説明

電気化学セル

【課題】正極集電体と正極活物質が直接に接触しないようにして正極集電体の溶解を防止する。
【解決手段】正極活物質と負極活物質と電解液とセパレータとは、容器と金属リングと蓋とによって形成される空間に収納されている。前記容器の底板内部に設けられた正極集電体と、前記正極集電体と接続されて前記底板下面に配線された第一の接続端子と、前記金属リングと電気的に接続されて前記底板下面に配線された第二の接続端子とを有し、前記正極集電体は、一部が前記容器の底板内部に埋設され、かつ前記容器に埋設されていない部分は、正極活物質と電気的に接続可能に形成されていると共に、その正極活物質側は弁金属からなる被覆部で覆われ、この被覆部を介して正極活物質と電気的に接続しているように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質電池および電気二重層キャパシタなどの電気化学セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルは、時計機能のバックアップ電源や半導体のメモリのバックアップ電源やマイクロコンピュータやICメモリ等の電子装置予備電源やソーラ時計の電池やモーター駆動用の電源などに使用されている。
円盤状のボタン型電気化学セルが多用されているが、ボタン型電気化学セルはリフローハンダ付けを行うには端子等をケースにあらかじめ溶接しておく必要があり、部品点数の増加および製造工数の増加という点でコストアップとなっていた。また、基板上に端子を接続するスペースを設ける必要があり小型化に限界があった。
さらに、電気化学セルには耐熱性の向上が求めれている。リフローハンダ付けにより、電気化学セルを基板に実装するためである。リフローハンダ付けとは、あらかじめプリント基板上のハンダ付を行う部分にハンダクリーム等を塗布しておきその部分に部品を載置するか、あるいは、部品を載置後ハンダ小球(ハンダバンプ)をハンダ付部分に供給し、ハンダ付部分がハンダの融点以上、例えば、200〜260℃となるように設定された高温雰囲気の炉内に部品を搭載したプリント基板を通過させることにより、ハンダを溶融させてハンダ付を行う方法である。
【0003】
これらの課題を解決するために電極及び電解質を収納する外装体として耐熱性容器を用い、かつ端子を具備した電気化学セルが検討されるようになった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001-216952号公報(第2項から第3項、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、電気化学セルの正極集電体の溶解である。
従来の電気化学セルの断面図を図3に示した。
容器101の材料は、セラミックスで作製する場合には、容器101はアルミナ等のセラミックス製で、グリーンシートにタングステン等の高融点金属をプリント配線し、焼成することによりつくられる。
容器101の底面側に正極活物質106を配置しており、正極活物質106は導電性接着剤1111を用いて正極集電体103に接着されている。容器101は、蓋102によって封止されており、容器101と蓋102は金属リング109を介して接合している。また、負極活物質107は、導電性接着剤1112を用いて蓋102に接着されている。
【0005】
セパレータ105によって正極活物質106と負極活物質107が分離されている。また、電極を外部回路と接続するために接続端子A1041と接続端子B1042がそれぞれ設けられている。
しかし、従来の電気化学セルを比較的高い電圧例えば3V前後で使う場合は、正極活物質と接している正極集電体103が溶解してしまうとの課題があった。
これは、電気化学セルの充電時に正極側の電位が上昇し、正極集電体103が溶解する電圧にまで達するためであると考えられる。
以上より本発明は、製造が容易で、かつ正極集電体の溶解を防止し高電圧での使用が可能である電気化学セルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気化学セルでは、正極集電体が高電位においても溶解しない弁金属で被覆することにより正極集電体と正極活物質が直接に接触しないようにして正極集電体の溶解を防止する。
