電気化学測定装置の製造方法
【課題】非常に小型であっても、イオン流路として機能できる液絡を有し、測定用の流路(またはウェル)と参照用の流路(またはウェル)とが分離されている電気化学測定装置を製造する。
【解決手段】測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とを結ぶ線に沿って0.01乃至2μmの高さまで盛り上がっている線状構造を形成し、基板、線状構造および樹脂層によって囲まれる微小空間としてイオン流路(液絡)を形成する。
【解決手段】測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とを結ぶ線に沿って0.01乃至2μmの高さまで盛り上がっている線状構造を形成し、基板、線状構造および樹脂層によって囲まれる微小空間としてイオン流路(液絡)を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学測定装置の製造方法に関する。特に本発明は、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とがイオン流路により連絡している電気化学測定装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小参照電極を備えた小型の電気化学測定装置は、細胞機能の測定、バイオアッセイあるいは極微量の物質測定に用いられている。小型の電気化学測定装置でも、通常の電気化学測定の場合と同様に、作用電極、参照電極(基準電極)および対向電極(補助電極)を備えたマイクロウェルまたはマイクロ流路を有する微小電気化学セルが必要である。微小電気化学セルの製造では、回路基板の製造のために開発されたフォトリソグラフィーの方法を応用することができる。
【0003】
非特許文献1は、バイオアッセイに用いるマイクロ流路の製造方法を開示している。非特許文献1に記載の方法では、PDMS(Polydimethylsiloxane)のような樹脂系の素材でガラス基板上に流路を形成し、流路中に、作用電極、参照電極(基準電極)および対向電極(補助電極)を形成している。作用電極および対向電極は、金または白金からなる微小パターンバンド電極である。参照電極は、銀−塩化銀電極である。
非特許文献1は、単一の流路(またはウェル)に、作用電極、参照電極および対向電極を形成している。単一の流路に銀−塩化銀参照電極と、作用電極および対向電極とが共存すると、銀イオンによる作用電極の汚染が問題となる。
【0004】
非特許文献1の記載では、流路の上流に作用電極を配置し、下流に参照電極を配置した構成とすることにより、汚染の問題を回避している。この場合、一定方向に安定した流速で電解溶液を流す必要がある。マイクロ流路において、一定の安定な流速を確保することは容易ではない。銀−塩化銀参照電極に代えて、金アマルガム電極を用いても、水銀イオンによる汚染の問題が起きる。
また、参照電極の電位を安定に保つためには、参照電極が存在している流路内の電解質の成分を一定に保つ必要がある。そのため、単一の流路を用いる方法では、電解質の成分が制限される結果として、測定対象が著しく制限される。
【0005】
一般的な電気化学測定装置では、二つの容器または流路(測定用の容器または流路と参照用の容器または流路)を用いて、作用電極および対向電極と参照電極とを分離することが普通である。二つの流路は、イオン流路として機能する液絡(塩橋)を用いて接続させる。液絡としては、一般に、ゲル、毛細管あるいはセラミックス多孔質が用いられている(非特許文献2参照)。
【0006】
【非特許文献1】安川智之外(Tomoyuki Yasukawa et al.)、ジャーナル・オブ・マイクロエレクトロメカニカル・システムズ(Journal of Microelectromechanical Systems)、14巻、No.4、2005年8月
【非特許文献2】ドナルド・ティー・ソーヤー外(Donald T. Sawyer et al.)著、電気化学測定法の基礎(Electrochemistry for Chemists)、第2版、丸善、平成15年3月25日、114〜119頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
小型の電気化学測定装置において、測定用の流路(またはウェル)と参照用の流路(またはウェル)とを分離する場合、液絡をどのように設けるのかが非常に難しい問題である。一般的な電気化学測定装置で普通に用いられているゲル、毛細管あるいはセラミックス多孔質を、そのまま小型にして、マイクロ流路(またはマイクロウェル)と組み合わせて使用することは困難である。
【0008】
本発明の目的は、非常に小型であっても、イオン流路として機能できる液絡を有し、測定用の流路(またはウェル)と参照用の流路(またはウェル)とが分離されている電気化学測定装置を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、基板(1)と樹脂層(10)との間に、測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とが独立して設けられ、測定用のウェルまたは流路(8b)に作用電極(4b−1)と対向電極(4b−2)とが設けられ、参照用のウェルまたは流路(8a)に参照電極(4b−3)が設けられ、そして、測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とがイオン流路(11)により連絡している電気化学測定装置を製造する方法であって、基板(1)上に作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とを結ぶ線に沿って0.01乃至2μmの高さ(h)まで盛り上がっている線状構造(4b−4)を形成する工程、測定用のウェルまたは流路(8b)および参照用のウェルまたは流路(8a)に対応する形状を溶出性樹脂(8)で基板(1)上に形成する工程、基板上の溶出性樹脂(8)を非溶出性樹脂からなる樹脂層(10)で覆い、基板(1)、線状構造(4b−4)および樹脂層(10)によって囲まれる微小空間としてイオン流路(11)を形成する工程、そして、溶出性樹脂(8)を溶出して測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とを形成する工程を順次実施することを特徴とする電気化学測定装置の製造方法(基板上に順次形成する方法)により達成された。
【0010】
作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)および線状構造(4b−4)は、金または白金からなることが好ましい。参照電極(4b−3)は、銀−塩化銀、金アマルガムまたは水素吸蔵パラジウムからなることが好ましい。
【0011】
基板(1)上に作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)を形成する工程は、基板(1)上にポジ型感光性樹脂(2)を塗布し、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域(3b)を除く領域(3a)をマスク(3)により遮光しながら露光し、現像することにより上記領域(3b)を除く領域(3a)を樹脂(2a)で覆い、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)の構成材料を基板(1)上にスパッタリング(4)し、そして樹脂(2a)を溶出することにより樹脂(2a)の上にスパッタリングされた上記材料(4a)を除去する手順によって実施することができる。
【0012】
基板(1)上に作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)を形成する工程と測定用のウェルまたは流路(8b)および参照用のウェルまたは流路(8a)に対応する形状を溶出性樹脂(8)で基板(1)上に形成する工程との間で、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)を形成した基板(1)上にポジ型感光性樹脂(5)を塗布し、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)をマスク(6)により遮光しながら露光し、現像することにより上記領域とその近傍の領域(6b)を樹脂(5b)で覆い、絶縁物を基板上にスパッタリング(7)し、そして樹脂(5b)を溶出することにより樹脂(5b)の上にスパッタリングされた絶縁物(7b)を除去する手順によって、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)とを除く領域(6a)を絶縁する工程を実施することができる。
【0013】
測定用のウェルまたは流路(8b)および参照用のウェルまたは流路(8a)に対応する形状を溶出性樹脂(8)で基板(1)上に形成する工程は、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)とを除く領域(6a)を絶縁した基板(1)上にポジ型感光性樹脂(8)を塗布し、測定用のウェルまたは流路(8b)および参照用のウェルまたは流路(8a)に該当する領域(9b)をマスク(9)により遮光しながら露光し、現像する手順によって実施することができる。
【0014】
基板(1)上の溶出性樹脂(8)を非溶出性樹脂からなる樹脂層(10)で覆い、基板(1)、線状構造(4b−4)および樹脂層(10)によって囲まれる微小空間としてイオン流路(11)を形成する工程は、基板(1)上の溶出性樹脂(8)の上に硬化性樹脂(10)を塗布し、硬化性樹脂(10)を硬化させる手順によって実施することができる。
【0015】
溶出性樹脂(8)を溶出して測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とを形成する工程は、測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)に該当する領域の上の非溶出性樹脂からなる樹脂層(10)に穴(12a、12b、12c、12d)を開け、溶出性樹脂を溶出する手順によって実施することができる。
【0016】
本発明の目的は、基板(1)と樹脂層(16)との間に、測定用のウェルまたは流路(14b)と参照用のウェルまたは流路(14a)とが独立して設けられ、測定用のウェルまたは流路(14b)に作用電極(4b−1)と対向電極(4b−2)とが設けられ、参照用のウェルまたは流路に参照電極(4b−3)が設けられ、そして、測定用のウェルまたは流路(14b)と参照用のウェルまたは流路(14a)とがイオン流路(11)により連絡している電気化学測定装置を製造する方法であって、基板(1)上に作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とを結ぶ線に沿って0.01乃至2μmの高さ(h)まで盛り上がっている線状構造(4b−4)を形成する工程と樹脂層(16)上に測定用のウェルまたは流路(14b)および参照用のウェルまたは流路(14a)を形成する工程とを実施し、さらに、基板(1)と樹脂層(16)とを積層して、基板(1)、線状構造(4b−4)および樹脂層(16)によって囲まれる微小空間としてイオン流路(11)を形成する工程を実施することを特徴とする電気化学測定装置の製造方法(基板と樹脂層とを貼り合わせる方法)によっても達成された。
【0017】
作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)および線状構造(4b−4)は、金または白金からなることが好ましい。参照電極(4b−3)は、銀−塩化銀、金アマルガムまたは水素吸蔵パラジウムからなることが好ましい。
【0018】
基板(1)上に作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)を形成する工程は、基板(1)上にポジ型感光性樹脂(2)を塗布し、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域(3b)を除く領域(3a)をマスク(3)により遮光しながら露光し、現像することにより上記領域(3b)を除く領域(3a)を樹脂(2a)で覆い、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)の構成材料を基板(1)上にスパッタリング(4)し、そして樹脂(2a)を溶出することにより樹脂(2a)の上にスパッタリングされた上記材料(4a)を除去する手順によって実施することができる。
【0019】
基板(1)上に作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)を形成する工程と基板(1)と樹脂層(16)とを積層して、基板(1)、線状構造(4b−4)および樹脂層(16)によって囲まれる微小空間としてイオン流路(11)を形成する工程との間で、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)を形成した基板(1)上にポジ型感光性樹脂(5)を塗布し、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)をマスク(6)により遮光しながら露光し、現像することにより上記領域とその近傍の領域(6b)を樹脂(5b)で覆い、絶縁物を基板上にスパッタリング(7)し、そして樹脂(5b)を溶出することにより樹脂(5b)の上にスパッタリングされた絶縁物(7b)を除去する手順によって、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)とを除く領域(6a)を絶縁する工程を実施することができる。
【0020】
樹脂層(16)上に測定用のウェルまたは流路(14b)および参照用のウェルまたは流路(14a)を形成する工程を、支持体(13)上にネガ型感光性樹脂(14)を塗布し、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域(15a)を除く領域(15b)をマスク(15)により遮光しながら露光し、現像することにより測定用のウェルまたは流路(14b)および参照用のウェルまたは流路(14a)に該当する領域を樹脂(14)で覆い、該樹脂の上に硬化性樹脂(16)を塗布し、硬化性樹脂を硬化させ、硬化させた樹脂を剥離する手順によって実施することができる。
