電気化学的分析における静電容量の検出
バイオセンサの試験チャンバの充填十分性を、試験チャンバの静電容量を測定することによって決定するための方法及びシステムが提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は米国特許法119条及び/又は120条に基づき2010年2月25日に出願された先出願の米国仮特許出願第61/308,167号の利益を主張するものであり、当該出願はその全体が参照により本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生理液、例えば血液又は血液由来の製品中の分析物を検出することが、今日の社会で今まで以上に重要性を増している。分析物検出の定量法は、臨床検査、家庭検査などを含めて、多様な用途に利用法が見出されるものであり、そのような検査の結果は、多様な病状の診断及び処置において主要な役割を果たしている。目的の分析物には、糖尿病の処置のためのグルコース、コレステロールなどが挙げられる。こうした分析物検出の重要性の高まりに応じて、臨床での使用と家庭での使用の両方に対応する多様な分析物検出の手順及びデバイスが開発されてきた。
【0003】
分析物検出に用いられる方法の1つの種類は電気化学的方法である。かかる方法では、水性液体試料が、2つの電極、例えば対極及び作用電極を含む電気化学セルの中の試料受容チャンバに入れられる。分析物をレドックス剤と反応させて、分析物濃度に対応する量の酸化可能(又は還元可能)物質を形成する。次いで、存在する酸化可能(又は還元可能)物質の量を電気化学的に推定して、初期試料中に存在する分析物の量と関連付ける。
【0004】
こうしたシステムは、様々なモードの無効化及び/又は誤差を受けやすい。例えば、温度の変動は、その方法の結果に影響を与え得る。このことは、家庭用途又は第三世界各国における場合によくあるように、特にその方法が制御されていない環境で行われる場合に関係がある。誤差は、試料サイズが正確な結果を得るのに十分でない場合にも生じ得る。測定試験電流は、試料で湿潤された作用電極の面積に比例するので、部分的に充填された試験ストリップは不正確な結果をもたらす可能性があり得る。したがって、部分的に充填された試験ストリップは、一定の状況下で、負にバイアスされたグルコース濃度をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願人らは、充填されたバイオセンサ試験ストリップを判定する際の平行ストリップの抵抗の効果が無視されて、特により低い並列抵抗に遭遇したときに、試験ストリップの静電容量の測定値が不正確に高くなると考える。本出願人らの発明の例示的な実施形態は、この効果を考慮に入れると同時に、バイオセンサの試験チャンバ内の抵抗を測定する必要性を除去する。
【0006】
一態様において、バイオセンサの静電容量を測定する方法が提供される。バイオセンサは、チャンバの中に配置された2つの電極を有し、かつマイクロコントローラに接続されたチャンバを含む。本方法は、バイオセンサチャンバの中で電気化学反応を開始すること、所定周波数の発振電圧をチャンバに印加すること、電流出力とチャンバからの発振電圧との間の位相角を決定することと、チャンバの静電容量を、電流出力と位相角の正弦との積を、2πかける周波数及び電圧の積で割ったものに基づいて計算することと、によって達成され得る。
【0007】
更なる態様において、分析物試験ストリップと分析物検査計(analyte test meter)とを含む分析物測定システムが提供される。分析物試験ストリップは、上部に試薬が配置された基材と、試験チャンバ内の試薬に近接する少なくとも2つの電極と、を含む。分析物測定器は、2つの電極に接続するように配置されたストリップポートコネクタと、電源と、ストリップポートコネクタ及び電源に電気的に結合されたマイクロコントローラと、を含む。マイクロコントローラは、バイオセンサチャンバ内で電気化学反応を開始し、所定周波数の発振電圧をチャンバに印加し、電流出力とチャンバからの発振電圧との間の位相角を決定し、かつチャンバの静電容量を、電流出力と位相角の正弦との積を、2πかける周波数及び電圧の積で割ったものに基づいて計算するようにプログラムされる。
【0008】
更に別の態様において、分析物試験ストリップと分析物検査計とを含む分析物測定システムが提供される。試験ストリップは、上部に試薬が配置された基材と、試験チャンバ内の試薬に近接する少なくとも2つの電極と、を含む。分析物測定器は、2つの電極に接続するように配置されたストリップポートコネクタと、電源と、参照並列R−C回路と比較した場合の静電容量の範囲にわたる試験ストリップの静電容量測定の誤差百分率が約3%未満であるように、ストリップポートコネクタ及び電源に電気的に結合されたマイクロコントローラと、を含む。
【0009】
これら及び他の実施形態、特徴並びに利点は、以下に述べる本発明の異なる例示的な実施形態のより詳細な説明を、はじめに下記に簡単に述べる付属の図面とあわせて参照することによって当業者にとって明らかになるであろう。
【0010】
本明細書に援用し明細書の一部をなす添付図面は、現時点における本発明の好適な実施形態を示したものであって、上記に述べた一般的説明並びに下記に述べる詳細な説明とともに、本発明の特徴を説明する役割を果たすものである(同様の数字は同様の要素を表す)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】分析物検査計と試験ストリップとを含む例示的な分析物測定システム。
【図2】図1の測定器の例示的な回路基板の簡略化された概略図。
【図3】図1の試験ストリップの分解斜視図。
【図4】充填された試験ストリップの静電容量を測定するための構成要素の簡略図。
【図5A】試験ストリップに印加される、時間経過に伴う電圧の印加を示す。
【図5B】時間経過に伴う試験ストリップからの測定電流感度を示す。
【図6A】領域602で示される電流出力のサンプリングを示す。
【図6B】図6Aのサンプリングされたデータから直流成分が除去された時点の交流出力を示す。
【図6C】試験ストリップに印加される交流電圧と、試験ストリップからの交流出力との間の位相角を示す。
【図6D】試験ストリップに印加される交流電圧と、試験ストリップからの交流出力との間の位相角を示す。
【図6E】図6Cの印加電流の交点との比較を目的として図6Dの交点を決定するための、サンプリングされたデータの補間を示す。
【図7】例示的な試験ストリップの静電容量を測定する方法の例示的フローチャート。
【図8A】既知のシステム及び本出願人らの他の関連技術と対比した例示的な実施形態の誤差百分率を示す。
【図8B】例示的な試験ストリップの抵抗の範囲にわたる、それぞれの静電容量測定技術の静電容量の分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は、図面を参照しつつ読まれるべきもので、異なる図面中、同様の要素は同様の参照符号にて示してある。図面は必ずしも一定の縮尺を有さず、選択した実施形態を示したものであって、本発明の範囲を限定するものではない。詳細な説明は本発明の原理を限定するものではなく、あくまでも例として説明するものである。この説明文は、当業者による発明の製造及び使用を明確に可能ならしめるものであり、出願時における発明を実施するための最良の形態と考えられるものを含む、発明の複数の実施形態、適応例、変形例、代替例、並びに使用例を述べるものである。
【0013】
本明細書で任意の数値や数値の範囲について用いる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその所望の目的に従って機能することを可能とするような適当な寸法の許容誤差を示すものである。更に、本明細書で用いる「患者」、「ホスト」、「ユーザー」、及び「被験者」という用語は任意のヒト又は動物患者を指し、システム又は方法をヒトにおける使用に限定することを目的としたものではないが、ヒト患者における本発明の使用は好ましい実施形態を代表するものである。
【0014】
本発明のシステム及び方法は、多種多様な試料中の多種多様な分析物の測定で使用するのに好適であり、全血、血漿、血清、間質液、又はそれらの類縁体中の分析物の測定で使用するのに特に好適である。例示的な実施形態において、対向する電極を有する薄層セル設計及び速い(例えば、約5秒の分析時間)3つのパルス電気化学設計に基づくグルコース試験システムが必要とするのは、少量の試料(例えば、約0.4μL(マイクロリットル))であり、血液グルコース測定の改善された信頼性及び精度を提供することができる。反応セルでは、試料中のグルコースは、グルコースデヒドロゲナーゼを使用してグルコノラクトンに酸化することができ、電気化学的に活性である媒介物質は、酵素から作用電極に電子をシャトル輸送するために使用することができる。3つのパルスの電位波形を作用電極及び対電極に印加するために定電位を利用することができ、結果として、グルコース濃度を計算するために使用される試験電流遷移を生じる。更に、試験電流遷移から得られる追加的な情報は、試料マトリックス間の区別、及びヘマトクリット値、温度変化、電気化学的活性成分による血液試料の変動性の補正、並びに起こり得るシステムエラーの同定のために使用され得る。
【0015】
標記方法は、原理的には、離間された第1及び第2の電極と試薬層とを有する任意のタイプの電気化学セルと共に使用することができる。例えば、電気化学セルは、試験ストリップの形状であることができる。一態様では、試験ストリップは、試料受容チャンバ又は試薬層が配置される領域を画定するために、薄いスペーサにより分離された2つの対向する電極を含んでもよい。例えば、同一平面上の電極を有する試験ストリップなどの他の種類の試験ストリップを、本明細書に記載される方法と共に使用してもよいことを、当業者なら理解するであろう。
【0016】
図1は、糖尿病データ管理ユニット10と、グルコース試験ストリップ80の形態のバイオセンサとを含む糖尿病管理システムを示す。糖尿病データ管理ユニット(DMU)は、分析物測定及び管理ユニット、グルコース測定器、測定器、及び分析物測定デバイスと呼ばれる場合もあることに留意されたい。一実施形態において、DMUは、インスリン送達デバイス、追加の分析物試験デバイス、及び薬物送達デバイスと組み合わされてもよい。DMUは、ケーブル又は好適な無線技術、例えば、GSM(登録商標)、CDMA、BlueTooth(登録商標)、WiFi等を介して、コンピュータ26又はサーバ70に接続されてもよい。
【0017】
図1に戻って参照すると、グルコース測定器10は、ハウジング11、ユーザーインターフェースボタン(16、18、及び20)、ディスプレイ14、及びストリップポート開口22を含むことができる。ユーザーインターフェースボタン(16、18、及び20)は、データの入力、メニューのナビゲーション、及びコマンドの実行を可能とするように構成することができる。ユーザーインターフェースボタン18は、2方向トグルスイッチの形態であることができる。データには、分析物濃度及び/又は個々の日常の生活習慣に関連した情報を表す値を挙げることができる。日常の生活習慣に関連した情報には、食物の摂取、薬の使用、健康診断の実施、並びに個々の一般的な健康状態及び運動レベルを挙げることができる。
【0018】
測定器10の電子構成要素は、ハウジング11内部の回路基板34上に配置することができる。図2は、回路基板34の上面上に配置された電子構成要素を(概略的な形で)示す。上面上の電子構成要素としては、ストリップポート開口308、マイクロコントローラ38、不揮発性フラッシュメモリ306、データポート13、リアルタイムクロック42、及び複数のオペアンプ(46〜49)が挙げられる。底面上の電子構成要素としては、複数のアナログスイッチ、バックライトドライバ、及び電気的消却・プログラム可能型読取専用メモリ(EEPROM、図示せず)が挙げられる。マイクロコントローラ38は、ストリップポート開口308、不揮発性フラッシュメモリ306、データポート13、リアルタイムクロック42、複数のオペアンプ(46〜49)、複数のアナログスイッチ、バックライトドライバ、及びEEPROMに電気的に接続され得る。
