説明

電気化学的反応を行うための装置および方法

本発明は、電子センサーの大規模アレイ上において実行されている複数の分析反応への複数の試薬の送達および該反応の監視を最小のノイズ条件下において行うための装置および方法に関する。一局面において、本発明は、分析物または反応副生成物を含まない隣接センサーから測定された出力信号の平均を減算することにより、分析物または反応副生成物を感知する電子センサーからの出力信号の信号対ノイズ比を向上させる方法を提供する。他の局面において、本発明は、分析反応の対象となる分析物および/または粒子を閉じ込めるためのマイクロウェルアレイと一体化された電子センサーのアレイを提供し、かつ、センサー活性試薬を前記アレイ全体に送って、センサー応答時間と、分析物または粒子の有無とを関連付けることにより、分析物および/または粒子を含むマイクロウェルを特定する方法を提供する。分析物または粒子を含むマイクロウェルのこのような検出を、さらなるノイズ低減方法における一工程として利用することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許出願第12/474,897号および第12/475,311号(出願日:2009年5月29日)の一部継続出願である、米国特許出願第12/785,716号(出願日:2010年5月24日)の継続出願であり、これらの出願および米国特許仮出願第61/306,924号(出願日:2010年2月22日)による恩恵を主張する。本明細書中上記出願全ての全体を参照により援用する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的検出が魅力的である理由として、高感度、小サイズ、低コスト、高速応答、および微細加工技術との適合性がある(例えば、Hughesら、Science、254:74−80(1991);Mirら、Electrophoresis、30:3386−3397(2009);Trojanowicz、Anal.Chim.Acta、653:36−58(2009);Xuら、Talanta、80:8−18(2009)(非特許文献1〜4)など)。これらの特性に起因して、アンペロメトリー信号、電位差測定信号またはインピーダンス測定信号に基づいた多様なセンサーが開発され、化学用途、生化学用途および細胞用途のためのアレイ組み立てに用いられている(例えば、Yeowら、Sensors and ActuatorsB44:434−440(1997);Martinoiaら、Biosensors&Bioelectronics、16:1043−1050(2001);Hammondら、IEEE sensors J.、4:706−712(2004);Milgrewら、Sensors and Actuators B103:37−42(2004);Milgrewら、Sensors and Actuators B、111−112:347−353(2005);Hizawaら、Sensors and Actuators B、117:509−515(2006);Heerら、Biosensors and Bioelectronics、22:2546−2553(2007);Barbaraら、Sensors and Actuators B、118:41−46(2006);Andersonら、Sensors and Actuators B、129:79−86(2008)(非特許文献5〜13);Rothbergら、米国特許公開第2009/0127589号;Rothbergら、英国特許出願第GB24611127号(特許文献1および2)など)。詳細には、これらの開発のうちいくつかにおいては、アレイに閉じ込められた大規模な複数の分析物上における複数の反応段階を監視するための、電気化学的センサーの大規模アレイが用いられている(例えば、Andersonら(上記);Rothbergら(上記)など)。このようなシステムにおいては典型的には、閉じ込め領域(例えば、マイクロウェルまたは反応チャンバ)のアレイに分析物がランダムに分配され、流体工学システムにより試薬がこのような領域へと送達される。前記流体工学システムは、センサーアレイを含むフローセルを通じて試薬の流れを方向付ける。前記マイクロウェルそれぞれと関連付けられた1つ以上の電子センサーにより、内部において反応が発生しているマイクロウェルと、内部において反応が発生していない空ウェルとを監視することができる。
【0003】
このようなシステムにおいては、関連し合う多数の現象が発生するため、特に低信号条件下において、高感度測定が困難になる。このような現象を挙げると、電気センサーに対する不安定な基準電圧、分析物が含まれる閉じ込め領域がわからないこと、アレイの異なる領域に閉じ込められた分析物へのフローストリームから送達される試薬量の変動、連続的に送達される試薬が混入される可能性、機器温度の変化、流体ポテンシャルに影響を与え得る流体漏洩、外部からの電気干渉(例えば、60Hzのノイズ、携帯電話)などがあり、これらの要素全てが、収集された信号の質に影響を与える。その上、特定の用途においては、使用される特定の試薬に関連してさらなる問題がある場合がある(例えば、測定されている分析物に用いられるセンサーの感度、妨害化合物の有無)。
【0004】
上記を鑑みると、現行のアプローチの欠陥を解消する、多数の分析物に関する多試薬電気化学的反応を並行して行うことが可能なシステムがあれば、有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】Rothbergら、米国特許公開第2009/0127589号
【特許文献2】Rothbergら、英国特許出願第GB24611127号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hughesら、Science、254:74−80(1991)
【非特許文献2】Mirら、Electrophoresis、30:3386−3397(2009)
【非特許文献3】Trojanowicz、Anal.Chim.Acta、653:36−58(2009)
【非特許文献4】Xuら、Talanta、80:8−18(2009)
【非特許文献5】Yeowら、Sensors and ActuatorsB44:434−440(1997)
【非特許文献6】Martinoiaら、Biosensors&Bioelectronics、16:1043−1050(2001)
【非特許文献7】Hammondら、IEEE sensors J.、4:706−712(2004)
【非特許文献8】Milgrewら、Sensors and Actuators B103:37−42(2004)
【非特許文献9】Milgrewら、Sensors and Actuators B、111−112:347−353(2005)
【非特許文献10】Hizawaら、Sensors and Actuators B、117:509−515(2006)
【非特許文献11】Heerら、Biosensors and Bioelectronics、22:2546−2553(2007)
【非特許文献12】Barbaraら、Sensors and Actuators B、118:41−46(2006)
【非特許文献13】Andersonら、Sensors and Actuators B、129:79−86(2008)
【発明の概要】
【0007】
本発明は、電子センサーの大規模アレイ上で実行されているかまたは前記大規模アレイによって監視されている複数の反応へ複数の試薬を送達するための装置および方法に関する。一局面において、本発明は、反応条件の変化に応じてこのような電子センサーが生成する出力信号のノイズを低減するための装置および方法を提供する。本発明は、複数の実行様態および用途において例示される。そのうちいくつかについて、下記に概略を示し、本明細書全体中に記載する。
【0008】
一局面において、本発明は、多段階電気化学的反応を行うための装置を含む。前記装置において、反応フローチャンバを通じて、このような多段階電気化学的反応を監視する電子センサーへ安定した基準電圧が提供される。一実施形態において、前記装置は、以下を含む:(a)1つ以上の反応容器であって、前記容器はそれぞれ、前記反応容器中の生成物を監視する電子センサーに接続され、前記電子センサーは、生成物の濃度または存在に関連する出力信号を生成し、前記出力信号は、基準電圧に依存する、反応容器と、(b)複数の電解質を一度に1つずつ前記反応容器へと連続して送達するための流体工学システムと、(c)前記複数のうち選択された電解質と接触する基準電極であって、前記基準電極は、前記反応チャンバと流体連通し、前記選択されていない電解質のいずれとも前記基準電極を接触させることなく前記基準電圧を各電子センサーへと提供する、基準電極。下記により詳細に説明するように、一実施形態において、前記1つ以上の反応容器は、chemFETセンサーのアレイ上に配置されたマイクロウェルのアレイであり、前記chemFETセンサーのアレイは、前記マイクロウェルと流体連通するフローセル内に配置される。
【0009】
別の局面において、本発明は、フローティングゲートイオン感受性電界効果トランジスタを含むセンサーアレイを含む装置を含む。前記フローティングゲートイオン感受性電界効果トランジスタ上にフローセルによって流路が規定され、これにより、前記流路外側にある前記アレイのセンサーは、そのフローティングゲートを電気的に接続することにより、不活性化される。一局面において、このような装置は、以下を含む。(a)回路支持基板内に形成された複数のセンサーを含むセンサーアレイであって、前記アレイの各センサーは、フローティングゲートを有する化学感受性電界効果トランジスタ(chemFET)と、マイクロウェルアレイとを含み、前記chemFETは、前記chemFETの近傍の1つ以上の反応生成物の濃度または存在に関連する少なくとも1つの電気信号を生成するように構成され、前記マイクロウェルアレイは、各マイクロウェルが少なくとも1つのセンサー上に配置されるように、前記回路支持基板上に配置され、1つ以上のマイクロウェルが分析物を含む、センサーアレイと、(b)前記マイクロウェルアレイへの試薬送達のための流体工学システムであって、前記流体工学システムはフローセルを含み、前記フローセルは、入口、出口およびフローチャンバを有し、前記フローチャンバは、試薬を前記入口から前記出口へと通過させるための流路を規定し、前記フローチャンバは、前記流路内の前記マイクロウェルの開口部を介して横方向に試薬を送達するように構成され、前記流路外側にある前記センサーのフローティングゲートは、電気的に接続され、共通電圧で保持される。
【0010】
別の局面において、本発明は、複数のマイクロウェルに分配された分析物を位置確認するための方法を含む。前記方法は、以下の段階を含む。(a)センサーのアレイ上に配置された複数のマイクロウェルを提供する段階であって、各マイクロウェルは、フローチャンバと流体連通する開口部を有し、かつ、少なくとも1つの分析物を保持可能であり、各マイクロウェルは、少なくとも1つのセンサー上に配置され、前記少なくとも1つのセンサーは、前記少なくとも1つのセンサーの近傍に試薬が有ることに応答して、少なくとも1つの出力信号を提供するように構成される、段階と、(b)前記フローチャンバ中の試薬を、センサーが応答して第1の出力信号を生成する第1の試薬から、センサーが応答して第2の出力信号を生成する第2の試薬へと変更する段階と、(c)前記変更する段階に応答したセンサーからの第2の出力信号の時間遅延と、対応するマイクロウェル内の分析物の存在とを関連付ける段階。
【0011】
関連する局面において、本発明は、回路支持基板内に形成された複数のセンサーを含むセンサーアレイと、マイクロウェルアレイとを含む製造物をさらに含む。前記アレイの各センサーは、前記アレイの各センサーの近傍にある1つ以上の所定の化学種の濃度または存在に関連する少なくとも1つの電気信号を生成するように構成される。その各マイクロウェルが前記マイクロウェルアレイの表面上に開口部を有しかつ少なくとも1つのセンサー上に配置されるように、前記マイクロウェルアレイが前記回路支持基板上に配置される。対応するセンサーによって生成される出力信号によって決定可能な位置において、複数の分析物がランダムに前記マイクロウェルに分配される。一実施形態において、このような分析物それぞれは、核酸フラグメント(例えば、ゲノムDNAフラグメント、cDNAフラグメントなど)のクローン集団が付着した粒子を含む。
【0012】
別の局面において、本発明は、反応および/またはマイクロウェルアレイ内に配置される分析物に関連するセンサーアレイからの出力信号のノイズを低減する方法を提供する。このような方法は、以下の段階を含む。(a)前記マイクロウェルの一部に分析物が含まれるように、分析物を前記マイクロウェルアレイ上に配置する段階と、(b)分析物または反応副生成物を含むマイクロウェルによって生成された出力信号を入手する段階と、(c)このような出力信号から、分析物または反応副生成物を含まない隣接マイクロウェルからの出力信号の平均を減算する段階。
【0013】
本発明の上記において特徴付けられた局面および他の局面は、複数の例示される実行様態および用途において例示され、そのうちのいくつかを添付の図面中に示し、添付の特許請求の範囲において特徴付ける。しかし、上記要旨は、本発明の各例示的実施形態または各実行様態を記述することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明の装置の一実施形態の要素を示す。
【図1B】流体間基準電極インターフェースの第1の例の断面を示す。基準電極は、フローセルからの試薬経路の下流に導入される。
【図1C】図1Bの流体間インターフェースを達成するように装置を構築するための2つの様態例を示す。
【図1D】図1Bの流体間インターフェースを達成するように装置を構築するための2つの様態例を示す。
【図1E】流体間基準電極インターフェースの第2の例の断面を示す。フローセルから基準電極が試薬経路の上流に導入される。
【図2A】フローセルの一部を外部基準電極と共に示し、例示的電子センサーを拡大している。
【図2B】異なる試薬間での流頭が理想的に均一である、マイクロウェルアレイの一部にわたる前記2種類の連続した試薬の動きを示す。
【図2C】センサー活性試薬の前進を粒子がどのように遅延させるかを示し、それによって出力信号時間遅延が生じ、これを用いて前記マイクロウェル中の粒子の存在を決定することができる。
【図2D】粒子有りおよび粒子無しのマイクロウェルからの出力信号データの比較を示す。
【図3】図3Aは、斜向かいに対向する入口および出口を有するフローチャンバを通じた流路を示す図である。図3Bは、フローティングゲートchemFETのセンサーアレイの作製に用いられるマスクの上面図であり、斜流領域の外部のchemFETのフローティングゲートを製造プロセスにおいて電気的に接続することで、前記斜流領域の外部の不使用センサーからのノイズ寄与をゼロまたは最小限にする。図3Cは、大規模マイクロウェルアレイ内の分析物沈殿の密度を示す表示である。この密度は、階段関数pHの変化に応じたセンサー出力信号の変化によって決定される。
【図4A】マイクロウェルセンサーアレイチップと統合されたフローセル構成要素の異なる図を示す。
【図4B】マイクロウェルセンサーアレイチップと統合されたフローセル構成要素の異なる図を示す。
【図4C】マイクロウェルセンサーアレイチップと統合されたフローセル構成要素の異なる図を示す。
【図4D】マイクロウェルセンサーアレイチップと統合されたフローセル構成要素の異なる図を示す。
【図4E】フローセルと、マイクロウェルセンサーチップと統合された2つのフローチャンバとを示す。
