説明

電気化学的エネルギー貯蔵装置を受容するためのバッテリーハウジング

変形可能な側壁(2)を有しているバッテリーハウジング(1)。当該バッテリーハウジング(1)は少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)を受容するために設けられている。電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)はセルフレーム(4)を有しており、当該セルフレームは部分的に電気化学的エネルギー貯蔵装置を包囲するとともに、領域的に前記バッテリーハウジング(1)の外壁を形成している。前記バッテリーハウジング(1)はさらにハウジングカバー(5)を有している。当該ハウジングカバーを介して少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)は電気的に接触可能となっている。側壁(2)は少なくとも領域的に当該バッテリーハウジング(1)の外壁を形成しており、当該側壁(2)の剛性はセルフレーム(4)の剛性よりも小さい。これにより、前記バッテリーハウジング(1)の内部空間と当該バッテリーハウジング(1)の周囲の環境との間で圧力が相違する場合、側壁(2)が変形し、前記バッテリーハウジング(1)の容量は増大する。当該側壁(2)は少なくとも領域的に前記セルフレーム(4)と気密に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学的エネルギー貯蔵装置を受容するための側壁を有するバッテリーハウジングと、当該バッテリーハウジングを動作させるための方法に関する。本発明は車の駆動モータに駆動力を供給するためのリチウムイオンバッテリーに関連して説明される。本発明はバッテリーの構造形式に関わりなく、あるいは、駆動力が供給される駆動部の種類に関わりなく、応用可能である点を指摘しておく。
【背景技術】
【0002】
従来技術、例えば特許文献1から、複数の電気化学的エネルギー貯蔵装置と、剛性のある側壁を備えるバッテリーハウジングを有するバッテリーが知られている。バッテリーハウジングのいくつかの構造形式に共通な点は、電気化学的エネルギー貯蔵装置が機能不良に陥ると、セルの内容物が外に出て当該バッテリーハウジングの環境が危険に晒されることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1583167号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明は特に、電気化学的エネルギー貯蔵装置の構成要素であって、気体状の構成要素も含む構成要素が、バッテリーハウジングから制御されずに漏出することを防止するとともにバッテリーの安全性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の点は本発明において独立請求項の教示によって達成される。本発明の好適なさらなる構成は従属請求項の対象となっている。
【0006】
バッテリーハウジングは、少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置を受容するとともに、当該電気化学的エネルギー貯蔵装置を例えば機械的応力あるいは紫外線などの外的影響から保護するために設けられている。このような電気化学的エネルギー貯蔵装置はセルフレームを有している。当該セルフレームは少なくとも部分的にエネルギー貯蔵装置を包囲し、さらに、領域的にバッテリーハウジングの外壁を形成している。当該バッテリーハウジングはさらにハウジングカバーを有している。当該ハウジングカバーを介して少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置は電気的に接触可能となっている。バッテリーハウジングはさらに、少なくとも一つの側壁を有している。当該側壁は領域的にバッテリーハウジングの外壁を形成している。当該側壁の剛性はセルフレームの剛性よりも小さい。このように剛性が異なることによって、バッテリーハウジングの内部空間と当該バッテリーハウジングの周囲の環境との間で圧力が相違する場合、概ね側壁が弾性変形もしくは塑性変形する。側壁がこのように変形すると、バッテリーハウジングの容量は増大する。側壁のこのような変形を可能にするために、当該側壁は少なくとも領域的に気密にセルフレームと接合されている。
【0007】
