説明

電気加熱式触媒

【課題】電気加熱式触媒において、電極とケースとの間の絶縁抵抗の低下を抑制する技術を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気通路2内に配置される触媒担体3であって、通電により発熱して排気浄化触媒4を加熱する触媒担体3と、触媒担体3を収容するケース6と、触媒担体3とケース6との間に設けられ電気を絶縁するマット7と、触媒担体3に電気を供給する電極5であって、触媒担体3の排気流れ方向上流側から下流へ延びてマット7に覆われた触媒担体3の外周面に接続される電極5と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱式触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
電気加熱式触媒において、通電により発熱する発熱体である触媒担体の外周における一部分とその一部分とは周の反対側部分とに電極を設ける技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−170243号公報
【特許文献2】特開平07−189662号公報
【特許文献3】特開平07−019034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1のような技術において、触媒担体とケースである金属シェルとの間の触媒担体の外周部に絶縁部材であるマットを設け、マットに絶縁層を設けると、絶縁層と金属シェル内周面との間に凝縮水が浸入し、凝縮水が滞留してしまう。滞留した凝縮水は、電極へ到達し電極に濡れ広がることで、電極と金属シェルとの間の絶縁抵抗を低下させてしまう。特に、触媒担体の軸方向中央部の外周に電極室を設ける構成では、電極室に凝縮水が溜まり電極と金属シェルとの間の絶縁抵抗をさらに低下させるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、電気加熱式触媒において、電極とケースとの間の絶縁抵抗の低下を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
気体流通箇所に配置される発熱体であって、通電により発熱して触媒を加熱する発熱体と、
前記発熱体を収容するケースと、
前記発熱体と前記ケースとの間に設けられ電気を絶縁する絶縁部材と、
前記発熱体に電気を供給する電極であって、前記発熱体の気体流通方向上流側から下流へ延びて前記絶縁部材に覆われた前記発熱体の外周面に接続される電極と、
を備えたことを特徴とする電気加熱式触媒である。
【0007】
本発明によると、電極が発熱体の気体流通方向上流側から配置されているので、発熱体の気体流通方向上流側に到来する高温の排気で電極付近の温度を上昇させることができる。よって、電極付近の凝縮水は除去され、電極付近を乾燥状態に維持することができるので、電極に凝縮水が付着することに起因する、電極とケースとの間の絶縁抵抗の低下を抑制することができる。また、電極は発熱体の外周面に接続されるので、発熱体の一部に電気を供給することができないということがなく、発熱体に非通電領域が生じ難い。また、発熱体の外周面に接続された電極は絶縁部材に覆われているので、電極の絶縁性能も良好となる。
【0008】
前記電極は、前記発熱体と前記ケースとの間を碍子で覆われているとよい。
【0009】
本発明によると、発熱体とケースとの間の電極が碍子で覆われているので、絶縁性能を向上させることができる。
【0010】
前記電極は、前記発熱体の左右両側で前記発熱体の外周面に接続される一対の電極であるとよい。
【0011】
本発明によると、凝縮水等の水分が滞留し易い発熱体の下側に電極を配置する必要が無くなり、滞留した水分が電極に伝わり難く、電極に水分が付着することに起因する、電極とケースとの間の絶縁抵抗の低下をより抑制することができる。また、一対の電極が発熱体の左右両側で発熱体の外周面に接続されるので、一対の電極で発熱体の左右間に通電して発熱体の全体に電気を供給することができ、発熱体に非通電領域が生じない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、電気加熱式触媒において、電極とケースとの間の絶縁抵抗の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1に係るEHCの概略構成を示す図である。
【図2】実施例2に係るEHCの概略構成を示す図である。
【図3】実施例3に係るEHCの概略構成を示す図である。
【図4】実施例4に係る電極の概略構成を示す図である。
【図5】実施例5に係る電極の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
【0015】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1に係る電気加熱式触媒(以下、EHCという)の概略構成を示す図である。図1(a)はEHCを排気流れ方向上流側から見た図であり、図1(b)はEHCの半断面である図1(a)のA−A断面を示す図である。図1に示すEHC1は、排気が流通する箇所である内燃機関の排気通路2の一部に配置されている。本実施例の排気が流通する箇所である排気通路2が、本発明の気体流通箇所に対応する。また、以下で説明する本実施例の排気流れ方向が、本発明の気体流通方向に対応する。
【0016】
