電気化学デバイス
【課題】各タブ付近への電流集中により温度勾配を有する電池であっても、電気化学デバイスの寿命、信頼性の低下を抑制し得る電池を提供する。
【解決手段】電極間のイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層(12)と、この電解質層(12)の両側に設けられる負極(4)及び正極(8)とを有し、電子とイオンが2つの電極(4、8)間を移動して電気化学反応を行う扁平状の発電要素(2)を備える電気化学デバイス(1)において、発電要素(2)の面内温度が均一となるように発電要素(2)の面内での電気化学反応の活性度を異ならせる。
【解決手段】電極間のイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層(12)と、この電解質層(12)の両側に設けられる負極(4)及び正極(8)とを有し、電子とイオンが2つの電極(4、8)間を移動して電気化学反応を行う扁平状の発電要素(2)を備える電気化学デバイス(1)において、発電要素(2)の面内温度が均一となるように発電要素(2)の面内での電気化学反応の活性度を異ならせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はリチウムイオン二次電池などの電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
略扁平状の発電要素を電池外装体で被覆し、当該電池外装体の周縁部を熱融着により接合した電池を単位として積層するものがある(特許文献1参照)。このものでは、電池の中央部に熱伝導性を有する第1の粘着材を、電池の周縁部に接着強度のある第2の粘着材を塗布して2つの電池を貼り合わせることにより積層している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−272048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の電池では、発電要素への充電または放電の少なくとも一方を行わせるための2つのタブを発電要素の周縁部に備えている。本発明者を含むグループが実験したところでは、この2つのタブ付近への電流集中により2つの各タブ近傍の温度が各タブより離れた部位より上昇する傾向を有することを初めて見い出している。
【0005】
このように、発電要素の面内方向に不均一な温度勾配が生じることで、発電要素の面内方向に劣化進行度の差異が生まれる結果、電池全体の寿命、信頼性が低下するといった問題が生じる。
【0006】
しかしながら、各タブ付近への電流集中により各タブ近傍の温度が各タブより離れた部位より上昇する傾向を有する電池に対して、上記特許文献1の技術を適用しても、発電要素面内方向の不均一な温度勾配を解消することはできない。上記特許文献1は、全体として略扁平状の電池からの放熱は周縁部より中央部ほうが高いとみなしている技術に過ぎず、発電要素面内方向の不均一な実際の温度勾配に対応するものでないためである。
【0007】
そこで本発明は、各タブ付近への電流集中により各タブ近傍の温度が各タブより離れた部位より上昇する温度勾配を有する電池であっても、電気化学デバイスの寿命、信頼性の低下を抑制し得る電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気化学デバイスは、電極間のイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層と、この電解質層の両側に設けられる負極及び正極とを有し、電子とイオンが前記2つの電極間を移動して電気化学反応を行う扁平状の発電要素を備える電気化学デバイスを前提としている。そして、前記発電要素の面内方向の温度が均一となるように発電要素の面内方向での電気化学反応の活性度を異ならせる。
【発明の効果】
【0009】
発電要素の面内方向での電気化学反応の活性度を異ならせると、発電要素の面内方向での充放電反応熱が変化する。つまり、発電要素の面内方向での電気化学反応熱と面内方向のジュール発熱との合計が同一の温度なるように、発電要素の面内方向での電気化学反応の活性度を異ならせることで、発電要素の面内方向の温度を均一化することができる。発電要素の面内方向の温度を均一化することが可能となれば、電気化学デバイスの寿命、信頼性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態のリチウムイオン二次電池の概略斜視図である。
【図2】発電要素の分解斜視図である。
【図3】現状の電池の放電時のラミネートフィルムの表面温度勾配を示すモデル図である。
【図4】参考例の単電池層の断面図である。
【図5】第1実施形態の単電池層の断面図である。
【図6】面内方向の温度勾配の特性図である。
【図7】第2実施形態の単電池層の断面図である。
【図8】第2実施形態の他の例のセパレータの概略斜視図である。
【図9】第3実施形態の単電池層の断面図である。
【図10】第3実施形態の他の例の正極活物質層の概略斜視図である。
【図11】第4実施形態の単電池層の断面図である。
【図12】第5実施形態の単電池層の断面図である。
【図13】第5実施形態の他の例のイオンブロック層の概略斜視図である。
【図14】第6実施形態の単電池層の断面図である。
【図15】第6実施形態の他の例の固体電解質層の概略斜視図である。
【図16】第7実施形態の単電池層の断面図である。
【図17】第8実施形態の単電池層の断面図である。
【図18】第9実施形態の単電池層の断面図である。
【図19】第10実施形態の面内方向の温度勾配の特性図である。
【図20】第10実施形態のセパレータの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張している箇所があり、その箇所においては実際の比率と異なっている。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態のリチウムイオン二次電池1について先に概説する。図1はリチウムイオン二次電池1の概略斜視図、図2は発電要素2の分解斜視図である。
【0013】
図1に示すように、リチウムイオン二次電池1は、実際に充放電反応が進行する略四角扁平状の発電要素2が、電池外装材であるラミネートフィルム14の内部に封止された構造を有する。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートフィルムを電池外装材として用いて、その周辺部(周縁部)14a、14b、14c、14dを熱融着にて接合することにより、発電要素2を収納し密封した構成を有している。ここで高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、金属フィルムを高分子フィルム(樹脂フィルム)でサンドイッチした三層構造のものが一般的である。
【0014】
こうした積層型の電池1は、缶型電池と区分けするために「ラミネート型電池」といわれる。缶型電池は、堅い円筒状の金属製外枠の中に2つの各電極が巻き込んで収納されているものである。一方、ラミネート型電池とは、略四角扁平状の発電要素2の周辺部(周縁部)を熱融着にて接合することにより、発電要素を密封したものをいう。以下では、リチウムイオン二次電池1を、「ラミネート型電池」という。あるいは単に「電池」ともいう。
【0015】
図2に示したように、発電要素2は、負極4、セパレータ12、正極8をこの順に積層した構成を有している。ここで、負極4は四角薄板状の負極集電体5の両面に負極活物質層6、6を配置したものである。同様に正極8は四角薄板状の正極集電体9の両面に正極活物質層10、10を配置したものである。セパレータ12は主に多孔質の熱可塑性樹脂から形成されている。セパレータ12が電解液を保持することで、セパレータ12と一体に電解質層が形成されている。言い換えると、2つの電極間のLiイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層が、液体電解質と樹脂を含む微多孔膜のセパレータ12とで構成されている。
【0016】
これにより、隣接する負極4、セパレータ12(電解液を含む)及び正極8は、一つの単電池層13(単電池)を構成する。単電池層13では、電子とイオンが2つの電極間を移動して電池の充放電反応(電気化学反応)を行う。従って、本実施形態のラミネート型電池1は、単電池層13を積層することで、電気的に並列接続された構成を有するともいえる。また、単電池層13の外周には、隣接する負極集電体5と正極集電体9との間を絶縁するためのシール部(絶縁層)を設けてもよい。発電要素2の両最外層に位置する最外層負極集電体5には、いずれも片面のみ(図2で最上段の負極集電体5には下面のみ、最下段の負極集電体5には上面のみ)に負極活物質層6を配置している。なお、図2とは負極及び正極の配置を逆にすることで、発電要素2の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片側のみに正極活物質層を配置するようにしてもよい。
【0017】
負極集電体5及び正極集電体9には、各電極(負極及び正極)から出入りする電子を外部に取り出す負極タブ15及び正極タブ16の2つの強電タブを取り付け、ラミネートフィルム14の周縁部に挟まれるようにラミネートフィルム14の外部に導出させている。発電要素2は全体として四辺を有する四角扁平状に形成されているので、四辺のうちの一辺のみより2つの強電タブ15、16をまとめて外部に導出させている(図1参照)。強電タブ15、16には、必要に応じて正極端子リード(図示せず)及び負極端子リード(図示せず)を介して、各電極の負極集電体5及び正極集電体9に超音波溶接や抵抗溶接により取り付けてもよい。なお、図2において各負極タブ15同士を、また各正極タブ16同士を電気的に接続することはいうまでもない。
【0018】
さて、電池1の面内方向の温度勾配を調査するため、本発明者を含むグループが電池1を製作し、充放電によるラミネートフィルム表面温度を計測したところ、図3に示す結果を得た。図3は本発明者を含むグループが初めて見いだした放電時のラミネートフィルムの表面温度勾配をモデルで示したものである。図3において色が濃い部分ほど発熱によるラミネートフィルム表面温度が高いことを示している。図3によれば、2つの各強電タブ15、16がある付近で最も発熱温度が高く、2つの各強電タブ15、16から離れるほど(図3では下方に向かうほど)発熱温度が低くなっている。さらに、図3において正極タブ16側の右半分の領域のほうが負極タブ15側の左半分の領域よりも温度上昇している部分が広がっている。
【0019】
この現象を解析したところは次の通りである。すなわち、電池1には発熱を伴う。この発熱は大別すると、充放電反応熱(電気化学的な反応熱)、分極発熱、電子が部材内を拡散する際に生じるジュール発熱に分かれる。電子を入出するための2つの強電タブ15、16を備える電池1においては、その構造上、各強電タブ15、16の付近に電流(電子)が集中し、局所的にジュール発熱による温度上昇が発生すると考えられる。
【0020】
このように発電要素2の面内で2つの各強電タブ15、16に近いほど温度上昇する、つまり発電要素2の面内方向に不均一な温度勾配(温度分布)が生じたのでは、相対的に高温の部分である各強電タブ15、16の付近から先に劣化してしまうこととなる。発電要素2の面内方向に劣化進行度の差異が生まれる結果、電池1全体の寿命、信頼性が低下するといった問題が生じるのである。ここで、「発電要素の面」とは 発電要素を1枚の平らな紙とみなしたとき、この平らな紙の上下の面のことをいう。また、「発電要素の面内方向」とは、発電要素を1枚の平らな紙とみなしたとき、この平らな紙の面に沿う任意の方向をいう。なお、「発電要素の面内方向」については、単に「面内方向」でも用いる。
【0021】
さらに説明すると、正極活物質には、Li・Mn系複合酸化物、Li・Ni系複合酸化物、Li・Co系複合酸化物などがあり、最近ではこれら三種の複合酸化物を混合させた形態で使用する正極活物質を本発明者を含むグループが鋭意研究している。これら三種の複合酸化物を混合させた構成の正極活物質を仮に「三元系NMC」というとすると、特にこの三元系NMCにおいて、発電要素2の面内方向に不均一な温度勾配(分布)が大きく生じることを見い出している。
【0022】
そこで本発明では、ジュール発熱以外の発熱要因である充放電反応熱(電気化学的な反応熱)が、ジュール発熱と反対の温度勾配を発電要素2の面内方向に有するようにする。つまり、発電要素2の面内方向の温度が均一となるように発電要素2の面内方向での充放電反応熱(電気化学的な反応熱)を異ならせる。ここで、発電要素2の面内方向での充放電反応熱を異ならせるには、発電要素2の面内方向での充放電反応の活性度を異ならせ、各強電タブ15、16に近いほど充放電反応熱が小さくなる温度勾配を有するように発電要素2を構成することである。これによって、ジュール発熱による面内方向での温度勾配を相殺することができ、結果的に発電要素2の面内方向の温度を均一化することが可能となる。
【0023】
充放電反応熱は、充放電反応の活性度としてのイオン伝導率を用いて制御できる。ここでの「イオン」とは、実施形態ではLiイオンのことである。Liイオンは電解質層内を正極から負極へとあるいはその逆へと移動して充放電反応を行うが、「イオン伝導率」とはこのLiイオンの移動のし易さを表す指標である。一方、「充放電反応の活性度」とは、充放電反応の生じ易さのことである。従って、電解質のイオン伝導率が低いとLiイオンが相対的に移動しにくくなって充放電反応の活性度は低下し、この逆に電解質のイオン伝導率が高いとLiイオンが相対的に移動し易くなって充放電反応の活性度は大きくなる。また、イオン伝導率は、電気伝導のしやさすさを表す電気伝導率とは比例の関係にある。
【0024】
電解質のイオン伝導率は、電解質が液体電解質である場合には、セパレータ12の空孔率、セパレータ12の厚み、電極の厚みを変えることで、発電要素2の面内方向に変更し得る。また、電極表面にイオンブロック層21を設ける場合に、イオンブロック層21の空孔率、イオンブロック層21の厚みを変えることで、発電要素2の面内方向にイオン伝導率を変更し得る。また、電解質が半固体電解質や固体電解質である場合には、半固体電解質や固体電解質の厚み、粘度、誘電率、電解質塩濃度を変えることで、発電要素2の面内方向にイオン伝導率を変更し得る。
【0025】
以下、本発明の第1実施形態ではセパレータ12の空孔率を、第2実施形態ではセパレータ12の厚みを、第3実施形態では電極の厚みを変化させることによって電解質のイオン伝導率を変更する場合を説明する。第4実施形態ではイオンブロック層21の空孔率を、第5実施形態ではイオンブロック層21の厚みを変化させることによって電解質のイオン伝導率を変更する場合を説明する。第6実施形態では半固体電解質層(あるいは固体電解質層)25の厚みを、第7、第8、第9実施形態ではそれぞれ半固体電解質層(あるいは固体電解質層)25の粘度、誘電率、電解質塩濃度を変化させることによって電解質のイオン伝導率を変更する場合を説明する。
【0026】
まず、図4、図5は発電要素2から1つの単電池層13のみを採り出して示す単電池層13の断面図で、このうち図4は参考例の単電池層13、図5は第1実施形態の単電池層13である。
【0027】