【0021】
基板(1)と樹脂層(16)とを積層した後、測定用および参照用の流路の入口と出口(12a、12b、12c、12d)を設けることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明者が非特許文献1に記載の電気化学測定装置を詳細に検討したところ、前述した単一の流路に伴う問題とは別に、わずかではあるが液漏れが生じる場合があるとの問題を発見した。本発明者は、当初、単一の流路に伴う問題を解決することと、液漏れが生じる問題を解決することとを別個に検討していたが、驚くべきことに、後者の問題を利用して、前者の問題を解決できることに気が付いた。
【0023】
本発明者の研究の結果、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とを結ぶ線に沿って0.01乃至2μmの高さまで盛り上がっている線状構造を形成すると、基板、線状構造および樹脂層によって囲まれる微小空間としてイオン流路(液絡)を形成することができることが判明した。
本発明によれば、非常に小型であっても、イオン流路として機能できる液絡を有し、測定用の流路(またはウェル)と参照用の流路(またはウェル)とが分離されている電気化学測定装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、電気化学測定装置の基板の斜視図である。
基板(1)は、ガラス板または石英板が好ましい。基板(1)は、表面を洗浄しておくことが好ましい。
【0025】
図2は、基板上にポジ型感光性樹脂を塗布した状態の斜視図である。
ポジ型感光性樹脂(2)は、光を照射すると分解し、現像液に溶解可能になる性質を有する樹脂である。ポジ型感光性性樹脂は、市販(例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ社製、あるいはローム・アンド・ハース製)のプリント基板用のレジストを用いることができる。
ポジ型感光性樹脂(2)は、通常の塗布方法(例、スピンコート)により、基板(1)上に塗布することができる。
【0026】
図3は、図2のポジ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図である。
基板(1)上に塗布したポジ型感光性樹脂(2)をマスク(3)で覆う。マスクは、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域(3b)が透明で、他の領域(3a)が不透明である。
図3の状態で露光すると、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域(3b)のポジ型感光性樹脂(2)が光照射により分解し、現像液に溶解可能になる。一方、他の領域(3a)のポジ型感光性樹脂(2)は、光が照射されず、変化がなく、現像液には溶解しない。
【0027】
図4は、露光後のポジ型感光性樹脂を現像した状態の斜視図である。
図3の状態で露光および現像すると、図4に示すように、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域のポジ型感光性樹脂が、現像液に溶解して除去される。これにより、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域では、基板(1)が露出する。
一方、他の領域のポジ型感光性樹脂(2a)は、現像液には溶解せずに残存する。
【0028】
図5は、電極の構成材料をスパッタリングした状態を示す斜視図である。
図5に示すように、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造の構成材料を基板(1)上にスパッタリング(4)する。スパッタリング(4)では、基板(1)が露出している作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域(4b)と樹脂(2a)が残存している他の領域(4a)の双方にスパッタリングした電極等の構成材料が蓄積する。
【0029】
なお、電極を構成する金属をスパッタリングする前に、下地となる金属をスパッタリングしてもよい。すなわち、電極を構成する金属よりも基板に対する親和性が高い金属を先にスパッタリングして、電極と基板との密着性を改善することができる。例えば、電極を構成する金属が白金で、基板がガラスまたは石英板の場合、チタンを下地として先にスパッタリングすることができる。また、電極を構成する金属が金で、基板がガラスまたは石英板の場合、クロムまたはチタンを下地として先にスパッタリングすることができる。
参照電極として銀−塩化銀電極を用いる場合のように、電極を構成する金属が異なる場合は、スパッタリングを複数回に分けて実施することもできる。参照電極の例には、銀−塩化銀電極に加えて、金アマルガム電極および水素吸蔵パラジウム電極が含まれる。
【0030】
図6は、樹脂を溶出した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図6に示すように、樹脂を溶出することにより、樹脂と共に樹脂の上にスパッタリングされた材料も除去される。これにより、基板(1)上に、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)が形成される。
樹脂の溶出は、(分解された樹脂のみを溶解する現像液とは異なり)分解されていないポジ型感光性樹脂も溶解できる溶媒を用いて実施する。
【0031】
図7は、電極を形成した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図7に示すように、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極および線状構造(4b−4)を形成した基板(1)上にポジ型感光性樹脂(5)を塗布する。ポジ型感光性樹脂(5)は、図2で説明したポジ型感光性樹脂(2)と同じ種類の樹脂であってもよい。
【0032】
図8は、図7のポジ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
基板(1)上に塗布したポジ型感光性樹脂(5)をマスク(6)で覆う。マスクは、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)が不透明で、他の領域(6a)が透明である。
図8の状態で露光すると、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)のポジ型感光性樹脂(5)は、光が照射されず、変化がなく、現像液には溶解しない。一方、他の領域(6a)のポジ型感光性樹脂(5)は、光照射により分解し、現像液に溶解可能になる。
【0033】
図9は、露光後のポジ型感光性樹脂を現像した状態の斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図8の状態で露光および現像すると、図9に示すように、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域以外の領域のポジ型感光性樹脂が、現像液に溶解して除去される。これにより、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域のポジ型感光性樹脂(5b)は、現像液には溶解せずに残存する。一方、他の領域では、基板(1)が露出する。
【0034】
図10は、絶縁物をスパッタリングした状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図10に示すように、絶縁物(例、二酸化ケイ素)を基板上にスパッタリング(7)する。スパッタリング(7)では、樹脂(5b)が残存している作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(7b)と基板(1)が露出している他の領域(7a)の双方にスパッタリングした絶縁物が蓄積する。
【0035】
図11は、樹脂を溶出した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図11に示すように、樹脂を溶出することにより、樹脂と共に樹脂の上にスパッタリングされた絶縁物も除去される。これにより、基板(1)上に、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)、線状構造(4b−4)に加えて、絶縁領域(7a−1、7a−2、7a−3)が形成される。
樹脂の溶出は、(分解された樹脂のみを溶解する現像液とは異なり)分解されていないポジ型感光性樹脂も溶解できる溶媒を用いて実施する。
樹脂の溶出後、基板に熱(アニーリング)処理を実施してもよい。また、基板に対して親水化処理を実施してもよい。
【0036】
図12は、絶縁領域を形成した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図12に示すように、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極、線状構造(4b−4)および絶縁領域(7a−1、7a−2)を形成した基板(1)上にポジ型感光性樹脂(8)を塗布する。ポジ型感光性樹脂(8)は、図2で説明したポジ型感光性樹脂(2)と同じ種類の樹脂であってもよい。
【0037】
図13は、図12のポジ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
基板(1)上に塗布したポジ型感光性樹脂(8)をマスク(9)で覆う。マスクは、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域(9b)が不透明で、他の領域(9a)が透明である。
図13の状態で露光すると、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域(9b)は、光が照射されず、変化がなく、現像液には溶解しない。一方、他の領域(9a)のポジ型感光性樹脂(8)は、光照射により分解し、現像液に溶解可能になる。
【0038】
図14は、樹脂を現像した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図13の状態で露光および現像すると、図14に示すように、測定用のウェルまたは流路(8b)および参照用のウェルまたは流路(8a)に対応する形状以外のポジ型感光性樹脂が、現像液に溶解して除去される。これにより、基板(1)上に、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)、線状構造(4b−4)、絶縁領域(7a−1、7a−2、7a−3)に加えて、測定用のウェルまたは流路(8b)および参照用のウェルまたは流路(8a)に対応する形状が形成される。
流路に対応する形状を形成後、基板に対して親水化処理を実施してもよい。
【0039】
図15は、ウェルまたは流路に対応する形状を形成した基板上に非溶出性樹脂を塗布した状態を示す斜視図(a)、断面図(b)および拡大図(c)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。拡大図(c)は、断面図(b)の円内を拡大した状態を示す図である。
図15に示すように、基板(1)上の溶出性樹脂を非溶出性樹脂からなる樹脂層(10)で覆うと、基板(1)、線状構造(4b−4)および樹脂層(10)によって囲まれる微小空間としてイオン流路(11)を形成することができる。
樹脂層を構成する非溶出性樹脂は、モノマー、オリゴマーまたはプレポリマーの状態(流動性のある状態)で基板上に塗布し、その後で硬化させることが好ましい。
【0040】
イオン流路(11)を形成するため、線状構造(4b−4)の高さ(h)は、0.01乃至2μmである。高さ(h)は、0.02乃至1μmが好ましく、0.05乃至0.5μmがさらに好ましく、0.1乃至0.2μmが最も好ましい。
線状構造の長さは、50μm乃至5mmであることが好ましく、100μm乃至2mmであることがさらに好ましく、200μm乃至1mmであることが最も好ましい。
イオン流路の長さは、100μm乃至10mmであることが好ましく、200μm乃至5mmであることがさらに好ましく、500μm乃至2mmであることが最も好ましい。
【0041】
図16は、ウェルまたは流路を形成した状態を示す斜視図(完成図)である。
図16に示すように、測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)に該当する領域の上の非溶出性樹脂からなる樹脂層(10)に穴(12a、12b、12c、12d)を開け、溶出性樹脂(8)を溶出する。これにより、測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とを形成することができる。穴(12a、12b、12c、12d)は、流路の場合、入口と出口として機能させることができる。
以上の基板上に順次形成する方法により、電気化学測定装置を製造することができる。
【0042】
流路の幅は、50μm乃至5mmであることが好ましく、100μm乃至2mmであることがさらに好ましく、200μm乃至1mmであることが最も好ましい。
流路の長さは、1乃至100mmであることが好ましく、2乃至50mmであることがさらに好ましく、5乃至20mmであることが最も好ましい。
流路の深さは、1乃至100μmであることが好ましく、2乃至50μmであることがさらに好ましく、5乃至20μmであることが最も好ましい。
【0043】
図17は、基板と樹脂層とを貼り合わせる方法に用いる支持体の斜視図である。
支持体(13)は、基板と同様の材料を用いることができる。
支持体に対して親水化処理を実施してもよい。
【0044】
図18は、支持体上にネガ型感光性樹脂を塗布した状態の斜視図である。
ネガ型感光性樹脂(14)は、光を照射すると硬化し、現像液に不溶性になる性質を有する樹脂である。ネガ型感光性樹脂(14)は、通常の塗布方法(例、スピンコート)により、支持体(13)上に塗布することができる。
【0045】
図19は、図18のネガ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図である。
