基板に形成される各基板形成領域121を1行のみ拡大して示す。シール材122は基板形成領域121毎に、ディスペンサを用いて枠状に描画され、描画開始点と描画終了点がつなぎ目122aで閉塞される。
【0005】
このつなぎ目122aは確実に閉塞する必要があり、このつなぎ目122aにシール材の塗布不足が発生すると液晶漏れが発生する。一方、このつなぎ目122aにシール材が過剰に塗布されると、表示領域にシール材が入り込み表示不良を招いてしまう。そのため、シール材を描画する際に、特に描画開始点と描画終了点とのつなぎ目122aにおいては描画速度を調整しながら行う必要があり、煩雑な作業が要求されるばかりでなく、描画タクト時間が増加してしまう問題がある。
【0006】
又、ディスペンサに貯留されているシール材は、空気等の加圧によりノズルから定量吐出される。ノズルからシール材が連続吐出されている状態では、加圧空気がシール材と共に吐出されるため、シール材は常にほぼ定量的に吐出される。しかし、シール材の吐出が一端遮断されると、ディスペンサ内に空気の気泡が滞留され、シール材の吐出が再開される際に、この気泡がノズル内を閉塞し、一時的に吐出遅れが生じる。
【0007】
この対策として、例えば特許文献1(特開2006−181418号公報)には、大型基板上に形成されている複数の基板形成領域のうち、行或いは列方向に配列されている基板形成領域に対し、シール材の一部となる第1パターンと、このシール材の残部となる第2パターンとを連続して一括形成する技術が開示されている。
【0008】
この技術によれば、基板形成領域毎にシール材を形成する必要がないので、つなぎ目を基板形成領域毎に形成する必要が無く、描画条件出しに要する段取り時間も簡素化されるので、作業効率が向上する。更に、シール材の連続吐出距離が長くなり、その分シール材の吐出を遮断する回数が削減されるため、吐出不良の発生を低減させることができる。
【特許文献1】特開2006−181418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、1つの行或いは列を第1パターンと第2パターンとの2つのパターンでシール材の描画を行うため、第1パターンから第2パターンへ切換える際に、シール材の吐出を一端遮断する必要がある。その結果、第2パターンの吐出を開始する際の吐出遅れにより、描画不良発生する。又、第1パターンと第2パターンとを個別に描画するため、描画タクト時間がかかる問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、描画不良の発生を低減し、且つ描画タクト時間の大幅な短縮を図ることのできる電気光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明による第1の電気光学装置の製造方法は、複数の基板形成領域を有する第1大型基板に対して、少なくとも該各基板形成領域にシール材を描画するシール材描画工程と、前記第1大型基板に対し前記シール材を介して第2大型基板を貼り合わせる大型基板貼り合わせ工程とを備え、前記シール材描画工程では、予め設定されている描画パターンに従い、互いに隣接して配設されている複数の前記基板形成領域に対し、往路において前記基板形成領域の一部に前記シール材を連続描画し、該往路の終端に連続する折り返し点を経て復路へ移動し、該復路において該基板形成領域の残部に対してシール材を連続描画することを特徴とする。
【0012】
このような構成では、複数の基板形成領域を有する第1大型基板に対してシール材の描画を往路と復路とで連続形成するようにしたので、描画不良の発生が低減され、且つ描画タクト時間の大幅な短縮を図ることができる。
【0013】
第2の電気光学装置の製造方法は、第1の電気光学装置の製造方法において、前記シール材描画工程では、複数の前記基板形成領域の第1の辺に前記シール材の描画開始点と描画終了点とが位置しており、前記折り返し点が、前記第1の辺と対向する第2の辺に位置することを特徴とする。
【0014】
このような構成では、複数の基板形成領域の第1の辺にシール材の描画開始点と描画終了点とを設定し、折り返し点を第1の辺と対向する第2の辺に位置させるようにしたので、シール材の描画を往路から復路へ容易に連続形成させることができる。
【0015】
第3の電気光学装置の製造方法は、第1或いは第2のの電気光学装置の製造方法において、前記シール材描画工程では、前記シール材の描画開始点と描画終了点とが近接された位置に設けられていることを特徴とする。
【0016】
このような構成では、描画開始点と描画終了点とが近接された位置に設けられているので、次の描画への移動が容易となり、描画タクト時間のより一層の短縮化を実現することができる。
【0017】
第4の電気光学装置の製造方法は、第1〜3の電気光学装置の製造方法において、前記シール描画工程では、コーナ部の描画速度を直線部の描画速度よりも遅く設定されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成では、コーナ部の描画速度を直線部の描画速度よりも遅くしたので、コーナ部でシール材が途切れにくくなり、製品の品質を向上させることができる。
【0019】
第5の電気光学装置の製造方法は、第1〜4の電気光学装置の製造方法において、前記シール描画工程では、隣接する前記基板形成領域間に対するシール材の間隔が狭く設定されていることを特徴とする。
【0020】
このような構成では、隣接する前記基板形成領域間に対するシール材の描画間隔を狭く設定したので、2枚の大型基板が貼り合わされてシール材が潰されても、このシール材が基板形成領域に入り込むことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1〜図7に本発明の第1実施形態を示す。図1は電気光学装置である液晶装置をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図、図2はTFT基板と対向基板とを貼り合わせて液晶を封入する組立工程終了後の液晶装置であって、図1のH-H'断面図である。
【0023】
先ず、本実施形態で採用する液晶装置の全体構成について説明する。図1、図2に示すように、液晶装置は、TFT基板10と、これに対向配置される対向基板20とを有し、両基板10,20の対向面間の画像表示領域10aの周囲に設けたシール領域が、シール材の塗布により形成された矩形枠状のシール材52を介して貼り合わされている。更に、この両基板10,20の対向面間とシール材52とで囲まれた領域内に電気光学物質の一例である液晶50が封入されている。シール材52は、上下に対称形状をなすコの字状の上部シール部53と下部シール部54とからなり、両シール部53,54が接合されて、1つのシール材52が形成される。
【0024】
両シール部53,54の両端に形成されている連結部55は枠の外側に向かって突出されている。この両連結部55は、後述する前工程において1枚の第1大型基板120上に上部シール部53に形成される上部連結部55aと下部シール部54に形成される下部連結部55bとが、両大型基板110,120を貼り合わせた際に潰されて形成される。
