説明

電気加熱式触媒

【課題】電気加熱式触媒のケースに電気が流れることを抑制する。
【解決手段】通電により発熱する発熱体4と、発熱体4を収容するケース2と、発熱体4とケース2との間に挟まれて電気を絶縁するマット3と、を備える電気加熱式触媒1において、マット3よりも少なくとも上流側のケース2の内周面から該ケース2の中心軸A方向側に突き出る突起24と、突起24及び該突起24からマット3までの範囲の表面に形成され電気を絶縁する絶縁層6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱式触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
通電により発熱する触媒の担体と、該触媒の担体を収容するケースと、の間に絶縁体のマット設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このマットによれば、触媒の担体に通電したときに、ケースに電気が流れることを抑制できる。ところで、内燃機関の始動直後などには、燃焼室から粒子状物質(以下、PMという。)が多く排出される。このPMは電気を通すため、マットに多くのPMが付着すると、該PMを介して触媒の担体からケースに電気が流れる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−269387号公報
【特許文献2】特開2002−309922号公報
【特許文献3】特開2006−026483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、電気加熱式触媒のケースに電気が流れることを抑制する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために本発明による電気加熱式触媒は、
通電により発熱する発熱体と、
前記発熱体を収容するケースと、
前記発熱体と前記ケースとの間に挟まれて電気を絶縁するマットと、
を備える電気加熱式触媒において、
前記マットよりも少なくとも上流側の前記ケースの内周面から該ケースの中心軸方向側に突き出る突起と、
前記突起及び該突起から前記マットまでの範囲の表面に形成され電気を絶縁する絶縁層と、
を備える。
【0006】
発熱体は、触媒の担体としても良く、触媒の上流側に設けられても良い。マットは、発熱体及びケースに夫々接している。このマットは、発熱体をケース内に固定するためにも用いられる。
【0007】
ここで、ケース内側にPMが付着していない場合には、マットが存在することで、発熱体からケースへ電気が流れることを抑制できる。しかし、ケース内側にPMが付着すると、該PMを介してケース側へ電気が流れる。PMの付着量が少なければ、ケース形成されている絶縁層により電気が遮断される。しかし、PMの付着量が多くなると、ケースに形成されている絶縁層の表面に付着しているPMを介して電気が流れ得る。
【0008】
ここで、突起は、排気の流れの中に突き出るため、排気の熱を受ける。これにより、突起の温度は、ケース外壁の温度よりも高くなる。このため、突起にPMが付着しても、突起の温度が高いことにより、該PMの酸化が促進される。すなわち、突起からPMを除去
することができる。この突起には絶縁層が形成されているため、ケース内側に付着しているPMに電気が流れたとしても、該電気は突起で遮断される。これにより、ケースに電気が流れることが抑制される。
【0009】
本発明においては、前記マットよりも上流側及び下流側に、前記ケースの内周面から該ケースの中心軸方向側に突き出る突起を備え、前記絶縁層は、夫々の突起及び夫々の突起から前記マットまでの範囲の表面に形成されてもよい。
【0010】
絶縁層は、上流側の突起及び下流側の突起の夫々に形成される。そして、夫々の突起からマットまで絶縁層が形成される。そうすると、マットよりも下流側においても、ケースに電気が流れることを抑制できる。
【0011】
本発明においては、前記マットよりも下流側の突起は、前記マットよりも上流側の突起よりも、突き出し量が大きくてもよい。ここで、発熱体に触媒が担持される場合には、該触媒により排気中の酸素が消費されるので、上流側の突起よりも下流側の突起に接触する排気中の酸素濃度が低くなる。このため、下流側の突起のほうが上流側の突起よりも付着しているPMが酸化し難い。これに対し、該下流側の突起の突き出し量を大きくすることで、より温度の高い排気に接触することが可能となる。すなわち、マットよりも下流側において突起の温度をより高くすることができるので、PMをより酸化し易くすることができる。これにより、マットよりも下流側の酸素不足を補うことができる。
【0012】
