説明

電気化学的エネルギー貯蔵手段

【課題】本発明の課題は、場所をとらず、製造が単純で且つコストがかからず、扱いにおいて信頼可能で、使用寿命が長いことを特徴とするにもかかわらず、容量が大きい貯蔵手段を提供することである。
【解決手段】少なくとも2つの電極、電解質、電極の間に配置された電解質としてのキャリヤー材料、及び多孔質材料を備えたキャリヤー材料を具備し、内側気孔構造の中に過フッ化表面活性物質が存在し、前記電解質の表面張力は19.8mN/m以下である、電気化学的エネルギー貯蔵手段。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学的エネルギー貯蔵手段に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明においては電気化学的エネルギー貯蔵手段とは、特にキャパシター、蓄電池、及びバッテリーである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、場所をとらず、製造が単純で且つコストがかからず、扱いにおいて信頼可能で、使用寿命が長いことを特徴とするにもかかわらず、容量が大きい貯蔵手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、使用する電解質のためのキャリヤー材料が多孔質の材料であるエネルギー貯蔵手段によってこの課題を達成できることを見出したことに基づく。ここでこの多孔質材料は、この多孔質材料の表面の性質と、電解質のイオン導電性及び表面張力とに影響を与える物質によって改質されている。
【0005】
本発明は、電気化学的エネルギー貯蔵手段であって、少なくとも2つの電極、電解質および、前記電極間に配置された前記電解質のためのキャリヤー材料を有し、前記キャリヤー材料は内側表面で気孔を規定する内側多孔質構造を有する多孔質材料であり、前記の内側表面は、前記電解質とは異なる過フッ化界面活性剤の層によって少なくとも部分的にコーティングされており、コーティングされた内側表面を持つ前記の気孔中に前記電解質が収容されており、前記電解質の表面張力は19.8mN/m以下に低減されており、そして前記の内側多孔質構造は基本的にフィブルによって相互に連結されている一連の結節からなり、前記の結節はほぼ平行に配列されており、高度に伸長されまた25:1以上のアスペクトル比を有している、電気化学的エネルギー貯蔵手段である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のエネルギー貯蔵手段は、過フッ化界面活性剤のおかげで、電極は電解質で十分に濡れ、全ての利用可能な表面が活性化される。
本発明は、とりわけ電気分解や電気透析のような電気化学システムにおける、貯蔵手段、セパレーター、又はダイヤフラムとして使用可能であるキャリヤー材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明によるコンデンサーの態様についての構造を模式的に示す図である。
【図2】本発明による態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、少なくとも2つの電極と電解質、これらの電極の間に分散する電解質のためのキャリヤー材料、及び多孔質材料を含むキャリヤー材料、を具備する電気化学的エネルギー貯蔵手段であり、ここでこの多孔質材料の内側多孔質構造には過フッ化界面活性剤が存在する。
【0009】
本発明において多孔質材料とは、その構造中に、物質移動を可能にする空隙を有している材料に言及している。この空隙は、気孔として作ることができ又は材料の繊維状構造によって作ることができる。
【0010】
この貯蔵手段中のキャリヤー材料は電解質を保持すると同時に、電極間の電解質を通ってイオンが流れることを可能にする。これは、第1にキャリヤー材料を多孔質材料にすることによって、及び第2に材料の内側多孔質構造中に存在する過フッ化界面活性剤を提供することによって確実にすることができる。過フッ化界面活性剤は、材料の表面の性質を改良するため、及び電解質の性質に影響を与えるための両方にふさわしい。これによって電解質で多孔質材料をぬらすことができ、且つこの多孔質材料が電解質を受け取って保持することが容易になる。これは、良好な電解質の移動及び優れた可動性を確実にする。この輸送及び可動性は、電解質中を流れるイオンにとってかなり重要である。過フッ化界面活性剤は更に、電解質中におけるイオンの可動性を増加させる。結果として本発明の貯蔵手段は良好な容量を持つ。
【0011】
多孔質材料は好ましくは多孔質フルオロポリマーである。多孔質フルオロポリマーの使用は、物質に高い化学的及び熱的安定性を提供するので有利である。エネルギー貯蔵手段においては、例えば大きい電流密度での充電及び放電において、高温が存在することがあり且つキャリヤー基材の溶融は避けなければならないので、温度に対する耐性は確実にしなければならない。キャリヤー材料は更に、貯蔵手段中の電解質及び/又は酸化還元系にもさらされている。電解質は通常は化学的に活性な物質、例えば強力な酸又は塩基である。従って、キャリヤー材料は十分な化学的安定性を持たなければならない。
【0012】