【図5】図5Aは、マイクロウェルアレイのマイクロウェル内にランダムに配置された分析物を示す。図5Bは、選択されたマイクロウェルの近傍において空マイクロウェルを特定するための異なる方法を示す。図5Cは、選択されたマイクロウェルの近傍において空マイクロウェルを特定するための異なる方法を示す。
【図6A】選択されたマイクロウェルのセンサーの出力信号中のノイズを低減するために、ローカルマイクロウェルからの信号を用いる様子を示す。
【図6B】選択されたマイクロウェルのセンサーの出力信号中のノイズを低減するために、ローカルマイクロウェルからの信号を用いる様子を示す。
【図6C】選択されたマイクロウェルのセンサーの出力信号中のノイズを低減するために、ローカルマイクロウェルからの信号を用いる様子を示す。
【図6D】選択されたマイクロウェルのセンサーの出力信号中のノイズを低減するために、ローカルマイクロウェルからの信号を用いる様子を示す。
【図6E】選択されたマイクロウェルのセンサーの出力信号中のノイズを低減するために、ローカルマイクロウェルからの信号を用いる様子を示す。
【図6F】選択されたマイクロウェルのセンサーの出力信号中のノイズを低減するために、ローカルマイクロウェルからの信号を用いる様子を示す。
【図7A】pHベースのDNA配列決定用に適合された、本発明の装置の構成要素を示す。
【図7B】pHベースのDNA配列決定用に適合された、本発明の装置の構成要素を示す。
【図7C】pHベースのDNA配列決定用に適合された、本発明の装置の構成要素を示す。
【図8A】DNA配列決定のために異なる試薬をフローセルに連続的に送達するための流体回路を示す。基準電極が、洗浄液のみと連続流体接触している。
【図8B】DNA配列決定のために異なる試薬をフローセルに連続的に送達するための流体回路を示す。基準電極が、洗浄液のみと連続流体接触している。
【図8C】DNA配列決定のために異なる試薬をフローセルに連続的に送達するための流体回路を示す。基準電極が、洗浄液のみと連続流体接触している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は多様な改変および代替的形態が可能であるが、本発明の詳細について、添付の図面中に例示的に示し、以下に詳細に説明する。しかし、説明の意図は、本発明を特定の記載の実施形態に限定することではないことが理解されるべきである。すなわち、説明の意図は、本発明の意図および範囲内に収まる改変、均等物および代替例全てを網羅することである。例えば、前記装置およびアレイのマイクロエレクトロニクス部分は、例示目的のため、CMOS技術によって実行される。しかし、本開示はこの点に限定されることを意図しておらず、本明細書中に記載のシステムのマイクロエレクトロニクス部分の多様な局面の実行において、他の半導体ベースの技術も利用可能であることが理解されるべきである。本発明のアレイの作製についての指針は、集積回路設計および製造および微細精密加工についての多数の利用可能な文献および論文において記載されている(例を非限定的に挙げると、Allenら、CMOS Analog Circuit Design(Oxford University Press、第2版、2002);Levinson、Principles of Lithography、第2版(SPIE Press、2005);DoeringおよびNishi、Editors、Handbook of Semiconductor Manufacturing Technology、第2版(CRCPress、2007);Baker、CMOS Circuit Design,Layout,and Simulation(IEEEPress、Wiley−Interscience、2008);Veendrick、Deep−SubmicronCMOSIC(Kluwer−Deventer、1998);Cao、Nanostrucutres&Nanomaterials(Imperial College Press、2004)などがある)。同文献の関連部分を参照により援用する。同様に、本発明の電気化学的測定の実行のための指針についても、同分野に関する多数の利用可能な文献および論文において記載されている(例を非限定的に挙げると、Sawyerら、Electrochemistry for Chemists、第2版(Wiley Interscience、1995);Bard and Faulkner、Electrochemical Methods:Fundamentals and Applications、第2版(Wiley、2000)などがある)。同文献の関連部分を参照により援用する。
【0016】
一局面において、本発明は、複数の多段階反応の実行および監視を電子センサーによって行う装置および方法に関する。前記多段階反応は、例えばDNA配列決定反応、DNA合成反応などにおけるように周期的であり得、1つ以上の段階を周期的に繰り返す。あるいは、前記多段階反応は、酵素ラベルを用いたサンドイッチアッセイの場合などのように非周期的である場合もある。多段階反応は、生体物質(例えば、生体細胞または細胞サンプル)の存在に起因して発生することもあり、この場合、一連の試薬(例えば、薬剤候補分子など)への曝露に応じた反応(例えば、代謝産物の有無)を検出する。好適には、本発明の電子センサーは、センサーアレイに一体化される。前記センサーアレイは、前記アレイの表面上またはその近傍において発生する個々の反応の感知に適している。一実施形態において、反応閉じ込め領域のアレイは、このようなセンサーアレイと一体化される。反応閉じ込め領域のアレイは、マイクロウェルアレイの形態をとってもよいし、あるいは、従来のマイクロまたはナノファブリケーション技術(例えば、Rothbergらの米国特許公開US2009/0127589およびRothbergらの英国特許出願GB24611127に記載のもの)によって作製された反応チャンバアレイの形態をとってもよい。一実施形態において、このようなアレイ内の各マイクロウェルまたは反応チャンバは、感知関係にある少なくとも1つのセンサーを有し、これにより、前記マイクロウェルまたは反応チャンバ内における反応の1つ以上の特性を検出または測定することが可能になる。典型的には、本発明の電子センサーは、直接的または間接的に(例えば、結合化合物またはラベルの利用により)反応副生成物を測定する。反応副生成物の例を非限定的に挙げると、反応に起因する化学種または反応に起因する物理的変化(例えば、温度の増減)がある(例えば、Rothbergら(上記の米国特許公開および英国特許公開に記載のもの)。好適には、本発明の電子センサーは、反応副生成物の存在、濃度または量の変化を出力信号へと変換し、前記変化は、電圧レベルまたは電流レベルの変化であり得、次にこの変化を処理することで、反応に関する情報を抽出することができる。前記アレイの電子センサーまたはこのようなセンサーのサブセットを用いて、反応物、インジケータ分子または他の試薬(例えば、分析物を含むマイクロウェルを特定するための試薬(以下により詳細に説明する))の存在または濃度を監視することも可能である。本発明と共に用いられるセンサーの構造および/または設計は、参照により援用される以下の文献によって例示されるように、大幅に異なり得る(Rothbergら、米国特許公開US2009/0127589;Rothbergら、英国特許出願GB24611127;Barbaraら、米国特許第7,535,232号;Sawadaら、米国特許第7,049,645号;Kamahoriら、米国特許公開第2007/0059741号;Miyaharaら、米国特許公開第2008/0286767号および第2008/0286762号;O'uchi、米国特許公開第2006/0147983号;Osakaら、米国特許公開第2007/0207471号;Esfandyarpourら、米国特許公開第2008/0166727号など)。好適な実施形態において、前記アレイのセンサーは、少なくとも1つの化学感受性電界効果トランジスタを含む。前記少なくとも1つの化学感受性電界効果トランジスタは、前記少なくとも1つの化学感受性電界効果トランジスタの近傍における化学反応の性質に関連する少なくとも1つの出力信号を生成するように構成される。このような特性を挙げると、反応物または生成物の濃度(または濃度変化)あるいは物理的性質(例えば、温度)の値(またはこのような値の変化)がある。電子センサーアレイおよびマイクロウェルアレイの望ましい構成および物理的特性について、以下により詳細に説明する。このようなセンサーアレイの一実施形態において、前記センサーのchemFETは、フローティングゲートを含む。本発明の別の実施形態において、前記アレイの電子センサーそれぞれから生成される出力信号は、マイクロウェルアレイと流体接触する基準電極の電圧値に部分的に依存する。特定の実施形態において、単一の基準電極を設けることで、各センサーが同一基準電圧と共に出力信号を生成する。
【0017】
本発明の一実施形態の構成要素を図1A中に図示する。フローセルおよびセンサーアレイ(100)は、反応閉じ込め領域のアレイ(これは、マイクロウェルアレイを含み得る)を含む。前記アレイは、センサーアレイと動作可能に関連付けられ、これにより、例えば、各マイクロウェルは、対象となる分析物または反応性質の検出に適したセンサーを有する。好適には、以下により詳細に説明するように、マイクロウェルアレイが前記センサーアレイと一体化されることで、単一のチップが得られる。フローセルは、前記マイクロウェルアレイ全体にわたる経路および試薬の流量を制御するための多様な設計を持ち得る。いくつかの実施形態において、フローセルは、マイクロ流体工学デバイスである。すなわち、フローセルは、さらなる流体経路、チャンバなどを含むようにマイクロマシーニング技術または精密成形によって製造することが可能である。一局面において、フローセルは、入口(102)と、出口(103)と、マイクロウェルアレイ(107)を介した試薬の流路を規定するフローチャンバ(105)とを含む。前記フローセルの実施形態について、以下により詳細に説明する。フローセルおよびセンサーアレイ(100)から出てきた試薬は、廃棄物コンテナ(106)内に廃棄される。本発明によれば、本装置の1つの機能とは、異なる試薬をフローセルおよびセンサーアレイ(100)へと所定の順序で所定の継続時間でかつ所定の流量で送達すること、ならびに、前記マイクロウェル内の物理的パラメータおよび/または化学パラメータを測定することである。前記パラメータから、前記マイクロウェル内において発生している反応の状態に関する状態(または空ウェルの場合は、フローセル内の物理的環境および/または化学環境に関する情報)を得ることができる。この目的のため、流体工学コントローラ(118)は、従来の機器制御ソフトウェア(例えば、LabView(National Instruments、Austin、TX))により、複数の試薬(114)への駆動力および弁(例えば、112および116)の動作をライン(120および122)毎に制御する。これらの試薬は、ポンプ、ガス圧または他の従来の方法により、流体経路、弁およびフローセルを通じて駆動することができる。フローセルおよびセンサーアレイ(100)の上流に単一の基準電極(108)が設けられた実施形態において、好適には、多段階反応全体を通じて単一の流体または試薬を基準電極(108)と接触させる。このような接触は、図1A中に示す構成により、達成される。図1A中に示す構成において、試薬1〜K(114)を通路(109)を通じてフローセル(105)へと送る。これらの試薬が流れている間は弁(112)を閉めておくことで、通路(109)内への洗浄液の流入を回避する。洗浄液の流れが停止しているにもかかわらず、基準電極、通路(109)およびセンサーアレイ(107)間の連続した流体連通および電気的連絡が残っている。最大で試薬1〜Kが通路(109)内を通って流れると通路(111)内に拡散するが、基準電極(108)と、通路(109)および(111)間の接合部との間の距離を、共通通路(109)内を流れる前記試薬がほとんどまたは全く基準電極(108)に到達しないように選択する。図1Aおよび他の図において、電極(例えば、基準電極108)を流体通路(例えば、111)と同心の円筒形として図示しているが、基準電極(例えば、(108))は多様な異なる形状にしてもよい。例えば、基準電極(例えば、(108))は、(111)の内腔に挿入されたワイヤであってもよい。一局面において、基準電極(108)は、通路(112)の一部を構成する。通路(112)は、導電性材料(例えば、ステンレス鋼、金など)で構成される。好適には、前記材料は、前記材料と接触している試薬に対して不活性である。一実施形態において、基準電極(108)は、通路(112)の一部を形成している導電性材料によって構成された管である。添付の図面中、電極が流路と同心の円筒形として図示されている場合、当該図面要素は上記したような多様な構成の電極を含むことを意図しており、流路の一部を封入している導電性材料製管としての好適な構成を用いている。
【0018】
基準電圧の値は、電極と、前記電極が接触している溶液との間のインターフェースに依存する。(例えば)様々なヌクレオシド三リン酸の溶液に起因して、基準電圧が変化し、その結果センサーの出力信号に望ましくない変化が発生することが観察および理解されている。洗浄段階を多数用いる多段階反応の場合、図1Aに示すように、洗浄液(110)は、基準電極(108)と連続接触する試薬として選択され得る(すなわち、前記洗浄液は、「選択された電解質」または「選択された試薬」であり、dNTP試薬は、「選択されていない電解質」または「選択されていない試薬」である。本明細書中、これらの用語を同様に用いる)。以下にさらに説明するように、特定のDNA配列決定方法においては、ヌクレオシド三リン酸の導入後に毎回洗浄が行われる。そのため、このような方法においては、洗浄液は好適には、基準電極と連続接触する。このような接触は、選択された電解質(例えば、洗浄液)を保持するリザーバを設けることにより、得ることができる。このリザーバは、電解質を反応容器へと送達するように、分岐通路(例えば、111)によって共通通路(例えば、109)へと接続される。一局面において、前記分岐通路は、前記リザーバ(例えば、110)と、前記共通通路の接合部との間に設けられた弁を有する。前記基準電極は、前記反応容器と流体連通しかつ前記弁(例えば、112)が閉口され前記分岐通路内の流体が静止状態であり、選択されていない電解質が前記基準電極と実質的に接触しないように、前記弁と前記接合部との間の前記分岐通路内に配置される。選択されていない電解質の前記分岐通路内への移動は、拡散のみによって発生する。そのため、前記基準電極を前記接合部から十分に離隔位置に配置することができ、これにより、選択された電解質が静止状態である間は、選択されていない電解質をほとんどまたは全く前記基準電極に到達しないようにすることが可能になる。
【0019】
本実施形態のさらなる構成要素として、アレイコントローラ(124)がある。アレイコントローラ(124)は、バイアス電圧およびタイミング信号および制御信号を前記センサーアレイに提供する(ただし、このような構成要素が前記センサーアレイと一体化されていない場合)。アレイコントローラ(124)はまた、出力信号の収集および/または処理を行う。フローセルおよびセンサーアレイ(100)からの情報ならびに機器設定および制御情報を、ユーザインターフェース(128)を通じて表示および入力することができる。いくつかの実施形態(例えば、核酸配列決定)において、反応が発生し、既知のかつ好適な所定の温度において測定が行われるように、フローセルおよびセンサーアレイ(100)の温度を制御する。このような温度は、従来の温度制御デバイス(例えば、ペルチェデバイスなど)により、制御することが可能である。一局面において、温度は、前記フローセル内を流れる試薬の温度を制御することにより、簡便に制御される。アレイ内の温度差または温度変動に起因する出力信号中のノイズは、Rothbergら(上記の特許出願公開)に記載のように、前記アレイ内の温度基準センサーによって記録することができる。その後、従来の信号処理技術により、このようなノイズを前記出力信号から減算することができる。