また、本発明においては、前記突起は、排気の流れ方向の下流側に向かって傾斜してもよい。そうすると、突起に付着しているPMを排気の流れから働く力により落とすことができるため、該突起にPMが堆積することを抑制できる。
【0013】
また、本発明においては、前記ケースの中心軸から前記突起の先端までの距離が、前記ケースの中心軸から前記発熱体の外周までの距離よりも短くなるように前記突起が突き出てもよい。ここで、マットの内部は排気が流通しないため、該マットのすぐ上流側や下流側では、排気の流速が低い。逆に、発熱体の内部には排気の通路が形成されており、排気が流通するため、該発熱体のすぐ上流側や下流側では、排気の流速が高い。すなわち、ケースの中心軸から突起の先端までの距離が、ケースの中心軸から発熱体の外周までの距離よりも短くなるように突起が突き出ていれば、排気の流速が比較的高い所に突起が位置することになる。これにより、より大きな力でPMを落とすことができるので、突起にPMが堆積することを抑制できる。
【0014】
また、本発明においては、前記突起が、前記ケースの内周面から該ケースの中心軸方向側に全周に亘り突き出ていても良い。突起がケースの全周に亘り突き出ることにより、ケースの全周に亘り温度を高くすることができるため、PMの酸化をより促進させることができる。これにより、ケースに電気が流れることがより抑制される。なお、突起の途中に切れ目があったとしても、突起で受けた熱が切れ目の箇所にも伝わるため、該切れ目においてもPMの酸化を促進させることができる。
【0015】
また、本発明においては、前記突起は、前記ケースの内周面側よりも、前記ケースの中心軸側の熱伝導率が高くても良い。すなわち、突起の付け根側よりも先端側で熱伝導率が高くても良い。ここで、ケースの外周面は外気と接しているため温度が低い。このため、ケースの温度が低くなるので、突起からケースへ熱が移動する。突起からケースへ熱が移動すると、該突起の温度が低下してしまう。これに対し、突起において、ケースの内周面側の熱伝達率を低くしておけば、突起からケースへ熱が移動することを抑制できる。これにより突起の先端部の温度を高く維持できるので、PMの酸化を促進させることができる。
【0016】
また、本発明においては、前記突起は、前記ケースの内周面側に断熱材を有していても良い。この断熱材により、突起からケースへ熱が伝達することを抑制できるため、該突起の先端部の温度を高く維持できるので、PMの酸化を促進させることができる。
【0017】
また、本発明においては、前記突起は、前記ケースの内周面側よりも、前記ケースの中心軸側の比熱が高くても良い。ここで、減速中の燃料カット時など排気の温度が低いときには、排気が突起から熱を奪う。このため、突起の温度が低下してしまう。これに対し、突起の先端側の比熱を高くすることにより、該突起の先端側の熱容量を大きくすることができるため、温度低下を抑制することができる。これにより、酸素濃度の高い燃料カット時に突起の温度を高く維持することができるため、PMの酸化を促進させることができる。
【0018】
また、本発明においては、前記突起の厚さが、前記ケースの内周面側よりも、前記ケースの中心軸側のほうが大きくても良い。この厚さは、ケースの中心軸方向の厚さとしても良い。突起の付け根側において突起を薄くすることにより、突起からケースへの熱の移動が抑制される。また、先端部の熱容量を大きくすることができる。これらにより、突起の先端部の温度を高く維持できるので、PMの酸化を促進させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電気加熱式触媒のケースに電気が流れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1に係る電気加熱式触媒の概略構成を示す図である。
【図2】実施例2に係る電気加熱式触媒の概略構成を示す図である。
【図3】実施例3に係る電気加熱式触媒の概略構成を示す図である。
【図4】実施例4に係る電気加熱式触媒の概略構成を示す図である。
【図5】実施例5に係る電気加熱式触媒の概略構成を示す図である。
【図6】上流側突起を排気の流れの上流側から見た図である。
【図7】実施例6に係る電気加熱式触媒の概略構成を示す図である。
【図8】上流側突起を排気の流れの上流側から見た図である。
【図9】実施例7に係る電気加熱式触媒の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る電気加熱式触媒の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。なお、以下の実施例は、適宜組み合わせることができる。
【実施例1】
【0022】