多孔質フルオロポリマーの内側多孔質構造におけるペルフルオロ界面活性剤の存在は、多孔質フルオロポリマーが濡れることを可能にし且つ電解質を受け取るようにする。この濡れる能力は、キャリヤー基材中に、特に気孔中に電解質を十分に保持することを確実にする。気孔中に電解質が十分に存在すると、キャリヤー材料の電解質で満たされた気孔をイオンが通過すること、従って大きいイオン流れ及び高いイオン可動性を可能にし、貯蔵手段の電気抵抗を小さくする。改質多孔質材料の化学的及び熱的安定性、並びに物質と多孔質材料の安定な付着は、本発明の貯蔵手段の長い使用寿命を確実にする。
【0013】
好ましい態様においては、多孔質材料の内側多孔質構造は過フッ化界面活性剤によって少なくとも部分的にコーティングする。界面活性剤は層状に存在するので、気孔を過フッ化界面活性剤で満す場合と比べて、良好なイオン流れを気孔構造によって維持することができる。加えて、気孔構造の内側表面に層を提供した場合には、キャリヤー基材が電解質を受け取る容量は減少しない。
【0014】
過フッ化界面活性剤は好ましくは少なくとも4つの炭素原子を有する。
【0015】
過フッ化界面活性剤は、過フッ化カルボン酸、過フッ化スルホン酸、これらの酸の塩、又は過フッ化ベタインでよい。これらの物質は、低濃度においても電解質の表面張力を減少させることができ且つ更に高い化学的及び熱的安定性を有することを特徴としている。電解質又は酸化還元系は通常、水溶液中に存在している。従って、多孔質構造中における適当な受け入れ並びに多孔質構造を通る十分な輸送及び可動性を確実にするために親水性の表面は必要である。上述のフッ素系界面活性剤の使用は、キャリヤー材料のかなりの親水性を達成する。更にこれらの物質は電解質に対してある程度の可溶性があり、これは電解質の表面張力を減少させるので有利である。
【0016】
本発明のエネルギー貯蔵手段において使用する多孔質材料は、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。この材料は、良好な化学的及び熱的安定性を有しており、且つ高い気孔率を有するように製造することができる。これは、本発明の電気化学的エネルギー貯蔵手段中のキャリヤー材料の厚さを薄く維持することを可能にし、従って電極間の間隔を狭くすることができる。電極間の隙間が狭いことは、特にキャパシターで望ましい。これは、このことがキャパシターのエネルギー密度を増加させるためである。しかしながら同時に、電極間の電解質におけるイオンの良い流動性及び可動性を可能にするためには、キャリヤー材料は厚さが薄いにもかかわらず、十分な量の電解質を受け取ることが可能でなければならない。PTFEは高い気孔率を達成することができるので、理想的にはPTFEを使用する。更にPTFEの使用は、一定の非常に薄い厚さ及び均一な構造のキャリヤー材料層の製造を可能にする。これらの性質によってPTFEキャリヤー材料は、電極間の信頼可能なスペーサーとしても機能する。更に、多孔質構造を通る均一なイオン流動性が確実になり、またキャリヤー材料の不規則性による障害が排除される。また、多孔質フルオロポリマーとしてのPTFEの使用は、高い可撓性を確実にする。これは、破断によるキャリヤー材料の損傷を避けるので、本発明のエネルギー貯蔵手段の製造において特に有利である。この多孔質材料としては、PTFEコポリマー又はPTFEホモポリマーの配合物を使用してもよい。
【0017】
更なる態様では、キャリヤー材料はナノスケールのセラミックを有する複合材料であってもよい。このセラミック、例えばイオン伝導性セラミックの存在は、キャリヤー材料を電解質中でのイオン流動に参加させる。これは全体のイオン伝導性を増加させ、且つ所定の気孔率においてエネルギー貯蔵手段の効率を改良する。ナノスケールセラミックは好ましくは、フルオロポリマーに基づいて50%未満の量で存在する。これらの量では、セラミックで典型的な他の性質、特に脆性はまだ影響を与えず、且つキャリヤー材料の性質に好ましい影響を与える。
【0018】
更に、使用する多孔質材料は、フルオロポリマー、特にPTFEコポリマー又は熱可塑性樹脂との複合材料としての配合物であってよい。これらの熱可塑性樹脂は、フルオロポリマーに基づいて20〜90重量%、好ましくは30〜70重量%の量で存在している。
【0019】
本発明によれば、多孔質材料は50%超、好ましくは60%超、特に好ましくは70%超の気孔率を有する。そのような高い気孔率の多孔質材料は、電解質によるキャリヤー基材の透過を良好にし、また電極間の空間において電解質の含有量を多くすることを可能にする。更に、高い気孔率は、電極間において、イオンの流動に関わらない多孔質材料が満たす体積分率を最小化する。材料の高い気孔率は、電極の活性表面又はエネルギー密度及びエネルギー貯蔵手段の容量にも好ましい影響を与える。高い気孔率では、キャリヤー材料と電極又は酸化還元系との間の接触表面は最小であり、それによって貯蔵工程において利用できる電極の表面を不必要に減少させない。
【0020】
更に好ましい態様においては、過フッ化界面活性剤はその一部が電解質中に存在している。電解質に対して十分な可溶性を持つ界面活性剤の使用は、キャリヤー材料の表面を親水性にするのを促進するだけではなく、電解質の表面張力を低下させる。この低下した表面張力は、キャリヤー材料及び電極の十分な濡れにかなり貢献する。随意に、電解質中に過フッ化界面活性剤が存在することは、電界質のイオン伝導性を改良する。
【0021】
本発明の電気化学的エネルギー貯蔵手段は好ましくはキャパシターであり、電解質のイオン導電性及び電極の良い濡れは、特にキャパシターにおいては非常に重要である。従って本発明の利点は、随意にキャパシター、特に電解キャパシターにおいて利用する。
【0022】
