説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】電気光学装置において、コンパクトなサイズで高品位なカラー立体画像の表示を実現する。
【解決手段】電気光学装置は、互いの出射光を合成することによってカラー画像を表示するための複数の第1電気光学パネル(1)と、第1電気光学パネルの出射光を透過させつつ、透過光の偏光軸を揃える偏光軸補正手段(1114a)と、偏光軸補正手段の出射光の偏光軸を、互いに交差する方向に所定のタイミングで切り替える偏光軸切り替え手段(1114b)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影画像を観測者に立体的に認識させることが可能な電気光学装置及び電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン上に画像投影する電気光学装置の例として、観察者の左右の目に対応する別々の画像を交互に表示することにより、観測者に投影画像を立体的に認識させるものがある。この種の電気光学装置の一つの原理方式として、互いに直交する偏光軸を有する2種類の画像を交互に投影しつつ、夫々の画像に対応する偏光方向を有する偏光板を左右に配置することにより構成された偏光メガネを装着した観測者が、投影画像を観察するものがある。この方式によれば、観測者が左右の目に夫々取り込んだ画像を脳内で合成することにより、投影画像を立体的に認識することができる。
【0003】
例えば特許文献1では、R(赤色)、G(緑色)及びB(青色)に対応する3枚の液晶パネルの各々に偏光切り替え素子を設けることによって、立体画像をカラー表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7―270780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
互いに直交する偏光軸を有する2種類の画像を投影するためには、予め偏光軸が統一された表示光を、偏光軸を切り替えるためのデバイスに透過させる必要がある。特許文献1では、3枚の液晶パネルからの光成分を合成することで表示光が形成されるため、液晶パネルの枚数分だけ偏光を切り替えるためのデバイスを複数配置する必要があるとされている。そのため、電気光学装置を構成する部品填数が多くなり、製造コストや製品のサイズの増大を招いてしまうという問題点がある。また、偏光を切り替えるためのデバイスが複数存在するため、液晶パネルと偏光切り替え用のデバイスの動作タイミングが好適になるように同期制御することが困難になってしまうという問題点もある。
【0006】
本発明は例えば上記問題点等に鑑みてなされたものであり、コンパクトなサイズで高品位なカラー立体画像を表示可能な電気光学装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気光学装置は上記課題を解決するために、互いの出射光を合成することによってカラー画像を表示可能な複数の第1電気光学パネルと、前記複数の第1電気光学パネルの各々からの出射光を透過させつつ、該透過された出射光の各々の偏光軸を揃える偏光軸補正手段と、前記偏光軸補正手段からの出射光の偏光軸を、互いに交差する方向に所定のタイミングで切り替える偏光軸切り替え手段とを備える。
【0008】
本発明に係る電気光学装置は、互いに交差する偏光軸を有する2種類の画像を交互に投影することが可能である。この投影された2種類の画像を、例えば左右の目の位置に対応するカメラで撮影した画像など、観察者の左右の目で視認される2種類の画像としておけば、夫々の画像に対応する偏光板を左右に配置して構成された偏光メガネを装着した観測者によって観察されることにより、立体的に認識することができる。尚、表示される立体画像は、静止画及び動画を問わない。互いに交差する二つの偏光軸は、典型的には若しくは理想的には直交するが、立体表示に悪影響が及ばない程度であれば、直交からずれてもかまわない。
【0009】
複数の第1電気光学パネルは、互いの出射光を合成することによって、カラー画像を表示することができる。ここで、複数の第1電気光学パネルは、典型的には、RGBに対応する3枚の電気光学パネルであってもよいし、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(キー)に対応する4枚の電気光学パネルであってもよい。また、夫々単板でカラー表示が可能な複数の電気光学パネルであってもよい。
【0010】
第1電気光学パネルは、例えば液晶パネルであり、例えば、画素スイッチング用のトランジスタ、データ線、走査線及び画素電極等が形成された素子基板と、対向電極が形成された対向基板との間に、液晶などの電気光学物質を挟持することによって構成される。電気光学パネルの駆動方式は種々の態様が考えられるが、例えば、画像信号がデータ線及び画素電極間に電気的に接続されたトランジスタがオンオフされることによって、予め規定されるタイミングで、データ線からトランジスタを介して画素電極に供給される、所謂アクティブマトリクス方式による駆動方式を適用することが可能である。尚、電気光学パネルは透過型又は反射型を問わず、光源から入射された光を画像信号に対応する出射光として出力する。
【0011】
偏光軸補正手段は、複数の第1電気光学パネルの各々からの出射光を透過させつつ、該透過された出射光の各々の偏光軸を揃える。ここで、「偏光軸を揃える」とは、出射光の夫々の偏光軸が完全に同一方向に一致させられた状態の他に、当該電気光学装置の正常な動作において観測者に立体的に画像を認識させるための2種類の画像を形成する際に、悪影響を殆ど或いは全く与えない程度に揃えられた(つまり、偏光軸の方向が一致する状態に近づけられた)状態をも含む広い趣旨である。例えば、3枚の第1電気光学パネルからの出射光の偏光方向が互いに異なる場合には、2枚の第1電気光学パネルの偏光方向を、残り1枚の第1電気光学パネルの偏光方向に揃えてもよいし、3枚の第1電気光学パネルの偏光方向をいずれの偏光方向とも異なる他の方向に揃えてもよい。また、3枚の第1液晶パネルのうち2枚の第1電気光学パネルの出射光の偏光方向が予め一致している場合には、残り1枚の第1液晶パネルの偏光方向を該2枚の第1電気光学パネルの偏光方向に揃えてもよいし、逆に予め偏光方向が一致している2枚の第1電気光学パネルの偏光方向を、残り1枚の第1電気光学パネルの偏光方向に揃えてもよい。
