説明

電気制御デバイス用電解質材料、この製造方法、これを含む電気制御デバイス、および前記デバイスの製造方法

本発明は、イオン電荷、並びに前記イオン電荷の可溶化のための液体を含有する自立型ポリマーマトリクスを含む、可変の光学/エネルギー特性を有する電気制御デバイス用電解質材料であって、液体は前記自立型ポリマーマトリクスを可溶化せず、マトリクスは前記イオン電荷の浸透経路を供給するように選択されることを特徴とする、電気制御デバイス用電解質材料に関する。本発明は、可変の光学/エネルギー特性を有し、前記電解質材料を含む電気調整デバイス、並びにカレンダー加工または積層並びに任意選択により加熱下により種々の層を構築することを含むことを特徴とする、電気調整デバイスを製造する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に制御可能なデバイス用の電解質材料、この製造方法、これを含む電気的に制御可能なデバイス、および前記デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような電気的に制御可能なデバイスは、可変の光学的および/またはエネルギー特性を有していると言われている。電気的に制御可能なデバイスは、通常、下記の層の積み重ねを含んでいるものとして定義することができる。
【0003】
ガラス機能を有する第一の基板;
関連する電流入力を有する第一の電子導電層;
電気活性系;
関連する電流入力を有する第二の電子導電層;および
ガラス機能を有する第二の基板。
【0004】
積層された電気活性系は、電解質により分離された2層の電気活性材料を含み、2層のうちの少なくとも1つの電気活性材料はエレクトロクロミックである。両方の電気活性材料がエレクトロクロミックである場合、これらは同一であり得る、または異なり得る。電気活性材料の一方がエレクトロクロミックであり、他方がエレクトロクロミックでない場合、後者はカウンター電極の役割を有し、システムの着色および脱色工程に関与していない。電流の作用の下、電解質のイオン電荷がエレクトロクロミック材料の層の1つに挿入され、色のコントラストを得るためのエレクトロクロミック材料の他の層またはカウンター電極から隔離されている。
【0005】
国際出願PCT WO 2005/008326は、下記工程からなる方法により得られる活性系を記載している。
【0006】
一般にPEOと呼ばれるポリエチレンオキシドフィルムのマトリクスを得る工程;
このマトリクスを、モノマー、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)中に膨潤させる工程;
EDOTを重合し、両面がエレクトロクロミックなポリマー、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)であるPEOのフィルムを得る工程;
このようにしてフィルムを溶媒(炭酸プロピレン等)中で処理して膨潤させ、塩(過塩素酸リチウム等)を溶解する工程。
【0007】
この活性系は機械的強度を有する利点、言い換えると自立型であるという利点を有する。
【0008】
しかし、確認されるように、活性系の製造は複雑であり、その結果、工業的に実施することは困難である。更に、2種の同一のエレクトロクロミック材料の場合、得られる、脱色状態における光透過率/着色状態における光透過率の比である、コントラストはほとんど満足な状態でなく、極めて2に近く、一般に、システムは脱色状態であってもむしろ暗く、光透過率は大抵40%未満であり、または25%未満でさえある。
【0009】
従って、ゲル電解質を用いるための、WO 2005/008326により提案された解決法は、現在の解決法を満足に置き換えるのには不適切である(例えばEP0 880 189 B1;US 7 038 828 B2を参照されたい。)。
【0010】
電解質に強度を与えるためにゲル電解質を用いる場合、例えば2層のエレクトロクロミック材料の間、またはエレクトロクロミック材料の層とカウンター電極層の間の「貯留層」ゾーンに、ポリマーPEDOT、ポリアニリンまたはポリピロールを取り込み、問題となる2層のそれぞれは電子導電層(透明導電酸化物(TCO)等)と接触している。ゲル電解質は、溶媒を含む混合物中のポリマー、プレポリマー(例えばPMMA、PEO)またはモノマーと可溶化塩とからなり、電気的に制御可能なデバイスの「貯留層」ゾーンに置かれた後、例えば加熱し、ポリマー、プレポリマーまたはモノマー重合の架橋を起こさせてもよい。
【0011】
貯留層内にゲルを取り込み、または次いでゲル化する溶液を取り込むことが工業的に容易でないという事実から離れ、前述の電解質材料は自立型ではない。この解決法は、垂直の場所に用いられる、大きいものであり得るデバイス(グレージング等)には十分でなく、貯留層内でその重量の下で中程度動くので、2枚の基板が、周辺の封鎖により機械的に十分に強化されない場合、グレージングの「膨張」を起こす静水圧のため、グレージングにおける開口の危険がある。更に、これらのゲル電解質は大量の溶媒を含有し、封入されている物質と相互作用する傾向にあり、グレージングからの2枚の基板の剥離を起こす、または促進するという危険を被る。
【0012】
ポリマービーズ、溶媒および塩を含有する混合物を、ゲルを凝固させるために用いることができ(EP 1 560 064 A1および国際出願PCT WO 2004/085567 A2を参照されたい。)、それによって前記混合物は、一旦、「貯留層」ゾーンに置かれ、加熱されると、透明のゲルを形成する。この解決法によれば、より少ない溶媒を含有し、非常に粘性のゲルが得られる。
【0013】
しかし、貯留層を満たすことは依然として困難であり、ポリマービーズが完全に溶解せず、この屈折率が残りのゲルの屈折率と異なる場合、システムは光の透過が良くない傾向にある。
【0014】
