説明

電気化学的エネルギー貯蔵装置、及び電気化学的エネルギー貯蔵装置を冷却又は加熱する方法

電気化学的エネルギー貯蔵装置101は、この電気化学的エネルギー貯蔵装置をアプリケーション環境内に電気的に接続するための、少なくとも2つの電流導体105、106を備えている。前記電流導体は、電気化学的エネルギー貯蔵装置の内部に配置された第一の領域103、104と、電気化学的エネルギー貯蔵装置の外側に配置された第二の領域105、106とを備えている。本発明による電気化学的エネルギー貯蔵装置は、前記電流導体のうちの少なくとも1つが、第二の領域105、106において、電流導体を液状又はガス状の熱輸送媒体107、108が貫流することができるように設計されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的エネルギー貯蔵装置と、電気化学的エネルギー貯蔵装置、とりわけリチウムイオン蓄電池を冷却又は加熱する方法に関する。このような電気化学的エネルギー貯蔵装置は、例えば自動車に用いられている。しかしながら本発明は、リチウムを有しない電気化学的エネルギー貯蔵装置に用いることも可能であり、自動車から独立して用いることも可能である。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーを保存するためのガルバニセルを有している電気化学的エネルギー貯蔵装置の多くの構造が、従来技術から知られている。このようなエネルギー貯蔵装置に供給された電気エネルギーは、化学的エネルギーに変換され、保存される。不可逆的な化学反応がこの変換の間に生じるので、この変換は損失を受けやすく、この化学反応は蓄電池の経年劣化を引き起こす。生じたエネルギー損失は、熱の形で放出され、このことはガルバニセルの温度上昇につながる場合がある。
【0003】
しかしながら、エネルギーのより迅速な変換に加えて、この経年劣化は蓄電池のガルバニセル内の温度の上昇によっても加速される。とりわけ、電動自動車の加速の間には、短時間の間に蓄電池から大電流が引き出される。これら大電流は、例えば自動車の減速が電気装置によって補助されて、得られたエネルギーが蓄電池に供給された場合にも生じる。
【0004】
ガルバニセル内の温度が過度に上昇した場合、エネルギー貯蔵装置の破損の危険が存在し、この貯蔵装置は特定の状況下において焼損又は破裂する場合がある。このような望ましくない現象は、電気化学的エネルギー貯蔵装置の、可能な限り最も効率的な冷却によって避けることが可能である。
【0005】
他方では、多くの電気化学的エネルギー貯蔵装置は、貯蔵装置の構造及び作動原理に依存する、低い作動温度を上回る温度においてようやく、効果的に、又は確実に動作する。従って、電気化学的エネルギー貯蔵装置の使用目的、又は用途に応じて、この貯蔵装置の温度を熱の供給によって上昇させることが望ましい場合がある。
【0006】
特許文献1は、変形可能な熱伝導冷却ベローズを有する電気化学的エネルギー貯蔵装置ユニットを説明しており、このベローズは蛇行配列に連結されるとともに、複数の流れ隔室を有しており、このベローズを通って熱輸送媒体が流れる。
【0007】
特許文献2は、ハウジング、換気システム、及び金属製ヒートシンクを有している複数のセルと、流体導通手段とから製造されているバッテリを説明しており、この流体導通手段は空気をセルに導通させている。
【0008】
特許文献3は、貯蔵セルを有するバッテリ用の冷却装置を説明しており、この冷却装置はバッテリボックス内に収納され、且つセルの冷却用の冷却器具を有している。要求に応じた冷却のために、冷却装置が、空気熱交換器と、液体ラジエータと、要求に応じてこれら2つの冷却器間を切り替えるための三方弁とを備えていることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願第60213474号明細書
【特許文献2】独国特許出願第69901973号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102007012893号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、電気化学的エネルギー貯蔵装置を冷却又は加熱する可能な限り最も効果的な方法と、対応する電気化学的エネルギー貯蔵装置とを記載することにある。本発明によると、本課題は、独立請求項の対象によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電気化学的エネルギー貯蔵装置は、この電気化学的エネルギー貯蔵装置をアプリケーション環境の内側に電気的に接続するための、少なくとも2つの電流導体を有している。これら電流導体は、電気化学的エネルギー貯蔵装置の内側に配置された第一の領域と、電気化学的エネルギー貯蔵装置の外側に配置された第二の領域とを有している。本発明に係る電気化学的エネルギー貯蔵装置は、これら電流導体のうちの少なくとも1つが、液状又はガス状の熱輸送媒体が、第二の領域内において、この電流導体を貫流することができるように設計されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る、このような電気化学的エネルギー貯蔵装置を冷却又は加熱する方法においては、エネルギー貯蔵装置の電流導体のうちの少なくとも1つを、第二の領域内において、液状又はガス状の熱輸送媒体が貫流する。