EHC1は、触媒担体3、排気浄化触媒4、電極5、ケース6、及びマット7を備えている。EHC1の触媒担体3は、円柱状に形成されており、その中心軸が排気流れ方向と同じ排気通路2の中心軸と同軸となるように設置されている。触媒担体3には排気浄化触媒4が担持されている。排気浄化触媒4としては、酸化触媒、吸蔵還元型NOx触媒、選択還元型NOx触媒及び三元触媒等を例示することができる。
【0017】
触媒担体3は、通電されると自身が有する電気抵抗で発熱する材料によって形成されている。触媒担体3が、本発明の発熱体に対応する。触媒担体3の材料としては、SiCを例示することができる。触媒担体3は、排気流れ方向に延び且つ排気流れ方向と垂直な断面がハニカム状をなす複数の通路を有している。この通路に排気を流通させる。触媒担体3には、電極膜8を介して電極5が接続されている。電極5には不図示のバッテリから電力が供給される。電極5に電力が供給され触媒担体3が通電されると、触媒担体3は発熱し、触媒担体3に担持された排気浄化触媒4を加熱して昇温させ、排気浄化触媒4の活性化を促進することができる。
【0018】
触媒担体3はケース6に収容されている。ケース6は、金属製である。ケース6を構成
する金属材料としては、ステンレス鋼材を例示することができる。ケース6は、触媒担体3が内部に配置される収容部6aと、収容部6aよりも排気流れ方向上流側で収容部6aと排気通路2とを接続するテーパ部6bと、収容部6aよりも排気流れ方向下流側で収容部6aと排気通路2とを接続するテーパ部6cと、を有している。収容部6aの通路断面積は、排気通路2の通路断面積よりも大きい。収容部6aの内部には、触媒担体3及びマット7が収容されている。テーパ部6b,6cは、収容部6aから離れるに従って通路断面積が縮小するテーパ形状である。排気流れ方向上流側のテーパ部6bには、電極を固定するための、中心軸に対して垂直面の電極固定部6dが設けられている。
【0019】
ケース6の収容部6aの内壁面と、触媒担体3の外周面と、の間には、絶縁部材としての円環状のマット7が挟み込まれている。マット7がケース6内に配置されることにより、触媒担体3がケース6内でマット7によって支持される。マット7は、電気を絶縁する電気絶縁材で構成されている。マット7は、内側マット部7aと、外側マット部7bと、内側マット部7aと外側マット部7bとの間に介在する絶縁層としての内筒7cと、から構成されている。内側マット部7a及び外側マット部7bを構成する材料としては、アルミナを主成分とするセラミックファイバを例示することができる。内側マット部7aは、触媒担体3の外周面に巻きつけられている。内側マット部7aの外側に内筒7cが配置される。内筒7cは、電気絶縁材のアルミナで構成されている。外側マット部7bは、内筒7cの外周面に巻きつけられている。内側マット部7aと外側マット部7bとの間に介在する内筒7cは、排気流れ方向上流側及び下流側で内側マット部7a及び外側マット部7bよりも突出している。電気絶縁材のマット7が触媒担体3とケース6との間に設けられているので、触媒担体3に通電したときにその電気がマット7で絶縁されケース6へ流れてしまうことが防止される。
【0020】
触媒担体3への電気の供給は電極5を用いて行われる。ところで、従来の電極は、ケースの排気流れ方向中央部に孔を開けてマットに電極室を設け、電極室内で電極を触媒担体の外周面まで軸心方向に差し込んだものであった。このような従来の電極であると、内筒とケース内周面との間に滞留した凝縮水が電極室内に溜まり、凝縮水は電極に濡れ広がることで、電極とケースとの間の絶縁抵抗を低下させてしまうおそれがあった。なお、凝縮水は、温まる前の内燃機関が稼働と停止とを繰り返すことで大量に発生してしまう。
【0021】
そこで、本実施例では、触媒担体3に電気を供給する電極5は、ケース6の電極固定部6dに固定されケース内空間において触媒担体3の排気流れ方向上流側から下流へ延びてマット7に覆われた触媒担体3の外周面に接続されるようにした。この電極5の電極先端5aが接続される触媒担体3の外周面は、触媒担体3の周方向に所定幅で且つ触媒担体3の排気流れ方向の上下流端まで広がる電極膜8が設けられている。また、電極5は、ケース内の内径が横方向に最も広がった部分に左右に並んで一対設けられており、一対の電極5の電極先端5aが触媒担体3の左右両側で触媒担体3の外周面に接続される。このため、電極膜8も、触媒担体3の左右両側で触媒担体3の外周面に設けられている。電極5は、触媒担体3とケース6との間を碍子5bで覆われており、ケース6の電極固定部6dにてケース6に固定される。電極5は、排気流れ方向と一致したまっすぐな棒状をしている。
【0022】
このような構成の電極5では、一対の電極間で通電が行われ、電極5に供給された電気は、電極膜8を介して触媒担体3の左右間に流れる。このとき、電極膜8が触媒担体3の排気流れ方向の上下流端まで設けられているので、電気は触媒担体3の排気流れ方向の上下流端に至る触媒担体3の全体に流れる。電気が供給された触媒担体3は全体が発熱し、排気浄化触媒4を加熱して排気浄化触媒4を活性化することができる。
【0023】
本実施例によると、電極5が触媒担体3の排気流れ方向上流側から配置されているので
、触媒担体3の排気流れ方向上流側の空間に到来する高温の排気で電極付近の温度を上昇させることができる。よって、高温となった電極付近の凝縮水は除去され、電極付近を乾燥状態に維持することができる。加えて、本実施例の電極5は、触媒担体3の左右両側で触媒担体3の外周面に接続される一対の電極であるので、凝縮水等の水分が滞留し易い触媒担体3の下側に電極5を配置する必要が無く、触媒担体3に滞留した水分が電極5に伝わり難い。したがって、電極5に凝縮水が付着することに起因する、電極5とケース6との間の絶縁抵抗の低下を抑制することができる。