【0019】
図2に戻って参照すると、複数のオペアンプは、利得段オペアンプ(46及び47)、トランスインピーダンスオペアンプ48、及びバイアスドライバオペアンプ49を含み得る。複数のオペアンプは、ポテンシオスタット機能及び電流測定機能の一部を提供するように構成され得る。ポテンシオスタット機能とは、試験ストリップの少なくとも2つの電極間に試験電圧を印加することを指し得る。電流機能とは、印加された試験電圧によって生じる試験電流を測定することを指し得る。電流測定は、電流電圧変換器によって行うことができる。マイクロコントローラ38は、例えばTexas Instrument MSP 430などの混合シグナルマイクロプロセッサ(MSP)の形態であってよい。MSP 430は、ポテンシオスタット機能及び電流測定機能の一部を行うように構成することもできる。更に、MSP 430は、揮発性及び不揮発性メモリも含むことができる。別の実施形態において、電子構成要素の多くを特定用途向け集積回路(ASIC)の形態でマイクロコントローラに組み込むことができる。
【0020】
ストリップポートコネクタ308は、ストリップポート開口22に近接して位置決めされ、かつ試験ストリップと電気的接続を形成するように構成されることができる。ディスプレイ14は、測定された血糖値を報告し、生活習慣に関連した情報の入力を容易にするための、液晶ディスプレイの形態であってよい。ディスプレイ14は、任意にバックライトを有してよい。データポート13は、接続リード線に取り付けられた適当なコネクタを受容することにより、グルコース測定器10をパーソナルコンピュータなどの外部デバイスに接続することができるようになっている。データポート13は、例えば、シリアル、USB、又はパラレルポートなど、データ送信が可能な任意のポートであってもよい。
【0021】
リアルタイムクロック42は、ユーザーが位置する地理的領域に関連する現在時刻を維持し、また時間を計測するように構成され得る。リアルタイムクロック42は、クロック回路45、クリスタル44、及び超コンデンサ43を含んでもよい。DMUは、例えば、電池などの電源に電気的に接続されるように構成され得る。超コンデンサ43は、電力供給障害があった場合にリアルタイムクロック42に電力供給するために、長時間電力供給するように構成され得る。したがって、電池が放電する又は交換されるときに、ユーザーがリアルタイムクロックを固有時間に再設定する必要がない。リアルタイムクロック42を超コンデンサ43と一緒に使用することによって、ユーザーがリアルタイムクロック42を誤って再設定するかもしれないリスクを軽減することができる。
【0022】
図3は例示的な試験ストリップ80を示しており、そのストリップ80は、遠位端80から近位端82まで延びかつ側縁部を有する細長い本体を含む。ここで示されるように、試験ストリップ80はまた、第1の電極層66aと、絶縁層66bと、第2の電極層64aと、絶縁層64bと、2つの電極層64a及び66aの間に挟まれたスペーサ60とを含む。第1の電極層66aは、第1の電極67aと、第1の接続トラック76と、第1の接触パッド47とを含むことができ、図3及び図4に示されるように、第1の接続トラック76は、第1の電極層66aを第1の接触パッド67に電気的に接続する。第1の電極67aは、試薬層72の直下にある第1の電極層66aの一部であることに留意されたい。同様に、第2の電極層64aは、第2の電極67bと、第2の接続トラック78と、第2の接触パッド78とを含むことができ、図3及び図4に示されるように、第2の接続トラック78は、第2の電極67bを第2の接触パッド78に電気的に接続する。第2の電極は、試薬層72の上方にある第2の電極層64aの一部を含むことに留意されたい。
【0023】
図3に示されるように、試料受容チャンバ61は、第1の電極、第2の電極、及び試験ストリップ80の遠位端80近傍のスペーサ60によって画定される。第1の電極67a及び第2の電極67bは、それぞれ、試料受容チャンバ61の底部及び上部を画定することができる。スペーサ60の切欠き領域68は、試料受容チャンバ61の側壁を画定することができる。一態様において、試料受容チャンバ61は、試料入口及び/又は通気口を提供するポート70を含むことができる。例えば、ポートの1つは流体試料が入るのを可能にし、他のポートは空気が出るのを可能にし得る。1つの例示的な実施形態において、第1の電極層66a及び第2の電極層64aは、それぞれ、スパッタされたパラジウム及びスパッタされた金から作製することができる。スペーサ60として使用することができる好適な材料としては、例えば、プラスチック(例えば、PET、PETG、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン)、シリコン、セラミック、ガラス、接着剤、及びこれらの組み合わせなどの様々な絶縁材料が挙げられる。一実施形態において、スペーサ60は、ポリエステルのシートの両面にコーティングされた両面接着剤の形態であってもよく、その場合、接着剤は、感圧性接着剤又は加熱活性化接着剤であってもよい。
【0024】
図3に戻って参照すると、第1の電極及び第2の電極の面積は、2つの側縁部及び切欠き領域68によって画定され得る。この面積は、液体試料によって湿潤される電極層の表面として定義され得ることに留意されたい。一実施形態において、スペーサ60の接着剤部分は、接着剤が第1の電極層66Aと結合を形成するように、試薬層に混ざる及び/又は部分的に溶解することができる。このような接着結合は、液体試料によって湿潤され得る電極層の一部分を画定するのを助け、更には媒介物質を電解酸化又は電解還元するのを助ける。
【0025】
第1の電極又は第2の電極のいずれかは、印加された試験電圧の大きさ及び/又は極性に応じて、作用電極の機能を実行することができる。作用電極は、還元された媒介物質の濃度に比例する限界試験電流を測定することができる。例えば、電流制限種が還元された媒介物質(例えば、ヘキサシアノ鉄酸塩)の場合、第2の電極に関して試験電圧が酸化還元媒介物質の電位よりも十分に低い限り、その媒介物質は第1の電極で酸化されることができる。このような状況では、第1の電極は作用電極の機能を果たし、第2の電極は対電極/参照電極の機能を果たす。当業者は、対電極/参照電極を単に参照電極又は対電極として参照してもよいことに留意すべきである。制限酸化は、測定された酸化電流が、バルク溶液から作用電極表面へ拡散する還元された媒介物質の流量に比例するように、全ての還元された媒介物質が作用電極面で枯渇したときに生じる。バルク溶液という用語は、枯渇領域内に還元された媒介物質が存在しない、作用電極から十分に離れた溶液の一部を指す。試験ストリップ80に関して特に明記しない限り、以下、検査計10により印加された電位は全て、第2の電極に関して記述されるものであることに留意するべきである。同様に、試験電圧が酸化還元媒介物質の電位より十分に高い場合、その還元された媒介物質は、制限電流として第2の電極で酸化され得る。このような状況では、第2の電極は作用電極の機能を実行し、第1の電極は対電極/参照電極としての機能を実行する。例示的な試験ストリップ、ストリップの操作、及び検査計に関する詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、写しが付属書類に添付される、米国特許出願公開第20090301899号に見出される。
【0026】
図3を参照すると、試験ストリップ80は、1つ以上の作用電極と対電極とを含むことができる。試験ストリップ80は、更に複数の電気的接触パッドを有することができ、その場合、各電極は少なくとも1つの電気的接触パッドと電気的に導通することができる。ストリップポートコネクタ308は、電気的接触パッドと電気的にインターフェースして、電極と電気的導通を形成するように構成され得る。試験ストリップ80は、少なくとも1つの電極上に配置されている試薬層を含むことができる。試薬層は、酵素及び媒介物質を含み得る。試薬層に使用するのに適した例示的な酵素としては、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ(ピロロキノリンキノン補因子「PQQ」とともに)、及びグルコースデヒドロゲナーゼ(フラビンアデニンジヌクレオチド補因子「FAD」とともに)が挙げられる。試薬層に使用するのに適した例示的な媒介物質としては、フェリシアニドがあり、この場合では酸化型である。試薬層は、グルコースを酵素的副産物に物理的に変換させ、その過程でグルコース濃度に比例した所定量の還元された媒介物質(例、ヘキサシアノ鉄酸塩)を生成するように構成することができる。この後、作用電極によって還元された媒介物質の濃度を電流の形態で測定することができる。次いで、グルコース測定器10は電流の大きさをグルコース濃度に変換することができる。好ましい試験ストリップの詳細は、米国特許第6179979号、同第6193873号、同第6284125号、同第6413410号、同第6475372号、同第6716577号、同第6749887号、同第6863801号、同第6890421号、同第7045046号、同第7291256号、同第7498132号に提供されており、当該特許の全ては、参照によりそれら全てが本明細書に組み込まれる。
【0027】
図4は、静電容量の測定のために使用される種々の機能的構成要素を概略的な形で示す。具体的には、構成要素はマイクロコントローラ300を含む。マイクロコントローラ300の好ましい実施形態は、Texas Instrumentから超低電力マイクロコントローラ モデルMSP430として入手可能である。マイクロコントローラ(「MC」)300は、DAC出力及び内蔵A−D変換器を備えていてもよい。MC 300は、液晶ディスプレイ画面304に好適に接続されて、検査結果又は検査結果に関連したその他の情報の表示を提供する。メモリ306は、検査結果、感度電流、及び他の必要な情報又はデータを保存するために、MC 300に電気的に接続される。試験ストリップは、試験測定のためにストリップポートコネクタ(「SPC」)308を介して連結され得る。SPC 308は、試験ストリップが、第1の接触パッド47a、47b及び第2の接触パッド43を介してMC 300とインターフェースをとるのを可能にする。図4に示されるように、第2の接触パッド43を使用して、検査計に対する電気的接続を、U字形の切欠き部45を介して確立することができる。SPC 308には、電極コネクタ308a及び308cもまた備わっていてもよい。第1の接触パッド47は、47a及び47bで表わされるプロングを含むことができる。1つの例示的な実施形態において、第1の電極コネクタ308a及び308cは、それぞれ、プロング47a及び47bに別々に接続される。第2の電極コネクタ308bは、第2の接触パッド43に接続することができる。検査計10は、試験ストリップ80が検査計10に電気的に接続されているか否かを判定するために、プロング47aと47bとの間の抵抗又は電気的導通を測定することができる。
【0028】