ただし、2つの電極4、8からセパレータ12を上下方向に少し離して示している。また、図4、図5では図2と相違して、強電タブ15、16は各集電体5、9の延長上にあるものとして記載している。以下、図7、図9、図11、図12、図14、図16、図17、図18において同様である。
【0028】
図4、図5においてセパレータ12は多孔質の樹脂や樹脂繊維を絡めた不織布などの樹脂を含む微多孔膜で構成されている。膜内の多数の孔に電解液が満たされる。従って、電解液中のLiイオンは膜内の多数の孔を介して負極4と正極8との間を移動することが可能である。このため、電池1の放電時には電解液中のLiイオンが図4、図5のように負極4から正極8へと移動する。
【0029】
ここで、図4に示す参考例では、セパレータ12の空孔率はセパレータ12の面内方向(図4では左右方向)に均一である。一方、図5に示す第1実施形態では、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するためにセパレータ12の空孔率をセパレータ12(発電要素2)の面内方向(図5では左右方向)において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなるようにしている。セパレータ12の空孔率を発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど小さくするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0030】
第1実施形態のように、セパレータ12の空孔率をセパレータ12の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど小さくなるようにしたとき、図5に示したように各強電タブ15、16側でのLiイオンのセパレータ移動量(図5の太い矢印参照)が、強電タブ15、16と反対側でのLiイオンのセパレータ移動量(図5の細い矢印参照)より小さくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。一方、参考例では、セパレータ12の空孔率はセパレータ12の面内方向に均一であり、充放電反応は面内方向で均一に生じるため、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができない。
【0031】
次に、セパレータ12の空孔率を調整する方法を3つ説明する。
【0032】
〈1〉セパレータの成形方法で調整する方法
セパレータの孔は、通常、溶液中の溶媒が蒸発した後に形成されるので、セパレータを成形する際に、溶液の濃度が面内の一方向に変化するように(徐々に溶液の濃度が濃くなるか徐々に溶液の濃度が薄くなるかのいずれか)濃度の勾配を持たせておく。すると、溶液の濃度が相対的に濃い側には溶媒が相対的に少ないために孔の数が相対的に少なく、この反対に溶液の濃度が相対的に薄い側には溶媒が相対的に多いために孔の数が相対的に多くなる。これによって、孔の数が相対的に少ない各強電タブ15、16側ではLiイオンの移動量が、孔の数が相対的に多い強電タブ15、16と反対側より少なくなり、面内方向の充放電反応熱が相対的に小さくなる。
【0033】
〈2〉セパレータの延伸方法で調整する方法
セパレータは成形する際に延伸すれば延伸する前より孔の径が大きくなる。従って、セパレータを成形する際に、延伸割合が面内の一方向に変化するように(徐々に延伸割合を大きくするか徐々に延伸割合を小さくするかのいずれか)延伸割合の勾配を持たせる。すると、単位体積当たりの孔の数は同じでも、延伸割合が相対的に小さい側では孔の径が相対的に小さく、この反対に延伸割合が相対的に大きい側では孔の径が相対的に大きくなる。これによって、孔の径が相対的に小さい各強電タブ15、16側ではLiイオン移動量が、孔の径が相対的に大きい強電タブ15、16と反対側より少なくなり、面内方向の充放電反応熱が相対的に小さくなる。
【0034】
〈3〉まず空孔率の均一なセパレータを成形した後にスプレー装置などで不活性な物質を空孔内に固着させる方法
スプレー装置で不活性な物質をセパレータ内にスプレーすれば、空孔の内壁面に不活性な物質が付着、固化して孔の径が小さくなる。従って、空孔率の均一なセパレータを成形した後に、スプレー装置からのスプレー量が面内の一方向に変化するように(徐々にスプレー量を多くするか徐々にスプレー量を少なくするかのいずれか)スプレー量の分布を持たせる。すると、スプレー量が相対的に多い側では孔の径が相対的に小さく、この反対にスプレー量が相対的に少ない側では孔の径が相対的に大きくなる。これによって、孔の径が相対的に小さい強電タブ15、16側ではLiイオンの移動量が、孔の径が相対的に大きい強電タブ15、16と反対側より少なくなり、面内方向の充放電反応熱が相対的に小さくなる。
【0035】
また、図3において発電要素2を縦にほぼ二等分し、左右の各領域について上下方向(面内方向)の温度勾配を重ねてみると、図6に示したように正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とで面内方向の温度勾配が異なっている。つまり、発電要素2の面内方向(図6で左右方向)に温度勾配を有する範囲について、正極タブ16側のほうが負極タブ15側より広くなっている。従って、セパレータ12を図3において正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とにほぼ二等分し、二等分した各領域でのセパレータ12の空孔率を、この面内方向の2種類の温度勾配に合わせて設定することが好ましい。例えば、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、正極タブ16のある右側領域でのセパレータ12の空孔率を、負極タブ15のある左側領域でのセパレータ12の空孔率より小さくする(イオン伝導率を低くする)のである。
【0036】
ここで、第1実施形態の作用効果を説明する。
【0037】
第1実施形態によれば、電極間のLiイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層(セパレータ12及び電解液)と、この電解質層の両側に設けられる負極4及び正極8とを有し、電子とイオンが2つの電極4、8間を移動して充放電反応(電気化学反応)を行う扁平状の発電要素2を備える電池1(電気化学デバイス)において、発電要素2の面内方向温度が均一となるように発電要素2の面内方向での充放電反応(電気化学反応)の活性度を異ならせる。
【0038】
発電要素2の面内方向での充放電反応の活性度を異ならせると、発電要素2の面内方向での充放電反応熱が変化する。つまり、発電要素2の面内方向での充放電反応熱(電気化学的な反応熱)と面内方向のジュール発熱との合計が同一の温度なるように、発電要素2の面内方向での充放電反応(電気化学反応)の活性度を異ならせることで、発電要素2の面内方向の温度を均一化することができる。発電要素2の面内方向の温度を均一化することが可能となれば、電池1(電気化学デバイス)の寿命、信頼性の低下を抑制することができる。
【0039】
第1実施形態によれば、電極間のLiイオン(イオン)の移動媒体としての機能を有する電解質層(セパレータ12及び電解液)と、この電解質層の両側に設けられる負極4及び正極8とを有し、電子とLiイオンが2つの電極4、8間を移動して充放電反応(電気化学反応)を行う扁平状の発電要素2と、負極4及び正極8から出入りする電子を外部に取り出す負極タブ15及び正極タブ16とを備える電池1(電気化学デバイス)において、発電要素2の面内方向温度が均一となるように発電要素2の面内方向での充放電反応熱(電気化学的な反応熱)を異ならせるので、発電要素2の面内方向の温度を均一化することが可能となり、電池1(電気化学デバイス)の寿命、信頼性の低下を抑制することができる。
【0040】
第1実施形態によれば、電解質層を移動するLiイオンが、発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど移動しにくくするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほどLiイオンが移動しにくくなって、充放電反応(電気化学的な反応)が抑制され、充放電反応熱は2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。
【0041】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第1実施形態によれば、さらに負極タブ15側よりも正極タブ16側の方でセパレータ12(電解質層)を移動するLiイオン(イオン)が移動しにくくするので、正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりLiイオンが移動しにくくなって、正極タブ16側での充放電反応(電気化学的な反応)が抑制される結果、発熱の程度が正極タブ16側と負極タブ15側とで異なっていても、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0042】
第1実施形態によれば、イオンの移動のし易さはイオン伝導率であり、このイオン伝導率を発電要素3の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど低くするので、各強電タブ15、16側での充放電反応熱(電気化学的な反応熱)を各強電タブ15、16より離れた側より相対的に小さくすることできる。
【0043】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第1実施形態によれば、イオン伝導率をさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を低くするので、発電要素2の面内方向に温度勾配を有する範囲が相対的に広い正極タブ16側での発熱を、面内方向に温度勾配を有する範囲が相対的に狭い負極タブ15側での発熱と同等に抑えることができる。
【0044】
第1実施形態によれば、セパレータ17の空孔率を発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16(タブ)に近いほど小さくするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0045】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第1実施形態によれば、セパレータ12の空孔率をさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を小さくするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0046】
(第2実施形態)
図7は第2実施形態の単電池層13の断面図で、第1実施形態の図5と置き換わるものである。図5と同一部分には同一の番号を付している。
【0047】
図7に示したように、第2実施形態は、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、セパレータ12の厚み(図7で上下方向の厚み)を強電タブ15、16に近いほど厚くするものである。セパレータ12の厚みを発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど厚くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0048】
セパレータ12の厚みが相対的に厚い強電タブ15、16側では、Liイオンがセパレータ12を移動する距離が、セパレータ12の厚みが相対的に薄い強電タブ15、16と反対側より長くなる。これによって、セパレータ12の厚みが相対的に厚い強電タブ15、16側でのLiイオンの移動量が、セパレータ12の厚みが相対的に薄い強電タブ15、16と反対側より少なくなり、面内方向の充放電反応熱(電気化学的な反応熱)が相対的に小さくなる。
【0049】
また、正極タブ16のある領域と、負極タブ15のある領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、図3においてセパレータ12を正極タブ16のある右側領域12aと、負極タブ15のある左側領域12bとにほぼ二等分し、二等分した各領域12a、12bでのセパレータ12の厚みを次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、図8のように正極タブ16のある領域12aでのセパレータ12の厚みを、負極タブ15のある領域12bでのセパレータ12の厚みより厚くする。ここで、図8はセパレータ12のみの概略斜視図である。
【0050】
第2実施形態によれば、セパレータ12の厚みを発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16側に近いほど厚くするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0051】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第2実施形態によれば、セパレータ12の厚みをさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を厚くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0052】
(第3実施形態)
図9は第3実施形態の単電池層13の断面図で、第1実施形態の図5と置き換わるものである。図5と同一部分には同一の番号を付している。
【0053】
図9に示したように、第3実施形態は、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、電極活物質層6、10(電極)の厚み(図9で上下方向の厚み)を強電タブ15、16に近いほど厚くするものである。電極活物質層6、10の厚みを発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど厚くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0054】
電極活物質6、10の厚みが相対的に厚い強電タブ15、16側では、Liイオンの移動距離が、電極活物質6、10の厚みが相対的に薄い強電タブ15、16と反対側より長くなる。これによって、電極活物質6、10の厚みが相対的に厚い強電タブ側でのLiイオンの移動量(図9の太い矢印参照)が、電極活物質6、10の厚みが相対的に薄い強電タブと反対側でのLiイオンの移動量(図9の細い矢印参照)より少なくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0055】
また、正極タブ16のある領域と、負極タブ15のある領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、各電極活物質6、10を図3において正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とにほぼ二等分し、二等分した各領域での電極活物質6、10の厚みを次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、図10のように正極タブ16のある領域10aでの正極活物質10の厚みを、負極タブ15のある領域10bでの正極活物質10の厚みより厚くする。ここで、図10は正極集電体9の上部に配置される正極活物質層10の概略斜視図である。図示しないが、正極集電体9の下部に配置される正極活物質層10、負極活物質層6についても同様に構成する。
