説明

電気化学キャパシタ

【課題】光による発電、充電及び必要時における放電を任意に行うことができ、軽量かつフレキシブルであり、さらに光学的に透明な構造によって両面の入射光を利用できる薄型フィルム状の電気化学キャパシタ(積層型光キャパシタ)を提供すること。
【解決手段】光電極と、これに電荷輸送層を介して電気的に接合する光学的に透明な内部対極と、該内部対極にイオン性電解質層を介して電気的に接合する光学的に透明な外部対極が順次積層されて構成されて一体となった平板状の電気化学キャパシタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学キャパシタ関するものである。詳しくは、光充電と放電を繰り返して電力源として使用することができ、かつフレキシブル性に優れた平板状の電気化学キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー原料としての化石燃料の枯渇や、その燃焼により発生する二酸化炭素等に起因する地球環境破壊などの社会問題に対応するため、自然エネルギーとして太陽光を利用した電力供給手段の必要性がますます高まりつつある。
【0003】
太陽光を直接電力に変換する手段の1つが太陽電池であり、シリコン結晶やアモルファスシリコン薄膜、非シリコン系の化合物半導体の多層薄膜を用いる、いわゆる固体接合型の太陽電池について、そのエネルギー変換効率を向上させる研究が活発に行われている。
【0004】
しかし、固体接合型の太陽電池は、製造に真空工程等を必要とし高コストとなる欠点から、最近では製造コストが低く、高い効率を実現できる有機系の太陽電池、特に色素増感型太陽電池を用いる方法が注目され、実用に向けて色素増感された多孔質半導体膜を用いる光電変換方法が提案されている(例えば、「非特許文献1」、「特許文献1」、「特許文献2」参照。)。
【0005】
また、太陽電池と蓄電素子を単一の素子構成に一体化した光充電可能な素子として、「光キャパシタ」が考案され、その原理が開示されている(例えば、「非特許文献2」、「非特許文献3」参照。)。これらの光キャパシタは蓄電材料に活性炭を用い、電極基板には導電性ガラス基板を用いており、活性炭の特徴である電気二重層による静電的充電の機能を素子に内蔵したものである。しかし、ガラス基板を用いた素子は脆く柔軟性が無いために、それを設置する場所は平坦な表面にのみ限られ、曲面や形状の変化する表面に設置することができない。また、活性炭は黒色の蓄電層であるために、素子は不透明であり、光を光電極の基板が配置する側の一方向からしか利用することができない。素子の用途範囲を広げるためには、素子を軽量、フレキシブル化し、かつ、平板状素子の両面から入射する光を有効利用できるように素子を光学的に透明な構造体とすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許4927721号明細書(特許請求の範囲他)
【特許文献2】特許第2664194号公報(特許請求の範囲他)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ネイチャー(Nature),1991年,第353巻,p737−740
【非特許文献2】Applied Physics Letters, 2004年、第85巻、3932頁
【非特許文献3】Chemical Communications,2005年、3346頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、光による発電、充電及び必要時における放電を任意に行うことができ、軽量かつフレキシブルであり、さらに光学的に透明な構造によって両面の入射光を利用できる薄型フィルム状の電気化学キャパシタ(積層型光キャパシタ)、及びこれを用いた電気化学キャパシタ粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、光学的に透明な色素増感された半導体層を担持して光発電能力をもつ光電極と、これに電荷輸送層を介して電気的に接合する光学的に透明な内部対極と、該内部対極にイオン性電解質層を介して電気的に接合する光学的に透明な外部対極が順次積層されて構成されて一体となった平板状の電気化学キャパシタであって、前記内部対極がその両面の1つの面において電荷輸送層に接し、他の1つの面において光学的に透明な蓄電活物質を担持してイオン性電解質層に接し、前記外部対極が光学的に透明な蓄電活物質を担持してイオン性電解質層に接し、前記電気化学キャパシタが可視光の波長領域での光透過率が16%以上であり、機械的特性においてフレキシブルであり、前記光電極と前記外部対極とを外部回路で連結して前記光電極を光照射することにより前記内部電極の蓄電活物質に正電荷を、前記外部対極の蓄電活物質に負電荷をそれぞれ蓄積して充電が行われる電気化学キャパシタを提供するものである。
【0010】