本発明の電気化学的エネルギー貯蔵手段がキャパシターである場合、これは電極、及び電解質が浸透しているキャリヤー材料からなっている。これらの電極に電圧を印可すると、電解質中でイオンの流動が起こる。そのようなキャパシターのキャパシターンスは電極の活性表面に比例しており、且つ電気化学的2重層の厚さに反比例している。ここで、この2重層は、キャリヤー材料中のイオン性電解質成分を含んでおり、電解質と電極との接触表面に作られている。
【0023】
電極の活性表面は、電極と電解質の接触表面によって決定される。比表面積を増加させるために、電極は特定の粗さを有すること又は多孔質であることができ、これらはナノメートルの範囲まで達するものであってもよい。この様に拡張された表面は、可能な限り電解質との接触に参加させる。従ってデットスペース、例えば空気ポケット又はキャリヤー材料と電極との接触によるデットスペースは、可能な限り小さくすべきである。本発明のエネルギー貯蔵手段においては、活性化させる表面は、大きい気孔率及び過フッ化界面活性剤によって改質された表面を有する多孔質材料をキャリヤー材料としての使用することによって最適化する。大きい気孔率は、キャリヤー材料と電極との間の接触表面を最小化し、低下した電解質の表面張力は、電極の十分な濡れを確実にする。利用可能な表面は、このようにして最適に使用することができる。
【0024】
電極間の調節される隙間も、本発明のエネルギー貯蔵手段においては最適化される。過フッ化界面活性剤でコーティングされた多孔質材料、特にフルオロポリマーの使用は、一定の厚さ及び均一な構造を有する薄い層の製造を可能にする。これは、キャリヤー材料の層が薄い場合においても、電極間の接触を容易に避ける。高い気孔率、及び特に界面活性剤によるキャリヤー材料表面の親水性のために、キャリヤー材料は十分な量の電解質を受け取ることができ、且つキャリヤー材料の厚さが薄い場合にもイオンの流動が邪魔されない。
【0025】
更に、過フッ化界面活性剤は、電解質のイオン伝導性を減少させない。
【0026】
この様な本発明のキャパシターのキャパシターンスは大きい値であることが考えられる。
【0027】
本発明において好適に使用されるキャリヤー材料であるフルオロポリマーは、耐温度性(temperature−resistant)であるという付加的な利点を有し、それによってキャリヤー物質の望ましくない融解を避ける。さらに本発明のキャパシターは、使用される電解液を選択するのに有利である。表面を改質した多孔質フルオロポリマーは著しい化学的安定性を有し、キャリヤー物質の望ましくない分解工程を、強力な電解液が存在するときでさえも確実に回避し得る。
【0028】
そして、ペルフルオロ化された(perfluorinated)界面活性剤で処理された多孔質フルオロポリマーの使用はキャパシターのために次のような利点を有する。
・ キャリヤー材料は、電極間の信頼できるスペーサーとして役立つ;
・ 電解液流は、キャリヤー物質の高気孔率および良好な湿潤性により最適化される;
・ ペルフルオロ化された界面活性剤は、電解質におけるイオンの流れおよびイオンの移動度に正に作用する;そして
・ キャリヤー物質は、著しい耐温度性および化学的安定性を有する。
【0029】
添付の図1は、本発明によるキャパシター(コンデンサー)の一態様についての構造を模式的に示し、以下に説明される。
【0030】
貯蔵手段10は、たとえばチタンの2つの電極20を有し、これは図示されていない接続により電圧を付加されうる。電極間には、ペルフルオロ化カルボン酸で被覆されたキャリヤー成分30、たとえば延伸膨張多孔質PTFE、があり、電解液40、たとえば硫酸で浸入されており、それを気孔で保持している。
【0031】
使用の際には、ペルフルオロ化された界面活性剤で処理された本発明の多孔質フルオロポリマーは、片面もしくは両面をエンボス加工もしくは構造化された電流コレクター板により圧縮されるのが通常である。本発明の処理された多孔質フルオロポリマー材料の1つもしくはそれより多くは、該板の間で圧縮される。本発明者は、本発明のキャリヤー物質は、該板の間でキャリヤー材料の周囲を、意外にも非常に良好にシールする性質を有することを見出した。イソプロパノールを用いた試験において、ペルフルオロ化された界面活性剤により親水性化された本発明のキャリヤー物質は、適度なシール応力で高度のぬれ性流体、すなわちイソプロパノールのもれを妨げるのに十分な強いシールを付与する。
【0032】
このように本発明は、セパレーターで十分なシールを付与する。セパレータのシールは上述のものと同一の構成としてもよい。これは、スーパーキャパシターおよび燃料電池のように、二極の、もしくは単一スタック設計において高い価値を有する。シーラントとしてセパレーターを用いることは、追加のシール物質、およびそのような追加の物質を取扱う必要性を消去する。
【0033】
本発明のもう一つの代わりの態様においては、キャリヤー物質の周辺部は、ペルフルオロ化された界面活性剤で気孔を内部で被覆されていない。電解液にさらされている、キャリヤー物質の中心部分のみがそのように被覆されている。被覆されていない周辺部は、圧縮されている部分であり、シール機能を発揮するのに使用される。
【0034】
本発明のキャリヤー材料のシール特性の利点を利用するさらなる代わりの態様において、周辺領域は、熱可塑性樹脂、好ましくはエラストマー、もっと好ましくはフッ素ゴムもしくはペルフッ素ゴムで、部分的にもしくは気孔内を全部、被覆されていてもよい。この態様のキャリヤー材料の中心領域は、ペルフルオロ化された界面活性剤で被覆され、シールする周辺部は、圧縮および使用に基づいてシールを形成するために熱可塑性樹脂で被覆される。
