電気化学検出装置
【課題】 高感度化が実現できるように改良された電気化学検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 電気化学検出装置は、その空間内で反応を起こさせる反応部3と、その空間内に電気化学的な検出を行うための電極14を有する検出部4と、反応部3と検出部4とを繋ぐ流路7とを備える。検出部4の空間の深さは、反応部3の空間の深さおよび前記流路7の深さよりも浅くされている。
【解決手段】 電気化学検出装置は、その空間内で反応を起こさせる反応部3と、その空間内に電気化学的な検出を行うための電極14を有する検出部4と、反応部3と検出部4とを繋ぐ流路7とを備える。検出部4の空間の深さは、反応部3の空間の深さおよび前記流路7の深さよりも浅くされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に微量の液体に含まれる物質の量の電気化学的測定または分析を行う電気化学検出装置に関し、より特定的には、高感度化が実現できるように改良された電気化学検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の花粉、ダニ、カビ、揮発性有機化合物などの浮遊微小物質や化学物質によるアレルギー症状に多くの人が悩まされている。そこで、アレルギーの原因となるアレルゲン等のタンパク質の量を測定するためのマイクロ流路デバイスの開発が盛んである。このようなデバイスとして、図25に示すようなマイクロ流路デバイスが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図25に示すように、ガラス、シリコン等の基板151の上に、反応固相としての直径1mm以下の固体微粒子152とともに、この固体微粒子152の径よりも大きい縦断面積を有するマイクロチャンネル反応槽部153と、固体微粒子152の径よりも小さい縦断面積を有するマイクロチャンネル分離部154と、抗原および標識抗体を別々に反応槽部153へと導く導入部もしくはマイクロチャンネル流入部155、156と、第一抗体の導入のためのマイクロチャンネル流入部157と、バッファー液や洗浄液の導入のためのマイクロチャンネル流入部158が設けられている。各々のマイクロチャンネル流入部155、156、157、158の端部には、抗原、標識抗体(第二抗体)、第一抗体、そして洗浄液の注入穴部155A、156A、157A、158Aが設けられ、マイクロチャンネル分離部154の端部には、廃液部154Aが設けられている。固体微粒子152は、免疫抗原−抗体反応のための反応固相としての役割を果たす。反応固相としての固体微粒子152は、マイクロチャンネル分離部154に流入することはなく、せき止められるように構成され、未反応物だけが、マイクロチャンネル分離部154に流入して分離される。
【0004】
この従来例によれば、微量の試料等の使用によって、簡便に短い反応時間で免疫分析が可能となる。免疫分析の方法としては、反応固相としての固体微粒子152をマイクロチャンネル反応槽部153に導入し、導入部もしくはマイクロチャンネル流入部155、156より導入した抗原および標識抗体を、この固体微粒子152上で反応させる。次に未反応物をマイクロチャンネル分離部154で分離し、光熱変換分析により分析する。光熱変換分析については、熱レンズ顕微鏡によっている。
【0005】
しかし、提案されているデバイスは、上述のように、検出方法として熱レンズ方式を用いており、装置小型化の観点からは問題となる。
【0006】
一方、電気化学的な検出方法と組み合わせたデバイスの研究がなされており(例えば、特許文献2参照)、これを特許文献1のマイクロ流路デバイスと組み合わせることで、アレルゲン等のタンパク質を電気的に検出できる電気化学検出型マイクロ流路デバイスが実現できる。
【0007】
図26(a)は、このような電気化学検出型マイクロ流路デバイスの上面図であり、図26(b)は、図26(a)におけるB−B線に沿う断面図である。これらの図を参照して、基板501の表面にマイクロチャネル注入穴504A,排出孔505A、マイクロ反応槽部503、マイクロ流路504、505が形成されており、それらの深さは100μmであり、流路の幅は200μmである。マイクロ反応槽部503と流路505の間には、微粒子の径よりも小さい幅の流路をもつ堰き止め部508を形成しており、抗体を固定化した微粒子502を堰き止めるようにしている。また、マイクロ流路505の上であって、蓋510の表面に電極506、接続パッド507及びそれらを電気的に接続する配線509が所望のパターンに形成されている。
【0008】
例えば、アレルゲンを含む被検液を注入穴504Aから外部ポンプなどを用いて注入し、アレルゲンと特異的に反応する抗体を固定化した微粒子502と反応させて、微粒子502の表面にアレルゲンを捕獲させる。緩衝液で洗浄後、酵素を標識として付けた抗体を含む液を注入穴部504Aから注入し、微粒子502の表面に固定化抗体−アレルゲン−酵素付抗体からなる複合体を形成する。緩衝液で洗浄後、酵素により電極活性物質に変化する基質材料を流して、複合体の酵素により電極活性物質に変える。電極506が形成された領域での電極活性物質を電流あるいは電位の変化として接続パッド507から検出することで、微量な試料液体中の検出対象物質の濃度を知ることができる。
【0009】
図26と図27を参照して、電極506は、特許文献3に提案されるような櫛型形状の作用電極520、参照電極521、対向電極522から構成される電極部が、蓋510の表面上に平面状に形成された構成であり、電極506の厚さは、1μm以下である。また、電極506が形成された領域の流路505の深さ(空間の厚み)は、約15μmから1000μmに設定される。
【0010】
このようなデバイス構造では、作用電極520での酸化還元反応は、作用電極520付近の電極活性物質しか起こらず、作用電極520から離れたところにある電極活性物質は反応に寄与せずに流れていってしまう。その結果、得られる電流値または電圧値は小さなものであり、デバイスの検出感度が低いという問題があった。これを解決するため、液の流れを止めて、酸化還元反応を行うことも考えられるが、作用電極520には電極活性物質を引き寄せる作用はないので、作用電極520から離れた場所にいる電極活性物質が作用電極520付近に来るには拡散作用に頼るしかなく、大きな電流値または電圧値を得るには測定時間が非常に長くなるという問題があった。
【0011】
特許文献4では、作用電極を3次元的に形成する電極構造が提案されている。電流値を大きくするには櫛型作用電極の本数を多くすることが必要であるが、本文献に開示されている電極構造では、所定の領域に多くの電極の壁を形成することになり、1枚の壁の高さと幅の比が大きくなり、微細加工プロセスでの歩留まりが著しく悪くなる懸念があること、形成した壁の強度が低下し、使用している間に欠陥が生じる懸念があるなどの問題があった。
【0012】
【特許文献1】特開2001−4628号公報
【0013】
【特許文献2】特開2003−285298号公報
【0014】
【特許文献3】特開平1−272958号公報
【0015】
【特許文献4】特開2004−93406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、デバイスの検出感度を高めることができるように改良された電気化学検出装置を提供することを目的とする。
【0017】
この発明の他の目的は、測定時間が短くなるように改良された電気化学検出装置を提供することにある。
【0018】
この発明の他の目的は、量産性に優れた電気化学検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明にかかる電気化学検出装置は、その空間内で反応を起こさせる反応部と、その空間内に電気化学的な検出を行うための電極を有する検出部と、前記反応部と前記検出部とを繋ぐ流路とを備える。前記検出部の空間の深さは、前記反応部の空間の深さおよび前記流路の深さよりも浅くされている。
【0020】
この発明の好ましい実施態様によれば、上記検出部において、その上面または下面の一方には、空間に向けて盛り上る凸部が設けられている。
【0021】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記検出部において、前記上面または下面の他方には、前記凸部に対向するように凹状の窪みが形成されている。
【0022】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記凸部の側面がテーパー状になっている。
【0023】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記凹状の窪みの側面がテーパー状になっている。
【0024】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記凸部の上面と、上記凹状の窪みが形成されている面とは同一平面上にある。
【0025】
上記検出部において、その上面または下面の他方に、前記凹状の窪みが形成されるように、開口部を有するフィルムまたは樹脂層が設けられており、該凹状の窪みに電気化学的な検出を行うための前記電極が形成されていてもよい。
【0026】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記検出部において、その上面または下面の一方には、接続パッドに電気的につながった第1接続部が設けられており、上記凸部は、その裏面に設けられ、上記第1接続部に電気的に接続される第2接続部と、該凸部を厚み方向に貫通する貫通孔と、その表面に設けられ、電気化学的な検出を行うための上記電極とを有し、上記貫通孔を通して、上記電極と上記第2接続部が電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、少なくとも免疫反応、酵素反応などを生じさせる反応部、電気化学的な検出を行うための電極が形成された検出部及びそれらを繋ぐ流路を含む検出装置であって、検出部の空間の深さが反応部の空間の深さおよび流路の深さよりも浅くされているので、検出部付近での体積が小さくなり、拡散による濃度低下は従来に比べ小さくでき、結果として大きな電流量を得ることができる。
【0028】
また、本構成では、従来の構成に比べ、液が検出部を流れる間に拡散力及び壁による衝突やそれによる液内の衝突拡散により電極表面にまで達する量が大きくなり、従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができるという利点が生じる。また、上記のように大きな電流量が得られるため装置として高感度検出が実現できるという効果が生じる。
【0029】
また、本構成では、流路の深さは、電極表面とそれと対向する基板表面の距離と関係なく設定できるので、当該距離よりも大きい径の抗体付ビーズを用いることが併用でき、高効率の免疫反応及び酵素反応が同時に実現できるという効果も生じる。また、その効果により、酵素反応効率が向上するので、電極活性物質の量も多くなり、結果として従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができ、高感度化が実現できるという相乗効果が生じる。
【0030】
