説明

電気化学的セルおよび電気化学的電池における電解質溶液中の添加剤としてのチアゾール化合物

本発明は、成分Aとして少なくとも1種の溶媒、成分Bとして少なくとも1種の電解質、および成分Cとして、電解質溶液全体に対して0.1〜20質量%の一般式(I)の少なくとも1種の複素環式芳香族化合物を含む電解質溶液、電解質溶液中でのそのような化合物の使用法、電気化学的セルにおけるまたは金属メッキのためのそのような電解質溶液の使用法、ならびに、対応する電解質溶液を含む電気化学的セルに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分Aとして少なくとも1種の溶媒、成分Bとして少なくとも1種の電解質、および成分Cとして、電解質溶液全体に対して0.1〜20質量%の一般式(I)の少なくとも1種の複素環式芳香族化合物を含む電解質溶液、電解質溶液中でのそのような化合物の使用、電気化学的セルにおけるまたは金属メッキのためのそのような電解質溶液の使用、ならびにまた、対応する電解質溶液を含む電気化学的セルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的セルまたは金属メッキにおいて使用するための電解質溶液は、すでに従来技術より知られている。
【0003】
Jeong et al.,Electrochem.Comm.10(2008),635−638では、高濃度電解質溶液中で樹枝状のリチウム結晶が形成されるのを回避する方法が開示されている。この文献中で述べられている電解質溶液は、適切なリチウム塩を電解質として含む。さらに、対応する結晶の形成の、リチウム塩LiN(SO2252の濃度への依存が調べられている。
【0004】
Zhang et al.,J.によるPowersources 162(2006),1379−1394では、リチウムイオン電池において使用することができる電解質溶液用の様々な添加剤が開示されている。有機化合物、例えば、複素環式化合物、不飽和化合物を含むカーボネート、不飽和置換基を有する芳香族化合物、およびまた、リンまたはケイ素を含む分子が、添加剤として提案されている。ジカルボン酸のホウ素含有錯体が、さらに好適な化合物として述べられている。
【0005】
従来技術の電解質溶液は、例えば、充電放電サイクル中のリチウムデンドライトの形成の回避に関して改善することができる。それに加えて、広電位窓を有し、かつ高度に反応性のリチウムに対して安定である電解質溶液が、提供されるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、充電放電サイクル中のリチウムデンドライトの形成を回避することができる電解質溶液を提供することが、本発明の目的である。さらに、その電解質溶液は、蓄電池または金属メッキにおいて使用するのに有益な特性を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的は、成分Aとして少なくとも1種の溶媒、成分Bとして少なくとも1種の電解質、および成分Cとして、電解質溶液全体に対して0.1〜20質量%の一般式(I)の少なくとも1種の化合物を含む電解質溶液によって達成され、
【0008】
【化1】

式中、X1、X2、X3、R2およびmは、以下の意味を有し:
1、X2は各々、互いに独立して、NまたはCHであり、
3は、NR1、OまたはSであり、
mは、0〜4の整数であり、
ここで、X1、X2およびX3のうちの少なくとも2つは、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子であり、
1は、水素、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C12アルキル、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい置換または非置換のC3−C12シクロアルキル、置換または非置換のC5−C20アリール、置換または非置換のC5−C20ヘテロアリールからなる群から選択され、
ラジカルR2は、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C12アルキル、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい置換または非置換のC3−C12シクロアルキル、置換または非置換のC5−C20アリール、置換または非置換のC5−C20ヘテロアリール、ハロゲン化物、および電子求引特性を有する官能基からなる群からそれぞれ独立に選択される。
【0009】
さらに、上記目的は、電解質溶液中で一般式(I)の化合物を使用することによって、述べられた電子溶液を電気化学的セルにおいてまたは金属メッキのために使用することによって、および本発明の電解質溶液を含む電気化学的セルによって、達成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】EC/DEC電解質において3質量%のベンゾチアゾールを用いたときのサイクリックボルタモグラムを示している(実施例1)。単位がmAの電流がy軸上にプロットされ、単位がmVの電位がx軸上にプロットされている。