【0012】
尚、偏光軸補正手段に夫々の液晶パネルからの光成分を入射させる際には、偏光軸補正手段の前段において、複数の第1電気光学パネルからの出射光の光路上にプリズム等を配置することにより、予め複数の第1電気光学パネルからの複数の出射光を一の光束にまとめるとよい。このようにすると、一の偏光軸補正手段によって、複数の第1電気光学パネルからの出射光の偏光軸をまとめて揃えることが可能となる。すると、偏光軸補正手段を第1電気光学パネルの各々に設ける必要がなくなるため、偏光軸補正手段の部品填数の削減を図ることができるので、製造コストの削減と製品サイズのコンパクト化を両立することができる。
【0013】
尚、上述の例のように、偏光軸補正手段によって特定の色に対応する出射光の偏光方向を変化させる場合には、特定の波長を有する光の偏光軸のみを変化させる波長依存性或いは波長選択性のあるデバイスを、偏光軸補正手段として用いるとよい。このようなデバイスとしては、後に詳述するが、例えばカラーリンク社製波長選択性偏光ローテーター・カラーセレクト(登録商標)などを用いることができる。
【0014】
偏光軸切り替え手段は、偏光軸補正手段からの出射光の偏光軸を、互いに交差する方向に所定のタイミングで切り替える。前述の偏光軸補正手段によって、予め偏光軸の揃えられた複数の第1電気光学パネルからの出射光は、偏光軸切り替え手段によって、所定のタイミングで偏光軸を切り替えられることによって、観測者の左右の目に対応する、互いに交差する偏光軸を有した2種類の画像を、例えばスクリーン上に投影することができる。
【0015】
第1電気光学パネルには、例えば画像信号供給回路などの画像信号供給手段から、上述の2種類の画像に対応する画像信号が予め規定された一定又は不定のタイミングで供給される。本発明における「所定のタイミングで切り替える」とは、このような画像信号の供給タイミングに同期するように、偏光軸を切り替えることを広く意味する趣旨である。即ち、観測者の左右の目に対応する2種類の画像が、互いに直交する偏光軸を有するように偏光軸切り替え手段の切り替えタイミングを制御すればよい。
【0016】
特許文献1では、偏光軸を切り替えるための偏光切り替え素子が液晶パネル毎に存在するため、同期制御すべきパラメータが多く、その制御が困難である。これに対し、本発明に係る電気光学装置では、第1電気光学パネル毎に偏光軸切り替え手段を設ける必要がないため、このような同期制御に関する煩わしさは軽減又は解消させる。つまり、偏光軸切り替え手段に対する入射光の偏光軸を所定のタイミングで切り替えるというシンプルな制御を行うだけで、高品位な画像を表示することが可能である。
【0017】
偏光軸切り替え手段は、例えばTN(Twisted Nematic)液晶を基板間に挟持した液晶パネルなどの電気光学パネルとして形成される。この場合、第1液晶パネルと同様に、例えば、画素スイッチング用のトランジスタ、データ線、走査線及び画素電極等が形成された素子基板と、対向電極が形成された対向基板との間に、液晶などの電気光学物質を挟持することによって構成するとよい。
【0018】
以上説明したように、本発明に係る電気光学装置によれば、コンパクトなサイズで高品位なカラー画像を表示可能な電気光学装置を実現することができる。
【0019】
本発明の電気光学装置の一の態様では、前記複数の第1電気光学パネルは、表示画像に対応する画像信号を供給する画像信号供給手段を有しており、該画像信号供給手段は、前記所定のタイミングの直後から所定の期間において、黒表示に対応する画像信号を供給する。
【0020】
偏光軸切り替え手段は、互いに交差するように偏光軸を切り替える。ここで、偏光軸切り替え手段が、上述の例のように、液晶などの電気光学物質を基板間に挟持した電気光学パネルとして形成されている場合、偏光軸の切り替えは、例えば表示光が透過する透過領域に配線された走査線を、有限の時間をかけて順次走査することによって行われる。このように偏光軸の切り替えに、有限な時間を要する場合が考えられる。仮に、偏光軸切り替え手段の切り替え動作(即ち、透過光の偏光軸を切り替える動作)の途中に、表示光が透過してしまうと、偏光軸切り替え手段からの出射光の偏光軸が、一に定まらない可能性が考えられる。すると、例えば、本来、右目用の画像となるべき画像に左目用の画像が混入するなど、左目用の画像と右目用の画像とが混在してしまい、投影画像の画質の低下や、更にひどい場合には、観測者が画像を立体的に認識することが困難になってしまう。
【0021】
本態様に係る電気光学装置では、偏光軸切り替え手段の切り替え動作が行われる所定の期間において、画像信号供給手段から黒表示に対応する画像信号を供給することによって、このような問題を解決することができる。つまり、偏光軸切り替え手段からの出射光の偏光軸が、一に定まらない可能性がある所定の期間において投影画像を黒表示することにより、仮に互いに交差する偏光軸を有する画像が互いに混入したとしても、この期間において表示される画像は黒表示であるので、立体画像に対して影響を与えない。言い換えれば、左右の画像を切り替えるタイミングに対応する所定の期間において黒表示を行うことで、観測者の左右の目に対応する2種類の画像を明確に分離することができる。
【0022】
「所定の期間」は、偏光軸切り替え手段の切り替え動作が行われる期間(即ち、偏光軸切り替え手段からの出射光の偏光軸が、一に定まらない可能性がある期間)を意味する。尚、現実的には、所定の期間は、偏光軸切り替え手段の切り替え動作に要する期間に加え、若干のマージンをとって設定することが好ましい。但し、黒表示がなされる所定の時間が長くなると、その分、本来の投影画像の表示時間が短くなるので、画質が低下する(例えば暗くなる)要因となりうる。従って、黒表示を行うべき「所定の期間」の長さは、これらの要素を勘案して投影画像の画質が最良となるように、理論的、実験的或いはシミュレーションによって予め設定しておくことが好ましい。
【0023】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記偏光軸補正手段への入射光が一の光束になるように、前記複数の第1電気光学パネルの各々の出射光を屈折させるプリズムを備える。
【0024】
