説明

電気化学セルおよび電気化学装置

【課題】クラックの発生や進展を抑制した電気化学セル及び電気化学装置を提供する。
【解決手段】内部をガスが流れる円筒状の支持基体1上に、第1電極、イオン伝導部と電子伝導部とを備えてなる酸素イオン伝導体3および第2電極が順次積層されてなり、第1電極は、両端が隙間を空けて配置されており、第1電極の円周方向で対向する端面と、第1電極の外周面とのなす角度が鈍角であることから、クラックの発生や進展を抑制することができる。また、このような電気化学セルの複数個からなることで、信頼性の向上した電気化学装置とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素イオン伝導性を有する酸素イオン伝導体を用いた電気化学セルおよび電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、石油の産出時に随伴して産出されるガス(以下、随伴ガスという。)は、主に燃焼されることで処理されており、近年の環境問題において、例えば、随伴ガスを高圧コンプレッサーで地下に戻す方法や、この随伴ガスを発電所向けの燃料として用いる方法など、随伴ガスを燃焼以外の方法で処理する方法が検討されている。
【0003】
そして、酸素を用いて随伴ガスを分解して炭化水素ガスを生成する方法も多数提案されており、例えば、酸素イオン伝導性を有する酸素イオン伝導体を用いた電気化学セルが用いられている。このような電気化学セルの基本的な構造は、例えば、特許文献1に記載されている円筒型燃料電池セルの構造の転用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−224673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の円筒型燃料電池セルにおいては、各電極において、端面と外周面とがなす角が直角であることから、繰り返して高温に曝されると、外周側の端部を起点とするクラックが生じ、特に燃料電池セルの内周側に位置する電極でクラックが生じると、その上方に位置する各層にクラックが進展するという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑み、繰り返して高温に曝されても、内周側に配置された電極の外周側の端部を起点とするクラックが生じることを抑制でき、内周側の電極の上方に位置する酸素イオン伝導体,電極等へのクラックの進展を抑制できる電気化学セルおよび電気化学装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気化学セルは、内部をガスが流れる円筒状の支持基体上に、第1電極、イオン伝導部と電子伝導部とを備えてなる酸素イオン伝導体および第2電極が順次積層されてなり、前記第1電極は、両端が隙間を空けて配置されており、前記第1電極の円周方向で対向する端面と、前記第1電極の外周面とのなす角度が鈍角であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の電気化学装置は、上記電気化学セルを複数個備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気化学セルによれば、内部をガスが流れる円筒状の支持基体上に、第1電極、イオン伝導部と電子伝導部とを備えてなる酸素イオン伝導体および第2電極が順次積層されてなり、第1電極は、両端が隙間を空けて配置されており、第1電極の円周方向で対向する端面と、第1電極の外周面とのなす角度が鈍角であることから、第1電極の外周側の端部にクラックが生じることを抑制できるとともに、第1電極の上方に位置する各層に生じる応力を緩和でき、クラックが各層に進展することを抑制することができる。
【0010】
また、本発明の電気化学装置によれば、上記の電気化学セルを複数個備えてなることから、信頼性の向上した電気化学装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の電気化学セルの基本構成の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す電気化学セルの長手方向に垂直な断面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の電気化学セルおよびこれを備える電気化学装置の一例について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本実施形態の電気化学セルの一例を示す斜視図であり、図2は図1に示す例の電気化学セルの長手方向に垂直な断面における断面図である。