図4を参照すると、SPC 308はスイッチ310に接続される。スイッチ310はバイアスドライバ312に接続される。バイアスドライバ312には、DAC信号312a、カレントドライブ312b、及びスイッチ信号312cが供給される。MC 300はDAC信号312aを提供し、その信号は、0からVref(例えば、約2.048V)の範囲のアナログ電圧を包含する。バイアスドライバ312は、定電圧又は定電流の2つのモードで動作することができる。カレントドライバライン312bは、バイアスドライバ312のモードを制御する。ライン312bを低く設定することで、バイアスドライバ312のオペアンプを電圧フォロワー増幅器とする。DAC信号312a出力は、Vref/2+/−400mVフルスケールにスケーリングされる。バイアスドライバのオペアンプは、この電圧をライン・ドライバ−ライン312dとしてMC 300に直接出力する。ライン312dの電圧は、Vref/2仮想接地に対して生成される。好適なバイアス(例えば、約20mVのバイアス)で駆動するために、DACは(好適なスケーラを介して)約1.044Vで駆動する必要がある。約+300mVのバイアスで駆動するために、DACは、通常、約1.324Vを提供する必要があり、−300mVのバイアスでは、DACは通常、約0.724Vを提供する必要がある。バイアスドライバ回路312はまた、109Hzの正弦波を生成し、静電容量測定によって充填を検出するために使用される。
【0029】
一方、バイアスドライバ312に対するカレントドライブ信号312aが高く保たれる場合、DAC出力は、約0〜約60mVフルスケールにスケーリングされる。スイッチ信号312cも給電されて、試験ストリップを通る電流路をバイアスドライバ312の抵抗器を通って迂回させることができる。バイアスドライバ312のオペアンプは、抵抗器にわたる電圧降下が、スケーリングされたDACドライブと同じとなるように制御することを試み、この場合には約600nAの電流を生成する。この電流は、試験測定を開始するために、試料検出に使用される。
【0030】
バイアスドライバ312は、トランスインピーダンス増幅回路(「TIA回路」)314にも接続される。TIA回路314は、ストリップの電極層66a(例えば、パラジウム)を通って電極層64a(例えば、金)接点まで流れる電流を電圧に変換する。全体的な利得は、TIA回路314の抵抗器によって制御される。ストリップ80は高容量性負荷であるので、標準的な低オフセット増幅器は振動する傾向がある。このため、低価格のオペアンプがTIA回路314にユニティ・ゲイン・バッファとして提供され、全体のフィードバックループ内に組み込まれる。機能ブロックとして、回路314は、高い駆動能力及び低電圧オフセットの両方を備えたデュアルオペアンプシステムとしての機能を果たす。TIA回路314はまた、仮想接地(又は仮想アース)を利用して、SPC 308の電極層64a(例えば、金)接点上に1.024Vのバイアスを生成する。回路314は、Vref増幅回路316にも接続される。この回路は、電流測定モードのとき、Vref/2(約1.024V)に設定された仮想接地レールを使用し、正電流及び負電流の両方を測定できるようにする。この電圧は利得増幅段318の全てに供給される。あらゆる回線負荷がこの電圧を「引き上げる」のを防止するため、ユニティ・ゲイン・バッファ増幅器をVref増幅回路316内で使用してもよい。
【0031】
TIA回路314からのストリップ電流信号314a及び電圧基準増幅器316からの仮想接地レール316a(〜Vref/2)は、試験測定サイクルの種々の段階での必要性に応じてスケールアップされる。例示的な実施形態において、MC 300には、試験ストリップから感知された増幅信号の4つの回線が備わっており、分析物アッセイ中の試験ストリップの測定サイクルの異なる段階での必要性に応じて感度電流の増幅は変化する。
【0032】
一実施形態において、検査計10は、試験ストリップ80の第1の接触パッド47と第2の接触パッド43との間に、試験電圧及び/又は電流を印加することができる。ストリップ80が挿入されたことを検査計10が認識した時点で、検査計10のスイッチが入り、流体検出モードを開始する。一実施形態において、測定器は、ストリップ80を通って小電流(例えば、0.2〜1μA)を駆動するように試みる。試料が存在しない場合、抵抗は数メガオームを超えるので、電流を印加しようとするオペアンプの駆動電圧はレールに進む。試料が導入されると、抵抗は急激に低下し、駆動電圧がそれに続く。駆動電圧が所定の閾値未満に降下すると、試験手順が開始される。
【0033】
図5Aは、電極間に印加される電圧を示す。時間ゼロは、試料が最初にストリップを充填し始めたことを試料検出方法が検出した時刻とする。図5Aにおいて約1.3秒に示される正弦波成分は、図示の目的で正確なタイムスケールで描かれていないことに留意されたい。
【0034】
試料が試験ストリップチャンバ61の中で検出された後、ストリップ電極間の電圧は、ミリボルトの大きさで好適な電圧まで増大されて、一定時間、即ち、約1秒維持され、より高い電圧まで増大されて一定時間保持され、次に正弦波電圧をDC電圧の先端に一定時間印加し、次にDC電圧が更なる時間印加され、その後負電圧に反転されて一定時間保持される。次に、この電圧はストリップから切断される。この一連の印加電圧は、図5Bに示されるもののような電流トランジェントを生成する。
【0035】
図5Bにおいて、約0から約1秒までの電流信号(及びその後の電流試料)は、エラーチェックのため、かつ対照溶液試料を血液試料と区別するために使用され得る。約1秒から約5秒までの信号を分析して、グルコース結果を得る。この期間の信号は、様々な誤差に関しても分析される。約1.3秒から1.4秒までの信号を使用して、センサが完全に試料で充填されているか否かを検出する。1.3秒から1.32秒までの電流は、ここではトレース500として示されており、約150マイクロ秒間隔でサンプリングされて、十分な量の生理液が試験ストリップのチャンバ61を充填したか否かを判定する。
【0036】
十分な量かどうかをチェックする一実施形態では、静電容量測定を用いて、試験ストリップ80のチャンバ61の十分な分析物充填を推測する。静電容量の大きさは、試料流体で覆われた電極の面積に比例し得る。静電容量の大きさを測定した時点で、その値が閾値よりも大きく、したがって正確な測定のために十分な量の液体を試験ストリップが有する場合、グルコース濃度が出力され得る。しかしながら、その値が閾値以下である場合には、試験ストリップが有する液体の量が正確な測定のために不十分であることを示し、エラーメッセージが出力され得る。
【0037】
静電容量を測定するための1つの方法では、定数成分と振動成分とを有する試験電圧が試験ストリップに印加される。そのような場合、得られる試験電流は、以下により詳細に記載されるように、静電容量値を決定するために数学的に処理され得る。
【0038】
本出願人らは、電極層を備えるバイオセンサの試験チャンバ61は、表1に示されるような並列抵抗器及びコンデンサを有する回路の形態にモデリングされ得ると考える。
【0039】
【表1】
【0040】
表1のこのモデルにおいて、Rは、電流が遭遇する抵抗を表し、Cは、電極に電気的に結合された生理液と試薬との組み合わせから生じる静電容量を表す。チャンバの静電容量の測定を開始するために、チャンバの中に配置されたそれぞれの電極間に交流バイアス電圧を印加することができ、チャンバからの電流が測定される。チャンバ61の充填物は、一般に静電容量のみの測定値であると考えられるので、例えば、Rなどのあらゆる寄生抵抗を、静電容量のあらゆる決定又は計算に含めるべきではない。したがって、電流を測定又は検知する上で、あらゆる寄生抵抗は、測定電流に影響を与えると考えられる。しかしながら、本出願人らは、上記でモデリングされたようなチャンバを通る抵抗の利用又は知識を必要とせずに静電容量を得るための技術を発見した。この技術を更に説明するために、この技術の根底にある数学的基礎の短い説明を提供する。
【0041】
キルヒホッフの法則によると、表1の回路を通る合計電流(iT)は、抵抗器(iR)及びコンデンサ(iC)を流れる電流のほぼ合計である。交流電圧V(RMSとして測定)が印加されると、抵抗器電流(iR)は次の式1で表わすことができる。
【数1】
【0042】
コンデンサの電流(iC)は次の式2で表わすことができる。
【数2】
(式中、
jは、コンデンサ内の電流が電圧より約90度進んでいることを示す虚数演算子であり、
ωは、角周波数
【数3】
である(式中、fは、ヘルツ(Hz)単位で示した周波数である))。
【0043】
これら構成要素の概略は、表1のフェーザ図に示されている。フェーザ図において、Φは、出力と比べた場合の入力の位相角を表す。位相角Φは、次の三角関数によって決定される。
【数4】
【0044】
ピタゴラスの定理により、合計電流iTの2乗は次の式4のように計算される。
【数5】
【0045】
式4を再整理し、式3を代入すると、次の式5が得られる。
【数6】
【0046】
コンデンサの電流iCを解いて式2と組み合わせる。
【数7】
【0047】
Cを再整理し、ωを展開すると、静電容量は次の式7になる。
【数8】
【0048】
式7を単純化すると、次の式8が得られる。
【数9】
【0049】
式8は抵抗器電流に言及していないことがわかる。その結果、システムが、周波数f及び実効(「RMS」)振幅Vの交流電圧を駆動し、かつ合計電流iTをRMS値及び位相角Φとして測定する場合、試験チャンバ61の静電容量Cを、バイオセンサの試験チャンバの抵抗を測定する必要なく正確に計算することができる。バイオセンサのストリップの抵抗は測定が困難であり、5秒アッセイ時間にわたって変化するので、このことは大きな利点であると考えられる。抵抗は、所与の電気バイアス(電圧)でストリップを流れることができる電荷担体の数によって生じると考えられており、したがって反応依存性である。抵抗は、アッセイの1.3秒の時点で、10kΩから、ことによると100kΩまでのいずれかとなることが見込まれる。したがって、バイオセンサチャンバの抵抗、又は更にはセンサ抵抗器など測定回路の抵抗を測定する必要がないことによって、本出願人らの発明は、試験ストリップ全体を改善することに関して現況技術を前進させている。
【0050】
式8に基づいて静電容量Cを決定するための例示的な技術の実施は、図6A、図6B、図6C、図6D、図6E、及び図7に関連させて理解することができる。図5A及び図7の工程702に示されるように、約109HzのAC試験電圧(.±0.50mVピークトゥピーク)を、約1〜1.3秒の間に2サイクル、又は工程704で示されている少なくとも1サイクルの間印加することができる。好ましい実施形態において、第1のサイクルは調整パルスとして用いることができ、第2のサイクルは、静電容量を測定するために用いることができる。交流試験電圧は、例えば、ピークが約50ミリボルトの約109ヘルツの正弦波といった、好適な波形であることができる(図6C)。サンプリングは、例えば、図6Aに示される1サイクル当たり約64〜65といったように、1サイクル当たり好適な任意の試料量であり得る。したがって、各試料は、約5.6度の例示的な正弦波を示す。
【0051】
図6Aでは、システムは交流バイアスに直流電圧オフセットを加え、したがって、図6Aで測定された試料は、直流オフセットも有することになり、これは、出願人らの技術の一例に従って合計電流iTを測定するために、工程706及び708を介して除去されなければならない。
【0052】
この技術では、図6Aにおいて602で表わされる65個の試料全ての平均が工程706で得られ、これは試料の交流成分のゼロ電流に対する閾値を提供する。これを得ることの利点は、試料にわたるノイズが平均されることである。各試料ポイントに関し、工程708で平均値が各サンプリングされたポイントから減算され、これにより、ここでは図6Bに示されるように交流成分を分離する結果となる。したがって、工程710で全ての負値のRMS値が取られて、合計電流iTのほぼ正確な大きさが得られる。正値のRMS値をとることもできるが、本出願人らは、正値は、サイクル全体の第1象限及び第4象限にわたって分割されるのでまとまりがなく、したがって負値が好ましいと考えることを指摘しておく。DCオフセットを除去するために試料602を操作し終わった時点で、ここでは図6Bにおいて604で表わされるように、試料をプロットして時間経過に伴う電流の出力を示すことができる。