この態様によれば、例えば、偏光軸補正手段の前段において、複数の第1電気光学パネルの光成分の光路上にプリズムを配置することで、夫々の光成分が偏光軸補正手段に入射する前に、プリズムによって一の光束にまとめられる。即ちプリズムは、典型的には、ダイクロイックミラー面を有する、合成プリズム或いはダイクロイックプリズムとして機能する。すると、偏光軸補正手段は、当該一の光束について偏光軸を揃えればよいので、偏光軸補正手段を複数の第1電気光学パネル毎に設ける必要がなくなる。その結果、部品填数の削減を図ることができるので、製造コストの削減と製品サイズのコンパクト化を両立することができる。なお、このようなプリズムに代えて、複数のダイクロイックミラーを組み合わせて構成される合成光学系を採用することも可能である。
【0025】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記偏光軸切り替え手段は、TN液晶分子を含んでなる第2電気光学パネルである。
【0026】
この態様によれば、偏光軸切り替え手段は、TN液晶を基板間に挟持した液晶パネルなどの電気光学パネルである。この場合、第1液晶パネルと同様に、例えば、画素スイッチング用のトランジスタ、データ線、走査線及び画素電極等が形成された素子基板と、対向電極が形成された対向基板との間に、液晶などの電気光学物質を挟持することによって構成することができる。
【0027】
上述の偏光軸切り替え手段が第2電気光学パネルである態様では、前記複数の第1電気光学パネルにおける表示画像の更新タイミングと、前記所定のタイミングとが同期するとよい。
【0028】
この態様によれば、第1電気光学パネルの表示画像の書き換えタイミングに合わせて、偏光軸切り替え手段としての第2電気光学パネルの走査タイミングを同期することによって、左目用の画像と右目用の画像とが混在することを効果的に抑制することができる。その結果、投影される立体画像の画質を効果的に向上させることが可能となる。尚、走査タイミングの同期に関する具体例としては、第1及び第2電気光学パネルのフィールド周波数を同じに揃えることが好ましい。第1及び第2電気光学パネルで、共通のクロック信号及び共通のトリガ信号を用いれば、このように同期させることは容易である。
【0029】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記カラー画像を拡大又は縮小して投影させるための投影レンズを備える。
【0030】
この態様では、表示光を投影レンズに透過させることによって、例えば画像が表示されるスクリーン面に拡大又は縮小して投影することができる。この場合、投影レンズは、第1電気光学パネル及び偏光軸補正手段間、偏光軸補正手段及び偏光軸切り替え手段間、並びに偏光軸切り替え手段及びスクリーン面間のいずれに配置されていてもよい。
【0031】
上述の投影レンズを有する態様では、前記投影レンズからの出射光が前記偏光軸補正手段及び前記偏光軸切り替え手段を透過してもよい。
【0032】
この態様では、投影レンズは、第1電気光学パネル及び偏光軸補正手段間に配置されることによって、投影レンズからの出射光が偏光軸補正手段及び偏光軸切り替え手段を透過するように構成されている。
【0033】
また上述の投影レンズを有する態様では、前記偏光軸切り替え手段からの出射光が前記投影レンズを透過してもよい。
【0034】
この態様では、投影レンズは、偏光軸切り替え手段及び例えば画像が投影される面であるスクリーン面間に配置されることによって、偏光軸切り替え手段からの出射光が投影レンズを透過するように構成されている。尚、投影レンズは、第1電気光学パネル、偏光軸補正手段及び偏光軸切り替え手段と一体的に組み合わされていてもよいし、これらに後付けで取り付けられるように構成されていてもよい。
【0035】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様も含む)を備える。
【0036】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品質な表示を行うことが可能な、投射型の液晶プロジェクタ等の各種電子機器を実現できる。
【0037】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係る液晶プロジェクタの全体構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る液晶プロジェクタの偏光切替えユニットを透過する各段階における、クロスプリズムからの出射光が有する偏光軸を模式的に示す概念図である。
【図3】本実施形態に係る液晶プロジェクタによる投影画像を、観測者が観測する際に使用する偏光メガネの使用形態を表わす模式図である。
【図4】本実施形態に係る液晶プロジェクタの液晶ライトバルブに格納された液晶パネルの構成を示す平面図である。
【図5】図4のH−H´断面図である。
【図6】本実施形態に係る液晶プロジェクタの液晶ライトバルブに格納された液晶パネルの概略構成を示すブロック図である。
【図7】本実施形態における液晶プロジェクタの偏光軸切り替えパネルの透過領域における立体的な構成を表す斜視図である。
【図8】本実施形態に係る液晶プロジェクタの偏光軸切り替えパネルの概略構成を示すブロック図である。
【図9】本実施形態に係る液晶プロジェクタの動作に関して、液晶パネル及び偏光軸切り替えパネルに入出力される各制御信号のタイミングチャートである。
【図10】変形例に係る液晶プロジェクタの動作に関して、液晶パネル及び偏光軸切り替えパネルに入出力される各制御信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、本発明に係る電気光学装置を適用した電子機器の一例である投影型の液晶プロジェクタを例に説明する。
<液晶プロジェクタの構成>
先ず、本実施形態に係る液晶プロジェクタの全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る液晶プロジェクタの全体構成を模式的に示す断面図である。
【0040】
図1において、本実施形態に係る液晶プロジェクタ1100は、RGB用の3枚の液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bを用いた複板式カラープロジェクタとして構築されている。液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bの各々は、液晶パネル1が液晶プロジェクタ1100の外壁に固定するための所定の保持ケースに格納されて構築されている。尚、液晶パネル1は、本発明における「第1電気光学パネル」の一例である。