本発明では、上記検出部において、その上面または下面の一方には、接続パッドに電気的につながった第1接続部が設けられており、上記凸部は、その裏面に設けられ、上記第1接続部に接続される第2接続部と、該凸部を厚み方向に貫通する貫通孔と、その表面に設けられ、電気化学的な検出を行うための上記電極とを有し、上記貫通孔を通して、上記電極と上記第2接続部が電気的に接続されているという構成なので、従来のように、検出部に設けられた電極と接続パッドとをつなぐ配線が段差により切断されるという問題がなくなるという効果が生じる。また、本構成では、上記凸部をフィルムなどで作製する場合、大きなフィルムに複数の電極、第2の接続部を設けた構造体を作製した後、1つ1つの構造体を切り出して貼り付けるということが可能となり、従来のバッチごとに電極を作製するという方法に対し、量産性の観点で利点が生じるという効果が生じる。
【0031】
また、本発明では、検出部において、予め電極部、配線、接続パッドなどが形成された面に、少なくとも電極の一部が露出するような開口部を設けた、フィルムまたは樹脂層からなる層を形成したことを特徴とする構成なので、従来のように、検出部に設けられた電極と接続パッドとをつなぐ配線が段差により切断されるという問題がなくなるという効果が生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
[実施の形態1]
【0033】
図1は実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの上面図であり、図2は、図1におけるII−II線に沿う断面図である。
【0034】
図1に示すように、本発明にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスでは、基板1の表面と蓋20の表面とが対向するように、基板1の上に蓋20が設けられ、基板1の表面に、少なくとも、測定対象である検出対象物質を含む被検液、緩衝液を導入する導入孔2、免疫反応や酵素反応を生じさせる反応部3、検出部4、被検液、緩衝液を流出する排出孔5及びそれらを繋ぐ被検液、緩衝液が流れる流路6,流路7,流路8が形成されている。
【0035】
検出部4において、基板1の表面には、段である凸部22が設けられている。流路6,7,8を形成した基板1の構成は、従来のように流路パターンを形成した型に光または熱硬化性樹脂を流し込んで固めて一体構造のものとして作製してもよく、また、ポリメタクリル酸樹脂、ポリカーボネイト樹脂からなる基板に流路パターンを形成した型を用いてホットエンボス法により形成した一体構造のものでも良い。
【0036】
また例えば、図3に示すような、支持基体10に流路に対応したパターンの孔を空けたフィルム11を貼り合わせたものでも良い。この場合、大面積のフィルムに所定の流路パターンの孔を複数個一度に形成して、その後所定の大きさに切って支持基体と貼り合わせればよいので、従来のようにバッチ毎に作製する方法に比べ、量産性の観点から利点が生じる。
【0037】
図1を再び参照して、基板1の厚みは0.1mm〜5mm程度である。導入部2、流出部5は、直径が10μm以上、深さが0.1μmから1mmの穴で良く、特に形状は問わない。反応部3には、アレルゲンと特異的に反応する抗体が設けられている。抗体はビーズ12などの不溶性担体に固定化されていても良く、基板上に設けられていても良い。反応部3の形状は、円柱形状の穴、半球状の形状、直方体形状の穴または流路の一部を用いても良く、大きさは10μm以上であれば良く、深さは0.1μmから1mmであれば良い。また、抗体をビーズ12などの不溶性担体に固定化して、担体を基板に固定化しない場合は、流路7への接続口の断面積を不溶性担体の大きさよりも小さくした堰き止め部13を設けた構成にすればよい。
【0038】
この構成を用いれば、被検液や緩衝液が流路6を通って反応部3に流れ込んで流路7に流れ出す場合でも、担体が液といっしょに反応部3から流れ出してしまうことを防ぐことができる。また、別の方法としては、不溶性担体として磁性粒子を用いて、基板1または蓋20の外に別途設けた磁石(図示せず)により反応部3に固定しても良い。本説明では、簡単のために抗体材料と記しているが、用いる材料としては、検出対象物質と特異的に反応して、これを捕獲するものであれば良く、例えば、モノクロール抗体、ポリクロール抗体など抗体材料やインプリンティングポリマー、アプタマー材料など人工抗体材料と呼ばれているものでも良い。
【0039】
流路6、7、8は、幅0.1μmから1mmであり、深さは0.1μmから1mmに、好ましくは1μmから500μmに形成される。その断面の形は、矩形、台形形状でも良く、流路の底は円の一部のように丸くなっていても良い。蓋20は、光硬化性樹脂、ガラス、プラスチック材料、シリコン基板、金属基板、フィルムまたはそれらを組み合わせたものなどを用いることができる。蓋20の表面には、凸部22に対応した位置に検出用電極14が形成されている。
【0040】
本発明の特徴である検出部を、図4を用いて詳細に説明する。本発明では、電極14は、蓋20の表面に、凸部22に対向するように形成されている。液と接する電極14の表面と、凸部22の表面21との距離(検出部の空間の深さ)が、少なくとも反応部3の深さ(空間の厚み)または検出部4に接続する流路7または8の深さ(空間の深さ)のなかの最小のものよりも小さいことを特徴としている。
【0041】
基板1に形成される凸部22の平面部の幅は、作用電極の液と接する領域の大きさ以上であれば良く、その流路に沿った方向の長さは特に限定されない。凸部22が流路7と流路8の間に設けられる場合、凸部22の形状は、図4のように液の流れる方向に対して垂直な壁面を有してもよい。また、図5のように、液がスムーズに流れるように凸部22にテーパーを設けていても良い。テーパーを設けることで、凸部22の側面付近で流れが止まったり、流速の分布が生じるという問題がなくなると共に、泡が発生した場合、凸部22の側面付近で泡が止まって、液が流れなくなったり、送液時の圧力が高くなり装置を破損するという問題も生じなくなるという効果が生じる。凸部22の幅及び長さは、電極活性物質の流路内での希釈の度合いを最小にし、電極での酸化還元反応による信号量を最大にするという観点や装置全体の強度、電極サイズから要請される検出部の大きさなどから最適に設計されるべきものである。また、電極14の表面と、対向する基板表面21との距離も同様に最適化されるべきものであるが、実際上は、加工精度の観点から0.05μm以上になるよう設計される。
【0042】
本発明の検出装置を用いて、例えば、アレルゲンなどの抗原を検出する方法を簡単に説明する。図1と図2を参照して、予め、検出装置の流路6、7、8、反応部3、検出部4を緩衝液で満たしておく。次に、導入孔2から緩衝液を注入して装置内を緩衝液で洗浄する。次に予め抗体材料を固定化した複数個のビーズ12を緩衝液と共に導入孔2から注入し、その後に流路6、7、8、反応部3、検出部4の表面へのタンパク質の非特異的吸着を防ぐために、アルブミン水溶液を流して、表面にアルブミン膜を形成した。
【0043】
次に、抗原を含む被検液を導入孔2から入れて反応部3に移動させ、被検液中の抗原を反応部3に設けられた抗体材料により捕獲させた後、被検液に代えて緩衝液を導入孔2より入れて流路6、7、8、反応部3、検出部4を洗浄する。
【0044】
次に、酵素を標識として付けた抗体材料を含む緩衝液を導入孔2から注入し、反応部3に固定化された抗体に捕獲されている抗原と反応させることで、ビーズ12の表面に固定化抗体―抗原−酵素付抗体材料からなる複合体を形成させる。酵素付抗体材料は捕獲されている抗原の量に比べ過剰の量を流すので、未反応の酵素付抗体材料を除去するために緩衝液を導入孔2より入れて流路6、7、8、反応部3、検出部4を洗浄する。
【0045】
次に、標識として用いた酵素により電極活性物質に変化する基質材料を含む緩衝液を導入孔2から注入し、反応部に形成された固定化抗体―抗原−酵素付抗体材料からなる複合体と反応させることで、複合体の量に対応した電極活性物質を生じさせる。電極活性物質は反応部3から流路7を介して検出部4に入り、検出部4にて作用電極、対向電極に所定の電圧を印加することで酸化還元反応が起こり、電流が生じる。この電流を測定することで、アレルゲンの量が測定できる。標識として用いる酵素材料及び基質材料は、公知のもの(例えば特許文献3または特許文献5(特開平9−243590公報)に開示されるもの)が使用できる。
【0046】
検出部4では、電極活性物質が作用電極において酸化還元反応を起こすことで電流が生じる。即ち、電流の大きさは電極14付近での電極活性物質の濃度に依存する。通常、反応部3にて生じた電極活性物質は検出部4に至るまでに希釈される。従来の構成では、流路の深さと検出部の深さは同一であったので、例えば、反応部において免疫反応や酵素反応の効率をあげようとして、ビーズの表面に抗体材料などを固定化した系を応用した場合、検出部4の深さは少なくとも反応部のビーズの径以上になっていた。そのため、電極活性物質は、検出部においてその体積に比例して希釈されてしまい、電極付近の濃度は低くなり電流量も小さくなっていた。本発明では、電極表面とそれと対向する基板表面の距離は、流路の深さと関係なく、小さく設定した構成なので、検出部4付近での体積が小さくなり、拡散による濃度低下は従来に比べ小さくでき、結果として大きな電流量を得ることができる。
【0047】
また、電極活性物質は、液が検出部4を流れる間に拡散力及び壁による衝突やそれによる液内の衝突拡散により電極14表面にまで達する量が決定され、電極14に達する確率は、電極とそれと対向する面との距離が小さいほど大きくなる。本発明では、従来の構成に比べ、当該距離を小さくした構成なので、電極14に達して反応する電極活性物質の量は従来と比べ大きくなり、従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができるという利点が生じる。また、上記のように大きな電流量が得られるため、装置として高感度検出が実現できるという効果が生じる。
【0048】
また、本発明では、流路3,7,8の深さは、電極表面とそれと対向する基板表面の距離(検出部の空間の深さ)と関係なく設定できるので、当該距離よりも大きい径の抗体付ビーズを用いることが併用でき、高効率の免疫反応及び酵素反応が同時に実現できるという効果も生じる。また、その効果により、酵素反応効率が向上するので、電極活性物質の量も多くなり、結果として従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができ、高感度化が実現できるという相乗効果が生じる。
【0049】
本発明の検出部は、図6に示すように、その幅が検出部4に接続する両方の流路7,8の幅よりも大きくても良い。検出部の幅が流路の幅と同じ場合は、流速が同じとき注入孔にかかる圧力は、検出部の入り口の断面積に反比例する。即ち、本発明の構成を用いて、電極表面とそれと対向する基板表面との距離(検出部の空間の深さ)を小さくすれば、検出される信号量は大きくなるが、流路内にかかる圧力は大きくなり、チップの破壊を生じるという懸念がある。本発明の構成は、検出部4の幅を大きくすることを特徴とし、そのことにより、電極表面とそれと対向する基板表面との距離を小さくするという本発明の特徴を活かしながら、流路内にかかる圧力の増加も防ぐことができるという利点が生じる。実際に設定する検出部4の幅は、装置全体の流路の形状、装置の耐圧性から設計されるものであるが、例えば流路の断面積が一定であれば、それとほぼ同一の断面積になるように、検出部4の幅と、電極表面とそれと対向する基板表面との距離を決定すればよい。この値は、検出部4の電極14での反応性を最大にするように決定されることは言うまでもない。また、本構成では、形成する電極14の幅も大きくでき、検出電流も大きくできるという効果も生じる。
【0050】
このような検出部をもつ電気化学検出型マイクロ流路デバイスは、従来のフォトリソグラフィー法による型の作製と、その型に熱または光硬化性樹脂を組み合わせた方法またはホットエンボス法などによって作製できる。以下に従来のフォトリソグラフィー法による型の作製と、その型を用いて、熱または光硬化性樹脂を組み合わせて検出部を形成する工程の一例を図7から図9を参照して簡単に説明する。
