説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】高い封止性能を備えた電気光学装置を提供する。
【解決手段】本発明の電気光学装置1は、基板10と、基板10上に形成された第1電極12と、第1電極12と対向して形成された第2電極13と、第2電極13を覆って形成された第1無機封止層14と、第1無機封止層14上に形成された有機中間層15と、有機中間層15の端部に接して形成された封止層16と、有機中間層15上に形成された第2無機封止層17と、を有し、封止層16は無機材料を含み、第2無機封止層17は有機中間層15と接しており、第2無機封止層17の端部は封止層16と接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水分や酸素の浸入から表示部を保護する薄膜封止構造を備えた電気光学装置として、特許文献1に記載の電気光学装置が知られている。特許文献1の電気光学装置は、表示部の表面に、第1無機封止層、有機中間層および第2無機封止層を順次積層し、水分や酸素の侵入から表示部を保護している。
【0003】
ところで、表示部が形成される基板の外周部には、第2電極と接続されるドライバー回路や上下コンタクト配線等が引き回されており、凹凸が多い。そのため、第2無機封止層の外周部(第2無機封止層の基板の外周部に形成された部分)に剥離やクラック等が生じる場合がある。そのため、特許文献1の電気光学装置では、第2無機封止層の外周部にエポキシ樹脂からなる外殻補強層を形成し、第2無機封止層の外周部に剥離やクラック等が生じることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−222071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外殻補強層は、有機中間層が熱変形により膨張、収縮した際に、第2無機封止層を外側から補強するものである。第2無機封止層は基板上に形成された大きな凹凸の上に形成されているので、外殻補強層によって外側から補強されたとしても、依然として、剥離やクラック等の生じやすい状態にある。第2無機封止層に剥離やクラック等が生じると、外殻補強層は有機材料で構成されているので、剥離やクラックなどが生じた部分から水分等が表示部に容易に浸入する惧れがある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、高い封止性能を備えた電気光学装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の電気光学装置は、基板と、前記基板上に形成された第1電極と、前記第1電極と対向して形成された第2電極と、前記第2電極を覆って形成された第1無機封止層と、前記第1無機封止層上に形成された有機中間層と、前記有機中間層の端部に接して形成された封止層と、前記有機中間層上に形成された第2無機封止層と、を有し、前記封止層は無機材料を含み、前記第2無機封止層は前記有機中間層と接しており、前記第2無機封止層の端部は前記封止層と接していることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1無機封止層、封止層、及び第2無機封止層が、第2電極を封止するガスバリア層として機能する。本発明では、有機中間層の端部に接する封止層を設けている。基板においてドライバー回路等が引き回されて凹凸が多い部分の上に、封止層を十分な厚みを持たせて形成することで、基板の凹凸を平坦化させることができる。そのため、当該封止層と接する第2無機封止層の端部に剥離やクラック等が生じることを抑制することができる。よって、ガスバリア層のカバレッジ性を向上させることが可能な電気光学装置を提供することができる。
【0009】
本発明の電気光学装置は、前記封止層が、前記有機中間層の外側に形成されていてもよい。
【0010】
この構成によれば、基板の外周部(基板においてドライバー回路等が引き回されて凹凸が多い部分が特に多い領域)の上に、封止層を形成することができる。よって、ガスバリア層のカバレッジ性を確実に向上させることができる。
【0011】
本発明の電気光学装置は、前記封止層が、前記有機中間層を囲んで形成されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、第2電極が封止層によって完全に密閉されるので、封止層から水分等が第2電極及び第1電極に浸入することを抑制することができる。よって、ガスバリア層の封止性を向上させることができる。
【0013】
本発明の電気光学装置は、前記封止層と、前記第2無機封止層の端部とが接する領域が、前記有機中間層を囲んでいてもよい。
【0014】
この構成によれば、第2電極が封止層と第2無機封止層とによって完全に密閉されるので、封止層と第2無機封止層との界面から水分等が第2電極及び第1電極に浸入することを抑制することができる。よって、ガスバリア層の封止性を向上させることができる。
【0015】