【0041】
図1に示すように、液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から光源光が発せられると、2枚のミラー1106、2枚のダイクロイックミラー1108及び3つの偏光ビームスプリッタ(PBS)1113によって、光源光はRGBの3原色に対応する光成分R、G及びBに分けられる。各々の光成分は、対応する液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bに夫々導かれる。尚、この際、光路における光損失を防ぐために、光路の途中にレンズを適宜設けてもよい。そして、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bにより夫々変調された3原色に対応する光成分は、クロスプリズム1112により単一の光束に合成された後、偏光軸切り替えユニット1114に入射する。
【0042】
偏光軸切り替えユニット1114は、本発明における「偏光軸補正手段」の一例たるカラーセレクトパネル1114aと、本発明における「偏光軸切り替え手段」の一例たる偏光軸切り替えパネル1114bとを含んで構成されている。偏光軸切り替えユニット1114を透過した出射光は、投影レンズ1115を透過した後、スクリーン1120にカラー映像として拡大投影される。
【0043】
尚、本実施形態に係る液晶プロジェクタ1100では、投影レンズ1115は偏光軸切り替えユニット1114を透過した出射光を拡大投影する例を示しているが、液晶プロジェクタ1100への要求仕様に応じてスクリーン1120に縮小して投影させてもよい。或いは、複数の投影レンズ1115を備え、それらを切り替え可能なように構成することによって、拡大投影及び縮小投影の両者が可能なように構成してもよい。
【0044】
また、本実施形態における変更切り替えユニット1114は、その出射光が投影レンズ1115に入射するような位置に(即ち液晶プロジェクタ1100内において投影レンズ1115よりも内部側に)配置されているが、逆に投影レンズ1115からの出射光が偏光切り替えユニット1114に入射するように(即ち図1における偏光切り替えユニット1114と投影レンズ1115との位置を逆に)配置してもよい。この場合、偏光切り替えユニット1114は、液晶プロジェクタ1100本体と一体的に構成されていてもよいし、本体に脱着可能な取り付け部品として構成されていてもよい。このように偏光切り替えユニット1114をプロジェクタ本体に後付け可能な取り付け部品として構成すると、一般的に流通する種々のプロジェクタに取り付けることによって、実質的に本発明に係る電気光学装置を極めて容易に実現することができるので、極めて実用的である。
【0045】
本実施形態では、液晶ライトバルブ100R、100B及び100Gには、ダイクロイックミラー1108及び偏光ビームスプリッタ1113によって、RGBの各原色に対応する光成分が入射するので、RGB用の3枚の液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bの夫々にカラーフィルタを設ける必要はない。尚、偏光ビームスプリッタ1113を用いない場合には、逆に、RGB用の3枚の液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bの夫々にカラーフィルタを設けてもよい。
【0046】
液晶プロジェクタ1100は、左目用の画像と、右目用の画像とを所定のタイミングで交互にスクリーン1120に投影することにより、偏光メガネを装着した観察者が、投影画像を立体的に認識できるように構成されている。尚、左目用の画像及び右目用の画像を切り替えるタイミングや、観測者が装着する偏光メガネの具体的な態様については、後述する。
【0047】
ここで、図2を参照して、偏光軸切り替えユニット1114を透過する各段階における、クロスプリズム1112からの出射光の偏光軸について、具体的に説明する。図2は、偏光切替えユニット1114を透過する各段階における、クロスプリズム1112からの出射光が有する偏光軸を模式的に示す概念図である。
【0048】
クロスプリズム1112からの出射光は複数の液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bからの光成分が合成されている。本実施形態では、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bのうち、液晶ライトバルブ100R及び100Bからの光成分は同じ方向(X方向)の偏光軸を有しているが、液晶ライトバルブ100Gからの光成分は、液晶ライトバルブ100R及び100Bからの光成分に対して90度異なる方向(Y方向)の偏光軸を有している。そのため、RGBの光成分が合成されたクロスプリズム1112からの出射光は、X方向及びY方向に偏光軸を有している。
【0049】
このように複数の方向に偏光軸を有するクロスプリズム1112からの出射光は、偏光軸切り替えユニット1114の一部として組み込まれているカラーセレクトパネル1114aを透過することによって、その偏光軸を一の方向に揃えることができる。このような偏光軸の統一は、特定の色に対応する光成分について、偏光軸の方向を所定の角度だけ変化させる特性を有するデバイスを、カラーセレクトパネル1114aとして用いることで実現することができる。カラーセレクトパネル1114aに適したデバイスとしては、例えば、カラーリンク社製の波長選択性偏光ローテーター・カラーセレクト(登録商標)が挙げられる。この製品は、特定の波長を有する光成分の偏光軸を、予め設定された所定の角度だけ変化させるという特性を有しており、カラーセレクトパネル1114aとして好適に機能する。
【0050】
本実施形態では、液晶ライトバルブ100Gからの光成分は、X方向の偏光軸を有する液晶ライトバルブ100R及び100Bの光成分に対して、90度ずれたY方向の偏光軸を有している。そのため、液晶ライトバルブ100Gからの光成分に対応する波長を有する光に対して、偏光軸を90度回転させる特性を有するデバイスを、カラーセレクトパネル1114aとして用いている。その結果、複数の偏光軸を有するクロスプリズム1112からの出射光は、カラーセレクトパネル1114aを透過することによって、その偏光軸を揃えることができる。上述の特許文献1では、RGBに対応する複数の液晶パネル100の各々に、偏光軸を揃えるための偏光切り替え素子を配置する必要があったが、本実施形態では一つのカラーセレクトパネル1114aを配置するのみで、偏光軸を揃えることが可能である。その結果、液晶プロジェクタ1100を構築するための部品の填数を少なく抑えることができ、製造コストの削減に貢献することができる。