国際出願PCT WO 02/040578は、電解質および積層挿入物の役割を果たすことのできる、ポリビニルブチラールのようなポリビニルアセタールのフィルムをも記載している。しかし、この生成物は挿入物として成形される前に電解質としての処方を必要とし、特に、プルシアンブルーまたは酸化タングステンのような特定のエレクトロクロミック材料で有効であるように設計される。処方における柔軟性の欠如のため、この生成物は効果に乏しい傾向があり、例えばPEDOTのような他の電気活性材料と非相溶でさえある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2005/008326号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第0 880 189号明細書
【特許文献3】米国特許第7 038 828号明細書
【特許文献4】欧州特許第1 560 064号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/085567号パンフレット
【特許文献6】国際公開第02/040578号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記の全ての課題を解決するための試みにおいて、出願人は、ここで、良好なコントラスト特性を付与し、容易に製造および使用するのに適しており、それ故、サイズとは関係なく全ての電気的に制御可能なデバイスに適している自立型電解質システムをベースとする、新規および独創的な解決法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明は、イオン電荷および前記イオン電荷を可溶化する液体を含有する自立型ポリマーマトリクスを含み、前記液体が前記自立型ポリマーマトリクスを可溶化せず、後者は前記イオン電荷の浸透経路を供給するように選択され、ポリマーマトリクスのポリマーまたはポリマー(複数)は、任意選択による加熱と合わせ積層およびカレンダー加工条件に耐えるように選択されていることを特徴とする、可変の光学/エネルギー特性を有する電気的に制御可能なデバイス用の電解質材料に関する。
【0018】
本発明の電解質材料は、有利に透明な材料である。
【0019】
イオン電荷は、少なくとも1種のイオン性塩および/または前記液体中に可溶化された少なくとも一種の酸により、および/または前記自立型ポリマーマトリクスにより輸送される。
【0020】
可溶化液体は、溶媒または溶媒混合物および/または少なくとも1種のイオン性液体または室温で溶融する塩からなってもよく、前記イオン性液体または溶融塩もしくは前記イオン性液体(複数)または溶融塩(複数)は、このようにしてイオン電荷を含む可溶化液体を構成し、これは、全てまたは一部のイオン電荷が前記電解質材料中に含有されることを表わす。
【0021】
イオン性塩またはイオン性塩(複数)は、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホネートまたはトリフレート塩、トリフルオロメタンスルホニルイミド塩およびアンモニウム塩から選択してもよい。
【0022】
酸または酸(複数)は、硫酸(HSO)、トリフリル酸(CFSOH)、リン酸(HPO)およびポリリン酸(Hn+23n+1)から選択されてもよい。溶媒または溶媒混合物中のイオン性塩またはイオン性塩(複数)および/または酸または酸(複数)の含有量は、特に、5モル/リットル以下、好ましくは2モル/リットル以下、更に好ましくは1モル/リットル以下である。
【0023】
各溶媒は、少なくとも95℃、好ましくは少なくとも150℃の沸点を有するものから選択してもよい。
【0024】
溶媒または溶媒(複数)は、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、N−メチル−2−ピロリドン(1−メチル−2−ピロリジノン)、γ−ブチロラクトン、エチレングリコール、アルコール類、ケトン類、ニトリル類および水から選択してもよい。
【0025】
イオン性液体またはイオン性液体(複数)は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(emim−BF)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(emim−CFSO)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(emim−N(CFSOまたはemim−TSFI)および1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(bmim−N(CFSOまたはbmin−TSFI)のようなイミダゾリウム塩から選択してもよい。
【0026】
自立型ポリマーマトリクスは、前記液体が完全に浸透している、少なくとも1種のポリマー層からなってもよい。
【0027】
マトリクスポリマーまたはポリマー(複数)および液体は、自立型活性媒体が後に続く積層またはカレンダー工程に必要な温度に相当する、少なくとも80℃、特に少なくとも100℃の温度に耐えるように選択してもよい。
【0028】
少なくとも1つの層を構成するポリマーは、無孔性であるが前記液体中で膨潤し得る、フィルムの形態のホモ−またはコポリマーであってもよい。
【0029】
フィルムは、特に1000μm未満、好ましくは100から800μm、およびより好ましくは100から700μmの厚みを有する。
【0030】
少なくとも1つの層を構成するポリマーは、多孔性フィルムの形態のホモ−またはコポリマーであってもよい。前記多孔性フィルムはイオン電荷を含む液体中に膨潤し得、膨潤後の多孔性が、液体含浸フィルムの厚さに対してイオン電荷の浸透を可能にするように選択される。
【0031】
次いで、前記フィルムは、特に1mm未満、好ましくは1000μm未満、より好ましくは100から800μm、および更により好ましくは100から700μmの厚みを有する。
【0032】
少なくとも1つの層を構成するポリマー材料は、
イオン電荷を含まず、この場合において前記電荷は、少なくとも1種のイオン性塩または可溶化酸により、および/または少なくとも1種のイオン性液体または溶融塩により輸送されるホモ−またはコポリマー;