【0014】
図1に示す例の電気化学セル10は、内部をガスが流れる円筒状の多孔質の支持基体1上に、第1電極である燃料極層2、イオン伝導部と電子伝導部とを備えてなる酸素イオン伝導体3および第2電極である空気極層4が順次積層されている。支持基体1の内部を流れるガスは、例えば、随伴ガスである。
【0015】
ここで、燃料極層2を支持基体1として、その外周に酸素イオン伝導体3と空気極層4を順次配置した構成とすることもできる。さらに、支持基体1上に、第1電極である空気極層、酸素イオン伝導体、第2電極である燃料極層が順次積層された構成とすることもできる。なおこの場合、電気化学セルの外部を随伴ガスが流れることとなる。
【0016】
支持基体1の外径,肉厚および長さは、例えば、8〜9mm,1〜2mm,800〜1200
mmである。また、支持基体1は、酸化ニッケルと酸化イットリウムとからなり、酸化ニッケルおよび酸化イットリウムの各含有量は、それぞれ63質量%以上73質量%以下、27質量%以上37質量%以下である。
【0017】
燃料極層2は、例えば、厚みが10μm以上50μm以下であって、酸化ニッケルと安定化ジルコニアとからなり、酸化ニッケルおよび安定化ジルコニアの各含有量は、それぞれ60質量%以上70質量%以下,30質量%以上40質量%以下とすることができる。なお、その他
として、酸化ニッケルとセリア系酸化物(例えば、Gdが固溶したCeO)とから構成することもできる。なお、燃料極層2は複数の層から構成することもできる。
【0018】
なお、燃料極層2の厚みが薄い場合には、支持基体1と同様の組成からなる支持層5を設けて、支持層5に燃料極層2を設けたものを、支持基体1に貼り付けてもよい。この場合、支持層5としては、例えば、厚みが10μm以上100μm以下であって、酸化ニッケル
と酸化イットリウムとからなり、酸化ニッケルおよび酸化イットリウムの各含有量は、それぞれ63質量%以上73質量%以下、27質量%以上37質量%以下とすることができる。なお、図1,2においては、支持層5を設けた例を示している。
【0019】
酸素イオン伝導体3は、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(以下、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物をランタンクロマイトという。)と、酸化カルシウム,酸化ガリウムおよび希土類酸化物の少なくとも1種を安定化剤とする酸化ジルコニウム(以下、酸化カルシウム,酸化ガリウムおよび希土類酸化物の少なくとも1種を安定化剤とする酸化ジルコニウムを安定化ジルコニアという。なお、安定化ジルコニアには部分安定化ジルコニアも含むものとする。)と、を含み、チタン,バナジウム,マンガン,鉄およびコバルトの少なくともいずれか1種がランタンクロマイトに固溶している。
【0020】
酸素イオン伝導体3が、ランタンクロマイトと、安定化ジルコニアと、を含んでいると、密度を十分高くすることができるので、酸素イオン伝導性および電子伝導性をともに高くすることができる。
【0021】
そして、チタン,バナジウム,マンガン,鉄およびコバルトの少なくともいずれか1種
がランタンクロマイトに固溶していることから、酸素イオン伝導性および電子伝導性を低下させるランタンジルコネートの生成を抑制できるので、これらの特性をいずれも高くすることができる。なお、ランタンジルコネートの生成が抑制される理由について、詳細は分からないが、チタン,バナジウム,マンガン,鉄およびコバルトがランタンクロマイト
のペロブスカイト型構造のBサイトに固溶することで、Laの拡散を抑制することができるものと考えられる。
【0022】
また、ランタンクロマイトは、ランタンクロマイトを構成するクロムイオン(Cr3+)の一部がマグネシウムイオン(Mg2+)に置換されたランタンマグネシウムクロマイトおよびカルシウムイオン(Ca2+)に置換されたランタンカルシウムクロマイトの少なくともいずれか1種であることが好適であり、このような場合には、正孔(ホール)が多く生じるので、電子はこれらの正孔を移動しやすくなり、高い電子伝導性を得ることができる。
【0023】
ランタンクロマイトは、組成式が、例えば、La(Cr1―(x+y)(Mはマグネシウムおよびカルシウムの少なくともいずれか1種であり、Nはチタン,バナジウム,マンガン,鉄およびコバルトの少なくともいずれか1種である。また、xお
よびyは、いずれも0より大きく0.3以下であって、zは0.9以上1以下である。)である。
【0024】
ここで、チタン,バナジウム,マンガン,鉄およびコバルトの少なくともいずれか1種
