説明

電気光学装置及びその製造方法、光プリンタ用ヘッド、光プリンタ

【課題】 外部電源との電気接続部の剛性が高く、光プリンタヘッドの光源として好ましく用いられる電気光学装置を提供する。
【解決手段】 電気光学装置10は、発光素子11が形成された第1基板12と、発光素子11の封止のために第1基板12と貼り合わされた第2基板14とを備える。第2基板14には、発光素子11と外部電源40とを電気的に接続するための補助配線35が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を含む電気光学装置及びその製造方法に関し、特に、光プリンタのヘッドに好ましく適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光プリンタのヘッドとしては、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を光源として用いたLEDヘッドが一般に知られている。LEDヘッドは、個々のLED光源を1つずつ実装して製造するために生産性が比較的低く、また、実装時に生じる僅かな光源のずれにより発光ムラが生じやすい。
【0003】
これに対して、光プリンタ用ヘッドの光源として有機EL(electroluminescence)素子を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。有機EL素子を用いたプリンタ用ヘッドは、リソグラフィ技術が利用しやすいこと等から、比較的高い生産性での製造が可能であり、また、描画密度の向上(高精細化)や小型化に適している。
【0004】
光プリンタ用ヘッドの光源として、上記有機EL素子などの発光素子を用いる場合、発光素子の長寿命化や光の利用効率向上のために、発光素子の近傍にレンズアレイを配置するとともに、発光素子が形成された基板の厚みを薄く加工(薄厚加工)する技術が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開平9−226172号公報
【特許文献2】特開2003−260812号公報
【特許文献3】特開2002−184567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機EL素子などの発光素子を含む電気光学装置では、発光素子が形成される基板として一般にガラス基板が用いられる。そのため、基板が薄くなると、特に外部電源との電気的な接続に際して、基板の破損が生じやすい。これに対して、素子形成用の基板を樹脂製とすることで基板の破損を防ぐ技術が提案されているものの、樹脂はガラスに比べて耐熱性が低く、素子形成時の処理プロセスに制約が生じる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、外部電源との電気接続部の剛性が高く、光プリンタヘッドの光源として好ましく用いられる電気光学装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、高精細化や小型化に好適な光プリンタヘッド及び光プリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の電気光学装置は、発光素子を含む電気光学装置であって、前記発光素子が形成された第1基板と、前記発光素子の封止のために前記第1基板と貼り合わされた第2基板と、を備え、前記第2基板には、前記発光素子と外部電源とを電気的に接続するための補助配線が形成されていることを特徴とする。
【0008】
この電気光学装置では、第2基板に形成された補助配線を経由して、第1基板の発光素子と外部電源とが電気的に接続される。外部電源との直接的な接続部が、発光素子が形成された第1基板とは別の第2基板であることから、外部電源との電気接続に関わる構成の最適化を図りやすい。そのため、この電気光学装置は、外部電源との電気接続部の剛性を高めることが容易であり、光プリンタヘッドの光源として好ましく用いられる。
【0009】
上記の電気光学装置において、前記補助配線は、前記第1基板の外縁の内方で前記発光素子と電気的に接続される第1端子と、前記第1基板の外縁の外方で前記外部電源と電気的に接続される第2端子とを含むとよい。
この場合、前記第2基板は、前記第1基板の外縁に対して外方に延在する延在部を有し、前記第2端子は、前記延在部に形成されているとよい。
この電気光学装置では、外部電源との接続部が第1基板の外縁の外方であることにより、その接続部に対する構成上の制約が少なく、信頼性の高い電気接続が可能となる。
【0010】
上記の電気光学装置において、前記発光素子は、例えば、有機EL素子である。