また本発明は、上記電気化学キャパシタに、さらに粘着剤層または接着剤層を設けた電気化学キャパシタ粘着シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、両面からの入射光を利用した光発電、充電及び放電が可能であり、軽量、かつフレキシブルな電気化学キャパシタ、及びこれを用いた電気化学キャパシタ粘着シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電気化学キャパシタの基本的な構成例の略解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に添付図面により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の電気化学キャパシタの典型的な構成例を示す略解断面図である。図1において、2枚の平板電極すなわち光電極I及び内部対極IIが電荷輸送層1をはさんで積層されている。この光電極I、電荷輸送層1、内部対極IIは光発電ユニットを構成している。ここで、電荷輸送層には酸化還元剤を含むイオン電解液もしくは固体の正孔輸送材料が用いられる。また、光電極Iは光学的に透明な透明導電基板3に担持された半導体層4により構成された光電極となっている。また内部対極IIは、光学的に透明な透明導電性基板5に担持された充電可能な蓄電活物質層6から構成され、蓄電活物質層6は電荷輸送層1に対してその反対側の面に担持された構造となっている。この内部対極IIに対して、光学的に透明な基板から成る外部対極IIIが、イオン性電解質層2を中間層として挟んで対向し接合している。外部対極IIIは内部対極と同様に光学的に透明な透明導電基板7の表面に充電可能な蓄電活物質層8を担持している。ここで蓄電活物質層6、8は光学的に透明なナノ粒子の薄膜によって構成される。
【0015】
電荷輸送層1とイオン性電解質層2は、内部電極IIの挿入によって物理的に完全に接触が遮断されている。電荷輸送層1とイオン性電解質層2は、対向する電極間の電気的短絡を防止するためのセパレータ(多孔性膜等)を含む。また、3つの導電性電極I、II、IIIにはそれぞれ外部回路が結合しており、回路A、B、及びCの開閉を行うためのスイッチA、B、及びCがそれぞれ設けられている。
【0016】
本発明の電気化学キャパシタ全体の厚さは特に限定されないが、例えば、約1mm〜約10mm、約1mm〜約5mm、または約1.5mm〜約3mmとすることができる。中でも、厚さを約2mmとすることが好ましい。
【0017】
本発明の電気化学キャパシタは、透明導電基板3または透明導電基板7の外側の少なくとも一面に、粘着剤層または接着剤層を設けてもよい。これら粘着剤層または接着剤層は、従来公知の粘着剤または接着剤から構成される層である。粘着剤層または接着剤層を設けることにより、電気化学フォトキャパシタを、窓やパネル、パーティションなどの表面に容易に設置することができる。
【0018】
粘着剤層または接着剤層を設ける場合は、その外側に公知の素材からなる剥離ライナーを設けてもよい。剥離ライナーは、電気化学フォトキャパシタの製造過程、または輸送過程で、粘着剤層または接着剤層の表面を保護する。
【0019】
次に、本発明の電気化学キャパシタの作用原理について説明する。本発明のキャパシタでは、光吸収によって電気化学的に卑な電位に励起される光感応性の電極(以下、「光電極」ということがある。)において、光励起下で電子と正孔の電荷分離が起こる。生じた正孔は、電荷輸送層によって内部対極に移動し、内部対極の表面に担持された蓄電活物質層6に蓄えられる。電荷輸送層は酸化還元剤を含むイオン性電解液や正孔輸送材によって構成される。蓄電活物質層6は、酸化還元反応によって電荷を蓄積する固体の活物質材料、具体的には金属の荷電が変化することで蓄電を行う金属酸化物、もしくはイオンのドープによって酸化還元状態が変化し蓄電を行うポリマー材料によって構成される。
【0020】
光電極で生じた電子は、外部回路を経て外部対極に移動し、外部対極に担持された蓄電活物質層8に蓄えられる。外部対極の蓄電活物質層8は、蓄電活物質層6と同様の活物質材料によって構成される。このようにして光電極の光照射下で内部対極側に正の電気量、外部対極側に負の電気量が充電される。
【0021】
本発明の電気化学キャパシタ(以下、「光キャパシタ」ということがある。)の充放電は次のように行われる。充電においては、図1の回路AとBを閉じ、回路Cを開いて、光電極Iと外部対極IIIを結ぶ回路A〜Bを短絡状態にし、光電極Iに光照射を行う。この光照射によって内部対極IIに正電荷、外部対極IIIに負電荷が蓄積されて充電が進行する(この過程を以下、「光充電」ということがある。)。光充電の完了は、充電電流が限りなくゼロに近づき、光電極と外部対極間の開回路電圧が飽和する現象によって知ることができる。放電においては、素子を暗中に置いて、回路Aを開き、回路BとCを閉じて、内部対極IIと外部対極IIIをつなげた状態で放電を行う。このとき、回路Cに置かれた負荷(図1の抵抗)を電流が通過しここで電気的仕事が行われる。負荷は、充電された光キャパシタの電力を用いて駆動しようとする目的の電気機器等を意味する。また、放電特性の計測においては、負荷抵抗値を電気的に制御することで、一定の放電電流に制御した条件、いわゆるガルバノスタティックな条件下で、電圧の変化を計測する。
【0022】
光キャパシタを実際に光量変化の多い屋外等で用いる場合、充電時の光電流の急激な変化による電流の逆流が起こることを防止する目的で、回路には整流器、ダイオード、スイッチなどの各種のデバイスを装着することができる。