【0051】
カラーセレクトパネル1114aからの出射光は、カラーセレクトパネル1114aと共に偏光軸切り替えユニット1114の一部を構成する偏光軸切り替えパネル1114bに入射する。偏光軸切り替えパネル1114bは、カラーセレクトパネル1114aからの出射光の偏光軸を互いに直交する方向(即ちX方向とY方向)に所定のタイミングで交互に切り替える。ここで、図2(a)及び(b)は、夫々左目用の画像及び右目用の画像に対応する表示光の偏光軸を模式的に示す概念図である。Y方向の偏光軸を有するカラーセレクトパネル1114aの出射光は、あるタイミングでは偏光切り替えパネル1114aを透過することによって偏光軸がX方向に切り換えられる(図2(a)参照)。また、別のタイミングでは、偏光軸はY方向のまま維持される(図2(b)参照)。このように偏光軸切り替えパネル1114bを制御することによって、互いに直交する方向の偏光軸を有する、左目用の画像と右目用の画像とに夫々対応した表示光を形成することが可能となる。
【0052】
続いて、前述の液晶プロジェクタ1100によってスクリーン1120に投影された映像を観測する際に、観測者が装着する偏光メガネについて説明する。ここで、図3は、本実施形態に係る液晶プロジェクタ1100による投影画像を、観測者が観測する際に使用する偏光メガネの使用形態を表わす模式図である。観測者は、図3に示す偏光メガネ2000を介してスクリーン1120に投影された画像を観測することによって、投影画像を立体的に認識することができる。
【0053】
偏光メガネ2000は、左目用レンズ2100と右目用レンズ2200とが、フレーム2300に固定されることによって構成されている。左目用レンズ2100は、左目用の画像の偏光軸と同じ方向の偏光方向(即ちX方向)を有する偏光板から形成されている。一方、右目用レンズ2200は、右目用の画像の偏光軸と同じ方向の偏光方向(即ちY方向)を有する偏光板から形成されている。その結果、左目用の画像に対応する表示光は偏光軸と同じ偏光方向を有する左目用レンズ2100を透過することができるが、偏光軸と異なる偏光方向を有する右目用レンズ2200は透過することができない。逆に右目用の画像に対応する表示光は、偏光軸と同じ偏光方向を有する右目用レンズ2200を透過することができるが、偏光軸と異なる偏光方向を有する左目用レンズ2100は透過することができない。
【0054】
このように、左目用レンズ2100及び右目用レンズ2200の透過光は、偏光メガネ2000を透過することによって、夫々、観測者の左目及び右目のみに入射することになる。その結果、偏光メガネ200を装着した観測者は、左目用の画像と右目用の画像とを夫々左右の目で別々に認識することができ、スクリーン1120に投影された画像を立体的に認識することが可能となる。
<液晶パネルの構成>
続いて、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bに格納されている液晶パネル1の構造について図4及び図5を参照して説明する。図4は、本実施形態における液晶ライトバルブ100に格納された液晶パネル1の構成を示す平面図であり、図5は、図4のH−H´断面図である。
【0055】
図4及び図5に示すように、液晶パネル1において、TFTアレイ基板10は対向基板20と互いに対向するように配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0056】
図4において、シール材52の内側に並行して、遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。画像表示領域10aの周辺のうち、シール材52の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101、及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。サンプリング回路7は、この一辺に沿ったシール材52よりも内側に、額縁遮光膜53に覆われるように設けられている。また、走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿ったシール材52の内側に、額縁遮光膜53に覆われるように設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐために、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿って、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。また、TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する位置に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができるように構成されている。
【0057】
TFTアレイ基板10上には、外部回路接続端子102と、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104、上下導通端子106等とを電気的に接続するための引回配線90が形成されている。
【0058】
図5において、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aには、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。また、画像表示領域10aの周辺には、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104及びサンプリング回路7を夫々構成する駆動回路用のTFTや引回配線90等が作りこまれた積層構造が形成される。
【0059】