【0051】
図7(a)(b)に示すように、第1ステップとして、ガラス基板601にネガ型の厚膜レジスト602aを塗布する。次に、図7(c)に示すように、所望の領域603を遮光したマスク604を介して、レジスト602aを紫外線で露光する。図7(d)に示すように、レジスト602aを現像、ベークすることで検出部に対応した(電極表面と基板表面との距離に対応した)厚みをもつ凸部602を形成する。
【0052】
図8(a)に示すように、第2ステップとして、凸部602を覆うようにガラス基板601の上に厚膜レジスト605を塗布する。次に、図8(b)に示すように、流路パターン以外と検出部に対応した所定の領域606を遮光したマスク609を介してレジスト605を紫外線で露光する。図8(c)に示すように、レジスト605を現像、ベークすることで、ガラス601の表面に、電極表面と基板表面との距離に対応した厚みを持つ凸部605と、流路の深さに対応した厚さを持つ凸部602とを形成した型607を得ることができる。
【0053】
ステップ3として、図9(a)に示すように、型607の中にポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む粘性材料603aを型に流し込み、次に図9(b)に示すように、熱硬化させて型607から剥離して、注入孔、排出孔を空けることで基板608を得ることができる。次に、検出部領域に対応した位置に、図27に示すような所定のパターンの櫛型作用電極520、参照電極521、対向電極522からなる電極14及び配線16、接続パッド15を形成した蓋20を、基板608に貼り付けることで、図1、図2に示すような検出装置が作製できる。
[実施の形態2]
【0054】
本実施の形態は、以下に説明する検出部以外は、実施の形態1と同様の構成である。
【0055】
本実施の形態の特徴である検出部を、図10から図13を用いて詳細に説明する。これらの図に示すように、本実施の形態の第1の特徴は、検出部において、基板101の表面に、空間に向けて盛り上る段である凸部122が設けられており、蓋120の表面には、凸部122に対向するように、所定の深さをもつ凹状の窪み123が形成されている。電極114は、蓋120の表面に形成された凹部領域123に、凸部122に対向するように形成されており、液と接する電極114表面と、この電極表面と対向する凸部122との距離(検出部の空間の厚み)が少なくとも反応部3の深さまたは検出部104に接続する流路107または108の深さの最小のものよりも小さいことを特徴としている。
【0056】
また、第2の特徴は基板101に形成される凸部122の上面121が、蓋120の表面であって窪み123が形成されていない部分120aと同一平面であることである。凸部122の平面部の幅は、作用電極の液と接する領域の大きさ以上であれば良く、その流路に沿った方向の長さは特に限定されない。凸部122の側壁の形状は、図10、図13のように液の流れる方向に対して垂直でもよく、図11、12のように液がスムーズに流れるようにテーパーを設けていても良い。また、蓋120の凹部領域の側壁の形状は、図10、図11のように液の流れる方向に対して垂直でもよく、図12、図13のように液がスムーズに流れるようにテーパーを設けていても良い。
【0057】
凸部122の幅及び長さは、電極活性物質の流路内での希釈の度合いを最小にし、電極での酸化還元反応による信号量を最大にするという観点や装置全体の強度、電極サイズから要請される検出部の大きさなどから最適に設計されるべきものである。また、電極114表面と、これに対向する凸部122の表面との距離も同様に最適化されるべきものであるが、実際上は、加工精度の観点から0.05μm以上になるよう設計される。
【0058】
本発明の実施形態の構成の検出装置を用いた、例えば、抗原の検出方法は、実施形態1に述べた方法と同様である。また、その効果も実施形態1と同様であり、電極表面とそれと対向する基板表面の距離が、流路の深さと関係なく、小さく設定できる構成なので、従来の構成に比べ、検出部での電極活性物質の濃度低下を抑えることができ、また検出部を流れる間に拡散力、衝突確率の増大により電極表面にまで達する確率が増え、電極で反応する電極活性物質の量が大きくなるので、従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができるという利点が生じて、結果として高感度検出が実現できるという効果が生じるというものである。
【0059】
また、本実施形態の構成でも、流路の深さは、電極表面とそれと対向する基板表面の距離と関係なく設定できるので、当該距離よりも大きい径の抗体付ビーズを用いることが併用でき、高効率の免疫反応及び酵素反応が同時に実現できるという効果も生じ、その効果により酵素反応効率が向上するので、電極活性物質の量も多くなり、結果として従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができ、ひいては高感度化が実現できるという相乗効果が生じるという、実施形態1と同様のものである。
【0060】
また、検出部104の幅が検出部104に接続する両方の流路の幅よりも大きくても良いことも実施の形態1と同様である。検出部104の幅を広くすることで、実施形態1に述べた効果と同様に、電極表面とそれと対向する基板表面との距離を小さくするという本発明の特徴を活かしながら、流路内にかかる圧力の増加も防ぐことができるという利点が生じる。
【0061】
本実施形態の構造の他の利点は、作製方法の簡便化にある。例えば、基板側の検出部の加工は、実施形態1と同様に、従来のフォトリソグラフィー法による型の作製と、その型に熱または光硬化性樹脂を充填する方法により行うことができるが、図14に示す方法によっても行うことができる。すなわち、図14(a)(b)に示すように、第1ステップとして、ガラス基板601に厚膜レジスト605を塗布する。次に、図14(c)に示すように、所望の領域606を遮光したマスク609を介して、レジスト605を紫外線で露光する。図14(d)に示すように、レジスト605を現像、ベークすることで型を形成する。後は熱または光硬化性樹脂を用いた実施形態1の図9(a)(b)と同様のステップのみで基板101を作製することができる。それゆえ、実施形態1の図8に相当する工程が必要ないため、2枚目のフォトマスクの位置合わせ(図8(b)の工程)による位置ずれの懸念もなくなるので、歩留まりの点から利点が生じる。
【0062】
蓋側の加工は従来のフォトリソグラフィー法にエッチング法を組み合わせて、図10を参照して、蓋120の所定の領域に凹部123を形成し、その後形成した蓋120の凹部123に図27に示すような所定のパターンの櫛型作用電極520、参照電極521、対向電極522からなる電極114を形成すれば良い。同時に、配線、接続パッドを形成しても良い。その後、液と接する領域以外を絶縁膜で覆い、基板と貼り合わせることで完成する。しかしながら、この方法では、凹部123に形成した電極114と接続パッドを繋ぐ配線が凹部123の段差により切断されるという懸念が生じる。
【0063】
このような懸念をなくす方法として、図15に示すように、蓋120として使用するシリコンウエハ、ガラス基板、プラスチック基板などの表面であって、基板101の凸部122に対応した位置に、従来のフォトリソグラフィー法にエッチング法を組み合わせた工程により、図27に示すような所定のパターンの櫛型作用電極520、参照電極521、対向電極522からなる電極部114、配線(図示せず)、接続パッド(図示せず)を形成し、検出部104を構成する。この場合、平面上に形成されるので、配線が切断される懸念はなくなる。次に、電極部を含む所定の大きさの穴を開けた、所定の厚さのフィルム125を貼り付けて、さらに凸部122、流路106、107、108、注入孔102、排出孔105を設けた基板101と貼り合わす事で、本発明の構成の検出装置を作製できる。
【0064】
また、図16から図19に示すように、フィルムを貼り合わせる代わりに、従来のフォトリソグラフィー工程により、電極部、配線、接続パッドを形成した蓋120に例えば光硬化性の樹脂を所定の厚さだけ塗布し、電極部の一部を少なくとも含む領域を遮光したマスクを介して紫外線で露光して、現像、ベークして光硬化性樹脂膜125を形成することで図10から図13に対応するものが得られ、凸部、流路、注入、排出孔を設けた基板101と貼り合わす事で、図15に示すものと同様の構成の検出装置を作製できる。図16は図10に対応し、図17は図11に対応し、図18は図12に対応し、図19は図13に対応する。
[実施の形態3]
【0065】
本実施の形態は、検出部以外は、実施形態1と同様の構成である。
【0066】
次に本実施の形態の特徴である検出部を、図20、図21を用いて詳細に説明する。本実施の形態の第1の特徴は、電極214が、蓋220の表面に設けられた所定の高さを持つ凸部領域222に、基板201に対向するように形成されており、液と接する電極表面221と、電極表面221と対向する基板表面201aとの距離(検出部の空間の厚み)が少なくとも反応部の深さまたは検出部に接続する流路またはの深さの最小のものよりも小さいことを特徴としている。
【0067】
凸部領域222の側壁の形状は、図20のように液の流れる方向に対して垂直でもよく、また図21に示すように、液がスムーズに流れるようにテーパーを設けていても良い。また、凸部領域222に対向する面に、実施形態2に記載したような凹部の窪みを形成してもよく、窪みの側面にテーパーを形成しても良い。
【0068】
凸部領域222の幅及び長さは、電極活性物質の流路内での希釈の度合いを最小にし、電極での酸化還元反応による信号量を最大にするという観点や装置全体の強度、電極サイズから要請される検出部の大きさなどから最適に設計されるべきものである。また、電極表面221と、電極表面221と対向する基板表面201aとの距離も同様に最適化されるべきものであるが、実際上は、加工精度の観点から0.05μm以上になるよう設計される。
【0069】
本実施形態の構成の検出装置を用いた、例えば、抗原の検出方法は、実施形態1に述べた方法と同様である。また、その効果も実施形態1と同様であり、電極表面とそれと対向する基板表面の距離が、流路の深さと関係なく、小さく設定できる構成なので、従来の構成に比べ、検出部での電極活性物質の濃度低下を抑えることができ、また検出部を流れる間に拡散力、衝突確率の増大により電極表面にまで達する確率が増え、電極で反応する電極活性物質の量が大きくなるので、従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができるという利点が生じて、結果として高感度検出が実現できるという効果が生じるというものである。
【0070】
また、本実施形態の構成でも、流路の深さは、電極表面とそれと対向する基板表面の距離と関係なく設定できるので、当該距離よりも大きい径の抗体付ビーズを用いることが併用でき、高効率の免疫反応及び酵素反応が同時に実現できるという効果も生じ、その効果により酵素反応効率が向上するので、電極活性物質の量も多くなり、結果として従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができ、高感度化が実現できるという相乗効果が生じるという、実施形態1と同様のものである。
【0071】
また、検出部の幅が検出部に接続する両方の流路の幅よりも大きくても良いことも実施の形態1と同様である。検出部の幅を広くすることで、実施形態1に述べた効果と同様に、電極表面とそれと対向する基板表面との距離を小さくするという本発明の特徴を活かしながら、流路内にかかる圧力の増加も防ぐことができるという利点が生じる。