【0013】
本発明の説明に関連して、電気化学的エネルギー貯蔵装置は、任意のタイプのエネルギー貯蔵装置として理解されるべきであり、このエネルギー貯蔵装置から電気エネルギーを引き出すことができ、電気化学的反応がエネルギー貯蔵装置の内部において進む。この概念はとりわけ、全てのタイプのガルバニセル、とりわけ一次セル、二次セル、及びこのようなセルの相互接続を備え、これにより、このようなセルから製造されたバッテリを形成する。通常は、このような電気化学的エネルギー貯蔵装置は、負極と正極とを有し、これら電極は、いわゆるセパレータによって離隔されている。電解質を介して、電極間にイオン輸送が生じる。
【0014】
本発明の説明に関連して、電流導体は、電気化学的エネルギー貯蔵装置の導電性構成要素として理解されるべきであり、この構成要素はエネルギー貯蔵装置の中に、又はエネルギー貯蔵装置の外に電気エネルギーを輸送するために用いられる。通常は、電気化学的エネルギー貯蔵装置は2つのタイプの電流導体を有し、これら電流導体は、エネルギー貯蔵装置の内部において、電極の2つのグループのうちの1つ―アノード又はカソード―にそれぞれ接続されている。
【0015】
本発明の説明に関連して、熱輸送媒体は、ガス状又は液状の材料として理解されるべきであり、この熱輸送媒体は、その物理的特性ゆえに、熱伝導及び/又は熱伝達によって、空力学的又は水力学的な流れ、とりわけ対流性の流れを介して、熱輸送媒体内の熱を輸送するのに適している。科学技術において通常用いられている熱輸送媒体の重要な例は、例えば空気又は水又はその他の一般に用いられている冷却剤である。利用の背景に応じて、希ガス若しくは液化希ガスのような化学的に不活性な(反応性が少ない)ガス若しくは液体、又は高い熱容量、及び/若しくは高い熱伝導性を有する材料のような、別のガス又は液体も一般的に用いられる。
【0016】
本発明の説明に関連して、エネルギー貯蔵装置のアプリケーション環境は、任意の技術的装置として理解されるべきであり、この装置をエネルギー貯蔵装置に電気的に接続し、又は接続することができ、これにより電気エネルギーをエネルギー貯蔵装置から引き出すことができ、又は電気エネルギーをエネルギー貯蔵装置に供給することができる。このようなアプリケーション環境の例は、あらゆるタイプの電気需要装置、若しくは電気エネルギー供給装置、又は電気需要装置と供給装置との組み合わせである。
【0017】
有利な実施形態及びさらなる構成は、従属請求項の対象である。
【0018】
好ましい電気化学的エネルギー貯蔵装置は、少なくとも1つの電流導体を有し、この電流導体は、液状又はガス状の熱輸送媒体が、第一の領域内においても、この電流導体を貫流することができるように設計されている。本発明のこの実施形態においては、熱輸送は、第一の領域においても、熱輸送媒体における対流性の流れを通じた熱伝導と熱輸送との複合作用によって生じ、従って、熱輸送媒体を適切に選定した場合に、さらに改善されることが可能である。
【0019】
とりわけ好ましい電気化学的エネルギー貯蔵装置は、少なくとも1つの電流導体を有し、この電流導体は、同じ液状又はガス状の熱輸送媒体が、第一の領域内及び第二の領域内において、この電流導体を貫流することができるように設計されている。この実施形態は、とりわけ実施が容易であり、熱輸送媒体を適切に選定した場合に、とりわけ効果的な熱輸送と結びつけられることが可能である。
【0020】
とりわけ好ましい電気化学的エネルギー貯蔵装置は、少なくとも1つの電流導体を有し、この電流導体は、第一の液状又はガス状の熱輸送媒体が、第一の領域内においてこの電流導体を貫流することができ、且つ第二の液状又はガス状の熱輸送媒体が、第二の領域内においてこの電流導体を貫流することができるように設計されている。この実施形態は、熱輸送媒体を適切に選定した場合、及び/又は流動条件を適切に構成した場合に、とりわけ効果的な熱輸送と結びつけられ得る。本発明のとりわけ好ましい実施形態によると、このことはとりわけ、少なくとも1つの電流導体が、第一の熱輸送媒体と第二の熱輸送媒体との間に熱交換を生じさせることができるように設計されている場合に当てはまる。
