説明

電気化学セル用の弾性集電装置

本発明は、隔壁型または膜型電気化学セル用の集電装置に関し、集電装置は、金属ワイヤの複数の第1の組を、複数の単一金属ワイヤまたは金属ワイヤの複数の第2の組にインタレースするかまたはウィーブすることによって得られ、かつ、実質的に平行な波形を設けられる層を備える。こうした層は、単一金属ワイヤをウィーブすることによって形成される布または平坦化ストッキングからなる平坦要素に結合される。集電装置は、広い範囲の圧迫レベルにわたる圧力/厚さ比の低角度係数を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解セル、特に、隔壁または膜に密着した状態でアノードおよびカソードが設けられる隔壁型またはイオン交換膜型電解セルにおいて有用な、導電性弾性集電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
隔壁によって2つの電極区画に細分される電解セルが、電気化学プロセスにおいて使用されることが多い。こうしたセルの一般的な特徴は、他の電極が、セパレータ自体のための硬質支持体として働きながら、1つの電極をセパレータに接触した状態に保つ必要性があることである。セパレータが隔壁またはイオン交換膜である特定の場合、上記セルデザインは、広い範囲の産業応用についての少数の電気化学プロセスの1つを表すことが知られているクロルアルカリ電解において広く適用される。クロルアルカリプロセスの場合、最も一般的なデザインは、貴金属酸化物を含む塩素発生用の表面電気触媒フィルムが被覆されたチタンの穿孔シートか、延伸シートか、またはメッシュからなる硬質アノードを含むためのアノード区画を提供する。この区画は、アルカリ塩化物、通常、塩化ナトリウムの濃縮溶液を給送される。
【0003】
カソード区画の構造は、異なる型の機械配置構成を包含してもよい。
【0004】
たとえば米国特許第5,225,060号に記載されるバージョンでは、苛性ソーダ溶液を給送されるカソード区画は、任意選択で水素発生用の電気触媒フィルムを設けられた、ニッケルの穿孔シートか、延伸シートか、またはメッシュからなる硬質カソードを含む。イオン交換膜は、アノードとカソードとの間に設置され、カソード区画内の圧力が、通常、アノード区画内より高くなっていて、膜は、圧力差によってアノードに押し付けられる。アノードとカソードは共に、硬質平行平坦構造からなるため、理想的な平行からの不可避の変位が、アノード表面およびカソード表面を膜に同時接触させることを回避するために、2つの向い合う表面間に一定の間隙を維持することが必要である。こうした状況では、接触圧力が制御可能でなくなることになり、膜がひどく損傷を受けうる。アノード表面とカソード表面との間で、目安として2〜3mmの一定の間隙を維持する必要性は、電流がカソードと膜との間の液相を横切ることによって生成されるオーミック電圧降下に関連するセル電圧ペナルティを伴う。すなわち、セル電圧は、生成物の塩素または苛性ソーダの単位重量当たりのエネルギー消費に比例するため、当然の結果として、総合プロセス経済性がかなり不利になる。
【0005】
この不都合を解決するために、膜クロルアルカリデザインが適時に改良され、適度でかつ予め規定された接触圧力下でカソード表面を膜に接触させることが可能なカソード構造の開発が行われた。
【0006】
たとえば米国特許第5,254,233号および米国特許第5,360,526号に開示される第1のセルの一群は、種々のデザインのバネからなる弾性支持体に固定される穿孔シートか、延伸シートか、またはメッシュの形態のカソードを提供し、弾性支持体は、今度は、平坦電流分配器にまたは直接にセル壁に固着され、バネは、セルを組立てることによって、バネの弾性挙動、および、構造上の公差に関連するアノード−電流分配器距離またはアノード−セル壁距離からの変位に依存するだけである圧力でカソードを膜に対して圧迫する。この構造上の解決策の欠点は、バネが正しく作動することを可能にするために、シートまたはメッシュが一定の剛性を呈しなければならないことによって示される。当然の結果として、カソード−膜接触の均一性は、膜支持アノードの表面と、バネによって膜に押し付けられるカソードの表面の両方の完全な平坦度を必要とする。こうした平坦度は、最新の産業プラントで通常使用される高い生産能力のセル内に設置されるのに適したサイズの大きいアノードおよびカソードに関して相応に得られない。そのため、カソード表面がたとえ膜表面に接触しても、2つの表面が離間したままになり、結果として、不均一な電流分布および期待値を超えるエネルギー消費が生じるエリアが依然として存在する。