【0025】
本実施形態では、シール材52を連続した描画パターンPTで形成することで、シール材52の描画タクト時間の短縮化を実現している。描画パターンPTは、上部シール部53と下部シール部54とを有し、両シール部53,54が上下方向(Y方向)に対向配列されている。更に、この両シール部53,54が行方向(X方向)に連結部55を介して複数配列されている。大型基板120,110は互いに貼り合わされた後、連結部55の中央部で液晶装置単位に分割されるため、切り出された液晶装置には連結部55が残される。
【0026】
又、対向基板20には、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aを規定する遮光性の周辺遮光膜51が設けられている。又、画像表示領域10aの周辺に広がる周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側部分に、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFT基板10の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。更に、TFT基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間を電気的に接続するための複数の配線105が設けられている。尚、走査線駆動回路104、及び配線105は、シール材52の内側の周辺遮光膜51に対向する位置に配設されている。
【0027】
更に、TFT基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に配向膜16が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、最上層部分に配向膜22が形成されており、これら一対の配向膜16,22間で、所定の配向状態が設定される。
【0028】
次に、液晶装置の製造方法、特に、前工程で実行されるシール材描画工程について説明する。ここでは、液晶装置の製造方法として、大型基板を用いて複数の液晶装置を一括して製造する「多面取り」と称する方法が採用されている。すなわち、前工程において、第2大型基板110と第1大型基板120とに、TFT基板10と対向基板20となる基板形成領域が所定に位置合わせされた状態で、行方向(X方向)、列方向(Y方向)にマトリクス状に形成される。尚、以下においては、便宜的に、第2大型基板110に形成されているTFT基板10となるTFT基板形成領域を符号10で示し、第1大型基板120に形成されている対向基板20となる対向基板形成領域を符号20で示す。
【0029】
そして、シール材描画工程では、複数の対向基板形成領域20が形成されている第1大型基板120上に、ディスペンサ30を用いてシール材52を形成する。図4に示すように、第1大型基板120に形成されるシール材52は、行方向(X方向)に配設されている複数の対向基板形成領域20に対し、一括して連続的(いわゆる一筆書き状)に描画される。
【0030】
図5は、図4に示す第1大型基板120の最下段の行に形成されている複数の対向基板形成領域20に対するシール材52の描画態様が示されている。尚、他の行に形成されている複数の対向基板形成領域20に対するシール材52の描画も同じ態様で行われるため説明を省略する。
【0031】
本実施形態では、第1大型基板120の各行方向(X方向)に形成されている複数の対向基板形成領域20に形成するシール材52を連続した描画パターンPTで形成する。すなわち、先ず、往路において、各対向基板形成領域20の上部シール部53を、上部連結部55aを介して連続描画し、次いで、復路において、各対向基板形成領域20の下部シール部54を、下部連結部55bを介して連続描画する。
【0032】
又、第1大型基板120の各行方向(X方向)に形成されている対向基板形成領域20の内の描画開始点側(本実施形態では左端)に位置する対向基板形成領域20に形成されるシール材52の列方向(Y方向)の中央左端に描画開始点SPが設定されている。この描画開始点SPはディスペンサ30のノズルから吐出されるシール材の吐出遅れを考慮した長さを有している。又、この描画開始点SPと平行に下部シール部54に連続する描画終了点EPが設定されている。尚、この描画開始点SPと描画終了点EPとに連続する辺(図5の左端の辺)が、本発明の第1の辺に相当する。更に、第1大型基板120の各行方向(X方向)に形成されている対向基板形成領域20の内の折り返し側(本実施形態では右端)に位置する対向基板形成領域20の終端側に折り返し点RPが設定されている。尚、この折り返し点RPに連続する辺(図5の右端の辺)が、本発明の、第1の辺に対向する第2の辺に相当する。
【0033】
そして、ディスペンサ30のノズルを描画開始点SPに臨ませた後、シール材の描画を開始する。その際、シール材の吐出遅れが発生するが、この吐出遅れは描画開始点SPを通過する際に解消され、対向基板形成領域20の描画開始点SP側の上部連結部55aに到達したときは、ディスペンサ30のノズルからシール材が定量吐出されている。
【0034】
ディスペンサ30のノズルから吐出されるシール材により、往路において、先ず、最初の対向基板形成領域20の上部シール部53を形成する。上部シール部53の形成に際しては、ディスペンサ30を行方向(+X方向)へ相対移動させ、このディスペンサ30のノズルから吐出されるシール材により描画開始点SPに連続する上部連結部55aを形成する。次いで、ディスペンサ30を斜め上方へ相対移動させて左側傾斜部56aを形成する。その後、ディスペンサ30を列方向(+Y方向)へ相対移動させて左側部57aを形成する。
【0035】
そして、上端付近でディスペンサ30を斜め上方(約45°)へ相対移動させて、面取り部58aを形成する。
【0036】
その後、ディスペンサ30を行方向(+X方向)へ相対移動させて上辺部59aを形成する。そして、ディスペンサ30が右側部60a付近に到達したとき、このディスペンサ30を斜め下方(約45°)へ相対移動させて、面取り部61aを形成する。次いで、ディスペンサ30を列方向(−Y方向)へ下降させて、左側部57aに対峙する右側部60aを形成する。
【0037】
その後、ディスペンサ30を斜め下方へ相対移動させて、左側傾斜部56aに対峙する右側傾斜部62aを形成する。そして、シール材52の列方向(Y方向)の中央部付近で、ディスペンサ30を行方向(+X方向)へ相対移動させて上部連結部55aを形成する。そして、この上部連結部55aを介して、ディスペンサ30を右隣の対向基板形成領域20へ相対移動させ、この対向基板形成領域20に、上部シール部53を、ディスペンサ30の相対移動により連続形成する(図6(a)参照)。
【0038】