TFTアレイ基板10に形成された画素電極9a上には、図不示の配向膜が形成されている。他方、対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上には、遮光性材料からなるブラックマトリクス23が形成されている。そして、ブラックマトリクス23上に、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aに対向するように形成されている。対向電極21上には図不示の配向膜が形成されている。また、本実施形態における液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0060】
尚、ここでは図示を省略しているが、TFTアレイ基板10上には、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104の他に、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路、検査用パターン等が形成されていてもよい。
【0061】
次に、図6を参照して、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bに格納された液晶パネル1の電気的な構成について説明する。図6は、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bに格納された液晶パネル1の概略構成を示すブロック図である。
【0062】
液晶パネル1は、画像表示領域10a、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104を含んで構成されている。表示光が射出される画像表示領域10aでは、液晶層50に対して駆動電圧をオンオフ制御することによって画像表示が行われる。画像表示領域10aには、n本(nは2以上の自然数)の走査線3aがX(行)方向に延在して形成され、m本(mは2以上の自然数)のデータ線6aがY(列)方向に沿って延在して形成されている。そして、走査線3aとデータ線6aとの各交差に対応して画素部14がマトリクス状に配列されている。
【0063】
コントローラ400は、クロック信号CLK、垂直走査信号VSYNC、水平走査信号HSYNC及び画像信号DATAを外部から取得する。そして、コントローラ400は、これらの取得した信号に基づいて、走査側スタートパルスDY、走査側転送クロックCLY、データ転送クロックCLX及び画像データ信号Dsとを生成する。走査側スタートパルスDYは、走査側(Y側)に対する走査の開始タイミングで出力されるパルス信号である。走査側転送クロックCLYは、走査側(Y側)の走査タイミングを規定するクロック信号である。データ転送クロックCLXは、データ線駆動回路101へデータを転送するタイミングを規定する信号である。画像データ信号Dsは、画像信号DATAに対応する電圧信号である。
【0064】
走査線駆動回路104は、コントローラ400から、走査側スタートパルスDY及び走査側転送クロックCLYを取得することにより、画像表示領域10aにおける走査線3aに対して走査信号G1、G2、G3、…、Gnを順次出力する。走査線駆動回路104は、例えばシフトレジスタから構成されており、コントローラ400から供給される走査側スタートパルスDYを走査側転送クロックCLYに従って、走査線3aを順次駆動、つまり線順次方式によって駆動する。尚、本実施形態では線順次方式で走査線3aを駆動する例を便宜上示しているが、他の駆動方式を用いて走査線を駆動してもよい。
【0065】
データ線駆動回路101は、コントローラ400から、データ転送クロックCLX及び画像データ信号Dsを取得し、画像表示領域10aのデータ線6aに対してデータ信号d1、d2、d3、…、dmを出力する。具体的には、データ線駆動回路101は、ある水平走査期間において画像データ信号Dsをデータ線6aの本数に相当するm個順次ラッチした後、ラッチしたm個の画像データ信号Dsを、次の水平走査期間において、それぞれ対応するデータ線6aにデータ信号d1、d2、d3、…、dmとして一斉に供給するものである。
<偏光軸切り替えパネルの構成>
次に、図7を参照して、本実施形態における偏光軸切り替えパネル1114bの構成について説明する。図7は、本実施形態における偏光軸切り替えパネル1114bの透過領域110aにおける構成を表す斜視図である。ここで、透過領域110aとは、カラーセレクトパネル1114aからの出射光が透過可能な領域である。
【0066】
偏光軸切り替えパネル1114bは、2枚の基板間に液晶層が挟持された構成を有している点において、液晶パネル1と共通の構造を有している。即ち、偏光軸切り替えパネル1114bもまた、液晶パネルの一種である。ここでは、偏光切替えパネル1114bの構造について、主に液晶パネル1と相違する点について主に説明する。
【0067】
偏光軸切り替えパネル1114bの透過領域110aにおいて、素子基板110及び対向基板120上には、夫々、走査電極109a及び対向電極121が形成されている。走査電極109aには、走査電極駆動ドライバ204が電気的に接続されることにより、その電位が制御される。図7では説明の便宜上の都合から走査電極109aの詳細な形状について図示を省略しているが、実際には、後述する図8に示すように、走査電極109aはX方向に延びた形状を有するn本の複数の電極に分割されており、走査電極駆動ドライバ204は、分割された夫々の走査電極109aについて電圧を印加することができる。対向電極121は対向基板120上にベタ状に形成されている。ここで、対向電極121には接地線170が電気的に接続されることにより、その電位が0Vに保持されている。尚、走査電極109a及び対向電極121は、例えばITO等の透明材料からなる。
【0068】
偏光軸切り替えパネル1114bの透過光の偏光軸は、素子基板110及び対向基板120間に挟持して封入された液晶層150の配向状態に依存する。液晶層150の配向状態は、素子基板110上に形成された走査電極109a及び対向基板120上に形成された対向電極121間の電位差によって生ずる電界によって制御される。
【0069】
液晶層150は、TN液晶を含んでなる。そのため、走査電極109a及び対向電極121間の電界がオフ状態の場合は、TN液晶分子の配向方向が、素子基板110側と対向基板120側とにおいて90度ねじれているため、偏向軸切り替えパネル1114bを透過する表示光の偏向軸は、90度変更されることとなる(図7(a)を参照)。一方、走査電極109a及び対向電極121間の電界がオン状態にある場合には、TN液晶分子の配向状態が基板間に生ずる電界によって変更されるので、偏向軸切り替えパネル1114bを透過した表示光の偏向軸は変更されない(図7(b)を参照)。