本発明の電気化学セルは、正極活物質と、負極活物質と、電解液と、前記正極活物質と前記負極活物質とを分離するセパレータと、容器と、前記容器の上端縁に固定された金属リングと、この金属リングの上面に固定された蓋と、前記容器の底板内部に設けられた正極集電体と、前記正極集電体と接続され、前記容器の底板下面に配線された第一の接続端子と、前記金属リングと電気的に接続され、前記容器の底板下面に配線された第二の接続端子とを有する電気化学セルにおいて、前記正極活物質と前記負極活物質と前記電解液と前記セパレータとは、前記容器と前記金属リングと前記蓋とによって形成される空間に収納され、前記正極集電体は、一部が前記容器の底板内部に埋設され、かつ前記容器に埋設されていない部分は、正極活物質と電気的に接続可能に形成されていると共に、その正極活物質側は弁金属からなる被覆部で覆われ、この被覆部を介して正極活物質と電気的に接続しているように形成されたことを特徴とする。
【0007】
なお、正極集電体と被覆部の間には他の金属層が存在しても良く、正極集電体を金又はニッケルでメッキした後に被覆部で覆っても良い。
前記電気化学セルにおいて正極集電体にタングステンを用いてもよい。
前記正極集電体における前記被覆部の弁金属がアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウムのいずれかを用いても良い。
さらに、本発明の電気化学セルは、前記正極集電体の一部が前記容器に埋設され、前記正極集電体の埋設されていない部分は被覆部で覆われている。
好ましくは、本発明の電気化学セルは前記被覆部と前記正極活物質が導電性接着剤により接着または接続されている。
【0008】
さらに好ましくは、本発明の電気化学セルは前記正極活物質に対する前記導電性接着剤の塗布面積が、前記被覆部の面積より大きい。
また、容器がセラミックスである電気化学セルも好ましい。
【発明の効果】
【0009】
正極集電体の表面を弁金属で被覆することで正極活物質の溶解を防止でき、高電圧での電気化学セルの使用が可能となる。さらに、容器に耐熱性材料を用いることにより、耐熱性が向上しリフローハンダ付けを行っても電気化学セルの特性が劣化しなくなり信頼性が向上した。
正極集電体の表面を覆う弁金属としてアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウムのいずれかを用いることにより正極活物質の溶解が防止でき、高電圧での電気化学セルの使用が可能となる。
正極集電体の一部が前記の容器に埋設されたことにより被覆部分が小さくなり、ピンホール等の膜欠陥を防ぎ均一に被覆することが容易になり、信頼性も向上した。従来の方法では、容器外壁近くの正極集電体の被覆が難しく僅かでも被覆部の位置がずれると、正極集電体の一部が露出したり金属リングや接合材と接触してしまうことがあり、内部ショートを起こし機能しなくなることがあったが、本発明では被覆部の形成位置が多少ずれても正極集電体の一部が露出したり金属リングや接合材と接触してしまうことが無く容易に被覆することができる。
【0010】
また、被覆部と正極活物質が導電性接着剤により接着することにより電気化学セルの内部抵抗が小さくなり電気化学セルの特性が向上する。
さらに、前記正極活物質に対する前記導電性接着剤の塗布面積を前記被覆部の面積より大きくすることにより、正極活物質の接触面積を大きくし電気化学セルの内部抵抗をより減少させることができる。
容器にセラミックスを用いることにより電気化学セルの耐熱性が向上しリフローハンダ付けを行っても電気化学セルの特性が劣化しなくなり信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の参考例に係る電気化学セルの断面図を図1に示す。容器101の底面側に正極活物質106を配置される。正極集電体103の表面には弁金属を用いた被覆部112が形成されており、正極活物質106は導電性接着剤1111を用いて被覆部112に接着される。導電性接着剤1111と被覆部112を介して正極集電体103と正極活物質106が電気的に接続されている。
容器の外壁上部に金属リング109が設けられており、金属リング109の表面には、接合材が配されている。蓋102の表面にも接合材が配されている。接合材が溶融して容器101と蓋102が封止されている。導電性接着剤1112によって、蓋102に負極活物質107が貼り付けられている。蓋102は、導電性を有しており負極集電体として作用する。
【0012】
また、セパレータ105によって正極活物質106と負極活物質107が分離されている。また、正極集電体と被覆部112の間には、他の金属が存在しても良く、正極集電体を金又はニッケルでメッキした後に被覆部で覆っても良い。容器101内は、電解液108が満たされている。
次に、本発明に係る別の電気化学セルの断面図を図2に示す。本発明の容器101をアルミナで作製する場合、底面となる四角のアルミナグリーンシートを配設し、その表面にタングステンプリントを施し正極集電体103及び接続端子A1041と接続端子B1042の一部の配線を施す。
【0013】