【図2】Li/NCAセルのサイクル性を示している(実施例3)。単位がmAh/gの容量がy軸上にプロットされ、サイクル数がx軸上にプロットされている。この図において:実線:ベンゾチアゾールを含まない電解質に対するCC破線:ベンゾチアゾールを含む電解質に対するCC三角形を有する実線:ベンゾチアゾールを含まない電解質に対するDC三角形を有する破線:ベンゾチアゾールを含む電解質に対するDCここで、CCは、「充電電流」、すなわち、電池を充電するために印加される電流である。DCは、「放電電流」、すなわち、放電によって印加される電流である。
【図3】C/NMCセルのサイクル性を示している(実施例4)。単位がmAh/gの容量がy軸上にプロットされ、サイクル数がx軸上にプロットされている。この図において:実線:電解質に対するCC三角形を有する実線:電解質に対するDCCCおよびDCの定義については、上記を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の電解質溶液は、成分Aとして少なくとも1種の溶媒を含む。本発明の電解質溶液中に存在する少なくとも1種の溶媒は、本質的に当業者に公知であり、好ましくは、非水溶媒である。特に好ましい実施形態において、成分Aは、有機溶媒である。
【0012】
特に好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の溶媒は、カーボネート、ラクトン、複素環式化合物、エステル、エーテル、芳香族化合物およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0013】
本発明において特に好ましいカーボネートは、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0014】
さらに好適な溶媒は、ラクトン、例えば、ガンマ−ブチロラクトン、ガンマ−バレロラクトンおよびそれらの混合物である。
【0015】
本発明に従って好ましく使用することができるエステルは、例えば、モノカルボン酸(例えば、1〜12個の炭素原子を有する)の脂肪族エステル、特に、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、ギ酸メチルおよびそれらの混合物から選択される。
【0016】
本発明の目的に好適なエーテルは、直鎖状または環状であり得る。直鎖状エーテルは、例えば、メチレンジメチルエーテル(DMM)、エチレンジメチルエーテル(DME)、エチレンジエチルエーテル(DEE)およびそれらの混合物からなる群から選択される。本発明において特に好適な環状エーテルは、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソランおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
本発明において好ましい芳香族化合物は、例えば、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
特に好ましい実施形態において、述べられた化合物のうちの少なくとも2つの混合物が、本発明の電解質溶液において溶媒として使用される。
【0019】
少なくとも1種の環状カーボネート(例えば、炭酸エチレン)と、少なくとも1種の直鎖状カーボネート(例えば、炭酸ジエチル)との混合物を成分Aとして使用することが、特に非常に好ましい。本発明に従って好ましく使用することができる、述べられた溶媒のうちの少なくとも2つの混合物における混合比は、広範囲内で変動し得る。その混合比は、例えば、1:100〜100:1、好ましくは、1:20〜20:1、特に好ましくは、1:5〜5:1であり得る。
【0020】
少なくとも1種の電解質が、本発明の電解質溶液中に成分Bとして存在する。
【0021】
本発明によれば、当業者に公知のすべての電解質が、本発明の電解質溶液中の成分Bとして好適である。
【0022】
述べられた溶媒において十分高い溶解性を有することにより好適な電解質溶液をもたらす電解質が、特に好ましい。本発明の電解質溶液の非水溶媒に完全に溶解して完全に解離する電解質が、特に好適である。さらに、溶媒和イオンが、その電解質溶液において高移動度を有するべきである。特に電気化学的セルにおいて本発明の電解質溶液を使用する場合、使用される電解質の対応する陰イオンは、カソードにおける酸化分解に対して安定であるべきである。さらに、その陰イオンは、使用される溶媒に対して不活性であるべきである。さらに、使用される電解質の両方の部分、すなわち、陽イオンの部分と陰イオンの部分の両方が、さらなる成分に対して不活性であるべきである。
【0023】
本発明の電解質溶液において、成分Bとして、陽イオンがリチウムである電解質を使用することが好ましい。好ましくは、リチウムが、酸化状態+Iの陽イオンとして存在する。
【0024】