【0023】
光電極に担持される半導体層4の半導体材料には、有機半導体、無機半導体の各種材料を用いることができる。また、半導体材料は結晶性であっても非晶質であってもよい。好ましいものは結晶性の無機半導体であり、無機半導体材料としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、金属酸化物、そして金属カルコゲナイド(例えば硫化物、セレン化物等)に代表されるいわゆる化合物半導体又はペロブスカイト構造を有する化合物等を使用することができる。この中でも好ましいものは金属酸化物および金属カルコゲナイドの半導体である。
【0024】
半導体層4の半導体材料は、微粒子の凝集したものもしくは多孔性のものが好ましい。このような多孔膜は、その表面粗さ係数が500以上であることが好ましい。ここで、表面粗さ係数R(roughness factor)とは見かけの投影面積に対する材料が実際にもつ表面積の比を意味する。この比は材料の比表面積S(m/g)と該材料の電極基板上の担持量M(g/m)を用いて、R=SMで示される。
【0025】
金属酸化物及び金属カルコゲナイドの半導体として好ましいものには、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ又はタンタルのなどの金属の酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物、カドミウム、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウムヒ素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物等が挙げられる。
【0026】
上記の半導体の中で本発明に好ましく用いられる半導体は、n型の金属酸化物半導体であり、たとえば、TiO、TiSrO、ZnO、Nb、SnO、またはWOなどが用いられる。これらの酸化物半導体の2種以上を複合させて半導体層として用いてもよい。
【0027】
本発明の電気化学キャパシタの光電極に半導体が単独で用いられる場合は、半導体は400nm以上の可視光の波長領域に少なくとも光吸収を持つn型半導体であることが好ましい。具体的には、400nm以上の可視光の波長領域に半導体のバンドギャップに相当する吸収の立ち上がりを持つn型半導体もしくは400nm以上の波長において光感応性を持つように増感された半導体であることが好ましい。可視光とは、400nm以上、かつ850nm以下の波長に相当する光を意味し、本発明のキャパシタの光電極はこのような波長範囲の光の一部を少なくとも吸収しなければならない。単独で可視光を吸収する半導体の材料としては、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、硫化亜鉛、またはセレン化亜鉛などのカルコゲナイド系化合物半導体があげられる。
【0028】
本発明の光電極の半導体層4としては、色素分子によって表面を被覆され該色素分子によって光学的に分光増感された多孔性半導体が好ましく用いられる。ここで、多孔質半導体には、ナノサイズの平均粒径を有する一次粒子が結合して形成されるメソポーラスな半導体薄膜が特に有効である。このようなナノ多孔性半導体層を構成する半導体粒子は、その平均粒径を約5〜約100nm、または約10〜約80nmとすることができる。光電極を構成する半導体層4は、その厚みを、約5μm以上約30μm以下、または約7μm以上約20μm以下とすることができる。半導体層4の空孔率は、約40%以上、または約60%以上とすることができる。
【0029】
半導体層4を色素によって増感する場合、多孔質半導体に被覆する増感色素分子には、有機色素分子、金属錯体色素分子など各種の増感色素が用いられる。このような色素としては、例えばシアニン系、メロシアニン系、オキソノール系、ローダニン系、インドレニン系、キサンテン系、スクワリリウム系、ポリメチン系、クマリン系、リボフラビン系、ペリレン系などの有機色素、Ru錯体や金属フタロシアニン誘導体、金属ポルフィリン誘導体、クロロフィル誘導体などの錯体系色素などがある。そのほか「機能材料」,2003年,6月号,P5−18に記載されている合成色素や天然色素や「ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(J.Chem.Phys.)」,2003年,B第107巻,P597に記載されるクマリンを中心とする有機色素を用いることもできる。
【0030】
半導体層4には、上記の無機半導体材料と色素増感された半導体材料のほかに、可視光を吸収する有機の半導体材料ならびに有機の導電材料を用いることができる。有機半導体の例としては、メロシアニン類の色素、シアニン類の色素とそのJ凝集体、クマリン類の色素、ポリエン類の色素、金属フタロシアニンとその誘導体、ポルフィリンとその誘導体、ペリレンとその誘導体などがあげられる。また有機導電材料の例としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ポリチオフェンなどの高分子とその誘導体、ポリ(p−フェニレン)とその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)とその誘導体、ポリトルイジンとその誘導体等の導電性高分子、フラーレンとその誘導体などを用いることができる。これらの有機導電材料は光感応性に加えて正孔輸送材料としての機能も同時に備えて用いることもできる。