また、被覆部の生成条件によっては、被覆部に欠陥が生じる場合がある。特に、容器101の側壁付近の被覆部は欠陥を生じやすい。発生する膜欠陥の例を図8に示した。図8のAのように正極集電体103の一部が露出したり、Bのように金属リング109と接触してしまう場合がある。図8のAのように正極集電体103の一部が露出していると、電気化学セルに電圧をかけることにより正極集電体103の一部が溶解してしまうことがある。また、図8のBのように成膜した膜が金属リング109と接触してしまい電気化学セルは内部ショートを起こし機能しなくなる。これを防ぐため、容器の側壁付近の正極集電体を容器に埋設し、正極集電体の埋設されていない部分を被覆部で覆うこととした。中央に円形の穴の開いた第二の四角いアルミナグリーンシートを配設する。これにより、正極集電体の面積を制限できる。正極集電体103の一部が前記の容器101に埋設され、前記正極集電体の残部が露出している。
【0014】
さらに、容器101の外壁となるアルミナグリーンシートを配設する。この状態を容器101の上部から見ると図4のようになり、正極集電体103の露出している面積は容器底面1011の面積より小さくなる。この時、正極集電体103は第二の四角いアルミナグリーンシートの穴と同じ形状である必要はない。後工程で配設する被覆部112と電気的に接触できる形状であれば良い。例えば線状や帯状でもかまわない。被覆部112を介して正極集電体103と正極活物質106が電気的に接続させる。第二の四角いアルミナグリーンシートの穴の形状は円形である必要はない。
次に接続端子A1041と接続端子B1042の残りの配線を容器101の外壁に配設し、その後焼成し容器101を得た。容器101にはさらに金属リング109を接合した。
【0015】
被覆部112を正極集電体103の表面上に配設した。この状態を上部から見た様子を図5に示した。正極活物質106は導電性接着剤で接着する。正極側においては被覆部112が正極活物質106より小さいが導電性接着剤1111を正極活物質106とほぼ同じ大きさに塗布したため、電極活物質と集電体の電子の流れが阻害されることがなく、電気化学セルの内部抵抗を上げてしまう等の特性の劣化はなかった。また、集電体と正極活物質106は特に接着する必要はなく、導電性接着剤1111を容器101の底部に塗布した後上に載せるだけでもかまわない。
蓋102と負極活物質107は、あらかじめ炭素を含有する導電性接着剤1112で接着した。
【0016】
金属リング109は図2の外壁を通るタングステン層により、接続端子B1042に電気的に接続される。
蓋102の容器側の部分には、接合材となるニッケルめっきを施した。
容器内部に正負極電極、セパレータ105、電解液108を収納し、蓋102で蓋をした後、抵抗溶接の原理を利用したパラレルシーム溶接機により、蓋102の向かい合う2辺ずつ溶接を行った。この方法により信頼性の高い封止が得られた。
被覆部112は、容器101の底面の穴を完全に覆うのが好ましい。その場合の電気化学セルの上面から見た図を図6に、断面図を図7に示す。被覆部112により、正極集電体103の埋設されていない部分を完全に被覆することにより、正極集電体103が被覆部112の形成時の欠陥等により露出することがなくなる。そのため、電気化学セルの信頼性が格段に向上する。
【0017】
被覆部112が、大きすぎると容器101の外壁の内側に導電体が付着してしまい、金属リング109や接合材との接触や電極活物質どうしの接触が生じ、内部ショートの原因となる。
容器101はセラミックスからなり、アルミナ、ジルコニア等の高強度、絶縁性のセラミックスを用いることができる。加工方法としては所定の形状に打ち抜いたグリーンシートを重ねて焼成する方法が、正極集電体103及び接続端子A1041と接続端子B1042を形成する上でも有効である。
正極集電体103及び接続端子A1041と接続端子B1042はタングステン粉末を含むタングステンプリントにより配線した後、焼成することにより作製できる。正極集電体103と接続端子A1041は接続されている。
【0018】
正極集電体にタングステンを用いることにより正極集電体の耐熱性が向上し、さらに、タングステンプリントを用いることにより容器の形成と同時にタングステン正極集電体を形成することができ容易に製造することができる。これは、セラミックスの容器を高温で焼成してつくる場合、正極集電体も高温にさらされるため耐熱金属であるためタングステンが有効である。他の耐熱金属であるモリブデン等も用いることができる。配線の信頼性においてはタングステンが有利である。
電気化学セルを比較的高い電圧例えば3V前後で使う場合は、正極集電体が溶解し特性が著しく劣化するという課題があった。