図1は、本実施例に係る電気加熱式触媒1の概略構成を示す図である。なお、本実施例に係る電気加熱式触媒1は、車両に搭載される内燃機関の排気管5に設けられる。内燃機関は、ディーゼル機関であっても、また、ガソリン機関であってもよい。また、電気モータを備えたハイブリッドシステムを採用した車両においても用いることができる。
【0023】
図1に示す電気加熱式触媒1は、排気管5の中心軸Aに沿って電気加熱式触媒1を縦方向に切断した断面図である。なお、電気加熱式触媒1の形状は、中心軸Aに対して線対称のため、図1では、上側の部分のみを示している。
【0024】
本実施例に係る電気加熱式触媒1は、円柱形の触媒担体4と、該触媒担体4の外周を覆うマット3と、該触媒担体4とマット3とを収容するケース2と、を備えて構成される。
【0025】
触媒担体4には、電気抵抗となって、通電により発熱する材質のものが用いられる。触媒担体4の材料には、たとえばSiCが用いられる。触媒担体4は、排気の流れる方向(すなわち、中心軸Aの方向)に伸び且つ排気の流れる方向と垂直な断面がハニカム状をなす複数の通路を有している。この通路を排気が流通する。触媒担体4の外形は、たとえば排気管5の中心軸Aを中心とした円柱形である。なお、中心軸Aと直交する断面による触媒担体4の断面形状は、たとえば楕円形で有っても良い。中心軸Aは、排気管5、ケース2、および触媒担体4で共通の中心軸である。なお、本実施例においては触媒担体4が、本発明における発熱体に相当する。また、発熱体を触媒よりも上流側に備える場合であっても、本実施例を同様に適用することができる。
【0026】
この触媒担体4には、触媒が担持される。触媒は、たとえば酸化触媒、三元触媒、吸蔵還元型NOx触媒、選択還元型NOx触媒などを挙げることができる。触媒担体4には、電極が2本接続されており、該電極間に電圧をかけることにより触媒担体4に通電される。この触媒担体4の電気抵抗により該触媒担体4が発熱する。マット3は、材料としてたとえばセラミックファイバーのような電気伝導率が小さな絶縁体が用いられる。マット3は、触媒担体4の外周(中心軸Aと平行な面)を覆っているため、触媒担体4に通電したときに、ケース2へ電気が流れることを抑制している。
【0027】
ケース2は、中心軸Aと平行の面により構成され内側にマット3及び触媒担体4を収容する収容部21と、該収容部21よりも上流側及び下流側で該収容部21と排気管5とを接続するテーパ部22,23と、を備えて構成されている。テーパ部22,23は、収容部21から離れるに従って通路断面積が縮小するテーパ形状をしている。すなわち、触媒担体4よりも上流側のテーパ部22では、上流側ほど断面積が小さくなり、触媒担体4よりも下流側のテーパ部23では、下流側ほど断面積が小さくなる。収容部21の内径は、触媒担体4をマット3で覆ったときの該マット3の外径と略同じで、収容部21にマット3及び触媒担体4を収容するときには、該マット3が圧縮されるため、該マット3の反発力により収容部21内に触媒担体4が固定される。
【0028】
ケース2の材料には、金属が用いられ、たとえばステンレス鋼材を用いることができる。なお、上流側のテーパ部22と、下流側のテーパ部23と、は向きが逆になっているだけで、同じ形状である。
【0029】
触媒担体4及びマット3よりも上流側の収容部21には、該収容部21の内周面から、中心軸A方向に全周に亘り突き出ている上流側突起24が設けられている。また、触媒担体4及びマット3よりも下流側の収容部21には、該収容部21の内周面から、中心軸A方向に全周に亘り突出する下流側突起25が設けられている。上流側突起24及び下流側突起25の形状は同じため、以下では上流側突起24についてのみ説明する。
【0030】
この上流側突起24は、収容部21の内周面に垂直で且つケース2の中心軸Aと直交する方向に設けられる板状の突起である。この上流側突起24の材料は、収容部21と同じであり、たとえばステンレス鋼材とする。この上流側突起24は、収容部21の内周面を中心軸A周りに一周している。この上流側突起24は、収容部21とは、別の板を溶接しても良く、該収容部21を塑性変形させて設けても良い。また、上流側突起24は、フランジとしても良い。
【0031】
なお、上流側突起24は、テーパ部22に設けても良い。同様に、下流側突起25もテーパ部23に設けることができる。
【0032】
そして、上流側突起24及び下流側突起25の全体を含む、上流側突起24から下流側
突起25までの間の排気と接触する面を絶縁層6で覆っている。この絶縁層6は、収容部21の全周に亘り形成される。絶縁層6は、たとえばセラミックなどの絶縁体を塗布することにより形成される。なお、本実施例では、上流側突起24から下流側突起25まで、切れ目なく絶縁層6で覆われているが、マット3が密着している箇所においてはPMが付着しないので、この箇所に絶縁層6を形成しなくても良い。