【0053】
位相角を決定するために、適切にプログラムされたシステム又はMCは、ここでは図6Cに示される発振入力電圧を発振出力電流と比較して、工程714で位相角を決定することができる。好ましい実施形態において、サンプリングされたデータ604を分析して、正電流と負電流の交点を判定する。サンプリングは離散的な数の試料に基づいているので、図6Eにおいて出力電流がゼロ電流ラインを超えるのが実質的にいつであるかを決定するために補間を用いることができ、ここでは、補間された交点は608で表わされている。ここで記載される実施形態では、位相角Φは、90度未満及び約87度である。精度を上げるために、第2の補間点610から約180度を減算して、この別の交点610で補間を行うことができる。これら2つの補間値は2〜3度以内でなければならず、精度を高めるために平均化されてもよい。
【0054】
位相角が得られたら、式8を用いて静電容量を計算することができる。しかしながら、実際には、トランスインピーダンス増幅器314及び利得増幅器の実装により、追加位相シフトがシステムに導入されていることが判っている。この追加位相シフトは、使用時にストリップなしでシステムの静電容量を測定することによって補償値
【数10】
を導入することによりオフセットされ得る。
【0055】
【数11】
【0056】
好ましい実施形態において、補償位相角
【数12】
は、約5〜約7度の範囲である。
【0057】
試験ストリップ80の静電容量を判定したら、2点較正を行って、静電容量値を、アナログ構成要素(例えば、抵抗器、コンデンサ、オペアンプ、スイッチ等)のあらゆる公差と無関係である値に正規化する。簡潔に述べると、並列抵抗が30kの550nFのコンデンサを測定入力にわたって設置し、静電容量を測定するように測定器に指示し、生成された値を記録する;並列抵抗が30kの800nFのコンデンサを測定入力にわたって設置し、静電容量を測定するように測定器に指示し、生成された値を記録する、ことによって2点較正を行う。これら2点は、この特定のハードウェアインスタンス(設計ではない)の測定性能の利得及びオフセットの指標を提供する。次に、測定誤差から傾斜及びオフセットを計算し、測定器のメモリに保存する。ここで測定器が較正される。
【0058】
ストリップが挿入されて試料が提供されると、静電容量が測定され、保存された傾斜及びオフセットが適用されて測定値を補正する。
【0059】
デバイスの較正の完了後、試験チャンバ61が試験流体で十分に充填されているか否かを判定するための評価が行われる。この評価は、良好に充填された試験ストリップの大きな試料から得た平均静電容量値の少なくとも65%〜85%である静電容量の大きさに基づくことができる。
【0060】
この例示的な技術のロバスト性を試験するために、本出願人らは、システムにノイズを意図的に導入して、参照並列R−C回路と比較した場合の誤差百分率を判定した。次の表2では、アナログ・デジタル変換器(「ADC」)ノイズカウント数が導入されたが、電流、位相角、及び静電容量に関する誤差は1%未満であった。
【0061】
【表2】
【0062】
例示的な技術を他の技術と比較して、本出願人らの技術の精度が高いことを確認する。例えば、図8Aにおいて、静電容量は、ストリップの試料から約350〜約800ナノファラッドの範囲内で測定される。完全に充填されたストリップは、対照溶液又は血液が使用されているか否かに応じて、600〜700nFの範囲の静電容量を有する。部分的に充填されたストリップは、当然ながらより低い静電容量を示す。対象実施形態で静電容量を測定して、参照並列R−C回路からのパーセント偏差を決定する。市販のLCRメータを使用して較正されたいくつかの「金製の」R−Cの組み合せを有することによって、パーセント誤差を計算する。こうしたR−Cの組み合せ(一般に誤差のないサンプル(Exemplars)であることが見出されており、したがって「金製」である)を、ストリップコネクタに順に提供し、システムに静電容量を読み取るように命令する。この試験を、システムの他のいくつかの試料を使用して繰り返し、測定技術の精度及び信頼性を判定する。基準曲線800は例示的な技術を示しており、基準データを基にした誤差率は、約350ナノファラッド〜約850ナノファラッドの範囲の静電容量にわたって3%未満である。これに対し、LifeScan Inc.(the Netherlands)から入手可能な既存の測定器システムにおける静電容量測定は、この範囲の静電容量にわたって、2%未満から10%超過に及ぶ誤差曲線806を示す。本出願人らに関連した静電容量測定技術802及び804は、既存の分析物測定システムによって設定された上方境界806と、例示的な技術によって設定された下方境界800との間に位置する。
【0063】
例示的な実施形態、方法、及びシステムが血糖ストリップに関して記載されてきたが、本明細書に記載される原理は、少なくとも2つの電極間に配置された試薬上の生理液を使用するあらゆる分析物測定ストリップにも同様に適用することができる。
【0064】
上述のように、本明細書に記載する様々なプロセスの工程を一般に実施するように、マイクロコントローラをプログラムすることができる。このマイクロコントローラは、例えば、グルコース測定器、インスリンペン、インスリンポンプ、サーバ、携帯電話、パーソナルコンピュータ、又は移動携帯型デバイスなどの特定のデバイスの一部であり得る。更に、本明細書に記載する様々な方法を用いて、例えば、C+、C++、若しくはC−Sharpなどの、例えば、C又はCの変形などの既製のソフトウェア開発ツールを用いて、ソフトウェアコードを生成することができる。しかしながら、これらの方法は、こうした方法をコードするための新しいソフトウェア言語の必要条件及び入手可能性に応じて、他のソフトウェア言語に変換することもできる。更に、本明細書に記載する様々な方法は、好適なソフトウェアコードに一旦変換されれば、好適なマイクロコントローラ又はコンピュータによって実行される際に、これらの方法において記載された工程をあらゆる他の必要な工程とともに実行するように動作する、任意のコンピュータ読み取り可能な記憶媒介物質として実施することができる。
【0065】
本発明を特定の変形例及び説明図に関して述べたが、当業者には本発明が上述された変形例又は図に限定されないことが認識されよう。更に、上述の方法及び工程が特定の順序で起こる特定の事象を示している場合、当業者には特定の工程の順序が変更可能であり、そうした変更は本発明の変形例に従うものである点が認識されよう。更に、こうした工程のうちのあるものは、上述のように順次行われるが、場合に応じて並行したプロセスで同時に行われてもよい。したがって、開示の趣旨又は本発明の同等物の範囲内にある本発明の変形が存在する範囲では、本「特許請求の範囲」がこうした変形例をも包含することが意図されるところである。
【技術分野】
【0001】
本出願は米国特許法119条及び/又は120条に基づき2010年2月25日に出願された先出願の米国仮特許出願第61/308,167号の利益を主張するものであり、当該出願はその全体が参照により本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生理液、例えば血液又は血液由来の製品中の分析物を検出することが、今日の社会で今まで以上に重要性を増している。分析物検出の定量法は、臨床検査、家庭検査などを含めて、多様な用途に利用法が見出されるものであり、そのような検査の結果は、多様な病状の診断及び処置において主要な役割を果たしている。目的の分析物には、糖尿病の処置のためのグルコース、コレステロールなどが挙げられる。こうした分析物検出の重要性の高まりに応じて、臨床での使用と家庭での使用の両方に対応する多様な分析物検出の手順及びデバイスが開発されてきた。
【0003】
分析物検出に用いられる方法の1つの種類は電気化学的方法である。かかる方法では、水性液体試料が、2つの電極、例えば対極及び作用電極を含む電気化学セルの中の試料受容チャンバに入れられる。分析物をレドックス剤と反応させて、分析物濃度に対応する量の酸化可能(又は還元可能)物質を形成する。次いで、存在する酸化可能(又は還元可能)物質の量を電気化学的に推定して、初期試料中に存在する分析物の量と関連付ける。
【0004】
こうしたシステムは、様々なモードの無効化及び/又は誤差を受けやすい。例えば、温度の変動は、その方法の結果に影響を与え得る。このことは、家庭用途又は第三世界各国における場合によくあるように、特にその方法が制御されていない環境で行われる場合に関係がある。誤差は、試料サイズが正確な結果を得るのに十分でない場合にも生じ得る。測定試験電流は、試料で湿潤された作用電極の面積に比例するので、部分的に充填された試験ストリップは不正確な結果をもたらす可能性があり得る。したがって、部分的に充填された試験ストリップは、一定の状況下で、負にバイアスされたグルコース濃度をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願人らは、充填されたバイオセンサ試験ストリップを判定する際の平行ストリップの抵抗の効果が無視されて、特により低い並列抵抗に遭遇したときに、試験ストリップの静電容量の測定値が不正確に高くなると考える。本出願人らの発明の例示的な実施形態は、この効果を考慮に入れると同時に、バイオセンサの試験チャンバ内の抵抗を測定する必要性を除去する。
【0006】
一態様において、バイオセンサの静電容量を測定する方法が提供される。バイオセンサは、チャンバの中に配置された2つの電極を有し、かつマイクロコントローラに接続されたチャンバを含む。本方法は、バイオセンサチャンバの中で電気化学反応を開始すること、所定周波数の発振電圧をチャンバに印加すること、電流出力とチャンバからの発振電圧との間の位相角を決定することと、チャンバの静電容量を、電流出力と位相角の正弦との積を、2πかける周波数及び電圧の積で割ったものに基づいて計算することと、によって達成され得る。
【0007】
更なる態様において、分析物試験ストリップと分析物検査計(analyte test meter)とを含む分析物測定システムが提供される。分析物試験ストリップは、上部に試薬が配置された基材と、試験チャンバ内の試薬に近接する少なくとも2つの電極と、を含む。分析物測定器は、2つの電極に接続するように配置されたストリップポートコネクタと、電源と、ストリップポートコネクタ及び電源に電気的に結合されたマイクロコントローラと、を含む。マイクロコントローラは、バイオセンサチャンバ内で電気化学反応を開始し、所定周波数の発振電圧をチャンバに印加し、電流出力とチャンバからの発振電圧との間の位相角を決定し、かつチャンバの静電容量を、電流出力と位相角の正弦との積を、2πかける周波数及び電圧の積で割ったものに基づいて計算するようにプログラムされる。
【0008】
更に別の態様において、分析物試験ストリップと分析物検査計とを含む分析物測定システムが提供される。試験ストリップは、上部に試薬が配置された基材と、試験チャンバ内の試薬に近接する少なくとも2つの電極と、を含む。分析物測定器は、2つの電極に接続するように配置されたストリップポートコネクタと、電源と、参照並列R−C回路と比較した場合の静電容量の範囲にわたる試験ストリップの静電容量測定の誤差百分率が約3%未満であるように、ストリップポートコネクタ及び電源に電気的に結合されたマイクロコントローラと、を含む。
【0009】