【0019】
そこで、被覆部112をタングステンからなる正極集電体103の表面に形成し正極集電体の溶解を防いでいる。被覆部112は弁金属と呼ばれるアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウムが用いられる。特にアルミニウムは価格も安く使いやすい材料である。これらの材料を用いた場合、被覆部112にリチウム対極で4V/vsLi以上の電位が印加されても溶解することはない。
形成方法はめっき、蒸着、スパッタリング、CVD、溶射などがある。アルミニウムを用いる場合は溶射や常温溶融塩からのめっき(ブチルピジウムクロリド浴、イミダゾリウムクロリド浴)を利用できる。本発明においては、正極集電体103の面積が小さいため、めっきした場合は欠陥が少なく、蒸着、スパッタリング、CVD、溶射を用いた場合はマスキングがいらないか、簡単なマスキングで被覆部112を形成することができる。
【0020】
金属リング109の材質は、容器101に熱膨張係数の近いものが望まれる。
たとえば、容器101が熱膨張係数6.8×10−6/℃のアルミナを用いる場合金属リングとしては熱膨張係数5.2×10−6/℃のコバールを用いることが望ましい。
また、蓋102も溶接後の信頼性を高めるため、金属リングと同じコバールを用いることが望ましい。溶接後、機器の基板に表面実装されるとき、すなわちリフローハンダ付けのとき再び加熱されるためである。
接続端子A1041と接続端子B1042の部分については、基盤とハンダ付けするためにニッケル、金、スズ、ハンダの層を表面に設けるとよい。容器101の縁部についても接合材とのなじみの良いニッケルや金などの層を設けることが好ましい。層の形成方法としては、めっき、蒸着などの気相法等もある。
【0021】
金属リング109および蓋102の接合される面には、接合材としてニッケル及び/または金の層を設けることが有効である。金の融点は1063℃、ニッケルの融点は1453℃であるが、金とニッケルの合金にすることにより融点を1000℃以下に下げることができるためである。層の形成方法としては、めっき、蒸着などの気相法、印刷を用いた厚膜法等がある。特にめっき、印刷を用いた厚膜法がコスト的に有利である。
ただし、接合材の層のP、B、S、N、C等の不純物元素は10%以下にする必要がある。特にめっきを用いた場合は注意が必要である。たとえば、無電解めっきにおいては還元剤の次亜リン酸ナトリウムからP、ジメチルアミンボランからBが入りやすい。また、電解めっきにおいては光沢剤の添加剤や陰イオンから入る可能性があるため注意が必要である。還元剤、添加物等の量を調整して入る不純物を10%以下とする必要がある。10%以上入ってしまうと接合面に金属間化合物が生成しクラックが入ってしまう。
【0022】
蓋102側の接合材にニッケルを用いた場合は、容器101側の接合剤には金を用いることが好ましい。金とニッケルの比は1:2から1:1の間がよく、合金の融点が下がることにより溶接温度が下がり接合性もよくなる。
接合部の溶接は、抵抗溶接法を利用したシーム溶接が利用できる。蓋102と容器101をスポット溶接し仮止めしたあと、蓋102の対向する二辺に対向するローラー型の電極を押し付け、電流を流すことで、抵抗溶接の原理により溶接する。蓋102の四辺を溶接することにより封止することができる。ローラー電極を回転させながら電流をパルス状に流すため溶接後はシーム状になる。パルスによる個々の溶接跡が重なるようにパルス幅をコントロールしなければ、完全に封止することができない。
【0023】
電池、キャパシタの電解液(液体)を含むものの溶接においては、抵抗溶接法を利用したシーム溶接が特に好ましかった。
使用するセパレータは耐熱性のある不織布であることが好ましい。たとえば、ロール圧延したポーラスフィルム等のセパレータにおいては、耐熱性があるものの、抵抗溶接法を利用したシーム溶接時の熱で圧延方向に縮んでしまう。その結果、内部ショートを起こしやすい。耐熱性のある樹脂またはガラス繊維を用いたセパレータの場合縮みが少なく良好であった。樹脂としてはPPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)が良好であった。特にはガラス繊維が有効であった。また、セラミックスの多孔質体を用いることもできる。
【0024】
本発明の電気化学セルの形状は基本的に自由である。従来のかしめ封止による電気化学セルの形状はほぼ円形に限定される。そのため、四角形状がほとんどである他の電子部品と同一の基板上に並べようとするとどうしてもデットスペースができ無駄であった。本発明の電気化学セルは四角い設計も可能で、端子等の出っ張りがないため効率的に基板上に配置することができる。