支持体(13)上に塗布したネガ型感光性樹脂(14)をマスク(15)で覆う。マスクは、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域(15a)が透明で、他の領域(15b)が不透明である。
図19の状態で露光すると、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域(15a)のネガ型感光性樹脂(14)が光照射により硬化し、現像液に溶解しなくなる。一方、他の領域(15b)のネガ型感光性樹脂(14)は、光が照射されず、変化がなく、現像液に溶解する。
【0046】
図20は、露光後のネガ型感光性樹脂を現像した状態の斜視図である。
図19の状態で露光および現像すると、図20に示すように、測定用のウェルまたは流路(14b)および参照用のウェルまたは流路(14a)の樹脂は、現像液には溶解せずに残存する。その他の領域の樹脂は、現像液に溶解して除去される。これにより、測定用のウェルまたは流路(14b)および参照用のウェルまたは流路(14a)に該当する領域が樹脂(14)で覆われる。
【0047】
図21は、基板と樹脂層とを貼り合わせる工程を示す斜視図である。
図21の(a)は、図20のネガ型感光性樹脂を現像した後で、硬化性樹脂(16)を塗布し、硬化性樹脂を硬化させた状態を示す。硬化性樹脂(16)を塗布する前に、硬化した樹脂の剥離が容易となるように、支持体およびネガ型感光性樹脂の表面を疎水化処理しておくことが好ましい。硬化性樹脂は、ゴム状であることが好ましい。
硬化した樹脂層(16)を剥がすと、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域が凹部として樹脂層(16)に形成される。
図21の(b)は、図11に示した作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)、線状構造(4b−4)に加えて、絶縁領域(7a−1、7a−2、7a−3)が形成した基板(1)である。
図21の(a)から剥離した樹脂層(16)を反転させて、図21の(b)に貼り合わせることにより、電気化学測定装置を製造する。
貼り合わせは、光学顕微鏡により観察しながら手作業で実施するか、あるいはマニピュレーターを操作しながら実施することができる。
【0048】
図22は、図21の(a)から剥離した樹脂層(16)を反転させて、図21の(b)に貼り合わせた状態を示す斜視図(a)、断面図(b)および拡大図(c)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。拡大図(c)は、断面図(b)の円内を拡大した状態を示す図である。
図22に示すように、基板(1)に樹脂層(16)を貼り合わせると、基板(1)、線状構造(4b−4)および樹脂層(16)によって囲まれる微小空間としてイオン流路(11)を形成することができる。
【0049】
イオン流路(11)を形成するため、線状構造(4b−4)の高さ(h)は、0.01乃至2μmである。高さ(h)は0.02乃至1μmが好ましく、0.05乃至0.5μmがさらに好ましく、0.1乃至0.2μmが最も好ましい。
線状構造の長さは、50μm乃至5mmであることが好ましく、100μm乃至2mmであることがさらに好ましく、200μm乃至1mmであることが最も好ましい。
イオン流路の長さは、100μm乃至10mmであることが好ましく、200μm乃至5mmであることがさらに好ましく、500μm乃至2mmであることが最も好ましい。
【0050】
図23は、流路の入口と出口とを形成した状態を示す斜視図(完成図)である。
図23に示すように、測定用の流路(14b)と参照用の流路(14a)に該当する領域の上の非溶出性樹脂からなる樹脂層(16)に穴(12a、12b、12c、12d)を開け、入口と出口を設けることができる。
以上の基板と樹脂層とを貼り合わせる方法によっても、電気化学測定装置を製造することができる。
【実施例】
【0051】
[実施例1](基板上に順次形成する方法)
厚さ1.2mmの耐熱ガラス(パイレックス)板を、ガラスカッターを用いて25.4mm×16.3mmの長方形に裁断し、ガラス基板を得た。ガラス基板を中性洗剤で擦り洗いし、次に、蒸留水、超純水、アセトン、そしてイソプロパノールの順序で、それぞれ5分間、段階的に超音波洗浄した。最後にガラス基板に付着しているイソプロパノールを、遠心機で除去した(図1に示す状態)。
基板の一方の面にプライマー(MICROPOSITTM、ローム・アンド・ハース社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。その上に、ポジ型感光性レジスト(S1818MICROPOSITTM、ローム・アンド・ハース社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。基板をホットプレートに載せ、65℃で1分間、次に95℃で5分間熱(プレベーク)処理した。さらに、65℃で3分間熱処理した後、基板をホットプレートから下ろし、室温で1分間かけて徐々に冷却した(図2に示す状態)。
【0052】
電極用のフォトマスクと基板とを、位置合わせを行った後、密着させた(図3に示す状態)。
高圧水銀ランプを備えた密着露光装置(マスクアライナーMA−20、ミサカ(株)製)を用いて、基板を7秒間露光した。基板を現像液に1分30秒間浸漬し、露光部のレジストを現像液に溶解させて除去した。次に基板を蒸留水で二回洗浄した。最後に、基板に付着している蒸留水を送風機(ブロア)で除去した(図4に示す状態)。
【0053】
電極パターンを形成した基板を、スパッタリング装置(L−332SFH、アネルバ社製)のチャンバー内に入れた。作用電極、対向電極および線状構造を形成する領域に対して、200Wfで3分間のスパッタリングによりチタン薄膜を下地として形成した。その上に、200Wfで5分間のスパッタリングにより白金薄膜を形成した。さらに、参照電極を形成する領域に対しては、直接、銀薄膜をスパッタリングにより形成した(図5に示す状態)。
アセトン(レジストの溶媒)を用いて、基板上に残っていたレジストを、その上にスパッタリングされた金属(チタン、白金、銀)と共に除去(リフトオフ)した(図6に示す状態)。
【0054】
電極を形成した基板に、プライマー(MICROPOSITTM、ローム・アンド・ハース社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。その上に、ポジ型感光性レジスト(S1818MICROPOSITTM、ローム・アンド・ハース社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。基板をホットプレートに載せ、65℃で1分間、次に95℃で5分間熱(プレベーク)処理した。さらに、65℃で3分間熱処理した後、基板をホットプレートから下ろし、室温で1分間かけて徐々に冷却した(図7に示す状態)。
電極上の絶縁しない部分(非絶縁部)のマスクと基板とを、位置合わせを行った後、密着させた(図8に示す状態)。
【0055】
高圧水銀ランプを備えた密着露光装置(マスクアライナーMA−20、ミサカ(株)製)を用いて、基板を7秒間露光した。基板を現像液に1分30秒間浸漬し、露光部のレジストを現像液に溶解させて除去した。次に基板を蒸留水で二回洗浄した。最後に、基板に付着している蒸留水を送風機(ブロア)で除去した(図9に示す状態)。
基板を、スパッタリング装置(L−332SFH、アネルバ社製)のチャンバー内に入れた。100Wfで1時間、二酸化ケイ素をスパッタリングした(図10に示す状態)。
【0056】
アセトン(レジストの溶媒)を用いて、基板上に残っていたレジストを、その上にスパッタリングされた二酸化ケイ素と共に除去(リフトオフ)した(図11に示す状態)。
基板を800℃で1時間熱(アニーリング)処理し、約12時間かけて室温まで徐々に冷却した。
基板を中性洗剤で擦り洗いし、次に、蒸留水、超純水、アセトン、そしてイソプロパノールの順序で、それぞれ5分間、段階的に超音波洗浄した。最後に付着しているイソプロパノールを、遠心機で除去した。基板に対して、100Wfの酸素プラズマアッシャー処理を1分間実施し、基板表面のヒドロキシル基を活性化した。
基板にプライマー(MICROPOSITTM、ローム・アンド・ハース社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。その上に、ポジ型感光性レジスト(AZ・P4903、クラリアントジャパン社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。基板をホットプレートに載せ、65℃で1分間、次に95℃で20分間熱(プレベーク)処理した。徐々に冷却後、さらに65℃で3分間熱処理した。その後、基板をホットプレートから下ろし、室温で徐々に冷却した(図12に示す状態)。
【0057】
流路用のネガ型フォトマスクと基板とを、位置合わせを行った後、密着させた(図13に示す状態)。
高圧水銀ランプを備えた密着露光装置(マスクアライナーMA−20、ミサカ(株)製)を用いて、基板を25秒間露光した。現像原液(AZ400k・developer)を蒸留水で容量比3:2(原液:水)に希釈して、現像液を調製した。現像液を露光した基板に、スポイトで3分間吹き付けて現像した。次に基板を蒸留水で二回洗浄した。最後に、基板に付着している蒸留水を送風機(ブロア)で除去した(図14に示す状態)。
基板に対して、100Wfの酸素プラズマアッシャー処理を1分間実施し、基板表面のヒドロキシル基を活性化した。
【0058】
シリコーンプレポリマー(PDMS、ダウコーニング社製)と硬化剤との質量比10:1(プレポリマー:混合物)の混合物を基板上に流し込み、100℃で1時間処理して、熱硬化させた(図15に示す状態)。
直径1.2mmのステンレス管を貫通させることで、流路の出入り口を作製した。基板全体をアセトン中に一日浸漬することで、ポジ型感光性レジストからなる流路鋳型パターンを溶出させた。その後、スポイトを用いて入り口からアセトンを導入して、流路に残留するポジ型感光性レジストを強制的に溶出した(図16に示す状態)。
以上のように、電気化学測定装置を作製した。
【0059】
[実施例2](基板と樹脂層とを貼り合わせる方法)
厚さ1.2mmの耐熱ガラス(パイレックス)板を、ガラスカッターを用いて25.4mm×16.3mmの長方形に裁断し、ガラス製の支持体を得た。支持体を中性洗剤で擦り洗いし、次に、蒸留水、超純水、アセトン、そしてイソプロパノールの順序で、それぞれ5分間、段階的に超音波洗浄した。最後に支持体に付着しているイソプロパノールを、送風機(ブロア)で除去した(図17に示す状態)。
支持体に対して、100Wfの酸素プラズマアッシャー処理を1分間実施し、支持体表面のヒドロキシル基を活性化した。
支持体上に、ネガ型感光性レジスト(SU−8・2010、化薬マイクロケム社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。ヒーターを用いて支持体を、65℃で2分間、次に95℃で5分間熱(プレベーク)処理した。さらに65℃で3分間放置した。ヒーターの電源を切ることにより、ヒーター上の温度が40℃以下になるまでゆっくり冷却した(図18に示す状態)。
【0060】
ネガ流路用のフォトマスクと支持体とを、位置合わせを行った後、密着させた(図19に示す状態)。
高圧水銀ランプを備えた密着露光装置(マスクアライナーMA−20、ミサカ(株)製)を用いて、支持体を22秒間露光した。ヒーターを用いて支持体を、65℃で1分間、次に95℃で2分間熱(ポストベーク)処理した。65℃に設定したヒーター上に支持体を戻して、3分間放置した。ヒーターの電源を切ることにより、ヒーター上の温度が40℃以下になるまでゆっくり冷却した。現像液(SU−8・Developer)に支持体を浸漬し、90秒間スポイトで現像液を吹き付けながら現像した。イソプロパノールで二回洗浄し、送風機(ブロア)で乾燥し、流路鋳型パターンを支持体上に形成した(図20に示す状態)。
窒素雰囲気のグローブボックス内のビーカー内壁に沿って、流路鋳型パターンを形成した支持体を配置した。ビーカー底面中央に、20μLのフッ化シラン(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン)溶液を滴下後、アルミホイルでさらに密閉することにより、ビーカー内を気化したフッ化シランで飽和させた。30分間の反応後、グローブボックスから支持体を取り出し、表面に水を滴下することにより、疎水化処理の完了を確認した。
【0061】
シリコーンプレポリマー(PDMS、ダウコーニング社製)と硬化剤との質量比10:1(プレポリマー:混合物)の混合物を支持体上に流し込み、100℃で1時間処理して、熱硬化させた(図21(a)に示す状態)。
実施例1において作成した、対向電極、参照電極、線状構造および絶縁領域を形成した基板(図21(b)に示す状態)を準備した。
支持体から樹脂層を剥離し、樹脂層と基板とを光学顕微鏡により観察しながら、手作業で張り合わせた(図22に示す状態)。
直径1.2mmのステンレス管を貫通させることで、流路の出入り口を作製した。基板全体をアセトン中に一日浸漬することで、ネガ型感光性レジストからなる流路鋳型パターンを溶出させた。その後、スポイトを用いて入り口からアセトンを導入して、流路に残留するネガ型感光性レジストを強制的に溶出した(図23に示す状態)。
以上のように、電気化学測定装置を作製した。
【0062】
(電気化学測定装置の評価)
実施例2で作製した電気化学測定装置について、サイクリックボルタンメトリー計測を行なった。結果を図24のチャートに示す。
図24の横軸(X軸)は、銀/塩化銀参照電極に対するポテンシャル(V)である。縦軸(Y軸)は電流(An)である。
【0063】
図24のIは、実施例2で作製した電気化学測定装置の内部の作用電極、対向電極および参照電極を使用した場合における、4.0mMK4Fe(CN)6、0.1MKClのサイクリックボルタモグラムである。なお、参照電極の流路は、飽和塩化カリウムで満たした。図24のOは、参照電極として、通常の外部小型参照電極(銀−塩化銀)を、参照電極流路の入り口に差し込み、測定に用いた場合である。IとOとは、ほとんど同じサイクリックボルタグラムを示し、内部参照電極と微小液絡とが作動していることを証明している。