【0056】
なお、第3実施形態では、2つの電極活物質層6、10とも強電タブ15、16に近いほど厚くしてあるが、2つの電極活物質層6、10の少なくとも一方の厚みを発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど厚くすればかまわない。
【0057】
第3実施形態によれば、2つの電極活物質層6、10(電極)の少なくとも一方の厚みを発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど厚くするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0058】
発熱は正極タブ15側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第3実施形態によれば、2つの電極活物質層6、10(電極)の少なくとも一方の厚みをさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を厚くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0059】
(第4実施形態)
図11は第4実施形態の単電池層13の断面図で、第1実施形態の図5と置き換わるものである。図5と同一部分には同一の番号を付している。
【0060】
図11に示したように、第4実施形態は、Liイオンの拡散を遮蔽するイオンブロック層21を電極活物質層6、10の表面に設けると共に、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、イオンブロック層21の空孔率を強電タブ15、16に近いほど小さくするものである。イオンブロック層21の空孔率を発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど小さくするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0061】
イオンブロック層21はセラミックパウダーを電極表面に吹き付けることで形成することができる。セラミックパウダーを厚く吹き付ければイオンブロック層の空孔率が小さくなり、この反対にセラミックパウダーを薄く吹き付ければイオンブロック層の空孔率が大きくなる。従って、イオンブロック層21の空孔率を各強電タブ15、16に近いほど小さくするには、各強電タブ15、16から離れるほどセラミックパウダーの吹きつけ量を多くしてやればよい。
【0062】
イオンブロック層の空孔率が相対的に小さい強電タブ15、16側では、Liイオンが、イオンブロック層の空孔率が相対的に大きい強電タブ15、16と反対側より移動しにくくなる。これによって、イオンブロック層の空孔率が相対的に小さい強電タブ15、16側でのLiイオンの移動量(図11の太い矢印参照)が、イオンブロック層の空孔率が相対的に大きい強電タブ15、16と反対側でのLiイオンの移動量(図11の細い矢印参照)より小さくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0063】
また、正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、イオンブロック層21を図3において正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とにほぼ二等分し、二等分した各領域でのイオンブロック層21の空孔率を次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、図11のように正極タブ16のある領域でのイオンブロック層の空孔率を、負極タブ15のある領域でのイオンブロック層の空孔率より小さくする。
【0064】
第4実施形態によれば、イオンブロック層21の空孔率を発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0065】
発熱は正極タブ15側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第4実施形態によれば、イオンブロック層21の空孔率をさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を小さくするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0066】
(第5実施形態)
図12は第5実施形態の単電池層13の断面図で、第4実施形態の図11と置き換わるものである。図11と同一部分には同一の番号を付している。
【0067】
図12に示したように、第5実施形態は、Liイオンの拡散を遮蔽するイオンブロック層21を電極活物質層6、10の表面に設けると共に、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するためにイオンブロック層21の厚みを強電タブ15、16に近いほど厚くするものである。イオンブロック層21の厚みを発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど厚くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0068】
イオンブロック層21の厚みが相対的に厚い強電タブ15、16側では、Liイオンがイオンブロック層21を移動する距離が、イオンブロック層21の厚みが相対的に薄い強電タブ15、16と反対側より長くなる。これによって、イオンブロック層21の厚みが相対的に厚い強電タブ側でのLiイオンの移動量(図12の太い矢印参照)が、イオンブロック層21の厚みが相対的に薄い強電タブと反対側でのLiイオンの移動量(図12の細い矢印参照)より少なくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0069】
また、正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、イオンブロック層21を図3において正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とにほぼ二等分し、二等分した各領域でのイオンブロック層21の厚みを次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、図13のように正極タブ16のある領域でのイオンブロック層の厚みを、負極タブ15のある領域でのイオンブロック層の厚みより厚くする。ここで、図13は正極活物質層10の上部に配置されるイオンブロック層21の概略斜視図である。図示しないが、他の3つのイオンブロック層21についても同様に構成する。
【0070】
第5実施形態によれば、イオンブロック層21の厚みを発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど厚くするので、2つの強電各タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0071】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第5実施形態によれば、イオンブロック層21の厚みをさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を厚くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0072】
(第6実施形態)
図14は第6実施形態の単電池層13の断面図で、第1実施形態の図5と置き換わるものである。図5と同一部分には同一の番号を付している。
【0073】
第6実施形態では、電解質層の構成が第1実施形態と異なる。すなわち、第6実施形態では、電解質層を半固体電解質層(または固体電解質層)25で構成している。ここで、「半固体電解質」とはゲル状の電解質のことをいう。また、「固体電解質」とはゾル状の電解質のことをいう。半固体電解質層や固体電解質層であれば電極4、8同士の直接的接触を防止できるため、セパレータは不要である。
【0074】
図14に示したように、第6実施形態は、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、半固体電解質層(または固体電解質層)25の厚みを強電タブ15、16に近いほど厚くするものである。半固体電解質層25の厚みを発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど厚くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0075】
半固体電解質層25の厚みが相対的に厚い強電タブ15、16側では、Liイオンが半固体電解質25を移動する距離が、半固体電解質層25の厚みが相対的に薄い強電タブ15、16と反対側より長くなる。これによって、半固体電解質層25の厚みが相対的に厚い強電タブ側でのLiイオンの移動量(図14の太い矢印参照)が、半固体電解質層25の厚みが相対的に薄い強電タブと反対側でのLiイオンの移動量(図14の細い矢印参照)より少なくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0076】
また、正極タブ16のある領域と、負極タブ15のある領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、半固体電解質層25を図3においてセパレータ12を正極タブ16のある右側領域25aと、負極タブ15のある左側領域25bとにほぼ二等分し、二等分した各領域25a、25bでの半固体電解質層25の厚みを次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、図15のように正極タブ16のある領域での半固体電解質層25の厚みを、負極タブ15のある領域での半固体電解質層25の厚みより厚くする。ここで、図15は半固体電解質層25のみの概略斜視図である。
【0077】
第6実施形態によれば、半固体電解質25の厚みを発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど厚くするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素の面内方向で均一化することができる。
【0078】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第6実施形態によれば、半固体電解質25の厚みをさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を厚くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0079】
(第7実施形態)
図16は第7実施形態の単電池層13の断面図で、第6実施形態の図14と置き換わるものである。図14と同一部分には同一の番号を付している。
【0080】
図16に示したように、第7実施形態は、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、半固体電解質層(または固体電解質層)25の粘度を強電タブ15、16に近いほど高くするものである。半固体電解質層25の粘度を発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど高くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0081】
半固体電解質に添加する増粘剤を多くすれば半固体電解質の粘度が高くなり、この反対に半固体電解質に添加する増粘剤を少なくすれば半固体電解質の粘度が低くなる。従って、半固体電解質層25の粘度を強電タブ15、16に近いほど高くするには、半固体電解質に加える増粘剤を強電タブ15、16に近いほど多くすればよい。
【0082】
半固体電解質層25の粘度が相対的に高い強電タブ15、16側では、Liイオンが半固体電解質25を移動する速度が、半固体電解質層25の粘度が相対的に低い強電タブと反対側より遅くなる。これによって、半固体電解質層25の粘度が相対的に高い強電タブ側でのLiイオンの移動量(図16の太い矢印参照)が、半固体電解質層25の粘度が相対的に低い強電タブ15、16と反対側でのLiイオンの移動量(図16の細い矢印参照)より少なくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0083】
また、正極タブ16のある領域と、負極タブ15のある領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、図3において半固体電解質層25を正極タブ16のある右側領域25aと、負極タブ15のある左側領域25とにほぼ二等分し、二等分した各領域25a、25bでの半固体電解質層25の粘度を次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、正極タブ16のある領域25aでの半固体電解質層25の粘度を、負極タブ15のある領域25bでの半固体電解質層25の粘度より高くする。
【0084】
第7実施形態によれば、半固体電解質25の粘度を発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど高くするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0085】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第7実施形態によれば、半固体電解質25の粘度をさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を高くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0086】
(第8実施形態)
図17は第8実施形態の単電池層13の断面図で、第6実施形態の図14と置き換わるものである。図14と同一部分には同一の番号を付している。
【0087】
図17に示したように、第8実施形態は、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、半固体電解質層(または固体電解質層)25の誘電率を強電タブ15、16に近いほど低くするものである。半固体電解質層25の誘電率を発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど低くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0088】
ここで、「誘電率」とは、電場に置かれた誘電体の分極のしやすさをいう。半固体電解質(ゲル電解質)はLiイオン伝導性を有するマトリックスポリマーに電解質塩(例えばリチウム塩であるLiPF)を注入した構成を有している。リチウム塩であるLiPF6はLi+とPF6-とに解離する。Li+とPF6-の解離度を変えることによって誘電率を変えることができる。そこで、半固体電解質層25の誘電率を強電タブ15、16に近いほど低くするには、強電タブ15、16に近いほどLi+とPF6-の解離度が小さくなるようにすればよい。ここではリチウム塩であるLiPF6を挙げたが、これに限られるものでない。