【0020】
図2Aは、フローセル(200)の拡大断面図であり、フローチャンバの部分(206)を示し、試薬フロー(208)がマイクロウェルアレイ(202)の表面を通ってマイクロウェルの開口端へと移動している。好適には、マイクロウェルアレイ(202)およびセンサーアレイ(205)は、フローセル(200)の底壁部または床部を形成する一体ユニットを共に形成する。一実施形態において、基準電極(204)は、フローチャンバ(206)へと流体接続される。マイクロウェル(201)およびセンサー(214)を拡大図中に示す。マイクロウェル(201)は、以下に概要を述べるような従来の微細加工技術により形成可能である。マイクロウェルの容積、形状、アスペクト比(例えば、ベース幅対ウェル深さ比)などは、特定の用途(例えば、発生する反応の性質、試薬、副生成物、およびラベリング技術(ただし、用いる場合))に依存する設計選択事項である。センサー(214)はchemFETであり、フローティングゲート(218)はセンサープレート(220)を有し、センサープレート(220)は、保護層(216)によってマイクロウェル内部から分離される。センサー(214)は、センサープレート(220)に対向する保護層(216)上に存在する電荷(224)の量に主に応答する(かつ前記量に関連して出力信号を生成する)。電荷(224)の変化に起因して、FETのソース(221)とドレイン(222)との間の電流変化が発生する。この電流変化を直接用いて電流ベースの出力信号を得てもよいし、あるいは、この電流変化をさらなる回路と共に間接的に用いて電圧出力信号を得てもよい。反応物、洗浄液および他の試薬は、主に拡散(240)により、フローチャンバ(206)からマイクロウェル内へと移動する。
【0021】
典型的には、マイクロウェル(202)内において行われる反応は、対象分析物の特性または性質を特定または決定するための分析反応である。このような反応から、副生成物が直接的または間接的に発生し、センサープレート(220)に隣接する電荷量に影響を与える。(例えば、対象分析物との結合後にセンサーに影響を与える副生成物キレート剤または他の結合化合物が用いられた場合、または、ラベリング部分、例えば結合イベントの結果として第2の副生成物を生成し得る、酵素が用いられた場合などに、間接的検出が起こる)。このような副生成物が少量発生する場合または高速崩壊する場合または他の成分と反応した場合、同一の分析物の複数のコピーをマイクロウェル(201)内において同時に分析して、最終的に発生する出力信号を増加させることができる。一実施形態において、マイクロウェル内への沈降前または後に、分析物の複数のコピーを固相担体(212)に付着させることができる。固相担体(212)は、微粒子、超微粒子、ビーズ、ゲルなどを含む固体および多孔体などを含み得る。核酸分析物について、ローリングサークル型増幅(RCA)、指数RCAなどの技術により、複数の接続されたコピーを得て、固体担体を必要とすることなくアンプリコンを得ることができる。
【0022】
上記したように、一局面において、本発明のフローセルは、試薬を、マイクロウェルアレイを横切る層流として横方向に移動させる。流量は、実行されている反応の性質、フローチャンバおよびマイクロウェルアレイのジオメトリおよびサイズなどに依存する設計選択事項である。しかし、一般的には、異なる試薬が連続的にこれらのマイクロウェルへと送達される場合、フローセルは、各新規試薬フローを、1つの試薬から別の試薬への切り換えの際に前記フローチャンバを横切るように均一な流頭で送達する。すなわち、フローセル設計および試薬流量を選択する際、1つの試薬後に別の試薬が追随する際にこれらの連続する流体の境界において混合がほとんどまたは全く発生しないように、選択を行う。図2Bは、マイクロウェルアレイの部分(234)を移動している2つの試薬間の均一な流頭を示す。「均一な流頭」とは、連続する試薬(例えば、試薬1(232)および試薬2(230))がマイクロアレイを横切って移動している際に両者間の混合がほとんどまたは全く発生せず、これにより、試薬1(232)と試薬2(230)との間の境界(236)がマイクロアレイを横切って移動する際に前記境界が狭く保持されることを意味する。このような境界は、フローチャンバの対向する端部にある入口および出口を有するフローセルに対して直線状であってもよいし、あるいは、このような境界は、中央入口(または出口)および周辺出口(または入口)を有するフローセルに対して曲線状であってもよい。
【0023】
電子センサーアレイのための基準電極
流体−電極インターフェースは、基準電位が流体内へと伝えられる様態に影響を与える。すなわち、流体と電極との間のインターフェース電位は、流体の組成(これは、若干乱流状でありかつ不均質であり得る)と共に変動し、これによって、(同じく
時間および恐らくは位置と共に変動する)バルク流体の電位において電圧オフセットが発生する。基準電極の位置を流体組成の変化から実質的に隔離することにより、大幅に安定した基準電位を達成することができる。これは、一定組成の導電性溶液(以下、「電極溶液」または「選択された電解質」)を電極の表面の少なくとも一部に導入し、フローセル中の変化する流体と電極が直接接触しないように電極を配置するかまたは(電極ではなく)電極溶液をフローセル中の流体と電気的に接触させるように電極を配置することにより、達成することが可能である。その結果、基準電位がフローセル溶液(これは、試薬または洗浄液または他の溶液である)へと伝導され、この基準電位は、フローセル溶液内への電極の直接挿入によって得られる基準電位よりもずっと安定する。この配置構成のことを、液体間基準電極インターフェースまたは流体間基準電極インターフェースと呼ぶ。流体間インターフェースは、フローセルから下流において発生し得、(図1A中に示すように)フローセルから上流において発生し得、あるいはフローセル中において発生し得る。このような代替的実施形態の例を図1B〜図1Eに示す。
【0024】
先ず図1Bを参照して、フローセルからの下流において流体間インターフェースが発生している実施形態が図示されている。この例において、フローセル装置131は、上記のように、チップ132上に取り付けられる。チップ132は、センサーアレイ(図示せず)を含む。前記フローセル装置は、入口ポート133および出口ポート134を含む。すなわち、これらの試薬流体は、導管134を介してポート133内へと導入された後、ポート134から出て行く。流体「Tee」コネクタ137の第1のポート136は、フローセルから出てきた流体を受容するように、従来の接続具を介してフローセル出口ポート134へと接続される。流体密封接続具139を介して、基準電極(例えば、中空の導電管138)がTeeコネクタの別のポート内へと送られる。基準電極は、基準電位ソース140へと接続される。適切な電極溶液141は、電極管の中央ボア内へと流れる。
【0025】
2つの動作モードが可能である。第1のモードによれば、フローセルから流出した流体からの逆流または拡散を回避するだけの十分に高い流速で電極溶液を流すことができる。第2のモードによれば、電極溶液が電極中に充填され、フローセルからの出口フローと接触したら、弁(図示せず)を閉口することで、前記電極溶液がそれ以上電極内に流入しないようにすることができ、かつ、前記電極溶液は非圧縮性液体であるため、前記電極に流入するまたはそこから流出する流れは実質的に発生せず、さらに前記流体間インターフェースは完全なまま保持される。このような状態は、もちろん、泡および他の圧縮性構成要素が無い場合を前提とする。金属−流体インターフェースの代わりに流体間インターフェースを用いるためには、電極138の先端部142を前記Teeコネクタ内の、フローセルから流出する流体の手前に配置し、これを電極そのものではなく、(143において示す)フローセルからの出口フローとぶつかり、前記電極からの基準電位を前記フローセルから出てきた試薬溶液へと伝える、「電極溶液」とする。これら2つの流体ストリームは、Teeコネクタ内において143において相互作用し、前記電極溶液が流れている場合、前記電極溶液は、前記Teeコネクタの第3のポート144から廃棄流体フローとして前記試薬フローと共に廃棄用に流出する。このアプローチにより、電極表面におけるインターフェース電位変化がゼロになる。安定した基準電位を基準電極からフローセルへと伝達する流体間インターフェースにより、多様な代替的実施形態が可能となる。
【0026】
図1Cに示す1つの代替例において、基準接合部(すなわち、流体間インターフェース)をフローセルを形成する部材の構造内さらにはセンサーチップ自身の内部へと移動させることができ、かつ、前記電極溶液が前記フローセル内に入ることはない。例えば、フローチャンバそのものの外部にあるフローセルアセンブリ内にマニホルド151を形成することができる。このフローチャンバは、電極溶液を受容する入口152と、前記フローセルの出口導管134と流体連通する出口153とを有する。前記電極は、前記マニホルド内に配置された別個の要素であってもよいし、あるいは、前記マニホルドの内面に適用された金属被膜であってもよい。
【0027】
あるいは、前記マニホルドは、チップそのものの基板内に形成することも可能であり、その場合、入口端部から出口端部へと続く流体通路を提供する導管として機能することが可能な中空の領域を前記基板内に作製する。別個の入口ポート152を介して前記中空領域内に電極を挿入してもよいし、あるいは、前記導管の部分(適切な内部または外部)表面を作製時に金属被膜することで前記電極として機能させてもよい。試薬流体をフローチャンバから退出させるための流路は導管部分を含み得、前記電極導管/マニホルドは、電極溶液を前記試薬流体出口導管へと送達することができ、ここで、これら2つの流体が接触することで流体間インターフェースが得られ、基準電極電圧が前記フローセルへと印加される。
【0028】
各場合において、前記電極は中空であり得、内部を通じて前記電極溶液を送達させることができ、あるいは、前記電極溶液を前記電極の外部を通じて送達することも可能である。例えば、図1Cに示すように、前記電極は中空であり得(例えば、マニホルド151の内面)、また、任意の適切な構造および材料(基本概念の混乱を回避するため図示せず)を用いてフローセルから絶縁された外部を持ち得る。
【0029】
よって、電極アセンブリを、前記センサーチップそのものの内部にまたはフローセルまたはそのハウジングに構築することができる。フローセルまたはそのハウジングは、電極溶液の導入口となる流体入口と接続される。試薬流体がフローチャンバから出て行く際の流路は、導管部分134を含み得る。導管部分134内に電極溶液が流入し、ここで、前記2つの流体が流れて接触して、流体間インターフェースが発生する。前記電極溶液は、流動状態である場合もあるし、静止状態である場合もある。
【0030】
図1Dに示すさらなる代替的実施形態として、前記電極構造をフローセルそのものに一体化させるかまたはフローセルそのものの内部に配置することができる。これは、2つの異なる様態によって行うことができる。第1の様態において、電極溶液をフローチャンバ内に導入し、入口154から(この目的のために提供される)フローセル内へと流入させて出口ポート134へと送る。出口ポート134を通じて、前記電極溶液および試薬フロー双方がフローチャンバから出て行く。これら双方の流体が層流状にチャンバから移動するように配置されている場合、これらの流体は、出口に到達するまでは混合しない(あるいは混合または相互作用はほとんど発生しない)。そのため、前記2つの流体間に障壁は不要である。前記2つの流体の接触領域全体が流体間インターフェースの位置であり、その結果、その他の例の場合よりもインターフェースの表面を大幅に大きくすることができる。第2に、非導電性の外面を有する流体導管をフローチャンバの近傍に設けてもよいし、あるいは、全体的または部分的にフローチャンバ内に設けてもよい。前記電極は、電極流体入口と流体出口との間を、導管の内部に沿って延び得、これにいよって、例えば、共通出口導管134内のように、電極溶液と試薬フローとを交流させることができる。
【0031】
上記の例において、前記基準電位は、フローセル内にまたはフローセルの下流に導入される。しかし、図1Eに示すようなフローセルの上流に電極が設けられた場合でも、同一アプローチが可能である。ここで、図1Bと同様に、133はフローセルへの入口ポートであり、134は出口ポートである。クロスコネクタ171は4つのポートを有し、入口ポートに接続された第1のポート172を有する。第2のポート173は、反応および測定対象である溶液(例えば、試薬)を入口導管135を介して受け取る。第3のポート174は、廃棄物出口ポートとして用いられる。第4のポート175は、図1B中において上記した様態と同じ様態で電極を受け入れる。前記クロスコネクタ内において、電極溶液と、反応/測定対象となる溶液とが相互作用して、基準電位がフローセルへと伝えられる。しかし、その他の代替的実施形態のうちいくつかとは対照的に、本実施形態の少なくともいくつかの実行様態においては、測定/反応対象となる溶液の流量を十分に大きくしてフローチャンバ内への電極溶液の流入を回避することが必要になり得る。しかし、この場合においても、クロスコネクタを賢明に構成することで、電極溶液の連続的流動の必要性を回避することが可能である。
【0032】
マイクロウェル中の分析物を位置確認するための電子センサーの使用
本発明の一局面において、分析物および/または粒子を含むマイクロウェルと、空のマイクロウェルとを位置確認するために電子センサーを用いる。このようなプロセスが有用である理由としては、空ウェルからの出力信号を用いて共通ノイズ要素を推測することができ、分析物を含むマイクロウェルから測定された出力信号からこの共通ノイズ要素を減算することで、信号対ノイズ比を向上させることが可能であるからである。さらに、多くの実施形態において、分析物および/または粒子は、マイクロウェル内にランダムに配置される際、図3Aに示すようにまたRothbergら(上記の米国特許公開)中にさらに例示されるように、溶液中に配置された後にフローチャンバ内に流入してマイクロウェル内においてランダムに沈殿する。そのため、分析物を含むマイクロウェルと、空のマイクロウェルとを電子的に特定するための方法が必要である。
【0033】
通常は、単一の分析物のみが単一のマイクロウェル内に配置される。一局面において、同一分析物の複数のコピーを固体担体(例えば、ビーズまたは粒子)に付着させ、これを次に、単一の固体担体のみが単一のマイクロウェル内に整合するようにサイズおよび形状がマイクロウェルと整合するように選択し、これにより、1種類の分析物しか単一のマイクロウェル内には存在しないことを確実にする。上述したように、いくつかの種類の分析物(例えば、核酸)に対して、接続されたアンプリコンを構築して、マイクロウェルを独占的に占有し得る単一のボディーを形成するための方法が利用可能である(例えば、ローリングサークル型増幅(RCA)など)(例えば、Drmanacら、米国特許公開2009/0137404中に開示のもの)。分析物をランダムにマイクロウェル内に配置した後、表面電荷の変化に応答する電子センサーを用いて、分析物を含むマイクロウェルを特定することができる。よって、一局面において、本発明の方法は、センサー活性試薬を導入する段階を含む。前記センサー活性試薬は、対象分析プロセスにおいて用いられる試薬と同一であってもよいしあるいは異なってもよく、センサー近傍の電荷をその濃度の関数として変化させることができる。
【0034】