【0035】
さらに添付の図2は本発明のこの態様を示す。本発明によるキャリヤー材料のスタック70が図2に示される。各材料の中心部50は、上述のようなペルフルオロ化された界面活性剤で内部を被覆される。キャリヤー材料の周辺部60は、被覆されていないか、又は熱可塑性樹脂を、部分的にもしくは全体的に吸収している。周辺部60は、使用中に圧縮されて、シール機能を発揮するキャリヤー物質の領域である。
【0036】
本発明の貯蔵手段に用いられる多孔質物質は、次の特徴を有するのが好ましい。それは、電気的に非伝導性であり、電解質および温度に抵抗性を有するべきである。この抵抗性は貯蔵手段の長期使用を保証する。さらに、それは高度に多孔性を有する薄いフレキシブル層を製造できるべきである。
【0037】
使用される多孔質物質は、たとえば、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス繊維もしくは二酸化ジルコニウムである。
【0038】
多孔質構造の形成は、特定の技術に制限されない。気孔形成法には、延伸、第2成分の抽出、成分の溶出、核トレース(nuclear trace)法の使用および気泡生成による気孔生成、が含まれる。米国特許第3,953,566号明細書は、たとえば延伸膨張多孔質PTFE(ePTFe)の製造について記述する。
本発明により使用される多孔質物質の気孔率(porosity)は、次式により計算される:
気孔率=(1−ρ/ρ)×100%
ここでρ は物質の測定密度であり、ρはその理論密度である。
【0039】
本発明のエネルギー貯蔵手段に用いられうる多孔質フッ素樹脂は、たとえばPTFEおよびPTFEコポリマーである。該PTFEは、共単量体を有するPTFEの類型であってもよく、「改質PTFE」(“modified PTFE”)(以下に詳述される)という。この定義は、単独重合体が、エチレンのように不飽和の共単量体(割合がコポリマーを基準に2質量%未満)でコポリマー化されて改変されたポリマーをも包含する。このような共単量体の例は:エチレン、プロピレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデンおよびクロロトリフルオロエチレンのようなハロゲン化オレフィン;環状フッ化物モノマー、または末端カルボキシルもしくはスルホン酸基を有する、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテルもしくはペルフルオロビニルエーテルのようなペルフルオロアルキルビニルエーテル、である。
【0040】
コポリマーの割合が2質量%より多いと、多孔質フルオロポリマーはフッ素熱可塑性樹脂、フッ素イオノマーもしくはフッ素ゴムといわれる。
【0041】
出発物質もフルオロホモポリマーからなっていてよい。フルオロホモモノマーは、低分子量PTFEとのブレンドとして存在しうる。フルオロホモモノマーは、ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレンコポリマー(FEP)、ペルフルオロアルキルビニル/テトラフルオロエチレンコポリマー(PFA)、もしくは、たとえばデュポンから「Teflon AF」の商標で入手しうる、ペルフルオロジオキソールコポリマーのような、融解から処理されるテトラフルオロエチレン(TFE)と、同様に混合しうる。
【0042】
米国特許第3,953,566号明細書により製造される多孔質材料は、良好な空気流通性を有し、強くて、取扱いやすく、均一なePTFEフィルムを産生する。米国特許第3,953,566号明細書に記載されているように、これは、延伸によりノードおよびフィブリル微構造を生成するのに適切なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂をまず配合することにより達成される。樹脂は、ミネラルスピリットのような脂肪族炭化水素潤滑押出助剤(lubricant extrusion aid)とブレンドされる。配合樹脂は、円筒ペレット状に形成され、ペーストは公知の方法によって押出され、所望の押出可能な形状、好ましくはテープ状もしくは膜状に押出される。物品はロール間で所望の厚みにカレンダー加工され、ついで熱で乾燥して潤滑剤を除去する。乾燥品は、機械および/または横方向に最初の延伸で延伸膨張され、フィブルによって相互に連結されている一連のノードを特徴とするePTFEを生成する。ついでePTFE物品はPTFEの結晶融点(343℃)より高い温度、たとえば343〜375℃で物品を加熱することにより、アモルファス状に固定される。米国特許第5,814,405号明細書に記載されるように、アモルファス状に固定された物品は、最初の延伸で最大延伸膨張した方向に少くとも直交する方向に結晶融点より高い温度でさらに延伸される。
【0043】
得られるePTFE物質は非常に均一であり、フィブリルで相互に連結した、高度に延びたノードを有することを特徴とする独得の微構造を有する。得られる多孔質材料も、高強度で、流体の流れに抵抗が少なく、ならびに広い範囲の物理的性質を有する、という一連の独得の物理的性質を有する。この種の方法が、とくに大きいノード、すなわち粗い、可能な微構造を有する高度に均一な連続フィルムを産生するということはまさに驚くべきことである。融解延伸膜も比較的高い耐圧縮性を有する。
【0044】