【0089】
半固体電解質層25の誘電率が相対的に低い強電タブ15、16側では、Li+とPF6-の解離度が、半固体電解質層25の誘電率が相対的に高い強電タブ15、16と反対側より小さくなる。これによって、半固体電解質層25の誘電率が相対的に低い強電タブ15、16側でのLiイオンの移動量(図17の太い矢印参照)が、半固体電解質層25の誘電率が相対的に低い強電タブ15、16と反対側でのLiイオンの移動量(図17の細い矢印参照)より少なくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0090】
また、正極タブ16のある領域と、負極タブ15のある領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、図3において半固体電解質層25を正極タブ16のある右側領域25aと、負極タブ15のある左側領域25とにほぼ二等分し、二等分した各領域25a、25bでの半固体電解質層25の誘電率を次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、正極タブ16のある領域25aでの半固体電解質層25の誘電率を、負極タブ15のある領域25bでの半固体電解質層25の誘電率より低くする。
【0091】
第8実施形態によれば、半固体電解質25の誘電率を発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど低くするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0092】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第8実施形態によれば、半固体電解質25の誘電率をさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を低くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0093】
(第9実施形態)
図18は第9実施形態の単電池層13の断面図で、第6実施形態の図14と置き換わるものである。図10と同一部分には同一の番号を付している。
【0094】
図18に示したように、第9実施形態は、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、半固体電解質層(または固体電解質層)25の電解質塩濃度を強電タブ15、16に近いほど低くするものである。半固体電解質層25の電解質塩濃度を発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど低くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0095】
ここで、「電解質塩」とは、電解質に用いる塩のことである。ゲル電解質は前述したように、Liイオン伝導性を有するマトリックスポリマーに電解質塩(例えばリチウム塩であるLiPF)を注入した構成を有している。従って、「電解質塩濃度」とは、マトリックスポリマー量に対する電解質塩量の割合のことである。あるいはマトリックスポリマー量と電解質塩量の合計に対する電解質塩量の割合のことである。再びリチウム塩であるLiPF6を挙げると、マトリックスポリマー量に対するLiPF6の量を少なくすることで、電解質塩濃度を低くすることができる。電解質塩濃度を低くするほど、Liイオンの生成量が少なくなる。
【0096】
半固体電解質層25の電解質塩濃度が相対的に低い強電タブ15、16側では、Liイオンの生成量が、半固体電解質層25の電解質塩濃度が相対的に高い強電タブ15、16と反対側より少なくなる。これによって、半固体電解質層25の電解質塩濃度が相対的に低い強電タブ側でのLiイオンの移動量(図18の太い矢印参照)が、半固体電解質層25の電解質塩濃度が相対的に高い強電タブ15、16と反対側でのLiイオンの移動量(図18の細い矢印参照)より少なくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0097】
また、正極タブ16のある領域と、負極タブ15のある領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、図3において半固体電解質層25を正極タブ16のある右側領域25aと、負極タブ15のある左側領域25とにほぼ二等分し、二等分した各領域25a、25bでの半固体電解質層25の電解質塩濃度を次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、正極タブ16のある領域25aでの半固体電解質層25の電解質塩濃度を、負極タブ15のある領域25bでの半固体電解質層25の電解質塩濃度より低くする。
【0098】
第9実施形態によれば、半固体電解質25の電解質塩濃度を発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど低くするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素の面内方向で均一化することができる。
【0099】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第9実施形態によれば、半固体電解質25の電解質塩濃度をさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を低くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0100】
実施形態では、電池1が図6に示した面内方向の温度勾配を有することを前提として、図8、図10、図13、図15のようにセパレータ12、正極活物質層10、イオンブロック層21、半固体電解質層25を構成したが、これに限られるものでない。例えば、電池1が図19に示した面内方向の温度勾配を有することがある(第10実施形態)。すなわち、図19では強電タブ15、16の周辺での温度がタブ15、16間で相違し、正極タブ16の周辺での温度の方が負極タブ15の周辺での温度より高くなっている。図19に示した面内方向の温度勾配を有する場合には、これに対応して図8、図10、図13、図15の形状を変更する必要がある。例として図8のセパレータ12の形状を変更した場合を図20に示す。すなわち、図20では、セパレータ12のうち正極タブ16のある領域12aのほうが、負極タブ15のある領域12bよりもタブの周辺が厚くなっている。これは、正極タブ16の周辺でのセパレータのイオン伝導度を負極タブの周辺でのセパレータのイオン伝導率より低くすることにより、正極タブ26側での充放電反応熱を負極タブ15側での充放電反応熱より小さくするためである。
【0101】
実施形態では、2つの強電タブ15、16を発電要素2の同一の辺に配置している場合で説明したが、2つの強電タブを発電要素2の異なる辺に配置する場合においても本発明の適用がある。
【0102】
実施形態では、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、電池に限定されるものでなく、電気二重層キャパシタのような電気化学デバイスにも本発明の適用がある。
【符号の説明】
【0103】
1 電池(電気化学デバイス)
2 発電要素
4 負極(電極)
5 負極集電体
6 負極活物質層
8 正極(電極)
9 正極集電体
10 正極活物質層
12 セパレータ(電解質層)
15 負極タブ(タブ)
16 正極タブ(タブ)
25 半固体電解質層(電解質層)
【技術分野】
【0001】
この発明はリチウムイオン二次電池などの電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
略扁平状の発電要素を電池外装体で被覆し、当該電池外装体の周縁部を熱融着により接合した電池を単位として積層するものがある(特許文献1参照)。このものでは、電池の中央部に熱伝導性を有する第1の粘着材を、電池の周縁部に接着強度のある第2の粘着材を塗布して2つの電池を貼り合わせることにより積層している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−272048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の電池では、発電要素への充電または放電の少なくとも一方を行わせるための2つのタブを発電要素の周縁部に備えている。本発明者を含むグループが実験したところでは、この2つのタブ付近への電流集中により2つの各タブ近傍の温度が各タブより離れた部位より上昇する傾向を有することを初めて見い出している。
【0005】
このように、発電要素の面内方向に不均一な温度勾配が生じることで、発電要素の面内方向に劣化進行度の差異が生まれる結果、電池全体の寿命、信頼性が低下するといった問題が生じる。
【0006】
しかしながら、各タブ付近への電流集中により各タブ近傍の温度が各タブより離れた部位より上昇する傾向を有する電池に対して、上記特許文献1の技術を適用しても、発電要素面内方向の不均一な温度勾配を解消することはできない。上記特許文献1は、全体として略扁平状の電池からの放熱は周縁部より中央部ほうが高いとみなしている技術に過ぎず、発電要素面内方向の不均一な実際の温度勾配に対応するものでないためである。
【0007】
そこで本発明は、各タブ付近への電流集中により各タブ近傍の温度が各タブより離れた部位より上昇する温度勾配を有する電池であっても、電気化学デバイスの寿命、信頼性の低下を抑制し得る電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気化学デバイスは、電極間のイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層と、この電解質層の両側に設けられる負極及び正極とを有し、電子とイオンが前記2つの電極間を移動して電気化学反応を行う扁平状の発電要素を備える電気化学デバイスを前提としている。そして、前記発電要素の面内方向の温度が均一となるように発電要素の面内方向での電気化学反応の活性度を異ならせる。
【発明の効果】
【0009】
発電要素の面内方向での電気化学反応の活性度を異ならせると、発電要素の面内方向での充放電反応熱が変化する。つまり、発電要素の面内方向での電気化学反応熱と面内方向のジュール発熱との合計が同一の温度なるように、発電要素の面内方向での電気化学反応の活性度を異ならせることで、発電要素の面内方向の温度を均一化することができる。発電要素の面内方向の温度を均一化することが可能となれば、電気化学デバイスの寿命、信頼性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態のリチウムイオン二次電池の概略斜視図である。
【図2】発電要素の分解斜視図である。
【図3】現状の電池の放電時のラミネートフィルムの表面温度勾配を示すモデル図である。
【図4】参考例の単電池層の断面図である。
【図5】第1実施形態の単電池層の断面図である。
【図6】面内方向の温度勾配の特性図である。
【図7】第2実施形態の単電池層の断面図である。
【図8】第2実施形態の他の例のセパレータの概略斜視図である。
【図9】第3実施形態の単電池層の断面図である。
【図10】第3実施形態の他の例の正極活物質層の概略斜視図である。
【図11】第4実施形態の単電池層の断面図である。
【図12】第5実施形態の単電池層の断面図である。
【図13】第5実施形態の他の例のイオンブロック層の概略斜視図である。
【図14】第6実施形態の単電池層の断面図である。
【図15】第6実施形態の他の例の固体電解質層の概略斜視図である。
【図16】第7実施形態の単電池層の断面図である。
【図17】第8実施形態の単電池層の断面図である。
【図18】第9実施形態の単電池層の断面図である。
【図19】第10実施形態の面内方向の温度勾配の特性図である。
【図20】第10実施形態のセパレータの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張している箇所があり、その箇所においては実際の比率と異なっている。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態のリチウムイオン二次電池1について先に概説する。図1はリチウムイオン二次電池1の概略斜視図、図2は発電要素2の分解斜視図である。
【0013】
図1に示すように、リチウムイオン二次電池1は、実際に充放電反応が進行する略四角扁平状の発電要素2が、電池外装材であるラミネートフィルム14の内部に封止された構造を有する。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートフィルムを電池外装材として用いて、その周辺部(周縁部)14a、14b、14c、14dを熱融着にて接合することにより、発電要素2を収納し密封した構成を有している。ここで高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、金属フィルムを高分子フィルム(樹脂フィルム)でサンドイッチした三層構造のものが一般的である。
【0014】
こうした積層型の電池1は、缶型電池と区分けするために「ラミネート型電池」といわれる。缶型電池は、堅い円筒状の金属製外枠の中に2つの各電極が巻き込んで収納されているものである。一方、ラミネート型電池とは、略四角扁平状の発電要素2の周辺部(周縁部)を熱融着にて接合することにより、発電要素を密封したものをいう。以下では、リチウムイオン二次電池1を、「ラミネート型電池」という。あるいは単に「電池」ともいう。
【0015】
図2に示したように、発電要素2は、負極4、セパレータ12、正極8をこの順に積層した構成を有している。ここで、負極4は四角薄板状の負極集電体5の両面に負極活物質層6、6を配置したものである。同様に正極8は四角薄板状の正極集電体9の両面に正極活物質層10、10を配置したものである。セパレータ12は主に多孔質の熱可塑性樹脂から形成されている。セパレータ12が電解液を保持することで、セパレータ12と一体に電解質層が形成されている。言い換えると、2つの電極間のLiイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層が、液体電解質と樹脂を含む微多孔膜のセパレータ12とで構成されている。
【0016】
これにより、隣接する負極4、セパレータ12(電解液を含む)及び正極8は、一つの単電池層13(単電池)を構成する。単電池層13では、電子とイオンが2つの電極間を移動して電池の充放電反応(電気化学反応)を行う。従って、本実施形態のラミネート型電池1は、単電池層13を積層することで、電気的に並列接続された構成を有するともいえる。また、単電池層13の外周には、隣接する負極集電体5と正極集電体9との間を絶縁するためのシール部(絶縁層)を設けてもよい。発電要素2の両最外層に位置する最外層負極集電体5には、いずれも片面のみ(図2で最上段の負極集電体5には下面のみ、最下段の負極集電体5には上面のみ)に負極活物質層6を配置している。なお、図2とは負極及び正極の配置を逆にすることで、発電要素2の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片側のみに正極活物質層を配置するようにしてもよい。