これら及び他の実施形態、特徴並びに利点は、以下に述べる本発明の異なる例示的な実施形態のより詳細な説明を、はじめに下記に簡単に述べる付属の図面とあわせて参照することによって当業者にとって明らかになるであろう。
【0010】
本明細書に援用し明細書の一部をなす添付図面は、現時点における本発明の好適な実施形態を示したものであって、上記に述べた一般的説明並びに下記に述べる詳細な説明とともに、本発明の特徴を説明する役割を果たすものである(同様の数字は同様の要素を表す)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】分析物検査計と試験ストリップとを含む例示的な分析物測定システム。
【図2】図1の測定器の例示的な回路基板の簡略化された概略図。
【図3】図1の試験ストリップの分解斜視図。
【図4】充填された試験ストリップの静電容量を測定するための構成要素の簡略図。
【図5A】試験ストリップに印加される、時間経過に伴う電圧の印加を示す。
【図5B】時間経過に伴う試験ストリップからの測定電流感度を示す。
【図6A】領域602で示される電流出力のサンプリングを示す。
【図6B】図6Aのサンプリングされたデータから直流成分が除去された時点の交流出力を示す。
【図6C】試験ストリップに印加される交流電圧と、試験ストリップからの交流出力との間の位相角を示す。
【図6D】試験ストリップに印加される交流電圧と、試験ストリップからの交流出力との間の位相角を示す。
【図6E】図6Cの印加電流の交点との比較を目的として図6Dの交点を決定するための、サンプリングされたデータの補間を示す。
【図7】例示的な試験ストリップの静電容量を測定する方法の例示的フローチャート。
【図8A】既知のシステム及び本出願人らの他の関連技術と対比した例示的な実施形態の誤差百分率を示す。
【図8B】例示的な試験ストリップの抵抗の範囲にわたる、それぞれの静電容量測定技術の静電容量の分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は、図面を参照しつつ読まれるべきもので、異なる図面中、同様の要素は同様の参照符号にて示してある。図面は必ずしも一定の縮尺を有さず、選択した実施形態を示したものであって、本発明の範囲を限定するものではない。詳細な説明は本発明の原理を限定するものではなく、あくまでも例として説明するものである。この説明文は、当業者による発明の製造及び使用を明確に可能ならしめるものであり、出願時における発明を実施するための最良の形態と考えられるものを含む、発明の複数の実施形態、適応例、変形例、代替例、並びに使用例を述べるものである。
【0013】
本明細書で任意の数値や数値の範囲について用いる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその所望の目的に従って機能することを可能とするような適当な寸法の許容誤差を示すものである。更に、本明細書で用いる「患者」、「ホスト」、「ユーザー」、及び「被験者」という用語は任意のヒト又は動物患者を指し、システム又は方法をヒトにおける使用に限定することを目的としたものではないが、ヒト患者における本発明の使用は好ましい実施形態を代表するものである。
【0014】
本発明のシステム及び方法は、多種多様な試料中の多種多様な分析物の測定で使用するのに好適であり、全血、血漿、血清、間質液、又はそれらの類縁体中の分析物の測定で使用するのに特に好適である。例示的な実施形態において、対向する電極を有する薄層セル設計及び速い(例えば、約5秒の分析時間)3つのパルス電気化学設計に基づくグルコース試験システムが必要とするのは、少量の試料(例えば、約0.4μL(マイクロリットル))であり、血液グルコース測定の改善された信頼性及び精度を提供することができる。反応セルでは、試料中のグルコースは、グルコースデヒドロゲナーゼを使用してグルコノラクトンに酸化することができ、電気化学的に活性である媒介物質は、酵素から作用電極に電子をシャトル輸送するために使用することができる。3つのパルスの電位波形を作用電極及び対電極に印加するために定電位を利用することができ、結果として、グルコース濃度を計算するために使用される試験電流遷移を生じる。更に、試験電流遷移から得られる追加的な情報は、試料マトリックス間の区別、及びヘマトクリット値、温度変化、電気化学的活性成分による血液試料の変動性の補正、並びに起こり得るシステムエラーの同定のために使用され得る。
【0015】
標記方法は、原理的には、離間された第1及び第2の電極と試薬層とを有する任意のタイプの電気化学セルと共に使用することができる。例えば、電気化学セルは、試験ストリップの形状であることができる。一態様では、試験ストリップは、試料受容チャンバ又は試薬層が配置される領域を画定するために、薄いスペーサにより分離された2つの対向する電極を含んでもよい。例えば、同一平面上の電極を有する試験ストリップなどの他の種類の試験ストリップを、本明細書に記載される方法と共に使用してもよいことを、当業者なら理解するであろう。
【0016】
図1は、糖尿病データ管理ユニット10と、グルコース試験ストリップ80の形態のバイオセンサとを含む糖尿病管理システムを示す。糖尿病データ管理ユニット(DMU)は、分析物測定及び管理ユニット、グルコース測定器、測定器、及び分析物測定デバイスと呼ばれる場合もあることに留意されたい。一実施形態において、DMUは、インスリン送達デバイス、追加の分析物試験デバイス、及び薬物送達デバイスと組み合わされてもよい。DMUは、ケーブル又は好適な無線技術、例えば、GSM(登録商標)、CDMA、BlueTooth(登録商標)、WiFi等を介して、コンピュータ26又はサーバ70に接続されてもよい。
【0017】
図1に戻って参照すると、グルコース測定器10は、ハウジング11、ユーザーインターフェースボタン(16、18、及び20)、ディスプレイ14、及びストリップポート開口22を含むことができる。ユーザーインターフェースボタン(16、18、及び20)は、データの入力、メニューのナビゲーション、及びコマンドの実行を可能とするように構成することができる。ユーザーインターフェースボタン18は、2方向トグルスイッチの形態であることができる。データには、分析物濃度及び/又は個々の日常の生活習慣に関連した情報を表す値を挙げることができる。日常の生活習慣に関連した情報には、食物の摂取、薬の使用、健康診断の実施、並びに個々の一般的な健康状態及び運動レベルを挙げることができる。
【0018】
測定器10の電子構成要素は、ハウジング11内部の回路基板34上に配置することができる。図2は、回路基板34の上面上に配置された電子構成要素を(概略的な形で)示す。上面上の電子構成要素としては、ストリップポート開口308、マイクロコントローラ38、不揮発性フラッシュメモリ306、データポート13、リアルタイムクロック42、及び複数のオペアンプ(46〜49)が挙げられる。底面上の電子構成要素としては、複数のアナログスイッチ、バックライトドライバ、及び電気的消却・プログラム可能型読取専用メモリ(EEPROM、図示せず)が挙げられる。マイクロコントローラ38は、ストリップポート開口308、不揮発性フラッシュメモリ306、データポート13、リアルタイムクロック42、複数のオペアンプ(46〜49)、複数のアナログスイッチ、バックライトドライバ、及びEEPROMに電気的に接続され得る。
【0019】
図2に戻って参照すると、複数のオペアンプは、利得段オペアンプ(46及び47)、トランスインピーダンスオペアンプ48、及びバイアスドライバオペアンプ49を含み得る。複数のオペアンプは、ポテンシオスタット機能及び電流測定機能の一部を提供するように構成され得る。ポテンシオスタット機能とは、試験ストリップの少なくとも2つの電極間に試験電圧を印加することを指し得る。電流機能とは、印加された試験電圧によって生じる試験電流を測定することを指し得る。電流測定は、電流電圧変換器によって行うことができる。マイクロコントローラ38は、例えばTexas Instrument MSP 430などの混合シグナルマイクロプロセッサ(MSP)の形態であってよい。MSP 430は、ポテンシオスタット機能及び電流測定機能の一部を行うように構成することもできる。更に、MSP 430は、揮発性及び不揮発性メモリも含むことができる。別の実施形態において、電子構成要素の多くを特定用途向け集積回路(ASIC)の形態でマイクロコントローラに組み込むことができる。
【0020】
ストリップポートコネクタ308は、ストリップポート開口22に近接して位置決めされ、かつ試験ストリップと電気的接続を形成するように構成されることができる。ディスプレイ14は、測定された血糖値を報告し、生活習慣に関連した情報の入力を容易にするための、液晶ディスプレイの形態であってよい。ディスプレイ14は、任意にバックライトを有してよい。データポート13は、接続リード線に取り付けられた適当なコネクタを受容することにより、グルコース測定器10をパーソナルコンピュータなどの外部デバイスに接続することができるようになっている。データポート13は、例えば、シリアル、USB、又はパラレルポートなど、データ送信が可能な任意のポートであってもよい。
【0021】
リアルタイムクロック42は、ユーザーが位置する地理的領域に関連する現在時刻を維持し、また時間を計測するように構成され得る。リアルタイムクロック42は、クロック回路45、クリスタル44、及び超コンデンサ43を含んでもよい。DMUは、例えば、電池などの電源に電気的に接続されるように構成され得る。超コンデンサ43は、電力供給障害があった場合にリアルタイムクロック42に電力供給するために、長時間電力供給するように構成され得る。したがって、電池が放電する又は交換されるときに、ユーザーがリアルタイムクロックを固有時間に再設定する必要がない。リアルタイムクロック42を超コンデンサ43と一緒に使用することによって、ユーザーがリアルタイムクロック42を誤って再設定するかもしれないリスクを軽減することができる。
【0022】
図3は例示的な試験ストリップ80を示しており、そのストリップ80は、遠位端80から近位端82まで延びかつ側縁部を有する細長い本体を含む。ここで示されるように、試験ストリップ80はまた、第1の電極層66aと、絶縁層66bと、第2の電極層64aと、絶縁層64bと、2つの電極層64a及び66aの間に挟まれたスペーサ60とを含む。第1の電極層66aは、第1の電極67aと、第1の接続トラック76と、第1の接触パッド47とを含むことができ、図3及び図4に示されるように、第1の接続トラック76は、第1の電極層66aを第1の接触パッド67に電気的に接続する。第1の電極67aは、試薬層72の直下にある第1の電極層66aの一部であることに留意されたい。同様に、第2の電極層64aは、第2の電極67bと、第2の接続トラック78と、第2の接触パッド78とを含むことができ、図3及び図4に示されるように、第2の接続トラック78は、第2の電極67bを第2の接触パッド78に電気的に接続する。第2の電極は、試薬層72の上方にある第2の電極層64aの一部を含むことに留意されたい。
【0023】
図3に示されるように、試料受容チャンバ61は、第1の電極、第2の電極、及び試験ストリップ80の遠位端80近傍のスペーサ60によって画定される。第1の電極67a及び第2の電極67bは、それぞれ、試料受容チャンバ61の底部及び上部を画定することができる。スペーサ60の切欠き領域68は、試料受容チャンバ61の側壁を画定することができる。一態様において、試料受容チャンバ61は、試料入口及び/又は通気口を提供するポート70を含むことができる。例えば、ポートの1つは流体試料が入るのを可能にし、他のポートは空気が出るのを可能にし得る。1つの例示的な実施形態において、第1の電極層66a及び第2の電極層64aは、それぞれ、スパッタされたパラジウム及びスパッタされた金から作製することができる。スペーサ60として使用することができる好適な材料としては、例えば、プラスチック(例えば、PET、PETG、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン)、シリコン、セラミック、ガラス、接着剤、及びこれらの組み合わせなどの様々な絶縁材料が挙げられる。一実施形態において、スペーサ60は、ポリエステルのシートの両面にコーティングされた両面接着剤の形態であってもよく、その場合、接着剤は、感圧性接着剤又は加熱活性化接着剤であってもよい。