【0021】
さらなる好ましい電気化学的エネルギー貯蔵装置は、少なくとも1つの電流導体を有し、この電流導体は第二の領域において、放熱器に伝熱的に接続されている。冷却器を、熱輸送媒体が貫流する電流導体に取り付けることによって、熱輸送をさらに改善することができる。
【0022】
さらに好ましい電気化学的エネルギー貯蔵装置においては、少なくとも1つの放熱器が、液状又はガス状の熱輸送媒体がこの放熱器の周囲を少なくとも部分的に流れることができるように設計されている。この実施例の、この付加的な措置は、多くの場合において、熱輸送のさらなる改善に結びつくこともできる。
【0023】
本発明に係る好ましい方法においては、少なくとも1つの電流導体を、第一の領域内においても、液状又はガス状の熱輸送媒体が貫流している。本発明のこの実施形態においては、熱輸送は、熱輸送媒体における対流性の流れによる熱伝導と熱伝達との複合作用によって、第一の領域においても引き起こされ、従って、熱輸送媒体を適切に選定した場合に、さらに改善される可能性がある。
【0024】
本発明に係るとりわけ好ましい方法においては、同じ液状又はガス状の熱輸送媒体が、第一の領域内及び第二の領域内において、少なくとも1つの電流導体を貫流する。この実施形態は、実施がとりわけ容易であり、熱輸送媒体を適切に選定した場合に、とりわけ効果的な熱輸送と結びつけられる可能性がある。
【0025】
とりわけ好ましい方法において、第一の液状又はガス状の熱輸送媒体が、第一の領域内において少なくとも1つの電流導体を貫流し、第二の液状又はガス状の熱輸送媒体が、第二の領域内において少なくとも1つの電流導体を貫流する。この実施形態は、熱輸送媒体を適切に選定した場合、及び/又は流動条件を適切に構成した場合に、とりわけ効果的な熱輸送と結びつけられることが可能である。本発明のとりわけ好ましい実施形態によると、このことは、少なくとも1つの電流導体が、第一及び第二の熱輸送媒体間に熱交換を生じさせることができるように設計された場合に、とりわけ当てはまる。
【0026】
さらなる好ましい方法においては、少なくとも1つの電流導体が、第二の領域において、放熱器に伝熱的に接続される。熱輸送媒体が貫流する電流導体流れる電流導体に、放熱器を取り付けることにより、さらに熱輸送を改善することが可能である。
【0027】
とりわけ好ましい方法においては、液状又はガス状の熱輸送媒体が、少なくとも1つの放熱器の周囲を少なくとも部分的に流れる。この実施例の、この付加的な措置も、多くのケースにおいて、熱輸送のさらなる改善と結びつくことができる。
【0028】
当業者は、本発明の幾らかの説明された実施形態を、技術分野における当業者の知識に基づいて、有利に組み合わせることができる。当業者は、本明細書において完全には説明し得ない別の有利な実施例を、技術分野における当業者の知識を用いて、本明細書に基づいて容易に発見する。本発明は、本明細書において説明された実施例に制限されない。
【0029】
以下に、本発明を、好ましい実施例に基づき、図面を用いて、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一の実施形態による、本発明に係る電気化学的エネルギー貯蔵装置の概略図であり、熱輸送媒体が、このエネルギー貯蔵装置の外側の領域内のみにおいて、2つの電流導体を貫流することを示す図である。
【図2】本発明の第二の実施形態による、本発明に係る電気化学的エネルギー貯蔵装置の概略図であり、熱輸送媒体が、このエネルギー貯蔵装置の外側の領域内のみにおいて、2つの電流導体を貫流し、且つ、両電流導体は放熱器と接触していることを示す図である。
【図3】本発明の第三の実施形態による、本発明に係る電気化学的エネルギー貯蔵装置の概略図であり、第一の熱輸送媒体が、このエネルギー貯蔵装置の内部の領域内において2つの電流導体を貫流し、且つ第二の熱輸送媒体が、このエネルギー貯蔵装置の外部の領域内において2つの電流導体を貫流することを示す図である。
【図4】本発明の第四の実施形態による、本発明に係る電気化学的エネルギー貯蔵装置の概略図であり、第一の熱輸送媒体が、このエネルギー貯蔵装置の内部の領域内において2つの電流導体を貫流し、且つ第二の熱輸送媒体が、このエネルギー貯蔵装置の外部の領域内において2つの電流導体を貫流し、且つ、両電流導体は放熱器と接触していることを示す図である。
【図5】本発明の第五の実施形態による、本発明に係る電気化学的エネルギー貯蔵装置の概略図であり、同一の熱輸送媒体が、このエネルギー貯蔵装置の内側の領域内及び外側の領域内において、2つの電流導体を貫流することを示す図である。
