説明

電気光学装置の製造方法

【課題】本発明は、リソグラフィー技術を用いる場合において、基板端部のレジストを確実に除去することができる電気光学装置の製造装置及び電気光学装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、リソグラフィー技術を用いて電気光学装置用の基板を製造する電気光学装置の製造方法であって、前記基板にレジストを塗布するレジスト塗布工程と、前記基板の端部に沿ってノズルから溶剤を吐出し、前記端部の前記レジストを除去するエッジリンス工程と、を有し、前記エッジリンス工程において、前記ノズルを前記基板の内側方向及び外側方向へ揺動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の製造方法に関し、特にリソグラフィー技術を用いる電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶表示装置のような電気光学装置に用いられる基板の製造工程では、所定の材料からなる膜(以下、被加工膜と称する)を所定のパターンに加工するためにリソグラフィー技術が用いられている。
【0003】
リソグラフィー技術では、被加工膜上にレジストを塗布し、該レジストをマスクを介して露光した後に現像することにより、レジストパターンを形成する。そして、上面にレジストパターンが形成された被加工膜に対して、ウェット又はドライ方式のエッチングを行うことにより、被加工膜が所定のパターンに加工される。
【0004】
このリソグラフィー技術において、基板の端部にレジストが残ってしまうと塵埃の発生源となり、後の工程において不具合を生じる可能性がある。この基板端部のレジストを除去する方法としては、特開2006−93409号公報や特開平6−124887号公報に開示されているような、周辺露光法及びエッジリンス法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−93409号公報
【特許文献2】特開平6−124887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フォトレジスト等のレジストの外周部には、エッジリンス処理に用いられる溶剤によって溶解された後に再び凝固した特異状態部が存在する。該特異状態部は、レジストの他の部分に対して感度が低下してしまう。また、特異状態部は、レジストの他の部分に対して厚く盛り上がってしまう。
【0007】
このような特異状態部が形成されたレジストの外周部を、周辺露光により除去しようとしても、現像残りが発生しやすい。このため、従来では、エッジリンス法及び周辺露光法を用いた場合においても、現像後に基板の端部にレジストが残ってしまうことがある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、基板端部のレジストを確実に除去することができる電気光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気光学装置の製造方法は、電気光学装置用の基板を製造する電気光学装置の製造方法であって、前記基板上にレジストを塗布するレジスト塗布工程と、前記基板の端部に沿ってノズルから溶剤を吐出し、前記端部の前記レジストを除去するエッジリンス工程と、を有し、前記エッジリンス工程において、前記ノズルを前記基板の内側方向及び外側方向へ揺動させることを特徴とする。
【0010】
本発明のこのような構成によれば、レジストが現像工程後にも残留してしまうことの原因となる特異状態部の形成を従来よりも抑えることができるため、基板の端部のレジストを確実に除去することができる。
【0011】
また本発明は、前記エッジリンス工程において、前記ノズルを第1目標位置と、該第1目標位置よりも外側の第2目標位置との間で前記基板の内側方向及び外側方向へ揺動させた後に、前記ノズルを前記第1目標位置よりも外側において、前記基板の内側方向及び外側方向へ揺動させることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、第1目標位置よりも外側のレジストを、エッジリンス工程において確実に除去することができる。
【0013】
また本発明は、前記エッジリンス工程において、前記第1目標位置近傍では前記ノズルを停滞させずに連続的に移動させることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、第1目標位置に、ノズルが溶剤を吐出しながら停滞することがないため、レジストの外周部が溶剤により溶解された後に再び凝固することで形成される特異状態部の形成を抑えることができる。
【0015】
また、本発明は、前記エッジリンス工程後に、前記第1目標位置よりも前記基板の内側まで露光する周辺露光工程と、前記周辺露光工程後に前記レジストを現像する現像工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、周辺露光工程によって基板端部のレジストをより確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】TFTアレイ基板を、その上に構成された各構成要素と共に対向基板の側から見た電気光学装置の平面図である。
【図2】図1のH−H’断面図である。