【0072】
本実施形態の構造は、蓋220を従来のフォトリソグラフィー法にエッチング法を組み合わせた方法で凸部領域222を形成し、その後所定のパターンの櫛型作用電極、参照電極、対向電極からなる電極214、配線、接続パッド(図示せず)を形成して流路、反応部、検出部(図示せず)を形成した基板201と貼り合わせれば得ることができる。しかしながら、この方法では、凸部領域に形成した電極214と接続パッド(図示せず)を繋ぐ配線(図示せず)が凸部領域222の段差により切断されるという懸念が生じる。
【0073】
このような懸念をなくす方法として、例えば、図22に示すように、その表面に櫛型作用電極、参照電極、対向電極からなる所定のパターンの電極部214と複数の貫通孔251を形成した基材片250を蓋220に接着剤252で貼り合わせた構成がある。電極部214の各電極は貫通孔251を介して基材片250の裏面に形成した第1接続部253と電気的に繋がっており、第1接続部253は蓋220の表面に形成された第2接続部254、配線(図示せず)を通して接続パッド(図示せず)と電気的につながっている。この方法の利点は、一度に多くの電極形成フィルム片250が作製できるので、それを切り出して蓋と貼り合わせれば良いので、量産性の観点から効果がある。
(実施例)
【0074】
図23を参照して、本発明の実施例にかかる装置の製造方法について具体的に説明する。図7、図8に示す工程と同様にして、ガラス基板上に、厚膜レジストSU-8を用いて型を形成し、その型を用いて、図9と同様の方法で熱硬化性樹脂PDMSで流路、液の注入、排出孔を形成した凸部422を有する基板401を作製した。基板401の大きさは25mm×50mmで、流路406、407,408の幅は0.2mm、深さは0.05mmに設定した。検出部404に形成した凸部422の高さは0.04mm、即ち、PDMS基板表面から0.01mmの深さ、幅、長さとも3mmに設定した。蓋420の表面の検出部に対応する位置には、図27に示すような櫛型作用電極520、対向電極521、参照電極522からなる電極414と、液に接触する部分だけ残して絶縁膜423を形成した。PDMS基板401と蓋420を貼り合わせて検討装置とした。電極形成及び材料については、公知の技術(特許文献4)を用いた。各電極は、蓋表面に形成した取出し端子417と配線418で電気的に接続される。流路407と検出部404との間には、図24に示すような拡散部409を設けて、電極414全体に液が接触するようにしている。
【0075】
次に、本発明の効果について説明する。pH7.4に調整したリン酸緩衝液に電極活性物質であるパラアミノフェノールを0.1μM濃度入れたものをポンプ460を用いて注入孔402から入れて、流路406、407、408および検出部404を満たした後、3分後に電極414からの電流値を測定した。尚、作用電極の櫛型電極の一方で、パラアミノフェノールは電子を櫛型電極の一方に渡してパラキノンイミンに変化する。また、パラキノンイミンは他方の櫛型電極から電子を受け取ってパラアミノフェノールに戻り、この反応が繰り返されて、大きな電流値が検出される。
【0076】
比較として、検出部404に段422を設けず、深さを流路と同じ0.05mmにした以外は、上記と同じ構成の従来型の検出装置で上記と同様の実験を行ったところ、得られた電流値は、本発明の構成の100分の1以下になった。
【0077】
このことから、本発明の構成が大きな検出電流を得るために非常に有効であることが分かった。
【0078】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
上述したように、本発明によると、大きな検出信号を得ることができ、高感度の電気化学検出型のマイクロ流路検出装置を提供でき、また、本発明はタンパク質の検出だけでなく、電気化学的に検出できるものすべてに応用ができることから、その産業上の意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの上面図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿う断面図である。
【図3】実施の形態1の変形例にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの断面図である。
【図4】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の拡大断面図である。
【図5】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図6】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらなる変形例にかかる検出部の上面図である。
【図7】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の製造方法の第1ステップを示す断面図である。
【図8】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の製造方法の第2ステップを示す断面図である。
【図9】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の製造方法の第3ステップを示す断面図である。
【図10】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の拡大断面図である。
【図11】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図12】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらなる変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図13】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらなる変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図14】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の製造方法を示す断面図である。
【図15】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの変形例にかかる断面図である。
【図16】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの他の検出部の拡大断面図である。
【図17】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらに他の変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図18】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらに他の変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図19】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらに他の変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図20】実施の形態3にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の拡大断面図である。
【図21】実施の形態3にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの他の検出部の拡大断面図である。
【図22】実施の形態3にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらに他の検出部の拡大断面図である。
【図23】(a) 実施例にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの上面図である。 (b) 図23(a)におけるB−B線に沿う断面図である。
【図24】実施例に用いる拡散部の上面図である。
【図25】従来の電気化学検出装置の斜視図である。
【図26】(a) 他の従来の電気化学検出装置の上面概略図である。 (b) 図26(a)におけるB−B線に沿う断面図である。
【図27】従来の電気化学検出用の電極の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0081】
1、101、201、401、501、608 基板
2、102、402、504A 導入孔
3、503 反応部
4、104、404 検出部
5、105、405、505A 排出孔
6、7、8、106、107、108、406、407、408、504、505 流路
12、112、502 ビーズ
13,508 堰き止め部
14、114、214、414、506 電極
15、417、507 接続パッド
16、418、509 配線
20、120、220,420、510 蓋
22、122、222 凸部
251 貫通孔
252 接着層
253 第1接続部
254 第2接続部
409 拡散部
520 作用電極
521 参照電極
522 対向電極
601 ガラス基板
602、605 レジスト
603、606 遮光領域
604、609 マスク
607 型
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に微量の液体に含まれる物質の量の電気化学的測定または分析を行う電気化学検出装置に関し、より特定的には、高感度化が実現できるように改良された電気化学検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の花粉、ダニ、カビ、揮発性有機化合物などの浮遊微小物質や化学物質によるアレルギー症状に多くの人が悩まされている。そこで、アレルギーの原因となるアレルゲン等のタンパク質の量を測定するためのマイクロ流路デバイスの開発が盛んである。このようなデバイスとして、図25に示すようなマイクロ流路デバイスが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図25に示すように、ガラス、シリコン等の基板151の上に、反応固相としての直径1mm以下の固体微粒子152とともに、この固体微粒子152の径よりも大きい縦断面積を有するマイクロチャンネル反応槽部153と、固体微粒子152の径よりも小さい縦断面積を有するマイクロチャンネル分離部154と、抗原および標識抗体を別々に反応槽部153へと導く導入部もしくはマイクロチャンネル流入部155、156と、第一抗体の導入のためのマイクロチャンネル流入部157と、バッファー液や洗浄液の導入のためのマイクロチャンネル流入部158が設けられている。各々のマイクロチャンネル流入部155、156、157、158の端部には、抗原、標識抗体(第二抗体)、第一抗体、そして洗浄液の注入穴部155A、156A、157A、158Aが設けられ、マイクロチャンネル分離部154の端部には、廃液部154Aが設けられている。固体微粒子152は、免疫抗原−抗体反応のための反応固相としての役割を果たす。反応固相としての固体微粒子152は、マイクロチャンネル分離部154に流入することはなく、せき止められるように構成され、未反応物だけが、マイクロチャンネル分離部154に流入して分離される。
【0004】