一実施形態において、本発明の本局面は、以下の段階を含み得る:(a)センサーが応答して第1の出力信号を生成する第1の試薬から、センサーが応答して第2の出力信号を生成する第2の試薬へと変更する段階と、(b)前記変更する段階に応答して、センサーによる第2の出力信号の生成における時間遅延と、その対応するマイクロウェル中の分析物の存在とを関連付ける段階。本発明の本局面において、電極または他の分析物感受性の表面と、マイクロウェル中における物理的または化学的妨害によって到着が遅延するセンサー活性試薬との間の相互作用に出力信号が依存する限り、任意の種類の電気化学的センサーを用いることが可能である(例えば、電位差測定センサー、インピーダンス測定センサー、またはアンペロメトリーセンサー)。一実施形態において、センサー活性試薬は、前記センサー活性試薬が置き換わる試薬とは異なるpHを有する洗浄液である。前記試薬も洗浄液であり得る。試薬を変更する段階は、前記アレイ中のセンサーの出力信号を記録して、信号値の連続的時間記録(またはそのデジタル表示)を得る段階を含む。前記記録を分析することで、出力信号の変化のタイミングを決定することができる。前記出力信号の変化のタイミングは、前記センサー活性試薬が各センサーに到達した時間に対応する。このようなデータ記録および分析は、従来のデータ取得および分析要素により、実行することができる。
【0035】
図2Cに示すように、センサー活性試薬がフローチャンバ内に流入すると、前記センサー活性試薬は、フローチャンバ(206)から、粒子(212)を含むマイクロウェル(201)およびマイクロウェル(250)を通過して、センサープレート(220)に対向する保護層(216)の領域へと到達する。マイクロウェル(201)が分析物または粒子(212)を含む場合は必ず、拡散経路内における分析物/粒子による物理的妨害または前記分析物/粒子またはその関連付けられた固体担体(ただし、存在する場合)との化学的相互作用により、荷電試薬の拡散前面(252)が空ウェル(250)中の前面(254)に対して遅延される。よって、センサーの出力信号の変化における時間遅延(256)と、分析物/粒子の存在とを関連付けることにより、分析物を含むマイクロウェルを決定することができる。pHを測定するようにセンサーが構成された一実施形態において、荷電試薬とは所定のpHを有する溶液であり、異なる所定のpHを有する第1の試薬と置き換えるのに用いる。核酸配列決定のための実施形態において、水素イオン拡散の遅延は、分析物および/または粒子の物理的妨害および緩衝能の双方によって影響を受ける。好適には、第1の試薬のpHは既知であり、試薬の変更に起因して、マイクロウェルのセンサーが階段関数のpH変化に有効に曝露され、その結果、各センサープレート上の電荷が急激に変化する。一実施形態において、第1の試薬と前記荷電試薬(または本明細書中「第2の試薬」または「センサー活性」試薬と呼ぶ場合がある)との間のpH差は、2.0pH単位以下である。別の実施形態において、このような差は、1.0pH単位以下である。別の実施形態において、このような差は、0.5pH単位以下である。別の実施形態において、このような差は、0.1pH単位以下である。pH差は、従来の試薬(例えば、HCl、NaOHなど)を用いて得ることができる。DNAのpHベースの配列決定反応のためのこのような試薬の例示的濃度は、5〜200μMまたは10〜100μMである。センサープレートに対向するマイクロウェル表面上の電荷の変化は、分析物(または分析物上の反応からの副生成物)の有無を示す。このような変化を、関連するセンサー出力信号の変化(例えば、電圧レベルの経時変化)として測定および登録する。図2Dは、Rothbergら(米国特許公開2009/0127589)に記載のように製造されたアレイ上のセンサーからのデータを示す。センサーレイアウト、ピッチ(9μm)および平面図は、図10、図11Aおよび図19に示す通りである。第1のセンサーに対応するマイクロウェルに、テンプレート、プライマーおよびポリメラーゼを付着させた直径5.9μmのビーズを配置し、第2のセンサーに対応するマイクロウェルを空とする。フローセル中の試薬をpH7.2からpH8.0へと変化させ、pH8.0値において5.4秒間保持している間、各センサーからの出力信号を記録する。曲線(270)は、(マイクロウェル中にビーズが含まれる)第1のセンサーからの出力信号の値を示し、曲線(272)は、(マイクロウェルが空である)第2のセンサーからの出力信号の値を示す。これら2つの曲線はどちらとも、pH7.2に対応する高い値からpH8.0に対応する低い値への変化を示す。しかし、前記空ウェルに対応する信号は、前記ビーズを含むマイクロウェルに対応する信号よりもずっと高速に前記低い値へと到達する。各出力信号がより低い値に到達する時間を示す時間差Δt(274)または同等の指標は、従来のデータ分析技術によって容易に決定される。アレイ内の粒子を含むマイクロウェルの位置および密度を複数の方法により図で表示することが可能である(例えば、図3Cに示すような等高線図または「温度」図)。
【0036】
本発明の一局面において、ランダムに分配された分析物の位置が決定されるマイクロウェルアレイを提供することができる。このような製品または製造物は、以下を含む:(i)回路支持基板内に形成された複数のセンサーと、マイクロウェルアレイとを含むセンサーアレイであって、前記アレイの各センサーは、前記センサーの近傍の1つ以上の所定の種の濃度または存在に関連する少なくとも1つの電気信号を生成するように構成され、前記マイクロウェルアレイは、前記回路支持基板の各マイクロウェルが前記マイクロウェルアレイの表面上に開口部を有しかつ少なくとも1つのセンサー上に配置される、前記回路支持基板上に配置されるセンサーアレイと、(ii)対応するセンサーによって生成された出力信号によって決定可能な位置で、前記マイクロウェルにランダムに分配された、複数の分析物。一実施形態において、前記分析物は、DNAフラグメントのクローン集団(例えば、ゲノムDNAフラグメント、cDNAフラグメントなど)が付着された粒子を含む。
【0037】
フローセルおよび出力信号の収集
多くの構成のフローセル設計が可能である。よって、本明細書中に記載のシステムおよび方法は、特定のフローセル構成の利用に依存しない。本発明のフローセルの設計仕様および性能仕様の非限定的な例は、(i)分析物が曝露される試薬の変更に必要な時間の最小化、(ii)連続する試薬の混合の最小化(すなわち、連続する試薬間の均一な流頭)、(iii)アレイを横断する流体の層流および均一な通過時間の提供(例えば、流体が捕捉され連続するフロー間の混合が発生するような任意の領域(例えば、死容積)の最小化または除去))、(iv)拡散による効率的な材料交換がマイクロウェル容積とフローとの間で発生するような、(例えば、十分な容積のフローチャンバをマイクロウェルアレイ上に設けることによる)マイクロウェル上の十分なフロー容積の提供、(v)泡形成の最小化(例えば、泡形成を促進する急角度の角部またはエッジ部の低減、試薬中の溶解ガスの制御、水性試薬によって容易に湿潤する表面の提供)、(vi)基準電極の配置の容易化、(vii)アレイ内のマイクロウェルまたは反応チャンバへの分析物のローディングの容易化などである。
【0038】
一局面において、本発明のフローセルは、試薬フローをマイクロウェルアレイに方向付ける際、実質的に同一のフロー条件(例えば、流量、濃度など)に各マイクロウェルが曝露され、アレイへの試薬送達が、マイクロウェルアレイ全体において実質的に同時に行われるようにする。このような曝露について「実質的に同時に」とは、2つの連続する試薬間の境界がフローチャンバを通過する通過時間が、マイクロウェルが任意の1つの試薬に曝露される期間よりも短いことを意味する。いくつかのフローセル構成について、各マイクロウェルにおいて同一流量にするのは不可能である(例えば、直線空間に制限されるフローチャンバ内において斜向かいに配置された入口および出口を有するフローセルの場合)。とはいえ、好適な設計の特徴とは、フローチャンバおよび前記フローチャンバが規定する流路により、異なるマイクロウェルが曝露されるフロー条件(例えば、流量)の差が最小化される。上述したように、フローセルは、上記の性能および製造基準(例えば、Rothbergらの米国特許公開2009/0127589、Rothbergらの英国特許出願GB24611127に開示のもの)を達成するための多様な設計を持ち得る。このような設計および性能基準を満たす本発明のフローセルを図4A〜図4Eに示す。図示の設計は単純な製品であり、入口および出口を有する構成要素をチップまたは封入型マイクロウェルアレイ−センサーアレイユニットに取り付けることにより、フローセルを形成している。この実施形態において、フローチャンバは、このような部品を組み合わせた場合または相互に取り付けた場合に形成される内部空間となる。この設計において、フローチャンバの角部に入口が配置され、斜向かいに対向する角部に出口が設けられる。この設計には2つの製造部品しか必要でなく、また、入口および出口を斜向かいに配置することで、試薬が捕捉されて試薬通過時間が遅延し得るフローチャンバ領域(例えば、図3A中の(301))を最小化できるという点で、単純である。図3Aは、試薬がフローチャンバにおいて対角軸に沿って入口(302)から出口(304)へと移動する際の流路(300)を示す。一実施形態において、図3Bに示すように、フローチャンバはこのような流路に基づいて決定される。すなわち、図4Aの例において、壁部(410)および境界(307)(これは、以下にさらに説明するような「ピン」センサーを規定する)は、斜向かいに対向する入口および出口を有する四角形または矩形のフローチャンバを通過する際に試薬がたどるであろう流路を実質的にたどるような形状にされる。その結果、試薬フローは中央領域(308)に制限され、試薬が混合されるかまたは渦を形成する角部領域(306)内はアクセス不能となる。境界(307)の曲率は、(例えば二次曲線または同様の標準曲線の一部を用いて)推測することもできるし、あるいは、市販の流体力学ソフトウェアを用いて算出可能でもある(例えば、SolidWorks(Dassault Systems(Concord、MA);Flowmaster(FlowMasterUSA,Inc.(Glenview、IL);およびOpenFOAM(流体力学計算のためのオープンソースコードであり、ワールドワイドウェブ(www.opencfd.co.uk)から利用可能))。フローティングゲートchemFETをセンサーとして用いる実施形態において、好適には、試薬へのアクセス不能領域(306)中のセンサーは、当該センサーアレイのこれらの部分において発生する出力信号において偽性電圧レベルが発生しないように、電気的に接続される。すなわち、このような実施形態において、前記センサーアレイの読み出し回路は、全ての列および全ての行を継続的に読み出すことで、前記アクセス不能領域中のセンサーを回避するための特殊な回路またはプログラミングを不要とする。その代わりに、このような領域中のセンサーから一定の所定の出力信号を登録する。
【0039】
上述した本発明の一局面において、反応チャンバまたは分析物を含むマイクロウェルは、連続する試薬(本明細書中、「第1の試薬」および「所定の試薬」と呼ぶ)をフローセル内に導入することにより、特定される。前記フローセルは、アレイのセンサーによって感知される電荷を所定の様態で変化させる。図3Cに示すように、このような特定の結果は、フローチャンバ中のマイクロウェルアレイ(310)の密度マップとして表示することができ、このマップにおいて、アレイのマイクロウェル内の分析物の分布をカラースケール(312)によって示す。この実施形態において、カラースケール(312)は、不使用領域(306)を除くアレイ全体における分析物を含むマイクロウェルのローカルパーセンテージを示す(例えば、100個のマイクロウェルのうち各非重複領域のパーセンテージ)。
【0040】
フローセルと、マイクロウェルアレイおよびセンサーアレイとの組み立ては、多様な方法で行うことができる(例えば、Rothbergらの米国特許公開第2009/0127589号およびRothbergらの英国特許出願GB24611127に開示のもの)。同文献を参照により援用する。図4A〜図4Dに示す一実施形態において、フローセルは、流体工学インターフェース部材をセンサーチップを含むハウジングへと取り付けることにより、作製される。典型的には、一体型マイクロウェルセンサーアレイ(すなわち、センサーチップ)を、ハウジングまたはパッケージ内に取り付ける。前記ハウジングまたはパッケージは、前記チップを保護し、他のデバイスとの通信のための電気的接触を提供する。流体工学インターフェース部材は、試薬がこのようなパッケージングに密閉封入された際に当該試薬通路を提供する空洞部またはフローチャンバが得られるように、設計される。一局面において、このような取り付けは、部品を接着することにより、達成される。図4Aは、本発明のフローセルの構成要素(400)(以下、「直線ボディー」と呼ぶ)の底面図(または面)を示す。図示の実施形態において、完全な状態のフローセルは、(図4Cおよび図4Dに示すような)センサーアレイを含むパッケージに構成要素(400)を取り付けることにより、形成される。リッジ部(401)は、表面(413)から隆起しており、図4Cに示すチップ(430)と噛み合った際、楕円形フローチャンバ(408)の壁部(410)を形成する。構成要素(400)をチップハウジング(430)(以下、主に「直線インターフェースパッケージ」と呼ぶ)に接着することで、流体密封シールを形成することができる。図4Bは、構成要素または部材(400)の上面図(または面)(416)であり、入口環(418)および出口環(420)を示す。入口環(418)および出口環(420)により、フローセルを流体システムに密封接続することが可能になる。入口管および出口管が、環(418)および(420)に挿入された弾性環状部材に接続され、これにより、前記弾性材料が、環(418)および(420)の床部および壁部に沿ってシールを形成する。フローセルを流体工学システムに接続するための他の手段も利用可能である(例えば、他の種類の圧入、クランプを用いた取り付け、ネジを用いた取り付けなど)。このような接続は、当業者にとって選択設計事項である。構成要素(400)は、通路(422)および(424)によって示すように簡単な設計変更により、異なるサイズのチップに適応できるように適合され得る。すなわち、図4Cに示す小型アレイ(434)について、入口環(418)のおよび出口環(420)の中央部に開口部を有する通路を、構成要素または部材(400)の中央へのこのような通路により、アレイ(430)を介して入口ポートおよび出口ポートへと方向付けることができる。同様に、図4Dに示す大規模アレイ(436)において、類似の通路(442および444)を、構成要素(400)の中央から離れる方向かつアレイ(436)の入口および出口へ向かう方向に、方向付けることができる。これは、複数のセンサーアレイサイズで単一の基本的フローセル設計を利用可能である点において有利である。突出タブ(412)およびベベル(414)を用いて、当該装置の残り部分との流体接続および電気接続を得るための補助ソケットまたは機器内へ確実かつ正確にチップを配置する。
【0041】