側壁とは、バッテリーハウジングの部分領域のことである。当該側壁は、バッテリーハウジングの内部空間と当該バッテリーハウジングの周囲の環境との間に圧力差がある状態で、変形するように設けられている。このような圧力差は特に、例えばいわゆる熱暴走の場合のように、電気化学的エネルギー貯蔵装置の無制御反応が生じ、それに伴ってバッテリーハウジングの内部空間において圧力が増大することによって生じる。特に当該側壁の変形によってバッテリーハウジングの表面と、バッテリーハウジングの内部空間の容量が拡大する。このような変化によって、好ましくはバッテリーハウジングの内部空間と当該バッテリーハウジングの周囲の環境との間の圧力差はポジティブな影響を受ける。すなわち、バッテリーハウジングの内部空間における圧力の増大は、当該側壁が変形しない場合に比べて少なくなる。このように圧力差が比較的小さいことにより、当該バッテリーハウジングに対する機械的応力は低下し、当該バッテリーハウジングの安全性は増大する。
【0008】
電気化学的エネルギー貯蔵装置とは、電気的エネルギーを貯蔵するために設けられている装置のことである。電気化学的エネルギー貯蔵装置は少なくとも一つの電極スタックと、電流導体と、ジャケットと、を有している。電気化学的エネルギー貯蔵装置は、電気的エネルギーを化学的エネルギーに変換し、かつ、貯蔵するために設けられている。電気化学的エネルギー貯蔵装置は反対に、化学的に貯蔵されているエネルギーを再び電気的エネルギーに変換し、かつ、放出することができる。このような電気化学的エネルギー貯蔵装置は好ましくはリチウムイオン蓄電池として実施されている。電気化学的エネルギー貯蔵装置は特に反応性の内容物質を有している。ジャケットは好適に、当該内容物質と、電気化学的エネルギー貯蔵装置を包囲する環境との無制御反応を防止する。
【0009】
セルフレームとは、電気化学的エネルギー貯蔵装置のジャケットと機械的に接触している構成要素のことである。セルフレームは電気化学的エネルギー貯蔵装置を概ね当該電気化学的エネルギー貯蔵装置の境界領域において包囲している。セルフレームは特に、ジャケットを保護することと、電気化学的エネルギー貯蔵装置が配置またはスタック可能であることに寄与する。セルフレームは特に、ジャケットの所定の、好ましくは感応性を有する領域を保護するのに役立つ。セルフレームによって特にジャケットに及ぼされる外的応力が減少する。セルフレームは特にジャケットの継ぎ目および接合箇所をカバーする。
【0010】
本発明において外壁とは、バッテリーハウジングの領域であって、当該バッテリーハウジングの内部空間と当該バッテリーハウジングを包囲する環境との境界を定める領域のことである。バッテリーハウジングの外壁は好ましくは、例えば機械的応力のような環境の影響をバッテリーハウジングの内容物から遠ざけるために設けられている。当該外壁によって特に、電気化学的エネルギー貯蔵装置から漏出した物質がバッテリーハウジングを包囲する環境と接触することが防止される。
【0011】
ハウジングカバーとは、バッテリーハウジングの構成要素である構成部材のことである。ハウジングカバーは好ましくは、セルフレームと接合され得る。電気化学的エネルギー貯蔵装置は好ましくはハウジングカバーを介して電気的に接触可能である。特にハウジングカバーには電子的なバッテリー制御部が装入されている。このようなバッテリー制御部は好ましくは、少なくとも一つのバッテリーの電気化学的エネルギー貯蔵装置を動作させるために設けられている。
【0012】
本発明において電気化学的エネルギー貯蔵装置を動作させるとは、バッテリーの個々の電気化学的エネルギー貯蔵装置または全ての電気化学的エネルギー貯蔵装置の電気的接触が特に遮断されるか、または好ましくは制御されることである。電気的接触は特に、貯蔵装置からの出力に影響が及ぼされるように制御され得る。これは好ましくは電流導体における電圧を制御することによって、および特に好適に、電気化学的エネルギー貯蔵装置から出力される電流を制御することによって行われる。 前記電圧または前記電流を制御する際に、特に少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置の状態、例えば温度、または好ましくはバッテリーハウジングの内部空間と当該バッテリーハウジングの周囲の環境との間の圧力差などが考慮される。
【0013】
上記のように、電気化学的エネルギー貯蔵装置の内容物が制御されずにバッテリーハウジングから漏出することが防止され、それによって本発明の解決すべき課題が解決される。以下に、本発明の好適なさらなる構成を説明する。
【0014】
バッテリーハウジングの好ましい実施の形態において、隣接する二つの電気化学的エネルギー貯蔵装置の少なくとも二つのセルフレームは、形状接続的または材料接続的または摩擦接続的に互いに接合されている。当該接合は特に気密に実施されている。当該接合を気密に行うことによって、物質が制御されずにバッテリーハウジングから漏出し得ないことが確実になる。これによって、電気化学的エネルギー貯蔵装置からの反応性物質によって環境が汚染されることが防止される。それによって、電気化学的エネルギー貯蔵装置の安全性が高められる。