【0031】
本発明の電気化学キャパシタの内部対極および外部対極に用いられる蓄電活物質層を構成する材料(以下、「蓄電用材料」ということがある。)は、内部対極および外部対極において共通の種類の材料であっても良く、また異種の材料であっても良い。
【0032】
ここで内部対極および外部対極の蓄電用材料には、酸化還元活性があり酸化還元反応すなわちファラデー反応によって電気エネルギーを蓄えることのできる蓄電活物質が用いられる。
【0033】
蓄電活物質層に電荷を酸化還元反応すなわちファラデー反応によって蓄えるための蓄電用材料としては、無機材料、有機材料の各種の電極活物質を用いることができる。無機の電極活物質としては、黒鉛、メソフェーズピッチ、繊維状炭素、カーボンナノチューブなどの炭素材料が挙げられ、これらはカチオンやアニオンの挿入と酸化還元反応によって活性を与える。また、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、スズ、コバルト、バナジウム、ジルコニウム、チタン、マンガン、タングステンなどの多価の金属の酸化物、遷移金属酸化物、金属硫化物なども電極活物質に用いることができる。また、有機の電極活物質としては、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ポリチオフェン、ポリインドールなどの導電性高分子とその誘導体、ポリキノキサリンとその誘導体、有機電荷移動錯体とそのオリゴマーなどを用いることができる。これらの電極活物質は、内部対極と外部対極のいずれか一方あるいは両方に担持することができる。また、これらの電極活物質を電気二重層蓄電層用の炭素材料と混合して用いることもできる。
【0034】
蓄電用材料に金属酸化物を用いる場合は、ルテニウム、ニッケル、マンガンから選ばれる酸化物とその混合物を用いることが高い充電容量を与える点で好ましい。充電容量の点では、色素増感多孔質半導体が生じることのできる発電電圧の上限に近い1Vの電圧の範囲内において、高い電荷蓄積量を達成することのできる材料が好ましい。また、光学的透明性の点で、光透過率の高い薄膜を与えることのできる材料が好ましい。これらの点から、ルテニウムの酸化物はナノ粒子化することによって、光透過性を持つと同時に、単位重量当たりの充電容量が高い特徴をもつことから特に好ましい。
【0035】
内部電極と外部対極を構成する蓄電活物質層には、層を固定化する目的で各種のバインダーを添加することができる。バインダーとしては、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフロロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化塩化エチレン、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0036】
本発明の電気化学キャパシタにおいて、半導体層4に接する電荷輸送層1には、酸化還元化合物を含むイオン性電解質を用いることができる。これらは、たとえば揮発性の有機溶媒を用いる液体電解液、不揮発性のイオン性液体(常温溶融塩)などを用いる液体電解液、ポリマー電解質やポリマーゲルを用いる高粘度の擬固体電解質、無機や有機の微粒子やナノ粒子の分散物をマトリックスとして含む擬固体電解質などが含まれる。また。電荷輸送層には正孔(正電荷)を移動する能力のある各種の有機、無機の固体導電材料を用いることもできる。
【0037】
これらの液体、擬固体の電解質に含ませる酸化還元剤としては、Iとヨウ化物の組合せ(ヨウ化物としてはLiI、NaI、KIなどの金属ヨウ化物、あるいはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど第四級アンモニウム化合物のヨウ素塩など)を含む電解液、Brと臭化物の組合せ(臭化物としてはLiBr、NaBr、KBrなどの金属臭化物、あるいはテトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイドなど第四級アンモニウム化合物の臭素塩など)を含む電解液のほか、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオンなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウムなどの硫黄化合物、などを用いることができる。この中でもIとLiIやピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど第四級アンモニウム化合物のヨウ素塩を組み合わせた電解質が高い性能を出す点で好ましい。
【0038】