【図3】ウェハーの平面図である。
【図4】リソグラフィー技術の概略を示すフローチャートである。
【図5】エッジリンス工程で用いられる処理装置の概略構成を示す図である。
【図6】エッジリンス工程におけるエッジリンスノズルの移動の制御形態を示す図である。
【図7】レジスト塗布工程によりレジストが塗布された状態のウェハーを示す図である。
【図8】エッジリンス工程における、溶剤の吐出時のエッジリンスノズルの位置を示す図である。
【図9】エッジリンス工程において、エッジリンスノズルがウェハーの端面にまで移動した状態を示す図である。
【図10】エッジリンス工程において、エッジリンスノズルが第1目標位置に移動した状態を示す図である。
【図11】エッジリンス工程において、エッジリンスノズルが第2目標位置に移動した状態を示す図である。
【図12】エッジリンス工程において、エッジリンスノズルが第3目標位置に移動した状態を示す図である。
【図13】エッジリンス工程において、エッジリンスノズルが第2目標位置に移動し、停滞している状態を示す図である。
【図14】エッジリンス工程が終了した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0019】
まず、本実施形態の電気光学装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここでは、電気光学装置の一例として、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の透過型液晶表示装置を例にとる。
【0020】
電気光学装置100は、ガラスもしくは石英等からなるTFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶50を挟持してなり、液晶の配向状態を変化させることにより、画像表示領域10aに対向基板20側から入射する光を変調しTFTアレイ基板10側から出射することで、画像表示領域10aにおいて画像を表示するものである。
【0021】
本実施形態に係る電気光学装置100では、互いに対向して配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20とが、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間でありシール材52により囲まれた領域内には、液晶50が充填されている。シール材52は、紫外線硬化型樹脂もしくは熱硬化型樹脂からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上又は対向基板20上の少なくとも一方に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化されたものである。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔を所定値とするためのグラスファイバーあるいはガラスビーズ等のギャップ材が散らばって配設されている。
【0022】
本実施形態では、TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶50を充填するための方法の一例として、TFTアレイ基板10と対向基板20とをシール材52により貼り合わせた後に、シール材52に設けられた開口部である液晶注入口110から液晶50を充填する液晶注入方式を用いるものとする。なお、液晶注入口110は、複数設けられるものであってもよい。
【0023】
また、TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶50を充填する方法は、TFTアレイ基板10及び対向基板20のいずれかにシール材52を設け、該シール材52の内側に所定量の液晶50を滴下した後にTFTアレイ基板10と対向基板20とを貼り合わせる滴下貼り合わせ方式であってもよい。
【0024】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。なお、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。また、本実施形態においては、TFTアレイ基板10の中心から見て、額縁遮光膜53より以遠を周辺領域として規定する。
【0025】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路104は、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が設けられたTFTアレイ基板10の一辺に隣接する2辺に沿い、かつ額縁遮光膜53に覆われるように設けられている。また、TFTアレイ基板10の残る一辺、すなわちデータ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が設けられたTFTアレイ基板10の一辺に対向する辺に沿って設けられ、額縁遮光膜53に覆われるように設けられた複数の配線105によって、二つの走査線駆動回路104は互いに接続されている。
【0026】