【0033】
このように構成された電気加熱式触媒1では、上流側突起24及び下流側突起25が排気と接触する。そうすると、排気の熱を上流側突起24及び下流側突起25が受けて該上流側突起24及び下流側突起25の温度が高くなる。これにより、上流側突起24及び下流側突起25に付着しているPMが酸化されるので、該上流側突起24及び下流側突起25に付着しているPMを除去することができる。
【0034】
ここで、内燃機関の冷間時などには、該内燃機関からの排気中にPMが含まれる。このPMは、ケース2内の排気と接触する部位に付着する。そして、排気中のPMは、マット3の上流端及び下流端、さらにはケース2内にも付着する。このPMは、電気を通すため、触媒担体4に流れる電気がマット3やケース2に付着しているPMにも流れ得る。すなわち、PMが堆積することにより、短絡が起こる虞がある。
【0035】
ここで、仮に、絶縁層6を設けない場合には、マット3にPMが付着していると、触媒担体4に通電したときに、PMを介してケース2にも電気が流れてしまう。すなわち、短絡する虞がある。また、仮に、上流側突起24及び下流側突起25を備えずに絶縁層6のみを備える場合には、該絶縁層6の表面にPMが付着する。そうすると、触媒担体4に通電したときに、絶縁層6の表面に付着したPMにも電気が流れてしまい、絶縁層6を設けていない箇所からケース2若しくは排気管5に電気が流れてしまう。
【0036】
これに対し、上述の上流側突起24及び下流側突起25を備えることで、この箇所でのPMの付着を抑制できる。そして、上流側突起24及び下流側突起25には絶縁層6が設けられているため、該上流側突起24及び下流側突起25には電気が流れない。すなわち、電流は上流側突起24及び下流側突起25で遮断されるので、触媒担体4からケース2へ電気が流れることを抑制できる。
【0037】
なお、ケース2の中心軸Aから上流側突起24及び下流側突起25の先端までの距離が、ケース2の中心軸Aから触媒担体4の外周までの距離よりも短くなるように上流側突起24及び下流側突起25が突き出ていてもよい。そうすると、上流側突起24及び下流側突起25の温度をより高くすることができるのでPMを酸化し易くすることができると共に、排気から働く力によりPMを除去することができる。
【0038】
また、本実施例では、上流側突起24及び下流側突起25が、収容部21の内周面から全周に亘り突き出ているが、これに代えて、上流側突起24または下流側突起25の途中に切れ目があっても良い。上流側突起24または下流側突起25の途中に切れ目があったとしても、上流側突起24または下流側突起25で受けた熱が切れ目の箇所にも伝わるため、該切れ目においてもPMの酸化を促進させることができる。たとえばPMを酸化可能な範囲に切れ目の位置や大きさを設定しても良い。
【実施例2】
【0039】
図2は、本実施例に係る電気加熱式触媒10の概略構成を示す図である。実施例1に示す電気加熱式触媒1と異なる点について説明する。図2に示す電気加熱式触媒10は、上流側突起34及び下流側突起35の形状が実施例1と異なる。すなわち、上流側突起34及び下流側突起35を排気の流れの下流側に傾斜させて設けている。触媒担体4及びマット3については、実施例1と同じものを用いる。
【0040】
そして、上流側突起34及び下流側突起35の全体を含む、上流側突起34から下流側突起35までの間の排気と接触する面を絶縁層7で覆っている。この絶縁層7は、収容部31の全周に亘り形成される。
【0041】
このように構成された電気加熱式触媒10では、上流側突起34及び下流側突起35の排気の流れ方向の上流側を向く面に沿って流れる排気の流速が高くなる。このため、上流側突起34及び下流側突起35の排気の流れ方向の上流側を向く面に付着しているPMを、排気の流れにより除去することができる。たとえば、内燃機関の冷間時においては上流側突起34及び下流側突起35の温度が低いために該上流側突起34及び下流側突起35にPMが付着し易いが、夫々を傾斜させることでPMの付着を抑制できる。これにより、電流は上流側突起34及び下流側突起35で遮断されるので、触媒担体4からケース30へ電気が流れることを抑制できる。
【0042】
なお、本実施例では、上流側突起34及び下流側突起35の両方を排気の流れの下流側に傾斜させているが、何れか一方のみを傾斜させても良い。たとえば、排気が触媒を通過することにより、排気中の酸素濃度が低下する。このため、下流側突起35では、上流側突起34よりもPMの酸化が緩慢となるので、下流側突起35のみを傾斜させてPMの付着を抑制してもよい。
【0043】