イオン電荷を含み、この場合において浸透速度を上昇させるための追加の電荷は、少なくとも1種のイオン性塩または可溶化酸により、および/または少なくとも1種のイオン性液体または溶融塩により輸送され得るホモ−またはコポリマー;および
イオン電荷を輸送しない少なくとも1種のホモ−またはコポリマー、およびイオン電荷を含む少なくとも1種のホモ−またはコポリマーとの混合物(この場合において浸透速度を上昇させるための追加の電荷は、少なくとも1種のイオン性塩または可溶化酸により、および/または少なくとも1種のイオン性液体または溶融塩により輸送され得る。)
から選択してもよい。
【0033】
ポリマーマトリクスは、本質的にイオン電荷についての所望の浸透速度またはより高い浸透速度を供給し得るフィルムをこれ自体によって供給するのに適している、イオン電荷を含むホモ−またはコポリマーをベースとするフィルム、ならびに必ずしも所望の浸透速度を供給しないが、基本的に機械的強度を供給し得るフィルムをこれ自体によって供給するのに適している、イオン電荷を含む、または含まないホモ−またはコポリマーからなってもよく、これら2種の各ホモ−またはコポリマーの含有量は、得られる自立型マトリクスの所望の浸透速度および機械的強度の両者を供給するように調整される。
【0034】
イオン電荷を含まないポリマーマトリクスのポリマーまたはポリマー(複数)は、エチレン、酢酸ビニルおよび任意選択により少なくとも1種の他のコモノマーのコポリマー、例えばエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA);ポリウレタン(PU);ポリビニルブチラール(PVB);ポリイミド(PI);ポリアミド(PA);ポリスチレン(PS);ポリフッ化ビニリデン(PVDF);ポリエーテル−エーテル−ケトン(PEEK);ポリエチレンオキシド(PEO);エピクロロヒドリンおよびポリメチルメタクリレート(PMMA)のコポリマーから選択してもよい。
【0035】
ポリマーは、これらが多孔性であろうと無孔性フィルムであろうと同じファミリーから選択され、空隙率は、フィルムの製造の間に用いられる細孔形成剤により供給される。
【0036】
無孔性フィルムの場合における好ましいポリマーとして、ポリウレタン(PU)またはエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーが挙げられる。
【0037】
多孔性フィルムの場合における好ましいポリマーとして、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
【0038】
イオン電荷または高分子電解質を輸送するポリマーマトリクスのポリマーまたはポリマー(複数)は、SOH基のHイオンを所望のイオン電荷のイオンと交換するスルホン化ポリマーから選択してもよく、前記イオン交換は、イオン電荷を含む液体中での高分子電解質の膨潤の前および/または同時に実施される。
【0039】
スルホン化ポリマーは、テトラフルオロエチレンのスルホン化コポリマー、スルホン化ポリスチレン(PSS)、スルホン化ポリスチレンコポリマー、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)(PAMPS)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびスルホン化ポリイミドから選択してもよい。
【0040】
自立型ポリマーマトリクスは、1から3層を含んでいてもよい。自立型ポリマーマトリクスは、特に1000μm未満、好ましくは100から800μm、およびより好ましくは100から700μmの厚みを有する。
【0041】
担体が少なくとも2層を含む場合、少なくとも2層の積み重ねは、液体が完全に浸透する前に電解質および/または非電解質ポリマー層から形成し得、次いで前記液体により膨潤される。
【0042】
担体が3層を含む場合、2層の積み重ねの外層は、前記材料の機械的強度を向上させるための低膨潤層であってもよく、中層はイオン充填材の浸透速度を向上させるための高膨潤層である。
【0043】
本発明の電解質材料は、有利に10−4S/cm以上の導電率を有する。
【0044】
自立型ポリマーマトリクスは、無機充填材のナノ粒子または特にSiOのナノ粒子を担体中のポリマーの質量の特に数%の割合で取り込むことによるナノ構造であってもよい。このナノ構造は、機械的強度のような前記担体の特定の特性を向上させる。
【0045】
本発明は、ポリマー顆粒を溶媒と混合し、多孔性ポリマーマトリクスを製造する場合は細孔形成剤と混合し、得られた混合物を担体上に注ぎ、溶媒を蒸発させた後、例えば前記細孔形成剤が前述の溶媒の蒸発の間に除去されない場合、適切な溶媒で洗浄することにより細孔形成剤を除去し、得られた自立型フィルムを取り出し、次いで、前記フィルムを前記イオン電荷を可溶化する液体に含浸し、次いで必要に応じて排液することを特徴とする、前に定義された電解質材料の製造方法にも関する。
【0046】
浸漬は、2分間から3時間の時間間隔の間に実施することができる。浸漬は、例えば40から80度の温度で加熱しながら実施することができる。
【0047】
浸漬は、マトリクス内への可溶化液体の浸透を補助するために超音波を適用して実施することもできる。
【0048】
本発明は、
前に定義した自立型ポリマーマトリクス;および
前に定義したイオン電荷を可溶化する液体であって、前記イオン電荷が溶解されている液体
からなることを特徴とする、電解質材料の製造用キットにも関する。
【0049】
本発明は、前述の電解質材料を含む、可変の光学/エネルギー特性を有する電気的に制御可能なデバイスにも関する。
【0050】
特に、前記電気的に制御可能なデバイスは、以下の連続した層、
ガラス機能を有する第一の基板;
関連する電流入力を有する第一の電子導電層;
電流に対応する、電気活性材料の第一の層、イオン電荷の貯留層;
前記電解質材料;
電流に対応する、電気活性材料の第二の層、イオン電荷の貯留層;
関連する電流入力を有する第二の電子導電層;および
ガラス機能を有する第二の基板