この従来例によれば、微量の試料等の使用によって、簡便に短い反応時間で免疫分析が可能となる。免疫分析の方法としては、反応固相としての固体微粒子152をマイクロチャンネル反応槽部153に導入し、導入部もしくはマイクロチャンネル流入部155、156より導入した抗原および標識抗体を、この固体微粒子152上で反応させる。次に未反応物をマイクロチャンネル分離部154で分離し、光熱変換分析により分析する。光熱変換分析については、熱レンズ顕微鏡によっている。
【0005】
しかし、提案されているデバイスは、上述のように、検出方法として熱レンズ方式を用いており、装置小型化の観点からは問題となる。
【0006】
一方、電気化学的な検出方法と組み合わせたデバイスの研究がなされており(例えば、特許文献2参照)、これを特許文献1のマイクロ流路デバイスと組み合わせることで、アレルゲン等のタンパク質を電気的に検出できる電気化学検出型マイクロ流路デバイスが実現できる。
【0007】
図26(a)は、このような電気化学検出型マイクロ流路デバイスの上面図であり、図26(b)は、図26(a)におけるB−B線に沿う断面図である。これらの図を参照して、基板501の表面にマイクロチャネル注入穴504A,排出孔505A、マイクロ反応槽部503、マイクロ流路504、505が形成されており、それらの深さは100μmであり、流路の幅は200μmである。マイクロ反応槽部503と流路505の間には、微粒子の径よりも小さい幅の流路をもつ堰き止め部508を形成しており、抗体を固定化した微粒子502を堰き止めるようにしている。また、マイクロ流路505の上であって、蓋510の表面に電極506、接続パッド507及びそれらを電気的に接続する配線509が所望のパターンに形成されている。
【0008】
例えば、アレルゲンを含む被検液を注入穴504Aから外部ポンプなどを用いて注入し、アレルゲンと特異的に反応する抗体を固定化した微粒子502と反応させて、微粒子502の表面にアレルゲンを捕獲させる。緩衝液で洗浄後、酵素を標識として付けた抗体を含む液を注入穴部504Aから注入し、微粒子502の表面に固定化抗体−アレルゲン−酵素付抗体からなる複合体を形成する。緩衝液で洗浄後、酵素により電極活性物質に変化する基質材料を流して、複合体の酵素により電極活性物質に変える。電極506が形成された領域での電極活性物質を電流あるいは電位の変化として接続パッド507から検出することで、微量な試料液体中の検出対象物質の濃度を知ることができる。
【0009】
図26と図27を参照して、電極506は、特許文献3に提案されるような櫛型形状の作用電極520、参照電極521、対向電極522から構成される電極部が、蓋510の表面上に平面状に形成された構成であり、電極506の厚さは、1μm以下である。また、電極506が形成された領域の流路505の深さ(空間の厚み)は、約15μmから1000μmに設定される。
【0010】
このようなデバイス構造では、作用電極520での酸化還元反応は、作用電極520付近の電極活性物質しか起こらず、作用電極520から離れたところにある電極活性物質は反応に寄与せずに流れていってしまう。その結果、得られる電流値または電圧値は小さなものであり、デバイスの検出感度が低いという問題があった。これを解決するため、液の流れを止めて、酸化還元反応を行うことも考えられるが、作用電極520には電極活性物質を引き寄せる作用はないので、作用電極520から離れた場所にいる電極活性物質が作用電極520付近に来るには拡散作用に頼るしかなく、大きな電流値または電圧値を得るには測定時間が非常に長くなるという問題があった。
【0011】
特許文献4では、作用電極を3次元的に形成する電極構造が提案されている。電流値を大きくするには櫛型作用電極の本数を多くすることが必要であるが、本文献に開示されている電極構造では、所定の領域に多くの電極の壁を形成することになり、1枚の壁の高さと幅の比が大きくなり、微細加工プロセスでの歩留まりが著しく悪くなる懸念があること、形成した壁の強度が低下し、使用している間に欠陥が生じる懸念があるなどの問題があった。
【0012】
【特許文献1】特開2001−4628号公報
【0013】
【特許文献2】特開2003−285298号公報
【0014】
【特許文献3】特開平1−272958号公報
【0015】
【特許文献4】特開2004−93406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、デバイスの検出感度を高めることができるように改良された電気化学検出装置を提供することを目的とする。
【0017】
この発明の他の目的は、測定時間が短くなるように改良された電気化学検出装置を提供することにある。
【0018】
この発明の他の目的は、量産性に優れた電気化学検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明にかかる電気化学検出装置は、その空間内で反応を起こさせる反応部と、その空間内に電気化学的な検出を行うための電極を有する検出部と、前記反応部と前記検出部とを繋ぐ流路とを備える。前記検出部の空間の深さは、前記反応部の空間の深さおよび前記流路の深さよりも浅くされている。
【0020】
この発明の好ましい実施態様によれば、上記検出部において、その上面または下面の一方には、空間に向けて盛り上る凸部が設けられている。
【0021】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記検出部において、前記上面または下面の他方には、前記凸部に対向するように凹状の窪みが形成されている。
【0022】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記凸部の側面がテーパー状になっている。
【0023】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記凹状の窪みの側面がテーパー状になっている。
【0024】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記凸部の上面と、上記凹状の窪みが形成されている面とは同一平面上にある。
【0025】
上記検出部において、その上面または下面の他方に、前記凹状の窪みが形成されるように、開口部を有するフィルムまたは樹脂層が設けられており、該凹状の窪みに電気化学的な検出を行うための前記電極が形成されていてもよい。
【0026】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記検出部において、その上面または下面の一方には、接続パッドに電気的につながった第1接続部が設けられており、上記凸部は、その裏面に設けられ、上記第1接続部に電気的に接続される第2接続部と、該凸部を厚み方向に貫通する貫通孔と、その表面に設けられ、電気化学的な検出を行うための上記電極とを有し、上記貫通孔を通して、上記電極と上記第2接続部が電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、少なくとも免疫反応、酵素反応などを生じさせる反応部、電気化学的な検出を行うための電極が形成された検出部及びそれらを繋ぐ流路を含む検出装置であって、検出部の空間の深さが反応部の空間の深さおよび流路の深さよりも浅くされているので、検出部付近での体積が小さくなり、拡散による濃度低下は従来に比べ小さくでき、結果として大きな電流量を得ることができる。
【0028】
また、本構成では、従来の構成に比べ、液が検出部を流れる間に拡散力及び壁による衝突やそれによる液内の衝突拡散により電極表面にまで達する量が大きくなり、従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができるという利点が生じる。また、上記のように大きな電流量が得られるため装置として高感度検出が実現できるという効果が生じる。
【0029】
また、本構成では、流路の深さは、電極表面とそれと対向する基板表面の距離と関係なく設定できるので、当該距離よりも大きい径の抗体付ビーズを用いることが併用でき、高効率の免疫反応及び酵素反応が同時に実現できるという効果も生じる。また、その効果により、酵素反応効率が向上するので、電極活性物質の量も多くなり、結果として従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができ、高感度化が実現できるという相乗効果が生じる。
【0030】
本発明では、上記検出部において、その上面または下面の一方には、接続パッドに電気的につながった第1接続部が設けられており、上記凸部は、その裏面に設けられ、上記第1接続部に接続される第2接続部と、該凸部を厚み方向に貫通する貫通孔と、その表面に設けられ、電気化学的な検出を行うための上記電極とを有し、上記貫通孔を通して、上記電極と上記第2接続部が電気的に接続されているという構成なので、従来のように、検出部に設けられた電極と接続パッドとをつなぐ配線が段差により切断されるという問題がなくなるという効果が生じる。また、本構成では、上記凸部をフィルムなどで作製する場合、大きなフィルムに複数の電極、第2の接続部を設けた構造体を作製した後、1つ1つの構造体を切り出して貼り付けるということが可能となり、従来のバッチごとに電極を作製するという方法に対し、量産性の観点で利点が生じるという効果が生じる。
【0031】
また、本発明では、検出部において、予め電極部、配線、接続パッドなどが形成された面に、少なくとも電極の一部が露出するような開口部を設けた、フィルムまたは樹脂層からなる層を形成したことを特徴とする構成なので、従来のように、検出部に設けられた電極と接続パッドとをつなぐ配線が段差により切断されるという問題がなくなるという効果が生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
[実施の形態1]
【0033】
図1は実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの上面図であり、図2は、図1におけるII−II線に沿う断面図である。
【0034】
図1に示すように、本発明にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスでは、基板1の表面と蓋20の表面とが対向するように、基板1の上に蓋20が設けられ、基板1の表面に、少なくとも、測定対象である検出対象物質を含む被検液、緩衝液を導入する導入孔2、免疫反応や酵素反応を生じさせる反応部3、検出部4、被検液、緩衝液を流出する排出孔5及びそれらを繋ぐ被検液、緩衝液が流れる流路6,流路7,流路8が形成されている。
【0035】
検出部4において、基板1の表面には、段である凸部22が設けられている。流路6,7,8を形成した基板1の構成は、従来のように流路パターンを形成した型に光または熱硬化性樹脂を流し込んで固めて一体構造のものとして作製してもよく、また、ポリメタクリル酸樹脂、ポリカーボネイト樹脂からなる基板に流路パターンを形成した型を用いてホットエンボス法により形成した一体構造のものでも良い。
【0036】
また例えば、図3に示すような、支持基体10に流路に対応したパターンの孔を空けたフィルム11を貼り合わせたものでも良い。この場合、大面積のフィルムに所定の流路パターンの孔を複数個一度に形成して、その後所定の大きさに切って支持基体と貼り合わせればよいので、従来のようにバッチ毎に作製する方法に比べ、量産性の観点から利点が生じる。
【0037】