なお、二つの流路の間に白金パターンを設けない場合には、二つの流路を介してのサイクリックボルタンメトリーを測定することができなかった。これにより、二つの流路間に何らかのパターンを設ける必要があることが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により、微小流路や微小ウェルなどで、電気化学測定を作用電極側と参照電極側の物質移動を無視できる状態で電気化学測定が可能になる。これにより、参照電極側からの作用電極への汚染や作用電極側の培地が参照電極側の塩濃度を変え電位が不安定化することを防ぐことができる。本発明の装置は、細胞の活性測定のためのウェルや、様々な有機物質を含む混合物の極微量分析に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】電気化学測定装置の基板の斜視図である。
【図2】基板上にポジ型感光性樹脂を塗布した状態の斜視図である。
【図3】図2のポジ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図である。
【図4】露光後のポジ型感光性樹脂を現像した状態の斜視図である。
【図5】電極の構成材料をスパッタリングした状態を示す斜視図である。
【図6】樹脂を溶出した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図7】電極を形成した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図8】図7のポジ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図(a)および断面図(b)である。
【図9】露光後のポジ型感光性樹脂を現像した状態の斜視図(a)および断面図(b)である。
【図10】絶縁物をスパッタリングした状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図11】樹脂を溶出した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図12】絶縁領域を形成した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図13】図12のポジ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図(a)および断面図(b)である。
【図14】樹脂を現像した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図15】ウェルまたは流路に対応する形状を形成した基板上に非溶出性樹脂を塗布した状態を示す斜視図(a)、断面図(b)および拡大図(c)である。
【図16】ウェルまたは流路を形成した状態を示す斜視図(完成図)である。
【図17】基板と樹脂層とを貼り合わせる方法に用いる支持体の斜視図である
【図18】支持体上にネガ型感光性樹脂を塗布した状態の斜視図である。。
【図19】図18のネガ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図である。
【図20】露光後のネガ型感光性樹脂を現像した状態の斜視図である。
【図21】基板(b)と樹脂層(a)とを貼り合わせる工程を示す斜視図である。
【図22】図21の(a)から剥離した樹脂層を反転させて、図21の(b)に貼り合わせた状態を示す斜視図(a)、断面図(b)および拡大図(c)である。
【図23】流路の入口と出口とを形成した状態を示す斜視図(完成図)である。
【図24】電気化学測定装置について、サイクリックボルタンメトリー計測を行なった結果である。
【符号の説明】
【0066】
1 基板
2 ポジ型感光性樹脂
2a 不透明領域のポジ型感光性樹脂
3 マスク
3a 不透明領域
3b 透明領域
4 スパッタリング
4a 基板が露出している領域
4b 樹脂が残存している領域
4b−1 作用電極に該当する領域
4b−2 対向電極に該当する領域
4b−3 参照電極に該当する領域
4b−4 線状構造に該当する領域
5、5b ポジ型感光性樹脂
6 マスク
6a 透明領域
6b 不透明領域
7 スパッタリング
7a 基板が露出している領域
7a−1、7a−2、7a−3 絶縁領域
7b 樹脂が残存している領域
8 ポジ型感光性樹脂
8a 参照用のウェルまたは流路に対応する形状
8b 測定用のウェルまたは流路に対応する形状
9 マスク
9a 透明領域
9b 不透明領域
10 非溶出性樹脂からなる樹脂層
11 イオン流路
12a、12b、12c、12d 穴
13 支持体
14 ネガ型感光性樹脂
14a 参照用のウェルまたは流路に対応する形状
14b 測定用のウェルまたは流路に対応する形状
15 マスク
15a 透明領域
15b 不透明領域
16 硬化性樹脂
h 線状構造の高さ
X−X’ 斜視図の切断方向
X軸(図24) 銀/塩化銀参照電極に対するポテンシャル(V)
Y軸(図24) 電流(An)
I 内部の参照電極を使用した場合におけるサイクリックボルタモグラム
O 外部小型参照電極を使用した場合におけるサイクリックボルタモグラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学測定装置の製造方法に関する。特に本発明は、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とがイオン流路により連絡している電気化学測定装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小参照電極を備えた小型の電気化学測定装置は、細胞機能の測定、バイオアッセイあるいは極微量の物質測定に用いられている。小型の電気化学測定装置でも、通常の電気化学測定の場合と同様に、作用電極、参照電極(基準電極)および対向電極(補助電極)を備えたマイクロウェルまたはマイクロ流路を有する微小電気化学セルが必要である。微小電気化学セルの製造では、回路基板の製造のために開発されたフォトリソグラフィーの方法を応用することができる。
【0003】
非特許文献1は、バイオアッセイに用いるマイクロ流路の製造方法を開示している。非特許文献1に記載の方法では、PDMS(Polydimethylsiloxane)のような樹脂系の素材でガラス基板上に流路を形成し、流路中に、作用電極、参照電極(基準電極)および対向電極(補助電極)を形成している。作用電極および対向電極は、金または白金からなる微小パターンバンド電極である。参照電極は、銀−塩化銀電極である。
非特許文献1は、単一の流路(またはウェル)に、作用電極、参照電極および対向電極を形成している。単一の流路に銀−塩化銀参照電極と、作用電極および対向電極とが共存すると、銀イオンによる作用電極の汚染が問題となる。
【0004】
非特許文献1の記載では、流路の上流に作用電極を配置し、下流に参照電極を配置した構成とすることにより、汚染の問題を回避している。この場合、一定方向に安定した流速で電解溶液を流す必要がある。マイクロ流路において、一定の安定な流速を確保することは容易ではない。銀−塩化銀参照電極に代えて、金アマルガム電極を用いても、水銀イオンによる汚染の問題が起きる。
また、参照電極の電位を安定に保つためには、参照電極が存在している流路内の電解質の成分を一定に保つ必要がある。そのため、単一の流路を用いる方法では、電解質の成分が制限される結果として、測定対象が著しく制限される。
【0005】
一般的な電気化学測定装置では、二つの容器または流路(測定用の容器または流路と参照用の容器または流路)を用いて、作用電極および対向電極と参照電極とを分離することが普通である。二つの流路は、イオン流路として機能する液絡(塩橋)を用いて接続させる。液絡としては、一般に、ゲル、毛細管あるいはセラミックス多孔質が用いられている(非特許文献2参照)。
【0006】
【非特許文献1】安川智之外(Tomoyuki Yasukawa et al.)、ジャーナル・オブ・マイクロエレクトロメカニカル・システムズ(Journal of Microelectromechanical Systems)、14巻、No.4、2005年8月
【非特許文献2】ドナルド・ティー・ソーヤー外(Donald T. Sawyer et al.)著、電気化学測定法の基礎(Electrochemistry for Chemists)、第2版、丸善、平成15年3月25日、114〜119頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
小型の電気化学測定装置において、測定用の流路(またはウェル)と参照用の流路(またはウェル)とを分離する場合、液絡をどのように設けるのかが非常に難しい問題である。一般的な電気化学測定装置で普通に用いられているゲル、毛細管あるいはセラミックス多孔質を、そのまま小型にして、マイクロ流路(またはマイクロウェル)と組み合わせて使用することは困難である。
【0008】
本発明の目的は、非常に小型であっても、イオン流路として機能できる液絡を有し、測定用の流路(またはウェル)と参照用の流路(またはウェル)とが分離されている電気化学測定装置を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、基板(1)と樹脂層(10)との間に、測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とが独立して設けられ、測定用のウェルまたは流路(8b)に作用電極(4b−1)と対向電極(4b−2)とが設けられ、参照用のウェルまたは流路(8a)に参照電極(4b−3)が設けられ、そして、測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とがイオン流路(11)により連絡している電気化学測定装置を製造する方法であって、基板(1)上に作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とを結ぶ線に沿って0.01乃至2μmの高さ(h)まで盛り上がっている線状構造(4b−4)を形成する工程、測定用のウェルまたは流路(8b)および参照用のウェルまたは流路(8a)に対応する形状を溶出性樹脂(8)で基板(1)上に形成する工程、基板上の溶出性樹脂(8)を非溶出性樹脂からなる樹脂層(10)で覆い、基板(1)、線状構造(4b−4)および樹脂層(10)によって囲まれる微小空間としてイオン流路(11)を形成する工程、そして、溶出性樹脂(8)を溶出して測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とを形成する工程を順次実施することを特徴とする電気化学測定装置の製造方法(基板上に順次形成する方法)により達成された。
【0010】
作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)および線状構造(4b−4)は、金または白金からなることが好ましい。参照電極(4b−3)は、銀−塩化銀、金アマルガムまたは水素吸蔵パラジウムからなることが好ましい。
【0011】
基板(1)上に作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)を形成する工程は、基板(1)上にポジ型感光性樹脂(2)を塗布し、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域(3b)を除く領域(3a)をマスク(3)により遮光しながら露光し、現像することにより上記領域(3b)を除く領域(3a)を樹脂(2a)で覆い、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)の構成材料を基板(1)上にスパッタリング(4)し、そして樹脂(2a)を溶出することにより樹脂(2a)の上にスパッタリングされた上記材料(4a)を除去する手順によって実施することができる。
【0012】
基板(1)上に作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)を形成する工程と測定用のウェルまたは流路(8b)および参照用のウェルまたは流路(8a)に対応する形状を溶出性樹脂(8)で基板(1)上に形成する工程との間で、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)を形成した基板(1)上にポジ型感光性樹脂(5)を塗布し、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)をマスク(6)により遮光しながら露光し、現像することにより上記領域とその近傍の領域(6b)を樹脂(5b)で覆い、絶縁物を基板上にスパッタリング(7)し、そして樹脂(5b)を溶出することにより樹脂(5b)の上にスパッタリングされた絶縁物(7b)を除去する手順によって、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)とを除く領域(6a)を絶縁する工程を実施することができる。
【0013】
測定用のウェルまたは流路(8b)および参照用のウェルまたは流路(8a)に対応する形状を溶出性樹脂(8)で基板(1)上に形成する工程は、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)とを除く領域(6a)を絶縁した基板(1)上にポジ型感光性樹脂(8)を塗布し、測定用のウェルまたは流路(8b)および参照用のウェルまたは流路(8a)に該当する領域(9b)をマスク(9)により遮光しながら露光し、現像する手順によって実施することができる。
【0014】
基板(1)上の溶出性樹脂(8)を非溶出性樹脂からなる樹脂層(10)で覆い、基板(1)、線状構造(4b−4)および樹脂層(10)によって囲まれる微小空間としてイオン流路(11)を形成する工程は、基板(1)上の溶出性樹脂(8)の上に硬化性樹脂(10)を塗布し、硬化性樹脂(10)を硬化させる手順によって実施することができる。
【0015】
溶出性樹脂(8)を溶出して測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とを形成する工程は、測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)に該当する領域の上の非溶出性樹脂からなる樹脂層(10)に穴(12a、12b、12c、12d)を開け、溶出性樹脂を溶出する手順によって実施することができる。