上記の酸化還元化合物を含むイオン性液体電解質に用いる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルなどを含むアルコール類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどのエーテル類、γ‐ブチロラクトン、α‐メチル‐γ‐ブチロラクトン、β‐メチル‐γ‐ブチロラクトン、γ‐バレロラクトン、3‐メチル‐γ‐バレロラクトンなどのラクトン類、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物、ジメチルスルホキシドなど非プロトン極性物質などが用いられる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上混合して用いてもよい。
【0039】
上記不揮発性のイオン性液体(常温溶融塩)としては各種のアルキルイミダゾリウム塩、例えばジメチルイミダゾリウム、メチルプロピルイミダゾリウム、メチルブチルイミダゾリウム、メチルヘキシルイミダゾリウムとその四フッ化ホウ素塩、三フッ化メタンスルホニルイミド塩、ヨウ化物などを挙げることができる。そのほかピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩なども用いることができる。これらの溶融塩は、機能材料2004年11月号(シーエムシー出版)、大野弘幸監修、イオン性液体―開発の最前線と未来―(シーエムシー出版、2003年)、特開2002−190323号公報、特開2001−199961号公報、特開2001−196105号公報などに記載されている公知の溶融塩を用いることもできる。
【0040】
電荷輸送層1に、正孔輸送材料を用いる場合は、有機又は無機あるいはこの両者を組み合わせた固体の正孔輸送材料を使用することができる。有機の正孔輸送材料としては、芳香族アミン類、オリゴチオフェン化合物などのほか高分子化合物として、ポリビニルカルバゾール、ポリピロール、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレン)及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリトルイジン及びその誘導体、ポリシランとその誘導体なども用いることができる。また上記の化合物を含め、有機EL素子の正孔輸送層に用いられる各種の正孔輸送材を用いることができる。
【0041】
無機の正孔輸送材料としては、p型無機化合物半導体を用いることができる。好ましいp型無機化合物半導体は一価の銅を含む化合物半導体であり、一価の銅を含む化合物半導体の例としてはCuI,CuSCN,CuInSe,Cu(In,Ga)Se,CuGaSe,CuO,CuS,CuGaS,CuInS,CuAlSeなどが挙げられる。この中でもCuI及びCuSCNが好ましく、CuIが最も好ましい。このほかのp型無機化合物半導体として、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi、MoO、Cr等を用いることができる。
【0042】
本発明の電気化学キャパシタにおいて内部対極と外部対極との間に用いるイオン性電解質層に用いる電解液は特に制限はなく、有機電解液、水溶液系電解液、溶融塩系電解液、ポリマー型電解液を含め、電気化学キャパシタに用いることのできる各種の電解液が用いられる。水溶液電解液としては、各種の酸溶液、塩の水溶液、アンモニウム塩を含めるアルカリ性水溶液を用いることができる。
【0043】
上記のイオン性電解質層に有機電解液を用いる場合、その有機溶媒は特に限定されるものではないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、3−メチル−γ−バレロラクトンなどのラクトン類、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドなどのアミド類、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類、ジメチルスルホラン、スルホランなどを挙げることができる。これらの有機溶媒は、1種又は2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0044】
水溶液系電解液を用いる場合、例えば、硫酸、塩酸などの酸や水酸化カリウムなどの塩基、そしてこれらの塩を用いることができる。この場合、高電流密度下での充放電特性に優れる少なくとも一つのランタノイド元素の塩の水溶液を酸の共存下で電解液として用いることが好ましい。
【0045】
本発明の電気化学キャパシタの内部対極と外部対極で挟まれるイオン性電解質層には、溶媒を構成する物質を除き、酸化還元活性な化合物が含まれないことが好ましい。すなわち、イオン性電解質層は電気化学的に安定な支持塩とこれを溶解する極性溶媒のみによって構成されることが好ましい。ただし、ここで、支持塩と極性溶媒は、それが電離した結果与えるイオン種の一部が、蓄電を行う蓄電活物質の酸化還元の平衡反応にかかわることによって充放電の酸化還元反応を助ける役目を担う。たとえば、極性溶媒に水を用いる場合、水素イオンが、活物質である金属酸化物に対して付加と脱離を行うことにより、金属酸化物中の金属イオンの酸化還元平衡反応にかかわる場合がある。
【0046】