【図6】本発明の第六の実施形態による、本発明に係る電気化学的エネルギー貯蔵装置の概略図であり、同一の熱輸送媒体が、このエネルギー貯蔵装置の内側の領域内及び外側の領域内において、2つの電流導体を貫流し、且つ、両電流導体は放熱器と接触していることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る電気化学的エネルギー貯蔵装置は、伝熱性に優れた電流導体を好ましくは有している。このような電流導体は、ガルバニセルの外部に、又はガルバニセルの内部に、電流を伝える。このような電流導体は、好ましくは金属製であり、従って、十分な電気伝導率に加えて、高い熱伝導率をも既に有していることが多い。
【0032】
この高い熱伝導率は、電流導体の内側にはわずかな温度勾配しか生じず、ガルバニセルの内部又は外部へ多くの熱の流れを伝えることができる、という効果を有している。電流導体の第一の領域103、104、203、204、303、304、403、404、503、504、603、604は、ガルバニセルの内側に配置されるとともに、ガルバニセルの内側において、ガルバニセルの電気化学的に活性なコンポーネント、即ち極性の異なる電極に、電気的に接続され、これら電極は、セパレータ102、202、302、402、502、602によって離隔されている。電流導体の第二の領域105、106、205、206、305、306、405、406、505、506、605、606は、ガルバニセルの外部に延在し、エネルギー貯蔵装置をアプリケーション環境に電気的に接続する目的のために用いられる。
【0033】
実施例に基づいて図1に概略的に示されているように、電気化学的エネルギー貯蔵装置は少なくとも2つの電流導体を有し、これら電流導体は、アプリケーション環境の内側への電気化学的エネルギー貯蔵装置の電気的接続のために用いられる。これら電流導体は、電気化学的エネルギー貯蔵装置の内側に配置されている第一の領域と、電気化学的エネルギー貯蔵装置の外側に配置されている第二の領域とを有している。本発明によると、これら電流導体のうちの少なくとも1つは、液状又はガス状の熱輸送媒体107、108、207、208、307、308、407、408、507、508、607、608が、第二の領域内において電流導体を貫流することができるように構成されている。
【0034】
フローダクト107、108、207、208、307、308、407、408、507、508、607、608が、この目的のために、本発明に係る電流導体内に好ましくは設けられ、これらフローダクトの中を通って液状又はガス状の熱輸送媒体を流すことができる。このように、電流導体は、この外部の領域における熱伝導のメカニズムを介してのみ冷却されるのではなく、むしろ、液状又はガス状の熱輸送媒体の補助を用いた熱輸送が付加的に生じている。
【0035】
熱輸送媒体の流れは、いわゆる対流によって動かすことができ、この流れにおいて、電流導体の内部に形成されている温度勾配が、熱輸送媒体内に対流性の流れを自発的に引き起こしている。この対流性の流れによって、低温において電流導体の外部の領域に熱輸送媒体が連続的に供給され、同時に、高温においてこの電流導体から熱輸送媒体が排出される。熱輸送媒体の材料特性が適切に選択されている場合は、例えば冷却が単に金属製の電流導体内における熱伝導によって実施されている場合と比較して、より効率的な冷却を、流れている熱輸送媒体によって達成することができる。
【0036】
単に熱対流によって、熱輸送媒体における熱輸送を誘導する代わりに、外部から、フローダクトを通じて熱輸送媒体の流れを動かすこともできる。この場合は、単に熱対流が生じている場合と比較して、流速をより大きく選択することができる。外部から加えられる流速は、達成される熱輸送を、エネルギー貯蔵装置の用途又は作動状態の瞬間的な要求に適合させるように、選択することができる。
【0037】
図1に図示されている装置は、電気化学的エネルギー貯蔵装置の冷却と加熱との両方に用いることができる。例えば、電気化学的エネルギー貯蔵装置が、この装置の最適な作動温度を下回っている場合に、適切に加熱された熱輸送媒体を、電流導体の流路内に供給することによって、電流導体の外部の領域において、電流導体を加熱することができる。温度勾配が電流導体内に形成され、この温度勾配は、内部の領域に向かう方向において生じる熱の流れを通じた熱伝導によって消滅する。結果として、外部の領域から電流導体の内部の領域への熱伝導によって、熱輸送媒体の熱の流れは、電流導体の外部の領域内、及び電流導体の内側において生じ、電流導体の内側の領域103、104は加熱され、このことは結果的に、セルを全体的に加熱し、従ってエネルギー貯蔵装置の温度を、この装置の作動温度に上昇させる。
【0038】