発光素子として有機EL素子を用いることにより、素子配列の高精細化や装置の小型化が図られる。
【0011】
上記の電気光学装置において、前記第1基板は、薄厚加工されていてもよい。
第1基板の薄厚化により、発光素子からの光が第1基板を通過する際のエネルギーの減衰や光の散乱が抑制され、発光素子からの光の利用効率の向上が図られる。
また、この電気光学装置では、第1基板が薄膜化されても、外部電源との直接的な接続部が、第1基板とは別の第2基板であることから、その接続部の剛性を高めることが容易であり、外部電源との電気接続に伴う第1基板の破損が防止される。
【0012】
また、上記の電気光学装置において、前記発光素子の光学性能を高めるために前記第1基板に貼り合わされた第3基板をさらに備えてもよい。
この場合、前記第3基板は、前記発光素子に対向配置されるレンズを含むとよい。
上記第3基板により、発光素子からの光の利用効率の向上がさらに図られる。
【0013】
また、上記の電気光学装置において、前記第2基板には、前記第1基板における前記発光素子の形成領域と対向する領域に凹部が形成されており、前記第2基板の凹部には、乾燥剤が配されていてもよい。
上記乾燥剤により、封止空間の湿度上昇が抑制され、発光素子の長寿命化が図られる。
【0014】
本発明の光プリンタ用ヘッドは、上記の電気光学装置を光源として用いることを特徴とする。
この光プリンタ用ヘッドでは、上記の電気光学装置を光源として用いることにより、高精細化や小型化を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明の光プリンタは、上記の光プリンタ用ヘッドを備えることを特徴とする。
この光プリンタでは、上記の光プリンタ用ヘッドを備えることにより、高精細化や小型化が図られる。
【0016】
本発明の電気光学装置の製造方法は、第1基板上に発光素子を形成する工程と、第2基板上に前記発光素子と外部電源とを電気的に接続するための補助配線を形成する工程と、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせ、かつ前記発光素子と前記補助配線とを電気的に接続する工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
この電気光学装置の製造方法では、発光素子が形成される第1基板とは別の第2基板に、発光素子と外部電源とを電気的に接続するための補助配線を形成する。そのため、この方法により製造される電気光学装置は、上述したように、外部電源との電気接続に関わる構成の最適化が図りやすく、外部電源との電気接続部の剛性を高めることが容易である。
【0018】
上記の製造方法において、前記第2基板は、例えば、前記発光素子を封止するための封止基板であるとよい。
【0019】
また、上記の製造方法において、前記発光素子は、例えば、有機EL素子である。
発光素子として有機EL素子を用いることにより、素子配列の高精細化や装置の小型化が図られる。
【0020】
上記の製造方法において、前記第1基板と前記第2基板とが貼り合わされた状態で、前記第1基板を薄厚加工する工程をさらに有するとよい。
第1基板の薄厚化により、発光素子からの光の利用効率の向上が図られた電気光学装置が製造される。
また、薄厚化に伴って第1基板の剛性が低下しても、外部電源との直接的な接続部が、第1基板とは別の第2基板であることから、外部電源との電気接続に伴う第1基板の破損が防止される。
【0021】
また、上記の製造方法において、前記発光素子の光学性能を高める第3基板を、前記第1基板に貼り合わせる工程をさらに有するとよい。
この場合、前記第3基板は、前記発光素子に対向配置されるレンズを含むとよい。
上記第3基板により、発光素子からの光の利用効率の向上がさらに図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について図面を参照して説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために、縮尺は実際のものと異なる場合がある。
図1は、本発明の電気光学装置の一実施形態に係る有機EL装置を模式的に示す図である。
【0023】
図1において、有機EL装置10は、複数の有機EL素子11が形成された素子基板12と、有機EL素子11の光学性能を高めるために素子基板12に貼り合わされた光学基板13と、有機EL素子11の封止のために、素子基板12と貼り合わされた封止基板14とを含んで構成されている。
【0024】