この動作を繰り返すことで、右隣の対向基板形成領域20に上部シール部53を連続形成する。そして、右端の対向基板形成領域20に対して上部シール部53の形成が完了すると、図7に示すように、上部連結部55aをそのまま延長させて折り返し点RPの上辺部RP1を形成し、次いで、ディスペンサ30を列方向(−Y方向)へ下降させて、側部RP2を形成し、その後、ディスペンサ30を行方向(−X方向)へ相対移動させて、下辺部RP3を形成し、そして、そこからディスペンサ30を斜め上方へ相対移動させて斜辺部RP4を形成する。
【0039】
その後、ディスペンサ30を行方向(−X方向)へ相対移動させて、下部シール部54の下部連結部55bを、右端の対向基板形成領域20に形成する。この下部連結部55bから復路となる。この復路では、先ず、右端の対向基板形成領域20の下部連結部55bに続けて、ディスペンサ30を斜め下方へ相対移動させて右側傾斜部62bを形成する。次いで、ディスペンサ30を列方向(−Y方向)へ相対移動させて右側部60bを形成する。そして、下端付近でディスペンサ30を斜め下方(約45°)へ相対移動させて、面取り部61bを形成する。
【0040】
その後、ディスペンサ30を行方向(−X方向)へ相対移動させて下辺部59bを形成する。そして、ディスペンサ30が左側部57b付近に到達したとき、このディスペンサ30を斜め上方(約45°)へ相対移動させて、面取り部58bを形成する。次いで、ディスペンサ30を列方向(+Y方向)へ上昇させて、右側部60bに対峙する左側部57bを形成する。
【0041】
次いで、ディスペンサ30を斜め上方へ相対移動させて、右側傾斜部62bに対峙する左側傾斜部56bを形成する。そして、シール材52の列方向(Y方向)の中央部付近で、ディスペンサ30を行方向(−X方向)へ相対移動させて、上部シール部53の上部連結部55aに近接する位置に下部連結部55bを形成する。
【0042】
その後、この下部連結部55bを介して、ディスペンサ30を左隣の対向基板形成領域20へ相対移動させ、この対向基板形成領域20に、下部シール部54を、ディスペンサ30を上述と同様に動作させて連続形成する(図6(a)参照)。
【0043】
この動作を繰り返すことで、左隣の対向基板形成領域20に下部シール部54を連続形成する。そして、左端の対向基板形成領域20に対して下部シール部54の形成が完了すると、下部連結部55bをそのまま延長させて描画終了点EPを形成し、ディスペンサ30のノズルからのシール材の描画を停止させる。
【0044】
次いで、第1大型基板120の次の行に形成されている複数の対向基板形成領域20に対して、上述と同様の手順によりシール材52を、連続した描画パターンPTにより形成する。そして、全ての行に形成されている複数の対向基板形成領域20に対してシール材52の形成が完了した後、各シール材52で囲まれた対向基板形成領域20に液晶50を滴下し、図3に示すように、減圧状態で第1大型基板120と、複数のTFT基板形成領域10が形成されている第2大型基板110とを貼り合わせる(大型基板貼り合わせ工程)。
【0045】
大型基板110,120を貼り合わせると、図6(b)に示すように、描画された描画パターンPTが潰されて幅方向に広がり、往路で形成した上部連結部55aと復路で形成した下部連結部55bとが接合して、閉口されたシール材52が形成される。又、このとき、上部連結部55a,55bに連続する領域、すなわち描画方向が反転する狭い描画間隔の領域を傾斜部56a,56b,62a,62bとしたので、両大型基板110,120を貼り合わせた際に、この各傾斜部56a,56b,62a,62bにより表示領域までの距離を離すことができ、上部連結部55a,55bの両端のコーナ付近にシール材が比較的多く盛りつけられても、シール材の表示領域内への広がりが抑制されて、シール材の表示領域内への進入を防止することができる。更に、最後の対向基板形成領域20に対するシール材の描画では、往路から復路に切りかわる領域には、対向基板形成領域20から外方へ延出する折り返し点RPを設けたので、両大型基板110,120を貼り合わせた際に、この折り返し点RPのシール材が潰されて広がっても、表示領域内にシール材が入り込むことがない。
【0046】
又、描画パターンPTが往路から復路に掛けて連続形成されるので、この描画パターンPTの描画に際して、描画タクト時間の短縮が実現でき、描画条件出しに要する段取り時間もほぼ一定となり、作業効率の大幅な向上を実現することができる。又、一つの行の描画パターンPTの描画では、描画開始点SPと描画終了点EPとが一カ所のみとなるためシール材に混入する気泡等の影響によるシール材の吐出不良が発生し難くなり、描画不良が低減されて、製品の歩留まり率が向上する。
【0047】
そして、両大型基板110,120を所定に貼り合わせた後、シール材52を硬化させる。その後、貼り合わされている大型基板110,120を、液晶装置単位毎に切り出す(基板切断工程)。
【0048】
尚、本実施形態では、複数の対向基板形成領域20が形成されている第1大型基板120側に描画パターンPTを描画したが、複数のTFT基板形成領域10が形成されている第2大型基板110側に描画パターンPTを描画するようにしても良い。
【0049】
[第2実施形態]
図8に本発明の第2実施形態による描画パターンの要部拡大図を示す。本実施形態では、描画パターンPTの描画に際し、領域毎に相対移動速度を可変させるようにしたものである。ディスペンサ30のノズルからはシール材が定量吐出されているが、特にコーナ部では、直線部と同様の相対移動速度で描画を行うとシール材の断面積が減少して、シール切れが生じやすくなる。
【0050】
従って、本実施形態では、シール材の途切れやすい領域の相対移動速度を遅く、途切れにくい領域の相対移動速度を速くすることで、描画パターンPT全体の塗布量をほぼ均一となるようにしたものである。
【0051】
図8に示すように、描画の相対移動速度をA>B>C>Dとし、上部シール部53の描画パターンPTでは、上辺部59aを面取り部61aにさしかかる手前まで、最も速い速度Aで描画し、そこから面取り部58bが終了するまで速度Bで描画し、右側部60aを再び速度Aで右側傾斜部62aにさしかかる手前まで描画する。そして、そこから右側傾斜部62aを速度Bで描画し、上部連結部55aにさしかかるコーナ部を、最も遅い速度Dで描画する。
【0052】
次いで、上部連結部55aを速度Bで描画し、右隣の対向基板形成領域20の傾斜部56aに連続するコーナ部を最も遅い速度Dで描画し、次いで傾斜部56aから左側部57aの途中までを速度Cで描画し、そこから左側部57aの面取り部58aにさしかかる手前までを、最も速い速度Aで描画し、そこから面取り部58aを速度Bで描画し、上辺部59aを最速の速度Aで描画する。
【0053】
一方、下部シール部54の描画パターンPTでは、下辺部59bを面取り部58bにさしかかる手前まで、最も速い速度Aで描画し、そこから面取り部58bが終了するまで速度Bで描画し、左側部57bを再び速度Aで傾斜部56bにさしかかる手前まで描画する。そして、そこから傾斜部56bを速度Bで描画し、下部連結部55bにさしかかるコーナ部を、最も遅い速度Dで描画する。