本発明の電気光学装置は、前記封止層が、前記第1無機封止層上に、前記第1無機封止層と接して形成されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、封止層及び第1無機封止層の双方が無機材料を含むため、封止層と第1無機封止層とがしっかりと密着する。このため、封止層と第1無機封止層との界面から水分等が第2電極及び第1電極に浸入することを抑制することができる。よって、ガスバリア層の封止性を向上させることができる。
【0017】
本発明の電気光学装置は、前記封止層が、前記第1無機封止層の端部と前記第2無機封止層の端部の間に位置することが望ましい。
【0018】
この構成によれば、封止層が第2無機封止層の外周部の上に形成された構成とは異なり、封止層が第1無機封止層と第2無機封止層17とで挟み込まれた構成となる。よって、パネル額縁を小さくすることができる。
【0019】
本発明の電気光学装置は、前記封止層が、前記基板に接していてもよい。
【0020】
この構成によれば、基板(基板の表面部分)が無機材料を含む場合、封止層と基板とがしっかりと密着する。このため、封止層と基板との界面から水分等が第2電極及び第1電極に浸入することを抑制することができる。よって、ガスバリア層の封止性を向上させることができる。
【0021】
本発明の電気光学装置は、前記第2無機封止層上にカラーフィルター層が形成されていてもよい。
【0022】
電気光学装置の小型化を図る方法として、ガスバリア層上に直接カラーフィルター層を形成する方法がある。特許文献1では、ガスバリア層の外周部に形成される外殻補強層が樹脂からなるため、カラーフィルター層を形成する際のフォトリソ工程で外殻補強層に吸湿、膨潤、溶解等の異常が発生する惧れがあった。これに対し、本発明では、封止層が無機材料を含み、第2無機封止層が封止層に接する構成である。また、第2無機封止層には樹脂からなる外殻補強層が形成されていない。このため、カラーフィルター層が第2無機封止層上に直接形成されても、上述した異常が発生することがない。よって、電気光学装置の小型化を図ることが容易となる。
【0023】
本発明の電気光学装置は、前記封止層が、ポリシラザン、ポリシロキサンの少なくとも1つを含む材料からなることが望ましい。
【0024】
この構成によれば、封止層から水分等が第2電極及び第1電極に浸入することを抑制することができる。よって、ガスバリア層の封止性を向上させることができる。
【0025】
本発明の電気光学装置は、前記第1無機封止層と、前記第2無機封止層とが、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、アルミナの少なくとも1つを含む材料からなることが望ましい。
【0026】
この構成によれば、ガスバリア層の封止性を向上させることを実現することができる。
【0027】
本発明の電気光学装置は、前記封止層が、塗布によって形成されたことが望ましい。
【0028】
この構成によれば、スパッタやCVD等により形成される封止層に比べて、形成される封止層の厚みが大きい。そのため、基板の外周部においてドライバー回路等が引き回されて凹凸が多い部分の上に、封止層を十分な厚みを持たせて形成することができる。これにより、封止層で基板の凹凸を平坦化させることができる。よって、ガスバリア層のカバレッジ性を向上させることができる。
【0029】
本発明の電子機器は、前記電気光学装置を備えていることを特徴とする。
【0030】
この電子機器によれば、上述した電気光学装置を備えているので、高品質な画像表示が可能な信頼性に優れた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態の有機EL装置の模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態の有機EL装置の要部断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態の有機EL装置の模式図である。
【図4】電子機器の一例を示す図である。
【図5】従来例の有機EL装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の模式図である。図1(a)は平面図であり、図1(b)は要部断面図である。
【0034】
なお、以下に示す実施の形態において電気光学装置は、有機機能材料の一例である有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料を用いた有機EL装置を挙げて説明する。
【0035】
図1に示すように、有機EL装置1は、TFT19等の各種配線が形成された基板10と、基板10上に形成された絶縁膜7と、平坦化層8と、平坦化層8上に形成された画素電極(第1電極)12と対向電極(第2電極)13の間に発光層11を挟持した発光素子と、発光素子を区切る画素隔壁9と、第1無機封止層14と、有機中間層15と、封止層16と、第2無機封止層17と、を含んで構成されている。なお、本実施形態において、第1無機封止層14、封止層16、及び第2無機封止層17は、ガスバリア層として機能する。
【0036】