【0024】
図3に戻って参照すると、第1の電極及び第2の電極の面積は、2つの側縁部及び切欠き領域68によって画定され得る。この面積は、液体試料によって湿潤される電極層の表面として定義され得ることに留意されたい。一実施形態において、スペーサ60の接着剤部分は、接着剤が第1の電極層66Aと結合を形成するように、試薬層に混ざる及び/又は部分的に溶解することができる。このような接着結合は、液体試料によって湿潤され得る電極層の一部分を画定するのを助け、更には媒介物質を電解酸化又は電解還元するのを助ける。
【0025】
第1の電極又は第2の電極のいずれかは、印加された試験電圧の大きさ及び/又は極性に応じて、作用電極の機能を実行することができる。作用電極は、還元された媒介物質の濃度に比例する限界試験電流を測定することができる。例えば、電流制限種が還元された媒介物質(例えば、ヘキサシアノ鉄酸塩)の場合、第2の電極に関して試験電圧が酸化還元媒介物質の電位よりも十分に低い限り、その媒介物質は第1の電極で酸化されることができる。このような状況では、第1の電極は作用電極の機能を果たし、第2の電極は対電極/参照電極の機能を果たす。当業者は、対電極/参照電極を単に参照電極又は対電極として参照してもよいことに留意すべきである。制限酸化は、測定された酸化電流が、バルク溶液から作用電極表面へ拡散する還元された媒介物質の流量に比例するように、全ての還元された媒介物質が作用電極面で枯渇したときに生じる。バルク溶液という用語は、枯渇領域内に還元された媒介物質が存在しない、作用電極から十分に離れた溶液の一部を指す。試験ストリップ80に関して特に明記しない限り、以下、検査計10により印加された電位は全て、第2の電極に関して記述されるものであることに留意するべきである。同様に、試験電圧が酸化還元媒介物質の電位より十分に高い場合、その還元された媒介物質は、制限電流として第2の電極で酸化され得る。このような状況では、第2の電極は作用電極の機能を実行し、第1の電極は対電極/参照電極としての機能を実行する。例示的な試験ストリップ、ストリップの操作、及び検査計に関する詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、写しが付属書類に添付される、米国特許出願公開第20090301899号に見出される。
【0026】
図3を参照すると、試験ストリップ80は、1つ以上の作用電極と対電極とを含むことができる。試験ストリップ80は、更に複数の電気的接触パッドを有することができ、その場合、各電極は少なくとも1つの電気的接触パッドと電気的に導通することができる。ストリップポートコネクタ308は、電気的接触パッドと電気的にインターフェースして、電極と電気的導通を形成するように構成され得る。試験ストリップ80は、少なくとも1つの電極上に配置されている試薬層を含むことができる。試薬層は、酵素及び媒介物質を含み得る。試薬層に使用するのに適した例示的な酵素としては、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ(ピロロキノリンキノン補因子「PQQ」とともに)、及びグルコースデヒドロゲナーゼ(フラビンアデニンジヌクレオチド補因子「FAD」とともに)が挙げられる。試薬層に使用するのに適した例示的な媒介物質としては、フェリシアニドがあり、この場合では酸化型である。試薬層は、グルコースを酵素的副産物に物理的に変換させ、その過程でグルコース濃度に比例した所定量の還元された媒介物質(例、ヘキサシアノ鉄酸塩)を生成するように構成することができる。この後、作用電極によって還元された媒介物質の濃度を電流の形態で測定することができる。次いで、グルコース測定器10は電流の大きさをグルコース濃度に変換することができる。好ましい試験ストリップの詳細は、米国特許第6179979号、同第6193873号、同第6284125号、同第6413410号、同第6475372号、同第6716577号、同第6749887号、同第6863801号、同第6890421号、同第7045046号、同第7291256号、同第7498132号に提供されており、当該特許の全ては、参照によりそれら全てが本明細書に組み込まれる。
【0027】
図4は、静電容量の測定のために使用される種々の機能的構成要素を概略的な形で示す。具体的には、構成要素はマイクロコントローラ300を含む。マイクロコントローラ300の好ましい実施形態は、Texas Instrumentから超低電力マイクロコントローラ モデルMSP430として入手可能である。マイクロコントローラ(「MC」)300は、DAC出力及び内蔵A−D変換器を備えていてもよい。MC 300は、液晶ディスプレイ画面304に好適に接続されて、検査結果又は検査結果に関連したその他の情報の表示を提供する。メモリ306は、検査結果、感度電流、及び他の必要な情報又はデータを保存するために、MC 300に電気的に接続される。試験ストリップは、試験測定のためにストリップポートコネクタ(「SPC」)308を介して連結され得る。SPC 308は、試験ストリップが、第1の接触パッド47a、47b及び第2の接触パッド43を介してMC 300とインターフェースをとるのを可能にする。図4に示されるように、第2の接触パッド43を使用して、検査計に対する電気的接続を、U字形の切欠き部45を介して確立することができる。SPC 308には、電極コネクタ308a及び308cもまた備わっていてもよい。第1の接触パッド47は、47a及び47bで表わされるプロングを含むことができる。1つの例示的な実施形態において、第1の電極コネクタ308a及び308cは、それぞれ、プロング47a及び47bに別々に接続される。第2の電極コネクタ308bは、第2の接触パッド43に接続することができる。検査計10は、試験ストリップ80が検査計10に電気的に接続されているか否かを判定するために、プロング47aと47bとの間の抵抗又は電気的導通を測定することができる。
【0028】
図4を参照すると、SPC 308はスイッチ310に接続される。スイッチ310はバイアスドライバ312に接続される。バイアスドライバ312には、DAC信号312a、カレントドライブ312b、及びスイッチ信号312cが供給される。MC 300はDAC信号312aを提供し、その信号は、0からVref(例えば、約2.048V)の範囲のアナログ電圧を包含する。バイアスドライバ312は、定電圧又は定電流の2つのモードで動作することができる。カレントドライバライン312bは、バイアスドライバ312のモードを制御する。ライン312bを低く設定することで、バイアスドライバ312のオペアンプを電圧フォロワー増幅器とする。DAC信号312a出力は、Vref/2+/−400mVフルスケールにスケーリングされる。バイアスドライバのオペアンプは、この電圧をライン・ドライバ−ライン312dとしてMC 300に直接出力する。ライン312dの電圧は、Vref/2仮想接地に対して生成される。好適なバイアス(例えば、約20mVのバイアス)で駆動するために、DACは(好適なスケーラを介して)約1.044Vで駆動する必要がある。約+300mVのバイアスで駆動するために、DACは、通常、約1.324Vを提供する必要があり、−300mVのバイアスでは、DACは通常、約0.724Vを提供する必要がある。バイアスドライバ回路312はまた、109Hzの正弦波を生成し、静電容量測定によって充填を検出するために使用される。
【0029】
一方、バイアスドライバ312に対するカレントドライブ信号312aが高く保たれる場合、DAC出力は、約0〜約60mVフルスケールにスケーリングされる。スイッチ信号312cも給電されて、試験ストリップを通る電流路をバイアスドライバ312の抵抗器を通って迂回させることができる。バイアスドライバ312のオペアンプは、抵抗器にわたる電圧降下が、スケーリングされたDACドライブと同じとなるように制御することを試み、この場合には約600nAの電流を生成する。この電流は、試験測定を開始するために、試料検出に使用される。
【0030】
バイアスドライバ312は、トランスインピーダンス増幅回路(「TIA回路」)314にも接続される。TIA回路314は、ストリップの電極層66a(例えば、パラジウム)を通って電極層64a(例えば、金)接点まで流れる電流を電圧に変換する。全体的な利得は、TIA回路314の抵抗器によって制御される。ストリップ80は高容量性負荷であるので、標準的な低オフセット増幅器は振動する傾向がある。このため、低価格のオペアンプがTIA回路314にユニティ・ゲイン・バッファとして提供され、全体のフィードバックループ内に組み込まれる。機能ブロックとして、回路314は、高い駆動能力及び低電圧オフセットの両方を備えたデュアルオペアンプシステムとしての機能を果たす。TIA回路314はまた、仮想接地(又は仮想アース)を利用して、SPC 308の電極層64a(例えば、金)接点上に1.024Vのバイアスを生成する。回路314は、Vref増幅回路316にも接続される。この回路は、電流測定モードのとき、Vref/2(約1.024V)に設定された仮想接地レールを使用し、正電流及び負電流の両方を測定できるようにする。この電圧は利得増幅段318の全てに供給される。あらゆる回線負荷がこの電圧を「引き上げる」のを防止するため、ユニティ・ゲイン・バッファ増幅器をVref増幅回路316内で使用してもよい。
【0031】
TIA回路314からのストリップ電流信号314a及び電圧基準増幅器316からの仮想接地レール316a(〜Vref/2)は、試験測定サイクルの種々の段階での必要性に応じてスケールアップされる。例示的な実施形態において、MC 300には、試験ストリップから感知された増幅信号の4つの回線が備わっており、分析物アッセイ中の試験ストリップの測定サイクルの異なる段階での必要性に応じて感度電流の増幅は変化する。
【0032】
一実施形態において、検査計10は、試験ストリップ80の第1の接触パッド47と第2の接触パッド43との間に、試験電圧及び/又は電流を印加することができる。ストリップ80が挿入されたことを検査計10が認識した時点で、検査計10のスイッチが入り、流体検出モードを開始する。一実施形態において、測定器は、ストリップ80を通って小電流(例えば、0.2〜1μA)を駆動するように試みる。試料が存在しない場合、抵抗は数メガオームを超えるので、電流を印加しようとするオペアンプの駆動電圧はレールに進む。試料が導入されると、抵抗は急激に低下し、駆動電圧がそれに続く。駆動電圧が所定の閾値未満に降下すると、試験手順が開始される。
【0033】
図5Aは、電極間に印加される電圧を示す。時間ゼロは、試料が最初にストリップを充填し始めたことを試料検出方法が検出した時刻とする。図5Aにおいて約1.3秒に示される正弦波成分は、図示の目的で正確なタイムスケールで描かれていないことに留意されたい。
【0034】
試料が試験ストリップチャンバ61の中で検出された後、ストリップ電極間の電圧は、ミリボルトの大きさで好適な電圧まで増大されて、一定時間、即ち、約1秒維持され、より高い電圧まで増大されて一定時間保持され、次に正弦波電圧をDC電圧の先端に一定時間印加し、次にDC電圧が更なる時間印加され、その後負電圧に反転されて一定時間保持される。次に、この電圧はストリップから切断される。この一連の印加電圧は、図5Bに示されるもののような電流トランジェントを生成する。