また、対向基板20の4つのコーナー部には、TFTアレイ基板10との電気的接続を行う上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらの上下導通材106に対応する領域において上下導通端子が設けられている。上下導通材106と上下導通端子を介して、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な接続が行われる。
【0027】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜16が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜22が形成されている。
【0028】
本実施形態では一例として、配向膜16及び22は、樹脂膜であるポリイミド膜(以下、PI膜と称する)にラビング処理を施すことにより形成されるものとする。なお、配向膜16及び22は、ポリイミド以外の樹脂膜にラビング処理を施すことによって形成されるものであってもよいし、SiO2等の無機膜を斜方蒸着することにより形成されるいわゆる無機配向膜であってもよい。
【0029】
液晶50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、一対の配向膜16及び22の間で、所定の配向状態をとる。液晶50の液晶の配向状態に応じて、対向基板20側から入射しTFTアレイ基板10側から出射する光の偏光状態が変化する。
【0030】
また、図示しないが対向基板20の入射光が入射する側及びTFTアレイ基板10の出射光が出射する側には各々、例えば、TN(ツイステッドネマティック)モード、STN(スーパーTN)モード、D−STN(ダブル−STN)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板等が所定の方向で配置されている。この一対の偏光板により電気光学装置100の画像表示領域10aを透過する光の透過率が液晶の配向状態に応じて変化する。
【0031】
以上に説明した電気光学装置100のTFTアレイ基板10は、図3に示すような円板状の基板であるウェハー35から切り出されることで形成される。ウェハー35の表面35a上には、リソグラフィー技術等の半導体製造方法を用いて上述のTFTアレイ基板10を構成するTFT、画素電極9a等が形成される。
【0032】
以下に、本発明に係る電気光学装置の製造方法として、ウェハー35上にリソグラフィー技術を用いて所定のパターンを有する膜を形成する方法について説明する。なお、以下では本発明に係る電気光学装置の製造方法と、従来のリソグラフィー技術との異なる点のみを詳細に説明するものとし、公知である点についてはその説明を適宜に省略するものとする。
【0033】
まず、リソグラフィー技術の概略的な工程を図4のフローチャートを参照して説明する。リソグラフィー技術では、まず、当該リソグラフィー技術により形成したいパターンを構成するための所定の材料からなり所定の膜厚を有する被加工膜をウェハー35上に形成する(ステップS1)。
【0034】
次に、被加工膜上に所定の膜厚でレジストを塗布する(ステップS2)。そして、ウェハー35の端部に塗布されているレジストを除去するための、詳しくは後述するエッジリンス処理及びバックリンス処理を行う(ステップS3)。
【0035】
次に、レジストを除去したい領域のみに所定の波長の光を照射し、露光する(ステップS4)。次にウェハー35の端部のレジストに所定の波長の光を照射し、レジストの外周部を露光する、いわゆる周辺露光を行う(ステップS5)。そして、レジストを現像液により現像することにより、露光された領域のレジストを除去する(ステップS6)。
【0036】
以上の工程により、被加工膜の表面は、所定のパターンのレジストに覆われた領域と、露出した領域とに分かれる。この被加工膜のレジストに覆われていない露出した領域を、ドライエッチング法又はウェットエッチング法等によりエッチングすることにより、被加工膜は、所定のパターンに加工される(ステップS7)。そして、パターン上に残っているレジストを、剥離し除去する(ステップS8)。
【0037】
本発明は、以上に述べたリソグラフィー技術において、特にステップS3のエッジリンス工程に関するものである。
まず、エッジリンス工程に用いられる電気光学装置の製造装置である処理装置200の構成について説明する。
【0038】
図5に示すように、処理装置200は、処理装置200の動作を制御する制御部201と、ウェハー35を被加工膜36を上方に向けた状態で略水平に保持し、ウェハー35を略鉛直な軸周りに回転させることが可能な保持部202とを具備してなる。
【0039】
また、保持部202に保持されたウェハー35の端部35bの近傍には、エッジリンスノズル210及びバックリンスノズル211が配設されている。エッジリンスノズル210及びバックリンスノズル211は、いわゆるエッジリンス法に用いられるものであり、ウェハー35の端部35bに沿うようにウェハー35の両側(上方及び下方)からウェハー35の径方向外側に向けて溶剤を吐出するためのノズルである。
【0040】
エッジリンスノズル210及びバックリンスノズル211は、溶剤を貯留する溶剤タンク212に接続されている。また、エッジリンスノズル210及びバックリンスノズル211からの溶剤の吐出の制御は、それぞれバルブ214及び215により行われる。
【0041】