を含み、2層の電気活性材料の少なくとも1つが、電流の影響下に色を変化し得るエレクトロクロミックであり、電気活性材料の2層の間の色のコントラストを得るために電流を加えることにより、電解質材料のイオン電荷が電気活性材料の一方の層に挿入され、電気活性材料の他の層から揮散する。
【0051】
ガラス機能を有する基板は、特に、ガラス(フロートガラス等)ならびにポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフトエート(PEN)およびシクロオレフィンコポリマー(COC)のような透明ポリマーから選択される。
【0052】
電子導電層は、特に、銀、金、白金および銅の層のような金属層;またはスズをドープした酸化インジウム(In:SnまたはITO)、アンチモンをドープした酸化インジウム(In:Sb)、フッ素をドープした酸化スズ(SnO:F)およびアルミニウムをドープした酸化亜鉛(ZnO:Al)の層のような透明導電性酸化物(TCO)層;またはTCO/金属/TCO型の多層構造であって、TCOおよび金属は特に前述したものから選択され;またはNiCr/金属/NiC型の多層構造であり、金属は特に前述したものから選択される。
【0053】
エレクトロクロミックシステムが、伝送により操作されることが意図される場合、電子導電材料は、通常透明酸化物であり、この電子導電率は、In:Sn、In:Sb、ZnO:AlまたはSnO:Fのようなドーピングにより増幅される。スズをドープした酸化インジウム(In:SnまたはITO)は、この高い電子導電特性およびこの低い光吸収により、しばしば選択される。システムが反射により操作されることが意図される場合、電子導電性材料の1種は金属であってもよい。
【0054】
電気活性材料の2層は、同一のエレクトロクロミック材料の層であってもよい。エレクトロクロミック電気活性材料の2層が異なり、特に、補色を有し、一方が陽極色を有し、他方が陰極色を有していてもよい。他の代替えによれば、電気活性材料の1つの層がエレクトロクロミック層であり、電気活性材料の他方の層がエレクトロクロミックでなく、単にイオン電荷またはカウンター電極の貯留層の役割を果たす。
【0055】
エレクトロクロミック材料またはエレクトロクロミック材料(複数)は、
(1)タングステン、ニッケル、イリジウム、ニオブ、スズ、ビスマス、バナジウム、ニッケル、アンチモンおよびタンタルの単独またはこれらの2種以上の混合物(必要に応じて、チタン、タンタルまたはレニウムのような少なくとも1種の追加の金属との混合物中)の酸化物のような無機材料;
(2)ポリチオフェン、ポリピロールまたはポリアニリンの誘導体のような、電子導電性ポリマーのような有機材料;
(3)プルシアンブルーのような複合体;
(4)金属ポリマー;
(5)少なくとも2種の(1)から(4)のファミリーから選択される、少なくとも2種のエレクトロクロミック材料の組み合わせ
から選択され得る。
【0056】
最も広く用いられ、最も研究されているエレクトロクロミック材料の1つは酸化タングステンであり、これは、電荷の挿入の状態により、青色から透明色に変化する。陰極色を有するエレクトロクロミック材料であり、着色状態は挿入(または還元)状態に相当し、この脱色状態は脱挿入(または酸化)状態に相当する。5層を有するエレクトロクロミックシステムの製造の間に、酸化ニッケルまたは酸化イリジウムのような陽極色を有するエレクトロクロミック材料と組み合わせることは通常であり、この着色メカニズムは相補的である。その結果、システムの光のコントラストは増幅される。前述した材料は全て無機材料であるが、複合体を、プルシアンブルーまたは金属ポリマーのような無機エレクトロクロミック材料と、または、電子導電性ポリマー(ポリチオフェン、ポリピロールまたはポリアニリンの誘導体等)のような有機材料とさえ組み合わせること、または、これらの材料のただ1つのカテゴリーを用いることさえも可能である。
【0057】
非エレクトロクロミック電気活性材料は、酸化バナジウムのような関連する酸化状態において光学的に中性な材料であってもよく、カウンター電極は、非常に導電性の銀の微細な層または炭素の微細な層からなってもよい。これらの透明度を向上させるため、これらの材料はナノ構造であってもよい。
【0058】
本発明の電気的に制御可能なデバイスは、特に、
単独で活性化可能な自動車用サンルーフ、自動車用サイドウインドウまたはリヤウインドウ、またはバックミラー;
自動車、航空機または船舶用のフロントガラスまたはフロントガラスの一部、自動車用サンルーフ;
航空機用窓;
図および/または英数字情報用ディスプレイパネル;
建造物の屋内または戸外グレージング;
天窓;
ショーケース、店のカウンター;
絵画のような物体の保護グレージング;
コンピュータの反射防止スクリーン;
ガラスの家具;
建造物内の2個の部屋の間の隔壁を形成するために構成されている。
【0059】
電気的に制御可能なデバイスは、透過により、または反射により作動する。
【0060】
基板は透明であってもよく、平坦または凸状であってもよく、澄んでいる、または全体に色がついていてもよく、不透明である、または不透明にされていてもよく、多角形または少なくとも一部が湾曲した形状であってもよい。少なくとも1つの基盤は、太陽光制御、抗反射または自浄機能のような、他の機能を組み込んでいてもよい。
【0061】
本発明は、複数の層が、カレンダー加工または積層、任意選択により加熱により構築されることを特徴とする、電気的に制御可能なデバイスの製造方法にも関する。
【0062】
前記電気的に制御可能なデバイスがグレージングを構成することを意図する場合においては、前述の方法は、単一または複数のグレージングにおける種々の層の構築をも含む。
【0063】
本発明は、前述の電気的に制御可能なデバイスを含むことを特徴とする、単一または複数のグレージングにも関する。
【0064】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。これらの実施例においては、以下の略語を用いる。
【0065】
PU:ポリウレタン
PC:プロピレンカーボネート
EVA:エチレン−酢酸ビニルコポリマー
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