最も好適な多孔質物質は2種の延伸法、すなわち1つはアモルファス固定の前、1つは後に行なう延伸法を組み合わせることによって、流体の流れに低抵抗性の開孔物質を作り出す。縦方向における最初の延伸膨張は、微構造の大きさ(すなわち、フィブリルおよびノード寸法)を固定するために、アモルファス固定の前に実行される。この延伸膨張材料の均一性は、非常に高い。高度に均一な微構造は、ついで、存在する最も高い溶融PTFEの結晶融点より高く加熱することによりアモルファス状に固定される。これは、固定ポリマーのセクションにノードを合体する。この固定工程は最初の延伸膨張工程の均一性を保存するのに役立つ。最後の横方向延伸工程において、延伸膨張物質が存在するPTFE樹脂の結晶融点より高い温度に加熱されると、フィブリルは分離するのにノードは延びる。ノードは、非アモルファス状に固定されるPTFEテープの延伸膨張で生ずるように、さらなる延伸で、砕けてフィブリル化するのを続けない。この延伸工程で付加的なフィブリル化が生じないので、非常にあらい、高流動性の、高強度膜が、非常に大きい内部比表面種を有して、産生されうる。
【0045】
非アモルファス状に固定されたPTFEの従来の二軸延伸膨張は温度および速度の差異に非常に敏感である。温度もしくは速度における小さな差異も、最終的な膜における不均一性を導きうる。驚くべきことに、上述のような結晶融点より高温での延伸は、温度および速度を変えるのに比較的、敏感さが小さい。その結果、得られる膜は従来の延伸膨張PTFE製品よりもはるかに均一である。この構造のノードは必然的に高度に伸長し且つ配向している。これらのノードのアスペクトル比は約25もしくは50:1より大きく、好ましくは150:1より大きい。これは、最初の延伸膨張方向を横切って配向された結節性リブで補強された固体ポリマーを有する構造を生成する。これらのリブは縦方向における破断もしくは引裂きの伝播を妨げる。そのような多孔質材料は、多くの質量%がノード中に保存されている非常に粗い微構造を付与する。これによって、所定の開放性もしくは空気流通性ではかなり質量が大きい物品を与え、比較的高い強度および耐久性が生じる。マトリックス引張強度も延伸倍率が増加するにつれて増加しうる。第1および2の延伸工程を均衡させることにより、XおよびY方向における強度の均衡が得られる。
【0046】
好適な多孔質材料の高い強度は、物質の気孔を著しく閉じることなく、コレクター板の間で、物質を圧縮させることを許す。この点は、従来技術に比べて著しい利点である。この多孔質物質のもっと開放的な構造は、さらに、ペルフルオロ化界面活性剤、およびもっと重要なのは、電解液に対して比較的多い空間を与える。これは、さらに本発明に用いるイオン移動度を改善する。
【0047】
この好ましい多孔質材料のためのPTFE出発材料は、それ自体、延伸膨張時のフィブルおよびノードの形成に役立つ任意の種類の凝固化分散体PTFEであり得る。これは一般に、高分子量のポリマーである。
【0048】
均一で、強力で、取り扱い易い材料を生成する好ましい出発材料は、高分子量ファインパウダーPTFEホモポリマーおよび低分子量改質PTFEポリマーの配合物である。この材料は、容易に加工処理されて、大きい結節(ノード)と長いフィブリルを有する均一延伸膨張製品を生成する。2つのPTFEのこの配合物を前記の方法で組合せることにより、高流動性で、強力で、均一な取り扱いやすい材料の一族が製造され得るが、意外にもこれは本発明に有用である。
【0049】
したがって、本発明の多孔質材料の好ましい製造方法に用いられるPTFE出発材料は、ホモポリマーPTFEまたはPTFEホモポリマーの配合物であり得る。それは、ホモポリマーとPTFEコポリマーの配合物でもよく、ここではコモノマー単位が、ポリマーに純粋ホモポリマーPTFEの非溶融加工性を失わせる量では存在しない。「ファインパウダーPTFE」とは、「水性分散」重合法により調製されるPTFEを意味する。どちらの用語も、PTFE業界では周知の用語である。
【0050】
コポリマーは、当業界では「改質PTFEホモポリマー」と呼ばれる。「改質PTFE」という用語は、PTFEホモポリマーではなく非溶融加工性のポリマーに言及している。ここではコポリマーの重量の2重量%未満、好ましくは1重量%未満の少量の、コポリマー化が可能なエチレン状不飽和コモノマーによるコポリマー化によって、ホモポリマーを改質している。これらのコポリマーは、コモノマー単位の存在がホモポリマーPTFEの基本的な非溶融加工性の特徴を変えないので、当業者に「改質」PTFEと呼ばれている。したがって、「改質」という用語は、ホモポリマー鎖に比較的少ない単位のコモノマーが挿入された場合に、ホモポリマーの良好な靱性、熱耐性および高温安定性が変わらないことを意味するために用いられる。コモノマーの例としては、オレフィン、例えばエチレンおよびプロピレン;ハロゲン化オレフィン、例えばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ビニリデンフルオライドおよびクロロフルオロエチレン;またはペルフルオロアルキルビニルエーテル、例えばペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)およびペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)が挙げられる。好ましくは、コモノマーはフッ素化されており、また最も好ましくはHFP、PPVEまたはPMVEである。PTFEホモポリマーも改質PTFEもエラストマー状であるとは考えられない。