有機EL素子11は、ガラス等の透明な素子基板12上に、回路素子部、画素電極(陽極)、発光層を含む有機機能層、対向電極(陰極)等を順次積層した構造からなる。なお、図1に示す符号19は、画素の境界に設けられる仕切り部材としてのバンク層である。バンク層19は、有機EL素子11の形成時に、隣接する材料の混じりを防ぐ等の役割を有する。
【0025】
有機EL素子11では、陽極側から注入された正孔と、陰極側から注入された電子とが発光層内で再結合し、励起状態を経由した発光(励起状態から失括する際の発光)を起こす。また、発光層の形成材料を適宜選択することにより、所定の色度の発光光が得られる。発光層の形成材料としては、例えば、低分子の有機発光色素や高分子発光体、すなわち各種の蛍光物質や燐光物質からなる発光物質等が用いられる。
【0026】
なお、陽極と発光層との間、及び陰極と発光層との間にはそれぞれ、正孔注入層、正孔輸送層、及び電子輸送層等の特定の機能を有する層が適宜形成される。また、発光のための電気的な制御は、能動素子(トランジスタ)等を含む回路素子部を介して行われる。
【0027】
有機EL素子11(発光層)の発光光は、素子基板12、及び光学基板13を介して外部に射出される(バックエミッション型、ボトムエミッション)。バックエミッション型では、発光層の発光光のうち、素子基板12側に向けて発せられた光は、透明材料からなる画素電極(陽極)をそのまま通過する。一方、素子基板12側とは反対側に向けて発せられた発光層の光は、対向電極(陰極)で反射されて、画素電極(陽極)を通過する。そして、これらの光が各有機EL素子11から射出され、素子基板12を通過して光学基板13に入射する。
【0028】
光学基板13は、ガラス等の透明な基体からなり、素子基板12との対向面にマイクロレンズ20が多数形成されたマイクロレンズアレイ構造からなる。そして、所定の光学性能を有する樹脂21(本例では高屈折率樹脂)を介して素子基板12の背面(素子形成面と逆側の面)に接合されている。各マイクロレンズ20は、半球状に形成されており、素子基板12における有機EL素子11の各々と一対一で対向するように整列配置されている。
【0029】
図2は、光学基板13の光学的な機能を説明するための模式図である。
図2に示すように、素子基板12を通過した各有機EL素子11からの光は、マイクロレンズ20の屈折面(半球面)で一部屈折されて集光される。この集光により、各有機EL素子11からの光の利用効率の向上が図られる。
【0030】
ここで、マイクロレンズ20の形状、光学基板13の材質、接合用の樹脂21の材質や厚み、及び素子基板12の厚みは、光のクロストークがなるべく生じないように適宜定められている。クロストークとは、各有機EL素子11の発光光が、一対一で対応するマイクロレンズ20とは異なるマイクロレンズ20を経て射出されることであり、光学性能の低下(光の混色など)を招きやすい。クロストークを防ぐには、素子基板12の厚みはなるべく薄いのが好ましく、例えば100μm以下(例えば20μm)である。なお、クロストーク防止に関わる技術は、特開2003−260812号公報に記載の技術が援用可能である。
【0031】
図1に戻り、封止基板14は、封止樹脂30を介して素子基板12の素子形成面に接合されており、有機EL素子11を封止するための密閉空間である封止空間を形成する。そして、その封止空間への水や酸素の浸入を防いで有機EL素子11の劣化(酸化など)を防止する。封止空間には、酸素濃度が低減されたガス、例えば窒素ガスが充填されている。
【0032】
また、封止基板14には、素子基板12における有機EL素子11の形成領域(素子形成領域12a)と対向する領域に凹部14aが形成されており、その凹部14aには乾燥剤31が配置されている。乾燥剤31により、封止空間の湿度上昇が抑制され、有機EL素子11の長寿命化が図られる。
【0033】
さらに、封止基板14には、有機EL素子11と外部電源40とを電気的に接続するための補助配線35が形成されている。ここで、外部電源40は、素子基板12上の各有機EL素子11に対して、電力並びに発光に関わる電気的な制御のための電気信号を供給するものである。
【0034】
図3は、補助配線35を説明するための部分的な平面図である。
図3及び先の図1に示すように、素子基板12の素子形成面には、素子形成領域12a内の各有機EL素子に電力を供給するための電源配線41が設けられ、その電源配線41の端部に接続用の端子42が設けられている。この電源配線41の端子42は、素子形成領域12aの外側に配設されている。
【0035】