【0017】
負極集電体5及び正極集電体9には、各電極(負極及び正極)から出入りする電子を外部に取り出す負極タブ15及び正極タブ16の2つの強電タブを取り付け、ラミネートフィルム14の周縁部に挟まれるようにラミネートフィルム14の外部に導出させている。発電要素2は全体として四辺を有する四角扁平状に形成されているので、四辺のうちの一辺のみより2つの強電タブ15、16をまとめて外部に導出させている(図1参照)。強電タブ15、16には、必要に応じて正極端子リード(図示せず)及び負極端子リード(図示せず)を介して、各電極の負極集電体5及び正極集電体9に超音波溶接や抵抗溶接により取り付けてもよい。なお、図2において各負極タブ15同士を、また各正極タブ16同士を電気的に接続することはいうまでもない。
【0018】
さて、電池1の面内方向の温度勾配を調査するため、本発明者を含むグループが電池1を製作し、充放電によるラミネートフィルム表面温度を計測したところ、図3に示す結果を得た。図3は本発明者を含むグループが初めて見いだした放電時のラミネートフィルムの表面温度勾配をモデルで示したものである。図3において色が濃い部分ほど発熱によるラミネートフィルム表面温度が高いことを示している。図3によれば、2つの各強電タブ15、16がある付近で最も発熱温度が高く、2つの各強電タブ15、16から離れるほど(図3では下方に向かうほど)発熱温度が低くなっている。さらに、図3において正極タブ16側の右半分の領域のほうが負極タブ15側の左半分の領域よりも温度上昇している部分が広がっている。
【0019】
この現象を解析したところは次の通りである。すなわち、電池1には発熱を伴う。この発熱は大別すると、充放電反応熱(電気化学的な反応熱)、分極発熱、電子が部材内を拡散する際に生じるジュール発熱に分かれる。電子を入出するための2つの強電タブ15、16を備える電池1においては、その構造上、各強電タブ15、16の付近に電流(電子)が集中し、局所的にジュール発熱による温度上昇が発生すると考えられる。
【0020】
このように発電要素2の面内で2つの各強電タブ15、16に近いほど温度上昇する、つまり発電要素2の面内方向に不均一な温度勾配(温度分布)が生じたのでは、相対的に高温の部分である各強電タブ15、16の付近から先に劣化してしまうこととなる。発電要素2の面内方向に劣化進行度の差異が生まれる結果、電池1全体の寿命、信頼性が低下するといった問題が生じるのである。ここで、「発電要素の面」とは 発電要素を1枚の平らな紙とみなしたとき、この平らな紙の上下の面のことをいう。また、「発電要素の面内方向」とは、発電要素を1枚の平らな紙とみなしたとき、この平らな紙の面に沿う任意の方向をいう。なお、「発電要素の面内方向」については、単に「面内方向」でも用いる。
【0021】
さらに説明すると、正極活物質には、Li・Mn系複合酸化物、Li・Ni系複合酸化物、Li・Co系複合酸化物などがあり、最近ではこれら三種の複合酸化物を混合させた形態で使用する正極活物質を本発明者を含むグループが鋭意研究している。これら三種の複合酸化物を混合させた構成の正極活物質を仮に「三元系NMC」というとすると、特にこの三元系NMCにおいて、発電要素2の面内方向に不均一な温度勾配(分布)が大きく生じることを見い出している。
【0022】
そこで本発明では、ジュール発熱以外の発熱要因である充放電反応熱(電気化学的な反応熱)が、ジュール発熱と反対の温度勾配を発電要素2の面内方向に有するようにする。つまり、発電要素2の面内方向の温度が均一となるように発電要素2の面内方向での充放電反応熱(電気化学的な反応熱)を異ならせる。ここで、発電要素2の面内方向での充放電反応熱を異ならせるには、発電要素2の面内方向での充放電反応の活性度を異ならせ、各強電タブ15、16に近いほど充放電反応熱が小さくなる温度勾配を有するように発電要素2を構成することである。これによって、ジュール発熱による面内方向での温度勾配を相殺することができ、結果的に発電要素2の面内方向の温度を均一化することが可能となる。
【0023】
充放電反応熱は、充放電反応の活性度としてのイオン伝導率を用いて制御できる。ここでの「イオン」とは、実施形態ではLiイオンのことである。Liイオンは電解質層内を正極から負極へとあるいはその逆へと移動して充放電反応を行うが、「イオン伝導率」とはこのLiイオンの移動のし易さを表す指標である。一方、「充放電反応の活性度」とは、充放電反応の生じ易さのことである。従って、電解質のイオン伝導率が低いとLiイオンが相対的に移動しにくくなって充放電反応の活性度は低下し、この逆に電解質のイオン伝導率が高いとLiイオンが相対的に移動し易くなって充放電反応の活性度は大きくなる。また、イオン伝導率は、電気伝導のしやさすさを表す電気伝導率とは比例の関係にある。
【0024】
電解質のイオン伝導率は、電解質が液体電解質である場合には、セパレータ12の空孔率、セパレータ12の厚み、電極の厚みを変えることで、発電要素2の面内方向に変更し得る。また、電極表面にイオンブロック層21を設ける場合に、イオンブロック層21の空孔率、イオンブロック層21の厚みを変えることで、発電要素2の面内方向にイオン伝導率を変更し得る。また、電解質が半固体電解質や固体電解質である場合には、半固体電解質や固体電解質の厚み、粘度、誘電率、電解質塩濃度を変えることで、発電要素2の面内方向にイオン伝導率を変更し得る。
【0025】
以下、本発明の第1実施形態ではセパレータ12の空孔率を、第2実施形態ではセパレータ12の厚みを、第3実施形態では電極の厚みを変化させることによって電解質のイオン伝導率を変更する場合を説明する。第4実施形態ではイオンブロック層21の空孔率を、第5実施形態ではイオンブロック層21の厚みを変化させることによって電解質のイオン伝導率を変更する場合を説明する。第6実施形態では半固体電解質層(あるいは固体電解質層)25の厚みを、第7、第8、第9実施形態ではそれぞれ半固体電解質層(あるいは固体電解質層)25の粘度、誘電率、電解質塩濃度を変化させることによって電解質のイオン伝導率を変更する場合を説明する。
【0026】
まず、図4、図5は発電要素2から1つの単電池層13のみを採り出して示す単電池層13の断面図で、このうち図4は参考例の単電池層13、図5は第1実施形態の単電池層13である。
【0027】
ただし、2つの電極4、8からセパレータ12を上下方向に少し離して示している。また、図4、図5では図2と相違して、強電タブ15、16は各集電体5、9の延長上にあるものとして記載している。以下、図7、図9、図11、図12、図14、図16、図17、図18において同様である。
【0028】
図4、図5においてセパレータ12は多孔質の樹脂や樹脂繊維を絡めた不織布などの樹脂を含む微多孔膜で構成されている。膜内の多数の孔に電解液が満たされる。従って、電解液中のLiイオンは膜内の多数の孔を介して負極4と正極8との間を移動することが可能である。このため、電池1の放電時には電解液中のLiイオンが図4、図5のように負極4から正極8へと移動する。
【0029】
ここで、図4に示す参考例では、セパレータ12の空孔率はセパレータ12の面内方向(図4では左右方向)に均一である。一方、図5に示す第1実施形態では、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するためにセパレータ12の空孔率をセパレータ12(発電要素2)の面内方向(図5では左右方向)において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなるようにしている。セパレータ12の空孔率を発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど小さくするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0030】
第1実施形態のように、セパレータ12の空孔率をセパレータ12の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど小さくなるようにしたとき、図5に示したように各強電タブ15、16側でのLiイオンのセパレータ移動量(図5の太い矢印参照)が、強電タブ15、16と反対側でのLiイオンのセパレータ移動量(図5の細い矢印参照)より小さくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。一方、参考例では、セパレータ12の空孔率はセパレータ12の面内方向に均一であり、充放電反応は面内方向で均一に生じるため、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができない。
【0031】
次に、セパレータ12の空孔率を調整する方法を3つ説明する。
【0032】
〈1〉セパレータの成形方法で調整する方法
セパレータの孔は、通常、溶液中の溶媒が蒸発した後に形成されるので、セパレータを成形する際に、溶液の濃度が面内の一方向に変化するように(徐々に溶液の濃度が濃くなるか徐々に溶液の濃度が薄くなるかのいずれか)濃度の勾配を持たせておく。すると、溶液の濃度が相対的に濃い側には溶媒が相対的に少ないために孔の数が相対的に少なく、この反対に溶液の濃度が相対的に薄い側には溶媒が相対的に多いために孔の数が相対的に多くなる。これによって、孔の数が相対的に少ない各強電タブ15、16側ではLiイオンの移動量が、孔の数が相対的に多い強電タブ15、16と反対側より少なくなり、面内方向の充放電反応熱が相対的に小さくなる。
【0033】
〈2〉セパレータの延伸方法で調整する方法
セパレータは成形する際に延伸すれば延伸する前より孔の径が大きくなる。従って、セパレータを成形する際に、延伸割合が面内の一方向に変化するように(徐々に延伸割合を大きくするか徐々に延伸割合を小さくするかのいずれか)延伸割合の勾配を持たせる。すると、単位体積当たりの孔の数は同じでも、延伸割合が相対的に小さい側では孔の径が相対的に小さく、この反対に延伸割合が相対的に大きい側では孔の径が相対的に大きくなる。これによって、孔の径が相対的に小さい各強電タブ15、16側ではLiイオン移動量が、孔の径が相対的に大きい強電タブ15、16と反対側より少なくなり、面内方向の充放電反応熱が相対的に小さくなる。
【0034】
〈3〉まず空孔率の均一なセパレータを成形した後にスプレー装置などで不活性な物質を空孔内に固着させる方法
スプレー装置で不活性な物質をセパレータ内にスプレーすれば、空孔の内壁面に不活性な物質が付着、固化して孔の径が小さくなる。従って、空孔率の均一なセパレータを成形した後に、スプレー装置からのスプレー量が面内の一方向に変化するように(徐々にスプレー量を多くするか徐々にスプレー量を少なくするかのいずれか)スプレー量の分布を持たせる。すると、スプレー量が相対的に多い側では孔の径が相対的に小さく、この反対にスプレー量が相対的に少ない側では孔の径が相対的に大きくなる。これによって、孔の径が相対的に小さい強電タブ15、16側ではLiイオンの移動量が、孔の径が相対的に大きい強電タブ15、16と反対側より少なくなり、面内方向の充放電反応熱が相対的に小さくなる。
【0035】
また、図3において発電要素2を縦にほぼ二等分し、左右の各領域について上下方向(面内方向)の温度勾配を重ねてみると、図6に示したように正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とで面内方向の温度勾配が異なっている。つまり、発電要素2の面内方向(図6で左右方向)に温度勾配を有する範囲について、正極タブ16側のほうが負極タブ15側より広くなっている。従って、セパレータ12を図3において正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とにほぼ二等分し、二等分した各領域でのセパレータ12の空孔率を、この面内方向の2種類の温度勾配に合わせて設定することが好ましい。例えば、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、正極タブ16のある右側領域でのセパレータ12の空孔率を、負極タブ15のある左側領域でのセパレータ12の空孔率より小さくする(イオン伝導率を低くする)のである。
【0036】
ここで、第1実施形態の作用効果を説明する。
【0037】
第1実施形態によれば、電極間のLiイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層(セパレータ12及び電解液)と、この電解質層の両側に設けられる負極4及び正極8とを有し、電子とイオンが2つの電極4、8間を移動して充放電反応(電気化学反応)を行う扁平状の発電要素2を備える電池1(電気化学デバイス)において、発電要素2の面内方向温度が均一となるように発電要素2の面内方向での充放電反応(電気化学反応)の活性度を異ならせる。
【0038】
発電要素2の面内方向での充放電反応の活性度を異ならせると、発電要素2の面内方向での充放電反応熱が変化する。つまり、発電要素2の面内方向での充放電反応熱(電気化学的な反応熱)と面内方向のジュール発熱との合計が同一の温度なるように、発電要素2の面内方向での充放電反応(電気化学反応)の活性度を異ならせることで、発電要素2の面内方向の温度を均一化することができる。発電要素2の面内方向の温度を均一化することが可能となれば、電池1(電気化学デバイス)の寿命、信頼性の低下を抑制することができる。
【0039】
第1実施形態によれば、電極間のLiイオン(イオン)の移動媒体としての機能を有する電解質層(セパレータ12及び電解液)と、この電解質層の両側に設けられる負極4及び正極8とを有し、電子とLiイオンが2つの電極4、8間を移動して充放電反応(電気化学反応)を行う扁平状の発電要素2と、負極4及び正極8から出入りする電子を外部に取り出す負極タブ15及び正極タブ16とを備える電池1(電気化学デバイス)において、発電要素2の面内方向温度が均一となるように発電要素2の面内方向での充放電反応熱(電気化学的な反応熱)を異ならせるので、発電要素2の面内方向の温度を均一化することが可能となり、電池1(電気化学デバイス)の寿命、信頼性の低下を抑制することができる。
【0040】
第1実施形態によれば、電解質層を移動するLiイオンが、発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど移動しにくくするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほどLiイオンが移動しにくくなって、充放電反応(電気化学的な反応)が抑制され、充放電反応熱は2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。
【0041】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第1実施形態によれば、さらに負極タブ15側よりも正極タブ16側の方でセパレータ12(電解質層)を移動するLiイオン(イオン)が移動しにくくするので、正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりLiイオンが移動しにくくなって、正極タブ16側での充放電反応(電気化学的な反応)が抑制される結果、発熱の程度が正極タブ16側と負極タブ15側とで異なっていても、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0042】