本発明の電気化学キャパシタの光電極、内部対極、外部対極の透明導電基板に用いる導電材料には光学的に透明な材料が用いられる。このような導電材料は、金属(アルミニウム、ステンレススチール、チタン、銅など)や炭素材料などの不透明な材料をメッシュ状のパターンとして用いることができる。また、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛などを含む透明な導電膜材料の均一な薄膜を用いることもできる。また、高い導電性を持つ高分子材料の薄膜を用いることもできる。このような高分子としては、例えば、ポリアセチレン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系、ポリフェニレンビニレン系の高分子等が選ばれる。などが用いられる。これらの透明導電膜の表面抵抗は15Ω/□以下であることが好ましく、5Ω/□以下であることがさらに好ましく、1Ω/□以下であることが最も好ましい。
【0047】
光電極、内部対極、外部対極の透明導電基板3、5、7としては、光学的に透明な平板材料が用いられる。透明導電基板の光透過率は少なくとも80%を超えるものが必要であり、とくに90%を超える無色透明のものが好ましい。
【0048】
また、透明導電基板3、5、7は、機械的にフレキシブルであるものが用いられる。このようにすることによって本発明の電気化学キャパシタを機械的に折り曲げや券回が可能なフレキシブルなものとすることができる。
【0049】
このような透明導電基板として、例えば、プラスチック製のフィルム、またはガラス製のフィルムを用いることができる。とくにプラスチック製のフィルムが好ましい。透明導電基板は均一な厚さを持ち、その厚みは、約500μm以下、または約200μm以下であることが好ましい。
【0050】
プラスチック製のフィルムには、無着色で透明性が高く、耐熱性、耐薬品性、ガス遮断性に優れ、かつ低コストの材料が好ましく選ばれる。この観点から、プラスチック材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)などを用いることができる。本発明で特に好ましく用いられるものは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリエチレンナフタレート(PEN)である。
【0051】
本発明の電気化学キャパシタには、電極間の短絡防止の目的で、電荷輸送層1とイオン性電解質層2に層状のセパレータを設けることができる。このセパレータは、電解液を含浸して挿入される。セパレータを設けた場合、電荷輸送層1とイオン性電解質層2は、それぞれセパレータと一体化するので、これらの層の厚みは、セパレータの厚みとほぼ同等となる。
【0052】
セパレータを形成する材料は電気的に絶縁性の材料であり、その形状はフィルム状、粒子状のいずれであってもよいが、フィルム状のセパレータを用いるのが好ましい。フィルム状のものには、フィルターに用いる多孔性の樹脂フィルム、繊維状の高分子材料からなるフィルムなどが挙げられる。繊維状の高分子材料として、樹脂の不織布、たとえばポリプロピレン不織布を用いることができる。他に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン製の微孔膜、一般に電解コンデンサ紙と呼ばれるパルプを主原料とする多孔質膜などの公知のものを用いることができる。これらのセパレータはその表面に対して、目的に応じて親水処理、疎水処理を施すことができる。
【0053】
フィルム状セパレータを用いる場合、その厚みは約80μm以下、好ましくは約5〜約50μm、さらに好ましくは約5〜約25μmの範囲である。この場合、フィルムとしては空孔率が約40〜約85%のものを用いるのが好ましい。
【0054】
本発明の電気化学キャパシタは、可視光の波長領域での光透過率が16%以上である。可視光の波長領域とは、400nm以上、かつ850nm以下の波長領域をいう。光電極に、かかる波長領域の光を吸収する色素を含むことにより、上記の光透過率とすることが可能である。
【0055】
本発明の電気化学キャパシタは、光蓄電型の太陽電池ということもでき、外部の電力を使用することなく、光照射により電極に発生した光起電力によって充電を行い、暗中で放電を行うことができ、光充電と放電を繰り返し行うことができる。
【0056】
本発明の電気化学キャパシタは軽量でフレキシブルなシート状又はフィルム状であるため、曲面を含めた多様な形状の表面に設置することが可能である。さらに、光学的に透明であり、色素による意匠性を有するので、透明性や意匠性を必要とする窓やパネル等への装着が可能である。
【0057】
さらに、本発明の電気化学キャパシタの最外層の少なくとも一面に、粘着剤層または接着剤層を設けることにより、窓やパネル等への装着が容易な電気化学キャパシタ粘着シートとして使用することができる。
【実施例】
【0058】
実施例1
1.プラスチック基板を用いる光キャパシタの作製
(1)光電極の作製