封止基板14は、素子基板12の外縁12bに対して外方に延在する延在部14bを有している。補助配線35は、封止基板14上において、素子基板12の外縁12bに対して内方及び外方に延在するように形成されている。そして、補助配線35の一方の端部(封止基板14の外縁12bの内方)に端子35aが形成され、他方の端部(封止基板14の外縁12bの外方)に端子35bが形成されている。すなわち、端子35bは、封止基板14の延在部14bに形成されており、外部電源40と接続していないとき、素子基板12で覆われることなく露出状態にある。
【0036】
封止基板14上の補助配線35は、素子基板12の外縁12bの内方で素子基板12と電気的に接続され、素子基板12の外縁12bの外方で外部電源40と電気的に接続される。すなわち、素子基板12の外縁12bの内方で、封止基板14上の補助配線35の端子35aと素子基板12上の端子42とが接続され、素子基板12の外縁12bの外方(延在部14b)で、封止基板14上の補助配線35の端子35bと外部電源40の端子とが接続される。これらにより、封止基板14に形成された補助配線35を経由して、素子基板12の有機EL素子と外部電源40とが電気的に接続される。なお、図1に示す符号45は電気接続用の導電性接着剤である。
【0037】
このように、本例の有機EL装置10では、外部電源40との直接的な接続部が、有機EL素子11が形成された素子基板12とは別の封止基板14であることから、外部電源40との電気接続部の剛性が高い。すなわち、この有機EL装置10では、有機EL素子11の発光光の利用効率を高めるために、素子基板12が薄厚化されている(例えば、厚み100μm以下)ものの、外部電源40との直接的な接続部が、素子基板12とは別の封止基板14であることから、その接続部の剛性が高く、外部電源40との電気接続に伴う素子基板12の破損が防止される。
【0038】
なお、封止基板14としては、ガラス等の絶縁物が好ましく用いられ、上記電気接続に対して十分な剛性が確保されるように、厚みなどの形状が最適化されている。また、封止基板14として、金属等の導電体に絶縁処理を施したものを使用してもよい。例えば、金属材料の使用により、封止基板14の薄膜化を図りつつ、外部電源40との電気接続部の剛性をより高めることが可能である。
【0039】
次に、上記の有機EL装置10の製造方法の一例について説明する。
図4は、有機EL装置10の製造方法の一例を説明するための図である。
本例の製造方法は、主に、素子基板12上に有機EL素子11を形成する工程(図4(a))、素子基板12と封止基板14とを接合する工程(図4(b))、素子基板12を薄厚加工する工程(図4(c))、及び素子基板12と光学基板13とを接合する工程(図4(d))とからなる。
【0040】
図4(a)において、有機EL素子11の形成には、リソグラフィ法を用いる。発光層の形成材料として低分子材料を用いる場合は、その材料配置に蒸着法を用いることができる。また、発光層の形成材料として高分子材料を用いる場合は、その材料配置に、スピンコート法、印刷法、液体吐出法などの各種塗布法を用いることができる。また、有機EL素子11の形成と同時または前後して、素子基板12上に電源配線41及び端子42を形成する。電源配線41及び端子42は、リソグラフィ法を用いて形成してもよく、直接描画法により形成してもよい。
【0041】
図5は、封止基板14の製造方法の一例を説明するための図である。
封止基板14は、基体上に補助配線35を形成する工程(図5(a))、及び基体に凹部14aを形成する工程(図5(b))等により形成される。なお、凹部14aには、乾燥剤31が装填される。
【0042】
封止基板14の基体としては、前述したように、種々の材質のものが適用可能である。本例では、日本電気硝子製のガラス基板OA−10を用いる。補助配線35の形成材料としては、導電性の金属材料が用いられる。補助配線35は、リソグラフィ法を用いて形成してもよく、直接描画法により形成してもよい。封止基板14の凹部14aは、エッチング等により化学的に形成してもよく、機械加工あるいはサンドブラスト法等により物理的に形成してもよい。凹部14aの大きさ及び深さは、図4(a)に示す素子基板12上での素子領域の大きさや、装填される乾燥剤の大きさ(量)に応じて定められる。
【0043】
図4(b)に進み、素子基板12と封止基板14との接合は、素子基板12及び封止基板14の少なくとも一方に、封止樹脂30(光硬化性エポキシ接着剤など)を周状に配置し、両基板を貼り合わせて封止樹脂30を硬化させることにより行う。このとき、封止基板14の凹部14aの内部に乾燥剤31を装填しておく。なお、本例では、素子基板12に対して封止基板14の外径が大きく、封止基板14の一部(延在部14b)が素子基板12の外縁12bに対して外側に突出する。
【0044】