また、本実施例では、上流側突起34及び下流側突起35が、収容部31の内周面から全周に亘り突き出ているが、これに代えて、上流側突起34または下流側突起35の途中に切れ目があっても良い。上流側突起34または下流側突起35の途中に切れ目があったとしても、上流側突起34または下流側突起35で受けた熱が切れ目の箇所にも伝わるため、該切れ目においてもPMの酸化を促進させることができる。たとえばPMを酸化可能な範囲に切れ目の位置や大きさを設定しても良い。
【実施例3】
【0044】
図3は、本実施例に係る電気加熱式触媒11の概略構成を示す図である。実施例2に示す電気加熱式触媒10と異なる点について説明する。図3に示す電気加熱式触媒11は、上流側突起44よりも下流側突起45のほうの突き出し量が大きい点で実施例2と異なる。なお、本実施例では、上流側突起44及び下流側突起45を下流側に傾斜させているが、実施例1と同じように、夫々を中心軸Aに対して垂直の方向に設けても良い。また、上流側突起44または下流側突起45の一方を排気の流れの下流側に傾斜させ、他方を中心軸Aと垂直の方向に設けても良い。
【0045】
そして、上流側突起44及び下流側突起45の全体を含む、上流側突起44から下流側突起45までの間の排気と接触する面を絶縁層8で覆っている。この絶縁層8は、収容部41の全周に亘り形成される。
【0046】
このように構成された電気加熱式触媒11では、上流側突起44及び下流側突起45の排気の流れ方向の上流側を向く面に沿って流れる排気の流速が高くなる。このため、上流側突起44及び下流側突起45の排気の流れ方向の上流側を向く面に付着しているPMを排気の流れにより除去することができる。ここで、排気が触媒を通過することにより、排気中の酸素濃度が低下する。このため、下流側突起45では、上流側突起44よりもPMの酸化が緩慢となるので、下流側突起45を上流側突起44よりも中心軸A側に突き出している。これにより、下流側突起45の温度をより高くすることができるため、PMの酸化を促進させることができる。以上より、電流は上流側突起44及び下流側突起45で遮断されるので、触媒担体4からケース40へ電気が流れることを抑制できる。
【0047】
なお、本実施例では、上流側突起44及び下流側突起45が、収容部41の内周面から全周に亘り突き出ているが、これに代えて、上流側突起44または下流側突起45の途中に切れ目があっても良い。上流側突起44または下流側突起45の途中に切れ目があったとしても、上流側突起44または下流側突起45で受けた熱が切れ目の箇所にも伝わるため、該切れ目においてもPMの酸化を促進させることができる。たとえばPMを酸化可能な範囲に切れ目の位置や大きさを設定しても良い。
【実施例4】
【0048】
図4は、本実施例に係る電気加熱式触媒12の概略構成を示す図である。実施例1に示す電気加熱式触媒1と異なる点について説明する。図4に示す電気加熱式触媒12は、突起54を触媒担体4及びマット3よりも上流側のみに備えている点で実施例1と異なる。また、触媒担体4は、PMを捕集するフィルタとする。なお、突起54は、実施例2と同様に排気の流れ方向で下流側に傾斜させても良い。
【0049】
そして、突起54の全体を含む、該突起54からマット3が接している範囲までの間の排気と接触する面を絶縁層9で覆っている。この絶縁層9は、収容部51の全周に亘り形成される。
【0050】
このように構成された電気加熱式触媒12では、マット3よりも上流側では、突起54においてPMの付着が抑制されるため、該突起54により電流が遮断される。また、マット3よりも下流側では、フィルタを通過した後の排気が流れるため、マット3の下流端にPMが付着することが抑制される。すなわち、マット3により電流が遮断される。以上より、触媒担体4からケース50へ電気が流れることを抑制できる。なお、マット3とケース50とが接する範囲には排気が流通しないため、PMは付着しない。このため、絶縁層9は、マット3とケース50とが接する範囲全体に形成する必要はない。
【0051】
なお、本実施例では、突起54が、収容部51の内周面から全周に亘り突き出ているが、これに代えて、突起54の途中に切れ目があっても良い。突起54の途中に切れ目があったとしても、突起54で受けた熱が切れ目の箇所にも伝わるため、該切れ目においてもPMの酸化を促進させることができる。たとえばPMを酸化可能な範囲に切れ目の位置や大きさを設定しても良い。
【実施例5】
【0052】
図5は、本実施例に係る電気加熱式触媒13の概略構成を示す図である。実施例2に示す電気加熱式触媒10と異なる点について説明する。図5に示す電気加熱式触媒13は、上流側突起64及び下流側突起65の形状が実施例2と異なる。すなわち、上流側突起64及び下流側突起65において、ケース60の内周面付近にそれぞれ断熱材641,651が埋め込まれている。そして、絶縁層7が、断熱材641,651も覆っている。