PEDOT:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)
PSS:ポリスチレンスルホネート
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
実施例において用いられるPEDOT/PSSは、商品名Baytron(登録商標)でBayerにより販売されている。
【0066】
Huntsman、Argotec、Noveon、Polymar、Deerfield Urethaneまたは更にStevens Urethaneにより販売されているPU樹脂またはPUフィルムを用いた。
【0067】
Bridgestone、Dupont、Takemeruto、Sekisui、Tosohにより販売されているEVAフィルムを用いた。
【0068】
商品名Kynar(登録商標)、Kynarflex(登録商標)またはPowerflex(登録商標)でArkemaにより販売されているPVDF粉末を用いた。
【0069】
これらの実施例で用いられるガラスは、SnO:FまたはITOを有する電子伝導層を提供するガラスである。
【0070】
比較例で用いられるポリエチレンオキシドは、商品名Elexcel(登録商標)でDai Ichi Kogyo Seiyakuにより販売されている。
【発明を実施するための形態】
【0071】
(実施例1)
本発明の自立型電解質フィルムの製造
PCが、100ミクロン厚みのPUのフィルムを膨潤することができることを確認するために、膨潤試験を実施した。PUの5つの試料についてあらかじめ重量を測定し、次いで、20℃で、PC中に1時間浸した。簡単に排水した後、フィルムの重量を再測定し、その後、紙で拭いた。簡単に排水したフィルムにおいて実施した測定は、62%から68%の増量を示した。拭いたフィルムにおいて実施した測定は、18%から21%の増量を示した。従って、明らかに、PCがPU表面に吸着されるだけでなく、フィルム中に深く浸透していることを示す。
【0072】
過塩素酸リチウム0.5MをPC中に含有する溶液中で100ミクロン厚みのPUフィルム5×5cmを含浸することにより、自立型電解質フィルムを得た。
【0073】
20℃における1時間の含浸後に、過塩素酸リチウムのPC中の溶液から自立型電解質フィルムを取り出し、乾燥させた。
【0074】
(実施例2)
本発明の自立型電解質フィルムの製造
Kynarflex(登録商標)2751を15重量%、フタル酸ジブチル30重量%およびシリカ12重量%を含有するアセトン容器をガラスプレート上に注ぐことによりPVDFフィルムを得た。
【0075】
水流下にガラスプレートからフィルムを取り外した。乾燥した後、フィルムは約40ミクロンの厚みを有した。
【0076】
次いで、エーテルを用いてPVDFフィルムを30分間洗浄し、過塩素酸リチウム0.5MをPC中に含有する溶液に5分間含浸した。
【0077】
(実施例3)
本発明の自立型電解質フィルムの製造
NMPが、200ミクロン厚みのEVAのフィルムを膨潤することができることを確認するために、膨潤試験を実施した。EVAの5つの試料についてあらかじめ重量を測定し、次いで、20℃で、NMP中に1時間浸した。簡単に排水した後、フィルムの重量を再測定し、その後、紙で拭いた。簡単に排水したフィルムにおいて実施した測定は、70%から78%の増量を示した。拭いたフィルムにおいて実施した測定は、41%から42%の増量を示した。従って、明らかに、NMPがEVA表面に吸着されるだけでなく、フィルム中に深く浸透していることを示す。
【0078】
過塩素酸リチウム0.25MをNMP中に含有する溶液中で200ミクロン厚みのEVAフィルム5×5cmを含浸することにより、自立型電解質フィルムを得た。
【0079】
20℃における1時間の含浸後に、過塩素酸リチウムのNMP中の溶液から自立型電解質フィルムを取り出し、乾燥させた。
【0080】
(実施例4)
実施例1の電解質フィルムおよびPEDOT/PSSを用いたエレクトロクロミックセルの製造
次いで、実施例1の自立型電解質フィルムを用いてエレクトロクロミックセルを製造した。2枚のK−ガラス板に注ぐことにより、PEDOT/PSS蒸着物2枚を得た。
【0081】
PEDOT/PSS蒸着物が乾燥した時点で、2枚のプレートの1枚を、過塩素酸リチウム1Mをアセトニトリル中に含有する溶液中で還元した。還元後、還元されたPEDOT/PSSの層で覆われたK−ガラスをエタノールで洗浄し、吹き付けにより乾燥させた。
【0082】
次いで、乾燥した電解質フィルムを、PEDOT/PSSで覆われたK−ガラス板(非還元プレート)上に蒸着させた。両面接着剤を電解質の周囲に置いた。次いで、セルを完成させるために、還元されたPEDOT/PSSで覆われたK−ガラス板を電解質フィルムの上に置いた。
【0083】
次いで、セルを95℃で加圧滅菌処理し、エレクトロクロミックセルの外周を、被包の役割を果たし、2枚のガラス基板と電解質フィルムとの間の結合力を強化するエポキシ接着剤で囲んだ。
【0084】
このようにして製造されたエレクトロクロミックセルは脱色状態で37%、2Vで2分間短絡させた後に19%の光透過率を有した。
【0085】
(実施例5)
実施例2の電解質フィルムおよびPEDOT/PSSを用いたエレクトロクロミックセルの製造
実施例2の自立型電解質フィルムを用い、実施例4に記載したのと同様の手段に正確に従い、エレクトロクロミックセルを製造した。
【0086】
このようにして製造されたエレクトロクロミックセルは脱色状態で38%、2Vで2分間短絡させた後に19%の光透過率を有した。
【0087】
(実施例6(比較例))
電解質をベースとするゲルおよびPEDOT/PSSを用いたエレクトロクロミックセルの製造
比較の目的のために、前述の手段に従い、ポリマーゲル電解質を用いてエレクトロクロミックセルを製造した。
【0088】
このセルにおいては、電解質は、ポリエチレンオキシドをベースとする樹脂60重量%、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド36重量%およびリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド4重量%を含むゲルであった。塗布器を用いて、このゲルを100ミクロンの厚みに蒸着させた。