本実施形態の有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFT)を用いたアクティブマトリクス方式のもので、複数の走査線と、各走査線に対して略直角に交差する方向に延びる複数の信号線と、各信号線に並列に延びる複数の電源線とからなる配線構成を有する。なお、本発明においてはTFTなどを用いるアクティブマトリクスは必須ではなく、単純マトリクス向けの素子基板を用いて単純マトリクス駆動させてもよい。
【0037】
基板10としては、いわゆるトップエミッション方式を採用する場合、基板の対向側であるガスバリア層側から発光光を取り出す構成であるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
【0038】
また、いわゆるボトムエミッション方式を採用する場合、基板側から発光光を取り出す構成であるので、基板としては、透明あるいは半透明の基板が用いられる。透明基板としては、例えばガラス、石英ガラス、窒化ケイ素等の無機物や、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の有機高分子(樹脂)を用いることができる。また、前記材料を積層または混合して形成された複合材料を用いることもできる。本実施形態では、トップエミッション方式を採用し、基板10の材料として前述した不透明のプラスチックフィルムを用いる。
【0039】
基板10上には、有機EL装置1を駆動させるための各種配線やスイッチング用TFTや駆動用TFTなどの駆動素子19、及び無機材料または有機材料からなる絶縁膜7などが形成されている。各種配線や駆動素子19は、フォトリソグラフィ技術やエッチング技術等を用いてパターニングすることで形成されている。絶縁膜7は、蒸着法やCVD法、スパッタ法などの公知の成膜法によって形成されている。
【0040】
絶縁膜7は、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)等の無機絶縁材料で形成されている。
【0041】
画素電極12は、仕事関数が5eV以上の正孔注入効果が高い材料によって形成されたものである。このような材料としては、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の金属酸化物が用いられる。なお、本実施形態ではトップエミッション方式が採用されているため、画素電極12は透光性を備える必要がない。したがって、本実施形態では、前記ITOからなる透明導電層の下側に、Al等の光反射性金属層が形成されて積層構造とされ、この積層構造によって画素電極12が形成されている。
【0042】
有機機能層11は、本実施形態では低分子系の有機EL材料からなる有機発光層を含んで形成されたものである。このような有機機能層11としては、例えば画素電極側から正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層が順次積層された構造が知られており、さらに正孔輸送層や電子輸送層を省略した構造や、正孔注入層と正孔輸送層との両方の機能を備えた正孔注入・輸送層を用いたり、電子注入層と電子輸送層との両方の機能を備えた電子注入・輸送層を用いた構造などが知られている。本発明では、このような構造のうち適宜な構造が選択され、形成されている。
【0043】
また、有機機能層11の材料としては、それぞれ公知のものを用いることができる。
例えば、有機発光層の材料としては、本実施形態では白色発光する有機発光材料として、スチリルアミン系発光材料などが用いられる。
さらに、正孔注入層の材料としては、トリアリールアミン(ATP)多量体などが用いられ、正孔輸送層の材料としては、TDP(トリフェニルジアミン)系のものなどが用いられ、電子注入・輸送層の材料としては、アルミニウムキノリノール(Alq3)などが用いられる。
【0044】
有機機能層11上には、該有機機能層11を覆って、対向電極13が形成されている。対向電極13は、本実施形態ではトップエミッション方式であり、光取り出し側となることから、透明導電材料により形成されている。透明導電材料としては、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)が好適とされるが、これ以外にも、例えば酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide:IZO/アイ・ゼット・オー(登録商標))等を用いることができる。なお、本実施形態ではITOを用いる。
【0045】
また、対向電極13は、電子注入効果の大きい材料が好適に用いられる。例えば、カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、リチウム金属、又はこれらの金属化合物である。金属化合物としては、フッ化カルシウム等の金属フッ化物や酸化リチウム等の金属酸化物、アセチルアセトナトカルシウム等の有機金属錯体が該当する。また、透明なITO、酸化錫などの金属酸化物導電層を積層することで電気抵抗の低減を行うことが好ましい。なお、本実施形態では、フッ化リチウムとマグネシウム−銀合金、ITOの積層体を、透明性が得られる膜厚に調整して用いるものとする。
【0046】