一局面において、本発明は、(図4Aおよび図4Bに例示する)フローセル部材を含む。このフローセル部材は、直線インターフェースパッケージ内に配置された異なる直線サイズのセンサーアレイとの流体工学インターフェースを形成する。このような部材は、以下の要素を含む:(a)上面および下面を有する直線ボディーであって、前記直線ボディーの前記下面を前記直線インターフェースパッケージに接合してセンサーアレイのための流体密封筺体を形成するように、前記直線ボディーの形状が前記直線インターフェースパッケージの形状と整合し、前記上面の一端に入口が設けられ、前記上面の反対側端部に出口が設けられる、直線ボディーと、(b)前記直線ボディーの内部の入口通路であって、前記入口通路は、前記入口から前記流体密封筺体への流体通路を提供して、前記直線ボディーの前記下面内に入口ポートを形成し、前記入口ポートは、前記センサーアレイの上方において前記センサーアレイの一端に配置される、入口通路と、(c)前記直線ボディーの内部の出口通路であって、前記出口通路は、前記出口から前記流体密封筺体への流体通路を提供して、前記直線ボディーの前記下面内に出口ポートを形成し、前記出口ポートは、前記センサーアレイの上方において前記入口ポートの一端の反対側の前記センサーアレイの一端に配置される、出口通路。一実施形態において、前記入口は、前記上面の角部内において入口環と同心に配置され、前記出口は、前記入口および入口環に対して斜向かいに反対側の、前記上面角部内において出口環と同心に配置される。別の実施形態において、前記入口環および出口環はそれぞれ半径を有し、前記入口ポートおよび前記出口ポートはそれぞれ、前記直線ボディーの前記下面上の、前記入口環および出口環の半径をそれぞれ有する垂直突起部内に配置される。別の実施形態において、直線ボディーが図4Eに例示するように直線インターフェースパッケージに接着されると、複数の流体密封筺体が形成される。
【0042】
図4Eは、上記の設計概念を用いて、単一の大型センサーアレイを用いた複数の別個のフローセルを作製する様子を示す。流体工学インターフェース部材(462)は、ハウジング(図示せず)上に密封状に取り付けられ、これは、センサーアレイ(450)を保持し、かつ2つのフローチャンバ(451)および(453)を規定する。これらはそれぞれ、別個の入口(それぞれ454および456)と、別個の斜向かいに対向する出口(それぞれ458および460)とを有し、これらはそれぞれ、共通試薬源および共通廃棄物ラインに接続される。流体工学インターフェース部材(452)をチップハウジングに取り付けることによって形成される内部壁部(480、482、484および486)は、フローチャンバ(451)および(453)を通過する流路を規定し、対向する角部領域(470、474、476および478)が前記フローチャンバ内を通過する試薬と接触するのを回避する。好適には、フローティングゲートFETを用いた実施形態において、角部領域(470、474、476および478)内のセンサーは、上述したようなピンである。同様に、中央区画(462)によって規定されたか中央区画(462)の下側にある領域内のセンサーもピンであり、これにより、これらのセンサーが活性センサーの出力信号ノイズに寄与しないようにする。
【0043】
(以下に説明する)本発明のフローセルおよび流体回路は、多様な方法および材料によって作製可能である。材料を選択する際の考慮事項を挙げると、必要な化学不活性レベル、動作条件(例えば、温度)など、送達すべき試薬の量、基準電圧の要否、製造能力などがある。小規模の流体送達の場合、マイクロ流体作製技術が本発明の流体工学回路の作製に適しており、このような技術の指針については、当業者であれば容易に入手可能である(例えば、Malloy、Plastic Part Design for Injection Molding:An Introduction (Hanser Gardner Publications、1994);Heroldら、Editors、Lab−on−a−chip Technology(Vol.1):Fabrication and Microfluidics(Caister Academic Press、2009)など)。中規模および大規模の流体送達の場合、従来の機械加工技術を用いて、本発明のフローセルまたは流体回路に組み付けることが可能な部品を作製することができる。一局面において、プラスチック(例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなど)を用いて、本発明のフローセルおよび流体工学回路を作製することができる。
【0044】
上述したように、図5A中のアレイ部(500)に示すように、分析物は、アレイのマイクロウェルにランダムに分配される。ここで、マイクロウェルは、空(501)であるか、あるいは、分析物(502)(例えば、ビーズ)を含む。空ウェルから収集された出力信号を用いて、分析物を含むマイクロウェルのセンサーから収集された出力信号中のノイズを低減または減算することができる。空ウェル出力信号は、前記アレイのローカル領域内の全マイクロウェルに共通する信号ノイズ要素を含み、これにより、このような共通ノイズ要素を前記空ウェル出力信号から入手し、分析物を含むマイクロウェルの出力信号から従来の信号処理技術を用いて減算することができる。換言すれば、隣接空ウェルの出力信号から決定されたノイズ要素を減算することにより、分析物を含むウェルからの出力信号が向上する。一局面において、このような共通ノイズの測定は、複数の隣接空ウェルからの出力信号の平均に基づく。DNA配列決定の場合について以下により詳細に説明するように、隣接マイクロウェルから用いられる情報の種類と、この情報の利用方法とは、実行および測定されるアッセイの性質によって異なり得る。本明細書中で用いられる「平均」という用語は、加重平均、および平均の関数(例えば、マイクロウェル内において発生している物理的プロセスおよび化学プロセスのモデルに基づくもの)を含む。平均に用いられるマイクロウェルの種類は、特定の用途において一般化可能であり、例えば、さらなる複数組のマイクロウェルを分析することで、共通ノイズに関するさらなる情報を得ることができる(例えば、空ウェルに加えて、粒子を含むが分析物は含まないウェルなど)。一実施形態において、空ウェルノイズ平均の時間ドメイン関数を、周波数ドメイン表示に変換することができ、(例えば、高速フーリエ変換を用いた)フーリエ解析を用いて、空ではないウェルからの出力信号から共通ノイズ要素を除去することができる。上述したように、このようにして減算される空ウェル信号は、対象マイクロウェルの近傍の空ウェルの空ウェル信号の平均であり得る。このような計算のためのローカル空ウェルの数および位置決めは、多様な方法で選択および実行できる。このような選択を行うための例示的アプローチを図5Bおよび図5Cに示す。図5Bにおいて、分析物を含む各マイクロウェル(504)について、7x7個のマイクロウェルからなる正方形(505)により、固定領域(506)が規定され得る。他の実施形態において、このような固定領域は、3x3個〜101x101個の範囲内または3x3個〜25x25個の範囲内において変更し得る。このような領域のサイズの選択は、いくつかの要素に応じて異なる(例えば、マイクロウェル内の分析物のロードの程度、計算工程に用いることが可能な時間の長さなど)。図5Bに戻って、領域(506)内の空ウェルからの出力信号を、上記減算において用いる。あるいは、空ウェルの領域を図5Cに示すように対象マイクロウェルからの距離によって決定することもできる。ここで、固定円形領域(512)は、対象マイクロウェル(504)からの距離(510)によって規定され、領域(512)内(すなわち、領域(508)内)に全て収まる空ウェルからの空ウェル信号を、上記の減算において用いる。所与の領域内の全ての空ウェル信号は必ずしも必要ではない。例えば、マイクロウェルアレイ内にロードされた分析物または粒子がわずかである場合(例えば、マイクロウェルのうち25パーセント未満にしか分析物または粒子がロードされていない場合)、規定領域(例えば、512)内の空ウェルの一部をバックグラウンド減算に用いることができる。一局面において、このような部分またはサブセットは、利用可能な空ウェルのランダムに選択されたサブセットであり得る。いくつかの状況において、空ではないウェルからの出力信号を決定するための計算時間を最小化するために、できるだけ少数の空ウェル出力信号を用いると有利であり得る。平均空ウェル信号の決定のために選択されたウェルの領域および/または数は、マイクロウェル中の分析物の密度に応じて変化し得る。例えば、ローカル領域のサイズは、空ウェルの利用可能性に応じて選択され得る。信頼性のあるローカルノイズ表示を確実にするために最低N個の空ウェル出力信号(例えば、10、20または30個)を測定する必要があり、よって、このような数に到達するまで、ローカル領域(例えば、(512))を増大させる。一局面において、アレイ内の95パーセント以下のマイクロウェル内に分析物が含まれる場合には必ず、固定領域を用いたローカルノイズ減算を用いる。いくつかの実施形態において、空ウェルに加えてまたは空ウェルの代わりに、分析物を担持する粒子を分析物を担持しない粒子によってスパイクすることができ、分析物を含まない粒子を含むマイクロウェルについて記録された平均信号について、バックグラウンドノイズ減算を行うことができる。
【0045】
核酸配列決定のためのシステム
一局面において、本発明は、無標識のDNA配列決定、特にpHベースのDNA配列決定を実行するための方法および装置を提供する。pHベースのDNA配列決定を含む無標識のDNA配列決定の概念については、以下の文献に記載がある(例えば、参照により援用される以下の参照文献:Rothbergら、米国特許公開第2009/0026082号;Andersonら、Sensors and Actuators BChem.、129:79−86(2008);Pourmandら、Proc.Natl.Acad.ScL、103:6466−6470(2006)など)。簡潔にいうと、pHベースのDNA配列決定においては、ポリメラーゼにより触媒される伸長反応の天然副生成物として生成される水素イオンを測定することにより、塩基取込みが判定される。一実施形態において、機能的に結合されたプライマーおよびポリメラーゼをそれぞれ有するテンプレートを反応チャンバ(例えば、上記のRothbergらに開示のマイクロウェル)内にロードした後、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)の添加および洗浄を繰り返し行う。いくつかの実施形態において、このようなテンプレートは、クローン集団として固体担体(例えば、超微粒子、ビーズなど)に付着し得、このようなクローン集団は反応チャンバ内にロードされる。例えば、テンプレートは、参照により援用される米国特許7,323,305号に開示のように作製可能である。本明細書中で用いられる「機能的に結合された」という表現は、プライマーがテンプレートにアニールされ、これにより、前記プライマーの3’端部がポリメラーゼによって伸長可能でありかつポリメラーゼがこのようなプライマー−テンプレートデュプレックスまたはその近傍に結合し、これにより、dNTPが添加されるたびに結合および/または伸長が発生することを意味する。前記サイクルの各添加段階において、前記ポリメラーゼは、前記テンプレート内の次の塩基が前記添加されたdNTPの相補体である場合にのみ、添加されたdNTPを組み込むことにより前記プライマーを伸長させる。相補的塩基が1つである場合、組み込みは1回であり、相補的塩基が2つである場合、組み込みは2回であり、相補的塩基が3つである場合、組み込みは3回であるといった具合に続く。このような組み込みが行われるたびに、水素イオンが放出され、最終的にはテンプレートの集団から水素イオンが放出されることで、反応チャンバのローカルpHが変化する。水素イオンの発生は、テンプレート内の連続した相補的塩基の数(および伸長反応に参加するプライマーおよびポリメラーゼを含むテンプレート分子の総数)に単調に関連する。そのため、連続した同一の相補的塩基がテンプレート内に複数存在する場合(すなわち、ホモポリマー領域)、発生する水素イオンの数およびよってローカルpHの変化の大きさは、連続した同一の相補的塩基の数に比例する。(対応する出力信号を、「1mer」出力信号、「2mer」出力信号、「3mer」出力信号などと呼ぶ場合がある)。テンプレート内の次の塩基が添加されたdNTPに対して相補的ではない場合、組み込みは発生せず、水素イオンも放出されない(この場合の出力信号を「0mer」出力信号と呼ぶ場合がある)。前記サイクルの各洗浄段階において、所定のpHの非緩衝洗浄液を用いて、先行段階のdNTPを除去し、これにより、後続サイクルにおける誤組み込みを回避する。通常、4種類のdNTPを反応チャンバに連続的に添加し、これにより、以下のような順序(すなわち、dATP、dCTP、dGTP、dTTP、dATP、dCTP、dGTP、dTTPなど)で各反応が前記4つの異なるdNTPへと一度に曝露され、各曝露後に洗浄段階が行われる。このプロセスを図6D中に示し、テンプレート(682)がプライマー結合部位(681)と共に固相担体(680)に付着している。プライマー(684)およびDNAポリメラーゼ(686)は、テンプレート(682)に機能的に結合される。dNTP(dATPとして図示)が添加(688)されると、テンプレート(682)内の次のヌクレオチドが「T」であるので、ポリメラーゼ(686)によりヌクレオチドが組み込まれる。その後洗浄段階(690)が行われ、その後、次のdNTP(dCTP)が添加される(692)。必要に応じて、dNTPを添加する各段階の後、さらなる段階を行うことができる。このようなさらなる段階において、反応チャンバをdNTP阻害剤(例えば、アピラーゼ)によって処理することで、後続サイクルにおける偽性伸長の原因となり得る、前記チャンバ内に残留している残留dNTPを全て除去することができる。
【0046】
一実施形態において、図6D中に例示する配列決定方法は、本発明の装置を以下の段階において用いて実行することができる:(a)センサーアレイ上に配置された複数の反応チャンバ内に複数のテンプレート核酸を配置する段階であって、前記センサーアレイは複数のセンサーを含み、各反応チャンバは、少なくとも1つのセンサー上に配置されかつ前記少なくとも1つのセンサーと感知関係にあり、前記少なくとも1つのセンサーは、前記少なくとも1つのセンサーの近傍の配列決定反応副生成物を表す少なくとも1つの出力信号を提供するように構成され、前記テンプレート核酸はそれぞれ、配列決定プライマーにハイブリダイズされ、ポリメラーゼに結合する、段階と、(b)既知のヌクレオチド三リン酸塩を前記反応チャンバ内に導入する段階と、(c)1つ以上のヌクレオチド三リン酸塩が前記テンプレート核酸内の対応するヌクレオチドに対して相補的である場合、配列決定プライマーの3'端部におけるこのような1つ以上のヌクレオチド三リン酸塩の組み込みを配列決定反応副生成物によって検出する段階と、(d)組み込まれなかったヌクレオチド三リン酸塩を前記反応チャンバから洗浄する段階と、(e)前記複数のテンプレート核酸が配列決定されるまで、段階(b)〜(d)を繰り返す段階。水素イオンが反応副生成物として測定される実施形態において、前記反応を弱い緩衝条件下においてさらに行うことで、最大数の水素イオンを、センサーおよび非外部要素(例えば、表面緩衝能力を持ち得るマイクロウェルまたは固体担体)あるいは(特定のpH緩衝化合物中の)化学成分と反応させる。一実施形態において、弱い緩衝により、前記反応チャンバ内における少なくとも±0.1のpH変化または前記反応チャンバ内における少なくとも±0.01のpH変化を検出することが可能になる。
【0047】
センサーアレイと一体化されたマイクロウェルアレイ内において多数の電気化学的反応を行う場合、いくつかの潜在的ノイズ源が、センサーからの出力信号に影響を与える場合がある(例えば、上記のRothbergらに記載)。このようなノイズ源を挙げると、センサーの熱感度、流体中の電位妨害(例えば、流体中の抵抗ノイズまたは熱ノイズ、異なる流体が基準電極と接触することに起因する基準電圧の変化など)、センサーアレイを通じて送られた流体中のバルク変化に起因するpH変化(本明細書中「試薬変更ノイズ」と呼ぶ)がある。用いられる特定のDNA配列決定用化学物質の性質に起因して、さらなるノイズ源がDNA配列決定用途において発生し得る。例えば、ポリメラーゼ機能の確率的挙動(不完全伸長)または所与の段階における全dNTPの不完全洗浄(不適切な組み込み)に起因してノイズが発生し得る(例えば、Chenら、国際特許公開WO/2007/098049)。