【0007】
たとえば米国特許第4,444,632号および米国特許第5,599,430号に開示される第2のセルの一群は、高い柔軟性を備え、したがって、硬質アノードが完全に平坦でない表面プロファイルを呈するときでも、アノード支持膜の表面に押し付けられるときに非常に適合性がある、薄い穿孔シートか、延伸シートか、またはメッシュをカソードとして利用することによって、米国特許第5,254,233号および米国特許第5,360,526号のカソードシートまたはメッシュの剛性に関連する不都合を解決することを対象とする。カソードの構造の高い柔軟性は、第1の結果として、米国特許第5,254,233号および米国特許第5,360,526号に開示されるバネが、その機械的作用がカソード表面全体に均一に伝達されないことになるため、もはや有効に使用されえないことをもたらす。こうした理由で、引用文献には、何らかの方法で分散バネとして働く平坦弾性層の使用が開示される。これらの層は、ニッケルワイヤをウィーブすることによって形成される平坦要素からなり、その結果、波形になる。こうした要素は、少なくとも2つの数で並置されて、好ましくは、浸透を最小にするために交差した波形を有する弾性構造を形成し、また、平坦ワイヤの2つのさらなる布間に取り囲まれてもよい。1つの代替の構造は、ワイヤの相互接続されたコイルによって形成された少なくとも2つの並置要素からなる平坦層を提供する。知られているセルデザインでは、先に開示した弾性層は、適度の厚さのニッケルの穿孔シートか、延伸シートか、またはメッシュで作られた硬質電流分配器を通常備えるカソードパッケージの一部を形成する。弾性層、および、薄くかつ軟質性が高いニッケルの穿孔シートか、延伸シートか、またはメッシュは、任意選択で、水素発生用の電気触媒フィルムを設けられる。アノード区画とカソード区画を結合することによって、セルを組立てると、こうした弾性層は、部分的に圧迫され、それにより、薄くかつ軟質のカソードに圧力を伝達し、カソードは、今度は、硬質アノード支持膜に押し付けられる。弾性層が、多数の地点でカソードに接触するため、膜に加えられる圧迫は、実質的に分散し、さらに、カソードの軟質性は、カソードが膜のプロファイルに完全に適合することを保証する。このある程度複雑な層状構造の目的は、線形性、および、対応する圧迫に対する、部分的に圧迫された状態で加えられる圧力の関係の適度の角度係数を特徴とする弾性挙動を保証することである。こうした特徴は、こうした方法によってだけ、適度な値のカソード−膜圧力の良好な均一性を保証することが可能であるため必要とされ、その結果、膜の完全性が保持される。それでも、この目標は、種々のワイヤ要素間における浸透を完全に回避することが本質的に不可能であることによって、上記弾性構造によって部分的に達成されるだけであり、結果として、カソード−膜組立体に加えられる圧力の局所的変動が不可避となり、膜の正しい保持を損ないうるピークレベルを達成する。さらに、こうした複雑性の構造は、高い生産コストおよび産業プロセスの経済性にほとんど適合しない設置の困難さを持つ。これらの不都合は、WO03/048422の教示によって部分的に解決されるだけであり、WO03/048422では、交差した波形と並置された波形平坦要素が、ウィーブされたワイヤで作られた平坦化ストッキング型構造内に取り囲まれ、その内部に2つの波形要素を含むストッキング(長靴下状部材)は、実際に、セル内で操作し設置するのにより容易な組立体を構成する。しかし、コストが高いという問題および圧迫に対する圧力の関係の角度係数が望ましい値より高いという問題が未解決のままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術の解析は、広い範囲の圧迫値にわたる、圧迫に対する圧力の関係の適度な角度係数、設置の簡単さ、および適度のコストを特徴とする、電解セルに設置するのに適した弾性集電装置を開発する必要性を示している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の種々の態様が、特許請求の範囲において述べられる。