成分Bとして本発明に従って使用される電解質の陰イオンは、上述の要件、特に、解離性、不活性性および安定性を満たすように選択される。電解質の特に好ましい陰イオンは、例えば、ハロゲン化物、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酸化物、水酸化物、アニオン性のホウ素錯体、リン錯体および/またはヒ素錯体、トリフレート、イミド、ペルクロラート、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
本発明の電解質溶液において、ハロゲン化リチウム、特に、塩化リチウムLiClまたはフッ化リチウムLiF、酸化リチウムLi2O、ホウ素錯体、リン錯体、ヒ素錯体のリチウム塩、特に、テトラフルオロホウ酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF6、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、過塩素酸リチウム、リチウムトリフレート、リチウムイミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ならびにそれらの誘導体および混合物からなる群から選択される少なくとも1種の電解質を成分Bとして使用することが特に好ましい。
【0026】
本発明の電解質溶液において電解質(成分B)としてヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF6を使用することが、特に非常に好ましい。
【0027】
上記少なくとも1種の電解質は、通常、本発明の電解質溶液の十分高い伝導率を保証する量でその電解質溶液中に存在する。例えば、その少なくとも1種の電解質は、0.1〜10mol/l、好ましくは、0.2〜2mol/l、特に非常に好ましくは、0.5〜1.5mol/lの濃度で本発明の電解質溶液中に存在する。
【0028】
述べられた他の電解質については、対応する質量パーセントは、当業者が算出することができる。
【0029】
本発明の電解質溶液は、各々の場合において、電解質溶液全体に対して0.1〜20質量%、好ましくは、0.1〜5.0質量%、特に好ましくは、1.0〜3.0質量%の一般式(I)の少なくとも1種の化合物を成分Cとして含み、
【0030】
【化2】

式中、X1、X2、X3、R2およびmは、以下の意味を有し:
1、X2は各々、互いに独立して、NまたはCHであり、
3は、NR1、OまたはSであり、
mは、0〜4の整数であり、
ここで、X1、X2およびX3のうちの少なくとも2つは、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子であり、
1は、水素、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C12アルキル、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい置換または非置換のC3−C12シクロアルキル、置換または非置換のC5−C20アリール、置換または非置換のC5−C20ヘテロアリールからなる群から選択され、
ラジカルR2は、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C12アルキル、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい置換または非置換のC3−C12シクロアルキル、置換または非置換のC5−C20アリール、置換または非置換のC5−C20ヘテロアリール、ハロゲン化物、および電子求引特性を有する官能基からなる群からそれぞれ独立に選択される。
【0031】
好ましい実施形態において、X1は、Nである。
【0032】
さらに好ましい実施形態において、X2は、CHである。
【0033】
さらに好ましい実施形態において、X3は、SまたはOであり、特に好ましくは、Sである。
【0034】
特に好ましい実施形態において、一般式(I)の化合物において、X1は、Nであり、X2は、CHであり、X3は、Sである。
【0035】
一般式(I)において、mは、芳香族環上に位置する置換基R2の数を示す。mは、好ましくは、0、1、2、3または4であり、特に非常に好ましくは、0、1または2、特に、0である。
【0036】
好ましい実施形態において、ラジカルR2は、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい、直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C12アルキル、好ましくは、C1−C6アルキル、特に好ましくは、C1−C3アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、置換または非置換のC5−C20アリール、例えば、フェニルまたはナフチル、および電子求引特性を有する官能基、例えば、ハロゲン化物、例えば、フッ化物からなる群から選択される基からなる群からそれぞれ独立に選択される。
【0037】