【0015】
特に隣接する二つのセルフレームは、形状接続的に互いに接合されている。このような接合は特に接合要素によって実現され得る。特にセルフレームには当該接合を形成するために、空隙部、好ましくは穴が設けられている。特に空隙部と協働する接合要素によって、これらのセルフレームの形状接続的な接合が実現される。このような接合要素は特にネジ、リベット、ピンであってよい。特に一つのセルフレームに接合領域が形成されており、それによって隣接する二つのセルフレームは好適に共に一つの形状接続的な接合部を形成する。このような形状接続的な接合部は特にいわゆるスナップ式接合として実施されている。
【0016】
好ましい実施の形態において、隣接する二つのセルフレームは材料接続的に互いに接合されている。このような材料接続的な接合は特に接着または溶接によって得られる。当該材料接続的な接合は好ましくは気密に実施されている。当該種類の接合によって、物質が制御されずにバッテリーハウジングから環境に漏出することが防止される。それによって、電気化学的エネルギー貯蔵装置の安全性が高められる。
【0017】
好ましい実施の形態において、側壁は少なくとも一つのセルフレームと材料接続的に接合されている。このような材料接続的な接合は好ましくは接着または溶接によって得られる。当該種類の接合によって特に、側壁とセルフレームとの間に気密な接合が生じさせられる。好ましくは当該接合部の強度は側壁の引張強さとちょうど同じであるか、側壁の引張強さよりも大きい。このような互いの強度の比によって、側壁とセルフレームとの間の接合箇所は、側壁が変形し始める前に破損することはない。当該実施の形態によって特に、側壁が変形し、かつ、電気化学的エネルギー貯蔵装置の内容物質が制御されずにバッテリーハウジングから漏出しないことが確実となる。
【0018】
好ましい実施の形態において、側壁はセルフレームと摩擦接続的に、または、形状接続的に接合されている。側壁は好ましくは補強フレームを用いて締結することによって、セルフレームと接合される。このとき締結接合部は特に、当該締結接合部の引張強さが側壁の引張強さよりも大きいか、側壁の引張強さと同じであるように形成されている。当該接合部をこのように形成することによって特に、側壁は変形しても、接合部は破損せず、それによって電気化学的エネルギー貯蔵装置の内容物質が制御されずにバッテリーハウジングから漏出しないことが確実となる。接合部をこのように形成することによって、特にバッテリーハウジングの安全性が高められる。
【0019】
バッテリーハウジングの好ましい実施の形態において、バッテリーハウジング内部で大きな圧力差が持続的に生じることが防止される。特に1*10パスカルより大きな圧力差が5秒より長く、好ましくは2秒より長く、特に1/10秒より長く存在することが防止される。このような圧力調整は好ましくは、圧力調整空隙部によって達成される。このような圧力調整空隙部は特にセルフレーム内にあってよい。特に当該圧力調整空隙部によって、バッテリーハウジングは共通の連通する内部空間を一つだけ有することが確実となり、バッテリーハウジングの内部空間容積をこのように最適に利用することによって安全性が高められる。
【0020】
好ましい実施の形態においてバッテリーハウジングは、少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置を制御するための電子的なバッテリー制御装置を有している。当該バッテリー制御装置は特に、カバー要素に装入されている。カバー要素は特に、バッテリー制御装置を少なくとも領域的に、しかし好ましくは完全にカバーし得る。
【0021】
好ましい実施の形態において、バッテリーハウジングの側壁は複合材料から成っている。当該複合材料は特に繊維強化プラスチックである。好ましくは当該繊維複合材料のために、ベース材料またはマトリックス材料としてエラストマーが用いられる。特に当該材料において補強繊維は、多方向に、好ましくは所望の向きに、あるいは単方向に配向されている。強化繊維が多方向に配向されていることによって、好ましくは、当該側壁の構成要素としての強度が増大し、それによってバッテリーハウジングの安全性が高められる。強化繊維の向きを少なくとも領域ごとに、意図的に、例えば単方向にすることによって、好適に側壁の変形に影響が及ぼされる。これによって特に当該側壁は、方向性を有するとともに局所的に異なる変形を実現する。特に側壁のこのような定方向の変形によって、当該側壁がバッテリーハウジングを包囲する空洞または空隙部内に拡張することが実現される。このような定方向の変形によって特に、バッテリーハウジングを包囲する物体、例えばフレーム要素あるいはさらなるバッテリーハウジングと制御されずに接触することが回避され、それによってバッテリーハウジングの安全性が高められる。