【0054】
次いで、下部連結部55bを速度Bで描画し、左隣の対向基板形成領域20の傾斜部62bに連続するコーナ部を最も遅い速度Dで描画し、次いで傾斜部62bから右側部60bの途中までを速度Cで描画し、そこから右側部60bの面取り部61bにさしかかる手前までを、最も速い速度Aで描画し、そこから面取り部61bを速度Bで描画し、下辺部59bを最速の速度Aで描画する。
【0055】
このように、本実施形態では、各領域の相対移動速度を、シール材の塗布状況に応じて可変させるようにしたので、シール材の塗布量が均一となり、安定した描画を行うことができる。
【0056】
[第3実施形態]
図9、図10に本発明の第3実施形態を示す。図9に示すように、ディスペンサ30を第1大型基板120に沿って移動させるに際しては、レーザ等を用いた非接触式変位計31で第1大型基板120とディスペンサ30のノズル端との距離を計測し、この距離を一定に保持するように制御しながら相対移動させている。
【0057】
しかし、相対移動方向が急激に変化する領域では、進行方向が切換えられる都度に振動が発生する。この振動により非接触式変位計31の計測値の誤差が大きくなり、計測精度が低下する。
【0058】
従って、本実施形態では、図10に示すように、上辺部59aと下辺部59b以外の、進行方向が大きく切りかわる領域では、非接触式変位計31から信号を読込まず、第1大型基板120とディスペンサ30のノズル端と間の距離を固定した状態で描画を行うようにしたものである。その結果、進行方向が急激に切りかわる領域において振動が発生しても、安定した描画を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明における電気光学装置は、TFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置以外に、パッシブマトリックス型の液晶装置、TFD(薄型ダイオード)をスイッチング素子として備えた液晶装置であっても良く、更に、液晶装置に限らず、エレクトロルミネッセンス装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、電子放出素子を用いた装置(Field Emission Display、及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)、更には、DLP(Digital Light Processing)やDMD(Digital Micromirror Device)等の各種の電気光学装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態による電気光学装置である液晶装置をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図
【図2】同、TFT基板と対向基板とを貼り合わせて液晶を封入する組立工程終了後の液晶装置であって、図1のH-H'断面図
【図3】同、大型基板どうしを貼り合わせる状態を示す斜視図
【図4】同、大型基板の平面図
【図5】同、図4の部分拡大図
【図6】同、(a)は貼り合わせ前の描画パターンを示す平面図、(b)は貼り合わせ後の描画パターンの状態を示す平面図
【図7】同、図5のVII部拡大図
【図8】第2実施形態による描画パターンの要部拡大図
【図9】第3実施形態による大型基板にシール材を描画する状態の説明図
【図10】同、描画パターンの説明図
【図11】従来の描画パターンの説明図
【符号の説明】
【0061】
10…TFT基板(基板形成領域)、10a…画像表示領域、20…対向基板(対向基板形成領域)、30…ディスペンサ、31…非接触式変位計、52…シール材、53…上部シール部、54…下部シール部、55…連結部、55a…上部連結部、55b…下部連結部、56a,…56b…左側傾斜部、57a,57b…左側部、58a,58b,61a,61b…面取り部、59a…上辺部、59b…下辺部、60a,60b…右側部、62a,62b…右側傾斜部、110…第2大型基板、120…第1大型基板、121…基板形成領域、A〜D…描画速度、EP…描画終了点、RP…折り返し点、PT…描画パターン、SP…描画開始点
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基板形成領域を有する第1大型基板にシール材を連続描画する電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶装置は、対向する一対の基板がそれぞれの基板の周縁部においてシール材を介して貼着され、これら一対の基板とシール材とによって囲まれた空間に液晶が封入された構成を有している。液晶装置を製造する方法としては、2枚の基板をシール材を介して貼り合わせた後、両基板とシール材との間に形成された空隙に、真空注入法などの手法を用いて液晶を注入する液晶注入方式が知られている。又、最近では、少なくとも一方の基板上に液晶を滴下した後、その液晶を挟持するように他方の基板をシール材を介して貼り合わせる液晶滴下注入方式(ODF)も採用されている。
【0003】
液晶滴下方式では、一対の基板を貼り合わせる前に液晶を滴下するので、シール材に液晶注入口を形成する必要がない。従って、大型基板を用いて複数の基板形成領域を一括して製造する前工程においては、大型基板どうしを貼り合わせることができる。
【0004】
図11に大型基板に形成される各基板形成領域121を1行のみ拡大して示す。シール材122は基板形成領域121毎に、ディスペンサを用いて枠状に描画され、描画開始点と描画終了点がつなぎ目122aで閉塞される。
【0005】
このつなぎ目122aは確実に閉塞する必要があり、このつなぎ目122aにシール材の塗布不足が発生すると液晶漏れが発生する。一方、このつなぎ目122aにシール材が過剰に塗布されると、表示領域にシール材が入り込み表示不良を招いてしまう。そのため、シール材を描画する際に、特に描画開始点と描画終了点とのつなぎ目122aにおいては描画速度を調整しながら行う必要があり、煩雑な作業が要求されるばかりでなく、描画タクト時間が増加してしまう問題がある。
【0006】
又、ディスペンサに貯留されているシール材は、空気等の加圧によりノズルから定量吐出される。ノズルからシール材が連続吐出されている状態では、加圧空気がシール材と共に吐出されるため、シール材は常にほぼ定量的に吐出される。しかし、シール材の吐出が一端遮断されると、ディスペンサ内に空気の気泡が滞留され、シール材の吐出が再開される際に、この気泡がノズル内を閉塞し、一時的に吐出遅れが生じる。
【0007】
この対策として、例えば特許文献1(特開2006−181418号公報)には、大型基板上に形成されている複数の基板形成領域のうち、行或いは列方向に配列されている基板形成領域に対し、シール材の一部となる第1パターンと、このシール材の残部となる第2パターンとを連続して一括形成する技術が開示されている。