【0016】
本発明の目的は、基板(1)と樹脂層(16)との間に、測定用のウェルまたは流路(14b)と参照用のウェルまたは流路(14a)とが独立して設けられ、測定用のウェルまたは流路(14b)に作用電極(4b−1)と対向電極(4b−2)とが設けられ、参照用のウェルまたは流路に参照電極(4b−3)が設けられ、そして、測定用のウェルまたは流路(14b)と参照用のウェルまたは流路(14a)とがイオン流路(11)により連絡している電気化学測定装置を製造する方法であって、基板(1)上に作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とを結ぶ線に沿って0.01乃至2μmの高さ(h)まで盛り上がっている線状構造(4b−4)を形成する工程と樹脂層(16)上に測定用のウェルまたは流路(14b)および参照用のウェルまたは流路(14a)を形成する工程とを実施し、さらに、基板(1)と樹脂層(16)とを積層して、基板(1)、線状構造(4b−4)および樹脂層(16)によって囲まれる微小空間としてイオン流路(11)を形成する工程を実施することを特徴とする電気化学測定装置の製造方法(基板と樹脂層とを貼り合わせる方法)によっても達成された。
【0017】
作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)および線状構造(4b−4)は、金または白金からなることが好ましい。参照電極(4b−3)は、銀−塩化銀、金アマルガムまたは水素吸蔵パラジウムからなることが好ましい。
【0018】
基板(1)上に作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)を形成する工程は、基板(1)上にポジ型感光性樹脂(2)を塗布し、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域(3b)を除く領域(3a)をマスク(3)により遮光しながら露光し、現像することにより上記領域(3b)を除く領域(3a)を樹脂(2a)で覆い、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)の構成材料を基板(1)上にスパッタリング(4)し、そして樹脂(2a)を溶出することにより樹脂(2a)の上にスパッタリングされた上記材料(4a)を除去する手順によって実施することができる。
【0019】
基板(1)上に作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)を形成する工程と基板(1)と樹脂層(16)とを積層して、基板(1)、線状構造(4b−4)および樹脂層(16)によって囲まれる微小空間としてイオン流路(11)を形成する工程との間で、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)を形成した基板(1)上にポジ型感光性樹脂(5)を塗布し、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)をマスク(6)により遮光しながら露光し、現像することにより上記領域とその近傍の領域(6b)を樹脂(5b)で覆い、絶縁物を基板上にスパッタリング(7)し、そして樹脂(5b)を溶出することにより樹脂(5b)の上にスパッタリングされた絶縁物(7b)を除去する手順によって、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)とを除く領域(6a)を絶縁する工程を実施することができる。
【0020】
樹脂層(16)上に測定用のウェルまたは流路(14b)および参照用のウェルまたは流路(14a)を形成する工程を、支持体(13)上にネガ型感光性樹脂(14)を塗布し、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域(15a)を除く領域(15b)をマスク(15)により遮光しながら露光し、現像することにより測定用のウェルまたは流路(14b)および参照用のウェルまたは流路(14a)に該当する領域を樹脂(14)で覆い、該樹脂の上に硬化性樹脂(16)を塗布し、硬化性樹脂を硬化させ、硬化させた樹脂を剥離する手順によって実施することができる。
【0021】
基板(1)と樹脂層(16)とを積層した後、測定用および参照用の流路の入口と出口(12a、12b、12c、12d)を設けることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明者が非特許文献1に記載の電気化学測定装置を詳細に検討したところ、前述した単一の流路に伴う問題とは別に、わずかではあるが液漏れが生じる場合があるとの問題を発見した。本発明者は、当初、単一の流路に伴う問題を解決することと、液漏れが生じる問題を解決することとを別個に検討していたが、驚くべきことに、後者の問題を利用して、前者の問題を解決できることに気が付いた。
【0023】
本発明者の研究の結果、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とを結ぶ線に沿って0.01乃至2μmの高さまで盛り上がっている線状構造を形成すると、基板、線状構造および樹脂層によって囲まれる微小空間としてイオン流路(液絡)を形成することができることが判明した。
本発明によれば、非常に小型であっても、イオン流路として機能できる液絡を有し、測定用の流路(またはウェル)と参照用の流路(またはウェル)とが分離されている電気化学測定装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、電気化学測定装置の基板の斜視図である。
基板(1)は、ガラス板または石英板が好ましい。基板(1)は、表面を洗浄しておくことが好ましい。
【0025】
図2は、基板上にポジ型感光性樹脂を塗布した状態の斜視図である。
ポジ型感光性樹脂(2)は、光を照射すると分解し、現像液に溶解可能になる性質を有する樹脂である。ポジ型感光性性樹脂は、市販(例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ社製、あるいはローム・アンド・ハース製)のプリント基板用のレジストを用いることができる。
ポジ型感光性樹脂(2)は、通常の塗布方法(例、スピンコート)により、基板(1)上に塗布することができる。
【0026】
図3は、図2のポジ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図である。
基板(1)上に塗布したポジ型感光性樹脂(2)をマスク(3)で覆う。マスクは、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域(3b)が透明で、他の領域(3a)が不透明である。
図3の状態で露光すると、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域(3b)のポジ型感光性樹脂(2)が光照射により分解し、現像液に溶解可能になる。一方、他の領域(3a)のポジ型感光性樹脂(2)は、光が照射されず、変化がなく、現像液には溶解しない。
【0027】
図4は、露光後のポジ型感光性樹脂を現像した状態の斜視図である。
図3の状態で露光および現像すると、図4に示すように、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域のポジ型感光性樹脂が、現像液に溶解して除去される。これにより、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域では、基板(1)が露出する。
一方、他の領域のポジ型感光性樹脂(2a)は、現像液には溶解せずに残存する。
【0028】
図5は、電極の構成材料をスパッタリングした状態を示す斜視図である。
図5に示すように、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造の構成材料を基板(1)上にスパッタリング(4)する。スパッタリング(4)では、基板(1)が露出している作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域(4b)と樹脂(2a)が残存している他の領域(4a)の双方にスパッタリングした電極等の構成材料が蓄積する。
【0029】
なお、電極を構成する金属をスパッタリングする前に、下地となる金属をスパッタリングしてもよい。すなわち、電極を構成する金属よりも基板に対する親和性が高い金属を先にスパッタリングして、電極と基板との密着性を改善することができる。例えば、電極を構成する金属が白金で、基板がガラスまたは石英板の場合、チタンを下地として先にスパッタリングすることができる。また、電極を構成する金属が金で、基板がガラスまたは石英板の場合、クロムまたはチタンを下地として先にスパッタリングすることができる。
参照電極として銀−塩化銀電極を用いる場合のように、電極を構成する金属が異なる場合は、スパッタリングを複数回に分けて実施することもできる。参照電極の例には、銀−塩化銀電極に加えて、金アマルガム電極および水素吸蔵パラジウム電極が含まれる。
【0030】
図6は、樹脂を溶出した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図6に示すように、樹脂を溶出することにより、樹脂と共に樹脂の上にスパッタリングされた材料も除去される。これにより、基板(1)上に、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)および線状構造(4b−4)が形成される。
樹脂の溶出は、(分解された樹脂のみを溶解する現像液とは異なり)分解されていないポジ型感光性樹脂も溶解できる溶媒を用いて実施する。
【0031】
図7は、電極を形成した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図7に示すように、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極および線状構造(4b−4)を形成した基板(1)上にポジ型感光性樹脂(5)を塗布する。ポジ型感光性樹脂(5)は、図2で説明したポジ型感光性樹脂(2)と同じ種類の樹脂であってもよい。
【0032】
図8は、図7のポジ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
基板(1)上に塗布したポジ型感光性樹脂(5)をマスク(6)で覆う。マスクは、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)が不透明で、他の領域(6a)が透明である。
図8の状態で露光すると、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(6b)のポジ型感光性樹脂(5)は、光が照射されず、変化がなく、現像液には溶解しない。一方、他の領域(6a)のポジ型感光性樹脂(5)は、光照射により分解し、現像液に溶解可能になる。
【0033】
図9は、露光後のポジ型感光性樹脂を現像した状態の斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図8の状態で露光および現像すると、図9に示すように、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域以外の領域のポジ型感光性樹脂が、現像液に溶解して除去される。これにより、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域のポジ型感光性樹脂(5b)は、現像液には溶解せずに残存する。一方、他の領域では、基板(1)が露出する。
【0034】
図10は、絶縁物をスパッタリングした状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図10に示すように、絶縁物(例、二酸化ケイ素)を基板上にスパッタリング(7)する。スパッタリング(7)では、樹脂(5b)が残存している作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極および線状構造(4b−4)に該当する領域とその近傍の領域(7b)と基板(1)が露出している他の領域(7a)の双方にスパッタリングした絶縁物が蓄積する。
【0035】
図11は、樹脂を溶出した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図11に示すように、樹脂を溶出することにより、樹脂と共に樹脂の上にスパッタリングされた絶縁物も除去される。これにより、基板(1)上に、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)、線状構造(4b−4)に加えて、絶縁領域(7a−1、7a−2、7a−3)が形成される。
樹脂の溶出は、(分解された樹脂のみを溶解する現像液とは異なり)分解されていないポジ型感光性樹脂も溶解できる溶媒を用いて実施する。
樹脂の溶出後、基板に熱(アニーリング)処理を実施してもよい。また、基板に対して親水化処理を実施してもよい。
【0036】
図12は、絶縁領域を形成した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図12に示すように、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極、線状構造(4b−4)および絶縁領域(7a−1、7a−2)を形成した基板(1)上にポジ型感光性樹脂(8)を塗布する。ポジ型感光性樹脂(8)は、図2で説明したポジ型感光性樹脂(2)と同じ種類の樹脂であってもよい。
【0037】
図13は、図12のポジ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
基板(1)上に塗布したポジ型感光性樹脂(8)をマスク(9)で覆う。マスクは、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域(9b)が不透明で、他の領域(9a)が透明である。