【0022】
本発明に係る当該側壁に対する当該繊維複合材料の強化繊維は、好ましくはプラスチックから成る。当該プラスチックは特に、ベース材料とは異なる膨張挙動を有している。当該強化繊維は特にナイロンまたはアラミドから成る。強化繊維は特に、プラスチックとは異なる材料グループからの材料から成ってもよい。すなわち、例えばガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維、または炭素繊維であってよい。強化繊維は特に1μmから1000μm、好ましくは10μmから100μm、特に好ましくは20μmから40μmの厚さを有している。当該強化繊維の膨張挙動は特に当該強化繊維の幾何学的形状によって、例えば主たる引張方向に対して垂直な断面によって、あるいは好ましくは当該強化繊維の弾性モジュールによって影響される。強化繊維とベース材料の膨張挙動が異なることによって、当該側壁の変形挙動に影響が及ぼされ、それによってバッテリーハウジングの安全性が高められる。
【0023】
側壁は特に少なくとも部分的に、例えばポリオレフィンのように100%−1000%の破断伸びを有するプラスチックから成り、例えばポリアミドのように50%−500%の破断伸びを有するプラスチックから成り、あるいは、ポリカーボネートのように5%−80%の破断伸びを有するプラスチックから成る。側壁は好ましくは少なくとも部分的に、エチレン・プロピレン・ジエン(EPDM)のグループからのプラスチックから成る。当該プラスチックは特に、電気化学的エネルギー貯蔵装置の内容物質によって、あるいは、当該内容物質から生じる反応生成物によって、化学的に腐食されたり、分解されたりしない。特にコーティングによって、または保護装置によって、反応性の内容物質が当該側壁と接触することが防止される。特に側壁に対してプラスチックを好適に選択することによって、反応性の物質がバッテリーハウジングから漏出することが防止され、それによって安全性が高められる。
【0024】
バッテリーは特に、少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置とバッテリーハウジングとを有している。当該バッテリーハウジングは少なくとも一つの、好ましくは二つまたは複数の、特に弾性変形可能もしくは塑性変形可能な側壁を有している。少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置は好ましくは当該バッテリーハウジング内に収容されている。
【0025】
バッテリーハウジングを備えるバッテリーを動作させるための方法とは、特にバッテリーハウジングからの測定値を記録し、当該測定値を処理するとともに、好ましくは当該測定値に基づいてバッテリーの動作状態に影響を及ぼすか、または、当該動作状態を表示する方法のことである。測定値の記録とは、特に圧力、温度、または、好ましくは一つまたは複数の電気化学的エネルギー貯蔵装置の動作状態を判断するために好適である、他の物理的値を測定することである。測定値を処理するとは、目標値と実際値とを比較することである。当該処理を行う際に特に、当該目標値と実際値との比較の結果は制御指令に変換される。当該制御指令は特に、少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置の動作状態を変化させるか、または、少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置の動作状態に影響を及ぼすのに適している。バッテリーの動作状態に影響を及ぼすとは、好ましくは少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置の電気的接触が遮断または特に制限されることである。好ましくは、当該電気化学的エネルギー貯蔵装置から取り出される出力は限定される。
【0026】
このような方法によって、電気化学的エネルギー貯蔵装置は持続的に性能限界を上回るように動作されることはなく、それによって安全性が高められる。
【0027】