【0010】
一実施形態では、本発明は、金属ワイヤの複数の第1の組を、複数の単一金属ワイヤまたは金属ワイヤの複数の第2の組にインタレースする(織り交ぜる、組み合わせる)かまたはウィーブする(織り込む)ことによって得られる布により形成され、その結果、実質的に平行な波形の形成によって波形にされた要素を備える組立体からなる弾性集電装置に関し、こうした要素は、さらに、単一ワイヤをウィーブすることによって得られる少なくとも1つの平坦布または平坦化ストッキングに結合される。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、先に規定された弾性集電装置を含む電解セルに関する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、クロルアルカリ電解プロセスにおける、先に規定した弾性集電装置を備える電解セルの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】弾性集電装置を組込む電解セルの側面図である。
【図2】一実施形態による集電装置の構成部品の上方の3次元図である。
【図3】図2の構成部品を、単一ワイヤをウィーブするによって形成される平坦ストッキングに結合することによって得られる集電装置の一実施形態に関する、厚さに対する印加圧の関係を示す図である。
【図4】単一ワイヤをウィーブすることによって生成される布の波形によって得られる従来技術の集電装置に関する、厚さに対する印加圧の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、弾性集電装置に対処するのに適した電解セルを示す。セルは、1で示され、2つの殻部材2および5を備え、2つの殻部材2および5は、締め付け手段、たとえば、1組のボルト15によって相互に留められ、また、たとえば隔壁またはイオン交換膜からなるセパレータ14を取り囲むよう配列されうる。殻部材2は、開口を設けられた硬質平坦表面からなる硬質電極8を含み、一実施形態では、硬質電極8は、穿孔シート、延伸シート、およびインタレースされたワイヤのメッシュの群から選択される少なくとも1つの構成部品からなり、外部整流器(図示せず)の1つの極に接続されるのに適した電流導体9に結合される。殻部材2はまた、電解される溶液を給送するための、また、運転中に電極8上に形成される、オプションのガスと混合された排電解溶液を取出すためのノズル4および3をそれぞれ設けられる。一実施形態では、電極8は、ボルト15を留めることによって、また任意選択で、2つの区画間に確立される圧力差の作用下で電極8に接触するセパレータ14を支持する。殻部材5は、電極パッケージを備え、電極パッケージは、一実施形態では、硬質集電装置12および軟質電極10からなり、弾性集電装置11が、部分的に圧迫された状態で硬質集電装置12と軟質電極10との間に配列される。ボルト15を締め付けることによって、硬質電流分配器と軟質電極の2つの対向する表面に対して弾性集電装置によって加えられる作用は、軟質電極を電極8によって支持されるセパレータ14に押し付ける。外部整流器の対向する極に接続されるのに適した電気導体13に結合した硬質集電装置12は、たとえば、穿孔シートか、延伸シートか、またはインタレースされたワイヤのメッシュなどの、開口を設けられた平坦表面からなる。軟質電極10は、たとえば、穿孔シートか、延伸シートか、またはワイヤのメッシュなどの、開口を設けられた薄い表面によって形成される。最後に、集電装置11は、インタレースされた(織り交ぜられた、組み合わされた)かまたはインタウィーブされた(織り交ぜられた、織り込まれた)金属ワイヤによって形成される、適した厚さの層からなり、その層は、部分的に圧迫された状態では、産業的に製造されたセルに必然的に存在する機械的公差によって、集電装置12および電極8によって支持されたセパレータ14の表面が、理想的な平行から実質的に変位するときでも、集電装置12および電極10の全表面に沿う電気的連続性および電流の均一分布を保証するのに十分な弾性を呈する。
