説明

電気光学装置及び電気光学装置の製造方法

【課題】電気光学素子以外からの発光を抑制することで高い画像品質を得ることが可能な電気光学装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】機能層13上の、画素電極11に対向した位置に、画素電極11と同じ形状を成した電極部15を形成し、この電極部15を介して各機能層13の発光層13bにキャリア(電子)を注入するようにした。この結果、画素電極11の外周囲の領域Rにはみ出して配置された発光層13bに対して注入されるキャリア(電子)の密度は非常に小さく、画素電極11と電極部15との間に挟まれた領域の発光層13bにキャリアが集中して注入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置及び電気光学装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、軽量化、薄型化、高視野角等の観点から、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という)を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置が注目されている。
【0003】
この有機EL素子は、基本的には、有機機能層を陽極と陰極とで挟んだ形態であって、両電極から注入されたキャリア(電子及び正孔)が再結合時に形成される励起子(エキシトン)が励起状態から基底状態に遷移する際に光を出射する。
【0004】
ところで、有機機能層を、発光層以外に電荷注入層を備えた2層構造や、発光層以外に電荷注入層及び電子輸送層を備えた3層構造等といった積層構造にすることで発光効率を高めることができることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−45074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、上述した電荷注入層(例えば、正孔注入層)には、チオフェン系ポリマーとスチレンポリマーよりなる材料(PEDT/PSS)といった、発光層に使用される材料に比べて低抵抗な有機材料が使用される。この結果、電荷注入層には、陽極から注入されたキャリア(正孔)が電荷注入層(正孔注入層)全体に広がって分布するようになる。
【0006】
また、液相プロセス(たとえば、液滴吐出法)によって形成される有機EL素子は、塗布された液状材料が画素電極上に均一に広がるようにするため、図10に示すように、有機EL素子30間を区画する絶縁層31の下側部31aが親液化処理され、画素電極32側に迫り出している。従って、電荷注入層33a及び発光層33bは、その親液処理された絶縁層31a上を覆うように画素電極32上に形成されている。
【0007】
一方、対向電極34は、隣接する他の有機EL素子30に共通に各絶縁層31及び発光層33b上の全面に渡って形成されている。このため、発光層33bには、対向電極34から注入されたキャリア(電子)が発光層33b全体に広がって分布する。
【0008】
従って、発光層33bでは、その全域にて再結合が生じることから画素電極32が形成された領域Raだけでなくその外周囲の領域Rbからも発光する。この結果、有機EL素子30は、その素子の周囲からも発光するため、発光領域が広くなり、点発光よりもむしろ面発光となる。そのために、たとえば、光書き込みヘッドの発光素子として有機EL素子を使用した場合では、結像がぼけてしまい、解像度の低い画像となってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、各電気光学素子以外からの発光を抑制することで高い画像品質を得ることが可能な電気光学装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電気光学装置は、第1電極層と、第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電
極層との間に配置され少なくとも発光層を含む機能層と、から構成された複数の電気光学素子を備えた電気光学装置において、前記第2電極層の形状を、前記第1電極層の形状に合わせている。
【0011】
また、本発明の電気光学装置は、第1電極層と、第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置され少なくとも発光層を含む機能層と、から構成された複数の電気光学素子と、前記各電気光学素子の周囲に配置される絶縁層と
を備えた電気光学装置において、前記第1電極層上であってその周囲に、前記絶縁層の一部が乗り上げている。
【0012】
これらによれば、第1電極層と第2電極層との間に挟まれた領域の発光層にのみキャリアが集中して注入される。従って、各電気光学素子は、その周囲、即ち、画素電極の外周囲からは光が出射しないことから、解像度の高い画像を表示することができる。
【0013】
この電気光学装置において、前記機能層は、前記発光層の他に少なくも電荷注入層を備え、前記電荷注入層の電気抵抗は、前記発光層に比べて低い材料で構成されていてもよい。
【0014】
これによれば、電荷注入層の電気抵抗値が発光層に比べて小さくても、第1電極層と第2電極層との間に挟まれた領域の発光層に集中してキャリアが注入される。従って、各電気光学素子は、その周囲、即ち、画素電極の外周囲からは光が出射しないことから、解像度の高い画像を表示することができる。
【0015】
この電気光学装置において、前記電気光学素子は、前記機能層が有機材料で構成された有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよい。
これによれば、有機エレクトロルミネッセンス素子において、その発光領域が周囲に広がらない。この結果、解像度の高い画像を表示することができる。