【0070】
尚、液晶層150を構成するTN液晶分子は駆動電圧に対する応答性が速いものが好ましい。仮に、応答性が遅いと透過光の偏向軸の切り替えタイミングを精度よく制御することが困難になるため、左目用の画像と右目用の画像との切り分け制度が低下し、画質が低下してしまうからである。
【0071】
続いて、図8を参照して、偏光軸切り替えパネル1114bの電気的な構成について説明する。図8は、偏光軸切り替えパネル1114bの概略構成を示すブロック図である。偏光軸切り替えパネル1114bは、透過領域110a及び走査電極駆動ドライバ204を含んで構成されている。
【0072】
偏光軸切り替えパネル1114bの切り替え動作は、コントローラ400によって制御される。ここで、コントローラ400は、図6において示した液晶パネル1におけるコントローラ400と共用するものである。
【0073】
偏光軸切り替えパネル1114bの透過領域110aには、n本(nは2以上の自然数)の走査電極13aがX(行)方向に延在して形成されている。走査電極109aの電位は、電気的に接続された走査電極駆動ドライバ204によって印加電圧値を制御可能である。この印加電圧値の具体的な制御については、後に詳述する。
【0074】
コントローラ400は、クロック信号CLK及び垂直走査信号VSYNCを取得し、走査側スタートパルスDY及び走査側転送クロックCLYを生成する。走査電極駆動ドライバ204は、コントローラ400から、走査側スタートパルスDY及び走査側転送クロックCLYを取得することにより、n本の走査電極109aに対応する駆動電圧L1、L2、L3、…、Lnを順次出力する。走査電極駆動ドライバ204は、例えばシフトレジスタから構成されており、コントローラ400から供給される走査側スタートパルスDYを走査側転送クロックCLYに従って、駆動電圧を順次出力する。尚、本実施形態では線順次方式で駆動電圧Lnを出力する例を便宜上示しているが、他の駆動方式を用いてもよい。
<液晶パネル及び偏光軸切り替えパネルの制御>
続いて図9を参照して、本実施形態に係る液晶プロジェクタ1100の動作に関して、液晶パネル1及び偏光軸切り替えパネル1114bに入出力される各制御信号の観点から説明する。図9は、本実施形態に係る液晶プロジェクタ1100の動作に関して、液晶パネル1及び偏光軸切り替えパネル1114bに入出力される各制御信号のタイミングチャートである。
【0075】
図9(1)は、液晶パネル1の走査線駆動回路104及び偏光軸切り替えパネル1114bの走査電極駆動ドライバ204に対して供給される走査側スタートパルスDYの供給タイミングを表わしている。走査側スタートパルスDYが走査線駆動回路104に供給されると、液晶パネル1では、走査線駆動回路104がn本の走査線3aに対し走査信号Gnの供給を開始する。一方、偏光軸切り替えパネル1114bでは、走査側スタートパルスDYが走査電極駆動ドライバ204に供給されると、走査電極駆動ドライバ204は、n本の走査電極109aに対して駆動電圧Lnの供給を開始する。
【0076】
図9(2)は、液晶パネル1の走査線駆動回路104及び偏光軸切り替えパネル1114bの走査電極駆動ドライバ204に対して供給される走査側転送クロックCLYの供給タイミングを表わしている。本実施形態における走査側転送クロックCLYは、オンとオフの2値の電圧値を一定周期で交互に供給する。走査側スタートパルスDYが供給されると、走査側転送クロックCLYに同期して、走査線駆動回路104はn本の走査線3aに対して走査信号Gnを順次供給すると共に、走査電極駆動ドライバ204は、n本の走査電極209aに対して駆動電圧Lnを順次供給する。
【0077】
図9(3)は、液晶パネル1の走査線駆動回路104の走査信号Gnの供給タイミングを表わしている。コントローラ400から走査側スタートパルスDYが供給された後、走査側転送クロックCLYの半周期毎に、走査信号G1、G2、G3、・・・・Gnが順次走査線3aに供給される。n本の走査線3aの各々に対し、1フィールド期間中に一通り走査信号Gnが供給されると、次の走査側スタートパルスDYの供給タイミングを待って、再びn本の走査線3aに対し走査信号Gnが供給される。
【0078】
図9(4)は、偏光軸切り替えパネル1114bの走査電極駆動ドライバ204の駆動電圧Lnの供給タイミングを表わしている。コントローラ400から走査側スタートパルスDYが供給された後、第1フィールド期間では、走査側転送クロックCLYの半周期毎に、+Vの値を有する駆動電圧L1、L2、L3、・・・・Lnが順次走査電極109aに供給される。n本の走査電極109aの各々に対し、1フィールド期間中に一通り+Vの駆動電圧Lnが供給されると、次の走査側スタートパルスDYの供給タイミングを待って、第1フィールド期間が終了する。第2フィールド期間では、再びn本の走査電極109aに対しゼロの駆動電圧Lnが供給される。n本の走査電極109aの各々に対し、1フィールド期間中に一通りゼロの駆動電圧Lnが供給されると、次の走査側スタートパルスDYの供給タイミングを待って、第2フィールド期間が終了する。このように、n本の走査電極109aに対して駆動電圧Lnをフィールド期間毎にオンオフ制御することにより、液晶層150の配向状態を変更することができる。
【0079】
尚、第3フィールド期間では、再び駆動電圧Lnがオン状態にされるが、第1フィールド期間とは逆極性で印加されている。これは、一方の極性を有する駆動電圧Lnを供給し続けると、液晶層150に焼き付きが生じることによって、偏光軸切り替えパネル1114bの寿命が縮まってしまうことを防止するためである。尚、第4フィールド期間では、第2フィールド期間と同様にゼロの駆動電圧Lnが順次供給される。
【0080】
ここで、駆動電圧L1、L2、L3、・・・・Lnの供給タイミングは、液晶パネル1における走査信号G1、G2、G3、・・・・Gnの供給タイミングに対し、走査側転送クロックCLYの反周期分だけ遅延している。この遅延は、液晶パネル1及び偏光軸切り替えパネル1114bに封入されている液晶の反応速度が異なるなどの要因によって、左目用の画像と右目用の画像とが混在してしまうことを防ぐために設けているものである。そのため、遅延期間の長さは、液晶パネル1及び偏光軸切り替えパネル1114bの特性を考慮して、左目用の画像と右目用の画像とを投影するための、互いに90度異なる偏光軸を有する表示光が形成されるように、実験的又は理論的に求めたり、シミュレーションによって算出することによって決定するとよい。