【0048】
センサーアレイの熱感度については、センサーアレイを所定の温度において維持することにより、対処することができる。この所定の温度は、伸長反応に適しており、かつ、水素イオン濃度の測定および/またはpHの変化を可能にする。一局面において、このような温度は、25℃〜75℃の範囲内である。好適には、前記所定の温度は、多段階反応全体を通じて一定である。このような温度は、従来の技術(例えば、ペルチェデバイスなど)により、調節可能である。一実施形態において、フローセル内を流れる試薬の温度を制御することによって温度を維持し、これにより、当該流体の流量および熱容量を、前記センサーまたは分析反応に起因して発生する過剰な熱を排除できるだけの十分な流量および熱容量とする。
【0049】
上述したように、基準電圧の妨害の発生源は多数存在する(例えば、基準電極が接触する流体の種類の変化、流体工学システムの他の構成要素からのノイズ)。例えば、流体工学システムの他の構成要素が、基準電圧に影響を与える外部電気ノイズ(例えば、60Hzノイズ、電源からのノイズなど)に対するアンテナとして機能することができる。本発明によれば、配列決定操作全体において1種類の試薬にしか接触しない基準電極が提供され、これにより、基準電圧変動要素を排除する。別の局面において、基準電極を流体工学システムの他の構成要素(例えば、図7Bおよび図7Cに示すような流体システム中の試薬通路)に容量結合させることにより、流体工学システム内に導入される低周波数ノイズを低減または排除することができる。
【0050】
別のノイズ源は、連続する試薬フローをセンサーアレイを介して送る場合に発生し得る(すなわち、試薬変更ノイズ)。このようなノイズの大きさは、いくつかの要素に依存する(例えば、試薬変更における立ち上がり試薬または立ち下がり試薬が、センサー性能および影響の大きさに影響を与える性質または成分(例えば、pH)を有するかどうかに関わらず、行われている測定の性質(例えば、pH、無機ピロリン酸(PPi)、他のイオンなど)、監視されている反応信号と比較した試薬変更の相対的な大きさなど)。pHベースのDNA配列決定用途(例えば)においては、試薬変更に応答してpH感受性センサーから発生される信号は、図6Aのデータに示すように、水素イオン副生成物に起因する信号よりも大きい。このような用途において、異なる試薬(例えば、異なるdNTPを含む溶液)は、若干異なる緩衝能力およびpKaを有するため、異なる試薬フロー(例えば、洗浄液フローの後にdNTPフローが続く場合)のフロー境界において、センサーには、図2Dおよび図6Aに示すように大きな電圧変化が登録される。図6Aは、Rothbergら(上記)において開示されているようなDNA配列決定チップの異なるマイクロウェルからの4つの出力信号の大きさを示し、このチップでは、従来のイオン感受性電界効果トランジスタ(ISFET)センサーが用いられている。曲線(606)は、試薬変更が無い場合の、洗浄段階時におけるマイクロウェルからの信号を示す。曲線(600)は、テンプレートが付着した粒子を含むマイクロウェルからの出力信号を示し、前記テンプレート上のプライマーが、1個のヌクレオチド分だけ伸長されている。曲線(602)は、伸長が行われていないテンプレートを有する粒子を含むマイクロウェルからの出力信号を示す。領域(604)は、2つの出力信号((602)および(604))間の差を示し、この差は、伸長が行われたマイクロウェル内における水素イオンの発生に起因する。図6B中の曲線(608)は、曲線(600)および(602)の値間の差であり、伸長反応において発生した水素イオン(すなわち、対象信号)に起因する、曲線(600)の原出力信号の部分である。本発明によれば、マイクロウェルから生成された出力信号からの情報を用いることにより、マイクロウェルのローカル群に共通するこのような試薬変更ノイズおよび他のノイズ要素を、選択されたセンサーの出力信号から減算することができる。一実施形態において、このような隣接マイクロウェル情報は、複数の隣接ウェルからの出力信号の少なくとも1つの平均値から入手される。別の実施形態において、隣接マイクロウェル情報は、空ウェルの出力信号から得られる。さらに別の実施形態において、隣接マイクロウェル情報は、伸長反応が発生しなかった空ではないマイクロウェルの出力信号から得られる。試薬変更ノイズの減算による原出力信号の補正は、各試薬変更後に算出された平均に基づいて該各変更後に行ってもよいし、あるいは、このような補正は、前回の試薬変更から算出された平均を用いて、多段階または多サイクル電気化学的プロセス時における平均の変化速度に応じて行ってもよい。例えば、DNA配列決定の実施形態において、(4つの異なるdNTPを連続して反応チャンバに導入する)サイクルにおける各異なるdNTPフローについて平均を算出し、この平均を用いて、1〜5サイクルの試薬変更について原出力信号を補正する。
【0051】
図2Dから分かるように、ノイズ減算対象として選択された隣接マイクロウェルの種類に応じて、隣接マイクロウェルからの出力信号を対象マイクロウェルからの信号に相対して組織的に変更することができる。例えば、図2Dにおいて、同一現象(例えば、信号遅延)について空ウェルが検出された場合において、対象信号からの減算に意味がある場合、このような差を考慮してこのような信号を変換する必要があり得る。例えば、対象マイクロウェル中の粒子の存在は、試薬変更(前記粒子との化学的相互作用に起因する遅延および平坦化)に対応する信号の歪みの原因となるため、空ウェル信号を変更することで、粒子および化学的相互作用の不在に起因する変化を除去する必要があり、これは、従来の数値解析を用いて容易に行うことができる。隣接マイクロウェル情報が0mer隣接物のみに制限される場合、減算対象信号から試薬変更ノイズを減算するためのこのような変換はずっと少ないかまたは不要である。上述したように、隣接マイクロウェル出力信号の「平均」は、加重平均、すなわち、選択されたマイクロウェルおよびその隣接物の異なる物理的状態および化学状態を反映する前記隣接マイクロウェルの平均出力信号の変換を含み得る。このようなプロセスの実施形態の段階を図6Cに示す。時間j=1、2..tにおいて選択されたマイクロウェルMのセンサーによって記録された原出力信号RS(j)を読み出す(660)。「原出力信号」とは、データ分析の前の出力信号の記録値を指す。隣接マイクロウェルを規定し(662)、これにより、隣接マイクロウェルの原出力信号RN(j)も読み出すことができる(664)。隣接物の定義は、例えば図5A〜図5Cについて述べたような隣接物信号が収集されるローカル領域を含み得、このような定義は、出力信号が得られる隣接マイクロウェルの種類(例えば、空ウェル、分析物または粒子は含むが反応は無いマイクロウェルなど)を含み得る。一局面において、隣接出力信号は、信号の存在(例えば、検出または測定対象である分析物からのpHレベル)を除いて前記Miマイクロウェルに物理的および化学的に類似している隣接マイクロウェルから選択される。隣接マイクロウェルからの原出力信号を読み出した後、平均A(j)を算出し(666)、原出力信号RSi(j)から減算して(668)、ノイズが低減した出力信号Si(j)を得る。
【0052】
図6Eは、平均隣接物信号を用いて対象信号(例えば、ヌクレオチド組み込みに起因するpH変化)からノイズを除去する別の実施形態を示す。この図において、4つの異なる時点(すなわち、次の試薬の導入前(t)、マイクロウェルへの該次の試薬の曝露直後(t)、該次の試薬と該マイクロウェル内容物との平衡時(t)、平衡達成後(t)における2つの隣接マイクロウェル(631)および(641)が図示されている)。このような試薬変更に起因するセンサー信号の変化を2コンパートメントモデルとして記述し、ここで1つのコンパートメントは、マイクロウェル開口部に隣接する領域(638)内の次の試薬(例えば、次のdNTPフロー)であり、他方のコンパートメントは、前記センサーに隣接するマイクロウェルの底部における表面(640)である。新規試薬(630)がフローセルに入った直後、前記2つのコンパートメント間に濃度差(636)が発生し、これにより、水素イオンの流束が、粒子を含むマイクロウェルにおいて(φ)(632)および空ウェルにおいて(φ)(634)確立される。伸長反応が発生している粒子を有するマイクロウェル(633)においても、水素イオンが発生しており、前記流束が増大する。最終的には平衡に到達し(642)、前記水素イオン流束はゼロになる。当業者であれば、前記マイクロウェル内において発生する電気化学的反応の物理現象および化学現象を記述するために、多様な他のモデルおよび異なる複雑度のモデルが利用可能であることを認識する。図6Eのモデルに戻って、伸長反応による水素イオンの発生と、ビーズを含むマイクロウェルを通過する流束と、ビーズを含まないマイクロウェルを通過する流束とを、下記方程式で表される簡単な反応−拡散方程式によって記述することができ、これにより、センサーにおける水素イオン濃度変化を得ることができる:

式中、αおよびαは、溶媒中の水素イオンの拡散定数であり、βおよびβは、前記水素イオンと、マイクロウェル壁部および/または前記マイクロウェル中の粒子または分析物との間の相互作用(例えば、緩衝)を反映する定数である。これらの項の操作と、差の積分とにより、sの関数としてのsおよび、sとsとの間の差の積分を得ることができる。この式に対し、伸長反応において発生する水素イオンを表すソース項Iextを加える。

式中、R=(αβ/αβ)である。sについての曲線は容易に数値的に生成可能であり、これにより、試薬変更ノイズを除去するようにデータを表すことができる。図6Fは、このようなモデルによるデータ表示と、前記モデルを用いた試薬変更ノイズの減算とを示す。パネル(650)は、dATPフローおよびdGTPフローへの曝露に起因して内部において伸長反応が発生しているマイクロウェルのセンサーからの出力信号(652)(「NNデータ」)を示す。曲線(654)(「モデルバックグラウンド」)は、上記の試薬変更ノイズモデルからのものである。パネル(656)が示す曲線(658)は、試薬変更ノイズと、水素イオン発生とをモデル化している。パネル(659)は、ノイズを減算した後の出力信号(657)を示す。
【0053】
図6Dにおいて、各テンプレートは、較正配列(685)を含む。較正配列(685)により、初期dNTPの導入に応答した既知の信号が得られる。好適には、較正配列(685)は、各種類のヌクレオチドのうち少なくとも1つを含む。一局面において、較正配列(685)は、長さ4〜6個のヌクレオチドであり、ホモポリマーを含んでもよいし、ホモポリマーでなくてもよい。隣接マイクロウェルからの較正配列情報を用いて、伸長が可能なテンプレートを含む隣接マイクロウェルを決定することができ、その結果、後続反応サイクルにおいて0mer信号、1mer信号などを生成し得る隣接マイクロウェルを特定することが可能になる。隣接マイクロウェルからのこのような信号からの情報を用いて、不要なノイズ要素を対象出力信号から減算することができる。他の実施形態において、(i)所与のサイクルにおける隣接空ウェル出力信号と、(ii)粒子および/またはテンプレートの存在に起因する、試薬変更ノイズ曲線の形状に対する影響とを考慮することにより、平均0mer信号をモデル化する(本明細書中、「仮想0mer」信号と呼ぶ)。図2Dに示すような後者の要素は遅延であり、これは、空ウェルの出力信号に対する粒子含有マイクロウェルの出力信号の正の時間方向における平坦化およびシフティングに反映される。上記したように、このような影響を容易にモデル化することで、空ウェル出力信号を仮想0mer出力信号に変換して、試薬変換ノイズの減算に用いることができる。
【0054】
図7Aは、Rothbergらの米国特許公開2009/0026082に従ったpHベースの核酸配列決定を実行する際に利用可能な装置を図示する。流体工学回路(702、以下により詳細に説明する)を含むハウジング(700)が、入口により試薬リザーバ(704、706、708、710、および712)と、廃棄物リザーバ(720)と、通路(732)によりフローセル(734)とに、接続される。通路(732)は、流体工学ノード(730)をフローセル(734)の入口(738)に接続する。リザーバ(704、706、708、710、および712)からの試薬の流体回路(702)への駆動は、多様な方法により実行可能である(例えば、圧力、ポンプ(例えば、注射器ポンプ)、重力送りなど)。このような駆動方法は、弁(714)の制御によって選択される。コントローラ(718)は、弁(714)のコントローラを含み、これは、電気接続(716)を介した開閉のための信号を生成する。コントローラ(718)はまた、システムの他の構成要素(例えば、(722)によってシステムに接続された洗浄液弁(724))のためのコントローラを含む。アレイコントローラ(719)は、フローセル(734)および基準電極(728)についての制御機能およびデータ取得機能を含む。1つの動作モードにおいて、流体回路(702)は、コントローラ(718)のプログラム制御下において、一連の選択された試薬(1、2、3、4または5)をフローセル(734)へと送達し、これにより、選択された試薬フロー間において流体工学回路(702)がプライムおよび洗浄され、フローセル(734)が洗浄される。フローセル(734)に進入した流体は、出口(740)を通じて出て行き、廃棄物コンテナ(736)内に入る。このような動作全体において、フローセル(734)内で発生する反応および/または測定は、安定した基準電圧を確保される。なぜならば、洗浄液としか物理的接触していないにも関わらず、基準電極(728)には、流体工学回路(702)により、フローセル(734)との連続的な(すなわち、干渉されない)電解質経路が設けられるためである。
【0055】
図7Bおよび図7Cは、流体工学システムの他の部分に導入される基準電圧に影響を与え得るノイズを低減するために採用されうるさらなる方法を示す。図7Bにおいて、廃棄物ストリーム(754)の一部を形成する電極(752)がコンデンサ(750)によって基準電極(728)へと接続される。コンデンサ(750)は、廃棄物ストリーム(754)を通じて導入される低周波数ノイズをフィルタリングする。同様に、図7Cに示すように、このような電極(761、763、765、767、および769)を処理試薬(例えば、試薬1〜5)の流路上に取り付け、別個のコンデンサ(それぞれ、760、762、764、766、および768)を通じて基準電極(728)に接続することができる。
【0056】
試薬の逐次送達のための流体工学回路