図1を再び参照して、基板1の厚みは0.1mm〜5mm程度である。導入部2、流出部5は、直径が10μm以上、深さが0.1μmから1mmの穴で良く、特に形状は問わない。反応部3には、アレルゲンと特異的に反応する抗体が設けられている。抗体はビーズ12などの不溶性担体に固定化されていても良く、基板上に設けられていても良い。反応部3の形状は、円柱形状の穴、半球状の形状、直方体形状の穴または流路の一部を用いても良く、大きさは10μm以上であれば良く、深さは0.1μmから1mmであれば良い。また、抗体をビーズ12などの不溶性担体に固定化して、担体を基板に固定化しない場合は、流路7への接続口の断面積を不溶性担体の大きさよりも小さくした堰き止め部13を設けた構成にすればよい。
【0038】
この構成を用いれば、被検液や緩衝液が流路6を通って反応部3に流れ込んで流路7に流れ出す場合でも、担体が液といっしょに反応部3から流れ出してしまうことを防ぐことができる。また、別の方法としては、不溶性担体として磁性粒子を用いて、基板1または蓋20の外に別途設けた磁石(図示せず)により反応部3に固定しても良い。本説明では、簡単のために抗体材料と記しているが、用いる材料としては、検出対象物質と特異的に反応して、これを捕獲するものであれば良く、例えば、モノクロール抗体、ポリクロール抗体など抗体材料やインプリンティングポリマー、アプタマー材料など人工抗体材料と呼ばれているものでも良い。
【0039】
流路6、7、8は、幅0.1μmから1mmであり、深さは0.1μmから1mmに、好ましくは1μmから500μmに形成される。その断面の形は、矩形、台形形状でも良く、流路の底は円の一部のように丸くなっていても良い。蓋20は、光硬化性樹脂、ガラス、プラスチック材料、シリコン基板、金属基板、フィルムまたはそれらを組み合わせたものなどを用いることができる。蓋20の表面には、凸部22に対応した位置に検出用電極14が形成されている。
【0040】
本発明の特徴である検出部を、図4を用いて詳細に説明する。本発明では、電極14は、蓋20の表面に、凸部22に対向するように形成されている。液と接する電極14の表面と、凸部22の表面21との距離(検出部の空間の深さ)が、少なくとも反応部3の深さ(空間の厚み)または検出部4に接続する流路7または8の深さ(空間の深さ)のなかの最小のものよりも小さいことを特徴としている。
【0041】
基板1に形成される凸部22の平面部の幅は、作用電極の液と接する領域の大きさ以上であれば良く、その流路に沿った方向の長さは特に限定されない。凸部22が流路7と流路8の間に設けられる場合、凸部22の形状は、図4のように液の流れる方向に対して垂直な壁面を有してもよい。また、図5のように、液がスムーズに流れるように凸部22にテーパーを設けていても良い。テーパーを設けることで、凸部22の側面付近で流れが止まったり、流速の分布が生じるという問題がなくなると共に、泡が発生した場合、凸部22の側面付近で泡が止まって、液が流れなくなったり、送液時の圧力が高くなり装置を破損するという問題も生じなくなるという効果が生じる。凸部22の幅及び長さは、電極活性物質の流路内での希釈の度合いを最小にし、電極での酸化還元反応による信号量を最大にするという観点や装置全体の強度、電極サイズから要請される検出部の大きさなどから最適に設計されるべきものである。また、電極14の表面と、対向する基板表面21との距離も同様に最適化されるべきものであるが、実際上は、加工精度の観点から0.05μm以上になるよう設計される。
【0042】
本発明の検出装置を用いて、例えば、アレルゲンなどの抗原を検出する方法を簡単に説明する。図1と図2を参照して、予め、検出装置の流路6、7、8、反応部3、検出部4を緩衝液で満たしておく。次に、導入孔2から緩衝液を注入して装置内を緩衝液で洗浄する。次に予め抗体材料を固定化した複数個のビーズ12を緩衝液と共に導入孔2から注入し、その後に流路6、7、8、反応部3、検出部4の表面へのタンパク質の非特異的吸着を防ぐために、アルブミン水溶液を流して、表面にアルブミン膜を形成した。
【0043】
次に、抗原を含む被検液を導入孔2から入れて反応部3に移動させ、被検液中の抗原を反応部3に設けられた抗体材料により捕獲させた後、被検液に代えて緩衝液を導入孔2より入れて流路6、7、8、反応部3、検出部4を洗浄する。
【0044】
次に、酵素を標識として付けた抗体材料を含む緩衝液を導入孔2から注入し、反応部3に固定化された抗体に捕獲されている抗原と反応させることで、ビーズ12の表面に固定化抗体―抗原−酵素付抗体材料からなる複合体を形成させる。酵素付抗体材料は捕獲されている抗原の量に比べ過剰の量を流すので、未反応の酵素付抗体材料を除去するために緩衝液を導入孔2より入れて流路6、7、8、反応部3、検出部4を洗浄する。
【0045】
次に、標識として用いた酵素により電極活性物質に変化する基質材料を含む緩衝液を導入孔2から注入し、反応部に形成された固定化抗体―抗原−酵素付抗体材料からなる複合体と反応させることで、複合体の量に対応した電極活性物質を生じさせる。電極活性物質は反応部3から流路7を介して検出部4に入り、検出部4にて作用電極、対向電極に所定の電圧を印加することで酸化還元反応が起こり、電流が生じる。この電流を測定することで、アレルゲンの量が測定できる。標識として用いる酵素材料及び基質材料は、公知のもの(例えば特許文献3または特許文献5(特開平9−243590公報)に開示されるもの)が使用できる。
【0046】
検出部4では、電極活性物質が作用電極において酸化還元反応を起こすことで電流が生じる。即ち、電流の大きさは電極14付近での電極活性物質の濃度に依存する。通常、反応部3にて生じた電極活性物質は検出部4に至るまでに希釈される。従来の構成では、流路の深さと検出部の深さは同一であったので、例えば、反応部において免疫反応や酵素反応の効率をあげようとして、ビーズの表面に抗体材料などを固定化した系を応用した場合、検出部4の深さは少なくとも反応部のビーズの径以上になっていた。そのため、電極活性物質は、検出部においてその体積に比例して希釈されてしまい、電極付近の濃度は低くなり電流量も小さくなっていた。本発明では、電極表面とそれと対向する基板表面の距離は、流路の深さと関係なく、小さく設定した構成なので、検出部4付近での体積が小さくなり、拡散による濃度低下は従来に比べ小さくでき、結果として大きな電流量を得ることができる。
【0047】
また、電極活性物質は、液が検出部4を流れる間に拡散力及び壁による衝突やそれによる液内の衝突拡散により電極14表面にまで達する量が決定され、電極14に達する確率は、電極とそれと対向する面との距離が小さいほど大きくなる。本発明では、従来の構成に比べ、当該距離を小さくした構成なので、電極14に達して反応する電極活性物質の量は従来と比べ大きくなり、従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができるという利点が生じる。また、上記のように大きな電流量が得られるため、装置として高感度検出が実現できるという効果が生じる。
【0048】
また、本発明では、流路3,7,8の深さは、電極表面とそれと対向する基板表面の距離(検出部の空間の深さ)と関係なく設定できるので、当該距離よりも大きい径の抗体付ビーズを用いることが併用でき、高効率の免疫反応及び酵素反応が同時に実現できるという効果も生じる。また、その効果により、酵素反応効率が向上するので、電極活性物質の量も多くなり、結果として従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができ、高感度化が実現できるという相乗効果が生じる。
【0049】
本発明の検出部は、図6に示すように、その幅が検出部4に接続する両方の流路7,8の幅よりも大きくても良い。検出部の幅が流路の幅と同じ場合は、流速が同じとき注入孔にかかる圧力は、検出部の入り口の断面積に反比例する。即ち、本発明の構成を用いて、電極表面とそれと対向する基板表面との距離(検出部の空間の深さ)を小さくすれば、検出される信号量は大きくなるが、流路内にかかる圧力は大きくなり、チップの破壊を生じるという懸念がある。本発明の構成は、検出部4の幅を大きくすることを特徴とし、そのことにより、電極表面とそれと対向する基板表面との距離を小さくするという本発明の特徴を活かしながら、流路内にかかる圧力の増加も防ぐことができるという利点が生じる。実際に設定する検出部4の幅は、装置全体の流路の形状、装置の耐圧性から設計されるものであるが、例えば流路の断面積が一定であれば、それとほぼ同一の断面積になるように、検出部4の幅と、電極表面とそれと対向する基板表面との距離を決定すればよい。この値は、検出部4の電極14での反応性を最大にするように決定されることは言うまでもない。また、本構成では、形成する電極14の幅も大きくでき、検出電流も大きくできるという効果も生じる。
【0050】
このような検出部をもつ電気化学検出型マイクロ流路デバイスは、従来のフォトリソグラフィー法による型の作製と、その型に熱または光硬化性樹脂を組み合わせた方法またはホットエンボス法などによって作製できる。以下に従来のフォトリソグラフィー法による型の作製と、その型を用いて、熱または光硬化性樹脂を組み合わせて検出部を形成する工程の一例を図7から図9を参照して簡単に説明する。
【0051】
図7(a)(b)に示すように、第1ステップとして、ガラス基板601にネガ型の厚膜レジスト602aを塗布する。次に、図7(c)に示すように、所望の領域603を遮光したマスク604を介して、レジスト602aを紫外線で露光する。図7(d)に示すように、レジスト602aを現像、ベークすることで検出部に対応した(電極表面と基板表面との距離に対応した)厚みをもつ凸部602を形成する。
【0052】
図8(a)に示すように、第2ステップとして、凸部602を覆うようにガラス基板601の上に厚膜レジスト605を塗布する。次に、図8(b)に示すように、流路パターン以外と検出部に対応した所定の領域606を遮光したマスク609を介してレジスト605を紫外線で露光する。図8(c)に示すように、レジスト605を現像、ベークすることで、ガラス601の表面に、電極表面と基板表面との距離に対応した厚みを持つ凸部605と、流路の深さに対応した厚さを持つ凸部602とを形成した型607を得ることができる。
【0053】
ステップ3として、図9(a)に示すように、型607の中にポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む粘性材料603aを型に流し込み、次に図9(b)に示すように、熱硬化させて型607から剥離して、注入孔、排出孔を空けることで基板608を得ることができる。次に、検出部領域に対応した位置に、図27に示すような所定のパターンの櫛型作用電極520、参照電極521、対向電極522からなる電極14及び配線16、接続パッド15を形成した蓋20を、基板608に貼り付けることで、図1、図2に示すような検出装置が作製できる。
[実施の形態2]
【0054】
本実施の形態は、以下に説明する検出部以外は、実施の形態1と同様の構成である。
【0055】
本実施の形態の特徴である検出部を、図10から図13を用いて詳細に説明する。これらの図に示すように、本実施の形態の第1の特徴は、検出部において、基板101の表面に、空間に向けて盛り上る段である凸部122が設けられており、蓋120の表面には、凸部122に対向するように、所定の深さをもつ凹状の窪み123が形成されている。電極114は、蓋120の表面に形成された凹部領域123に、凸部122に対向するように形成されており、液と接する電極114表面と、この電極表面と対向する凸部122との距離(検出部の空間の厚み)が少なくとも反応部3の深さまたは検出部104に接続する流路107または108の深さの最小のものよりも小さいことを特徴としている。
【0056】