図13の状態で露光すると、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域(9b)は、光が照射されず、変化がなく、現像液には溶解しない。一方、他の領域(9a)のポジ型感光性樹脂(8)は、光照射により分解し、現像液に溶解可能になる。
【0038】
図14は、樹脂を現像した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。
図13の状態で露光および現像すると、図14に示すように、測定用のウェルまたは流路(8b)および参照用のウェルまたは流路(8a)に対応する形状以外のポジ型感光性樹脂が、現像液に溶解して除去される。これにより、基板(1)上に、作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)、線状構造(4b−4)、絶縁領域(7a−1、7a−2、7a−3)に加えて、測定用のウェルまたは流路(8b)および参照用のウェルまたは流路(8a)に対応する形状が形成される。
流路に対応する形状を形成後、基板に対して親水化処理を実施してもよい。
【0039】
図15は、ウェルまたは流路に対応する形状を形成した基板上に非溶出性樹脂を塗布した状態を示す斜視図(a)、断面図(b)および拡大図(c)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。拡大図(c)は、断面図(b)の円内を拡大した状態を示す図である。
図15に示すように、基板(1)上の溶出性樹脂を非溶出性樹脂からなる樹脂層(10)で覆うと、基板(1)、線状構造(4b−4)および樹脂層(10)によって囲まれる微小空間としてイオン流路(11)を形成することができる。
樹脂層を構成する非溶出性樹脂は、モノマー、オリゴマーまたはプレポリマーの状態(流動性のある状態)で基板上に塗布し、その後で硬化させることが好ましい。
【0040】
イオン流路(11)を形成するため、線状構造(4b−4)の高さ(h)は、0.01乃至2μmである。高さ(h)は、0.02乃至1μmが好ましく、0.05乃至0.5μmがさらに好ましく、0.1乃至0.2μmが最も好ましい。
線状構造の長さは、50μm乃至5mmであることが好ましく、100μm乃至2mmであることがさらに好ましく、200μm乃至1mmであることが最も好ましい。
イオン流路の長さは、100μm乃至10mmであることが好ましく、200μm乃至5mmであることがさらに好ましく、500μm乃至2mmであることが最も好ましい。
【0041】
図16は、ウェルまたは流路を形成した状態を示す斜視図(完成図)である。
図16に示すように、測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)に該当する領域の上の非溶出性樹脂からなる樹脂層(10)に穴(12a、12b、12c、12d)を開け、溶出性樹脂(8)を溶出する。これにより、測定用のウェルまたは流路(8b)と参照用のウェルまたは流路(8a)とを形成することができる。穴(12a、12b、12c、12d)は、流路の場合、入口と出口として機能させることができる。
以上の基板上に順次形成する方法により、電気化学測定装置を製造することができる。
【0042】
流路の幅は、50μm乃至5mmであることが好ましく、100μm乃至2mmであることがさらに好ましく、200μm乃至1mmであることが最も好ましい。
流路の長さは、1乃至100mmであることが好ましく、2乃至50mmであることがさらに好ましく、5乃至20mmであることが最も好ましい。
流路の深さは、1乃至100μmであることが好ましく、2乃至50μmであることがさらに好ましく、5乃至20μmであることが最も好ましい。
【0043】
図17は、基板と樹脂層とを貼り合わせる方法に用いる支持体の斜視図である。
支持体(13)は、基板と同様の材料を用いることができる。
支持体に対して親水化処理を実施してもよい。
【0044】
図18は、支持体上にネガ型感光性樹脂を塗布した状態の斜視図である。
ネガ型感光性樹脂(14)は、光を照射すると硬化し、現像液に不溶性になる性質を有する樹脂である。ネガ型感光性樹脂(14)は、通常の塗布方法(例、スピンコート)により、支持体(13)上に塗布することができる。
【0045】
図19は、図18のネガ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図である。
支持体(13)上に塗布したネガ型感光性樹脂(14)をマスク(15)で覆う。マスクは、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域(15a)が透明で、他の領域(15b)が不透明である。
図19の状態で露光すると、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域(15a)のネガ型感光性樹脂(14)が光照射により硬化し、現像液に溶解しなくなる。一方、他の領域(15b)のネガ型感光性樹脂(14)は、光が照射されず、変化がなく、現像液に溶解する。
【0046】
図20は、露光後のネガ型感光性樹脂を現像した状態の斜視図である。
図19の状態で露光および現像すると、図20に示すように、測定用のウェルまたは流路(14b)および参照用のウェルまたは流路(14a)の樹脂は、現像液には溶解せずに残存する。その他の領域の樹脂は、現像液に溶解して除去される。これにより、測定用のウェルまたは流路(14b)および参照用のウェルまたは流路(14a)に該当する領域が樹脂(14)で覆われる。
【0047】
図21は、基板と樹脂層とを貼り合わせる工程を示す斜視図である。
図21の(a)は、図20のネガ型感光性樹脂を現像した後で、硬化性樹脂(16)を塗布し、硬化性樹脂を硬化させた状態を示す。硬化性樹脂(16)を塗布する前に、硬化した樹脂の剥離が容易となるように、支持体およびネガ型感光性樹脂の表面を疎水化処理しておくことが好ましい。硬化性樹脂は、ゴム状であることが好ましい。
硬化した樹脂層(16)を剥がすと、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域が凹部として樹脂層(16)に形成される。
図21の(b)は、図11に示した作用電極(4b−1)、対向電極(4b−2)、参照電極(4b−3)、線状構造(4b−4)に加えて、絶縁領域(7a−1、7a−2、7a−3)が形成した基板(1)である。
図21の(a)から剥離した樹脂層(16)を反転させて、図21の(b)に貼り合わせることにより、電気化学測定装置を製造する。
貼り合わせは、光学顕微鏡により観察しながら手作業で実施するか、あるいはマニピュレーターを操作しながら実施することができる。
【0048】
図22は、図21の(a)から剥離した樹脂層(16)を反転させて、図21の(b)に貼り合わせた状態を示す斜視図(a)、断面図(b)および拡大図(c)である。断面図(b)は、斜視図(a)をX−X’方向で切断した状態を示す図である。拡大図(c)は、断面図(b)の円内を拡大した状態を示す図である。
図22に示すように、基板(1)に樹脂層(16)を貼り合わせると、基板(1)、線状構造(4b−4)および樹脂層(16)によって囲まれる微小空間としてイオン流路(11)を形成することができる。
【0049】
イオン流路(11)を形成するため、線状構造(4b−4)の高さ(h)は、0.01乃至2μmである。高さ(h)は0.02乃至1μmが好ましく、0.05乃至0.5μmがさらに好ましく、0.1乃至0.2μmが最も好ましい。
線状構造の長さは、50μm乃至5mmであることが好ましく、100μm乃至2mmであることがさらに好ましく、200μm乃至1mmであることが最も好ましい。
イオン流路の長さは、100μm乃至10mmであることが好ましく、200μm乃至5mmであることがさらに好ましく、500μm乃至2mmであることが最も好ましい。
【0050】
図23は、流路の入口と出口とを形成した状態を示す斜視図(完成図)である。
図23に示すように、測定用の流路(14b)と参照用の流路(14a)に該当する領域の上の非溶出性樹脂からなる樹脂層(16)に穴(12a、12b、12c、12d)を開け、入口と出口を設けることができる。
以上の基板と樹脂層とを貼り合わせる方法によっても、電気化学測定装置を製造することができる。
【実施例】
【0051】
[実施例1](基板上に順次形成する方法)
厚さ1.2mmの耐熱ガラス(パイレックス)板を、ガラスカッターを用いて25.4mm×16.3mmの長方形に裁断し、ガラス基板を得た。ガラス基板を中性洗剤で擦り洗いし、次に、蒸留水、超純水、アセトン、そしてイソプロパノールの順序で、それぞれ5分間、段階的に超音波洗浄した。最後にガラス基板に付着しているイソプロパノールを、遠心機で除去した(図1に示す状態)。
基板の一方の面にプライマー(MICROPOSITTM、ローム・アンド・ハース社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。その上に、ポジ型感光性レジスト(S1818MICROPOSITTM、ローム・アンド・ハース社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。基板をホットプレートに載せ、65℃で1分間、次に95℃で5分間熱(プレベーク)処理した。さらに、65℃で3分間熱処理した後、基板をホットプレートから下ろし、室温で1分間かけて徐々に冷却した(図2に示す状態)。
【0052】
電極用のフォトマスクと基板とを、位置合わせを行った後、密着させた(図3に示す状態)。
高圧水銀ランプを備えた密着露光装置(マスクアライナーMA−20、ミサカ(株)製)を用いて、基板を7秒間露光した。基板を現像液に1分30秒間浸漬し、露光部のレジストを現像液に溶解させて除去した。次に基板を蒸留水で二回洗浄した。最後に、基板に付着している蒸留水を送風機(ブロア)で除去した(図4に示す状態)。
【0053】
電極パターンを形成した基板を、スパッタリング装置(L−332SFH、アネルバ社製)のチャンバー内に入れた。作用電極、対向電極および線状構造を形成する領域に対して、200Wfで3分間のスパッタリングによりチタン薄膜を下地として形成した。その上に、200Wfで5分間のスパッタリングにより白金薄膜を形成した。さらに、参照電極を形成する領域に対しては、直接、銀薄膜をスパッタリングにより形成した(図5に示す状態)。
アセトン(レジストの溶媒)を用いて、基板上に残っていたレジストを、その上にスパッタリングされた金属(チタン、白金、銀)と共に除去(リフトオフ)した(図6に示す状態)。
【0054】
電極を形成した基板に、プライマー(MICROPOSITTM、ローム・アンド・ハース社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。その上に、ポジ型感光性レジスト(S1818MICROPOSITTM、ローム・アンド・ハース社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。基板をホットプレートに載せ、65℃で1分間、次に95℃で5分間熱(プレベーク)処理した。さらに、65℃で3分間熱処理した後、基板をホットプレートから下ろし、室温で1分間かけて徐々に冷却した(図7に示す状態)。
電極上の絶縁しない部分(非絶縁部)のマスクと基板とを、位置合わせを行った後、密着させた(図8に示す状態)。
【0055】
高圧水銀ランプを備えた密着露光装置(マスクアライナーMA−20、ミサカ(株)製)を用いて、基板を7秒間露光した。基板を現像液に1分30秒間浸漬し、露光部のレジストを現像液に溶解させて除去した。次に基板を蒸留水で二回洗浄した。最後に、基板に付着している蒸留水を送風機(ブロア)で除去した(図9に示す状態)。
基板を、スパッタリング装置(L−332SFH、アネルバ社製)のチャンバー内に入れた。100Wfで1時間、二酸化ケイ素をスパッタリングした(図10に示す状態)。
【0056】
アセトン(レジストの溶媒)を用いて、基板上に残っていたレジストを、その上にスパッタリングされた二酸化ケイ素と共に除去(リフトオフ)した(図11に示す状態)。
基板を800℃で1時間熱(アニーリング)処理し、約12時間かけて室温まで徐々に冷却した。
基板を中性洗剤で擦り洗いし、次に、蒸留水、超純水、アセトン、そしてイソプロパノールの順序で、それぞれ5分間、段階的に超音波洗浄した。最後に付着しているイソプロパノールを、遠心機で除去した。基板に対して、100Wfの酸素プラズマアッシャー処理を1分間実施し、基板表面のヒドロキシル基を活性化した。
基板にプライマー(MICROPOSITTM、ローム・アンド・ハース社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。その上に、ポジ型感光性レジスト(AZ・P4903、クラリアントジャパン社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。基板をホットプレートに載せ、65℃で1分間、次に95℃で20分間熱(プレベーク)処理した。徐々に冷却後、さらに65℃で3分間熱処理した。その後、基板をホットプレートから下ろし、室温で徐々に冷却した(図12に示す状態)。
【0057】
流路用のネガ型フォトマスクと基板とを、位置合わせを行った後、密着させた(図13に示す状態)。
高圧水銀ランプを備えた密着露光装置(マスクアライナーMA−20、ミサカ(株)製)を用いて、基板を25秒間露光した。現像原液(AZ400k・developer)を蒸留水で容量比3:2(原液:水)に希釈して、現像液を調製した。現像液を露光した基板に、スポイトで3分間吹き付けて現像した。次に基板を蒸留水で二回洗浄した。最後に、基板に付着している蒸留水を送風機(ブロア)で除去した(図14に示す状態)。
基板に対して、100Wfの酸素プラズマアッシャー処理を1分間実施し、基板表面のヒドロキシル基を活性化した。
【0058】
シリコーンプレポリマー(PDMS、ダウコーニング社製)と硬化剤との質量比10:1(プレポリマー:混合物)の混合物を基板上に流し込み、100℃で1時間処理して、熱硬化させた(図15に示す状態)。
直径1.2mmのステンレス管を貫通させることで、流路の出入り口を作製した。基板全体をアセトン中に一日浸漬することで、ポジ型感光性レジストからなる流路鋳型パターンを溶出させた。その後、スポイトを用いて入り口からアセトンを導入して、流路に残留するポジ型感光性レジストを強制的に溶出した(図16に示す状態)。