バッテリーを動作させるための方法において特に、少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置の温度が測定される。当該測定された温度は、好ましくは目標温度と比較される。測定された温度が設定可能な遮断値を上回るとき、特に当該一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置に対する接触が遮断されるか、または好ましくはバッテリー全体の電気的な接触が遮断される。特に好ましくは、当該一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置から、または、バッテリー全体から取り出される出力は低減される。例えば過熱された電気化学的エネルギー貯蔵装置またはバッテリーを遮断することによって、特にバッテリーの安全性が高められる。
【0028】
バッテリーを動作させるための方法において特に、バッテリーハウジング内部の圧力、または、好ましくは表面圧力は、例えば好ましくは電気化学的エネルギー貯蔵装置の少なくとも一つの電極の表面に対して垂直な力を測定することによって、測定される。好ましくは電気化学的エネルギー貯蔵装置内部の圧力または表面圧力も、検知され得る。当該表面圧力または当該圧力の測定値は、特に目標値と実際値との比較において、好ましくは設定可能な遮断値と比較される。測定値が当該遮断値を上回るとき、好ましくは少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置、しかしながら好適に全ての電気化学的エネルギー貯蔵装置の電気的な接触が遮断される。特に当該遮断値が達成されるとき、少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置、しかしながら好適に全ての電気化学的エネルギー貯蔵装置から取り出される出力は限定され得る。機械的な応力が大きすぎる場合、電気化学的エネルギー貯蔵装置をこのように遮断することによって、あるいは、当該電気化学的エネルギー貯蔵装置から取り出される出力を限定することによって、安全性が高められる。
【0029】
特に臨界的な動作状態が達成されると、バッテリー制御装置は信号を出力し得る。このとき臨界的な動作状態は特に、例えばバッテリーハウジング内部の圧力、電極スタックの表面に作用する表面圧力または電気化学的エネルギー貯蔵装置の温度など測定可能な物理的パラメータによって特徴づけられている。出力される信号は特に視覚的信号、例えばバッテリーハウジングの色または形の領域的な変化、例えばバッテリーハウジングから突出するピン、または電気的信号であってよい。特にこのような信号は制御ユニットによって、さらに処理され得る。特に当該信号は、バッテリーまたは当該バッテリーの少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置の動作状態を判断するのに適している。
【0030】
本発明のさらなる有利点、特徴および応用可能性は図面に関連する以下の詳細な説明に記載されている。図面に示すのは以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】二つの変形可能な側壁2を備える本発明に係るバッテリーハウジング1の断面を示している。バッテリーハウジング1は4個の電気化学的エネルギー貯蔵置3を有している。カバー要素5にバッテリー制御装置6が装入されている。これらの電気化学的エネルギー貯蔵装置3はセルフレーム4に包囲されている。当該バッテリーハウジング1は二つの電気的接続部7を有している。
【図2】カバー要素5を有さず、かつ、2個の電気化学的エネルギー貯蔵置3を有している本発明に係るバッテリーハウジング1の断面を示している。これらの電気化学的エネルギー貯蔵装置はセルフレーム4に包囲されている。当該セルフレーム4は、圧力調整空隙部9を有している。
【図3】本発明に係るバッテリーハウジング1の断面を示している。セルフレーム4は電気化学的エネルギー貯蔵置3を包囲しているとともに形状接続的に互いに接合されている。側壁2はいわゆるセルフレーム・スナップ式接合部8を介して同様にセルフレーム4と接合されている。
【図4】本発明に係るバッテリーハウジング1の断面を示している。セルフレーム4は電気化学的エネルギー貯蔵置3を包囲している。セルフレーム4は通しボルト10によって互いに連結されている。側壁2は、同様に通しボルト10によってセルフレーム4と連結されている。
【図5】本発明に係るバッテリーハウジング1の断面を示している。セルフレーム4は電気化学的エネルギー貯蔵置3を包囲している。セルフレーム4は通しボルト10によって互いに連結されている。側壁2は当該側壁の境界領域において補強フレーム12によって補強されるとともに、同様に通しボルト10によってセルフレーム4と連結されている。