対照的に、不可逆性の化学反応の進展に起因して、エネルギー貯蔵装置の作動の間に、エネルギー貯蔵装置の内側に加熱が生じた場合、エネルギー貯蔵装置が装置の最大作動温度を越えて加熱されることを防ぐために、エネルギー貯蔵装置を冷却せねばならないことが多い。この場合、冷却用の熱輸送媒体が、より低い温度で、電流導体の外側の領域105、106のフローダクト107、108内に供給される。このことは結果として、電流導体の外部の領域105、106を冷却し、これによって、結果として内部領域103、104と外部領域105、106との間に温度勾配が生じる。この温度勾配は、電流導体の内部の領域103、104から外部の領域105、106内への熱伝導の発生により消滅し、これによって、結果として内側から外側への熱の流れが生じ、これによってセルと、従ってエネルギー貯蔵装置とが冷却される。
【0039】
さらなる実施例に基づいて図2に概略的に示されているように、例えば冷却の場合に、電流導体に良好に熱伝導接触された状態の放熱器209、210を、電流導体の外部の領域205、206に取り付けることによって、熱輸送をさらに改善することができる。大きな表面を好ましくは有し、従って電流導体と環境との間の熱移動を著しく増加させることができる、このような放熱器を介して、電気化学的エネルギー貯蔵装置の冷却を、作動状態において、著しく改善することができる。このことは、熱輸送媒体211、212が放熱器209、210の周囲を付加的に流れている場合に、より一層当てはまる。この熱輸送媒体211、212は、ガス状の熱輸送媒体、例えば空気とすることが可能であり、又は液状の熱輸送媒体、例えば水とすることも可能である。
【0040】
適切な熱輸送媒体の選定は、様々な因子によって影響される。一方では、可能な限り最も効果的な熱輸送の観点が、材料選定において大きな意味をなす。他方では、採用されたエネルギー貯蔵技術も、熱輸送媒体の選定に影響を及ぼす場合がある。従って、選定された熱輸送媒体が、通常の作動の際に接触する材料、又は故障の場合に接触する場合がある材料に対して化学的に不活性(反応性が小さい)に挙動する場合、一般的に有利となる。
【0041】
本発明のさらなる実施例に基づいて図3に概略的に示されているように、電気化学的エネルギー貯蔵装置の内部と、電流導体の外部の領域305、306との間の熱輸送は、熱輸送媒体が電流導体303、304の内部の領域を貫流している場合、さらに改善することができる。図3に概略的に示されている実施例においては、熱輸送媒体が、電流導体の内部の領域303、304内の、閉じられたフローダクト313、314の中を通って流れている。従って、ここに示されている、電流導体の内部の領域内のフローダクトの配置は、電流導体の内部の領域303、304内の温度勾配を消滅させることに、主に寄与する。内部の領域内のこのフローダクトの配置が、結果として、熱輸送媒体の流れを通じた、電流導体の内部の領域から外部の領域305、306内への熱輸送をもたらすことはない。このため、フローダクト308及び313、又は307及び314を、より激しい熱交換をこれらフローダクト間に生じさせることができるように配置することが、この実施例においては好ましい。このことはとりわけ、電流導体の内部の領域303、304と、電流導体の外部の領域305、306との間の遷移領域に、とりわけ良好な熱伝導を有して電流導体が実施されるので、好ましくは達成することができる。
【0042】
さらなる実施例に基づいて図4に概略的に示されているように、電流導体と良好な熱伝導接触状態である放熱器409、410が、電流導体の外部の領域405、406に取り付けられているので、例えば冷却の場合に、熱輸送を、図3に示された実施例の場合に、さらに改善することも可能である。好ましくは大きな表面を有し、従って電流導体と環境との間の熱輸送を著しく増加させることができる、このような放熱器を通じて、作動状態にある電気化学的エネルギー貯蔵装置の冷却を、著しく改善することができる。熱輸送媒体411、412が、放熱器409、410の周囲を付加的に流れている場合、このことはより一層当てはまる。この媒体は、ガス状の熱輸送媒体、例えば空気とすることができ、又は液状の熱輸送媒体、例えば水とすることもできる。
【0043】
図5は、本発明によるさらなる実施例を概略的に示しており、この実施例においては、電流導体の外部の領域505、506内を流れる熱輸送媒体は、これら電流導体の内部の領域503、504内をも流れている。この実施形態においては、熱輸送媒体の材料特性を適切に選定した場合、及びフローダクトを適切に設計した場合、熱輸送媒体の流れによって行われる熱輸送はとりわけ高くなる。
【0044】
しかしながら、例えば、外部の領域内において非常に効果的な熱輸送媒体が、故障の場合に、エネルギー貯蔵装置の内部において用いられている材料と望ましくない形で化学的に反応することがある場合に、電流導体の内部の領域内及び外部の領域内に、同じ熱輸送媒体を流すことは、電気化学的エネルギー貯蔵装置に採用されている技術に応じては、装置全体の作動信頼性に関して問題につながることがある。