【0051】
ホモポリマーは、高分子量PTFEの照射によりまたは特別なTFE重合により製造される微細粉末として知られている低分子量PTFEとも配合され得る。ホモポリマーは、溶融加工性TFEコポリマー、例えばFEPまたはPFA(ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレンコポリマーまたはペルフルオロアルキルビニルエーテル/テトラフルオロエチレンコポリマー)とも配合され得る。2つまたはそれ以上のPTFEポリマーの配合物は、PTFEとその他のフルオロポリマーとの配合物と同様に、用いられ得る。これらの配合物の成分の比には、特別な選択はない。ある成分は、重量または容量で、5%または95%であってよい。
【0052】
別の実施態様では、アモルファス固定後であって最終な横伸張の前に付加的に縦方向に伸張を実行することによって、構造のより大きい開口でさえ、均一性または取り扱い易さを犠牲にすることなく達成され得る。アモルファス固定後の縦方向の最初の伸張は、結節(ノード)をさらにばらばらにすることはほとんどないが、既存のフィブリルを長くし、既存のノードを分離する。この伸張工程を付加することにより、ノードは分離され、フィブリルは延長される。このようにして作られた構造は、フィブリルによって相互に接続された一連の結節から本質的になる内部微細構造を有し、この結節が、ほぼ平行に配列されており、有意に大きい平均有効気孔サイズを有する。この付加された工程は、最終材料の全体的な均一性を低減しない。この工程の付加は、所定の前駆体を用いて可能であるアモルファス固定後の総伸張比を非常に増大させる。典型的な構築物は、327℃以上で横方向に9:1〜12:1の比に伸張され得る。固定後の縦方向伸張に関しては、24:1およびそれ以上のアモルファス固定後総伸張比が達成され得る。所定の前駆体を用いた場合、アモルファス固定後に4:1の縦方向伸張が付加されると、フレーザー数の値は25倍に増大するが、一方ボール破裂値は3分の1に減少するだけである。
【0053】
他の実施態様では、用い得る多孔質フルオロポリマーは、ナノスケールセラミックを付加的に有するポリマーである。ナノスケールセラミックは、好ましくは、滑剤に対しては粉末形態で、PTFE分散系に対しては水ベースの分散系として、ポリマーに付加される。
【0054】
本発明においてはナノスケールセラミック粉末としては、金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化亜鉛および酸化鉄、ならびにコーティング(酸化物、有機材料)を有する金属酸化物、混合酸化物、フェライト、金属塩、例えば硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物およびリン酸塩が挙げられる。天然材料、例えば粘土、カオリンなども用い得る。ナノスケールセラミック粉末の粒子サイズは、好ましくは2〜300nmである。
【0055】
多孔質フルオロポリマーは、好ましくは、前記のように溶融伸張膜の形態で存在する。多孔質フルオロポリマーの微細構造は、結節とフィブリル、フィブリルのみ、フィブリルストランドまたはフィブリルの束、あるいはフィブリルにより相互連結される伸張結節で構成され得る。フルオロポリマーの好ましい気孔サイズは、0.01〜15μmの範囲である。多孔質フルオロポリマー膜の厚みは、好ましくは1〜1000μmである。
【0056】
多孔質キャリヤー材料に多層デザインを付与することも、本発明の範囲内である。多孔質フルオロポリマー膜とイオン伝導性膜とのサンドイッチ材料、または多孔質フルオロポリマー膜、従来のイオン伝導性膜および更なる多孔質フルオロポリマー膜を有する系を用い得る。従来のイオン伝導性膜は、例えば充填プラスチック膜であり、その膜は、例えばテトラフルオロエチレンと末端スルホン酸基を有するペルフルオロビニルエーテルとのコポリマーからの過フッ化イオノマー、または例えばドープされたZrOを充填された膜であり得る。このような系またはサンドイッチ材料の使用は、電極間のこのような従来の膜のイオン流れを付加的に改良する。対称または非対称の膜が用いられ得る。
【0057】
過フッ化界面活性剤は、ロール、浸漬浴、スプレー法およびさらなる既知の方法により、多孔質材料に適用されるかまたは導入され得る。過フッ化界面活性剤は、電解質中にも存在し、それにより多孔質材料中に流入(wash into)し得る。界面活性剤の低表面張力のために、単一層の化合物で十分である。これは、気孔サイズが非常に小さいフルオロポリマー膜でさえ、孔構造を密封することなく十分に親水性化され得るという利点を有する。過フッ化界面活性剤で処理後、多孔質フルオロポリマーは、好ましくは内表面の少なくとも一部を被覆される。しかしながら、処理により内表面および外表面の両方の少なくとも部分的にコーティングを生じることも本発明の範囲内である。多孔質フルオロポリマーの内外表面は、好ましくは、過フッ化界面活性剤で完全に覆われる。フルオロポリマーの初期多孔性および平均気孔サイズは保持される。
【0058】
本発明においては過フッ化界面活性剤とは、特に多孔質材料の表面に高い程度で親水性基をもたらして、多孔質材料に親水性特性を付与する成分を意味している。
【0059】