【図6】本発明に係るバッテリーハウジング1の断面を示している。セルフレーム4は電気化学的エネルギー貯蔵置3を包囲している。セルフレーム4は互いに接着されている。側壁2はいわゆる側壁・スナップ式接合部13によってセルフレーム4と接合されている。
【図7】変形された側壁2bを備える本発明に係るバッテリーハウジング1の側面を示している。側壁2bは均一な応力/歪み挙動を有している。
【図8】変形された側壁2aを備える本発明に係るバッテリーハウジング1の側面を示している。側壁2aは不均一な応力/歪み挙動を有している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好適な実施の形態において本発明に係るバッテリーハウジング1は、二つの変形可能な側壁2を有している。電気化学的エネルギー貯蔵装置3はセルフレーム4によって包囲されている。セルフレーム4の一部は部分的にバッテリーハウジング1の外部面を形成している。当該バッテリーハウジング1のカバー要素5内にバッテリー制御装置6が収容されている。電気化学的エネルギー貯蔵装置3は、電気的接続部7を介して、かつ、バッテリー制御装置6を介して接触可能である。隣接する二つのセルフレーム4は材料接続的に、好ましくは接着または溶接によって互いに接合されている。側壁2も同様に材料接続的にセルフレーム4と接合されている。側壁2とセルフレーム4とを液密に接合するとともに、セルフレーム4同士を液密に接合することによって、物質が制御されずにバッテリーハウジング1内に入り込むこと、または当該バッテリーハウジングから漏出することはない。
【0033】
特に好適な実施の形態において、セルフレーム4は圧力調整空隙部9を有している。当該圧力調整空隙部9は電気化学的エネルギー貯蔵装置3同士の間の空洞を連結し、それによってバッテリーハウジングの共通の内部空間が成立する。当該共通の内部空間内では従って恒常的に圧力差が存在しない。これによりバッテリーハウジング内部の圧力上昇時に、圧力はバッテリーハウジング内部空間全体に均一に分配される。
【0034】
好適な実施の形態において本発明に係るバッテリーハウジング1のセルフレーム4はいわゆるセルフレーム・スナップ式接合部8によって互いに接合されている。当該実施の形態において側壁2は好ましくは同様に形状接続的にセルフレーム4と接合されている。当該形状接続的接合は好ましくはスナップ式接合として実施されている。側壁2はこれによってセルフレーム4と液密に接合されている。セルフレーム4同士も液密に接合されている。これによって、電気化学的エネルギー貯蔵装置3の内容物質が制御されずにバッテリーハウジング1から漏出することはできない。
【0035】
好適な実施の形態において、セルフレーム4は形状接続的に互いに接合されている。当該形状接続的接合のためには、取り分け接合要素が用いられる。このような接合要素は例えば通しボルト10とナット11である。通しボルト10は複数のセルフレーム4を貫通して延在している。通しボルト10とナット11を締めつけることによって、セルフレーム4は互いに押しつけられる。側壁2が同様に接合要素によって液密に固定されると有利である。セルフレーム4と側壁2はこのように、通しボルト10を締めつけることによって、相互の液密な接合を形成している。当該液密な接合により、電気化学的エネルギー貯蔵装置3の物質が制御されずにバッテリーハウジング1から漏出すること、または他の物質が当該バッテリーハウジング内に入り込むことは防止される。
【0036】
好適な実施の形態において、セルフレーム4と側壁2は通しボルト10とナット11を用いて接合されている。側壁2とセルフレーム4との接合の安全性を向上させるために、ネジ頭部もしくはナット11と側壁2との間に補強フレーム12が取り付けられる。当該補強フレーム12は側壁2と材料接続的に接合されていてよく、あるいは、側壁2を折り曲げることによって形成され得る。補強フレーム12によって、側壁2に対するボルトのプリストレスの圧力は均一に分配されることになる。当該補強フレーム12によって高度な不浸透性を有する特に安全な接合が実現される。これによって、電気化学的エネルギー貯蔵装置3の内容物質が制御されずにバッテリーハウジング1から漏出せず、または他の物質が当該バッテリーハウジングに入り込まないことは確実となる。
【0037】
好適な実施の形態において、セルフレーム4は互いに材料接続的に接合される。このような材料接続的接合は接着によって、または好ましくは溶接によって実現され得る。側壁2は形状接続的接合によって、外側のセルフレーム4と接合されている。このような形状接続的接合は好ましくはいわゆる側壁・スナップ式接合部13によって実施されている。当該側壁・スナップ式接合部13は側壁2を外側のセルフレーム4と液密に接合する。これにより、電気化学的エネルギー貯蔵装置3の内容物質が制御されずにバッテリーハウジング1から漏出することは防止される。