【0045】
さらなる実施例に基づいて図4及び図6に概略的に示されているように、適切に設計された放熱器が、電流導体と熱伝導接触した状態で、電流導体の外部の領域に配置されている場合に、電流導体を通じた熱輸送をさらに向上させることができ、この放熱器は電流導体と環境との間の熱輸送を増加させる。この効果を、熱輸送媒体がこれら放熱器の周囲を流れる場合に、さらに向上させることができる。
【0046】
放熱器609、610を冷却するために採用される熱輸送媒体611、612は、好ましくは電気絶縁体であり、さもなければ、可能な限り最善の熱輸送特性を有している。多くの場合では、空気、又は窒素若しくは二酸化炭素のような化学的に不活性なガスが、この目的のために適切であると考えられる。ガス状の熱輸送媒体の流れは、ファンの適切な配置によって好ましくは動かすことができる。ポンプは、液状の熱輸送媒体の流れを発生させ、且つ維持するために好ましくは適切である。このようなファン又はポンプの出力は、好ましくは電流導体の領域内の計測温度の関数とすることができ、これにより、例えば温度が望ましい作動温度から過度に逸脱している場合に、これらバルブ又はポンプの出力は増加する。採用される熱輸送媒体は、電気化学的エネルギー貯蔵装置の内部の冷却又は加熱のいずれかが、必須であるかそれとも望ましいかに応じて、適切に温度制御されるべきである。このことは、電気ヒータを介して、又は電気作動する冷却アセンブリを介して、好ましくは実施される。
【符号の説明】
【0047】
101、201、301、401、501、601 電気化学的エネルギー貯蔵装置
102、202、302、402、502、602 セパレータ
103、104、203、204、303、304、403、404、503、504 電流導体の第一の領域、電流導体
105、106、205、206、305、306、405、406、505、506、605、606 電流導体の第二の領域、電流導体
107、108、207、208、307、308、407、408、507、508、607、608 フローダクト、熱輸送媒体、電流導体
209、210、409、410、609、610 放熱器
211、212、411、412、611、612 放熱器の周囲、熱輸送媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的エネルギー貯蔵装置(101、201、301、401、501、601)であって、前記電気化学的エネルギー貯蔵装置をアプリケーション環境の内側に電気的に接続するための、少なくとも2つの電流導体(105、106、205、206、305、306、405、406、505、506、605、606)を有し、前記電流導体は、前記電気化学的エネルギー貯蔵装置の内側に配置されている第一の領域(103、104、203、204、303、304、403、404、503、504)と、前記電気化学的エネルギー貯蔵装置の外側に配置されている第二の領域(105、106、205、206、305、306、405、406、505、506、605、606)と、を有する電気化学的エネルギー貯蔵装置において、
少なくとも1つの前記電流導体は、液状又はガス状の熱輸送媒体が、前記第二の領域(105、106、205、206、305、306、405、406、505、506、605、606)内において、前記電流導体を貫流する(107、108、207、208、307、308、407、408、507、508、607、608)ことが可能であるように設計されていることを特徴とする電気化学的エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
少なくとも1つの電流導体を有し、前記電流導体は、液状又はガス状の熱輸送媒体が、前記第一の領域内(303、304、403、404、503、504、603、604)においても、前記電流導体を貫流する(313、314、413、414、507、508、607、608)ことができるように設計されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学的エネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
少なくとも1つの電流導体を有し、前記電流導体は、同じ液状又はガス状の熱輸送媒体(507、508、607、608、313、314、413、414)が、前記第一の領域内及び前記第二の領域内(303、304、403、404、503、504、603、604)において前記電流導体を貫流することができるように設計されていることを特徴とする請求項2に記載の電気化学的エネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