【0008】
この技術によれば、基板形成領域毎にシール材を形成する必要がないので、つなぎ目を基板形成領域毎に形成する必要が無く、描画条件出しに要する段取り時間も簡素化されるので、作業効率が向上する。更に、シール材の連続吐出距離が長くなり、その分シール材の吐出を遮断する回数が削減されるため、吐出不良の発生を低減させることができる。
【特許文献1】特開2006−181418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、1つの行或いは列を第1パターンと第2パターンとの2つのパターンでシール材の描画を行うため、第1パターンから第2パターンへ切換える際に、シール材の吐出を一端遮断する必要がある。その結果、第2パターンの吐出を開始する際の吐出遅れにより、描画不良発生する。又、第1パターンと第2パターンとを個別に描画するため、描画タクト時間がかかる問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、描画不良の発生を低減し、且つ描画タクト時間の大幅な短縮を図ることのできる電気光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明による第1の電気光学装置の製造方法は、複数の基板形成領域を有する第1大型基板に対して、少なくとも該各基板形成領域にシール材を描画するシール材描画工程と、前記第1大型基板に対し前記シール材を介して第2大型基板を貼り合わせる大型基板貼り合わせ工程とを備え、前記シール材描画工程では、予め設定されている描画パターンに従い、互いに隣接して配設されている複数の前記基板形成領域に対し、往路において前記基板形成領域の一部に前記シール材を連続描画し、該往路の終端に連続する折り返し点を経て復路へ移動し、該復路において該基板形成領域の残部に対してシール材を連続描画することを特徴とする。
【0012】
このような構成では、複数の基板形成領域を有する第1大型基板に対してシール材の描画を往路と復路とで連続形成するようにしたので、描画不良の発生が低減され、且つ描画タクト時間の大幅な短縮を図ることができる。
【0013】
第2の電気光学装置の製造方法は、第1の電気光学装置の製造方法において、前記シール材描画工程では、複数の前記基板形成領域の第1の辺に前記シール材の描画開始点と描画終了点とが位置しており、前記折り返し点が、前記第1の辺と対向する第2の辺に位置することを特徴とする。
【0014】
このような構成では、複数の基板形成領域の第1の辺にシール材の描画開始点と描画終了点とを設定し、折り返し点を第1の辺と対向する第2の辺に位置させるようにしたので、シール材の描画を往路から復路へ容易に連続形成させることができる。
【0015】
第3の電気光学装置の製造方法は、第1或いは第2のの電気光学装置の製造方法において、前記シール材描画工程では、前記シール材の描画開始点と描画終了点とが近接された位置に設けられていることを特徴とする。
【0016】
このような構成では、描画開始点と描画終了点とが近接された位置に設けられているので、次の描画への移動が容易となり、描画タクト時間のより一層の短縮化を実現することができる。
【0017】
第4の電気光学装置の製造方法は、第1〜3の電気光学装置の製造方法において、前記シール描画工程では、コーナ部の描画速度を直線部の描画速度よりも遅く設定されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成では、コーナ部の描画速度を直線部の描画速度よりも遅くしたので、コーナ部でシール材が途切れにくくなり、製品の品質を向上させることができる。
【0019】
第5の電気光学装置の製造方法は、第1〜4の電気光学装置の製造方法において、前記シール描画工程では、隣接する前記基板形成領域間に対するシール材の間隔が狭く設定されていることを特徴とする。
【0020】
このような構成では、隣接する前記基板形成領域間に対するシール材の描画間隔を狭く設定したので、2枚の大型基板が貼り合わされてシール材が潰されても、このシール材が基板形成領域に入り込むことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1〜図7に本発明の第1実施形態を示す。図1は電気光学装置である液晶装置をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図、図2はTFT基板と対向基板とを貼り合わせて液晶を封入する組立工程終了後の液晶装置であって、図1のH-H'断面図である。
【0023】
先ず、本実施形態で採用する液晶装置の全体構成について説明する。図1、図2に示すように、液晶装置は、TFT基板10と、これに対向配置される対向基板20とを有し、両基板10,20の対向面間の画像表示領域10aの周囲に設けたシール領域が、シール材の塗布により形成された矩形枠状のシール材52を介して貼り合わされている。更に、この両基板10,20の対向面間とシール材52とで囲まれた領域内に電気光学物質の一例である液晶50が封入されている。シール材52は、上下に対称形状をなすコの字状の上部シール部53と下部シール部54とからなり、両シール部53,54が接合されて、1つのシール材52が形成される。
【0024】
両シール部53,54の両端に形成されている連結部55は枠の外側に向かって突出されている。この両連結部55は、後述する前工程において1枚の第1大型基板120上に上部シール部53に形成される上部連結部55aと下部シール部54に形成される下部連結部55bとが、両大型基板110,120を貼り合わせた際に潰されて形成される。
【0025】
本実施形態では、シール材52を連続した描画パターンPTで形成することで、シール材52の描画タクト時間の短縮化を実現している。描画パターンPTは、上部シール部53と下部シール部54とを有し、両シール部53,54が上下方向(Y方向)に対向配列されている。更に、この両シール部53,54が行方向(X方向)に連結部55を介して複数配列されている。大型基板120,110は互いに貼り合わされた後、連結部55の中央部で液晶装置単位に分割されるため、切り出された液晶装置には連結部55が残される。
【0026】
又、対向基板20には、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aを規定する遮光性の周辺遮光膜51が設けられている。又、画像表示領域10aの周辺に広がる周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側部分に、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFT基板10の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。更に、TFT基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間を電気的に接続するための複数の配線105が設けられている。尚、走査線駆動回路104、及び配線105は、シール材52の内側の周辺遮光膜51に対向する位置に配設されている。