【0081】
以上説明したような制御を繰り返すことによって、液晶パネル1と偏光軸切り替えパネル1114bとを駆動させることで、互いに90度異なる偏光軸を有する、左目用の画像と右目用の画像とを好適に加工することが可能となる。
【0082】
尚、本願では液晶パネル1における走査線3aと偏光軸切り替えパネル1114bにおける走査電極109aの本数が同じ例について説明しているが、液晶パネル1における走査線3aと偏光軸切り替えパネル1114bにおける走査電極109aの本数は異なっていてもよい。但し、この場合は、液晶パネル1と偏光軸切り替えパネル1114bのフィールド周波数が同期するように、走査線駆動回路104及び走査電極駆動ドライバ204を制御するとよい。例えば、液晶パネル1と偏光軸切り替えパネル1114bのフレーム周期が同じになるように走査線駆動回路104及び走査電極駆動ドライバ204を制御することが好ましい。
<変形例>
続いて、図10を参照しながら、上述の実施形態の変形例について説明する。図10は、変形例に係る液晶プロジェクタ1100の動作に関して、液晶パネル1及び偏光軸切り替えパネル1114bに入出力される各制御信号のタイミングチャートである。本変形例に係る液晶プロジェクタ1100は、偏光軸切り替えパネル1114bの切り替え動作が行われるフィールド期間において、液晶パネル1の画像表示領域10aに黒表示がなされる点で上述の実施形態と異なっている。
【0083】
図10に示すように、偏光軸切り替えパネル1114bが駆動電圧Lnを変更することによって、表示光の偏光軸の切り替え動作を行う第1及び第3フィールド期間においては、液晶パネル1のデータ線駆動回路101にから各データ線6aに供給される画像データ電圧Dsをハイレベルに設定することにより、液晶パネル1の画像表示領域10aに黒表示をする。一方、表示光の偏光軸の切り替え動作を行なわれない第2及び第4フィールド期間では、投影画像に対応する画像データ電圧Dsが液晶パネル1のデータ線駆動回路101に供給される。
【0084】
このように、偏光軸切り替えパネル1114bによって表示光の偏光軸の切り替えが行われるフィールド期間において、液晶パネル1の画像表示領域10aに黒表示をするによって、左目用の画像と右目用の画像とが混じることを効果的に防止することができる。つまり、表示光の偏光軸の切り替えが行われる際には、偏光軸切り替えパネル1114bの透過領域110aは、駆動電圧Lnがすでに供給された領域と、まだ供給されていない領域が混在する。これらの領域間においては、液晶層150の配向状態が異なるため、表示光の配向軸が一に規定することができない。そこで、本変形例では、偏光軸切り替えパネル1114bによる表示光の偏光軸の切り替え動作が確実に完了した後で、表示画像を投影することにより、左目用の画像と右目用の画像とが混じることを効果的に防止することができる。
【0085】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置及び電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
1 液晶パネル、 100 液晶ライトバルブ、 1110 液晶プロジェクタ、 1112 クロスプリズム、 1114 偏光軸切り替えユニット、 1114a カラーセレクトパネル、 1114b 偏光軸切り替えパネル、 1115 投影レンズ、 1120 スクリーン、 2000 偏光メガネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの出射光を合成することによってカラー画像を表示可能な複数の第1電気光学パネルと、
前記複数の第1電気光学パネルの各々からの出射光を透過させつつ、該透過された出射光の各々の偏光軸を揃える偏光軸補正手段と、
前記偏光軸補正手段からの出射光の偏光軸を、互いに交差する方向に所定のタイミングで切り替える偏光軸切り替え手段と
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記複数の第1電気光学パネルは、表示画像に対応する画像信号を供給する画像信号供給手段を有しており、
該画像信号供給手段は、前記所定のタイミングの直後から所定の期間、黒表示に対応する画像信号を供給することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記偏光軸補正手段への入射光が一の光束になるように、前記複数の第1電気光学パネルの各々の出射光を屈折させるプリズムを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記偏光軸切り替え手段は、TN液晶分子を含んでなる第2電気光学パネルであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記複数の第1電気光学パネルにおける表示画像の更新タイミングと、前記所定のタイミングとが同期することを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記カラー画像を拡大又は縮小して投影させるための投影レンズを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記投影レンズからの出射光が、前記偏光軸補正手段及び前記偏光軸切り替え手段を透過することを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記偏光軸切り替え手段からの出射光が、前記投影レンズを透過することを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電気光学装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−13265(P2011−13265A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154809(P2009−154809)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】