1は、存在する場合、好ましくは、C1−C6アルキル、特に好ましくは、C1−C3アルキルからなる群から選択される。
【0038】
1および/またはR2上に存在してもよい置換基は、本発明によれば、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C12アルキル、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい置換または非置換のC3−C12シクロアルキル、置換または非置換のC5−C20アリール、置換または非置換のC5−C20ヘテロアリール、ハロゲン化物および官能基、例えば、CN、ならびにそれらの混合物からなる群からそれぞれ独立に選択される。
【0039】
特に非常に好ましい実施形態において、X1、X2、X3およびmは、以下の意味を有し:
1は、Nであり、
2は、CHであり、
3は、Sであり、
mは、0であり、
すなわち、一般式(I)の化合物として式(Ia)のベンゾチアゾールを成分Cとして使用することが特に好ましい。
【0040】
【化3】

【0041】
ゆえに、本発明の特に非常に好ましい実施形態は、一般式(I)の化合物としてベンゾチアゾールが存在する本発明に係る電解質溶液を提供する。
【0042】
本発明の電解質溶液がもっぱら成分A、BおよびCからなる特に好ましい実施形態では、成分A、BおよびCの量は、合計して100質量%になる。
【0043】
特に非常に好ましい実施形態において、本発明は、成分Aとして、少なくとも1種の環状カーボネート(例えば、炭酸エチレン)と少なくとも1種の直鎖状カーボネート(例えば、炭酸ジエチル)との混合物、成分Bとしてヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF6、および成分Cとしてベンゾチアゾールを各々の場合において上に示される量で含む電解質溶液を提供する。
【0044】
本発明はまた、電解質溶液中での一般式(I)の化合物の使用も提供する。特に、本発明は、一般式(I)の化合物が電気化学的セルにおいて使用される、言及された使用を提供する。
【0045】
一般式(I)の化合物の好ましい実施形態に関しては、上で言及したものが適用される。一般式(I)の化合物としてベンゾチアゾールを使用することが特に好ましい。
【0046】
電気化学的セル、特に、それらの構造および含められる成分は、本質的に当業者に公知である。一般式(I)の化合物は、特に好ましくは、電池、特に蓄電池において使用される。これらの一般構造は、例えば、「Lithium ion batteries:Science and Technologies,Gholam−Abbas Nazri,Gianfranco Pistoia,2009」に記載されている。これらの電気化学的セルは、一般に、電解質の他に、少なくとも1つのアノード(例えば、リチウムアノード)、カソード(例えば、銅カソード)、リチウムおよびまた適切な絶縁体、ならびに接続部を備える。
【0047】
さらに、本発明は、一般式(I)の化合物が金属メッキのために使用される本発明に係る使用を提供する。
【0048】
金属メッキについてのプロセスは、本質的に当業者に公知であり、例えば、「Praktische Galvanotechnik」P.W.Jelinek,Eugen G.Lenze Verlag,2005に記載されている。一般式(I)の化合物を使用することによって、例えば、リチウムを適切な基材、例えば、銅基材に塗布することができる。
【0049】
さらに、本発明は、電気化学的セルにおいてまたは金属メッキのために本発明の電解質溶液を使用することを提供する。本発明の電解質溶液の好ましい実施形態および電気化学的セルまたは金属メッキの詳細は、上で述べた。
【実施例】
【0050】
実施例1
サイクリックボルタンメトリー(CV)による電位窓の測定
プラスチックでコーティングされたガラス容器において、実験を行う。作用電極(WE)は、0.04cm2の面積を有する白金リング電極であり、参照電極(RE)は、リチウム金属であり、作用電極の近くに位置する。対電極(CE)は、リチウムプレートである。使用される電解質溶液は、1:3(体積)の比の炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)との混合物である。5質量%のベンゾチアゾールが、この電解質溶液に加えられる。電解質は、述べられている溶液において1モル濃度のLiPF6である。用いられるスキャン速度は、Li/Li+に対して−0.5V〜5Vの範囲における20mV/sである。4.8Vにおける電位窓が、図1に示されている。
【0051】
実施例2
リチウムメッキおよび形態
プラスチックでコーティングされたガラス容器において、電気化学的リチウムメッキ実験を行う。対電極および作用電極は、3.0cm2の面積を有するリチウムプレートである。リチウム金属を参照電極として使用する。作用電極には、1mA/cm2のカソード定電流が供給される。電解質は、5質量%のベンゾチアゾールとともに炭酸エチレンおよび炭酸ジエチル(1:3v/v)を含み、コントロール電解質を、同一条件下で試験する。
【0052】