【0053】
また、図6は、上流側突起64を排気の流れの上流側から見た図である。下流側突起65も同じ形状であるため、上流側突起64についてのみ説明する。上流側突起64には、断熱材641を埋め込むために複数の穴があけられており、該穴の夫々の中に断熱材641が入れられる。断熱材641は、上流側突起64の他の部位よりも熱伝導率が低い材料であればよい。また、断熱材641は、上流側突起64の先端よりも付け根に近い位置に埋め込めばよい。つまり、断熱材641を埋め込むための穴の中心は、上流側突起64の先端と付け根との中間位置よりも付け根側に位置する。断熱材641を埋め込むための穴は、ケース60の中心軸Aを中心に等間隔で配置されている。なお、穴の形状は、楕円または長穴など他の形状であってもよい。
【0054】
ここで、上流側突起64及び下流側突起65は、収容部61に繋がっているため、該上
流側突起64及び下流側突起65が受けた排気の熱が該収容部61に逃げる。しかし、断熱材641,651を設けることにより、上流側突起64及び下流側突起65から収容部61へ熱が移動することを抑制できる。これにより、上流側突起64及び下流側突起65の温度を高く維持することができるため、PMの酸化をより促進させることができる。これにより、電流は上流側突起64及び下流側突起65で遮断されるので、触媒担体4からケース60へ電気が流れることを抑制できる。
【0055】
なお、本実施例では、上流側突起64及び下流側突起65の両方に断熱材641,651を設けているが、何れか一方のみに設けても良い。また、実施例2以外で説明した上流側突起及び下流側突起に断熱材を設けることもできる。
【実施例6】
【0056】
図7は、本実施例に係る電気加熱式触媒14の概略構成を示す図である。実施例2に示す電気加熱式触媒10と異なる点について説明する。図7に示す電気加熱式触媒14は、上流側突起74及び下流側突起75の形状が実施例2と異なる。すなわち、上流側突起74及び下流側突起75において、該上流側突起74及び下流側突起75の先端付近にそれぞれ高比熱材741,751が埋め込まれている。そして、絶縁層7が、高比熱材741,751も覆っている。
【0057】
また、図8は、上流側突起74を排気の流れの上流側から見た図である。下流側突起75も同じ形状であるため、上流側突起74についてのみ説明する。上流側突起74には、高比熱材741を埋め込むために複数の穴があけられており、該穴の夫々の中に高比熱材741が入れられる。高比熱材741は、上流側突起74の他の部位よりも比熱が高い材料であればよい。さらに、上流側突起74の他の部位よりも熱伝導率が高い材料としてもよい。また、高比熱材741は、上流側突起74の付け根よりも先端に近い位置に埋め込めばよい。つまり、高比熱材741を埋め込むための穴の中心は、上流側突起74の先端と付け根との中間位置よりも先端側に位置する。高比熱材741を埋め込むための穴は、ケース70の中心軸Aを中心に等間隔で配置されている。なお、穴の形状は、楕円または長穴など他の形状であってもよい。
【0058】
ここで、上流側突起74及び下流側突起75は、排気の流れの中に突出しており、排気が直接当たるため、減速中の燃料カット時などの排気の温度が低いときには、温度が低下してしまう。しかし、高比熱材741,751を設けることにより、温度が低下し難くなるため、上流側突起74及び下流側突起75の温度を高く維持することができる。減速中の燃料カット時には、排気中の酸素濃度が高いために、上流側突起74及び下流側突起75の温度を高く維持することにより、PMの酸化をより促進させることができる。これにより、電流は上流側突起74及び下流側突起75で遮断されるので、触媒担体4から収容部71へ電気が流れることを抑制できる。
【0059】
なお、本実施例では、上流側突起74及び下流側突起75の両方に高比熱材741,751を設けているが、何れか一方のみに設けても良い。また、実施例2以外で説明した上流側突起及び下流側突起に断熱材を設けることもできる。さらに、実施例5で説明した断熱材641,651を併用することで、PMの酸化をさらに促進させることができる。
【実施例7】
【0060】
図9は、本実施例に係る電気加熱式触媒15の概略構成を示す図である。実施例2に示す電気加熱式触媒10と異なる点について説明する。図9に示す電気加熱式触媒15は、上流側突起84及び下流側突起85の形状が実施例2と異なる。すなわち、上流側突起84及び下流側突起85は、ケース80の内周面側において、板厚が薄い絞り部841,851が設けられている。すなわち、上流側突起84及び下流側突起85は、先端側よりも