なお、対向電極13は、基板10上に形成された図示しないコンタクト部に接続されている。コンタクト部は、基板10の一辺に沿って設けられた図1(a)に示す端子部18に接続されている。
【0047】
本実施形態の有機EL装置1では、前記の画素電極12と機能層11と対向電極13とにより、有機EL素子が形成されている。すなわち、画素電極12と対向電極13との間に電圧が印加されると、画素電極12から正孔注入層に正孔が注入され、正孔輸送層を介して有機発光層に輸送される。また、対向電極13から電子注入層に電子が注入され、電子輸送層を介して有機発光層に輸送される。すると、有機発光層に輸送された正孔と電子とが再結合することにより、有機発光層が発光するようになっている。
【0048】
有機発光層から画素電極側に出射した光は、前記した透明導電層を透過して光反射性金属層に反射され、再度有機発光層側に入射するようになっている。なお、対向電極13は半透過反射膜として機能するので、所定範囲の波長以外の光は光反射性金属層側に反射され対向電極13と光反射性金属層との間で往復する。このようにして、対向電極13と光反射性金属層との間の光学的距離に対応した共振波長の光だけが増幅されて取り出される。すなわち、対向電極13と光反射性金属層とを含んだこれらの間が共振器として機能するようになっており、発光輝度が高くしかもスペクトルがシャープな光を射出させることが可能になっている。ここで、前記光学的距離は、対向電極13と光反射性金属層との間に含まれる層の光学的距離の和によって求められ、各層の光学的距離は、その膜厚と屈折率との積によって求められる。
【0049】
第1無機封止層14は、対向電極13の基板10上で露出する部位全体を覆って形成されている。第1無機封止層14は、酸素や水分が浸入するのを遮断するためのものである。本実施形態において、第1無機封止層14は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、アルミナの少なくとも1つを含む材料によって形成されている。第1無機封止層14は、水蒸気などのガスを遮断するため緻密で欠陥の無い被膜にする必要があり、低温で緻密な膜を形成できる高密度プラズマ成膜法を用いて形成することが好ましい。
【0050】
有機中間層15は、第1無機封止層14上において少なくとも対向電極13と対向する領域を覆って形成されている。有機中間層15は、画素部11(有機機能層)の形状の影響により、凹凸状に形成された対向電極13の凹凸部分を埋めるように配置される。有機中間層15は、基板10の反りや体積膨張により発生する応力を緩和する機能を有する。また、有機中間層15の上面は略平坦化されている。有機中間層15は、例えばスクリーン印刷方やディスペンス法などを用いて形成することができる。
【0051】
有機中間層15の形成材料としては、親油性で低吸水性を有する高分子材料、例えば、ポリオレフィン系またはポリエーテル系が好ましい。また、メチルトリメトキシシランやテトラエトキシシランなどのアルコキシシランを加水分解させて縮合させた有機珪素ポリマーでもよい。また、アクリルポリオールやメタクリポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、を主成分とし、トリレンジイソシアネートやキシリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物を重合した高分子誘導体や、ビスフェノール系エポキシ化合物にジカルボン酸無水物化合物やアミン化合物などを重合した高分子誘導体等を採用してもよい。更に、3−アミノプロピルトリメトキシシランや3 − グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤等の珪素化合物を含んだ高分子を用いることにより、第1無機封止層14や第2無機封止層17等の無機材料との界面の接着性を向上させることができる。
【0052】
また、有機中間層15の形成材料としては、低温で硬化する材料が好ましく、メタクリレート樹脂やエポキシ樹脂などを主成分とする紫外線硬化型樹脂を用いることもできる。紫外線硬化型樹脂を用いることにより、加熱処理を行うことなく有機中間層15が成膜されるので、加熱による発光層への悪影響を抑えることができる。
【0053】
図5は、従来例の有機EL装置100の模式図である。図5(a)は平面図であり、図5(b)は要部断面図である。
【0054】
表示部が形成される基板の外周部には、対向電極と接続されるドライバー回路や上下コンタクト配線等が引き回されており、凹凸が多い。そのため、第2無機封止層117の外周部(第2無機封止層の基板の外周部に形成された部分)に剥離やクラック等が生じる場合がある。
【0055】
図5に示すように、従来例の有機EL装置100では、第2無機封止層117の外周部にエポキシ樹脂からなる外殻補強層116を形成している。これにより、第2無機封止層117の外周部に剥離やクラック等が生じることを抑制している。
【0056】