【0027】
更に、TFT基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に配向膜16が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、最上層部分に配向膜22が形成されており、これら一対の配向膜16,22間で、所定の配向状態が設定される。
【0028】
次に、液晶装置の製造方法、特に、前工程で実行されるシール材描画工程について説明する。ここでは、液晶装置の製造方法として、大型基板を用いて複数の液晶装置を一括して製造する「多面取り」と称する方法が採用されている。すなわち、前工程において、第2大型基板110と第1大型基板120とに、TFT基板10と対向基板20となる基板形成領域が所定に位置合わせされた状態で、行方向(X方向)、列方向(Y方向)にマトリクス状に形成される。尚、以下においては、便宜的に、第2大型基板110に形成されているTFT基板10となるTFT基板形成領域を符号10で示し、第1大型基板120に形成されている対向基板20となる対向基板形成領域を符号20で示す。
【0029】
そして、シール材描画工程では、複数の対向基板形成領域20が形成されている第1大型基板120上に、ディスペンサ30を用いてシール材52を形成する。図4に示すように、第1大型基板120に形成されるシール材52は、行方向(X方向)に配設されている複数の対向基板形成領域20に対し、一括して連続的(いわゆる一筆書き状)に描画される。
【0030】
図5は、図4に示す第1大型基板120の最下段の行に形成されている複数の対向基板形成領域20に対するシール材52の描画態様が示されている。尚、他の行に形成されている複数の対向基板形成領域20に対するシール材52の描画も同じ態様で行われるため説明を省略する。
【0031】
本実施形態では、第1大型基板120の各行方向(X方向)に形成されている複数の対向基板形成領域20に形成するシール材52を連続した描画パターンPTで形成する。すなわち、先ず、往路において、各対向基板形成領域20の上部シール部53を、上部連結部55aを介して連続描画し、次いで、復路において、各対向基板形成領域20の下部シール部54を、下部連結部55bを介して連続描画する。
【0032】
又、第1大型基板120の各行方向(X方向)に形成されている対向基板形成領域20の内の描画開始点側(本実施形態では左端)に位置する対向基板形成領域20に形成されるシール材52の列方向(Y方向)の中央左端に描画開始点SPが設定されている。この描画開始点SPはディスペンサ30のノズルから吐出されるシール材の吐出遅れを考慮した長さを有している。又、この描画開始点SPと平行に下部シール部54に連続する描画終了点EPが設定されている。尚、この描画開始点SPと描画終了点EPとに連続する辺(図5の左端の辺)が、本発明の第1の辺に相当する。更に、第1大型基板120の各行方向(X方向)に形成されている対向基板形成領域20の内の折り返し側(本実施形態では右端)に位置する対向基板形成領域20の終端側に折り返し点RPが設定されている。尚、この折り返し点RPに連続する辺(図5の右端の辺)が、本発明の、第1の辺に対向する第2の辺に相当する。
【0033】
そして、ディスペンサ30のノズルを描画開始点SPに臨ませた後、シール材の描画を開始する。その際、シール材の吐出遅れが発生するが、この吐出遅れは描画開始点SPを通過する際に解消され、対向基板形成領域20の描画開始点SP側の上部連結部55aに到達したときは、ディスペンサ30のノズルからシール材が定量吐出されている。
【0034】
ディスペンサ30のノズルから吐出されるシール材により、往路において、先ず、最初の対向基板形成領域20の上部シール部53を形成する。上部シール部53の形成に際しては、ディスペンサ30を行方向(+X方向)へ相対移動させ、このディスペンサ30のノズルから吐出されるシール材により描画開始点SPに連続する上部連結部55aを形成する。次いで、ディスペンサ30を斜め上方へ相対移動させて左側傾斜部56aを形成する。その後、ディスペンサ30を列方向(+Y方向)へ相対移動させて左側部57aを形成する。
【0035】
そして、上端付近でディスペンサ30を斜め上方(約45°)へ相対移動させて、面取り部58aを形成する。
【0036】
その後、ディスペンサ30を行方向(+X方向)へ相対移動させて上辺部59aを形成する。そして、ディスペンサ30が右側部60a付近に到達したとき、このディスペンサ30を斜め下方(約45°)へ相対移動させて、面取り部61aを形成する。次いで、ディスペンサ30を列方向(−Y方向)へ下降させて、左側部57aに対峙する右側部60aを形成する。
【0037】
その後、ディスペンサ30を斜め下方へ相対移動させて、左側傾斜部56aに対峙する右側傾斜部62aを形成する。そして、シール材52の列方向(Y方向)の中央部付近で、ディスペンサ30を行方向(+X方向)へ相対移動させて上部連結部55aを形成する。そして、この上部連結部55aを介して、ディスペンサ30を右隣の対向基板形成領域20へ相対移動させ、この対向基板形成領域20に、上部シール部53を、ディスペンサ30の相対移動により連続形成する(図6(a)参照)。
【0038】
この動作を繰り返すことで、右隣の対向基板形成領域20に上部シール部53を連続形成する。そして、右端の対向基板形成領域20に対して上部シール部53の形成が完了すると、図7に示すように、上部連結部55aをそのまま延長させて折り返し点RPの上辺部RP1を形成し、次いで、ディスペンサ30を列方向(−Y方向)へ下降させて、側部RP2を形成し、その後、ディスペンサ30を行方向(−X方向)へ相対移動させて、下辺部RP3を形成し、そして、そこからディスペンサ30を斜め上方へ相対移動させて斜辺部RP4を形成する。
【0039】
その後、ディスペンサ30を行方向(−X方向)へ相対移動させて、下部シール部54の下部連結部55bを、右端の対向基板形成領域20に形成する。この下部連結部55bから復路となる。この復路では、先ず、右端の対向基板形成領域20の下部連結部55bに続けて、ディスペンサ30を斜め下方へ相対移動させて右側傾斜部62bを形成する。次いで、ディスペンサ30を列方向(−Y方向)へ相対移動させて右側部60bを形成する。そして、下端付近でディスペンサ30を斜め下方(約45°)へ相対移動させて、面取り部61bを形成する。
【0040】
その後、ディスペンサ30を行方向(−X方向)へ相対移動させて下辺部59bを形成する。そして、ディスペンサ30が左側部57b付近に到達したとき、このディスペンサ30を斜め上方(約45°)へ相対移動させて、面取り部58bを形成する。次いで、ディスペンサ30を列方向(+Y方向)へ上昇させて、右側部60bに対峙する左側部57bを形成する。