【0015】
殻部材5はさらに、それぞれ、電解される溶液を給送するために、また、電極10上に形成される、オプションのガスと混合された排電解溶液を取出すためにノズル7および6を設けられる。
【0016】
図1のセルの特に適切な用途は、クロルアルカリプロセス、より具体的には、塩素および苛性ソーダの生成を伴う、塩化ナトリウム塩水電解におけるセルの使用によって示され、本発明の範囲は、たとえば、隔壁または膜の形態のセパレータによって細分されるセルを利用する全ての種類の電解プロセスを包含することを意図されるが、簡潔にするために、以下において、塩化ナトリウム塩水電解におけるセルの使用が参照される。クロルアルカリ電解のために使用される膜型セルの場合、一般にチタンで作られる殻部材2は、2つのノズルによってアノード区画の境界を定められ、2つのノズルは、それぞれ、濃縮された塩化ナトリウム溶液を給送するよう、また、使い尽くされた溶液および電極8上で運転中に発生した塩素を放出するよう向けられ、電極8は、アノードとして働き、白金族金属酸化物に基づく塩素発生用の電気触媒フィルムが被覆されたチタンで作られうる。殻部材5は、一般にニッケルで作られ、カソード区画の境界を定め、カソード区画のノズルは、希釈された苛性ソーダを給送するため、また、電極10上で生成される水素と混合した濃縮された苛性ソーダを放出するために使用され、電極10はカソードとして働く。カソードおよび集電装置12は、通常、ニッケルで作られ、集電装置12は、ニッケルワイヤをインタレースするかまたはウィーブすることによって得られる。さらに、カソードは、好ましくは、白金族金属またはその酸化物に基づく水素発生用の電気触媒被覆が設けられる。
【0017】
弾性集電装置は、特に、いくつかの部分的に競合する要件のために、電極パッケージの最も重要な構成部品と見なされうる。いくつかの部分的に競合する要件とは、
・軟質電極−膜組立体上での電流の均一分布を可能にするための、膜に接触する軟質電極の表面上と、硬質集電装置の表面上の両方における均一な圧力分布;
・高電流密度における低作動セル電圧を得るために必要であるが、一方、膜14に損傷を生じるほどには高くないような、接触電気抵抗を最小にするのに十分な、軟質電極と硬質集電装置に加えられる圧力(実際の経験が示すところでは、運転中に十分な挙動を与えることが可能な圧力値は、通常、50g/cmと300g/cmとの間であり、一実施形態では、100g/cmと200g/cmとの間である);
・電極10上で発生するガスの容易な放出および効率的な電解液の更新を可能にするのに十分に開口した、インタレースされるかまたはインタウィーブされたワイヤによって形成されるメッシュ;
・保守介入中にセルを開口させた後、元の弾性のかなりの部分の維持を保証するための最低閾値より大きいが、圧力レベルがそれを超えると膜の完全性にとって危険になることになる第2閾値より小さい、インタレースされるかまたはインタウィーブされたワイヤの径;である。
【0018】
上記条件の中で、長期の故障の無いセル運転にとって特に重要である前の2つは、弾性集電装置が、圧迫に対する圧力(または、厚さに対する圧力)の関係の角度係数のある程度低い値を呈するときだけ達成されうる。
【0019】
全てが図1に示す型の電解セルの最適機能を保証するのに必要である先に示した条件は、弾性集電装置711が、金属ワイヤの複数の第1の組、任意選択で、金属ワイヤの第1の対を、複数の単一ワイヤまたは金属ワイヤの複数の第2の組、任意選択で、金属ワイヤの第2の対にインタレースするかまたはウィーブし、平坦布、または、一実施形態では、ストッキング(その後、平坦布に似た構造を形成するために平坦化される)を形成することによって生成される層を備えるときに同時に満たされることが意外にも確認された。層は、その後、任意選択で、ヘリンボン(矢筈)パターンで配設される波形を生成するために、適した機械式ツールによって圧力を加えることによって波形にされる。図2は、ニッケルワイヤの複数の第1の対(その中の2つの対だけが例示を簡潔にするために16として示される)をニッケルワイヤの複数の第2の対(その中の2つの対だけが17として示される)にインタレースすることによって得られる層の実施形態の平面を3次元で示す。
【0020】