【実施例1】
【0025】
図2の形状を有する容器101を用いて電気二重層キャパシタを作製した。容器101の寸法は3×5mm、高さは0.5mmとした。容器101の外壁となる部分の厚さは0.3mmとした。正極集電体103及び接続端子A1041と接続端子B1042はタングステンプリントにより配線した。正極集電体103と接続端子A1041は接続されている。正極集電体103は直径1.0mmの円とし、その面積が容器底面1011の面積より十分小さくなる構造とした。容器101の上部にはコバール製の厚さ0.15mmの金属リング109をあらかじめ金系のろう材で接合したものを用いた。それにより容器101外壁の高さは0.4mmとなった。
【0026】
容器101の金属の露出している部分にはニッケルめっきを施した後、金めっきを施した。金めっき後、被覆部112はアルミニウムの溶射により形成した。
蓋102は、2×4mm、厚さ0.15mmのコバールの板にニッケルめっきを施したものを用いた。
正極活物質106、負極活物質107は2×4mm、厚さ0.15mmの活性炭シートを用いた。正極活物質106は導電性接着剤1111により容器101の底部に接着した。負極活物質107は導電性接着剤1112により蓋102に接着した。次に、セパレータ105を正極活物質106上にのせ、プロピレンカ−ボネ−ト(PC)に(C2H5)4NBF4を1mol/L加えた電解液を5μL加えた。負極活物質107を接着した蓋102をかぶせ、蓋102と容器101をスポット溶接し仮止めしたあと、蓋102の対向する二辺に対向するローラー型の電極を押し付け、電流を流すことで、抵抗溶接の原理でシーム溶接した。
【0027】
比較例1として、保護部の一部に穴が開き正極集電体が露出した電気二重層キャパシタを作製した。電極の材料、電解液や封止方法などは実施例1と同じ構成とした。
実施例1と比較例1の電気二重層キャパシタについて、70℃、3.3V電圧を印加した状態で所定の日数保管し、容量保持率と内部抵抗の変化を測定し、どの程度電気二重層キャパシタが劣化するかを調べた。結果を図9と図10に示す。一般に70℃、10日保存は1年に相当すると考えられている。実施例1は40日の保存後であっても容量保持率が80%程度で、内部抵抗が1000Ω以下であり実用上問題がなく、非常に良好な結果となった。それに対し、比較例1のものは容量保持率が大きく低下し、かつ内部抵抗が上昇し電気化学セル内部で劣化が生じていた。保存後の比較例1の電気二重層キャパシタを分解して調べたところ所々正極側の集電体が溶解している部分があった。これは正極集電体が完全に覆われず一部露出していたためと考えられる。
【実施例2】
【0028】
次に、被覆部を違う方法で形成した場合の実施例を示す。実施例1同様に、図2の形状を有する容器101を用いて電気二重層キャパシタを作製した。容器101の寸法は3×5mm、高さは0.5mmとした。容器101の外壁となる部分の厚さは0.3mmとした。正極集電体103及び接続端子A1041と接続端子B1042はタングステンプリントにより配線した。正極集電体103は直径1.0mmの円とし、その面積が容器底面1011の面積より十分小さくなる構造とした。容器101の上部にはコバール製の厚さ0.15mmの金属リング109をあらかじめ金系のろう材で接合したものを用いた。それにより容器101外壁の高さは0.4mmとなった。
【0029】
容器101の接続端子にはニッケルめっきを施した後、金めっきを施した。
また、被覆部112の形成においては、、簡単な金属マスク(容器に合わせ四角く開口した形状)を容器101の上にのせて、アルミニウム蒸着を行った。図11に、アルミニウム蒸着をし、金属マスクを取り除いた後の容器101の斜視図を示した。被覆部112を容器101の底面に四角く形成することができた。このときのアルミニウム蒸着膜は約8μmとした。アルミニウム蒸着膜の厚さは8μm前後が有効であった。3μm以下の場合、ピンホールが発生し、キャパシタの特性を保つことが困難であった。また、15μm以上であると蒸着に時間がかかり製造コスト上好ましくない。
【0030】
蓋102は、2×4mm、厚さ0.15mmのコバールの板にニッケルめっきを施したものを用いた。実施例1同様に、正極活物質106、負極活物質107は2×4mm、厚さ0.15mmの活性炭シートを用いた。正極活物質106は導電性接着剤1111により容器101の底部に接着した。負極活物質107は導電性接着剤1112により蓋102に接着した。次に、セパレータ105を正極活物質106上にのせ、プロピレンカ−ボネ−ト(PC)に(C2H5)4NBF4を1mol/L加えた電解液を5μL加えた。負極活物質107を接着した蓋102をかぶせ、蓋102と容器101をスポット溶接し仮止めしたあと、蓋102の対向する二辺に対向するローラー型の電極を押し付け、電流を流すことで、抵抗溶接の原理でシーム溶接した。