【0016】
本発明の電気光学装置の製造方法は、基板上に、第1電極層と、第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置され少なくとも発光層を含む機能層と、から構成された複数の電気光学素子を備えた電気光学装置の製造方法において、前記基板上に形成された前記第1電極層上に前記機能層を形成する工程と、前記機能層上に導電層を形成する工程と、前記第1電極層の形状に合うように前記導電層を形成して前記第2電極層を形成する工程とを備えている。
【0017】
これによれば、第2電極層の形状が第1電極層の形状に合った電気光学素子が形成される。従って、電気光学素子は、その周囲、即ち、画素電極の外周囲からは光が出射しないことから、解像度の高い画像を表示することができる電気光学装置を製造することができる。
【0018】
この電気光学装置の製造方法において、前記機能層を液滴吐出法によって形成するようにしてもよい。
これによれば、第1電極層の周囲にも、機能層を構成する材料を含んだ液滴を塗布しても、その周囲に塗布された領域からの発光を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態に係る電気光学装置としての有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、「有機EL装置」という)について各図に従って説明する。図1(a)は、本実施形態に係る有機EL装置の上面図であり、(b)は、その陰極層を備えた有機EL
装置の一部概略断面図である。
【0020】
本実施形態の有機EL装置10は、アクティブマトリクス駆動方式であって、基板S上には各有機EL素子に供給する電流(キャリア)の量を制御するための図示しない薄膜トランジスタ等を備えている。尚、本実施形態の基板Sは、例えば、無アルカリガラスといった光透過性を有する材料で構成されている。
【0021】
図1(b)に示すように、基板Sは、その素子形成面Sa上に複数の第1電極としての画素電極11をマトリクス状に配置形成している。画素電極11は、本実施形態では、矩形形状を成している。各画素電極11は、薄膜トランジスタに電気的に接続され、該薄膜トランジスタによって制御された電流(キャリア)が供給されるようになっている。尚、画素電極11は、光透過性を有した導電性材料で構成されている。本実施形態の画素電極11は、インジウム−スズ化合物(ITO)で構成されている。
【0022】
また、基板S上には、絶縁層12が形成されている。絶縁層12は、親液性を有した第1絶縁層12aと、該第1絶縁層12a上に配置された撥液性を有した第2絶縁層12bとから構成されている。本実施形態では、第1絶縁層12aは酸化珪素(SiOx)で、第2絶縁層12bはポリイミドでそれぞれ構成されている。
【0023】
また、第1絶縁層12a及び第2絶縁層12bは、それぞれ、画素電極11に対応した位置に開口部Qoが連通形成されている。つまり、各画素電極11が配置された位置には、画素電極11を囲むようにして凹部Zが形成されている。そして、第1絶縁層12aは、第2絶縁層12bよりも凹部Zの底部の中心に向かって、即ち、画素電極11に向かって迫り出すようして配置されている。そして、前述したように形成された絶縁層12の各開口部Qoによって画素が区画形成される。
【0024】
各凹部Zには機能層13が形成されている。機能層13は、正孔注入層13a及び発光層13bとから構成されており、画素電極11側から正孔注入層13a、発光層13bの順に積層されている。各正孔注入層13a及び発光層13bは、公知の高分子材料で構成されており、例えば、本実施形態では、正孔注入層13aをポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)で構成し、発光層13bをアルキキノリール鎖体アルミニウム(Alq3)で構成している。従って、凹部Zを構成する絶縁層12は、画素電極11を囲むようにして形成されているので、機能層13の一部は、画素電極11の外周囲(図1(b)中符号「R」にて示された領域)に、はみ出して配置される。尚、本実施形態の発光層13bは白色の光を出射するものである。
【0025】
機能層13上には対向電極14が形成されている。図1(a)に示すように、対向電極14は、前記画素電極11に対向した位置に電極部15を有している。電極部15は、対向した画素電極11と同じ形状を成している。本実施形態では、画素電極11は矩形形状を成しているので、各電極部15は、対応する画素電極11と同じ大きさの矩形形状となっている。また、各電極部15は隣接する他の電極部15と細長の連結部16を介して電気的に接続され、全電極部15が同電位(接地電位)となる。本実施形態では、連結部16は、電極部15の各上下左右に連結されている。尚、対向電極14は、本実施形態では、アルミニウム(Al)で構成されている。そして、電極部15は、各機能層13の発光層13bに対してキャリア(電子)を注入する。
【0026】
そして、画素電極11と、対向電極14(電極部15)と、前記画素電極11と前記対向電極14(電極部15)との間に配置された機能層13とで、一つの電気光学素子としての有機EL素子20が構成されている。また、対向電極14上の全面には図示しない保護層が形成されている。
【0027】
そして、画素電極11にキャリアが供給されて正孔注入層13aを介して発光層13bにキャリア(正孔)が注入されるとともに、対向電極14からキャリア(電子)が注入されることで、発光層13bにて発光し、その光が基板Sを透過して素子形成面Saと対向する面(光出射面)から外部に出射される。
【0028】
次に、前述のように構成された有機EL装置10の製造方法について、図2及び図3に従って説明する。