【0024】
また、電極5は電極先端5aが触媒担体3の外周面に接続されるので、一対の電極間に挟まれない領域が無く触媒担体3の一部領域に電気を供給することができないということがなく、触媒担体3に非通電領域が生じ難い。つまり本実施例では、一対の電極5の電極先端5aが触媒担体3の左右両側で触媒担体3の外周面に接続されるので、一対の電極5で触媒担体3の左右間に通電して触媒担体3の全体に電気を供給することができ、触媒担体3に非通電領域が生じない。
【0025】
また、触媒担体3の外周面に接続された電極5の電極先端5aはマット7に覆われており、触媒担体3とケース6との間の電極5は碍子5bで覆われているので、電極5の絶縁性能が良好になると共に、電極自体に排気物質が付着することもない。
【0026】
また、まっすぐな電極5は、800℃程度の高温でも破損し難く耐久性が高い。
【0027】
<実施例2>
以下の実施例2〜5では、その特徴部分を説明する。その他の部分についは上記実施例1と同様なので説明を省略する。
【0028】
図2は、実施例2に係るEHCの概略構成を示す図である。図2は図1(a)のA−A断面のようにEHCの半断面を示す図である。本実施例では、図2に示すように、ケース内空間において電極5をケース内に先ず軸心方向に向かわせ、90°曲げて触媒担体3の排気流れ方向上流側から下流へ延びてマット7に覆われた触媒担体3の外周面に接続されるようにしている。これによっても、上記実施例と同様な効果を得ることができる。
【0029】
<実施例3>
図3は、実施例3に係るEHCの概略構成を示す図である。図3は図1(a)のA−A断面のようにEHCの半断面を示す図である。本実施例では、図3に示すように、電極5において、碍子5bで覆われた部分と、マット7に覆われた触媒担体3の外周面に接続される電極先端5aと、の間に、電極5にかかる応力を緩和する応力緩和部5cを設けている。応力緩和部5cは、通電でき弾性変形する部材によって構成されている。これによると、触媒担体3がマット7で保持されることにより組み付け誤差等が生じることや材料によっては温度差・熱膨張比が異なることから、電極5と触媒担体3との接触箇所に応力が発生しても、応力緩和部5cでその応力を緩和することができる。
【0030】
<実施例4>
図4は、実施例4に係る電極の概略構成を示す図である。図4は図1(a)のA−A断面のようにEHCの半断面における電極を示す図である。本実施例では、図4に示すように、第1電極部5dと第2電極部5eとの間にバネ5fを介在させて、電極5にかかる軸方向の応力を緩和させるようにしている。また、第2電極部5eと触媒担体3に接続された電極先端5aとを一対の面部5e1,5a1で面接触させる構成にして電極5にかかる軸方向に対して垂直方向の応力を緩和させるようにしている。これによると、第1電極部5dと電極先端5aの固定が容易となり、組立性を向上することができる。
【0031】
<実施例5>
図5は、実施例5に係る電極の概略構成を示す図である。図5は図1(a)のA−A断面のようにEHCの半断面における電極を示す図である。本実施例では、図5に示すように、電極5の触媒担体3とケース6との間を覆う碍子5bの一部の内部に熱線ヒータ5gを配置する。熱線ヒータ5gには、碍子5bの表面にカーボンが堆積しケース6と電極5との絶縁抵抗が低下した時に電流を流す。電流が流れると熱線ヒータ5gは発熱し、碍子表面のカーボンを酸素と熱とにより焼き切る。これにより、内燃機関が温まらないうちに内燃機関の稼働と停止とを繰り返しをして碍子表面に付着したカーボンでケース6と電極5とが短絡することを回避することができる。
【0032】
<その他>
本発明に係る電気加熱式触媒は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1:EHC、2:排気通路、3:触媒担体、4:排気浄化触媒、5:電極、5a:電極先端、5b:碍子、5c:応力緩和部、5d:第1電極部、5e:第2電極部、5e1,5a1:面部、5f:バネ、5g:熱線ヒータ、6:ケース、6a:収容部、6b,6c:テーパ部、6d:電極固定部、7:マット、7a:内側マット部、7b:外側マット部、7c:内筒、8:電極膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体流通箇所に配置される発熱体であって、通電により発熱して触媒を加熱する発熱体と、
前記発熱体を収容するケースと、
前記発熱体と前記ケースとの間に設けられ電気を絶縁する絶縁部材と、
前記発熱体に電気を供給する電極であって、前記発熱体の気体流通方向上流側から下流へ延びて前記絶縁部材に覆われた前記発熱体の外周面に接続される電極と、
を備えたことを特徴とする電気加熱式触媒。
【請求項2】
前記電極は、前記発熱体と前記ケースとの間を碍子で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の電気加熱式触媒。
【請求項3】
前記電極は、前記発熱体の左右両側で前記発熱体の外周面に接続される一対の電極であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気加熱式触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−107597(P2012−107597A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258771(P2010−258771)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】