本発明において用いられる好ましい過フッ化界面活性剤は、イオン性フルオロ界面活性剤、例えば、過フッ化カルボン酸または過フッ化スルホン酸であり、その塩も用い得る。少なくとも1つの末端カルボン酸基またはその塩を有するペルフルオロポリエーテルは、例えば過フッ化カルボン酸またはその塩として用いられ得る。さらに、過フッ化ベタインまたはスルホベタインといった両性フルオロ界面活性剤を用い得る。過フッ化陽イオン性樹脂と過フッ化陰イオン性界面活性剤との組合せの使用も考え得る。
【0060】
分子の過フッ化部分は、製造方法によって、(a)直鎖非分枝鎖、(b)末端分枝鎖、(c)側基を有する直鎖、または(d)ハイウエイ(highway)分枝鎖であり得る。過フッ化分子部分の鎖長が炭素原子数4またはそれ以上であることが一般的に好ましい。これらのフルオロ界面活性剤は、例えば強酸または塩基、酸化または還元溶液のような活性な媒質中又は高温においてそれらを使用可能にする高度の熱および化学安定性を有する。界面活性剤の極性分子基の性質はさらに、フルオロ界面活性剤の界面活性特性に影響を及ぼす。電解質溶液の表面張力を<28mN/mの値に低減するフルオロ界面活性剤は一般に、本発明において好ましい。これは、電解質中でのフルオロ界面活性剤の一定の溶解度を仮定している。
【0061】
フッ化界面活性剤は、好ましくは多孔質材料に適用される前に溶媒と混合される。水は、本発明の溶媒として好ましい。しかしながら、単独のまたは水と組み合せたアルコールといったようなその他の溶媒も考え得る。
【0062】
溶媒は、例えば加熱ローラー上キャリヤー材料を導くこと、または強制対流炉を使用することによって、多孔質材料の処理後に、除去される。
【0063】
過フッ化界面活性剤で多孔質材料を処理することは、過フッ化界面活性剤の僅かな適用で恒久的な改質をもたらす。過フッ化界面活性剤は、好ましくは、単層又は場合によっては多層で、多孔質材料に適用される。選択された改質の態様により、特に恒久的な親水性効果を得ることができる。EP587988B1に記載のように、疎油性改質を薄膜でePTFE膜に行うことができる。このような改質において、膜は、水溶性ポリカチオン及び/又はカチオン的合成樹脂、及び長鎖界面活性剤又はアルキル置換ポリアニオンの少なくとも1つの層から、同等帯電(equalized charge)で形成される。ポリカチオンは、その物質に吸収され、長鎖界面活性剤又はアルキル置換ポリカチオンと複合化する。界面活性剤は、脂肪族の枝分かれしていない長鎖フルオロ界面活性剤である。
【0064】
過フッ化界面活性剤は、物理的又は静電的吸着によって多孔質材料に支持される。このことは、界面活性剤と多孔質材料との優れた付着を保証し、それによって、例えば、界面活性剤が洗い落とされるのを防ぎ、エネルギー貯蔵手段の長寿命を確保する。
【0065】
水溶性又はアルコール可溶性の過フッ化界面活性剤は、好ましくは、多孔質材料の全表面を被覆する。このようにして処理された多孔質材料は、適所に存在する自由で容易に接近可能な十分な反応性基を含み、多孔質材料が電解質で濡れることを可能にする。また、電解質中の過フッ化界面活性剤の十分な可溶性が、電解質の表面張力が十分に低下可能なように付与される。多孔質材料の改質の結果は、出発物質に比較して高められたイオン生成基の割合が増加した比較的親水性の表面への変化である。したがって、過剰の過フッ化界面活性剤を用いてコーティングがなされ、それによって官能基の一部は親水性を顕著にするのに使用され、その残りが、電解質の表面張力を抑える作用をする。
【0066】
使用される電解質は、塩水溶液、又は無機若しくは有機の酸若しくは塩基の水溶液であることができる。また、ゲルを使用することもでき、例えば、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄のような無機酸化物又は塩、及びコーティング(酸化物、有機物質)を有する金属酸化物、混合酸化物、フェライト、金属塩、例えば硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物、リン酸塩と組み合わされた酸又は塩基から得られるゲルが挙げられる。また、イオノマー、高分子電解質、高分子電解質錯体のような多官能価有機化合物を使用することもできる。また、溶媒や塩を含む有機電解質を使用することもできる。典型的な溶媒は、プロピオニトリル、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、メチルホルメート、ジメトキシエタン、及びこれらの混合物や組み合わせである。典型的な塩は、テトラエチルアンモニウム、その他のテトラアルキルアンモニウム若しくはエチルメチルイミダゾリウムのカチオン、又はトリフルオロメチルスルホンイミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアレセネート、トリフルオロメタンスルホネート、及び過塩素酸塩のカチオンである。
【0067】
本発明のエネルギー貯蔵手段において使用されるレドックス系は、例えば、ルテニウム、マンガン、又はクロムのレドックス系であることができる。
【0068】
本発明のエネルギー貯蔵手段の電極は、プレート又はホイルの形態で存在することができる。ここで、スティック電極のような別な形態の電極を設計することも本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0069】
次に、例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。物理的特性は次のようにして求めた。
【0070】
〔気孔率〕
次式によって計算した。
気孔率=(1−ρ/ρ)×100 %