【0038】
バッテリーハウジング1内部で圧力上昇が生じた場合、変形可能な側壁2は外部に向かって湾曲する。側壁2bが外部に向かって湾曲すると、それによってバッテリーハウジング1の容積が増大する。当該容積の拡大によってバッテリーハウジング内部の圧力上昇は、バッテリーハウジングの容積が増大しない場合に比べて弱まる。圧力上昇がこのように小さくなることによって、バッテリーハウジング1に対する機械的応力が減少するとともに、安全性が向上する。
【0039】
好適な実施の形態において、側壁2aは不均一な応力/歪み挙動を有している。当該挙動は、繊維複合材料によって、あるいは、幾何学的特性、例えば側壁2aの厚みが可変であることによって意図的に実現され得る。当該応力/歪み挙動によって最終的に、側壁2aの変形挙動に影響が及ぼされる。当該変形挙動によって、側壁2aが変形した場合に、当該側壁は例えばフレーム部分14などの他の構成要素と衝突しなくなる。この場合、側壁2aは、他の構成要素、特に縁の鋭い構成要素と接触しないようにのみ膨張する。均一な応力/歪み挙動を有する側壁の場合、側壁は構成要素の剛性に達するまで概ね均一に膨張し、バッテリーハウジングの内部空間はそれによって最大の大きさを取る。
【符号の説明】
【0040】
1 バッテリーハウジング
2, 2a,2b 側壁
3 電気化学的エネルギー貯蔵装置
4 セルフレーム
5 カバー要素
6 バッテリー制御装置
7 電気的接続部
8 セルフレーム・スナップ式接合部
9 圧力調整空隙部
10 通しボルト
11 ナット
12 補強フレーム
13 側壁・スナップ式接合部
14 フレーム部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)を受容するためのバッテリーハウジング(1)であって、当該電気化学的エネルギー貯蔵装置はセルフレーム(4)を有しており、当該セルフレームは部分的に前記エネルギー貯蔵装置を包囲するとともに、領域的に前記バッテリーハウジング(1)の外壁を形成しており、
前記バッテリーハウジング(1)はさらにハウジングカバー(5)を有しており、
当該ハウジングカバーを介して少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)は電気的に接触可能となっており、
前記バッテリーハウジングはさらに、少なくとも一つの側壁(2)を有しており、当該側壁は領域的に前記バッテリーハウジング(1)の外壁を形成している、バッテリーハウジングにおいて、
前記側壁(2)の剛性は前記セルフレーム(4)の剛性よりも小さく、
前記側壁(2)は当該側壁の変形によって前記バッテリーハウジング(1)の容量を増大させるために設けられており、
前記側壁(2)は少なくとも領域的に気密に前記セルフレーム(4)と接合されていることを特徴とするバッテリーハウジング。
【請求項2】
隣接する二つの電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)のセルフレーム(4)は、形状接続的または材料接続的または摩擦接続的に互いに接合されており、
当該接合は気密であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリーハウジング。
【請求項3】
少なくとも二つのセルフレーム(4)は、形状接続的に互いに接合されており、好ましくは二つのセルフレーム(4)は接合装置(10)によって互いに接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載のバッテリーハウジング(1)。
【請求項4】
少なくとも二つのセルフレーム(4)は、接着または溶接によって材料接続的に互いに接合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリーハウジング(1)。
【請求項5】
前記側壁(2)は前記セルフレーム(4)と材料接続的に接合されており、当該側壁(2)は好ましくは接着または溶接によって前記セルフレーム(4)と接合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリーハウジング(1)。
【請求項6】
前記側壁(2)は前記セルフレーム(4)と摩擦接続的に、または、形状接続的に接合されており、当該側壁(2)は好ましくは補強フレーム(12)を用いて締結することによって、前記セルフレーム(4)と接合されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のバッテリーハウジング(1)。