【0031】
実施例1と同様に、実施例2の電気二重層キャパシタについて、70℃、3.3V電圧を印加した状態で所定の日数保管し、容量保持率と内部抵抗の変化を測定し、どの程度電気二重層キャパシタが劣化するかを調べた。その結果、実施例1同様、実用上問題がなく、非常に良好な結果となった。
本実施例においては、電気二重層キャパシタについてのみ説明したが、非水二次電池に応用した場合も保存において同様の効果が認められた。また、3.3V以下の電圧印加においても従来の構造のものと比べ、保存特性が向上した。
本実施例においては、被覆部112がアルミニウムである場合についてのみ記載したが、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウムを用いた場合においても同様の効果がある。アルミニウムは形成のしやすさ、コストにおいて有効であるため、実施例に用いて説明した。
【0032】
本実施例においては、電気二重層キャパシタについてのみ説明したが、非水二次電池に応用した場合も保存において同様の効果が認められた。また、3.3V以下の電圧印加においても従来の構造のものと比べ、保存特性が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の電気化学セルは、正極側の集電体の形状および材質を検討することにより、保存において高信頼性が得られるようになった。特に電圧を印加した状態での保存に強いため、メモリーバックアップ等の使い方に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の参考例としての電気化学セルの断面図である。
【図2】本発明の電気化学セルの断面図である。
【図3】従来の電気化学セルの断面図である。
【図4】本発明の電気化学セルの容器を上から見た図である。
【図5】本発明の電気化学セルの容器に被覆部を形成し上から見た図である。
【図6】本発明の容器101に被覆部112を形成し上から見た図である。
【図7】本発明の容器101に被覆部112を形成した場合の断面図である。
【図8】従来の電気化学セルの容器の断面図である。
【図9】実施例1と比較例1の容量保持率の変化を示すグラフである。
【図10】実施例1と比較例1の内部抵抗変化を示すグラフである。
【図11】本発明の容器101に被覆部112を形成した場合の斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
101 容器
1011 容器底面
102 蓋
103 正極集電体
1041 接続端子A
1042 接続端子B
105 セパレータ
106 正極活物質
107 負極活物質
108 電解液
109 金属リング
1111 導電性接着剤
1112 導電性接着剤
112 被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質と、負極活物質と、電解液と、前記正極活物質と前記負極活物質とを分離するセパレータと、容器と、前記容器の上端縁に固定された金属リングと、この金属リングの上面に固定された蓋と、前記容器の底板内部に設けられた正極集電体と、前記正極集電体と接続され、前記容器の底板下面に配線された第一の接続端子と、前記金属リングと電気的に接続され、前記容器の底板下面に配線された第二の接続端子とを有する電気化学セルにおいて、
前記正極活物質と前記負極活物質と前記電解液と前記セパレータとは、前記容器と前記金属リングと前記蓋とによって形成される空間に収納され、
前記正極集電体は、一部が前記容器の底板内部に埋設され、かつ前記容器に埋設されていない部分は、正極活物質と電気的に接続可能に形成されていると共に、その正極活物質側は弁金属からなる被覆部で覆われ、この被覆部を介して正極活物質と電気的に接続しているように形成されたことを特徴とする電気化学セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−16824(P2013−16824A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184790(P2012−184790)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2004−268915(P2004−268915)の分割
【原出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】