第1実施形態によれば、イオンの移動のし易さはイオン伝導率であり、このイオン伝導率を発電要素3の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど低くするので、各強電タブ15、16側での充放電反応熱(電気化学的な反応熱)を各強電タブ15、16より離れた側より相対的に小さくすることできる。
【0043】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第1実施形態によれば、イオン伝導率をさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を低くするので、発電要素2の面内方向に温度勾配を有する範囲が相対的に広い正極タブ16側での発熱を、面内方向に温度勾配を有する範囲が相対的に狭い負極タブ15側での発熱と同等に抑えることができる。
【0044】
第1実施形態によれば、セパレータ17の空孔率を発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16(タブ)に近いほど小さくするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0045】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第1実施形態によれば、セパレータ12の空孔率をさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を小さくするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0046】
(第2実施形態)
図7は第2実施形態の単電池層13の断面図で、第1実施形態の図5と置き換わるものである。図5と同一部分には同一の番号を付している。
【0047】
図7に示したように、第2実施形態は、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、セパレータ12の厚み(図7で上下方向の厚み)を強電タブ15、16に近いほど厚くするものである。セパレータ12の厚みを発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど厚くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0048】
セパレータ12の厚みが相対的に厚い強電タブ15、16側では、Liイオンがセパレータ12を移動する距離が、セパレータ12の厚みが相対的に薄い強電タブ15、16と反対側より長くなる。これによって、セパレータ12の厚みが相対的に厚い強電タブ15、16側でのLiイオンの移動量が、セパレータ12の厚みが相対的に薄い強電タブ15、16と反対側より少なくなり、面内方向の充放電反応熱(電気化学的な反応熱)が相対的に小さくなる。
【0049】
また、正極タブ16のある領域と、負極タブ15のある領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、図3においてセパレータ12を正極タブ16のある右側領域12aと、負極タブ15のある左側領域12bとにほぼ二等分し、二等分した各領域12a、12bでのセパレータ12の厚みを次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、図8のように正極タブ16のある領域12aでのセパレータ12の厚みを、負極タブ15のある領域12bでのセパレータ12の厚みより厚くする。ここで、図8はセパレータ12のみの概略斜視図である。
【0050】
第2実施形態によれば、セパレータ12の厚みを発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16側に近いほど厚くするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0051】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第2実施形態によれば、セパレータ12の厚みをさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を厚くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0052】
(第3実施形態)
図9は第3実施形態の単電池層13の断面図で、第1実施形態の図5と置き換わるものである。図5と同一部分には同一の番号を付している。
【0053】
図9に示したように、第3実施形態は、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、電極活物質層6、10(電極)の厚み(図9で上下方向の厚み)を強電タブ15、16に近いほど厚くするものである。電極活物質層6、10の厚みを発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど厚くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0054】
電極活物質6、10の厚みが相対的に厚い強電タブ15、16側では、Liイオンの移動距離が、電極活物質6、10の厚みが相対的に薄い強電タブ15、16と反対側より長くなる。これによって、電極活物質6、10の厚みが相対的に厚い強電タブ側でのLiイオンの移動量(図9の太い矢印参照)が、電極活物質6、10の厚みが相対的に薄い強電タブと反対側でのLiイオンの移動量(図9の細い矢印参照)より少なくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0055】
また、正極タブ16のある領域と、負極タブ15のある領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、各電極活物質6、10を図3において正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とにほぼ二等分し、二等分した各領域での電極活物質6、10の厚みを次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、図10のように正極タブ16のある領域10aでの正極活物質10の厚みを、負極タブ15のある領域10bでの正極活物質10の厚みより厚くする。ここで、図10は正極集電体9の上部に配置される正極活物質層10の概略斜視図である。図示しないが、正極集電体9の下部に配置される正極活物質層10、負極活物質層6についても同様に構成する。
【0056】
なお、第3実施形態では、2つの電極活物質層6、10とも強電タブ15、16に近いほど厚くしてあるが、2つの電極活物質層6、10の少なくとも一方の厚みを発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど厚くすればかまわない。
【0057】
第3実施形態によれば、2つの電極活物質層6、10(電極)の少なくとも一方の厚みを発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど厚くするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0058】
発熱は正極タブ15側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第3実施形態によれば、2つの電極活物質層6、10(電極)の少なくとも一方の厚みをさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を厚くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0059】
(第4実施形態)
図11は第4実施形態の単電池層13の断面図で、第1実施形態の図5と置き換わるものである。図5と同一部分には同一の番号を付している。
【0060】
図11に示したように、第4実施形態は、Liイオンの拡散を遮蔽するイオンブロック層21を電極活物質層6、10の表面に設けると共に、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、イオンブロック層21の空孔率を強電タブ15、16に近いほど小さくするものである。イオンブロック層21の空孔率を発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど小さくするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0061】
イオンブロック層21はセラミックパウダーを電極表面に吹き付けることで形成することができる。セラミックパウダーを厚く吹き付ければイオンブロック層の空孔率が小さくなり、この反対にセラミックパウダーを薄く吹き付ければイオンブロック層の空孔率が大きくなる。従って、イオンブロック層21の空孔率を各強電タブ15、16に近いほど小さくするには、各強電タブ15、16から離れるほどセラミックパウダーの吹きつけ量を多くしてやればよい。
【0062】
イオンブロック層の空孔率が相対的に小さい強電タブ15、16側では、Liイオンが、イオンブロック層の空孔率が相対的に大きい強電タブ15、16と反対側より移動しにくくなる。これによって、イオンブロック層の空孔率が相対的に小さい強電タブ15、16側でのLiイオンの移動量(図11の太い矢印参照)が、イオンブロック層の空孔率が相対的に大きい強電タブ15、16と反対側でのLiイオンの移動量(図11の細い矢印参照)より小さくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0063】
また、正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、イオンブロック層21を図3において正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とにほぼ二等分し、二等分した各領域でのイオンブロック層21の空孔率を次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、図11のように正極タブ16のある領域でのイオンブロック層の空孔率を、負極タブ15のある領域でのイオンブロック層の空孔率より小さくする。
【0064】
第4実施形態によれば、イオンブロック層21の空孔率を発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0065】
発熱は正極タブ15側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第4実施形態によれば、イオンブロック層21の空孔率をさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を小さくするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0066】
(第5実施形態)
図12は第5実施形態の単電池層13の断面図で、第4実施形態の図11と置き換わるものである。図11と同一部分には同一の番号を付している。
【0067】
図12に示したように、第5実施形態は、Liイオンの拡散を遮蔽するイオンブロック層21を電極活物質層6、10の表面に設けると共に、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するためにイオンブロック層21の厚みを強電タブ15、16に近いほど厚くするものである。イオンブロック層21の厚みを発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど厚くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0068】
イオンブロック層21の厚みが相対的に厚い強電タブ15、16側では、Liイオンがイオンブロック層21を移動する距離が、イオンブロック層21の厚みが相対的に薄い強電タブ15、16と反対側より長くなる。これによって、イオンブロック層21の厚みが相対的に厚い強電タブ側でのLiイオンの移動量(図12の太い矢印参照)が、イオンブロック層21の厚みが相対的に薄い強電タブと反対側でのLiイオンの移動量(図12の細い矢印参照)より少なくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0069】
また、正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、イオンブロック層21を図3において正極タブ16のある右側領域と、負極タブ15のある左側領域とにほぼ二等分し、二等分した各領域でのイオンブロック層21の厚みを次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、図13のように正極タブ16のある領域でのイオンブロック層の厚みを、負極タブ15のある領域でのイオンブロック層の厚みより厚くする。ここで、図13は正極活物質層10の上部に配置されるイオンブロック層21の概略斜視図である。図示しないが、他の3つのイオンブロック層21についても同様に構成する。
【0070】
第5実施形態によれば、イオンブロック層21の厚みを発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど厚くするので、2つの強電各タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0071】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第5実施形態によれば、イオンブロック層21の厚みをさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を厚くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0072】
(第6実施形態)
図14は第6実施形態の単電池層13の断面図で、第1実施形態の図5と置き換わるものである。図5と同一部分には同一の番号を付している。
【0073】
第6実施形態では、電解質層の構成が第1実施形態と異なる。すなわち、第6実施形態では、電解質層を半固体電解質層(または固体電解質層)25で構成している。ここで、「半固体電解質」とはゲル状の電解質のことをいう。また、「固体電解質」とはゾル状の電解質のことをいう。半固体電解質層や固体電解質層であれば電極4、8同士の直接的接触を防止できるため、セパレータは不要である。
【0074】
図14に示したように、第6実施形態は、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、半固体電解質層(または固体電解質層)25の厚みを強電タブ15、16に近いほど厚くするものである。半固体電解質層25の厚みを発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど厚くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0075】