参照数字18および19は、点線として示す波形の2つを示すために使用される。波形層は、その後、単一ワイヤ(図2には示さず)をインタレースするかまたはウィーブすることによって得られる平坦布またはストッキングに結合される。ストッキングの特定の場合では、ストッキングは、平坦布に似た構造を形成するために平坦化されうる。別の実施形態では、波形層は、ストッキングの内部に挿入され、全体が全体として平坦の構造が形成される。弾性層のストッキングおよび先に示した層に結合されるストッキングは、膜を損傷する可能性がある自由な頂点を呈しない、ワイヤのインタレーシングまたは連続ウィービングによって作られる単純な布と比べて利点を有しうる。波形層を平坦布またはストッキングに結合することは、波形層と軟質カソードとの間または波形層と硬質電流分配器との間でそれぞれ、接触点の量を増加させるためであり、その目的は、ローカルな規模で均一な圧力分布を達成し、総合電気抵抗を最小にすることであり、それにより、低いセル電圧および低い電気エネルギー消費が得られる。規定される集電装置が、図1にえがかれる型のセル内に設置されるとき、平坦布またはストッキングは、波形層と軟質カソードとの間、または、別の実施形態では、波形層と電流分配器との間に挿入される。一実施形態では、波形層は、ストッキングの内部に導入され、ストッキングの2つの平坦表面は、したがって、波形層と軟質カソードとの間および波形層と電流分配器との間にそれぞれ取り囲まれることになる。
【0021】
規定される弾性集電装置を備えるセルの最適機能は、特に以下の条件が満たされるとき満足がいく程度に達成されうる。その条件とは、
・0.08〜0.30mm、好ましくは、0.12〜0.20mmの波形層のニッケルワイヤの径;
・独立して4mmと8mmとの間にある側部(side)の全体として四角形のメッシュによる、ワイヤの複数の第1の組とワイヤの複数の第2の組をインタレースすることまたはウィーブすることによって得られる波形層;
・2mm以下の、波形層のそれぞれの個々の組のワイヤからの距離;
・2〜20mm、任意選択で、5〜15mmの、波形層の波形ピッチ;
・2〜15mm、任意選択で、5〜10mmの、非圧迫状態の波形層の厚さ;
・1〜10mm、任意選択で、2〜6mmの、圧迫状態の波形層の厚さ;
・0.08〜0.30mmの、付加的な平坦布またはストッキングのニッケルワイヤの径;
・独立して2mmと6mmとの間にある側部の全体として四角形のメッシュの平坦布またはストッキング;
・300g/cm.mmより小さい角度係数を特徴とする厚さに対する圧力比;である。
【0022】
弾性集電装置の一実施形態の厚さに対する圧力の関係は、図3に示される。特に、この弾性集電装置は、0.16mmの径を有するニッケルワイヤの複数の第1の対と複数の第2の対をインタレースすることによって得られる波形層を備え、また、6mmの側部を有する全体として四角形のメッシュ、各対のワイヤ間に距離が無いこと、10mmピッチの波形、および6.5mmの初期の非圧迫厚さを特徴とし、さらに、集電装置は、さらに、平坦布に似た構造で平坦化され、また、5mm側部の全体として四角形のメッシュで、0.16mm径のニッケルワイヤをウィーブすることによって得られるストッキングを備える。図3から認められるように、20として示す初期圧迫後に、集電装置は、ちょうど200g/cm.mmの角度係数を有する、4.5〜3.8mmの厚さに対応する50〜150g/cmの圧力を特徴とする、21として特定される再現性のある弾性挙動を有する。この状況について直ぐにわかる結果は、構造上の機械的公差の好ましくない組合せによって、平行からの最大変位を有する電流分配器および硬質アノードの表面部分においてさえも、集電装置によって、電流分配器およびカソードに、そのため、膜に加えられる圧力は、常に、最適範囲内のままであり、そのため、膜に対する損傷が無い状態で、かつ、集電装置と電流分配器とカソードとの間の接触オーミック抵抗が最小の状態での長期の運転が保証され、特に低いセル電圧およびエネルギー消費を得ることを可能にする。
【0023】