【0089】
このようにして製造されたエレクトロクロミックセルは脱色状態で31%、2Vで2分間短絡させた後に20%の光透過率を有した。
【0090】
(実施例7)
実施例1の電解質フィルムおよび無機エレクトロクロミック層を用いたエレクトロクロミックセルの製造
次いで、実施例1の自立型電解質フィルムを用いてエレクトロクロミックセルを製造した。エレクトロクロミック層およびカウンター電極層は、それぞれ、ITOの導電層でコーティングされたガラス上へのマグネトロンスパッタリングにより得られた酸化タングステンおよび酸化イリジウムの層であった。
【0091】
次いで、乾燥した電解質フィルムを2枚の基板の一方に蒸着した。次いで、他の基板を用いてセルを閉じ、両面接着剤で密封した。
【0092】
次いで、セルを95℃で加圧滅菌処理し、エレクトロクロミックセルの外周を、被包の役割を果たし、2枚のガラス基板と電解質フィルムとの間の結合力を強化するエポキシ接着剤で囲んだ。
【0093】
このようにして製造されたエレクトロクロミックセルは、1Vで2分後に脱色状態で55%、−1.5Vで2分後に24%の光透過率を有した。
【0094】
(実施例8)
実施例3の電解質フィルムおよびPEDOT/PSSを用いたエレクトロクロミックセルの製造
次いで、実施例3の自立型電解質フィルムを用いてエレクトロクロミックセルを製造した。PEDOT/PSSの2枚の蒸着物を製造し、実施例4に記載したように用いた。乾燥した電解質フィルムを、PEDOT/PSSで覆われたK−ガラス板(還元プレート)上に蒸着させた。次いで、両面接着剤を電解質の周囲に置き、セルを完成させるために、還元されたPEDOT/PSS層で覆われたK−ガラス板を電解質フィルムの上に置いた。
【0095】
次いで、セルを80℃に加熱し、エレクトロクロミックセルの外周を、被包の役割を果たし、2枚のガラス基板と電解質フィルムとの間の結合力を強化するエポキシ接着剤で囲んだ。
【0096】
このようにして製造されたエレクトロクロミックセルは脱色状態で40%、2Vで2分間短絡させた後に25%の光透過率を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変の光学/エネルギー特性を有する電気的に制御可能なデバイス用の電解質材料であって、イオン電荷および前記イオン電荷を可溶化する液体を含有する自立型ポリマーマトリクスを含み、前記液体が前記自立型ポリマーマトリクスを可溶化せず、後者は前記イオン電荷の浸透経路を供給するように選択され、ポリマーマトリクスのポリマーまたはポリマー(複数)は、任意選択による加熱に合わせ積層およびカレンダー加工条件に耐えるように選択されていることを特徴とする、電解質材料。
【請求項2】
イオン電荷が、前記液体に可溶化された少なくとも1種のイオン性塩および/または少なくとも1種の酸により、および/または自立型ポリマーマトリクスにより輸送されることを特徴とする、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項3】
可溶化液体が、溶媒または溶媒混合物、および/または少なくとも1種のイオン性液体または室温における溶融塩からなり、前記イオン性液体または溶融塩もしくは前記イオン性液体(複数)または溶融塩(複数)が、前記電解質材料に含有されるイオン電荷の全てまたは一部を表わすイオン電荷を輸送する可溶化液体を構成することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の電解質材料。
【請求項4】
イオン性塩または塩(複数)が、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホネートまたはトリフレート塩、トリフルオロメタンスルホニルイミド塩およびアンモニウム塩から選択されることを特徴とする、請求項2または3のいずれかに記載の電解質材料。
【請求項5】
酸または酸(複数)が、硫酸(HSO)、トリフリル酸(CFSOH)、リン酸(HPO)およびポリリン酸(Hn+23n+1)から選択されることを特徴とする、請求項2から4の一項に記載の電解質材料。
【請求項6】
溶媒または溶媒(複数)が、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、N−メチル−2−ピロリドン(1−メチル−2−ピロリジノン)、γ−ブチロラクトン、エチレングリコール類、アルコール類、ケトン類、ニトリル類および水から選択されることを特徴とする、請求項3から5の一項に記載の電解質材料。
【請求項7】
イオン性液体または液体(複数)が、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(emim−BF)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(emim−CFSO)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(emim−N(CFSOまたはemim−TSFI)および1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(bmim−N(CFSOまたはbmin−TSFI)等のイミダゾリウム塩から選択されることを特徴とする、請求項3から6の一項に記載の電解質材料。
【請求項8】
自立型ポリマーマトリクスが、少なくとも一つのポリマー層からなり、この中に前記液体が完全に浸透していることを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の電解質材料。
【請求項9】
少なくとも1つの層を構成するポリマーが、無孔性であるが前記液体で膨張し得る、フィルムの形態のホモ−またはコポリマーであることを特徴とする、請求項8に記載の電解質材料。
【請求項10】