まず、基板Sを洗浄した後、公知の方法によって所定の領域に薄膜トランジスタを形成する。その後、基板S上に、フォトリソグラフィー法等を使用することによって画素電極11、及び、第1及び第2絶縁層12a,12bを順次形成する。このとき、第1及び第2絶縁層12a,12b上に酸素プラズマ処理を施すことによって第2絶縁層12bの表面を撥液化しておく(図2(a)参照)。
【0029】
続いて、公知の液滴吐出法によって画素電極11及び第1絶縁層12a上に正孔注入層13aを形成する。これは、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)をエタノールといった有機溶媒に溶解した液状体Lを第1及び第2絶縁層12a,12bによって区画形成された凹部Zに塗布し(図2(b)参照)、続いて、乾燥させることで形成する(図2(c)参照)。
【0030】
その後、正孔注入層13a上に発光層13bを形成する。これは、アルキキノリール鎖体アルミニウム(Alq3)をエタノールといった有機溶媒に溶解した液状体を発光層13b上に塗布し、その後、乾燥させることで形成する(図2(d)参照)。
【0031】
次に、図3(a)に示すように、発光層13b及び第2絶縁層12b上の全面にアルミニウム(Al)からなる導電層21を蒸着形成する。その後、図3(b)に示すように、発光層13b上の画素電極11と対向した領域及び第2絶縁層12b上の一部を覆うメタルマスクMoを配置する。そして、この状態でミリング処理を行う。このミリング処理は、たとえば、アルゴン(Ar)ミリングである。
【0032】
すると、メタルマスクMoが配置されていない領域に形成された導電層21が除去される。その結果、図3(c)に示すように、画素電極11上に対向した位置には、その画素電極11と同じ形状を成した、即ち、矩形形状を成した電極部15が、また、第2絶縁層12b上は、隣接する他の電極部15と連結するように細長の連結部16がそれぞれ形成される。
【0033】
その後、対向電極14上の全面に保護層を形成することで、有機EL装置10が完成する。
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
【0034】
(1)本実施形態によれば、機能層13上の、画素電極11に対向した位置に、画素電極11と同じ形状を成した電極部15を形成し、この電極部15を介して各機能層13の発光層13bにキャリア(電子)を注入するようにした。従って、画素電極11の外周囲の領域Rにはみ出して配置された発光層13bに対して注入されるキャリア(電子)の密度は非常に小さく、画素電極11と電極部15との間に挟まれた領域の発光層13bにキャリアが集中して注入される。この結果、画素電極11の外周囲の領域Rにてほとんど発光しないことから、発光領域が各有機EL素子20の周囲に広がるのを抑制することができる。
【0035】
(2)本実施形態によれば、対向電極14の電極部15は、機能層13を形成後、画素
電極11に対向する位置にメタルマスクを配置し、その状態でアルゴンミリング処理を施すことで形成するようにした。従って、ウェットエッチングを使用した場合に比べて、有機材料で構成された機能層13に対する損傷を抑制しつつ対向電極14の電極部15を形成することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態に係る有機EL装置を図4に従って説明する。本実施形態においては、対向電極14の形状が異なっている以外は上記第1実施形態と同様である。従って、同じ構成の部材については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0036】
図4は、第2実施形態に係る有機EL装置10Aの上面図である。図4に示すように、本実施形態では、電極部15は画素電極11の形状に合った矩形形状を成しているが、その各電極部15を連結する連結部16が上記第1実施形態とは異なり各電極部15の上下隅部に配置されている。そして、各連結部16は、隣接する他の電極部15と交差するようにして配置されている。
【0037】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、上記第1実施形態の効果に加えて、各連結部16が隣接する他の電極部15と接続していることから、各電極部15がより確実に電気的に接続される。この結果、各電極部15の電位をより均一にすることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態に係る有機EL装置を図5に従って説明する。本実施形態においては、対向電極14の形状が異なっている以外は上記第1実施形態と同様である。従って、同じ構成の部材については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0038】
図5は、第3実施形態に係る有機EL装置10Bの上面図である。図5に示すように、本実施形態では、電極部15は画素電極11の形状に合った矩形形状を成しているが、その各電極部15を連結する連結部16が各電極部15の上下側にのみ配置されている。そして、各連結部16は、基板Sの一方向(図5中では、左右方向)に沿って絶縁層12bの上に形成された配線22を介して他の電極部15と電気的に接続されている。
【0039】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、上記第1実施形態の効果に加えて、各連結部16が配線22を介して各電極部15に接続されている。連結部16は細線であるが、この配線22を介することで連結部16の長さを第1実施形態に比べて短くすることができる。この結果、連結部16の形成不良による各電極部15間の電気的接続の不良の発生を抑制することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態に係る有機EL装置を図6に従って説明する。図6(a),(b)に示すように、本実施形態の有機EL装置10Cにおいては、基板S上に形成された画素電極11はマトリクス状に配置形成されているのではなく、2列に配置された複数の画素電極11が、基板Sの一方向に沿って(図6では、上下方向に沿って)千鳥格子状に配置形成されている。そして、千鳥格子状に配置形成された複数の画素電極11の全体を囲むようにして絶縁層12が配置されている。