【請求項7】
前記バッテリーハウジング(1)内部で大きな圧力差が持続的に生じず、好ましくは圧力調整空隙部(9)によってこれらのセルフレーム(4)内に、前記バッテリーハウジング(1)の共通する内部空間が成立することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のバッテリーハウジング(1)。
【請求項8】
前記バッテリーハウジング(1)は、少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)を制御するための電子的なバッテリー制御装置(6)を有していることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のバッテリーハウジング(1)。
【請求項9】
前記側壁(2)は複合材料から、特に繊維強化プラスチックから成ることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のバッテリーハウジング(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の、少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)とバッテリーハウジング(1)とを有しているバッテリー。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のバッテリーハウジング(1)を有するバッテリーを動作させるための方法であって、当該方法は反応性の物質が前記バッテリーハウジング(1)から漏出することを防止するためのものである方法において、
前記電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)の、選択され、かつ、物理的に測定可能なパラメータがバッテリー制御装置(6)によって検出され、
前記測定されたパラメータは、設定可能な目標値と比較され、
前記パラメータによって特徴づけられる臨界的な動作状態が達成されると、少なくとも前記エネルギー貯蔵装置(3)に対する前記電気的な接触が遮断されることを特徴とする方法。
【請求項12】
少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)の温度が検出されるとともに、目標温度と比較され、設定可能な遮断温度が達成されると、少なくとも前記電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)に対する前記電気的接触が遮断されることを特徴とする請求項11に記載のバッテリーを動作させるための方法。
【請求項13】
前記バッテリーハウジング(1)内部またはエネルギー貯蔵装置(3)内部の実際圧力が検出されるとともに、目標圧力と比較され、
設定可能な遮断圧力が達成されると、少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)に対する、しかしながら好適に全ての電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)に対する少なくとも前記電気的な接触(7)が遮断されることを特徴とする請求項11または12に記載のバッテリーを動作させるための方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つの電気化学的エネルギー貯蔵装置(3)の臨界的な動作状態であって、特に設定可能な圧力および/または温度によって特徴づけられている臨界的な動作状態が達成されると、バッテリー制御装置(6)は信号を出力し、当該信号によって、前記バッテリーの前記動作状態が判断可能であることを特徴とする請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−514610(P2013−514610A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543499(P2012−543499)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007064
【国際公開番号】WO2011/072793
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511173550)リ−テック・バッテリー・ゲーエムベーハー (85)
【Fターム(参考)】