少なくとも1つの層を構成するポリマーが、多孔性フィルムの形態のホモ−またはコポリマーであり、前記多孔性フィルムがイオン性電荷を含む液体で膨張し得、および膨張後の多孔性が、イオン性電荷の液体含浸フィルムの厚さへの浸透を可能にするように選択されることを特徴とする、請求項8に記載の電気活性材料。
【請求項11】
少なくとも1つの層を構成するポリマー材料が、
イオン電荷を含まないホモ−またはコポリマー;(この場合少なくとも1種のイオン性塩または可溶化酸により、および/または少なくとも1種のイオン性液体または溶融塩により前記電荷が輸送される。)
イオン電荷を含むホモ−またはコポリマー(この場合少なくとも1種のイオン性塩または可溶化酸により、および/または少なくとも1種のイオン性液体または溶融塩により、浸透速度を上昇させるための追加の電荷が輸送され得る。);および
イオン電荷を輸送しない少なくとも1種のホモ−またはコポリマー、およびイオン電荷を含む少なくとも1種のホモ−またはコポリマーとの混合物(この場合少なくとも1種のイオン性塩または可溶化酸により、および/または少なくとも1種のイオン性液体または溶融塩により、浸透速度を上昇させるための追加の電荷が輸送され得る。)
から選択されることを特徴とする、請求項8から10の一項に記載の電解質材料。
【請求項12】
ポリマーマトリクスが、本質的にイオン電荷の所望の浸透速度または高い浸透速度を提供し得る、単独でフィルムを提供するのに適している、イオン電荷を含むホモ−またはコポリマー、および必ずしも所望の浸透速度を提供しないが、基本的に機械的強度を提供することができる、単独でフィルムを提供するのに適している、イオン電荷を含む、または含まないホモ−またはコポリマーをベースとするフィルムからなり、これら2種のホモ−またはコポリマーのそれぞれの含有量が、得られる自立型マトリクスの所望の浸透速度および機械的強度の両者を付与するように調整されていることを特徴とする、請求項1から11の一項に記載の電解質材料。
【請求項13】
イオン電荷を含まないポリマーマトリクスのポリマーまたはポリマー(複数)が、エチレン、酢酸ビニルおよび任意選択により少なくとも1種の他のコモノマーのコポリマー、例えばエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA);ポリウレタン(PU);ポリビニルブチラール(PVB);ポリイミド類(PI);ポリアミド類(PA);ポリスチレン(PS);ポリフッ化ビニリデン(PVDF);ポリエーテル−エーテル−ケトン類(PEEK);ポリエチレンオキシド(PEO);エピクロロヒドリンのコポリマーおよびポリメチルメタクリレート(PMMA)から選択されることを特徴とする、請求項1から12の一項に記載の電解質材料。
【請求項14】
イオン電荷または高分子電解質を輸送するポリマーマトリクスのポリマーまたはポリマー(複数)が、所望のイオン電荷のイオンとSOH基のHイオンの交換が施され、前記イオン交換が、イオン電荷を含む液体中の高分子電解質の膨張の前および/または同時に実施されるスルホン化ポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1から12の一項に記載の電解質材料。
【請求項15】
スルホン化ポリマーが、テトラフルオロエチレンのスルホン化コポリマー、スルホン化ポリスチレン(PSS)、スルホン化ポリスチレンコポリマー、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)(PAMPS)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびスルホン化ポリイミドから選択されることを特徴とする、請求項14に記載の電解質材料。
【請求項16】
自立型ポリマーマトリクスが1から3層を含むことを特徴とする、請求項1から15の一項に記載の電解質材料。
【請求項17】
自立型ポリマーマトリクスが少なくとも2層を含み、少なくとも2層の積み重ねが、液体の完全な浸透の前に電解質および/または非電解質ポリマー層から形成され、その後、前記液体により膨潤することを特徴とする、請求項1から16の一項に記載の電解質材料。
【請求項18】
担体が3層を含み、2層の積み重ねの外層が前記材料の機械的強度を向上させるための低膨潤層であり、中層がイオン電荷の浸透速度を向上させるための高膨潤層であることを特徴とする、請求項1から17の一項に記載の電解質材料。
【請求項19】
自立型ポリマーマトリクスが、1000μm未満、好ましくは100から800μm、およびより好ましくは100から700μmの厚みを有することを特徴とする、請求項1から18の一項に記載の電解質材料。
【請求項20】
10−4S/cm以上の導電率を有することを特徴とする、請求項1から19の一項に記載の電解質材料。
【請求項21】
自立型ポリマーマトリクスが、無機充填材のナノ粒子またはナノ粒子(複数)、特にSiOナノ粒子の取り込みによるナノ構造であることを特徴とする、請求項1から20の一項に記載の電解質材料。
【請求項22】
請求項1から21の一項に記載の電解質材料の製造方法であって、ポリマー顆粒を溶媒と混合し、多孔性ポリマーマトリクスを製造する場合は細孔形成剤と混合し、得られた混合物を担体に注ぎ、および溶媒を蒸発させた後、例えば前記細孔形成剤が前述の溶媒の蒸発の間に除去されない場合、適切な溶媒で洗浄することにより細孔形成剤を除去し、得られた自立型フィルムを取り出し、次いで、前記フィルムを前記イオン電荷を可溶化する液体に含浸し、次いで必要に応じて排液することを特徴とする、方法。
【請求項23】
請求項1から21の一項に記載の電気活性材料の製造用キットであって、
請求項8から21の一項に記載の自立型ポリマーマトリクス;および
請求項3に記載のイオン電荷を可溶化する液体であって、前記イオン電荷が溶解されている液体
からなることを特徴とする、キット。
【請求項24】
請求項1から21の一項に記載の電解質材料を含む、可変の光学/エネルギー特性を有する電気的に制御可能なデバイス。
【請求項25】
以下の連続した層、
ガラス機能を有する第一の基板;
関連する電流入力を有する第一の電子導電層;
電流に対応する、第一の電気活性材料層、イオン電荷の貯留層;