【0035】
図5Bにおいて、約0から約1秒までの電流信号(及びその後の電流試料)は、エラーチェックのため、かつ対照溶液試料を血液試料と区別するために使用され得る。約1秒から約5秒までの信号を分析して、グルコース結果を得る。この期間の信号は、様々な誤差に関しても分析される。約1.3秒から1.4秒までの信号を使用して、センサが完全に試料で充填されているか否かを検出する。1.3秒から1.32秒までの電流は、ここではトレース500として示されており、約150マイクロ秒間隔でサンプリングされて、十分な量の生理液が試験ストリップのチャンバ61を充填したか否かを判定する。
【0036】
十分な量かどうかをチェックする一実施形態では、静電容量測定を用いて、試験ストリップ80のチャンバ61の十分な分析物充填を推測する。静電容量の大きさは、試料流体で覆われた電極の面積に比例し得る。静電容量の大きさを測定した時点で、その値が閾値よりも大きく、したがって正確な測定のために十分な量の液体を試験ストリップが有する場合、グルコース濃度が出力され得る。しかしながら、その値が閾値以下である場合には、試験ストリップが有する液体の量が正確な測定のために不十分であることを示し、エラーメッセージが出力され得る。
【0037】
静電容量を測定するための1つの方法では、定数成分と振動成分とを有する試験電圧が試験ストリップに印加される。そのような場合、得られる試験電流は、以下により詳細に記載されるように、静電容量値を決定するために数学的に処理され得る。
【0038】
本出願人らは、電極層を備えるバイオセンサの試験チャンバ61は、表1に示されるような並列抵抗器及びコンデンサを有する回路の形態にモデリングされ得ると考える。
【0039】
【表1】
【0040】
表1のこのモデルにおいて、Rは、電流が遭遇する抵抗を表し、Cは、電極に電気的に結合された生理液と試薬との組み合わせから生じる静電容量を表す。チャンバの静電容量の測定を開始するために、チャンバの中に配置されたそれぞれの電極間に交流バイアス電圧を印加することができ、チャンバからの電流が測定される。チャンバ61の充填物は、一般に静電容量のみの測定値であると考えられるので、例えば、Rなどのあらゆる寄生抵抗を、静電容量のあらゆる決定又は計算に含めるべきではない。したがって、電流を測定又は検知する上で、あらゆる寄生抵抗は、測定電流に影響を与えると考えられる。しかしながら、本出願人らは、上記でモデリングされたようなチャンバを通る抵抗の利用又は知識を必要とせずに静電容量を得るための技術を発見した。この技術を更に説明するために、この技術の根底にある数学的基礎の短い説明を提供する。
【0041】
キルヒホッフの法則によると、表1の回路を通る合計電流(iT)は、抵抗器(iR)及びコンデンサ(iC)を流れる電流のほぼ合計である。交流電圧V(RMSとして測定)が印加されると、抵抗器電流(iR)は次の式1で表わすことができる。
【数1】
【0042】
コンデンサの電流(iC)は次の式2で表わすことができる。
【数2】
(式中、
jは、コンデンサ内の電流が電圧より約90度進んでいることを示す虚数演算子であり、
ωは、角周波数
【数3】
である(式中、fは、ヘルツ(Hz)単位で示した周波数である))。
【0043】
これら構成要素の概略は、表1のフェーザ図に示されている。フェーザ図において、Φは、出力と比べた場合の入力の位相角を表す。位相角Φは、次の三角関数によって決定される。
【数4】
【0044】
ピタゴラスの定理により、合計電流iTの2乗は次の式4のように計算される。
【数5】
【0045】
式4を再整理し、式3を代入すると、次の式5が得られる。
【数6】
【0046】
コンデンサの電流iCを解いて式2と組み合わせる。
【数7】
【0047】
Cを再整理し、ωを展開すると、静電容量は次の式7になる。
【数8】
【0048】
式7を単純化すると、次の式8が得られる。
【数9】
【0049】
式8は抵抗器電流に言及していないことがわかる。その結果、システムが、周波数f及び実効(「RMS」)振幅Vの交流電圧を駆動し、かつ合計電流iTをRMS値及び位相角Φとして測定する場合、試験チャンバ61の静電容量Cを、バイオセンサの試験チャンバの抵抗を測定する必要なく正確に計算することができる。バイオセンサのストリップの抵抗は測定が困難であり、5秒アッセイ時間にわたって変化するので、このことは大きな利点であると考えられる。抵抗は、所与の電気バイアス(電圧)でストリップを流れることができる電荷担体の数によって生じると考えられており、したがって反応依存性である。抵抗は、アッセイの1.3秒の時点で、10kΩから、ことによると100kΩまでのいずれかとなることが見込まれる。したがって、バイオセンサチャンバの抵抗、又は更にはセンサ抵抗器など測定回路の抵抗を測定する必要がないことによって、本出願人らの発明は、試験ストリップ全体を改善することに関して現況技術を前進させている。
【0050】
式8に基づいて静電容量Cを決定するための例示的な技術の実施は、図6A、図6B、図6C、図6D、図6E、及び図7に関連させて理解することができる。図5A及び図7の工程702に示されるように、約109HzのAC試験電圧(.±0.50mVピークトゥピーク)を、約1〜1.3秒の間に2サイクル、又は工程704で示されている少なくとも1サイクルの間印加することができる。好ましい実施形態において、第1のサイクルは調整パルスとして用いることができ、第2のサイクルは、静電容量を測定するために用いることができる。交流試験電圧は、例えば、ピークが約50ミリボルトの約109ヘルツの正弦波といった、好適な波形であることができる(図6C)。サンプリングは、例えば、図6Aに示される1サイクル当たり約64〜65といったように、1サイクル当たり好適な任意の試料量であり得る。したがって、各試料は、約5.6度の例示的な正弦波を示す。
【0051】
図6Aでは、システムは交流バイアスに直流電圧オフセットを加え、したがって、図6Aで測定された試料は、直流オフセットも有することになり、これは、出願人らの技術の一例に従って合計電流iTを測定するために、工程706及び708を介して除去されなければならない。
【0052】
この技術では、図6Aにおいて602で表わされる65個の試料全ての平均が工程706で得られ、これは試料の交流成分のゼロ電流に対する閾値を提供する。これを得ることの利点は、試料にわたるノイズが平均されることである。各試料ポイントに関し、工程708で平均値が各サンプリングされたポイントから減算され、これにより、ここでは図6Bに示されるように交流成分を分離する結果となる。したがって、工程710で全ての負値のRMS値が取られて、合計電流iTのほぼ正確な大きさが得られる。正値のRMS値をとることもできるが、本出願人らは、正値は、サイクル全体の第1象限及び第4象限にわたって分割されるのでまとまりがなく、したがって負値が好ましいと考えることを指摘しておく。DCオフセットを除去するために試料602を操作し終わった時点で、ここでは図6Bにおいて604で表わされるように、試料をプロットして時間経過に伴う電流の出力を示すことができる。
【0053】
位相角を決定するために、適切にプログラムされたシステム又はMCは、ここでは図6Cに示される発振入力電圧を発振出力電流と比較して、工程714で位相角を決定することができる。好ましい実施形態において、サンプリングされたデータ604を分析して、正電流と負電流の交点を判定する。サンプリングは離散的な数の試料に基づいているので、図6Eにおいて出力電流がゼロ電流ラインを超えるのが実質的にいつであるかを決定するために補間を用いることができ、ここでは、補間された交点は608で表わされている。ここで記載される実施形態では、位相角Φは、90度未満及び約87度である。精度を上げるために、第2の補間点610から約180度を減算して、この別の交点610で補間を行うことができる。これら2つの補間値は2〜3度以内でなければならず、精度を高めるために平均化されてもよい。
【0054】
位相角が得られたら、式8を用いて静電容量を計算することができる。しかしながら、実際には、トランスインピーダンス増幅器314及び利得増幅器の実装により、追加位相シフトがシステムに導入されていることが判っている。この追加位相シフトは、使用時にストリップなしでシステムの静電容量を測定することによって補償値
【数10】
を導入することによりオフセットされ得る。
【0055】
【数11】
【0056】
好ましい実施形態において、補償位相角
【数12】
は、約5〜約7度の範囲である。
【0057】
試験ストリップ80の静電容量を判定したら、2点較正を行って、静電容量値を、アナログ構成要素(例えば、抵抗器、コンデンサ、オペアンプ、スイッチ等)のあらゆる公差と無関係である値に正規化する。簡潔に述べると、並列抵抗が30kの550nFのコンデンサを測定入力にわたって設置し、静電容量を測定するように測定器に指示し、生成された値を記録する;並列抵抗が30kの800nFのコンデンサを測定入力にわたって設置し、静電容量を測定するように測定器に指示し、生成された値を記録する、ことによって2点較正を行う。これら2点は、この特定のハードウェアインスタンス(設計ではない)の測定性能の利得及びオフセットの指標を提供する。次に、測定誤差から傾斜及びオフセットを計算し、測定器のメモリに保存する。ここで測定器が較正される。
【0058】
ストリップが挿入されて試料が提供されると、静電容量が測定され、保存された傾斜及びオフセットが適用されて測定値を補正する。
【0059】
デバイスの較正の完了後、試験チャンバ61が試験流体で十分に充填されているか否かを判定するための評価が行われる。この評価は、良好に充填された試験ストリップの大きな試料から得た平均静電容量値の少なくとも65%〜85%である静電容量の大きさに基づくことができる。
【0060】
この例示的な技術のロバスト性を試験するために、本出願人らは、システムにノイズを意図的に導入して、参照並列R−C回路と比較した場合の誤差百分率を判定した。次の表2では、アナログ・デジタル変換器(「ADC」)ノイズカウント数が導入されたが、電流、位相角、及び静電容量に関する誤差は1%未満であった。
【0061】
【表2】
【0062】
例示的な技術を他の技術と比較して、本出願人らの技術の精度が高いことを確認する。例えば、図8Aにおいて、静電容量は、ストリップの試料から約350〜約800ナノファラッドの範囲内で測定される。完全に充填されたストリップは、対照溶液又は血液が使用されているか否かに応じて、600〜700nFの範囲の静電容量を有する。部分的に充填されたストリップは、当然ながらより低い静電容量を示す。対象実施形態で静電容量を測定して、参照並列R−C回路からのパーセント偏差を決定する。市販のLCRメータを使用して較正されたいくつかの「金製の」R−Cの組み合せを有することによって、パーセント誤差を計算する。こうしたR−Cの組み合せ(一般に誤差のないサンプル(Exemplars)であることが見出されており、したがって「金製」である)を、ストリップコネクタに順に提供し、システムに静電容量を読み取るように命令する。この試験を、システムの他のいくつかの試料を使用して繰り返し、測定技術の精度及び信頼性を判定する。基準曲線800は例示的な技術を示しており、基準データを基にした誤差率は、約350ナノファラッド〜約850ナノファラッドの範囲の静電容量にわたって3%未満である。これに対し、LifeScan Inc.(the Netherlands)から入手可能な既存の測定器システムにおける静電容量測定は、この範囲の静電容量にわたって、2%未満から10%超過に及ぶ誤差曲線806を示す。本出願人らに関連した静電容量測定技術802及び804は、既存の分析物測定システムによって設定された上方境界806と、例示的な技術によって設定された下方境界800との間に位置する。