以上のように、電気化学測定装置を作製した。
【0059】
[実施例2](基板と樹脂層とを貼り合わせる方法)
厚さ1.2mmの耐熱ガラス(パイレックス)板を、ガラスカッターを用いて25.4mm×16.3mmの長方形に裁断し、ガラス製の支持体を得た。支持体を中性洗剤で擦り洗いし、次に、蒸留水、超純水、アセトン、そしてイソプロパノールの順序で、それぞれ5分間、段階的に超音波洗浄した。最後に支持体に付着しているイソプロパノールを、送風機(ブロア)で除去した(図17に示す状態)。
支持体に対して、100Wfの酸素プラズマアッシャー処理を1分間実施し、支持体表面のヒドロキシル基を活性化した。
支持体上に、ネガ型感光性レジスト(SU−8・2010、化薬マイクロケム社製)を、3000rpmで30秒間スピンコートした。ヒーターを用いて支持体を、65℃で2分間、次に95℃で5分間熱(プレベーク)処理した。さらに65℃で3分間放置した。ヒーターの電源を切ることにより、ヒーター上の温度が40℃以下になるまでゆっくり冷却した(図18に示す状態)。
【0060】
ネガ流路用のフォトマスクと支持体とを、位置合わせを行った後、密着させた(図19に示す状態)。
高圧水銀ランプを備えた密着露光装置(マスクアライナーMA−20、ミサカ(株)製)を用いて、支持体を22秒間露光した。ヒーターを用いて支持体を、65℃で1分間、次に95℃で2分間熱(ポストベーク)処理した。65℃に設定したヒーター上に支持体を戻して、3分間放置した。ヒーターの電源を切ることにより、ヒーター上の温度が40℃以下になるまでゆっくり冷却した。現像液(SU−8・Developer)に支持体を浸漬し、90秒間スポイトで現像液を吹き付けながら現像した。イソプロパノールで二回洗浄し、送風機(ブロア)で乾燥し、流路鋳型パターンを支持体上に形成した(図20に示す状態)。
窒素雰囲気のグローブボックス内のビーカー内壁に沿って、流路鋳型パターンを形成した支持体を配置した。ビーカー底面中央に、20μLのフッ化シラン(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン)溶液を滴下後、アルミホイルでさらに密閉することにより、ビーカー内を気化したフッ化シランで飽和させた。30分間の反応後、グローブボックスから支持体を取り出し、表面に水を滴下することにより、疎水化処理の完了を確認した。
【0061】
シリコーンプレポリマー(PDMS、ダウコーニング社製)と硬化剤との質量比10:1(プレポリマー:混合物)の混合物を支持体上に流し込み、100℃で1時間処理して、熱硬化させた(図21(a)に示す状態)。
実施例1において作成した、対向電極、参照電極、線状構造および絶縁領域を形成した基板(図21(b)に示す状態)を準備した。
支持体から樹脂層を剥離し、樹脂層と基板とを光学顕微鏡により観察しながら、手作業で張り合わせた(図22に示す状態)。
直径1.2mmのステンレス管を貫通させることで、流路の出入り口を作製した。基板全体をアセトン中に一日浸漬することで、ネガ型感光性レジストからなる流路鋳型パターンを溶出させた。その後、スポイトを用いて入り口からアセトンを導入して、流路に残留するネガ型感光性レジストを強制的に溶出した(図23に示す状態)。
以上のように、電気化学測定装置を作製した。
【0062】
(電気化学測定装置の評価)
実施例2で作製した電気化学測定装置について、サイクリックボルタンメトリー計測を行なった。結果を図24のチャートに示す。
図24の横軸(X軸)は、銀/塩化銀参照電極に対するポテンシャル(V)である。縦軸(Y軸)は電流(An)である。
【0063】
図24のIは、実施例2で作製した電気化学測定装置の内部の作用電極、対向電極および参照電極を使用した場合における、4.0mMK4Fe(CN)6、0.1MKClのサイクリックボルタモグラムである。なお、参照電極の流路は、飽和塩化カリウムで満たした。図24のOは、参照電極として、通常の外部小型参照電極(銀−塩化銀)を、参照電極流路の入り口に差し込み、測定に用いた場合である。IとOとは、ほとんど同じサイクリックボルタグラムを示し、内部参照電極と微小液絡とが作動していることを証明している。
なお、二つの流路の間に白金パターンを設けない場合には、二つの流路を介してのサイクリックボルタンメトリーを測定することができなかった。これにより、二つの流路間に何らかのパターンを設ける必要があることが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により、微小流路や微小ウェルなどで、電気化学測定を作用電極側と参照電極側の物質移動を無視できる状態で電気化学測定が可能になる。これにより、参照電極側からの作用電極への汚染や作用電極側の培地が参照電極側の塩濃度を変え電位が不安定化することを防ぐことができる。本発明の装置は、細胞の活性測定のためのウェルや、様々な有機物質を含む混合物の極微量分析に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】電気化学測定装置の基板の斜視図である。
【図2】基板上にポジ型感光性樹脂を塗布した状態の斜視図である。
【図3】図2のポジ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図である。
【図4】露光後のポジ型感光性樹脂を現像した状態の斜視図である。
【図5】電極の構成材料をスパッタリングした状態を示す斜視図である。
【図6】樹脂を溶出した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図7】電極を形成した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図8】図7のポジ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図(a)および断面図(b)である。
【図9】露光後のポジ型感光性樹脂を現像した状態の斜視図(a)および断面図(b)である。
【図10】絶縁物をスパッタリングした状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図11】樹脂を溶出した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図12】絶縁領域を形成した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図13】図12のポジ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図(a)および断面図(b)である。
【図14】樹脂を現像した状態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図15】ウェルまたは流路に対応する形状を形成した基板上に非溶出性樹脂を塗布した状態を示す斜視図(a)、断面図(b)および拡大図(c)である。
【図16】ウェルまたは流路を形成した状態を示す斜視図(完成図)である。
【図17】基板と樹脂層とを貼り合わせる方法に用いる支持体の斜視図である
【図18】支持体上にネガ型感光性樹脂を塗布した状態の斜視図である。。
【図19】図18のネガ型感光性樹脂をマスクした状態の斜視図である。
【図20】露光後のネガ型感光性樹脂を現像した状態の斜視図である。
【図21】基板(b)と樹脂層(a)とを貼り合わせる工程を示す斜視図である。
【図22】図21の(a)から剥離した樹脂層を反転させて、図21の(b)に貼り合わせた状態を示す斜視図(a)、断面図(b)および拡大図(c)である。
【図23】流路の入口と出口とを形成した状態を示す斜視図(完成図)である。
【図24】電気化学測定装置について、サイクリックボルタンメトリー計測を行なった結果である。
【符号の説明】
【0066】
1 基板
2 ポジ型感光性樹脂
2a 不透明領域のポジ型感光性樹脂
3 マスク
3a 不透明領域
3b 透明領域
4 スパッタリング
4a 基板が露出している領域
4b 樹脂が残存している領域
4b−1 作用電極に該当する領域
4b−2 対向電極に該当する領域
4b−3 参照電極に該当する領域
4b−4 線状構造に該当する領域
5、5b ポジ型感光性樹脂
6 マスク
6a 透明領域
6b 不透明領域
7 スパッタリング
7a 基板が露出している領域
7a−1、7a−2、7a−3 絶縁領域
7b 樹脂が残存している領域
8 ポジ型感光性樹脂
8a 参照用のウェルまたは流路に対応する形状
8b 測定用のウェルまたは流路に対応する形状
9 マスク
9a 透明領域
9b 不透明領域
10 非溶出性樹脂からなる樹脂層
11 イオン流路
12a、12b、12c、12d 穴
13 支持体
14 ネガ型感光性樹脂
14a 参照用のウェルまたは流路に対応する形状
14b 測定用のウェルまたは流路に対応する形状
15 マスク
15a 透明領域
15b 不透明領域
16 硬化性樹脂
h 線状構造の高さ
X−X’ 斜視図の切断方向
X軸(図24) 銀/塩化銀参照電極に対するポテンシャル(V)
Y軸(図24) 電流(An)
I 内部の参照電極を使用した場合におけるサイクリックボルタモグラム
O 外部小型参照電極を使用した場合におけるサイクリックボルタモグラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と樹脂層との間に、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とが独立して設けられ、測定用のウェルまたは流路に作用電極と対向電極とが設けられ、参照用のウェルまたは流路に参照電極が設けられ、そして、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とがイオン流路により連絡している電気化学測定装置を製造する方法であって、基板上に作用電極、対向電極、参照電極および測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とを結ぶ線に沿って0.01乃至2μmの高さまで盛り上がっている線状構造を形成する工程、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に対応する形状を溶出性樹脂で基板上に形成する工程、基板上の溶出性樹脂を非溶出性樹脂からなる樹脂層で覆い、基板、線状構造および樹脂層によって囲まれる微小空間としてイオン流路を形成する工程、そして、溶出性樹脂を溶出して測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とを形成する工程を順次実施することを特徴とする電気化学測定装置の製造方法。
【請求項2】
作用電極、対向電極および線状構造が金または白金からなり、参照電極が銀−塩化銀、金アマルガムまたは水素吸蔵パラジウムからなる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
基板上に作用電極、対向電極、参照電極および線状構造を形成する工程を、基板上にポジ型感光性樹脂を塗布し、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域を除く領域をマスクにより遮光しながら露光し、現像することにより上記領域を除く領域を樹脂で覆い、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造の構成材料を基板上にスパッタリングし、そして樹脂を溶出することにより樹脂の上にスパッタリングされた上記材料を除去する手順によって実施する請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
基板上に作用電極、対向電極、参照電極および線状構造を形成する工程と測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に対応する形状を溶出性樹脂で基板上に形成する工程との間で、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造を形成した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布し、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域とその近傍の領域をマスクにより遮光しながら露光し、現像することにより上記領域とその近傍の領域を樹脂で覆い、絶縁物を基板上にスパッタリングし、そして樹脂を溶出することにより樹脂の上にスパッタリングされた絶縁物を除去する手順によって、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域とその近傍の領域とを除く領域を絶縁する工程を実施する請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に対応する形状を溶出性樹脂で基板上に形成する工程を、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域とその近傍の領域とを除く領域を絶縁した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布し、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域をマスクにより遮光しながら露光し、現像する手順によって実施する請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
基板上の溶出性樹脂を非溶出性樹脂からなる樹脂層で覆い、基板、線状構造および樹脂層によって囲まれる微小空間としてイオン流路を形成する工程を、基板上の溶出性樹脂の上に硬化性樹脂を塗布し、硬化性樹脂を硬化させる手順によって実施する請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
溶出性樹脂を溶出して測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とを形成する工程を、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路に該当する領域の上の非溶出性樹脂からなる樹脂層に穴を開け、溶出性樹脂を溶出する手順によって実施する請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