コントロール実験では、プレートに対する付着が非常に不良で非常に緩いリチウム堆積物がもたらされる。添加剤としてベンゾチアゾールを使用する実験では、良好な付着性の非常に密で細かい堆積物がもたらされる。電流効率は、98%と算出される。
【0053】
実施例3
セルサイクル
Swagelokの3電極セルにおいて、集電体としての銅箔上のアノードとして、リチウム箔を使用する。アルミニウム集電体でコーティングされたNCA(Li−Ni−Co酸化物)が、カソード材料として使用され;再度リチウムが参照電極として使用される。そのセルは、グローブボックス内のアルゴン雰囲気下で組み立てられ、ここで、すべての成分が、真空オーブンにおいて120℃で一晩乾燥される。このセルは、1C未満の3V〜4.2Vでサイクルされる。ベンゾチアゾールを含む電解質および含まない電解質を試験する。図2は、ベンゾチアゾールによってこのセルのサイクル性が改善されることを示している。
【0054】
さらなる試験では、NMC(Li−Ni−Mn−Co酸化物)をカソード材料として使用し、グラファイトをアノード材料として使用する。Swagelokの構成および試験条件が保持される。図3は、ベンゾチアゾールの存在下での安定した性能を示しており、これは、ベンゾチアゾールがグラファイトアノードに対して何らの悪影響も有しないことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分Aとして少なくとも1種の溶媒、成分Bとして少なくとも1種の電解質、および成分Cとして、電解質溶液全体に対して0.1〜20質量%の一般式(I)の少なくとも1種の化合物を含む電解質溶液であって、
【化1】

式中、X1、X2、X3、R2およびmは、以下の意味を有し:
1、X2は各々、互いに独立して、NまたはCHであり、
3は、NR1、OまたはSであり、
mは、0〜4の整数であり、
ここで、X1、X2およびX3のうちの少なくとも2つは、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子であり、
1は、水素、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C12アルキル、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい置換または非置換のC3−C12シクロアルキル、置換または非置換のC5−C20アリール、置換または非置換のC5−C20ヘテロアリールからなる群から選択され、
ラジカルR2は、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C12アルキル、少なくとも1個のヘテロ原子によって中断されていてもよい置換または非置換のC3−C12シクロアルキル、置換または非置換のC5−C20アリール、置換または非置換のC5−C20ヘテロアリール、ハロゲン化物、および電子求引特性を有する官能基からなる群からそれぞれ独立に選択される、
電解質溶液。
【請求項2】
前記溶媒(成分A)が、カーボネート、複素環式化合物、エステル、エーテル、芳香族化合物およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の電解質溶液。
【請求項3】
前記少なくとも1種の電解質(成分B)が、ハロゲン化リチウム、酸化リチウム、ホウ素錯体、リン錯体、ヒ素錯体のリチウム塩、過塩素酸リチウム、リチウムトリフレート、リチウムイミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、それらの誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の電解質溶液。
【請求項4】
ベンゾチアゾールが、一般式(I)の化合物として存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質溶液。
【請求項5】
電解質溶液中での、請求項1に記載の一般式(I)の化合物の使用法。
【請求項6】
前記電解質溶液が、電気化学的セルにおいて使用される、請求項5に記載の使用法。
【請求項7】
前記電解質溶液が、金属メッキのために使用される、請求項5に記載の使用法。
【請求項8】
電気化学的セルにおけるまたは金属メッキのための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解質溶液の使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−513923(P2013−513923A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543638(P2012−543638)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069439
【国際公開番号】WO2011/073113
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】