示される集電装置の挙動と、従来技術の集電装置の挙動との比較は、図4に例示され、米国特許第4,444,632号によって製造された集電装置の厚さに対する圧力の関係を示す。集電装置は、6.5cmの非圧迫初期厚さを有し、2つの並置された波形層からなり、各層は、0.16mmの径を有する単一ニッケルワイヤをウィーブすることによって得られ、6mmの側部を有する全体として四角形のメッシュを形成され、波形が10mmピッチで配列される。22および23が、それぞれ、初期圧迫および再現性のある弾性挙動の領域を特定する図4の関係の解析が示すところによれば、角度係数は、400g/cm.mmほどの高い値を有し、結果として、硬質電極および硬質電流分配器の平行からの変位によって生じる集電装置の厚さ変動は、150g/cmを超える圧力をもたらし、膜を損傷するリスクが増加するか、または、50g/cmより小さい圧力をもたらし、集電装置と硬質分配器との間および集電装置とカソードとの間の電気接触抵抗がおそらく増加し、その結果、セル電圧および電気エネルギー消費が増加する。
【0024】
本発明の集電装置はまた、単一要素(単一の波形層またはストッキングの内部に取り囲まれた波形層)またはせいぜい2つの構成部品(単一布または平坦化ストッキングに結合した波形層)からなるため、セル内に容易に設置されうる。従来技術のセルでは、単一ワイヤをインタレースすることまたはウィーブすることによって得られる複数の個々の波形層からなる集電装置の使用が、しばしば述べられたが、同様な種類の層は、中程度の機械的安定性およびその結果としてのセル内への組立の困難さを特徴とする。
【0025】
先の説明は、本発明を限定することを意図されず、本発明は、本発明の範囲から逸脱することなく、異なる実施形態に従って使用されてもよく、また、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって一義に規定される。
【0026】
本出願の説明および特許請求の範囲全体を通して、用語「備える(comprise)」ならびに「備える(comprising)」および「備える(comprises)」などのその変形は、他の要素または付加物の存在を排除することを意図されない。
【0027】
文書、行為、材料、デバイス、製品、および同様なものの説明は、本発明のための文脈を提供するだけのために本明細書に含まれる。これらの事物の任意のまたは全ての事物が、従来技術の基礎の一部を形成したか、または、本出願の優先権主張日以前に、本発明に関連する分野において共通の一般的な知識であったということは示唆されず示されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁型または膜型の電気化学セル中で、部分的に圧迫された状態で作動するのに適する集電装置であって、少なくとも1つの層を備え、当該少なくとも1つの層は、金属ワイヤの複数の第1の組を、複数の単一金属ワイヤまたは金属ワイヤの複数の第2の組に、インタレースするかまたはウィーブすることによって得られ、かつ、全体として平行な波形が設けられる、集電装置。
【請求項2】
金属ワイヤの前記複数の第1の組および前記複数の単一金属ワイヤまたは金属ワイヤの前記複数の第2の組は、0.08〜0.30mmの径を有するワイヤを備える、請求項1に記載の集電装置。
【請求項3】
金属ワイヤの前記複数の第1の組および前記複数の単一金属ワイヤまたは金属ワイヤの前記複数の第2の組は、0.12〜0.20mmの径を有するワイヤを備える、請求項2に記載の集電装置。
【請求項4】
それぞれの個々の組のワイヤ間の距離は2mm以下である、請求項1から3の何れか一項に記載の集電装置。
【請求項5】
金属ワイヤの前記複数の第1の組および前記複数の単一金属ワイヤまたは金属ワイヤの前記複数の第2の組は、全体として四角形のメッシュで配列される、請求項1から4の何れか一項に記載の集電装置。
【請求項6】
前記全体として四角形のメッシュの複数の側部は、独立して4mm及び8mmの間にある、請求項5に記載の集電装置。
【請求項7】
金属ワイヤの前記第1の組および前記第2の組は、金属ワイヤの複数の対からなる、請求項1から6の何れか一項に記載の集電装置。
【請求項8】
前記波形は、ヘリンボンパターンで配列される、請求項1から7の何れか一項に記載の集電装置。
【請求項9】
前記波形は、2〜20mmのピッチを有する、請求項1から8の何れか一項に記載の集電装置。
【請求項10】