【0063】
例示的な実施形態、方法、及びシステムが血糖ストリップに関して記載されてきたが、本明細書に記載される原理は、少なくとも2つの電極間に配置された試薬上の生理液を使用するあらゆる分析物測定ストリップにも同様に適用することができる。
【0064】
上述のように、本明細書に記載する様々なプロセスの工程を一般に実施するように、マイクロコントローラをプログラムすることができる。このマイクロコントローラは、例えば、グルコース測定器、インスリンペン、インスリンポンプ、サーバ、携帯電話、パーソナルコンピュータ、又は移動携帯型デバイスなどの特定のデバイスの一部であり得る。更に、本明細書に記載する様々な方法を用いて、例えば、C+、C++、若しくはC−Sharpなどの、例えば、C又はCの変形などの既製のソフトウェア開発ツールを用いて、ソフトウェアコードを生成することができる。しかしながら、これらの方法は、こうした方法をコードするための新しいソフトウェア言語の必要条件及び入手可能性に応じて、他のソフトウェア言語に変換することもできる。更に、本明細書に記載する様々な方法は、好適なソフトウェアコードに一旦変換されれば、好適なマイクロコントローラ又はコンピュータによって実行される際に、これらの方法において記載された工程をあらゆる他の必要な工程とともに実行するように動作する、任意のコンピュータ読み取り可能な記憶媒介物質として実施することができる。
【0065】
本発明を特定の変形例及び説明図に関して述べたが、当業者には本発明が上述された変形例又は図に限定されないことが認識されよう。更に、上述の方法及び工程が特定の順序で起こる特定の事象を示している場合、当業者には特定の工程の順序が変更可能であり、そうした変更は本発明の変形例に従うものである点が認識されよう。更に、こうした工程のうちのあるものは、上述のように順次行われるが、場合に応じて並行したプロセスで同時に行われてもよい。したがって、開示の趣旨又は本発明の同等物の範囲内にある本発明の変形が存在する範囲では、本「特許請求の範囲」がこうした変形例をも包含することが意図されるところである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバの中に配置された2つの電極を有し、かつマイクロコントローラに接続されたバイオセンサチャンバの静電容量を測定する方法であって、前記方法は、
前記バイオセンサチャンバの中で電気化学反応を開始することと、
所定周波数の発振電圧を前記チャンバに印加することと、
電流出力と前記チャンバからの前記発振電圧との間の位相角を決定することと、
前記チャンバの静電容量を、前記電流出力と前記位相角の正弦との積を、2πかける前記周波数及び前記電圧の積で割ったものに基づいて計算することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記計算が、静電容量を次の形の式:
【数1】
(式中、
C=静電容量、
iT=合計電流、
φ=合計電流と抵抗器電流との間の位相角、
f=周波数、及び
V=電圧である)で計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計算することが、
前記チャンバからの複数の電流出力を、前記周波数の1サイクルにわたってサンプリングすることと、
サンプリングされた電流出力の平均を得ることと、
前記複数の電流出力の各サンプリングされた電流から前記平均を減算することと、
前記減算から全ての負値の実効値を抽出して合計電流出力を提供することと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記計算することが、
前記サンプリングから、前記電流の、負値から正値への少なくとも1つの交点を決定することと、
前記電流の前記少なくとも1つの交点を近似補間して、前記電流が正値から負値に又は負値から正値に変化する第1の角度を決定することと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電流の前記少なくとも1つの交点を補間することが、
前記サンプリングからの別の交点を補間して、前記電流が正値から負値に又は負値から正値に変化する別の角度を決定することと、
前記別の角度から約180度を減算して第2の角度を提供することと、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記減算が、前記第1の角度及び前記第2の角度の平均を計算することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記計算することが、前記発振入力電流と前記出力電流との間の前記角度の差を前記位相角として決定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
分析物測定システムであって、
上部に試薬が配置された基材と、
試験チャンバ内の前記試薬に近接する少なくとも2つの電極と、
を含む分析物試験ストリップと、
前記2つの電極に接続するように配置されたストリップポートコネクタと、
電源と、
前記ストリップポートコネクタ及び前記電源に電気的に結合されたマイクロコントローラと、
を含む分析物測定器と、
を含み、前記マイクロコントローラは、
(a)前記バイオセンサチャンバ内で電気化学反応を開始し、所定周波数の発振電圧を前記チャンバに印加し、
(b)電流出力と前記チャンバからの前記発振電圧との間の位相角を決定し、かつ
(c)前記チャンバの静電容量を、前記電流出力と前記位相角の正弦との積を、2πかける前記周波数及び前記電圧の積で割ったものに基づいて計算する、ようにプログラムされている、分析物測定システム。
【請求項9】
分析物測定システムであって、
上部に試薬が配置された基材と、
試験チャンバ内の前記試薬に近接する少なくとも2つの電極と、
を含む分析物試験ストリップと、
前記2つの電極に接続するように配置されたストリップポートコネクタと、
電源と、
参照並列R−C回路と比較した場合の静電容量の範囲にわたる前記試験ストリップの静電容量測定の誤差百分率が約3%未満であるように、前記ストリップポートコネクタ及び前記電源に電気的に結合されたマイクロコントローラと、
を含む分析物測定器と、
を含む、分析物測定システム。
【請求項1】
チャンバの中に配置された2つの電極を有し、かつマイクロコントローラに接続されたバイオセンサチャンバの静電容量を測定する方法であって、前記方法は、
前記バイオセンサチャンバの中で電気化学反応を開始することと、
所定周波数の発振電圧を前記チャンバに印加することと、
電流出力と前記チャンバからの前記発振電圧との間の位相角を決定することと、
前記チャンバの静電容量を、前記電流出力と前記位相角の正弦との積を、2πかける前記周波数及び前記電圧の積で割ったものに基づいて計算することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記計算が、静電容量を次の形の式:
【数1】
(式中、
C=静電容量、
iT=合計電流、
φ=合計電流と抵抗器電流との間の位相角、
f=周波数、及び
V=電圧である)で計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計算することが、
前記チャンバからの複数の電流出力を、前記周波数の1サイクルにわたってサンプリングすることと、
サンプリングされた電流出力の平均を得ることと、
前記複数の電流出力の各サンプリングされた電流から前記平均を減算することと、
前記減算から全ての負値の実効値を抽出して合計電流出力を提供することと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記計算することが、
前記サンプリングから、前記電流の、負値から正値への少なくとも1つの交点を決定することと、
前記電流の前記少なくとも1つの交点を近似補間して、前記電流が正値から負値に又は負値から正値に変化する第1の角度を決定することと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電流の前記少なくとも1つの交点を補間することが、
前記サンプリングからの別の交点を補間して、前記電流が正値から負値に又は負値から正値に変化する別の角度を決定することと、
前記別の角度から約180度を減算して第2の角度を提供することと、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記減算が、前記第1の角度及び前記第2の角度の平均を計算することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記計算することが、前記発振入力電流と前記出力電流との間の前記角度の差を前記位相角として決定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
分析物測定システムであって、
上部に試薬が配置された基材と、
試験チャンバ内の前記試薬に近接する少なくとも2つの電極と、
を含む分析物試験ストリップと、
前記2つの電極に接続するように配置されたストリップポートコネクタと、
電源と、
前記ストリップポートコネクタ及び前記電源に電気的に結合されたマイクロコントローラと、
を含む分析物測定器と、
を含み、前記マイクロコントローラは、
(a)前記バイオセンサチャンバ内で電気化学反応を開始し、所定周波数の発振電圧を前記チャンバに印加し、
(b)電流出力と前記チャンバからの前記発振電圧との間の位相角を決定し、かつ
(c)前記チャンバの静電容量を、前記電流出力と前記位相角の正弦との積を、2πかける前記周波数及び前記電圧の積で割ったものに基づいて計算する、ようにプログラムされている、分析物測定システム。
【請求項9】
分析物測定システムであって、
上部に試薬が配置された基材と、
試験チャンバ内の前記試薬に近接する少なくとも2つの電極と、
を含む分析物試験ストリップと、
前記2つの電極に接続するように配置されたストリップポートコネクタと、
電源と、
参照並列R−C回路と比較した場合の静電容量の範囲にわたる前記試験ストリップの静電容量測定の誤差百分率が約3%未満であるように、前記ストリップポートコネクタ及び前記電源に電気的に結合されたマイクロコントローラと、
を含む分析物測定器と、
を含む、分析物測定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【公表番号】特表2013−520672(P2013−520672A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554409(P2012−554409)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000267
【国際公開番号】WO2011/104517
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(502328710)ライフスキャン・スコットランド・リミテッド (70)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000267
【国際公開番号】WO2011/104517
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(502328710)ライフスキャン・スコットランド・リミテッド (70)
【Fターム(参考)】
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