前記電解質材料;
電流に対応する、第二の電気活性材料層、イオン電荷の貯留層;
関連する電流入力を有する第二の電子導電層;および
ガラス機能を有する第二の基板
を含み、2層の電気活性材料の少なくとも1つの層が、電流の影響下に色を変化し得るエレクトロクロミックであり、ならびに電気活性材料の2層の間の色のコントラストを得るために電流を加えることにより、電解質材料のイオン電荷が電気活性材料の一方の層に挿入され、および電気活性材料の他の層から揮散することを特徴とする、請求項24に記載の電気的に制御可能なデバイス。
【請求項26】
ガラス機能を有する基板が、ガラスならびにポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフトエート(PEN)およびシクロオレフィンコポリマー(COC)のような透明なポリマーから選択されることを特徴とする、請求項25に記載の電気的に制御可能なデバイス。
【請求項27】
電子導電層が、銀、金、白金および銅の層のような金属層;または
スズをドープした酸化インジウム(In:SnまたはITO)、アンチモンをドープした酸化インジウム(In:Sb)、フッ素をドープした酸化スズ(SnO:F)およびアルミニウムをドープした酸化亜鉛(ZnO:Al)の層のような透明導電性酸化物(TCO)層;またはTCO/金属/TCO型の多層構造であって、TCOおよび金属は特に前述したものから選択され;またはNiC/金属/NiC型の多層構造であって、金属は特に前述したものから選択されることを特徴とする、請求項25および26のいずれかに記載の電気的に制御可能なデバイス。
【請求項28】
2層の電気活性材料が、同一のエレクトロクロミック材料の層であることを特徴とする、請求項25から27の一項に記載の電気的に制御可能なデバイス。
【請求項29】
2層のエレクトロクロミック電気活性材料が異なり、特に、補色を有し、一方が陽極色を有し、ならびに他方が陰極色を有することを特徴とする、請求項25から27の一項に記載の電気的に制御可能なデバイス。
【請求項30】
電気活性材料の1つの層がエレクトロクロミック層であり、ならびに電気活性材料の他方の層がエレクトロクロミックでなく、単にイオン電荷またはカウンター電極の貯留層の役割を果たすことを特徴とする、請求項25から27の一項に記載の電気的に制御可能なデバイス。
【請求項31】
前記エレクトロクロミック材料またはエレクトロクロミック材料(複数)が、
(1)タングステン、ニッケル、イリジウム、ニオブ、スズ、ビスマス、バナジウム、ニッケル、アンチモンおよびタンタルの単独またはこれらの2種以上の混合物(必要に応じて、チタン、タンタルまたはレニウムのような少なくとも1種の追加の金属との混合物中)の酸化物のような無機材料;
(2)ポリチオフェン、ポリピロールまたはポリアニリンの誘導体のような、電子導電性ポリマーのような有機材料;
(3)プルシアンブルーのような複合体;
(4)金属ポリマー;
(5)少なくとも2種の(1)から(4)のファミリーから選択される、少なくとも2種のエレクトロクロミック材料の組み合わせ
から選択されることを特徴とする、請求項25から30の一項に記載の電気的に制御可能なデバイス。
【請求項32】
非エレクトロクロミック電気活性材料が、酸化バナジウムのような関連する酸化状態にある光学的に中性の材料であり、カウンター電極がさらに、任意選択により銀の微細層または炭素の微細層からなり、高度に導電性であり、これらの材料が、透明性を向上させるためにナノ構造であってもよいことを特徴とする、請求項25から31の一項に記載の電気的に制御可能なデバイス。
【請求項33】
単独で活性化可能な自動車用サンルーフ、または自動車用サイドウインドウまたはリヤウインドウ、またはバックミラー;
自動車、航空機または船舶用のフロントガラスまたはフロントガラスの一部、自動車用サンルーフ;
航空機用窓;
図および/または英数字情報用ディスプレイパネル;
建造物の屋内または戸外グレージング;
天窓;
ショーケース、店のカウンター;
絵画のような物体の保護グレージング;
コンピュータの反射防止スクリーン;
ガラスの家具;
建造物内の2個の部屋の間の隔壁
を形成するために構成されていることを特徴とする、請求項25から32の一項に記載の電気的に制御可能なデバイス。
【請求項34】
透過により、または反射により機能することを特徴とする、請求項25から33の一項に記載の電気的に制御可能なデバイス。
【請求項35】
基板が透明であり、平坦または凸状であり、澄んでいる、または全体に色がついており、不透明である、または不透明にされており、多角形または少なくとも一部が湾曲した形状であることを特徴とする、請求項25から34の一項に記載の電気的に制御可能なデバイス。
【請求項36】
少なくとも1つの基板が、太陽光制御、抗反射または自浄機能のような、他の機能を組み込んでいることを特徴とする、請求項25から35の一項に記載の電気的に制御可能なデバイス。
【請求項37】
複数の層が、カレンダー加工または積層、任意選択により加熱と共に構築されることを特徴とする、請求項25から36の一項に記載の電気的に制御可能なデバイスの製造方法。
【請求項38】
電気的に制御可能なデバイスが、種々の層が単一または複数のグレージングとして備え付けられていることを特徴とする、グレージングを構成することを意図する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項25から36の一項に記載の電気的に制御可能なデバイスを含むことを特徴とする、単一または複数のグレージング。

【公表番号】特表2010−517059(P2010−517059A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540831(P2009−540831)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052553
【国際公開番号】WO2008/084168
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】