また、第2の特徴は基板101に形成される凸部122の上面121が、蓋120の表面であって窪み123が形成されていない部分120aと同一平面であることである。凸部122の平面部の幅は、作用電極の液と接する領域の大きさ以上であれば良く、その流路に沿った方向の長さは特に限定されない。凸部122の側壁の形状は、図10、図13のように液の流れる方向に対して垂直でもよく、図11、12のように液がスムーズに流れるようにテーパーを設けていても良い。また、蓋120の凹部領域の側壁の形状は、図10、図11のように液の流れる方向に対して垂直でもよく、図12、図13のように液がスムーズに流れるようにテーパーを設けていても良い。
【0057】
凸部122の幅及び長さは、電極活性物質の流路内での希釈の度合いを最小にし、電極での酸化還元反応による信号量を最大にするという観点や装置全体の強度、電極サイズから要請される検出部の大きさなどから最適に設計されるべきものである。また、電極114表面と、これに対向する凸部122の表面との距離も同様に最適化されるべきものであるが、実際上は、加工精度の観点から0.05μm以上になるよう設計される。
【0058】
本発明の実施形態の構成の検出装置を用いた、例えば、抗原の検出方法は、実施形態1に述べた方法と同様である。また、その効果も実施形態1と同様であり、電極表面とそれと対向する基板表面の距離が、流路の深さと関係なく、小さく設定できる構成なので、従来の構成に比べ、検出部での電極活性物質の濃度低下を抑えることができ、また検出部を流れる間に拡散力、衝突確率の増大により電極表面にまで達する確率が増え、電極で反応する電極活性物質の量が大きくなるので、従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができるという利点が生じて、結果として高感度検出が実現できるという効果が生じるというものである。
【0059】
また、本実施形態の構成でも、流路の深さは、電極表面とそれと対向する基板表面の距離と関係なく設定できるので、当該距離よりも大きい径の抗体付ビーズを用いることが併用でき、高効率の免疫反応及び酵素反応が同時に実現できるという効果も生じ、その効果により酵素反応効率が向上するので、電極活性物質の量も多くなり、結果として従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができ、ひいては高感度化が実現できるという相乗効果が生じるという、実施形態1と同様のものである。
【0060】
また、検出部104の幅が検出部104に接続する両方の流路の幅よりも大きくても良いことも実施の形態1と同様である。検出部104の幅を広くすることで、実施形態1に述べた効果と同様に、電極表面とそれと対向する基板表面との距離を小さくするという本発明の特徴を活かしながら、流路内にかかる圧力の増加も防ぐことができるという利点が生じる。
【0061】
本実施形態の構造の他の利点は、作製方法の簡便化にある。例えば、基板側の検出部の加工は、実施形態1と同様に、従来のフォトリソグラフィー法による型の作製と、その型に熱または光硬化性樹脂を充填する方法により行うことができるが、図14に示す方法によっても行うことができる。すなわち、図14(a)(b)に示すように、第1ステップとして、ガラス基板601に厚膜レジスト605を塗布する。次に、図14(c)に示すように、所望の領域606を遮光したマスク609を介して、レジスト605を紫外線で露光する。図14(d)に示すように、レジスト605を現像、ベークすることで型を形成する。後は熱または光硬化性樹脂を用いた実施形態1の図9(a)(b)と同様のステップのみで基板101を作製することができる。それゆえ、実施形態1の図8に相当する工程が必要ないため、2枚目のフォトマスクの位置合わせ(図8(b)の工程)による位置ずれの懸念もなくなるので、歩留まりの点から利点が生じる。
【0062】
蓋側の加工は従来のフォトリソグラフィー法にエッチング法を組み合わせて、図10を参照して、蓋120の所定の領域に凹部123を形成し、その後形成した蓋120の凹部123に図27に示すような所定のパターンの櫛型作用電極520、参照電極521、対向電極522からなる電極114を形成すれば良い。同時に、配線、接続パッドを形成しても良い。その後、液と接する領域以外を絶縁膜で覆い、基板と貼り合わせることで完成する。しかしながら、この方法では、凹部123に形成した電極114と接続パッドを繋ぐ配線が凹部123の段差により切断されるという懸念が生じる。
【0063】
このような懸念をなくす方法として、図15に示すように、蓋120として使用するシリコンウエハ、ガラス基板、プラスチック基板などの表面であって、基板101の凸部122に対応した位置に、従来のフォトリソグラフィー法にエッチング法を組み合わせた工程により、図27に示すような所定のパターンの櫛型作用電極520、参照電極521、対向電極522からなる電極部114、配線(図示せず)、接続パッド(図示せず)を形成し、検出部104を構成する。この場合、平面上に形成されるので、配線が切断される懸念はなくなる。次に、電極部を含む所定の大きさの穴を開けた、所定の厚さのフィルム125を貼り付けて、さらに凸部122、流路106、107、108、注入孔102、排出孔105を設けた基板101と貼り合わす事で、本発明の構成の検出装置を作製できる。
【0064】
また、図16から図19に示すように、フィルムを貼り合わせる代わりに、従来のフォトリソグラフィー工程により、電極部、配線、接続パッドを形成した蓋120に例えば光硬化性の樹脂を所定の厚さだけ塗布し、電極部の一部を少なくとも含む領域を遮光したマスクを介して紫外線で露光して、現像、ベークして光硬化性樹脂膜125を形成することで図10から図13に対応するものが得られ、凸部、流路、注入、排出孔を設けた基板101と貼り合わす事で、図15に示すものと同様の構成の検出装置を作製できる。図16は図10に対応し、図17は図11に対応し、図18は図12に対応し、図19は図13に対応する。
[実施の形態3]
【0065】
本実施の形態は、検出部以外は、実施形態1と同様の構成である。
【0066】
次に本実施の形態の特徴である検出部を、図20、図21を用いて詳細に説明する。本実施の形態の第1の特徴は、電極214が、蓋220の表面に設けられた所定の高さを持つ凸部領域222に、基板201に対向するように形成されており、液と接する電極表面221と、電極表面221と対向する基板表面201aとの距離(検出部の空間の厚み)が少なくとも反応部の深さまたは検出部に接続する流路またはの深さの最小のものよりも小さいことを特徴としている。
【0067】
凸部領域222の側壁の形状は、図20のように液の流れる方向に対して垂直でもよく、また図21に示すように、液がスムーズに流れるようにテーパーを設けていても良い。また、凸部領域222に対向する面に、実施形態2に記載したような凹部の窪みを形成してもよく、窪みの側面にテーパーを形成しても良い。
【0068】
凸部領域222の幅及び長さは、電極活性物質の流路内での希釈の度合いを最小にし、電極での酸化還元反応による信号量を最大にするという観点や装置全体の強度、電極サイズから要請される検出部の大きさなどから最適に設計されるべきものである。また、電極表面221と、電極表面221と対向する基板表面201aとの距離も同様に最適化されるべきものであるが、実際上は、加工精度の観点から0.05μm以上になるよう設計される。
【0069】
本実施形態の構成の検出装置を用いた、例えば、抗原の検出方法は、実施形態1に述べた方法と同様である。また、その効果も実施形態1と同様であり、電極表面とそれと対向する基板表面の距離が、流路の深さと関係なく、小さく設定できる構成なので、従来の構成に比べ、検出部での電極活性物質の濃度低下を抑えることができ、また検出部を流れる間に拡散力、衝突確率の増大により電極表面にまで達する確率が増え、電極で反応する電極活性物質の量が大きくなるので、従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができるという利点が生じて、結果として高感度検出が実現できるという効果が生じるというものである。
【0070】
また、本実施形態の構成でも、流路の深さは、電極表面とそれと対向する基板表面の距離と関係なく設定できるので、当該距離よりも大きい径の抗体付ビーズを用いることが併用でき、高効率の免疫反応及び酵素反応が同時に実現できるという効果も生じ、その効果により酵素反応効率が向上するので、電極活性物質の量も多くなり、結果として従来の検出装置に比べ大きな電流量を得ることができ、高感度化が実現できるという相乗効果が生じるという、実施形態1と同様のものである。
【0071】
また、検出部の幅が検出部に接続する両方の流路の幅よりも大きくても良いことも実施の形態1と同様である。検出部の幅を広くすることで、実施形態1に述べた効果と同様に、電極表面とそれと対向する基板表面との距離を小さくするという本発明の特徴を活かしながら、流路内にかかる圧力の増加も防ぐことができるという利点が生じる。
【0072】
本実施形態の構造は、蓋220を従来のフォトリソグラフィー法にエッチング法を組み合わせた方法で凸部領域222を形成し、その後所定のパターンの櫛型作用電極、参照電極、対向電極からなる電極214、配線、接続パッド(図示せず)を形成して流路、反応部、検出部(図示せず)を形成した基板201と貼り合わせれば得ることができる。しかしながら、この方法では、凸部領域に形成した電極214と接続パッド(図示せず)を繋ぐ配線(図示せず)が凸部領域222の段差により切断されるという懸念が生じる。
【0073】
このような懸念をなくす方法として、例えば、図22に示すように、その表面に櫛型作用電極、参照電極、対向電極からなる所定のパターンの電極部214と複数の貫通孔251を形成した基材片250を蓋220に接着剤252で貼り合わせた構成がある。電極部214の各電極は貫通孔251を介して基材片250の裏面に形成した第1接続部253と電気的に繋がっており、第1接続部253は蓋220の表面に形成された第2接続部254、配線(図示せず)を通して接続パッド(図示せず)と電気的につながっている。この方法の利点は、一度に多くの電極形成フィルム片250が作製できるので、それを切り出して蓋と貼り合わせれば良いので、量産性の観点から効果がある。
(実施例)
【0074】
図23を参照して、本発明の実施例にかかる装置の製造方法について具体的に説明する。図7、図8に示す工程と同様にして、ガラス基板上に、厚膜レジストSU-8を用いて型を形成し、その型を用いて、図9と同様の方法で熱硬化性樹脂PDMSで流路、液の注入、排出孔を形成した凸部422を有する基板401を作製した。基板401の大きさは25mm×50mmで、流路406、407,408の幅は0.2mm、深さは0.05mmに設定した。検出部404に形成した凸部422の高さは0.04mm、即ち、PDMS基板表面から0.01mmの深さ、幅、長さとも3mmに設定した。蓋420の表面の検出部に対応する位置には、図27に示すような櫛型作用電極520、対向電極521、参照電極522からなる電極414と、液に接触する部分だけ残して絶縁膜423を形成した。PDMS基板401と蓋420を貼り合わせて検討装置とした。電極形成及び材料については、公知の技術(特許文献4)を用いた。各電極は、蓋表面に形成した取出し端子417と配線418で電気的に接続される。流路407と検出部404との間には、図24に示すような拡散部409を設けて、電極414全体に液が接触するようにしている。
【0075】
次に、本発明の効果について説明する。pH7.4に調整したリン酸緩衝液に電極活性物質であるパラアミノフェノールを0.1μM濃度入れたものをポンプ460を用いて注入孔402から入れて、流路406、407、408および検出部404を満たした後、3分後に電極414からの電流値を測定した。尚、作用電極の櫛型電極の一方で、パラアミノフェノールは電子を櫛型電極の一方に渡してパラキノンイミンに変化する。また、パラキノンイミンは他方の櫛型電極から電子を受け取ってパラアミノフェノールに戻り、この反応が繰り返されて、大きな電流値が検出される。