二酸化チタンナノ粒子(触媒化成製,平均粒径15nm)をtert−ブチルアルコール(純度99.5%以上)とアセトニトリル(純度99.5%以上)の混合溶媒(質量比95:5)100mlに30gを撹拌分散し、この分散液に粒径5nmの二酸化チタン粒子を水とエチルアルコールの混合溶媒(質量比50:50)に分散した酸性のゾル液(濃度8質量%)を10質量%添加し、得られた混合分散液を自転/公転併用式のミキシングコンディショナーを使って均一に混合し、粘性のペーストを調製した。このチタニアペーストを、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)の導電膜を片面に被覆した透明導電性のポリエチレンナフタレート(IZO−PEN)フィルム(厚み200μm、表面抵抗10Ω/□)のIZO面にスクリーン印刷法によって塗布し、150℃で10分乾燥し、平均厚みが5μmの多孔性の二酸化チタン粒子層をIZO−PEN基板上に形成した。この多孔性二酸化チタン被覆IZO-PENフィルムを、色素としてインドレニン系色素(商品名D149体、ケミクレア社製)を溶解したアセトニトリル-tertブタノール(1:1)混合溶液に40℃で30分間浸漬して、二酸化チタン膜を色素増感し、フィルム上のフレキシブルな光電極を得た。なお、比較実験のために、光電極を二酸化チタン層のみで構成し、色素増感を行わないで作製した光電極も用意した。
(2)内部対極の作製
厚さが10μm、線幅が25μm、間隔が75μmのステンレス製のメッシュを、フィルムの両面に機械的プレスによって埋め込んだ導電性PENフィルム基板(厚さ200μm)を、内部電極の支持体として用意した。この内部電極の片面には、厚みが3nmの白金の超薄膜を触媒として真空蒸着によって被覆した。また、もう片方の面には、酸化ルテニウム(RuO)のナノシートをナノサイズの活物質として含む薄膜を被覆した。このRuOナノシートは特開2004−315347号公報に開示される合成方法によって作製した。薄膜作製においては、ナノシートを分散した液体を、樹脂バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を分散したN−メチルピロリドン溶液、多孔質構造形成のための球状アルミナ粒子と混合し、塗布用の粘性液体を調製した。この塗布液を上記のフィルム基板上に塗布し、150℃で10分乾燥し、RuOナノシートを蓄電活物質として含有する多孔質膜を被覆した。多孔質膜の厚みはおよそ10μmであり、その着色の程度と光透過性はRuOの含有濃度に依存するが、低濃度とすることによって半透明となった。以上のようにして、両面がそれぞれ触媒と蓄電活物質によって被覆された半透明のフレキシブルな中間電極を作製した。
(3)外部対極の作製
内部対極で用いた基板と同じIZO−PENフィルムを用い、その片面に、中間電極の作製と同様な方法によって、RuOナノシートを蓄電の活物質として含有する多孔質膜を被覆し、外部対極を作製した。多孔質膜の厚みはおよそ10μmとなった。外部対極が担持する活物質の量は、内部対極の担持する活物質の量と同等とした。
(4)光キャパシタの組み立て
電荷輸送層として、ヨウ素とヨウ素イオンを酸化還元剤、炭酸プロピルを溶媒として用いる有機電解液(ヨウ素0.05M、ヨウ化リチウム0.1M、4−tert−ブチルピリジン0.5M)を用いた。また、中間電極と外部電極の間に用いるイオン性電解質として、1Mの硫酸水溶液を用いた。中間電極と外部電極の間に用いる短絡防止用のセパレータフィルムには、親水性のセルロースフィルター(厚さ20μm、空孔率70%)を用いた。図1の積層構造にしたがって3つのフィルム状電極基板を重ねた平板上の素子を組み立て、電極の周囲を熱圧着性の封止材を使って封止した。
【0059】
光電極と外部電極にあらかじめ設けた小孔を通じて、電極の間隙(20μm)に上記のそれぞれの電解液を注入した。光電極と内部対極の間には、ヨウ素とヨウ素イオンを含む有機電解液、内部対極と外部対極の間には硫酸水溶液を注入した。最後に小孔を封止し、厚みが約840μm、光照射の有効受光面積が4cmの薄型平板状の光キャパシタaを作製した。このキャパシタは、機械的に湾曲が可能なフレキシブル素子であり、また、光透過率を計測したところ、波長600nmにおいて、光透過率が14%であり、700nmでは24%であった。素子本体は赤褐色を帯びた半透明な素子となった。なお、比較実験として色素増感を施さない二酸化チタンを用いて作製したキャパシタをb、内部対極に活物質を担持しないキャパシタをc、外部対極に活物質を担持しないキャパシタをdとした。
実施例2
2.蓄電活物質に各種金属酸化物を用いる光キャパシタの作製
実施例1において、蓄電活物質にRuOを用いたことに換えて、MnO,Ni酸化物とCo酸化物の混合物をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様に、PVDFをバインダーに用いて中間電極、外部電極を作製し、光キャパシタe〜fをそれぞれ作製した。
実施例3
光電極に接する電荷輸送層として、実施例1、2で用いたヨウ素系酸化還元電解液に換えて、固体のポリマー正孔輸送剤として、ヨウ素ドープ型ポリビニルカルバゾールの薄膜(厚み0.6μm)を用いた以外は、実施例1にしたがって光キャパシタgを作製した。ヨウ素ドープ型ポリビニルカルバゾールを色素増感多孔質酸化チタン膜に被覆する方法は、文献(N.Ikeda and T.Miyasaka, Chem. Comm., 1886−1888(2005))に従った。