また、素子基板12と封止基板14との接合時、素子基板12上の電源配線41と封止基板14上の補助配線35との接続も同時に行う。すなわち、電源配線41の端子42と補助配線35の端子35aとを導電性接着剤45を介して電気的に接続する。導電性接着剤45としては、例えば、銀、金、銅、白金、炭素粒子などの導電性粒子を含んだ樹脂材などが用いられる。
【0045】
また、素子基板12と封止基板14との接合に際しては、素子基板12と封止基板14との位置合わせ(アライメント)が行われる。アライメントは、例えば、両基板に形成されたマークを同時に観察し、その観察結果に基づいて行われる。アライメント用のマークを配線形成時に形成してもよく、配線自体をアライメント用のマークとしてもよい。
【0046】
図4(c)に進み、素子基板12の薄厚加工は、素子基板12と封止基板14とが貼り合わされた状態で行う。すなわち、素子基板12と封止基板14との接合後、素子基板12の背面(素子形成面と逆側の面)を研削・研磨することにより、素子基板12を薄厚化する。薄厚加工後の素子基板12の厚みは、前述したように、光学基板13における光学特性が良好となるように定められ、例えば100μm以下(例えば20μm)である。
【0047】
図6は、光学基板13の製造方法の一例を説明するための図である。
本例では、ウエットエッチング法により光学基板13に、複数のマイクロレンズを形成する。光学基板13は、エッチング保護膜48を形成する工程(図6(a))、保護膜48をパターニングする工程(図6(b))、光学基板13の基体をエッチングする工程(図6(c))、保護膜48を除去する工程(図6(d))等により形成される。なお、マイクロレンズの形成方法は上記方法に限定されない。
【0048】
光学基板13の基体としては、本例では、日本電気硝子製のガラス基板OA−10を用いる。エッチング保護膜48は、例えば、窒化シリコン膜であり、プラズマCVD法を用いて形成することができる。保護膜48のパターニングは、ドライエッチング工程を含むフォトリソグラフィ法により行うことができる。光学基板13の基体のエッチングには、例えば、ふっ酸等のガラスエッチング液を用いる。パターニングされた保護膜48の開口部にエッチング液が進入し、等方的にエッチングが進行することにより、光学基板13の一面に、各々半球状の複数の凹部(マイクロレンズ20)が形成される。なお、凹部(マイクロレンズ20)が所望の形状(曲率半径など)となるように、エッチング時間や処理温度等が適宜制御される。
【0049】
図4(d)に進み、素子基板12と光学基板13との接合は、素子基板12及び光学基板13の少なくとも一方に、樹脂21(本例では高屈折率樹脂)を全面配置し、両基板を貼り合わせて樹脂21を硬化させることにより行う。このとき、光学基板13に形成された各半球状の凹部(マイクロレンズ20)に樹脂21を充填させる。また、素子基板12の各有機EL素子11と光学基板13の各マイクロレンズ20とが一対一で対向配置されるように、素子基板12と光学基板13との位置合わせ(アライメント)を行う。
【0050】
以上の一連の工程により、有機EL素子11とマイクロレンズ20とを備えた有機EL装置10が完成する。この有機EL装置10は、外部電源との直接的な接続部(補助配線35)が、素子基板12とは別の封止基板14に形成されていることから、外部電源40との電気接続部の剛性が高い。そのため、光プリンタ用のヘッドなど、小型化が図られる各種機器に好ましく適用される。
【0051】
図7は、光プリンタ用ヘッドの平面構成例を模式的に示している。
本例の光プリンタ用ヘッド100は、複数の光射出部101を備えるものである。上記の有機EL装置10を光源とするとき、複数の光射出部101のそれぞれの位置に、有機EL素子11とマイクロレンズ20とが配置される。
また、光プリンタは、上記の光プリンタ用ヘッド100、感光体ドラム、及び搬送機構等を備えることにより構成される。光プリンタの構成は、特開2003−260812号公報に記載の技術が援用可能である。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の電気光学装置の一実施形態に係る有機EL装置を模式的に示す図。
【図2】光学基板の光学的な機能を説明するための模式図。
【図3】補助配線を説明するための部分的な平面図。
【図4】有機EL装置の製造方法の一例を説明するための図。
【図5】封止基板の製造方法の一例を説明するための図。
【図6】光学基板の製造方法の一例を説明するための図。
【図7】光プリンタ用ヘッドの平面構成例を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0054】