前記波形は、5〜15mmのピッチを有する、請求項9に記載の集電装置。
【請求項11】
波形が設けられる前記層は、2〜15mmの非圧迫厚さを有する、請求項1から10の何れか一項に記載の集電装置。
【請求項12】
波形が設けられる前記層は、5〜10mmの非圧迫厚さを有する、請求項11に記載の集電装置。
【請求項13】
波形が設けられる前記層は、作動状態に相当する部分的に圧迫された状態で1〜10mmの厚さを有する、請求項1から12の何れか一項に記載の集電装置。
【請求項14】
波形が設けられる前記層は、作動状態に相当する部分的に圧迫された状態で2〜6mmの厚さを有する、請求項13に記載の集電装置。
【請求項15】
波形が設けられる前記層は、さらなる平坦布または平坦化ストッキングを有し、当該ストッキングは、前記層に並置して単一金属ワイヤをインタレースするかまたはウィーブすることによって得られる、請求項1から14の何れか一項に記載の集電装置。
【請求項16】
波形が設けられる前記層は、ストッキングの内部に挿入され、当該ストッキングは、単一金属ワイヤをインタレースするかまたはウィーブすることによって得られる、請求項1から14の何れか一項に記載の集電装置。
【請求項17】
前記さらなる平坦布のまたは前記ストッキングの前記単一ワイヤは、0.1〜0.5mmの径を有する、請求項15または16に記載の集電装置。
【請求項18】
前記ストッキングの前記インタレーシングまたはウィービングは、全体として四角形のメッシュを備える、請求項15から17の何れか一項に記載の集電装置。
【請求項19】
前記全体として四角形のメッシュは、2mmと6mmとの間にある複数の側部を独立して有する、請求項18に記載の集電装置。
【請求項20】
300g/cm.mmより小さい角度係数を有する圧力−厚さ関係を有する、請求項1から19の何れか一項に記載の集電装置。
【請求項21】
セパレータによって2つの区画に細分される電気化学セルであって、第1区画及び第2区画を備え、前記第1区画は、前記セパレータを支持する開口が設けられる表面によって形成される硬質電極と、前記硬質電極に平行に硬質電流分配器を備える電極パッケージとを含み、前記第2区画は、前記セパレータに接触し開口が設けられる表面によって形成される軟質電極と、前記分配器及び前記軟質電極の間に挿入され部分的に圧迫された弾性集電装置とを備えており、前記弾性集電装置は、請求項1から20の何れか一項に記載の集電装置である、セル。
【請求項22】
前記硬質電極および前記軟質電極の少なくとも一方は、穿孔シート、延伸シート、およびインタレースされたワイヤのメッシュの群から選択される、請求項22に記載のセル。
【請求項23】
前記硬質電極はアノードであり、前記軟質電極はカソードである請求項21または22に記載のセル。
【請求項24】
前記アノードは、チタンで作られ、貴金属酸化物に基づく塩素発生のために電気触媒被覆が設けられ、前記電流分配器、前記弾性集電装置、および前記カソードは、ニッケルで作られる、請求項23に記載のセル。
【請求項25】
前記カソードは、ニッケルで作られ、貴金属および/または貴金属の酸化物に基づく水素発生のために電気触媒被覆が設けられる、請求項24に記載のセル。
【請求項26】
請求項21から25の何れか一項に記載のセル内にアルカリ塩化物塩水を給送することによって実行されることを特徴とする、クロルアルカリ電解プロセス。
【請求項27】
実質的に図面を参照して述べられる集電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−533239(P2010−533239A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515490(P2010−515490)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058847
【国際公開番号】WO2009/007366
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(502043101)ウデノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (14)
【Fターム(参考)】