しかしながら、外殻補強層116は、有機中間層115が熱変形により膨張、収縮した際に、第2無機封止層117を外側から補強するものである。第2無機封止層117は基板110上に形成された大きな凹凸の上に形成されているので、外殻補強層116によって外側から補強されたとしても、依然として、剥離やクラック等の生じやすい状態にある。第2無機封止層117に剥離やクラック等が生じると、外殻補強層116は有機材料で構成されているので、剥離やクラックなどが生じた部分から水分等が対向電極113及び画素電極112に容易に浸入する惧れがある。
【0057】
また、従来例の有機EL装置100では、第2無機封止層117の外周部の上に外殻補強層116が形成されているため、パネル額縁が大きくなってしまう。
【0058】
そこで、本実施形態の有機EL装置1においては、少なくとも無機材料を含む封止材料を塗布して形成された封止層16が、有機中間層15の外周を覆って形成されている。封止層16は、基板10の外周部におけるガスバリア層(第2無機封止層17)の破壊(クラックの発生)を抑制するものである。
【0059】
本実施形態においては、封止層16が第1無機封止層14に接している。本実施形態の封止層16は、基板10上に形成されたドライバー回路や上下コンタクト配線等の凹凸部分を埋めるように配置される。つまり、封止層16は、第1無機封止層14の上に十分な厚みで形成される。このため、封止層16の上面は平坦化される。
【0060】
封止層16は、例えばスクリーン印刷方やディスペンス法などを用いて形成することができる。なお、本実施形態では、封止層16が、有機中間層15の外周を平面視で閉じた枠状で覆って形成されている。
【0061】
本実施形態において、封止層16は、ポリシラザン、ポリシロキサンの少なくとも1つを含む材料によって形成されている。
【0062】
第2無機封止層17は、有機中間層15の基板上で露出する部位全体を覆うとともに封止層16と接して形成されている。これにより、有機中間層15は、第1無機封止層14と封止層16と第2無機封止層17とにより挟み込まれる構成となっている。第2無機封止層17は、有機中間層15の形状に倣って形成される。有機中間層15の上面は平坦化されているので、有機中間層15の上面に形成される第2無機封止層17も平坦化されている。
【0063】
本実施形態において、第2無機封止層17は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、アルミナの少なくとも1つを含む材料によって形成される。第2無機封止層17は、水蒸気などのガスを遮断するため緻密で欠陥の無い被膜にする必要があり、低温で緻密な膜を形成できる高密度プラズマ成膜法を用いて形成することが好ましい。なお、本実施形態では、第2無機封止層17が封止層16と接する部分が、平面視で閉じた枠状になっている。
【0064】
本実施形態の有機EL装置1によれば、第1無機封止層14、封止層16、及び第2無機封止層17が、対向電極13を封止するガスバリア層として機能する。本発明では、有機中間層15の端部に接する封止層16を設けている。基板10においてドライバー回路等が引き回されて凹凸が多い部分の上に、封止層16を十分な厚みを持たせて形成することで、基板10の凹凸を平坦化させることができる。そのため、当該封止層16と接する第2無機封止層17の端部に剥離やクラック等が生じることを抑制することができる。よって、ガスバリア層のカバレッジ性を向上させることが可能な有機EL装置1を提供することができる。
【0065】
また、この構成によれば、封止層16が有機中間層15の外側に形成されているので、基板10の外周部(基板10においてドライバー回路等が引き回されて凹凸が多い部分が特に多い領域)の上に、封止層16を形成することができる。よって、ガスバリア層のカバレッジ性を確実に向上させることができる。
【0066】
また、この構成によれば、対向電極13が封止層16によって完全に密閉されるので、封止層16から水分等が対向電極13に浸入することを抑制することができる。よって、ガスバリア層の封止性を向上させることができる。
【0067】
また、この構成によれば、対向電極13が封止層16と第2無機封止層17とによって完全に密閉されるので、封止層16と第2無機封止層17との界面から水分等が対向電極13に浸入することを抑制することができる。よって、ガスバリア層の封止性を向上させることができる。
【0068】
また、この構成によれば、封止層16及び第1無機封止層14の双方が無機材料を含むため、封止層16と第1無機封止層14とがしっかりと密着する。このため、封止層16と第1無機封止層14との界面から水分等が対向電極13及び画素電極11に浸入することを抑制することができる。よって、ガスバリア層の封止性を向上させることができる。
【0069】
また、この構成によれば、封止層が第2無機封止層の外周部の上に形成された構成とは異なり、封止層16が第1無機封止層14と第2無機封止層17とで挟み込まれた構成となる。よって、パネル額縁を小さくすることができる。
【0070】
また、この構成によれば、封止層16が、ポリシラザン、ポリシロキサンの少なくとも1つを含む材料からなるので、封止層16から水分等が対向電極13及び画素電極11に浸入することを抑制することができる。よって、ガスバリア層の封止性を向上させることができる。