上述したように、一実施形態において、本発明の基準電極は、流体回路(例えば、図7A中の(702))の利用により、単一の試薬のみとの接触が保持される。図8A〜図8Cは、流体工学回路の実施形態を図示する。この実施形態は、基準電極との当該接触を提供し、また、平面回路構造における5種類の流入試薬を適応させる。図8Aは、透明なボディーまたはハウジング(800)の上面図である。ボディーまたはハウジング(800)は流体回路(802)を含む。流体回路(802)は、マイクロ流体工学デバイスを含み得る。ハウジング(800)は、多様な材料から構築可能である(例えば、金属、ガラス、セラミック、プラスチックなど)。透明材料を挙げると、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチルなどがある。入口(または流入ポート)(804、806、808、810、および812)は、通路を介してその各コネクタスロット(814)へと接続される。コネクタスロット(814)は、ハウジング(800)の下側(入口と同心の二重丸として図示)上に配置される。ハウジング(800)の下側から、試薬が流体回路(802)へと進入する。入口(804、806、808、810および812)は、通路(それぞれ、805、807、809、811および813)と流体連通し、通路(それぞれ、805、807、809、811および813)は、曲線通路(それぞれ、824、826、828、830および832)へと接続される。各曲線通路は、2つの脚部(例えば、(836)および(838))からなる。これら2つの脚部は、「T」字型接合部(835)における曲線通路(824)において示されており、曲線通路(824)のみとしても特定される。1つの脚部は、その各入口をノード(または多用途中央ポート)(801)へと接続させる内側脚部(例えば(838))であり、他方の脚部は、その各入口を廃棄物通路(またはリング)(840)へと接続させる外側脚部(例えば(836))である。上述したように、前記曲線通路の内側脚部および外側脚部の断面積および長さは、前記「T」字型接合部およびノード(801)におけるフロー間の所望のバランスを達成できるように、選択することができる。通路(844)を通じて、廃棄物通路(またはチャンネル)(840)が廃棄物ポート(845)と流体連通する。廃棄物ポート(845)は、ボディー(800)の下側のコネクタスロット(846)により、廃棄物リザーバ(図示せず)へと接続される。ノード(801)は、通路(861)によりポート(860)と流体連通する。通路(861)は、本実施形態においてボディー(800)の外部にあり、破線によって示す。他の実施形態において、通路(861)をボディー(800)内に設けることで、ノード(801)およびポート(860)のためのコネクタスロットが不要となる。ポート(860)は、通路(863)により、「T」字型接合部が形成された洗浄液入口(862)と、コネクタスロット(864)とに接続され、これにより、フローセル、反応チャンバなどへの導管が得られる。図8Bおよび図8Cは、流体工学回路を用いて流体をフローセルに分配するための3つのモードのうち2つを示す。これらの動作モードは、流入試薬および洗浄液それぞれと関連付けられた弁(850)によって実行される。第1の動作モード(選択された試薬弁が開口、その他の試薬弁は全て閉口、洗浄液弁は閉口)(図8B)において、選択された試薬がフローセルへと送達される。第2の動作モード(選択された試薬弁が開口、その他の試薬弁は全て閉口、洗浄液弁は開口)(図8C)において、前記流体回路は、選択された試薬の送達が可能な状態である。第3の動作モード(全試薬弁が閉口、洗浄液弁が開口)(図示せず)において、流体工学回路中の全通路が洗浄される。上述したように、各入口は弁(850)と関連付けられており、弁(850)を開口すると、各入口(例えば、弁(852)について示すように)を通じて流体回路(802)内に流体を進入させることが可能になり、弁(850)を閉口すると、流体は、((852)を除く全ての弁によって示すように)回路(802)に進入できなくなる。各場合において、図8B中の入口(870)について示すように入口弁が開口しており(洗浄液弁を含む)その他の弁が閉口している場合、流体は通路(854)を通じて「T」字型接合部(856)へと流入し、ここで2つのフローに分割される。そのうち1つのフローは、廃棄物通路(840)に方向付けられた後に廃棄物ポート(845)へと方向付けられ、他方のフローはノード(801)へと方向付けられる。ノード(801)から出る際、この第2のフローがさらに複数のフローに分割され、そのうち1つが通路(861)を通じてノード(801)から出た後、通路(863)およびフローセルへと流れ、その他のフローは、ノード(801)をその他の入口へと接続する各通路へと到達した後、廃棄物通路(840)および廃棄物ポート(845)へと到達する。後者のフローはその他の入口を通過して、そこから拡散または漏洩している任意の物質を輸送し、廃棄物ポート(845)へと方向付ける。選択された試薬の弁を開口させると同時に選択されていない試薬および洗浄液の弁全てを閉口させることにより、異なる一連の試薬をフローセルへと方向付けることができる。一実施形態において、このような順序は、流体工学回路の動作モードの順序(例えば、洗浄、試薬xのプライム、試薬xの送達、洗浄、試薬xのプライム、試薬xの送達、洗浄など)により、実行可能である。試薬プライム動作モードを図8Cに示す。試薬送達モードと同様に、選択された試薬に対応する弁を除く全ての試薬入口弁が閉口される。しかし、試薬送達モードと異なり、洗浄液弁は開口し、選択された試薬フローおよび洗浄液フローの相対圧力を選択する際、洗浄液が通路(861)を通じてノード(801)内へと流入し、ここで全通路から退出して、前記選択された試薬入口へと繋がる通路を除く廃棄物通路(840)へと到達するように選択を行う。
【0057】
定義
「アンプリコン」とは、ポリヌクレオチド増幅反応の生成物を意味する。すなわち、ポリヌクレオチドのクローン集団を意味し、この集団は単鎖または二本鎖であり得、1つ以上の出発配列から複製される。これら1つ以上の出発配列は、同一配列の1つ以上のコピーであってもよいし、あるいは、増幅された共通領域を含む異なる配列の混合物(例えば、サンプルから抽出されたDNAフラグメントの混合物中に存在する特定のエクソン配列)であってもよい。好適には、アンプリコンは、単一の出発配列の増幅によって形成される。アンプリコンは、1つ以上の出発核酸または標的核酸の複製物を発生させる多様な増幅反応により、生成することができる。一局面において、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのいずれかの反応物の塩基対合は、反応生成物の生成に必要なテンプレートポリヌクレオチドにおける相補体を有するという点で、アンプリコンを発生させる増幅反応を「テンプレート駆動型」という。一局面において、テンプレート駆動型反応は、核酸ポリメラーゼを用いるプライマー伸長または核酸リガーゼを用いるオリゴヌクレオチドライゲーションである。このような反応を非限定的に挙げると、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)、線形ポリメラーゼ反応、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、ローリングサークル型増幅などがある。このような反応例について、本明細書中で援用される以下の文献中に開示がある:Mullisら、米国特許第4,683,195号;4,965,188号;第4,683,202号;第4,800,159号(PCR);Gelfandら、米国特許第5,210,015号(「taqman」プローブによるリアルタイムPCR);Wittwerら、米国特許第6,174,670号;Kacianら、米国特許第5,399,491号(「NASBA」);Lizardi、米国特許第5,854,033号;Aonoら、日本特許公開JP4−262799(ローリングサークル型増幅)など。一局面において、本発明のアンプリコンは、PCRによって生成される。本明細書中で用いられる「増幅」という用語は、増幅反応の実行を意味する。「反応混合物」とは、反応を行うために必要な全ての反応物を含む溶液を意味する。反応を行うために必要な全ての反応物を非限定的に挙げると、反応時において選択されたpHレベルを維持するための緩衝剤、塩、補因子、スカベンジャーなどがある。「固相アンプリコン」とは、核酸配列のクローン集団が付着した固相担体(例えば、粒子またはビーズ)を意味する。核酸配列のクローン集団は、エマルジョンPCRなどの処理または同様の技術によって生成される。
【0058】
「分析物」とは、対象となる分子または生体細胞を意味し、サンプル保持領域(例えば、マイクロウェル)にある電子センサーに直接影響を与えるか、または、このようなサンプル保持領域(例えば、マイクロウェル)または反応閉じ込め領域内に配置された分子または生体細胞を用いた反応からの副生成物により、このような電子センサーに間接的に影響を与える。一局面において、分析物は核酸テンプレートであり、配列決定反応に供される。その結果、反応副生成物(例えば、水素イオン)が発生し、電子センサーに影響を与える。「分析物」という用語は、固体担体(例えば、ビーズまたは粒子)に付着した分析物の複数のコピー(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸など)も含む。一実施形態において、「分析物」という用語は、核酸アンプリコンまたは固相アンプリコンを意味する。
【0059】
「マイクロ流体工学デバイス」とは、1つ以上のチャンバ、ポートおよびチャンネルの一体型システムを意味する。これら1つ以上のチャンバ、ポートおよびチャンネルは、相互接続されかつ流体連通し、分析反応または処理を単独でまたは機器または測定器と協働して実行するように設計される。前記機器または測定器は、支援機能(例えば、サンプル導入、流体および/または試薬駆動手段、温度制御、検出システム、データ収集および/または統合システムなど)を提供するマイクロ流体工学デバイスは、弁、ポンプ、および内壁上の特殊な機能コーティング(例えば、サンプル構成要素または反応物の吸収を回避するためのもの、電気浸透により試薬の動きを促進するものなど)をさらに含み得る。このようなデバイスは通常は、固体基板内または固体基板上において作製される。固体基板は、ガラス、プラスチック、または他の固体樹脂材料であり得、サンプルおよび試薬動きの検出および監視(特に、光学的方法または電気化学的方法を介したもの)を容易に実行できるよう、典型的には平面形態をとる。マイクロ流体工学デバイスの特徴としては、通常は数百平方マイクロメートル未満の断面寸法を有し、通路は典型的にはキャピラリー寸法を有する(例えば、最大断面寸法が約500μm〜約0.1μm)。マイクロ流体工学デバイスの容積容量は典型的には1μL〜数nL(例えば、10〜100nL)である。マイクロ流体工学デバイスの作製および動作については、参照により援用される以下の文献に記載のように当該分野において周知である:Ramsey、米国特許第6,001,229号;第5,858,195号;第6,010,607号;および第6,033,546号;Soaneら、米国特許第5,126,022号および第6,054,034号;Nelsonら、米国特許第6,613,525号;Maherら、米国特許第6,399,952号;Riccoら、国際特許公開WO02/24322号;Bjornsonら、国際特許公開WO99/19717号;Wildingら、米国特許第5,587,128号;第5,498,392号;Siaら、Electrophoresis、24:3563−3576(2003);Ungerら、Science、288:113−116(2000);Enzelbergerら、米国特許第6,960,437号。
【0060】
「マイクロウェル」とは、「反応チャンバ」と同じ意味として用いられ、「反応閉じ込め領域」の特殊な例(すなわち、対象反応の局所化を可能にする固体基板の物理的属性または化学的属性)を意味する。反応閉じ込め領域は、対象分析物と特異的に結合する基板の表面の別個の領域、例えば、このような表面にオリゴヌクレオチドまたは抗体が共有結合している、別個の領域であり得る。通常は、反応閉じ込め領域は、基板内に設けられた良好に画定された形状および容積を有する、穴またはウェルである。これらの後者の種類の反応閉じ込め領域のことを本明細書中マイクロウェルまたは反応チャンバと呼び、従来の微細加工技術を用いて製造可能である(例えば、以下の文献に開示のもの:DoeringおよびNishi、Editors、Handbook of Semiconductor Manufacturing Technology、第2版(CRCPress、2007);Saliterman、Fundamentals of BioMEMS and Medical Microdevices(SPIEPublications、2006);Elwenspoekら、Silicon Micromachining(Cambridge University Press、2004)など)。マイクロウェルまたは反応チャンバの好適な構成(例えば、スペーシング、形状および容積)について、以下の文献中に開示がある:Rothbergら、米国特許公開第2009/0127589号;Rothbergら、英国特許出願第GB24611127号。同文献を参照により援用する。マイクロウェルは、正方形断面、矩形断面または八角形断面を持ち得、表面上の直線アレイとして配置可能である。マイクロウェルは六角形断面であってもよく、六角形アレイとして配置した場合、単位面積あたりのマイクロウェルを直線アレイよりもより高密度にすることが可能になる。マイクロウェルの例示的構成を以下に示す。いくつかの実施形態において、反応チャンバアレイは、10、10、10、10、10または10個の反応チャンバを有する。本明細書中で用いられるアレイとは、センサーまたはウェルなどの要素を平面上に配置したものを指す。アレイは、一次元であってもよいし、二次元であってもよい。一次元アレイは、1つの列(または行)の要素を第1の寸法において有し、複数の列(または行)を第2の寸法において有するアレイである。第1の寸法および第2の寸法における列(または行)の数は、同一であってもよいし、同一でなくてもよい。好適には、前記アレイは少なくとも100,000個のチャンバを含む。好適には、各反応チャンバの水平方向幅および垂直方向深さのアスペクト比は約1:1以下である。好適には、前記反応チャンバ間のピッチは、約10ミクロン以下である。簡潔にいうと、一実施形態において、マイクロウェルアレイは以下のようにして作製することができる。すなわち、センサーアレイの半導体構造を形成後、半導体ダイ上の当該構造にマイクロウェル構造を適用する。すなわち、前記マイクロウェル構造は、前記ダイ上に直接形成することもできるし、あるいは、別個に形成した後に前記ダイ上に取り付けることも可能であり、どちらのアプローチも受容可能である。前記マイクロウェル構造を前記ダイ上に形成するには、多様なプロセスが利用可能である。例えば、ダイ全体を例えば負のフォトレジスト(例えば、MicrochemのSU−82015)または正のレジスト/ポリイミド(例えば、HD Microsystems HD8820)で前記マイクロウェルが所望の高さとなるまでスピンコートすることができる。フォトレジスト層(単数または複数)中のウェルの所望の高さ(例えば、1画素/ウェルの例において約3〜12μmであるが、一般的に限定されていない)は、適切なレジストを所定の速度(これは、上記文献および製造業者の仕様を参照してあるいは経験によって発見可能である)で1つ以上の層内においてスピンすることにより、達成可能である。(ウェル高さは典型的には、センサー画素の横寸法(好適には、ノミナル1:1〜1.5:1のアスペクト比、高さ:幅または直径)に対応して選択され得る。あるいは、異なるフォトレジストの複数の層を適用してもよいし、あるいは、別の形態の誘電材料を堆積させてもよい。多様な種類の化学的蒸着を用いて、層内におけるマイクロウェル形成に適した材料の層を堆積させることが可能である。一実施形態において、マイクロウェルは、オルトけい酸テトラメチル(TEOS)の層内に形成される。本発明は、反応チャンバの二次元アレイを少なくとも1つ含む装置を包含する。各反応チャンバは、化学感受性電界効果トランジスタ(「chemFET」)に接続され、各反応チャンバの容積は、10μm(すなわち、1pL)以下である。好適には、各反応チャンバの容積は、0.34pL以下であり、より好適には0.096pL以下であり、さらには0.012pLでさえある。反応チャンバは、必要に応じて2、3、4、5、6、7、8、9または10平方ミクロンの断面積を上部において有する。好適には、前記アレイは、少なくとも10、10、10、10、10、10、10、10個以上の反応チャンバを有する。これらの反応チャンバは、前記chemFETに容量結合され得、好適には前記chemFETに容量結合される。