が固溶しているランタンクロマイトは、エネルギー分散形X線分光器を装着した透過型電子顕微鏡を用いて、その化学量論的組成および含有量を求めることができる。
【0025】
一方、安定化ジルコニアは、X線回折法を用いて同定することができる。また、安定化ジルコニアの含有量は、蛍光X線分析法またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法によってジルコニウムおよび安定化剤を構成するカルシウム、ガリウムおよび希土類元素のそれぞれの含有量を求め、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ガリウムおよび前記希土類元素の酸化物に換算することにより、それぞれの酸化物の含有量を算出し、その合計が安定化ジルコニアの含有量となる。
【0026】
また、酸素イオン伝導体3においては、ランタンクロマイトは、含有量が45質量%以上70質量%以下であることが好適である。ランタンクロマイトの含有量が45質量%以上であることで、イオン導電率と電子伝導率との和である混合導電率を高くすることができ、一方、ランタンクロマイトの含有量が70質量%以下であることで、気孔を減らすことができるので、密度を高くすることができ、信頼性を高くすることができる。
【0027】
また、酸素イオン伝導体3は、酸化マグネシウムを含むことが好適である。酸素イオン伝導体が酸化マグネシウムを含むときには、酸化マグネシウムは線膨張係数が大きいので、例えば、酸素イオン伝導体3を金属部材(図示しない)に接合する場合には、金属部材,燃料極層2および空気極層4のそれぞれの線膨張係数に近づけることができ、高温に曝されても、信頼性が容易に損なわれにくくなる。
【0028】
特に、酸化マグネシウムは、ランタンクロマイト100質量%に対する含有量が4質量%
以上6質量%以下であることが好適で、この範囲であると、金属部材,燃料極層2および空気極層4のそれぞれの線膨張係数にさらに近づけることができ、信頼性が向上する。
【0029】
酸素イオン伝導体3に含まれる酸化マグネシウムは、X線回折法を用いて同定することができるとともに、その含有量は、蛍光X線分析法またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法によってマグネシウムの含有量を求め、酸化マグネシウムに換算すればよい。但し、ランタンクロマイトが、その組成式にマグネシウムを含む場合には、まず、エネルギー分散形X線分光器を装着した透過型電子顕微鏡を用い、ランタンクロマイトの化学量論的組成を特定する。そして、マグネシウムの含有量から化学量論的組成が特定されたランタンクロマイトを構成するマグネシウムの含有量を除いた含有量を求め、酸化マグネシウムに換算すればよい。
【0030】
また、酸素イオン伝導体3は、酸化ニッケルを含むことが好適である。酸素イオン伝導体3が酸化ニッケルを含むときには、酸化ニッケルの還元による収縮に伴って、酸素イオン伝導体3の還元膨張(酸素イオンが抜けることによって生じる格子膨張)も抑制されるので、耐久性を高くすることができる。
【0031】
酸素イオン伝導体3に含まれる酸化ニッケルは、X線回折法を用いて同定することができるとともに、その含有量は、蛍光X線分析法またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法によって求めることができる。但し、ランタンクロマイトが、その組成式にニッケルを含む場合には、まず、エネルギー分散形X線分光器を装着した透過型電子顕微鏡を用い、ランタンクロマイトの化学量論的組成を特定する。そして、ニッケルの含有量から化学量論的組成が特定されたランタンクロマイトを構成するニッケルの含有量を除いた含有量を求め、酸化ニッケルに換算すればよい。
【0032】
特に、酸化ニッケルは、ランタンクロマイト100質量%に対する含有量が10質量%以下
であることが好適で、この範囲であると、ランタンクロマイトの結晶構造が変化しにくくなり、安定化する。
【0033】
上述の構成の酸素イオン伝導体3を燃料極層2と、空気極層4との間に配置することで、ランタンクロマイトが、燃料極層2側から空気極層4側に電子を移動させて、気体から解離された酸素をイオン化し、安定化ジルコニアが、イオン化された酸素イオンを空気極層4側に移動させて再結合させることにより、純度の高い酸素を得ることができる電気化学セル10とすることができる。また、上述の構成の酸素イオン伝導体3は、ランタンジルコネートの生成を抑制することができることから、酸素イオン伝導性および電子伝導性をともに高くすることができ、性能の向上した電気化学セル10とすることができる。
【0034】