【0071】
また、この構成によれば、第1無機封止層14と、第2無機封止層17とが、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、アルミナの少なくとも1つを含む材料からなるので、ガスバリア層の封止性を向上させることを実現することができる。
【0072】
また、この構成によれば、封止層16が塗布によって形成されているので、スパッタやCVD等により形成される封止層に比べて、形成される封止層16の厚みが大きい。そのため、基板10の外周部においてドライバー回路等が引き回されて凹凸が多い部分の上に、封止層16を十分な厚みを持たせて形成することができる。これにより、封止層16で基板10の凹凸を平坦化させることができる。よって、ガスバリア層のカバレッジ性を向上させることができる。
【0073】
なお、本実施形態においては、電気光学装置として、有機EL装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば電気光学装置として、無機エレクトロルミネッセンス装置を用いた場合においても本発明を適用することが可能である。
【0074】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態の有機EL装置2の要部断面図である。
図2に示すように、本実施形態の有機EL装置2は、封止層26が基板10に接している点が上述の第1実施形態に係る有機EL装置1と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0075】
第1実施形態の有機EL装置1では、封止層16が第1無機封止層14に接していた。これに対して、本実施形態の有機EL装置2では、封止層26が第1無機封止層24に接しておらず、基板10に直に接している。
【0076】
また、本実施形態の有機EL装置2では、中間封止層25が、第1無機封止層24の基板10上で露出する部位全体を覆って形成されている。
【0077】
本実施形態の有機EL装置2によれば、基板10(基板の表面部分)が無機材料を含む場合、封止層26と基板10とがしっかりと密着する。このため、封止層26と基板10との界面から水分等が対向電極13及び画素電極11に浸入することを抑制することができる。また、基板10の外周部においてドライバー回路等が引き回されて凹凸が多い部分の上に、封止層16が十分な厚みを持たせて形成されているため、封止層16で基板の凹凸を平坦化させることができ、当該封止層16と接する第2無機封止層17に剥離やクラック等が生じることを抑制することができる。よって、ガスバリア層の封止性を向上させることができる。
【0078】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態の有機EL装置3の模式図である。図3(a)は平面図であり、図3(b)は要部断面図である。
図3に示すように、本実施形態の有機EL装置3は、第2無機封止層17上にカラーフィルター層30が形成されている点が上述の第1実施形態に係る有機EL装置1と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0079】
本実施形態の有機EL装置3において、画素部11にはサブ画素がマトリクス状に配置されている。各々のサブ画素が備える有機機能層は、白色光を発光するように構成されている。各々のサブ画素は、R、G、Bに対応するカラーフィルター(赤色用カラーフィルター層30R、緑色用カラーフィルター層30G、青色用カラーフィルター層30B)により、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色の光を出射するようになっている。
【0080】
表示領域においては、一方向に同一色のサブ画素が配列しており、いわゆるストライプ配置を構成している。そして、表示領域では、マトリクス状に配置されたサブ画素から出射し、カラーフィルター層30によってRGBの各色とされた光を混色させることにより、フルカラー表示を可能にしている。
【0081】
このように、本実施形態においては、第2無機封止層17上に直接カラーフィルター層30を形成することにより、有機EL装置3の小型化を図ることができる。
【0082】
ところで、特許文献1では、図5に示すように、第2無機封止層117の外周部に形成される外殻補強層116が樹脂からなるため、カラーフィルター層を形成する際のフォトリソ工程で外殻補強層116に吸湿、膨潤、溶解等の異常が発生する惧れがあった。
【0083】
これに対し、本実施形態では、封止層16が少なくとも無機材料を含み、第2無機封止層17が封止層16に接する構成である。また、第2無機封止層17に樹脂からなる外殻補強層が形成された構成とはなっていない。このため、カラーフィルター層30が第2無機封止層17上に直接形成されても、上述した異常が発生することがない。よって、有機EL装置3の小型化を図ることが容易となる。
【0084】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器について説明する。