10…有機EL装置(電気光学装置)、11…有機EL素子(発光素子)、12…素子基板(第1基板)、12a…素子形成領域、12b…外縁、13…光学基板(第3基板)、14…封止基板(第2基板)、14a…凹部、14b…延在部、20…マイクロレンズ、31…乾燥剤、35…補助配線、35a…端子(第1端子)、35b…端子(第2端子)、40…外部電源、41…電源配線、100…光プリンタ用ヘッド。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を含む電気光学装置であって、
前記発光素子が形成された第1基板と、
前記第1基板と貼り合わされた第2基板と、を備え、
前記第2基板には、前記発光素子と外部電源とを電気的に接続するための補助配線が形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記補助配線は、前記第1基板の外縁の内方で前記発光素子と電気的に接続される第1端子と、前記第1基板の外縁の外方で前記外部電源と電気的に接続される第2端子とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第2基板は、前記第1基板の外縁に対して外方に延在する延在部を有し、
前記第2端子は、前記延在部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記発光素子は、有機EL素子であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第1基板は、薄厚加工されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記発光素子の光学性能を高めるために前記第1基板に貼り合わされた第3基板をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記第3基板は、前記発光素子に対向配置されるレンズを含むことを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第2基板には、前記第1基板における前記発光素子の形成領域と対向する領域に凹部が形成されており、
前記第2基板の凹部には、乾燥剤が配されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項9】
光プリンタ用ヘッドであって、
請求項1から請求項8のいずれかに記載の電気光学装置を光源として用いることを特徴とする光プリンタ用ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の光プリンタ用ヘッドを備えることを特徴とする光プリンタ。
【請求項11】
電気光学装置の製造方法であって、
第1基板上に発光素子を形成する工程と、
第2基板上に前記発光素子と外部電源とを電気的に接続するための補助配線を形成する工程と、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせ、かつ前記発光素子と前記補助配線とを電気的に接続する工程と、を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2基板は、前記発光素子を封止するための封止基板であることを特徴とする請求項11に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項13】
前記発光素子は、有機EL素子であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1基板と前記第2基板とが貼り合わされた状態で、前記第1基板を薄厚加工する工程をさらに有することを特徴とする請求項11から請求項13のいずれかに記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項15】
前記発光素子の光学性能を高める第3基板を、前記第1基板に貼り合わせる工程をさらに有することを特徴とする請求項11から請求項14のいずれかに記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項16】
前記第3基板は、前記発光素子に対向配置されるレンズを含むことを特徴とする請求項15に記載の電気光学装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−59544(P2006−59544A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237095(P2004−237095)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】