3.光充電性能の測定
実施例1〜3で組み立てた光キャパシタの充放電実験を次のように実施し、光充電の能力を評価した。光電極と外部対極を外部回路で結線して短絡させ、電極間電圧をゼロとした。次いで、このキャパシタに対して、500Wのキセノン灯とAir Mass 1.5(AM1.5)フィルターを用いる人工太陽光源(ソーラーシミュレータ)を使って、100mW/cmの光量の白色光を、キャパシタの光電極側に照射した。この照射の間、シャントした外部回路には光電極への電子注入と光電極から外部対極への電子の流れを示すアノード光電流が発生した。照射開始5秒後の光電流を充電の初期電流として計測し、シャント回路の状態で光照射を続行すると、光電流は照射時間と共に減少する傾向を示した。またこの照射の過程で開回路起電力を計測すると照射時間とともに光電極に対して外部対極の電圧がより負に変化していく現象が観測された。すなわち、光照射によって、外部対極に負電荷が蓄積されて充電が進行した。光照射を継続し30分間の光充電を行った後、光照射下で回路を開き、充電電圧を計測した。
【0060】
放電においては、キャパシタを暗中に置き、外部回路を閉じて充放電制御装置(東方技研マルチポテンシオスタットPS−08)を用いて0.03mA/cmの定電流密度で放電を行った(定電流放電条件)。放電時間とともに電圧の降下する特性が観測された。放電の終了電圧を0Vとし、定電流放電を行って0Vに到達した後は放電電流を減少させて0Vを維持させた(定電圧放電条件)。この放電によって放出した電極単位面積当たりの電気量(mC/cm)を計測し放電容量とした。いずれも結果を表1に示した。
実施例4
上記の方法のように、光照射を平板状光キャパシタの片面に対して行った場合に換えて、人工太陽光源を用いた光照射を、平板状の光キャパシタの両面に対して行った。この両面光照射による光充電(キャパシタh)を、実施例1の構成の光キャパシタを用いて行い光充電量を比較した。結果を表1に示した。
【0061】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0062】
蓄電可能の一体型太陽電池として、電気エネルギー供給に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 電荷輸送層
2 イオン性電解質層
3 透明導電基板
4 半導体層
5 透明導電基板
6 蓄電活物質層
7 透明導電基板
8 蓄電活物質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に透明な色素増感された半導体層を担持して光発電能力をもつ光電極と、これに電荷輸送層を介して電気的に接合する光学的に透明な内部対極と、該内部対極にイオン性電解質層を介して電気的に接合する光学的に透明な外部対極が順次積層されて構成されて一体となった平板状の電気化学キャパシタであって、
前記内部対極がその両面の1つの面において電荷輸送層に接し、他の1つの面において光学的に透明な蓄電活物質を担持してイオン性電解質層に接し、
前記外部対極が光学的に透明な蓄電活物質を担持してイオン性電解質層に接し、
前記電気化学キャパシタが可視光の波長領域での光透過率が16%以上であり、
機械的特性においてフレキシブルであり、
前記光電極と前記外部対極とを外部回路で連結して前記光電極を光照射することにより前記内部対極の蓄電活物質に正電荷を、前記外部対極の蓄電活物質に負電荷をそれぞれ蓄積して充電が行われる電気化学キャパシタ。
【請求項2】
前記蓄電活物質が金属酸化物の粒子である請求項1に記載の電気化学キャパシタ。
【請求項3】
前記蓄電活物質が、導電性ポリマーである請求項1に記載の電気化学キャパシタ。
【請求項4】
前記金属酸化物の粒子が酸化ルテニウム、酸化マンガンから選ばれる酸化還元物質のナノ粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気化学キャパシタ。
【請求項5】
前記光電極、前記内部対極、及び前記外部対極が、それぞれ透明導電基板を構成要素として含み、かかる透明導電基板がいずれも光学的に透明な導電性プラスチックフィルムである請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気化学キャパシタ。
【請求項6】
全体の厚さが2mm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気化学キャパシタ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気化学キャパシタに、さらに粘着剤層または接着剤層を設けた電気化学キャパシタ粘着シート。


【図1】
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【公開番号】特開2012−227457(P2012−227457A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95718(P2011−95718)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】