また、エッジリンスノズル210は、ノズル移動機構部213により、ウェハー35の径方向に沿って移動可能に支持されている。なお、エッジリンスノズル210及びバックリンスノズル211から吐出される溶剤は、レジストを溶解することが可能なものであればよく、例えばPGME及びPGMEAの混合溶液等が用いられる。
【0042】
また、図示しないが、処理装置200には、保持部202を回転させるための駆動機構、各部に電源を供給するための電源装置等が配設されている。
【0043】
次に、上述した処理装置200を用いて行われる、本実施形態の電気光学装置の製造方法であるステップS3のエッジリンス工程の詳細について説明する。
【0044】
図6は、溶剤の吐出期間中におけるノズル移動機構部213によるエッジリンスノズル210の移動を示す図である。図6において、横軸は時間を示し、縦軸はエッジリンスノズル210の位置を示している。
【0045】
以下の説明において、溶剤の吐出開始時間を、T=0とし、溶剤の吐出終了時間をT=t7とする。すなわち、時間Tが0からt7の間は、エッジリンスノズル210から溶剤が吐出される。
【0046】
また、図7に示すように、エッジリンスノズル210は、ウェハー35の径方向に沿うX軸上を移動するものとし、ウェハー35の端面をX=0とする。またX軸において、ウェハー35の端面よりも内側を正方向とする。また、図8から図14は、エッジリンス工程の溶剤吐出期間中の様子を、時間T=0から時間T=t7まで順を追って説明するための図である。
【0047】
まず、ステップS3のエッジリンス工程に先だって行われるステップS2のレジスト塗布工程では、図7に示すように、スピンコート法等によりウェハー35の被加工膜36上に所定の厚さの膜状のレジスト37が塗布される。この状態において、ウェハー35の端部35bでは、レジスト37が、図7に示すようにウェハー35の端面(外周面)にまで回り込むように塗布された状態となる。
【0048】
ステップS3のエッジリンス工程では、まず図8に示すように、保持部202を回転させた状態において、エッジリンスノズル210及びバックリンスノズル211から溶剤を吐出する(T=0、X=xs、xs<0)。このとき、エッジリンスノズル210は、ウェハー35の端部35bから径方向外側に離間した吐出開始位置xsに位置させておき、溶剤の吐出開始後に、エッジリンスノズル210を所定の速度でウェハー35の径方向内側の第1目標位置x1に向かって移動させる。
【0049】
図9は、エッジリンスノズル210がウェハー35の端面にまで移動した状態(T=t1、X=0)を示しており、図10は、エッジリンスノズル210が第1目標位置x1に到達した状態(T=t2、X=x1)を示している。
【0050】
図6に示すように、この第1目標位置x1が、エッジリンスノズル210がウェハー35の最も内側に位置する位置である。そして、本実施形態では、エッジリンスノズル210を第1目標位置x1で停止させずに、第1目標位置x1よりもウェハー35の外側である第2目標位置x2へエッジリンスノズル210を移動させる。図11は、エッジリンスノズル210が、第1目標位置x1から外側へ移動し第2目標位置x2に到達した状態(T=t3、X=x2、x2<x1)を示している。
【0051】
言い換えれば、本実施形態では、時間t1からt3の期間において、溶剤を吐出するエッジリンスノズル210を、ウェハー35の内側方向及び外側方向へ揺動させる。
【0052】
次に、エッジリンスノズル210を、第2目標位置x2よりもウェハー35の内側であり、かつ第1目標位置x1よりもウェハーの外側である第3目標位置x3へエッジリンスノズル210を移動させる。図12は、エッジリンスノズル210が、第2目標位置x2から内側へ移動し第3目標位置x23到達した状態(T=t4、X=x3、x2<x3<x1)を示している。
【0053】
次に、エッジリンスノズル210を第3目標位置x3から、第2目標位置x2へエッジリンスノズル210を移動させる。そして、エッジリンスノズル210を第2目標位置x2に、時間T=t6まで停止させる。図13は、エッジリンスノズル210が、第3目標位置x1から外側へ移動し第2目標位置x2に到達した状態(T=t5〜t6、X=x2)を示している。
【0054】
言い換えれば、本実施形態では、時間t3からt5の期間において、溶剤を吐出するエッジリンスノズル210を、ウェハー35の内側方向及び外側方向へ揺動させる。そしてこの時間t3からt5の期間における揺動でエッジリンスノズル210がウェハー35の最も内側に移動する位置x3は、最初に行った時間t1からt3の期間における揺動でエッジリンスノズル210がウェハー35の最も内側に移動する位置x1よりも、ウェハー35の外側とされている。
【0055】
この時間t3からt5の期間におけるエッジリンスノズル210の揺動、及び時間t5からt6におけるエッジリンスノズル210の停滞によって、第3目標位置x3よりも外側に塗布されていたレジストが除去される。
【0056】
なお、時間t3からt5の期間におけるエッジリンスノズル210の揺動だけでは、第3目標位置x3よりも外側に塗布されていたレジストが十分に除去できない場合には、第2目標位置x2と第3目標位置x3との間で複数回揺動を繰り返してもよい。また、時間t3からt5の期間におけるエッジリンスノズル210の揺動だけで、第3目標位置x3よりも外側に塗布されていたレジストが十分に除去できる場合には、時間t5からt6におけるエッジリンスノズル210の停滞を行わなくてもよい。