少なくとも1つの電流導体を有し、前記電流導体は、第一の液状又はガス状の熱輸送媒体(413、414、513、514)が、前記第一の領域内(403、404、503、504)において前記電流導体を貫流することができ、且つ第二の液状又はガス状の熱輸送媒体(407、408、507、508)が、前記第二の領域内(405、406、505、506)において前記電流導体を貫流することができるように設計されていることを特徴とする請求項2に記載の電気化学的エネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
少なくとも1つの電流導体を有し、前記電流導体は、前記第一の熱輸送媒体と前記第二の熱輸送媒体との間に熱交換を生じさせることができるように設計されていることを特徴とする請求項4に記載の電気化学的エネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
少なくとも1つの電流導体を有し、前記電流導体は、前記第二の領域(205、206、405、406、605、606)において、放熱器(209、210、409、410、609、610)に伝熱的に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気化学的エネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
少なくとも1つの放熱器(209、210、409、410、609、610)が、液状又はガス状の熱輸送媒体が少なくとも部分的に前記放熱器の周囲を流れる(211、212、411、412、611、612)ことができるように設計されていることを特徴とする請求項6に記載の電気化学的エネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
電気化学的エネルギー貯蔵装置を使用環境の内側に電気的に接続するための少なくとも2つの電流導体を有している、前記電気化学的エネルギー貯蔵装置を、冷却又は加熱する方法であって、前記電流導体は、前記電気化学的エネルギー貯蔵装置の内側に配置された第一の領域と、前記電気化学的エネルギー貯蔵装置の外側に配置された第二の領域とを有する方法において、
液状又はガス状の熱輸送媒体が、前記第二の領域において前記電流導体のうちの少なくとも1つを貫流することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記第一の領域においても、液状又はガス状の熱輸送媒体が、少なくとも1つの電流導体を貫流することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
同一の前記液状又はガス状の熱輸送媒体が、前記第一の領域内及び前記第二の領域内において少なくとも1つの電流導体を貫流することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第一の液状又はガス状の熱輸送媒体が、前記第一の領域内において少なくとも1つの電流導体を貫流し、第二の液状又はガス状の熱輸送媒体が、前記第二の領域内において少なくとも1つの電流導体を貫流することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第一の熱輸送媒体と、前記第二の熱輸送媒体との間に熱交換が生じることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの電流導体が、前記第二の領域において、放熱器に伝熱的に接続されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
液状又はガス状の熱輸送媒体が、少なくとも1つの放熱器の周囲を少なくとも部分的に流れることを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−500546(P2013−500546A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520955(P2012−520955)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004502
【国際公開番号】WO2011/009619
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(511173550)リ−テック・バッテリー・ゲーエムベーハー (85)
【Fターム(参考)】