【0041】
次いで、ディスペンサ30を斜め上方へ相対移動させて、右側傾斜部62bに対峙する左側傾斜部56bを形成する。そして、シール材52の列方向(Y方向)の中央部付近で、ディスペンサ30を行方向(−X方向)へ相対移動させて、上部シール部53の上部連結部55aに近接する位置に下部連結部55bを形成する。
【0042】
その後、この下部連結部55bを介して、ディスペンサ30を左隣の対向基板形成領域20へ相対移動させ、この対向基板形成領域20に、下部シール部54を、ディスペンサ30を上述と同様に動作させて連続形成する(図6(a)参照)。
【0043】
この動作を繰り返すことで、左隣の対向基板形成領域20に下部シール部54を連続形成する。そして、左端の対向基板形成領域20に対して下部シール部54の形成が完了すると、下部連結部55bをそのまま延長させて描画終了点EPを形成し、ディスペンサ30のノズルからのシール材の描画を停止させる。
【0044】
次いで、第1大型基板120の次の行に形成されている複数の対向基板形成領域20に対して、上述と同様の手順によりシール材52を、連続した描画パターンPTにより形成する。そして、全ての行に形成されている複数の対向基板形成領域20に対してシール材52の形成が完了した後、各シール材52で囲まれた対向基板形成領域20に液晶50を滴下し、図3に示すように、減圧状態で第1大型基板120と、複数のTFT基板形成領域10が形成されている第2大型基板110とを貼り合わせる(大型基板貼り合わせ工程)。
【0045】
大型基板110,120を貼り合わせると、図6(b)に示すように、描画された描画パターンPTが潰されて幅方向に広がり、往路で形成した上部連結部55aと復路で形成した下部連結部55bとが接合して、閉口されたシール材52が形成される。又、このとき、上部連結部55a,55bに連続する領域、すなわち描画方向が反転する狭い描画間隔の領域を傾斜部56a,56b,62a,62bとしたので、両大型基板110,120を貼り合わせた際に、この各傾斜部56a,56b,62a,62bにより表示領域までの距離を離すことができ、上部連結部55a,55bの両端のコーナ付近にシール材が比較的多く盛りつけられても、シール材の表示領域内への広がりが抑制されて、シール材の表示領域内への進入を防止することができる。更に、最後の対向基板形成領域20に対するシール材の描画では、往路から復路に切りかわる領域には、対向基板形成領域20から外方へ延出する折り返し点RPを設けたので、両大型基板110,120を貼り合わせた際に、この折り返し点RPのシール材が潰されて広がっても、表示領域内にシール材が入り込むことがない。
【0046】
又、描画パターンPTが往路から復路に掛けて連続形成されるので、この描画パターンPTの描画に際して、描画タクト時間の短縮が実現でき、描画条件出しに要する段取り時間もほぼ一定となり、作業効率の大幅な向上を実現することができる。又、一つの行の描画パターンPTの描画では、描画開始点SPと描画終了点EPとが一カ所のみとなるためシール材に混入する気泡等の影響によるシール材の吐出不良が発生し難くなり、描画不良が低減されて、製品の歩留まり率が向上する。
【0047】
そして、両大型基板110,120を所定に貼り合わせた後、シール材52を硬化させる。その後、貼り合わされている大型基板110,120を、液晶装置単位毎に切り出す(基板切断工程)。
【0048】
尚、本実施形態では、複数の対向基板形成領域20が形成されている第1大型基板120側に描画パターンPTを描画したが、複数のTFT基板形成領域10が形成されている第2大型基板110側に描画パターンPTを描画するようにしても良い。
【0049】
[第2実施形態]
図8に本発明の第2実施形態による描画パターンの要部拡大図を示す。本実施形態では、描画パターンPTの描画に際し、領域毎に相対移動速度を可変させるようにしたものである。ディスペンサ30のノズルからはシール材が定量吐出されているが、特にコーナ部では、直線部と同様の相対移動速度で描画を行うとシール材の断面積が減少して、シール切れが生じやすくなる。
【0050】
従って、本実施形態では、シール材の途切れやすい領域の相対移動速度を遅く、途切れにくい領域の相対移動速度を速くすることで、描画パターンPT全体の塗布量をほぼ均一となるようにしたものである。
【0051】
図8に示すように、描画の相対移動速度をA>B>C>Dとし、上部シール部53の描画パターンPTでは、上辺部59aを面取り部61aにさしかかる手前まで、最も速い速度Aで描画し、そこから面取り部58bが終了するまで速度Bで描画し、右側部60aを再び速度Aで右側傾斜部62aにさしかかる手前まで描画する。そして、そこから右側傾斜部62aを速度Bで描画し、上部連結部55aにさしかかるコーナ部を、最も遅い速度Dで描画する。
【0052】
次いで、上部連結部55aを速度Bで描画し、右隣の対向基板形成領域20の傾斜部56aに連続するコーナ部を最も遅い速度Dで描画し、次いで傾斜部56aから左側部57aの途中までを速度Cで描画し、そこから左側部57aの面取り部58aにさしかかる手前までを、最も速い速度Aで描画し、そこから面取り部58aを速度Bで描画し、上辺部59aを最速の速度Aで描画する。
【0053】
一方、下部シール部54の描画パターンPTでは、下辺部59bを面取り部58bにさしかかる手前まで、最も速い速度Aで描画し、そこから面取り部58bが終了するまで速度Bで描画し、左側部57bを再び速度Aで傾斜部56bにさしかかる手前まで描画する。そして、そこから傾斜部56bを速度Bで描画し、下部連結部55bにさしかかるコーナ部を、最も遅い速度Dで描画する。
【0054】
次いで、下部連結部55bを速度Bで描画し、左隣の対向基板形成領域20の傾斜部62bに連続するコーナ部を最も遅い速度Dで描画し、次いで傾斜部62bから右側部60bの途中までを速度Cで描画し、そこから右側部60bの面取り部61bにさしかかる手前までを、最も速い速度Aで描画し、そこから面取り部61bを速度Bで描画し、下辺部59bを最速の速度Aで描画する。
【0055】
このように、本実施形態では、各領域の相対移動速度を、シール材の塗布状況に応じて可変させるようにしたので、シール材の塗布量が均一となり、安定した描画を行うことができる。
【0056】
[第3実施形態]
図9、図10に本発明の第3実施形態を示す。図9に示すように、ディスペンサ30を第1大型基板120に沿って移動させるに際しては、レーザ等を用いた非接触式変位計31で第1大型基板120とディスペンサ30のノズル端との距離を計測し、この距離を一定に保持するように制御しながら相対移動させている。
【0057】
しかし、相対移動方向が急激に変化する領域では、進行方向が切換えられる都度に振動が発生する。この振動により非接触式変位計31の計測値の誤差が大きくなり、計測精度が低下する。
【0058】