半固体電解質層25の厚みが相対的に厚い強電タブ15、16側では、Liイオンが半固体電解質25を移動する距離が、半固体電解質層25の厚みが相対的に薄い強電タブ15、16と反対側より長くなる。これによって、半固体電解質層25の厚みが相対的に厚い強電タブ側でのLiイオンの移動量(図14の太い矢印参照)が、半固体電解質層25の厚みが相対的に薄い強電タブと反対側でのLiイオンの移動量(図14の細い矢印参照)より少なくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0076】
また、正極タブ16のある領域と、負極タブ15のある領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、半固体電解質層25を図3においてセパレータ12を正極タブ16のある右側領域25aと、負極タブ15のある左側領域25bとにほぼ二等分し、二等分した各領域25a、25bでの半固体電解質層25の厚みを次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、図15のように正極タブ16のある領域での半固体電解質層25の厚みを、負極タブ15のある領域での半固体電解質層25の厚みより厚くする。ここで、図15は半固体電解質層25のみの概略斜視図である。
【0077】
第6実施形態によれば、半固体電解質25の厚みを発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど厚くするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素の面内方向で均一化することができる。
【0078】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第6実施形態によれば、半固体電解質25の厚みをさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を厚くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0079】
(第7実施形態)
図16は第7実施形態の単電池層13の断面図で、第6実施形態の図14と置き換わるものである。図14と同一部分には同一の番号を付している。
【0080】
図16に示したように、第7実施形態は、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、半固体電解質層(または固体電解質層)25の粘度を強電タブ15、16に近いほど高くするものである。半固体電解質層25の粘度を発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど高くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0081】
半固体電解質に添加する増粘剤を多くすれば半固体電解質の粘度が高くなり、この反対に半固体電解質に添加する増粘剤を少なくすれば半固体電解質の粘度が低くなる。従って、半固体電解質層25の粘度を強電タブ15、16に近いほど高くするには、半固体電解質に加える増粘剤を強電タブ15、16に近いほど多くすればよい。
【0082】
半固体電解質層25の粘度が相対的に高い強電タブ15、16側では、Liイオンが半固体電解質25を移動する速度が、半固体電解質層25の粘度が相対的に低い強電タブと反対側より遅くなる。これによって、半固体電解質層25の粘度が相対的に高い強電タブ側でのLiイオンの移動量(図16の太い矢印参照)が、半固体電解質層25の粘度が相対的に低い強電タブ15、16と反対側でのLiイオンの移動量(図16の細い矢印参照)より少なくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0083】
また、正極タブ16のある領域と、負極タブ15のある領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、図3において半固体電解質層25を正極タブ16のある右側領域25aと、負極タブ15のある左側領域25とにほぼ二等分し、二等分した各領域25a、25bでの半固体電解質層25の粘度を次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、正極タブ16のある領域25aでの半固体電解質層25の粘度を、負極タブ15のある領域25bでの半固体電解質層25の粘度より高くする。
【0084】
第7実施形態によれば、半固体電解質25の粘度を発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど高くするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0085】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第7実施形態によれば、半固体電解質25の粘度をさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を高くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0086】
(第8実施形態)
図17は第8実施形態の単電池層13の断面図で、第6実施形態の図14と置き換わるものである。図14と同一部分には同一の番号を付している。
【0087】
図17に示したように、第8実施形態は、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、半固体電解質層(または固体電解質層)25の誘電率を強電タブ15、16に近いほど低くするものである。半固体電解質層25の誘電率を発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど低くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0088】
ここで、「誘電率」とは、電場に置かれた誘電体の分極のしやすさをいう。半固体電解質(ゲル電解質)はLiイオン伝導性を有するマトリックスポリマーに電解質塩(例えばリチウム塩であるLiPF)を注入した構成を有している。リチウム塩であるLiPF6はLi+とPF6-とに解離する。Li+とPF6-の解離度を変えることによって誘電率を変えることができる。そこで、半固体電解質層25の誘電率を強電タブ15、16に近いほど低くするには、強電タブ15、16に近いほどLi+とPF6-の解離度が小さくなるようにすればよい。ここではリチウム塩であるLiPF6を挙げたが、これに限られるものでない。
【0089】
半固体電解質層25の誘電率が相対的に低い強電タブ15、16側では、Li+とPF6-の解離度が、半固体電解質層25の誘電率が相対的に高い強電タブ15、16と反対側より小さくなる。これによって、半固体電解質層25の誘電率が相対的に低い強電タブ15、16側でのLiイオンの移動量(図17の太い矢印参照)が、半固体電解質層25の誘電率が相対的に低い強電タブ15、16と反対側でのLiイオンの移動量(図17の細い矢印参照)より少なくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0090】
また、正極タブ16のある領域と、負極タブ15のある領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、図3において半固体電解質層25を正極タブ16のある右側領域25aと、負極タブ15のある左側領域25とにほぼ二等分し、二等分した各領域25a、25bでの半固体電解質層25の誘電率を次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、正極タブ16のある領域25aでの半固体電解質層25の誘電率を、負極タブ15のある領域25bでの半固体電解質層25の誘電率より低くする。
【0091】
第8実施形態によれば、半固体電解質25の誘電率を発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど低くするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0092】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第8実施形態によれば、半固体電解質25の誘電率をさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を低くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0093】
(第9実施形態)
図18は第9実施形態の単電池層13の断面図で、第6実施形態の図14と置き換わるものである。図10と同一部分には同一の番号を付している。
【0094】
図18に示したように、第9実施形態は、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺するために、半固体電解質層(または固体電解質層)25の電解質塩濃度を強電タブ15、16に近いほど低くするものである。半固体電解質層25の電解質塩濃度を発電要素2の面内方向において各強電タブ15、16に近いほど低くするとき、電解質中をLiイオンが移動しにくくなり電解質のイオン伝導率は各強電タブ15、16に近いほど低くなる。
【0095】
ここで、「電解質塩」とは、電解質に用いる塩のことである。ゲル電解質は前述したように、Liイオン伝導性を有するマトリックスポリマーに電解質塩(例えばリチウム塩であるLiPF)を注入した構成を有している。従って、「電解質塩濃度」とは、マトリックスポリマー量に対する電解質塩量の割合のことである。あるいはマトリックスポリマー量と電解質塩量の合計に対する電解質塩量の割合のことである。再びリチウム塩であるLiPF6を挙げると、マトリックスポリマー量に対するLiPF6の量を少なくすることで、電解質塩濃度を低くすることができる。電解質塩濃度を低くするほど、Liイオンの生成量が少なくなる。
【0096】
半固体電解質層25の電解質塩濃度が相対的に低い強電タブ15、16側では、Liイオンの生成量が、半固体電解質層25の電解質塩濃度が相対的に高い強電タブ15、16と反対側より少なくなる。これによって、半固体電解質層25の電解質塩濃度が相対的に低い強電タブ側でのLiイオンの移動量(図18の太い矢印参照)が、半固体電解質層25の電解質塩濃度が相対的に高い強電タブ15、16と反対側でのLiイオンの移動量(図18の細い矢印参照)より少なくなる。つまり、各強電タブ15、16側での充放電反応熱が各強電タブ15、16と反対側での充放電反応熱より小さくなり、ジュール発熱による面内方向の温度勾配を相殺することができる。
【0097】
また、正極タブ16のある領域と、負極タブ15のある領域とで面内方向の温度勾配が異なっている(図3参照)。そこで、図3において半固体電解質層25を正極タブ16のある右側領域25aと、負極タブ15のある左側領域25とにほぼ二等分し、二等分した各領域25a、25bでの半固体電解質層25の電解質塩濃度を次のように設定する。すなわち、面内方向の2種類の温度勾配に合わせ、図3において上下方向(面内方向)の同じ位置で比較したとき、正極タブ16のある領域25aでの半固体電解質層25の電解質塩濃度を、負極タブ15のある領域25bでの半固体電解質層25の電解質塩濃度より低くする。
【0098】
第9実施形態によれば、半固体電解質25の電解質塩濃度を発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど低くするので、2つの各強電タブ15、16の周辺ほど充放電反応が抑制され、充放電反応熱は発電要素2の面内方向において2つの各強電タブ15、16に近いほど小さくなる。この面内方向の電池反応熱の勾配によってジュール発熱による面内方向の温度勾配が相殺され、温度を発電要素の面内方向で均一化することができる。
【0099】
発熱は正極タブ16側のほうが負極タブ15側よりも大きいことに合わせて、第9実施形態によれば、半固体電解質25の電解質塩濃度をさらに負極タブ15側よりも正極タブ16側を低くするので、面内方向の温度勾配が異なる正極タブ16側、負極タブ15側に関係なく、温度を発電要素2の面内方向で均一化することができる。
【0100】
実施形態では、電池1が図6に示した面内方向の温度勾配を有することを前提として、図8、図10、図13、図15のようにセパレータ12、正極活物質層10、イオンブロック層21、半固体電解質層25を構成したが、これに限られるものでない。例えば、電池1が図19に示した面内方向の温度勾配を有することがある(第10実施形態)。すなわち、図19では強電タブ15、16の周辺での温度がタブ15、16間で相違し、正極タブ16の周辺での温度の方が負極タブ15の周辺での温度より高くなっている。図19に示した面内方向の温度勾配を有する場合には、これに対応して図8、図10、図13、図15の形状を変更する必要がある。例として図8のセパレータ12の形状を変更した場合を図20に示す。すなわち、図20では、セパレータ12のうち正極タブ16のある領域12aのほうが、負極タブ15のある領域12bよりもタブの周辺が厚くなっている。これは、正極タブ16の周辺でのセパレータのイオン伝導度を負極タブの周辺でのセパレータのイオン伝導率より低くすることにより、正極タブ26側での充放電反応熱を負極タブ15側での充放電反応熱より小さくするためである。
【0101】
実施形態では、2つの強電タブ15、16を発電要素2の同一の辺に配置している場合で説明したが、2つの強電タブを発電要素2の異なる辺に配置する場合においても本発明の適用がある。
【0102】
実施形態では、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、電池に限定されるものでなく、電気二重層キャパシタのような電気化学デバイスにも本発明の適用がある。
【符号の説明】
【0103】
1 電池(電気化学デバイス)
2 発電要素
4 負極(電極)
5 負極集電体
6 負極活物質層
8 正極(電極)
9 正極集電体
10 正極活物質層
12 セパレータ(電解質層)
15 負極タブ(タブ)
16 正極タブ(タブ)
25 半固体電解質層(電解質層)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極間のイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層と、この電解質層の両側に設けられる負極及び正極とを有し、電子とイオンが2つの電極間を移動して電気化学反応を行う扁平状の発電要素と、
前記負極及び正極から出入りする電子を外部に取り出す負極タブ及び正極タブと
を備える電気化学デバイスにおいて、
前記発電要素の面内方向の温度が均一となるように発電要素の面内方向での電気化学的な反応熱を異ならせることを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
前記電解質層を移動するイオンが、前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど移動しにくくすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
さらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側の方で前記電解質層を移動するイオンが移動しにくくすることを特徴とする請求項2に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記イオンの移動のし易さはイオン伝導率であり、
このイオン伝導率を前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど低くすることを特徴とする請求項2に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記イオン伝導率をさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を低くすることを特徴とする請求項4に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
前記電解質層を液体電解質と樹脂を含む微多孔膜のセパレータとで構成し、
このセパレータの空孔率を前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど小さくすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記セパレータの空孔率をさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を小さくすることを特徴とする請求項6に記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
前記電解質層を液体電解質と樹脂を含む微多孔膜のセパレータとで構成し、
このセパレータの厚みを前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど厚くすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項9】
前記セパレータの厚みをさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を厚くすることを特徴とする電請求項8に記載の電気デバイス。
【請求項10】
前記2つの電極の少なくとも一方の厚みを前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど厚くすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項11】
前記2つの電極の少なくとも一方の厚みをさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を厚くすることを特徴とする請求項10に記載の電気化学デバイス。
【請求項12】
前記電極の表面にイオンの拡散を遮蔽するイオンブロック層を形成することを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項13】
前記イオンブロック層の空孔率を前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど小さくすることを特徴とする請求項12に記載の電気化学デバイス。
【請求項14】
前記イオンブロック層の空孔率をさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を小さくすることを特徴とする請求項13に記載の電気化学デバイス。
【請求項15】
前記イオンブロック層の厚みを前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど厚くすることを特徴とする請求項12に記載の電気化学デバイス。
【請求項16】
前記イオンブロック層の厚みをさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を厚くすることを特徴とする請求項15に記載の電気化学デバイス。
【請求項17】
前記電解質層を固体電解質または半固体電解質で構成し、
この固体電解質または半固体電解質の厚みを前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど厚くすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項18】
前記固体電解質または半固体電解質の厚みをさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を厚くすることを特徴とする請求項17に記載の電気化学デバイス。
【請求項19】
前記電解質層を固体電解質または半固体電解質で構成し、
この固体電解質または半固体電解質の粘度を前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど高くすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項20】
前記固体電解質または半固体電解質の粘度をさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を高くすることを特徴とする請求項19に記載の電気化学デバイス。
【請求項21】
前記電解質層を固体電解質または半固体電解質で構成し、
この固体電解質または半固体電解質の誘電率を前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど低くすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項22】
前記固体電解質または半固体電解質の誘電率をさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を低くすることを特徴とする請求項21に記載の電気化学デバイス。
【請求項23】
前記電解質層を固体電解質または半固体電解質で構成し、
この固体電解質または半固体電解質の電解質塩濃度を前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど低くすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項24】
前記固体電解質または半固体電解質の電解質塩濃度をさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を低くすることを特徴とする請求項23に記載の電気化学デバイス。
【請求項25】
電極間のイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層と、この電解質層の両側に設けられる負極及び正極とを有し、電子とイオンが前記2つの電極間を移動して電気化学反応を行う扁平状の発電要素を備える電気化学デバイスにおいて、
前記発電要素の面内方向の温度が均一となるように発電要素の面内方向での電気化学反応の活性度を異ならせることを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項1】
電極間のイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層と、この電解質層の両側に設けられる負極及び正極とを有し、電子とイオンが2つの電極間を移動して電気化学反応を行う扁平状の発電要素と、
前記負極及び正極から出入りする電子を外部に取り出す負極タブ及び正極タブと
を備える電気化学デバイスにおいて、
前記発電要素の面内方向の温度が均一となるように発電要素の面内方向での電気化学的な反応熱を異ならせることを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
前記電解質層を移動するイオンが、前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど移動しにくくすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
さらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側の方で前記電解質層を移動するイオンが移動しにくくすることを特徴とする請求項2に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記イオンの移動のし易さはイオン伝導率であり、
このイオン伝導率を前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど低くすることを特徴とする請求項2に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記イオン伝導率をさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を低くすることを特徴とする請求項4に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
前記電解質層を液体電解質と樹脂を含む微多孔膜のセパレータとで構成し、
このセパレータの空孔率を前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど小さくすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記セパレータの空孔率をさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を小さくすることを特徴とする請求項6に記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
前記電解質層を液体電解質と樹脂を含む微多孔膜のセパレータとで構成し、
このセパレータの厚みを前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど厚くすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項9】
前記セパレータの厚みをさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を厚くすることを特徴とする電請求項8に記載の電気デバイス。
【請求項10】
前記2つの電極の少なくとも一方の厚みを前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど厚くすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項11】
前記2つの電極の少なくとも一方の厚みをさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を厚くすることを特徴とする請求項10に記載の電気化学デバイス。
【請求項12】
前記電極の表面にイオンの拡散を遮蔽するイオンブロック層を形成することを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項13】
前記イオンブロック層の空孔率を前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど小さくすることを特徴とする請求項12に記載の電気化学デバイス。
【請求項14】
前記イオンブロック層の空孔率をさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を小さくすることを特徴とする請求項13に記載の電気化学デバイス。
【請求項15】
前記イオンブロック層の厚みを前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど厚くすることを特徴とする請求項12に記載の電気化学デバイス。
【請求項16】
前記イオンブロック層の厚みをさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を厚くすることを特徴とする請求項15に記載の電気化学デバイス。
【請求項17】
前記電解質層を固体電解質または半固体電解質で構成し、
この固体電解質または半固体電解質の厚みを前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど厚くすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項18】
前記固体電解質または半固体電解質の厚みをさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を厚くすることを特徴とする請求項17に記載の電気化学デバイス。
【請求項19】
前記電解質層を固体電解質または半固体電解質で構成し、
この固体電解質または半固体電解質の粘度を前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど高くすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項20】
前記固体電解質または半固体電解質の粘度をさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を高くすることを特徴とする請求項19に記載の電気化学デバイス。
【請求項21】
前記電解質層を固体電解質または半固体電解質で構成し、
この固体電解質または半固体電解質の誘電率を前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど低くすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項22】
前記固体電解質または半固体電解質の誘電率をさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を低くすることを特徴とする請求項21に記載の電気化学デバイス。
【請求項23】
前記電解質層を固体電解質または半固体電解質で構成し、
この固体電解質または半固体電解質の電解質塩濃度を前記発電要素の面内方向において前記2つの各タブに近いほど低くすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項24】
前記固体電解質または半固体電解質の電解質塩濃度をさらに前記負極タブ側よりも前記正極タブ側を低くすることを特徴とする請求項23に記載の電気化学デバイス。
【請求項25】
電極間のイオンの移動媒体としての機能を有する電解質層と、この電解質層の両側に設けられる負極及び正極とを有し、電子とイオンが前記2つの電極間を移動して電気化学反応を行う扁平状の発電要素を備える電気化学デバイスにおいて、
前記発電要素の面内方向の温度が均一となるように発電要素の面内方向での電気化学反応の活性度を異ならせることを特徴とする電気化学デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−110071(P2013−110071A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256293(P2011−256293)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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