電子機器は、上述した有機EL装置を表示部として有したものであり、具体的には図4 に示すものが挙げられる。
図4(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図4(a)において、携帯電話1000は、上述した有機EL装置3を用いた表示部1001を備える。
図4(b) は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図4(b)において、時計1100は、上述した有機EL装置3を用いた表示部1101を備える。
図4(c) は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図4(c) において、情報処理装置1200は、キーボードなどの入力部1202、上述した有機EL装置3を用いた表示部1206、情報処理装置本体(筐体)1204を備える。
【0085】
このように、図4(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、上述した有機EL装置3を有した表示部1001,1101,1206を備えているので、高品質な画像表示が可能な信頼性に優れたものとなる。
【0086】
なお、電子機器としては、上記以外にも、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、テレビ、ビューファインダー型またはモニター直視型のビデオテープレコーダー、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネル、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などを挙げることができる。
【符号の説明】
【0087】
1,2,3…有機EL装置(電気光学装置)、10…基板、12…画素電極(第1電極)、13…対向電極(第2電極)、14,24…第1無機封止層、15,25…有機中間層、16,26…封止層、17…第2無機封止層、30…カラーフィルター層、1000…携帯電話(電子機器)、1100…時計(電子機器)、1200…情報処理装置(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1電極と、
前記第1電極と対向して形成された第2電極と、
前記第2電極を覆って形成された第1無機封止層と、
前記第1無機封止層上に形成された有機中間層と、
前記有機中間層の端部に接して形成された封止層と、
前記有機中間層上に形成された第2無機封止層と、を有し、
前記封止層は無機材料を含み、前記第2無機封止層は前記有機中間層と接しており、前記第2無機封止層の端部は前記封止層と接していることを特徴とする、電気光学装置。
【請求項2】
前記封止層が、前記有機中間層の外側に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記封止層が、前記有機中間層を囲んで形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記封止層と、前記第2無機封止層の端部とが接する領域が、前記有機中間層を囲んでいることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記封止層が、前記第1無機封止層上に、前記第1無機封止層と接して形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記封止層が、前記第1無機封止層の端部と前記第2無機封止層の端部の間に位置することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記封止層が、前記基板に接していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第2無機封止層上にカラーフィルター層が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記封止層が、ポリシラザン、ポリシロキサンの少なくとも1つを含む材料からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項10】
前記第1無機封止層と、前記第2無機封止層とが、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、アルミナの少なくとも1つを含む材料からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項11】
前記封止層が、塗布によって形成されたことを特徴とする、請求項1〜10にいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−16372(P2013−16372A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148901(P2011−148901)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】