また、空気極層4は、例えば、厚みが10μm以上50μm以下であって、ランタンストロンチウムコバルト鉄や、ランタンストロンチウムマンガナイト等から構成できる。
【0035】
上述した本実施形態の電気化学セル1では、燃料極層2は、両端が隙間を空けて配置されており、燃料極層2の円周方向で対向する端面と、燃料極層2の外周面とのなす角度が鈍角であることが重要である。このような構成にすることにより、燃料極層2の外周面の端部にクラックが生じることができる。さらに、繰り返して高温に曝されても酸素イオン伝導体3および空気極層4にそれぞれ生じる応力は、前記角度が直角であるときよりも小さくなるので、燃料極層2の外周側の端部を起点とするクラックが進展しすることを抑制できる。
【0036】
上述した本実施形態の電気化学セル10では、特に、燃料極層2の円周方向で対向する端面と、燃料極層2の外周面とのなす角度が120°以上160°以下であることが好適である。
前記角度が120°以上であることにより、後述する性能を維持した状態で、前記クラック
はさらに進展しにくくなる。
【0037】
また、上述した本実施形態の電気化学セル10では、燃料極層2の端面から外周面にかけての表面が連続的に変化した面となっていることが好適である。このような構成にすることにより、繰り返して高温に曝されても酸素イオン伝導体3および空気極層4にそれぞれ生じる応力は、端面から外周面にかけての表面が段階的に変化した面になっていたり、端面と外周面とが直接交わっていたりする場合よりも、繰り返して高温に曝されても酸素イオン伝導体3および空気極層4にそれぞれ生じる応力は、より小さくなるので、クラックの進展をさらに抑制できる。
【0038】
また、上述した本実施形態の電気化学セル10では、酸素イオン伝導体3よりも支持基体1側に、燃料極層2を構成する成分と、酸素イオン伝導体3を構成する成分とを含む混合層(図示しない)を有することが好適である。このような構成にすることにより、燃料極層2に対する酸素イオン伝導体3の密着強度を高くすることができる。
【0039】
そして、酸素イオン伝導体3の酸素イオン伝導性は600℃程度から高くなるため、600℃以上の温度域で、燃料極層2に随伴ガスとして、例えば、水素を含むガスを、空気極層4に酸素を含むガスをそれぞれ供給する。燃料極層2に供給されたガスがメタン(CH)ガスである場合、メタン(CH)ガスは、空気極層4から酸素イオン伝導体3を通じて移動した酸素イオンと、以下の式(1)に示すように反応して、水素,一酸化炭素および電子を発生する。発生した電子は、燃料極層2から酸素イオン伝導体3を通じて空気極層4に移動し、以下の式(2)に示すように酸素分子をイオン化する。以下の式(1),(2)に示す反応を繰り返すことによって、水素および一酸化炭素が生成され、この生成された気体を、例えば、フィッシャー・トロプシュ法(FT法)を用いて合成することにより、石油の代替品となる合成油や合成燃料を作り出すことができる。
【0040】
燃料極層2: CH+O2- → 2H2+CO+2e- …(1)
空気極層4: 1/2O2+2e- → O2- …(2)
次に、本実施形態の電気化学セルおよび電気化学装置の製造方法について説明する。
【0041】
まず、酸化ニッケルを主成分とし、酸化イットリウムを副成分としてなる円筒状の脱脂体の外周面に、酸化ニッケルの粉末を主成分とし、安定化ジルコニア(例えばYが固溶したZrO(YSZ))の粉末を副成分とする混合粉末のペーストをスクリーン印刷法を用い、ペーストの両端間に隙間を設けるとともに、円周方向で対向する端面と、外周面とのなす角度が鈍角となるように印刷する。なお、支持層5を設ける場合には、円筒状の脱脂体の外周面に、脱脂体を構成する成分と同じ成分からなるグリーンシートを、隙間がその両端間に設けられるように巻き付けて、そのグリーンシート上にスクリーン印刷法等により、上記ペーストを塗布し、塗布したペーストおよびグリーンシートともに、その円周方向で対向する端面と、外周面とのなす角度が鈍角、例えば、120°以上160°以下となるように、研磨紙,研磨布等を用いて研磨すればよい。
【0042】
次に、ペーストを印刷した円筒状の脱脂体を、例えば、温度および保持時間をそれぞれ1150℃以上1250℃,1時間以上3時間以下として熱処理する。そして、ランタンクロマイト,安定化ジルコニア(例えば上記YSZ)ならびにチタン,バナジウム,マンガン,鉄
およびコバルトの少なくともいずれか1種の各粉末を含むスラリーに、脱脂体を浸漬することによって皮膜を得て、例えば、温度および保持時間をそれぞれ1440℃以上1500℃以下,1時間以上3時間以下として大気雰囲気中にて焼成する。そして、この焼成により、円筒状の脱脂体,グリーンシート,塗布された混合粉末のペーストおよび皮膜は、それぞれ支持基体1,支持層5,燃料極層2,酸素イオン伝導体3となる。