基板と樹脂層との間に、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とが独立して設けられ、測定用のウェルまたは流路に作用電極と対向電極とが設けられ、参照用のウェルまたは流路に参照電極が設けられ、そして、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とがイオン流路により連絡している電気化学測定装置を製造する方法であって、基板上に作用電極、対向電極、参照電極および測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とを結ぶ線に沿って0.01乃至2μmの高さまで盛り上がっている線状構造を形成する工程と樹脂層上に測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路を形成する工程とを実施し、さらに、基板と樹脂層とを積層して、基板、線状構造および樹脂層によって囲まれる微小空間としてイオン流路を形成する工程を実施することを特徴とする電気化学測定装置の製造方法。
【請求項9】
作用電極、対向電極および線状構造が金または白金からなり、参照電極が銀−塩化銀、金アマルガムまたは水素吸蔵パラジウムからなる請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
基板上に作用電極、対向電極、参照電極および線状構造を形成する工程を、基板上にポジ型感光性樹脂を塗布し、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域を除く領域をマスクにより遮光しながら露光し、現像することにより上記領域を除く領域を樹脂で覆い、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造の構成材料を基板上にスパッタリングし、そして樹脂を溶出することにより樹脂の上にスパッタリングされた上記材料を除去する手順によって実施する請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
基板上に作用電極、対向電極、参照電極および線状構造を形成する工程と基板と樹脂層とを積層して、基板、線状構造および樹脂層によって囲まれる微小空間としてイオン流路を形成する工程との間で、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造を形成した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布し、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域とその近傍の領域をマスクにより遮光しながら露光し、現像することにより上記領域とその近傍の領域を樹脂で覆い、絶縁物を基板上にスパッタリングし、そして樹脂を溶出することにより樹脂の上にスパッタリングされた絶縁物を除去する手順によって、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域とその近傍の領域とを除く領域を絶縁する工程を実施する請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
樹脂層上に測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路を形成する工程を、支持体上にネガ型感光性樹脂を塗布し、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域を除く領域をマスクにより遮光しながら露光し、現像することにより測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域を樹脂で覆い、該樹脂の上に硬化性樹脂を塗布し、硬化性樹脂を硬化させ、硬化させた樹脂を剥離する手順によって実施する請求項8に記載の製造方法。
【請求項13】
基板と樹脂層とを積層した後、測定用および参照用の流路の入口と出口を設ける請求項8に記載の製造方法。
【請求項1】
基板と樹脂層との間に、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とが独立して設けられ、測定用のウェルまたは流路に作用電極と対向電極とが設けられ、参照用のウェルまたは流路に参照電極が設けられ、そして、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とがイオン流路により連絡している電気化学測定装置を製造する方法であって、基板上に作用電極、対向電極、参照電極および測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とを結ぶ線に沿って0.01乃至2μmの高さまで盛り上がっている線状構造を形成する工程、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に対応する形状を溶出性樹脂で基板上に形成する工程、基板上の溶出性樹脂を非溶出性樹脂からなる樹脂層で覆い、基板、線状構造および樹脂層によって囲まれる微小空間としてイオン流路を形成する工程、そして、溶出性樹脂を溶出して測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とを形成する工程を順次実施することを特徴とする電気化学測定装置の製造方法。
【請求項2】
作用電極、対向電極および線状構造が金または白金からなり、参照電極が銀−塩化銀、金アマルガムまたは水素吸蔵パラジウムからなる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
基板上に作用電極、対向電極、参照電極および線状構造を形成する工程を、基板上にポジ型感光性樹脂を塗布し、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域を除く領域をマスクにより遮光しながら露光し、現像することにより上記領域を除く領域を樹脂で覆い、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造の構成材料を基板上にスパッタリングし、そして樹脂を溶出することにより樹脂の上にスパッタリングされた上記材料を除去する手順によって実施する請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
基板上に作用電極、対向電極、参照電極および線状構造を形成する工程と測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に対応する形状を溶出性樹脂で基板上に形成する工程との間で、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造を形成した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布し、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域とその近傍の領域をマスクにより遮光しながら露光し、現像することにより上記領域とその近傍の領域を樹脂で覆い、絶縁物を基板上にスパッタリングし、そして樹脂を溶出することにより樹脂の上にスパッタリングされた絶縁物を除去する手順によって、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域とその近傍の領域とを除く領域を絶縁する工程を実施する請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に対応する形状を溶出性樹脂で基板上に形成する工程を、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域とその近傍の領域とを除く領域を絶縁した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布し、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域をマスクにより遮光しながら露光し、現像する手順によって実施する請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
基板上の溶出性樹脂を非溶出性樹脂からなる樹脂層で覆い、基板、線状構造および樹脂層によって囲まれる微小空間としてイオン流路を形成する工程を、基板上の溶出性樹脂の上に硬化性樹脂を塗布し、硬化性樹脂を硬化させる手順によって実施する請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
溶出性樹脂を溶出して測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とを形成する工程を、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路に該当する領域の上の非溶出性樹脂からなる樹脂層に穴を開け、溶出性樹脂を溶出する手順によって実施する請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
基板と樹脂層との間に、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とが独立して設けられ、測定用のウェルまたは流路に作用電極と対向電極とが設けられ、参照用のウェルまたは流路に参照電極が設けられ、そして、測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とがイオン流路により連絡している電気化学測定装置を製造する方法であって、基板上に作用電極、対向電極、参照電極および測定用のウェルまたは流路と参照用のウェルまたは流路とを結ぶ線に沿って0.01乃至2μmの高さまで盛り上がっている線状構造を形成する工程と樹脂層上に測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路を形成する工程とを実施し、さらに、基板と樹脂層とを積層して、基板、線状構造および樹脂層によって囲まれる微小空間としてイオン流路を形成する工程を実施することを特徴とする電気化学測定装置の製造方法。
【請求項9】
作用電極、対向電極および線状構造が金または白金からなり、参照電極が銀−塩化銀、金アマルガムまたは水素吸蔵パラジウムからなる請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
基板上に作用電極、対向電極、参照電極および線状構造を形成する工程を、基板上にポジ型感光性樹脂を塗布し、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域を除く領域をマスクにより遮光しながら露光し、現像することにより上記領域を除く領域を樹脂で覆い、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造の構成材料を基板上にスパッタリングし、そして樹脂を溶出することにより樹脂の上にスパッタリングされた上記材料を除去する手順によって実施する請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
基板上に作用電極、対向電極、参照電極および線状構造を形成する工程と基板と樹脂層とを積層して、基板、線状構造および樹脂層によって囲まれる微小空間としてイオン流路を形成する工程との間で、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造を形成した基板上にポジ型感光性樹脂を塗布し、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域とその近傍の領域をマスクにより遮光しながら露光し、現像することにより上記領域とその近傍の領域を樹脂で覆い、絶縁物を基板上にスパッタリングし、そして樹脂を溶出することにより樹脂の上にスパッタリングされた絶縁物を除去する手順によって、作用電極、対向電極、参照電極および線状構造に該当する領域とその近傍の領域とを除く領域を絶縁する工程を実施する請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
樹脂層上に測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路を形成する工程を、支持体上にネガ型感光性樹脂を塗布し、測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域を除く領域をマスクにより遮光しながら露光し、現像することにより測定用のウェルまたは流路および参照用のウェルまたは流路に該当する領域を樹脂で覆い、該樹脂の上に硬化性樹脂を塗布し、硬化性樹脂を硬化させ、硬化させた樹脂を剥離する手順によって実施する請求項8に記載の製造方法。
【請求項13】
基板と樹脂層とを積層した後、測定用および参照用の流路の入口と出口を設ける請求項8に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
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【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2009−174948(P2009−174948A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12608(P2008−12608)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(501273886)独立行政法人国立環境研究所 (30)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(501273886)独立行政法人国立環境研究所 (30)
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