【0061】
「プライマー」とは、天然オリゴヌクレオチドまたは合成オリゴヌクレオチドを意味し、これは、ポリヌクレオチドテンプレートとデュプレックスを形成すると、核酸合成の開始ポイントとして機能することができ、かつ、伸長した終端デュプレックスが形成されるようにその3'端からテンプレートに沿って伸長することができる。プライマーの伸長は通常は、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAまたはRNAポリメラーゼ)によって実行される。伸長プロセスにおいて付加されるヌクレオチドの配列は、テンプレートポリヌクレオチドの配列によって決定される。通常は、プライマーは、DNAポリメラーゼによって伸長される。プライマー長さは通常は、14〜40個のヌクレオチドの範囲または18〜36個のヌクレオチド範囲である。プライマーは、多様な核酸増幅反応(例えば、単一のプライマーを用いた線形増幅反応、または、2つ以上のプライマーを用いたポリメラーゼ鎖反応)において利用される。特定の用途におけるプライマーの長さおよび配列の選択に関する指針については、以下の参照により援用される文献に記載のように、当業者にとって周知である:Dieffenbach、editor、PCRprimer:ALaboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor Press、New York、2003)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段階電気化学的反応を行うための装置であって、
1つ以上の反応容器であって、前記1つ以上の反応容器はそれぞれ、前記反応容器中の生成物を監視する電子センサーへと接続され、前記電子センサーは、生成物の濃度または存在に関連する出力信号を生成し、前記出力信号は基準電圧に依存する、反応容器と、
複数の電解質を一度に1つずつ前記反応容器へと連続して送達するための流体工学システムと、
前記複数のうち選択された電解質と接触する基準電極であって、前記基準電極は、前記反応チャンバと流体連通し、前記基準電極を前記選択されていない電解質のいずれとも接触させることなく前記基準電圧を各電子センサーへと提供する、基準電極と
を含む、装置。
【請求項2】
前記1つ以上の反応容器は、chemFETセンサーのアレイ上に配置されたマイクロウェルのアレイであり、前記流体工学システムは、前記マイクロウェルと流体連通するフローセルを含み、各マイクロウェルへの反応電解質の送達を実質的に同一流量で行うように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記選択された電解質を保持するリザーバをさらに含み、前記リザーバは、前記電解質を前記反応容器へと送達するために分岐通路によって共通通路へと接続され、前記分岐通路は、前記リザーバと、前記共通通路との接合部との間に配置された弁を有し、前記基準電極は、前記基準電極が前記反応容器と流体連通するように、かついかなる時も、前記弁が閉口され、前記分岐通路内の流体が静止状態であり、前記選択されていない電解質の実質的に全てが前記基準電極と接触しないように、前記弁と前記接合部との間の前記分岐通路内に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記流体工学システムは、リザーバからの前記電解質を前記反応チャンバおよび少なくとも1つの廃棄物リザーバへと送達する複数の通路を含み、前記複数の通路はそれぞれ、前記基準電極に容量結合した電極に接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
複数の分析物における分析反応を行うための装置であって、
回路支持基板内に形成された複数のセンサーと、マイクロウェルアレイとを含むセンサーアレイであって、前記アレイの各センサーは、前記センサーの近傍の1つ以上の反応生成物の濃度または存在に関連する少なくとも1つの電気信号を生成するように構成され、前記マイクロウェルアレイが、各マイクロウェルが少なくとも1つのセンサー上に配置されるように前記回路支持基板上に配置され、1つ以上のマイクロウェルが分析物を含む、センサーアレイと、
複数の試薬を前記マイクロウェルアレイに連続して送達するためおよび前記センサーアレイの前記センサーに基準電圧を提供するための流体工学システムであって、前記基準電圧は、前記マイクロウェルアレイの上流にありかつ前記マイクロウェルアレイと連続的に流体連通する基準電極によって提供され、前記フローセルへの前記異なる試薬の送達時において、前記基準電極は、前記複数の試薬のうちの1つのみと接触する、流体工学システムと
を含む、装置。
【請求項6】
前記基準電極と接触する前記単一の試薬は、前記分析反応の反応物を含まない洗浄液である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
システムが、
回路支持基板内に形成された複数のセンサーを含むセンサーアレイであって、前記アレイの各センサーは、フローティングゲートを有する化学感受性電界効果トランジスタ(chemFET)と、マイクロウェルアレイとを含み、前記chemFETは、前記chemFETの近傍の1つ以上の反応生成物の濃度または存在に関連する少なくとも1つの電気信号を生成するように構成され、前記マイクロウェルアレイは、各マイクロウェルが少なくとも1つのセンサー上に配置されるように前記回路支持基板上に配置され、1つ以上のマイクロウェルが分析物を含む、センサーアレイと、
前記マイクロウェルアレイへ試薬を送達するための流体工学システムであって、前記流体工学システムはフローセルを含み、前記フローセルは、入口、出口およびフローチャンバを有し、前記フローチャンバは、試薬が前記入口から前記出口へと通過する際の前記試薬の流路を規定し、前記フローチャンバは、前記流路中の前記マイクロウェルの開口部上を横断的に前記試薬を送達するように構成され、前記流路外側のセンサーのフローティングゲートは、電気的に接続され、共通電圧で保持される、流体工学システムと
を含む、複数の分析物における分析反応を行うための装置。
【請求項8】
前記センサーアレイはCMOSデバイスであり、前記流路外側の前記センサーのフローティングゲートは、該フローティングゲートを連続的な金属層として形成することにより、電気的に接続される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
センサーアレイの表面上の複数の多段階反応を監視する前記センサーアレイであって、前記センサーアレイは、半導体基板内に形成され、かつ活性領域および不活性領域を有し、前記不活性領域のセンサーはそれぞれ、化学感受性電界効果トランジスタ(chemFET)を含み、前記chemFETは、前記不活性領域の他の全てのセンサーのゲートに電気的に接続されたフローティングゲートを有し、前記活性領域のセンサーはそれぞれ、chemFETを含み、前記chemFETは、フローティングゲートを有し、かつ前記chemFETの近傍の化学サンプルまたは生物サンプルの濃度または存在に関連する少なくとも1つの出力信号を提供するように構成され、前記センサーアレイの前記活性領域は、前記センサーアレイの前記表面上の前記反応へと送達される試薬の流路に対応する、センサーアレイ
を含む、装置。
【請求項10】
フローセルをさらに含み、前記フローセルは、入口、出口およびフローチャンバを有し、前記フローチャンバは、試薬が前記入口から前記出口へと通過する際の前記試薬の流路を規定し、前記フローチャンバは、前記試薬が前記活性領域を横切って前記センサーアレイの表面に対して平行なフローで送達されるように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
複数のマイクロウェルに分配された分析物を位置確認するための方法であって、
センサーのアレイ上に配置された複数のマイクロウェルを提供する段階であって、各マイクロウェルは、フローチャンバと流体連通する開口部を有し、かつ少なくとも1つの分析物を保持することが可能であり、各マイクロウェルは、少なくとも1つのセンサー上に配置され、前記少なくとも1つのセンサーは、前記少なくとも1つのセンサーの近傍の試薬に応答して少なくとも1つの出力信号を提供するように構成される、段階と、
前記フローチャンバ中の試薬を、センサーが応答して第1の出力信号を生成した第1の試薬から、センサーが応答して第2の出力信号を生成した第2の試薬へと変更する段階と、
前記変更する段階に応答したセンサーからの第2の出力信号の時間遅延と、対応するマイクロウェル内の分析物の存在とを関連付ける段階と
を含む、方法。
【請求項12】
前記分析物は、粒子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の試薬は第1のpHを有し、前記第2の試薬は、前記第1のpHと異なる第2のpHを有し、前記センサーのうち少なくとも1つが、前記センサーの近傍のpHに関連する出力信号を生成する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記変更する段階は、前記センサーのうち少なくとも1つにおけるpHを少なくとも0.1pH単位だけ変更する段階を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
回路支持基板内に形成された複数のセンサーと、マイクロウェルアレイとを含むセンサーアレイであって、前記アレイの各センサーは、前記センサーの近傍の1つ以上の所定の種の濃度または存在に関連する少なくとも1つの電気信号を生成するように構成され、前記マイクロウェルアレイは、各マイクロウェルが前記マイクロウェルアレイの表面上に開口部を有しかつ少なくとも1つのセンサー上に配置されるように、前記回路支持基板上に配置される、センサーアレイと、
対応するセンサーによって生成された出力信号によって決定可能な位置で、前記マイクロウェルにランダムに分配された、複数の分析物と
を含む、製造物。
【請求項16】
前記分析物それぞれの位置は、前記マイクロウェルアレイの前記表面における前記1つ以上の所定の種の濃度の変化に応じた前記出力信号の変化の遅延によって決定される、請求項15に記載の製造物。
【請求項17】
前記1つ以上の所定の種は水素イオンであり、その前記濃度の変化は、変化の大きさがpH1.0以下である階段関数である、請求項16に記載の製造物。
【請求項18】
前記分析物はそれぞれ、核酸フラグメントのクローン集団が付着した粒子を含む、請求項15に記載の製造物。
【請求項19】
各マイクロウェルが、前記各マイクロウェルと感知関係にある少なくとも1つのセンサーを有し、かつ各センサーは、分析物または前記分析物の近傍の分析物反応副生成物に応答して出力信号を生成することが可能であるように、マイクロウェルアレイが載置されたセンサーアレイからの出力信号のノイズを低減する方法であって、
前記マイクロウェルの一部に分析物が含まれるように、分析物を前記マイクロウェルアレイ上に配置する段階と、
分析物または反応副生成物を含むマイクロウェルによって生成された出力信号を入手し、前記出力信号から、分析物および/または反応副生成物を含まない複数の隣接マイクロウェルからの出力信号の平均を減算する段階と
を含む、方法。
【請求項20】
前記複数の隣接マイクロウェルは、前記マイクロウェルアレイの、前記分析物を含む前記マイクロウェルと同一の200×200個のマイクロウェル領域内にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の隣接マイクロウェルは、前記分析物を含む前記マイクロウェルを中心としかつ半径が200μm以下である前記マイクロウェルアレイの円形領域内において位置確認される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記平均の出力信号は、空マイクロウェルのセンサーによって生成される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記平均の出力信号は、反応副生成物を含まないマイクロウェルのセンサーによって生成される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記平均は、試薬変更ノイズを表す、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記分析物を含むマイクロウェルの部分は、前記マイクロウェルアレイの前記マイクロウェルの90パーセント以下である、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記分析物は固体担体であり、前記固体担体それぞれに核酸テンプレートのクローン集団が付着している、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記固体担体は粒子である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記粒子は、前記マイクロウェル内にランダムに配置される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
直線インターフェースパッケージ内に配置された様々な直線サイズのセンサーアレイとの流体工学インターフェースを形成するためのフローセル部材であって、
上面および下面を有する直線ボディーであって、前記直線ボディーの形状が、前記直線ボディーの下面を前記直線インターフェースパッケージに接着してセンサーアレイのための流体密封筺体を形成できるように、前記直線インターフェースパッケージの形状と整合され、前記上面の一端に入口が配置され、前記上面の他端に出口が配置される、直線ボディーと、
前記直線ボディーの内部の入口通路であって、前記入口通路は、前記入口から前記流体密封筺体への流体通路を提供し、前記流体通路は、前記直線ボディーの前記下面内に入口ポートを形成し、前記入口ポートは、前記センサーアレイの上方において前記センサーアレイの一端に配置される、入口通路と、
前記直線ボディーの内部の出口通路であって、前記出口通路は、前記出口から前記流体密封筺体への流体通路を提供し、前記流体通路は、前記直線ボディーの前記下面内に出口ポートを形成し、前記出口ポートは、前記センサーアレイの上方において前記入口ポートの一端の反対側の前記センサーアレイの一端に配置される、出口通路と
を含む、フローセル部材。
【請求項30】
前記入口は、前記上面の角部内において入口環と同心に配置され、前記出口は、前記入口および入口環に対して斜向かいに反対側の、前記上面角部内において出口環と同心に配置される、請求項29に記載のフローセル部材。
【請求項31】
前記入口環および出口環はそれぞれ半径を有し、前記入口ポートおよび前記出口ポートはそれぞれ、前記直線ボディーの前記下面上の、前記入口環および出口環の半径をそれぞれ有する垂直突起部内に配置される、請求項30に記載のフローセル部材。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【公表番号】特表2012−528329(P2012−528329A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513048(P2012−513048)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/001553
【国際公開番号】WO2010/138188
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】