【0043】
ここで、安定化ジルコニアならびにチタン,バナジウム,マンガン,鉄およびコバルト
の少なくともいずれか1種は、それぞれ30質量%以上40質量%以下,5質量%以上15質量%以下となるように、また、残部がランタンクロマイトとなるように各粉末を混合してスラリーを作製すればよい。
【0044】
また、上記スラリーに酸化マグネシウムの粉末を適宜添加して、ランタンクロマイト100質量%に対して4質量%以上6質量%以下で酸化マグネシウムを含む酸素イオン伝導体
3を得ることができる。
【0045】
また、上記スラリーに酸化ニッケルの粉末を適宜添加することで、ランタンクロマイト100質量%に対して10質量%以下で酸化ニッケルを含む酸素イオン伝導体3を得ることが
できる。
【0046】
そして、支持基体1,燃料極層2および酸素イオン伝導体3を形成した後、ランタンストロンチウムコバルト鉄の粉末を含むスラリーに、酸素イオン伝導体3を浸漬することによって、酸素イオン伝導体3の外周面上に皮膜が得られ、この皮膜は、例えば、温度および保持時間をそれぞれ1100℃以上1200℃以下,1時間以上3時間以下として焼成することによって、空気極層4となり、図1に示す例の本実施形態の電気化学セル10を得ることができる。
【0047】
そして、上述した電気化学セル10を複数個備えることで、随伴ガスを効率よく分解することができるとともに、信頼性の向上した電気化学装置とすることができる。このような電気化学装置としては、例えば、上述した電気化学セル10に随伴ガスを供給するための随伴ガスタンクに電気化学セル10の一端を固定し、随伴ガスを分解して生じる水素ガスタンクに電気化学セル10の他端を固定することで、効率よく随伴ガスを分解できるとともに、分解により生じた水素ガスを効率よく回収することができる。
【0048】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0049】
例えば、上述の例において、支持基体1として導電性の支持基体1を用いる例を説明したが、例えば、支持基体1として、絶縁性の基体の表面に、導電性を有する層を設けた構成を支持基体1として使用することもできる。
【0050】
また、上述の例において、支持基体1上に、燃料極層2の1層を設ける構成について説明したが、燃料極層2と空気極層4とでの電子やイオンの伝導をより効率よく行なうにあたり、燃料極層2と支持基体1との間に、支持層5とは異なる層であって、燃料極層2よりも導電性を有する材料からなる層を設けることもできる。
【0051】
また、上記の製造方法以外にも、適宜公知の方法により、燃料極層2と、燃料極層2を覆うように設けられイオン伝導部と電子伝導部とが隣接して設けられてなる酸素イオン伝導体3と、酸素イオン伝導体3を覆うように設けられた空気極層4とを備える構成とすればよい。
【符号の説明】
【0052】
1:支持基体
2:燃料極
3:酸素イオン伝導体
4:空気極
5:支持層
10:電気化学セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部をガスが流れる円筒状の支持基体上に、第1電極、イオン伝導部と電子伝導部とを備えてなる酸素イオン伝導体および第2電極が順次積層されてなり、前記第1電極は、両端が隙間を空けて配置されており、前記第1電極の円周方向で対向する端面と、前記第1電極の外周面とのなす角度が鈍角であることを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
前記第1電極は、前記端面から前記外周面にかけての表面が連続的に変化していることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記酸素イオン伝導体よりも前記支持基体側に、前記第1電極を構成する成分と、前記酸素イオン伝導体を構成する成分とを含む混合層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電気化学セルを複数個備えてなることを特徴とする電気化学装置。





【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−72138(P2013−72138A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214814(P2011−214814)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】