【0076】
比較として、検出部404に段422を設けず、深さを流路と同じ0.05mmにした以外は、上記と同じ構成の従来型の検出装置で上記と同様の実験を行ったところ、得られた電流値は、本発明の構成の100分の1以下になった。
【0077】
このことから、本発明の構成が大きな検出電流を得るために非常に有効であることが分かった。
【0078】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
上述したように、本発明によると、大きな検出信号を得ることができ、高感度の電気化学検出型のマイクロ流路検出装置を提供でき、また、本発明はタンパク質の検出だけでなく、電気化学的に検出できるものすべてに応用ができることから、その産業上の意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの上面図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿う断面図である。
【図3】実施の形態1の変形例にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの断面図である。
【図4】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の拡大断面図である。
【図5】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図6】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらなる変形例にかかる検出部の上面図である。
【図7】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の製造方法の第1ステップを示す断面図である。
【図8】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の製造方法の第2ステップを示す断面図である。
【図9】実施の形態1にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の製造方法の第3ステップを示す断面図である。
【図10】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の拡大断面図である。
【図11】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図12】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらなる変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図13】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらなる変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図14】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の製造方法を示す断面図である。
【図15】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの変形例にかかる断面図である。
【図16】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの他の検出部の拡大断面図である。
【図17】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらに他の変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図18】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらに他の変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図19】実施の形態2にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらに他の変形例にかかる検出部の拡大断面図である。
【図20】実施の形態3にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの検出部の拡大断面図である。
【図21】実施の形態3にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの他の検出部の拡大断面図である。
【図22】実施の形態3にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスのさらに他の検出部の拡大断面図である。
【図23】(a) 実施例にかかる電気化学検出型マイクロ流路デバイスの上面図である。 (b) 図23(a)におけるB−B線に沿う断面図である。
【図24】実施例に用いる拡散部の上面図である。
【図25】従来の電気化学検出装置の斜視図である。
【図26】(a) 他の従来の電気化学検出装置の上面概略図である。 (b) 図26(a)におけるB−B線に沿う断面図である。
【図27】従来の電気化学検出用の電極の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0081】
1、101、201、401、501、608 基板
2、102、402、504A 導入孔
3、503 反応部
4、104、404 検出部
5、105、405、505A 排出孔
6、7、8、106、107、108、406、407、408、504、505 流路
12、112、502 ビーズ
13,508 堰き止め部
14、114、214、414、506 電極
15、417、507 接続パッド
16、418、509 配線
20、120、220,420、510 蓋
22、122、222 凸部
251 貫通孔
252 接着層
253 第1接続部
254 第2接続部
409 拡散部
520 作用電極
521 参照電極
522 対向電極
601 ガラス基板
602、605 レジスト
603、606 遮光領域
604、609 マスク
607 型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その空間内で反応を起こさせる反応部と、
その空間内に電気化学的な検出を行うための電極を有する検出部と、
前記反応部と前記検出部とを繋ぐ流路とを備え、
前記検出部の空間の深さは、前記反応部の空間の深さおよび前記流路の深さよりも浅くされていることを特徴とする電気化学検出装置。
【請求項2】
前記検出部において、その上面または下面の一方には、空間に向けて盛り上る凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学検出装置。
【請求項3】
前記検出部において、前記上面または下面の他方には、前記凸部に対向するように凹状の窪みが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電気化学検出装置。
【請求項4】
前記凸部の側面がテーパー状になっていることを特徴とする請求項2または3に記載の電気化学検出装置。
【請求項5】
前記凹状の窪みの側面がテーパー状になっていることを特徴とする請求項3または4に記載の電気化学検出装置。
【請求項6】
前記凸部の上面と、前記凹状の窪みが形成されている面とは同一平面上にあることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の電気化学検出装置。
【請求項7】
前記検出部において、その上面または下面の他方に、前記凹状の窪みが形成されるように、開口部を有するフィルムまたは樹脂層が設けられており、該凹状の窪みに電気化学的な検出を行うための前記電極が形成されていることを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の電気化学検出装置。
【請求項8】
前記検出部において、その上面または下面の一方には、接続パッドに電気的につながった第1接続部が設けられており、
前記凸部は、その裏面に設けられ、前記第1接続部に電気的に接続される第2接続部と、該凸部を厚み方向に貫通する貫通孔と、その表面に設けられ、電気化学的な検出を行うための前記電極とを有し、
前記貫通孔を通して、前記電極と前記第2接続部が電気的に接続されていることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の電気化学検出装置。
【請求項1】
その空間内で反応を起こさせる反応部と、
その空間内に電気化学的な検出を行うための電極を有する検出部と、
前記反応部と前記検出部とを繋ぐ流路とを備え、
前記検出部の空間の深さは、前記反応部の空間の深さおよび前記流路の深さよりも浅くされていることを特徴とする電気化学検出装置。
【請求項2】
前記検出部において、その上面または下面の一方には、空間に向けて盛り上る凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学検出装置。
【請求項3】
前記検出部において、前記上面または下面の他方には、前記凸部に対向するように凹状の窪みが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電気化学検出装置。
【請求項4】
前記凸部の側面がテーパー状になっていることを特徴とする請求項2または3に記載の電気化学検出装置。
【請求項5】
前記凹状の窪みの側面がテーパー状になっていることを特徴とする請求項3または4に記載の電気化学検出装置。
【請求項6】
前記凸部の上面と、前記凹状の窪みが形成されている面とは同一平面上にあることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の電気化学検出装置。
【請求項7】
前記検出部において、その上面または下面の他方に、前記凹状の窪みが形成されるように、開口部を有するフィルムまたは樹脂層が設けられており、該凹状の窪みに電気化学的な検出を行うための前記電極が形成されていることを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の電気化学検出装置。
【請求項8】
前記検出部において、その上面または下面の一方には、接続パッドに電気的につながった第1接続部が設けられており、
前記凸部は、その裏面に設けられ、前記第1接続部に電気的に接続される第2接続部と、該凸部を厚み方向に貫通する貫通孔と、その表面に設けられ、電気化学的な検出を行うための前記電極とを有し、
前記貫通孔を通して、前記電極と前記第2接続部が電気的に接続されていることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の電気化学検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2006−337221(P2006−337221A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163461(P2005−163461)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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