【0040】
このような構成を成した有機EL装置10Cは、光プリンタの露光ヘッドに搭載され、感光体を露光して所望の文字や図形の像を形成する用途に適用されるものである。
本実施形態の有機EL装置10Cの画素電極11は、上記第1〜第3実施形態の有機EL装置10〜10Bとは異なり、円形形状を成している。従って、図6(a)に示すよう
に、本実施形態の電極部15は、それぞれ、対向する画素電極11に形状に合うように円形形状を成している。また、各電極部15は、連結部16を介してその配置される列に対応して絶縁層12上に形成された配線23とで電気的に接続されている。つまり、図6中左側に列方向に沿って配置された複数の電極部15は、連結部16を介して図6中左側に列方向に沿って配置された絶縁層12上に形成された配線23aに接続されている。また、右側に列方向に沿って配置された複数の電極部15は、連結部16を介して図6中右側に列方向に沿って配置された絶縁層12上に形成された配線23bに接続されている。
【0041】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様に、機能層13上の、画素電極11に対向した位置に、画素電極11と同じ円形形状を成した電極部15を形成したことから、各画素電極11の外周囲の領域Rにはみ出して配置された発光層13bに対して注入されるキャリア(電子)の密度を非常に小さくすることができる。この結果、画素電極11の外周囲の領域Rにてほとんど発光しないことから、発光領域が各有機EL素子20の周囲に広がるのを抑制することができる。
【0042】
(2)本実施形態によれば、発光領域が各有機EL素子20の周囲に広がらないので、解像度の高い像を表示することが可能な有機EL装置を実現することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明を具体化した第5実施形態に係る有機EL装置を図7に従って説明する。本実施形態においては、対向電極14の形状が異なっている以外は上記第4実施形態と同様である。従って、同じ構成の部材については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0043】
図7は、第5実施形態に係る有機EL装置10Dの上面図である。図7に示すように、本実施形態では、電極部15は画素電極11の形状に合った円形形状を成しているが、その各電極部15を連結する連結部16が上記第4実施形態とは異なっている。詳しくは、各電極部15は4つの連結部16に接続されている。そして、各電極部15は同じ列上に隣接する他の2つの電極部15と接続されている。また、各電極部15は、他の列上に配置された2つの電極部15と接続されている。
【0044】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、上記第4実施形態の効果に加えて、各連結部16が隣接する他の4つの電極部15と接続していることから、第4実施形態に比べて各電極部15がより確実に電気的に接続される。この結果、各電極部15の電位をより均一にすることができる。
(第6実施形態)
次に、本発明を具体化した第6実施形態に係る有機EL装置を図8に従って説明する。本実施形態においては、対向電極14の形状が異なっている以外は上記第4実施形態と同様である。従って、同じ構成の部材については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0045】
図8は、第5実施形態に係る有機EL装置10Eの上面図である。図8に示すように、本実施形態では、電極部15は画素電極11の形状に合った円形形状を成しているが、その各電極部15を連結する連結部16が上記第4実施形態とは異なっている。詳しくは、各電極部15は5つの連結部16に接続されている。そして、各電極部15は同じ列上に隣接する他の2つの電極部15と接続されている。また、各電極部15は、他の列上に配置された2つの電極部15と接続されている。さらに、各電極部15は、その配置される列に対応して絶縁層12上に形成された配線23とで電気的に接続されている。
【0046】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、上記第4実施形態の効果に加えて、各連結部16が隣接する他の5つの電極部15と接続していることから、第4実施形態に比べて各電極部15がより確実に電気的に接続される。この結果、各電極部15の電位をより均一にすることができる。
(第7実施形態)
次に、本発明を具体化した第7実施形態に係る有機EL装置を図9に従って説明する。本実施形態の有機EL装置10Fは、その対向電極14が上記第1〜第6実施形態と異なり、対向する画素電極11に合った形状を成す電極部15を備えておらず、図9に示すように、基板Sに対向して全面に一様に形成されている。
【0047】
また、第1絶縁層12aの一部が各画素電極11上に乗り上げて、各画素電極11の周囲を覆っている。そして、その第1絶縁層12aの一部を覆うように画素電極11上に正孔注入層13aが配置されている。
【0048】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、各画素電極11の第1絶縁層12aが画素電極11の周囲を覆っているので、画素電極11から供給されたキャリア(正孔)は正孔注入層13aの中央領域に集中して供給される。この結果、発光層13bの発光領域は、そ中心になりその周囲に広がらない。
【0049】