従って、本実施形態では、図10に示すように、上辺部59aと下辺部59b以外の、進行方向が大きく切りかわる領域では、非接触式変位計31から信号を読込まず、第1大型基板120とディスペンサ30のノズル端と間の距離を固定した状態で描画を行うようにしたものである。その結果、進行方向が急激に切りかわる領域において振動が発生しても、安定した描画を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明における電気光学装置は、TFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置以外に、パッシブマトリックス型の液晶装置、TFD(薄型ダイオード)をスイッチング素子として備えた液晶装置であっても良く、更に、液晶装置に限らず、エレクトロルミネッセンス装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、電子放出素子を用いた装置(Field Emission Display、及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)、更には、DLP(Digital Light Processing)やDMD(Digital Micromirror Device)等の各種の電気光学装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態による電気光学装置である液晶装置をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図
【図2】同、TFT基板と対向基板とを貼り合わせて液晶を封入する組立工程終了後の液晶装置であって、図1のH-H'断面図
【図3】同、大型基板どうしを貼り合わせる状態を示す斜視図
【図4】同、大型基板の平面図
【図5】同、図4の部分拡大図
【図6】同、(a)は貼り合わせ前の描画パターンを示す平面図、(b)は貼り合わせ後の描画パターンの状態を示す平面図
【図7】同、図5のVII部拡大図
【図8】第2実施形態による描画パターンの要部拡大図
【図9】第3実施形態による大型基板にシール材を描画する状態の説明図
【図10】同、描画パターンの説明図
【図11】従来の描画パターンの説明図
【符号の説明】
【0061】
10…TFT基板(基板形成領域)、10a…画像表示領域、20…対向基板(対向基板形成領域)、30…ディスペンサ、31…非接触式変位計、52…シール材、53…上部シール部、54…下部シール部、55…連結部、55a…上部連結部、55b…下部連結部、56a,…56b…左側傾斜部、57a,57b…左側部、58a,58b,61a,61b…面取り部、59a…上辺部、59b…下辺部、60a,60b…右側部、62a,62b…右側傾斜部、110…第2大型基板、120…第1大型基板、121…基板形成領域、A〜D…描画速度、EP…描画終了点、RP…折り返し点、PT…描画パターン、SP…描画開始点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板形成領域を有する第1大型基板に対して、少なくとも該各基板形成領域にシール材を描画するシール材描画工程と、
前記第1大型基板に対し前記シール材を介して第2大型基板を貼り合わせる大型基板貼り合わせ工程とを備え、
前記シール材描画工程では、予め設定されている描画パターンに従い、互いに隣接して配設されている複数の前記基板形成領域に対し、往路において前記基板形成領域の一部に前記シール材を連続描画し、該往路の終端に連続する折り返し点を経て復路へ移動し、該復路において該基板形成領域の他部に対してシール材を連続描画する
ことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記シール材描画工程では、複数の前記基板形成領域の第1の辺に前記シール材の描画開始点と描画終了点とが位置しており、前記折り返し点が、前記第1の辺と対向する第2の辺に位置することを特徴とする請求項1記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記シール材描画工程では、前記シール材の描画開始点と描画終了点とが近接された位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記シール描画工程では、コーナ部の描画速度を直線部の描画速度よりも遅く設定されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記シール描画工程では、隣接する前記基板形成領域間に対するシール材の描画間隔が狭く設定されている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項1】
複数の基板形成領域を有する第1大型基板に対して、少なくとも該各基板形成領域にシール材を描画するシール材描画工程と、
前記第1大型基板に対し前記シール材を介して第2大型基板を貼り合わせる大型基板貼り合わせ工程とを備え、
前記シール材描画工程では、予め設定されている描画パターンに従い、互いに隣接して配設されている複数の前記基板形成領域に対し、往路において前記基板形成領域の一部に前記シール材を連続描画し、該往路の終端に連続する折り返し点を経て復路へ移動し、該復路において該基板形成領域の他部に対してシール材を連続描画する
ことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記シール材描画工程では、複数の前記基板形成領域の第1の辺に前記シール材の描画開始点と描画終了点とが位置しており、前記折り返し点が、前記第1の辺と対向する第2の辺に位置することを特徴とする請求項1記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記シール材描画工程では、前記シール材の描画開始点と描画終了点とが近接された位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記シール描画工程では、コーナ部の描画速度を直線部の描画速度よりも遅く設定されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記シール描画工程では、隣接する前記基板形成領域間に対するシール材の描画間隔が狭く設定されている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電気光学装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−310100(P2008−310100A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158354(P2007−158354)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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