【0057】
次に、エッジリンスノズル210を、第2目標位置x2から、ウェハー35から径方向外側に離間した吐出開始位置xsへ移動させた後に、エッジリンスノズル210及びバックリンスノズル211からの溶剤の吐出を停止する。図14は、エッジリンスノズル210が吐出開始位置xsに到達し、溶剤の吐出が停止した状態(T=t7、X=xs)を示している。そして、保持部202の回転を停止する。
【0058】
以上で、本実施形態のエッジリンス工程が終了する。この後のステップS5の周辺露光工程において、第1目標位置x1よりも所定の距離だけ内側までウェハー35の端部35bを露光し、ステップS6の現像工程において現像処理を行うことにより、ウェハー35の端部35bに塗布されたレジスト37が完全に除去される。
【0059】
以上に説明したエッジリンス工程では、エッジリンスノズル210を時間t1からt3の期間において、ウェハー35の内側方向及び外側方向へ揺動させる。そして、この時間t1からt3の期間における揺動では、エッジリンスノズル210は、常に移動するため、ウェハー35の最も内側である第1目標位置x1で停滞することがない。
【0060】
したがって、本実施形態では、第1目標位置x1辺りに位置するレジスト37の外周部の近傍に、エッジリンスノズル210が溶剤を吐出しながら停滞することがないため、レジスト37の外周部が溶剤により溶解された後に再び凝固することで形成される特異状態部の形成を抑えることができる。
【0061】
すなわち、本実施形態によれば、レジストが現像工程後にも残留してしまうことの原因となる特異状態部の形成を従来よりも抑えることができるため、ウェハー35の端部35bのレジストを確実に除去することができる。
【0062】
なお、上述した本実施形態では、時間t1からt3の期間におけるエッジリンスノズル210の揺動幅の大きい揺動の後に、時間t3からt5の期間においてエッジリンスノズル210の揺動幅の小さい揺動を実施することで、第3目標位置x3よりも外側に塗布されていたレジスト37をエッジリンス工程で確実に除去するようにしているが、本発明はこの形態に限られるものではない。
【0063】
例えば、時間t1からt3の期間におけるエッジリンスノズル210の揺動幅の大きい揺動のみによって、ウェハー35の端部35b上のレジストを十分に除去できる場合であれば、その後のエッジリンスノズル210の揺動や停滞を行わなくてもよい。
【0064】
なお、上述した本実施形態では、電気光学装置用の基板の一例として円板状のウェハー35を用いているが、電気光学装置用の基板は矩形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置の製造方法の技術的範囲に含まれるものである。
【0066】
例えば、電気光学装置は、透過型の液晶パネルに限らず、半透過型又は反射型の液晶パネルにも適用できる。反射型の液晶パネルとしては、半導体基板に素子を形成する表示用デバイス、例えばLCOS(Liquid Crystal On Silicon)がある。
【符号の説明】
【0067】
35 ウェハー、
35b 端部、
36 被加工膜、
37 レジスト、
200 処理装置、
201 制御部
202 保持部、
210 エッジリンスノズル、
211 バックリンスノズル、
212 溶剤タンク、
213 ノズル移動機構部、
214 バルブ、
215 バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学装置用の基板を製造する電気光学装置の製造方法であって、
前記基板上にレジストを塗布するレジスト塗布工程と、
前記基板の端部に沿ってノズルから溶剤を吐出し、前記端部の前記レジストを除去するエッジリンス工程と、
を有し、
前記エッジリンス工程において、前記ノズルを前記基板の内側方向及び外側方向へ揺動させることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記エッジリンス工程において、
前記ノズルを第1目標位置と、該第1目標位置よりも外側の第2目標位置との間で前記基板の内側方向及び外側方向へ揺動させた後に、
前記ノズルを前記第1目標位置よりも外側において、前記基板の内側方向及び外側方向へ揺動させることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記エッジリンス工程において、前記第1目標位置近傍では前記ノズルを停滞させずに連続的に移動させることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記エッジリンス工程後に、前記第1目標位置よりも前記基板の内側まで露光する周辺露光工程と、
前記周辺露光工程後に前記レジストを現像する現像工程と、を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の電気光学装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−217358(P2010−217358A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62400(P2009−62400)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】