付け根側のほうが、板厚が薄い。なお、上流側突起84及び下流側突起85は、先端側よりも付け根側のほうが、板厚が薄ければよく、段階的に薄くなっていてもまたは連続的に徐々に薄くなっていても良い。また、板厚が薄くなっている箇所よりもケース80の内周面側で板厚が厚くなっていてもよい。
【0061】
このように構成された電気加熱式触媒15では、絞り部841,851において熱の移動が抑制されるため、排気から受けた熱が収容部81へ移動し難くなる。また、先端の板厚を厚くしているため、熱容量が大きくなるので、排気の温度が低くなっても、上流側突起84及び下流側突起85の温度が低下することを抑制できる。すなわち、上流側突起84及び下流側突起85の温度を高く維持することができるので、PMの酸化をより促進させることができる。これにより、電流は上流側突起84及び下流側突起85で遮断されるので、触媒担体4からケース80へ電気が流れることを抑制できる。
【0062】
なお、絞り部841,851は、上流側突起84または下流側突起85の何れか一方にのみ設けても良い。また、実施例2以外で説明した上流側突起及び下流側突起に絞り部841,851を設けることもできる。実施例5または6で説明した断熱材641,651または高比熱材741,751を併用することで、PMの酸化をさらに促進させることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 電気加熱式触媒
2 ケース
3 マット
4 触媒担体
5 排気管
6 絶縁層
21 収容部
22 テーパ部
23 テーパ部
24 上流側突起
25 下流側突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する発熱体と、
前記発熱体を収容するケースと、
前記発熱体と前記ケースとの間に挟まれて電気を絶縁するマットと、
を備える電気加熱式触媒において、
前記マットよりも少なくとも上流側の前記ケースの内周面から該ケースの中心軸方向側に突き出る突起と、
前記突起及び該突起から前記マットまでの範囲の表面に形成され電気を絶縁する絶縁層と、
を備えることを特徴とする電気加熱式触媒。
【請求項2】
前記マットよりも上流側及び下流側に、前記ケースの内周面から該ケースの中心軸方向側に突き出る突起を備え、前記絶縁層は、夫々の突起及び夫々の突起から前記マットまでの範囲の表面に形成されることを特徴とする請求項1に記載の電気加熱式触媒。
【請求項3】
前記マットよりも下流側の突起は、前記マットよりも上流側の突起よりも、突き出し量が大きいことを特徴とする請求項2に記載の電気加熱式触媒。
【請求項4】
前記突起は、排気の流れ方向の下流側に向かって傾斜していることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電気加熱式触媒。
【請求項5】
前記ケースの中心軸から前記突起の先端までの距離が、前記ケースの中心軸から前記発熱体の外周までの距離よりも短くなるように前記突起が突き出ていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の電気加熱式触媒。
【請求項6】
前記突起が、前記ケースの内周面から該ケースの中心軸方向側に全周に亘り突き出ることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電気加熱式触媒。
【請求項7】
前記突起は、前記ケースの内周面側よりも、前記ケースの中心軸側の熱伝導率が高いことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の電気加熱式触媒。
【請求項8】
前記突起は、前記ケースの内周面側に断熱材を有することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の電気加熱式触媒。
【請求項9】
前記突起は、前記ケースの内周面側よりも、前記ケースの中心軸側の比熱が高いことを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の電気加熱式触媒。
【請求項10】
前記突起の厚さが、前記ケースの内周面側よりも、前記ケースの中心軸側のほうが大きいことを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の電気加熱式触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−220323(P2011−220323A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287902(P2010−287902)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】