(2)本実施形態によれば、上記第1〜第6実施形態の対向電極14のように、電極部15や連結部16を形成する必要がないので、対向電極14の形成が従来と同じく公知の方法で形成することができる。
【0050】
尚、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記第1〜第3実施形態では、各有機EL素子20の電極部15を矩形形状に、上記第4〜第8実施形態では、各有機EL素子20の電極部15を円形形状としたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、他の形状を成していても良い。要は、対向する位置に配置される画素電極11の形状に合っていれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
・上記各実施形態では、機能層13は、発光層13b以外に正孔注入層13aを備えていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、正孔注入層13a及び発光層13b以外に正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層等を含んでいてもよい。
【0052】
・上記各実施形態では、有機EL素子20の機能層13を構成する正孔注入層13a及び発光層13bを液滴吐出法によって形成したが、本発明はこれに限定されず、公知の蒸着法やスパッタ法を使用して形成してもよい。
【0053】
・上記各実施形態では、電気光学素子として有機EL素子20を使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の形態を成した発光素子であってもよい。たとえば、発光ダイオードであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a),(b)は、それぞれ、第1実施形態の有機EL装置の構成を説明するための図。
【図2】(a)〜(d)は、それぞれ、第1実施形態の有機EL装置の製造方法を説明するための図。
【図3】同じく、(a)〜(c)は、それぞれ本実施形態の有機EL装置の製造方法を説明するための図。
【図4】第2実施形態の有機EL装置の構成を説明するための図。
【図5】第3実施形態の有機EL装置の構成を説明するための図。
【図6】(a),(b)は、それぞれ、第4実施形態の有機EL装置の構成を説明するための図。
【図7】第5実施形態の有機EL装置の構成を説明するための図。
【図8】第6実施形態の有機EL装置の構成を説明するための図。
【図9】第7実施形態の有機EL装置の構成を説明するための図。
【図10】従来の有機EL装置の構成を説明するための図。
【符号の説明】
【0055】
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F…電気光学装置としての有機エレクトロルミネッセンス装置、11…第1電極層としての画素電極、15…第2電極層としての対向電極、13…機能層、13a…電荷注入層、13b…発光層、20…電気光学素子としての有機エレクトロルミネッセンス素子。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層と、第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置され少なくとも発光層を含む機能層と、から構成された複数の電気光学素子を備えた電気光学装置において、
前記第2電極層の形状を、前記第1電極層の形状に合わせたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
第1電極層と、第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置され少なくとも発光層を含む機能層と、から構成された複数の電気光学素子と、
前記各電気光学素子の周囲に配置される絶縁層と
を備えた電気光学装置において、
前記第1電極層上であってその周囲に、前記絶縁層の一部が乗り上げていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気光学装置において、
前記機能層は、前記発光層の他に少なくも電荷注入層を備え、
前記電荷注入層の電気抵抗は、前記発光層に比べて低い材料で構成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の電気光学装置において、
前記電気光学素子は、前記機能層が有機材料で構成された有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
基板上に、第1電極層と、第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置され少なくとも発光層を含む機能層と、から構成された複数の電気光学素子を備えた電気光学装置の製造方法において、
前記基板上に形成された前記第1電極層上に前記機能層を形成する工程と、
前記機能層上に導電層を形成する工程と
前記第1電極層の形状に合うように前記導電層を形成して前記第2電極層を形成する工程と
を備えたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電気光学装置の製造方法において、
前記機能層を液滴吐出法によって形成するようにしたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−220318(P2007−220318A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36111(P2006−36111)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】