ここで、ρは材料の測定密度であり、ρは材料の理論密度である。
【0071】
〔平均気孔サイズ(平均流孔サイズ、MFP)〕
直径25mmの膜片をペルフルオロポリエーテル(Porofil)で濡らす。その濡れた膜をコールターポロメーターII(Coulter Electronics Ltd.)の中に入れ、平均気孔サイズを測定した。
【0072】
〔表面張力〕
表面張力は、Wilhelmyのプレート法を用いてKRUSS−GmbH Humburgから入手のプロセッサー張力計(processor tensiometer)K12によって測定した。正確に寸法が分かっているプレートを液体に接触させた。プレートの濡れ線にそって液体が動く力を測定した。この力は、液体の表面張力に直接に比例する。
【0073】
〔導電率〕
導電率の測定は、Wissenschaftlich−Technische Werkstatten GmbHから入手のマイクロプロセッサー精密導電率計器LF539を用いて行った。標準的な導電率測定用セルTetraCon 96を使用した。
【0074】
例1
延伸膨張ポリテトラフルオロエチレンの厚さ65μmの膜(平均気孔直径0.40μm、気孔率78%、GORE−TEX(商標)膜、W.L.Gore & Associates GmbHより入手)をロールコーターを用いて、フルオロ界面活性剤溶液(7%のFT248溶液、イソプロピルアルコール:水=1:1)をコーティングした。フルオロ界面活性剤は、Bayer AGから入手可能であり、C17SOONHである。膜を加熱炉に通し(200℃)、溶媒を逃散させた。コーティングの後、平均気孔サイズ0.41μmの膜を得た。コーティングの重さは約3g/mであり、気孔率は変化していなかった。6規定(N)の硫酸は、その膜を直ちに濡らした。
【0075】
例2
フルオロ界面活性剤の表面張力を、水及び硫酸の中で測定した。
例1と同様にして、さらに膜をフルオロ界面活性剤によって処理した。結果を表1に示す。処理した膜は、電解質(例えば、33%硫酸)に対して湿潤性であった。
【0076】
【表1】

【0077】
(1)Bayer AG、ペルフルオロオクタンスルホン酸のカリウム塩
(2)Bayer AG
(3)Hoechst AG、スルホベタイン
(4)Ausimont、ペルフルオロポリエーテルのモノジホスフェート
【0078】
界面活性剤FT800とMF201は、純硫酸又は水には十分な溶解性がない。表面張力の測定のため、規定濃度の界面活性剤を、水/イソプロピルアルコール、又は硫酸/イソプロピルアルコールを用いて作成した。
【0079】
例3
例2で作成した膜をキャパシター(図1参照)に装着した。電解質は33%硫酸とした。膜に拘束された電解質のイオン導電率の温度依存性を測定した。また、使用前と、キャパシター中で5か月使用した後について、表面張力を測定した。結果が示すように、高温又は長期間使用後で、性能低下は全く生じなかった。
【0080】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のエネルギー貯蔵手段は、好ましくは、二重層キャパシターである。また、キャリヤー材料は、電解質を受入れ、このキャパシターでそれを首尾よく支持する。過フッ化界面活性剤のおかげで、電極は電解質で十分に濡れ、全ての利用可能な表面が活性化される。
【0082】
さらに、本発明のエネルギー貯蔵手段は、バッテリーにも有用である。
【0083】
最も広義には、本発明のキャリヤー材料は、とりわけ電気分解や電気透析のような電気化学システムにおける、貯蔵手段、セパレーター、又はダイヤフラムとして使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的エネルギー貯蔵手段であって、少なくとも2つの電極、電解質および、前記電極間に配置された前記電解質のためのキャリヤー材料を有し、前記キャリヤー材料は内側表面で気孔を規定する内側多孔質構造を有する多孔質材料であり、前記の内側表面は、前記電解質とは異なる過フッ化界面活性剤の層によって少なくとも部分的にコーティングされており、コーティングされた内側表面を持つ前記の気孔中に前記電解質が収容されており、前記電解質の表面張力は19.8mN/m以下に低減されており、そして前記の内側多孔質構造は基本的にフィブルによって相互に連結されている一連の結節からなり、前記の結節はほぼ平行に配列されており、高度に伸長されまた25:1以上のアスペクトル比を有している、電気化学的エネルギー貯蔵手段。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−147369(P2009−147369A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66230(P2009−66230)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【分割の表示】特願2000−513331(P2000−513331)の分割
【原出願日】平成10年9月22日(1998.9.22)
【出願人】(391018178)ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエーツ,ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (40)
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】