説明

電気化学的方法によりシリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのいずれか一種以上を製造する方法

【課題】本発明は、生産フローが短く、汚染が無く、操作が簡単で、原料の獲得が容易で、設備が低廉であるだけでなく連続的な生産が容易である、シリコン化合物SiX或いはシリコン化合物SiXを含有する混合物から直接にシリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのいずれか一種以上を製造する、電気化学的方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、化合物SiX又は化合物SiXを含有する混合物を陰極とし、且つ陽極を設けて、金属化合物の溶融塩を含有する電解質中に設置すると共に、陰極と陽極に間に電圧を印加させ反応条件を制御して、陰極でSiナノ粉末、Siナノワイヤー及びSiナノチューブのいずれか一種以上を製造する、電気化学的方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的方法によりシリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのいずれか一種以上を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1次元のシリコンナノワイヤー(チューブ)は特有な電気特性、光学特性及び高界面活性で研究者から注目されている。現在、シリコンナノワイヤー(チューブ)の製造方法は多種多様であるが、その中には、レーザーアブレーション法(Morales A M, Lieber C M. Science,1998,279(9):208〜211;Lee C S, Wang N, Tang Y H, et al. MRS. Bulletin.,1999:36〜41)、化学気相蒸着法(CVD)(Wang N L, Zhang Y J, Zhu J. Journal of Materials Science Letters,2001,20:89〜91)、プラズマ強化化学気相蒸着法(PECVD)(Zeng X B, Xu Y Y, Zhang S B, et al. Journal of Crystal Growth,2003,247(1):13〜16)、熱気相蒸着法(Feng S Q, Yu D P, Zhang H Z, et al. Journal of Crystal Growth, 2000,209:513〜517)、溶液法(Holmes J D, Johnston K P, Doty R C, et al. Science,2000, 287:1471〜1473)、鋳型法(KokKeong L, Joan M R. Journal of Crystal Growth,2003,254(1):14〜22)、熱水法(Pei L Z, Tang Y H, Chen Y W, et al. Journal of Crystal Growth, 2005,289:423〜427)などが含まれる。レーザーアブレーション法により製造されたシリコンナノワイヤーは高収率及び高純度などの長所があるが、設備が高価で製品のコストが高くなる。一方、化学気相蒸着法及び熱気相蒸着法の製造コストは相対的に低いが、製造されたシリコンナノワイヤーの直径分布の範囲が広く且ナノワイヤー中に多量のナノ粒子チェーンが含まれてしまう。なお、溶液法により長さと直径の比が大きいシリコンナノワイヤーを製造することができるが、貴金属を触媒として使用するともに、溶剤は有毒の有機物質であるため、大きな環境汚染になる。また、鋳型法のような他の方法を利用したら収率が非常に低いといった問題がある。従って、従来のシリコンナノワイヤーの製造方法はそれぞれの長短所があるため、工業分野でのシリコンナノワイヤーの応用に制限があった。
【0003】
溶融塩系において、電気化学的方法を利用して固体化合物から直接に金属、合金及びある非金属を電解製造するプロセスは、イギリスのケンブリッジ大学のFray Derek John、Farthing Thomas William とChen Zhengが一緒に提案したものであるから、FFCケンブリッジプロセスとも呼ばれている。FFCケンブリッジプロセスは、伝統的なプロセスが比べられない利点がある。該方法では、原料としての固体化合物をワンステップの電解で金属や半金属或いは合金を得るようになっているから、プロセスのフローを短くするだけでなくエネルギーの消費と環境汚染を減少させて、耐火金属或いは合金の製錬コストを大幅に低減することができる。同時に、原料の組成と還元程度を制御できるから、機能性材料の製造にも適用される。この研究チームにより公開された国際特許「Removal of oxygen from metal oxides and solid solutions by Electrolysis in a fused salt」(WO1999/064638)と「Metal and alloy powders and powder fabrication」(WO2002/040725)には、いずれも固体シリカ粉末から直接にシリコン粉末を電解製造する方法が公開されている。また、日本特許(JP2006/321688)には、シリカ粉末の中にシリコンを添加するか、或いは単結晶シリコン板を導体として高純度の石英ガラスを直接に電解還元を行わせて、シリコン粉末を製造する製造方法が開示されている。この三つの特許文献中に記載された上記の方法により製造されたシリコンはいずれもミクロンのシリコン粉末である。シリコン化合物SiX或いはシリコン化合物SiXを含有する混合物から直接にシリコンナノ、シリコンナノワイヤー(チューブ)を製造する電気化学的方法に関しては、国際的な報道がまだされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO1999/064638
【特許文献2】WO2002/040725
【特許文献3】JP2006/321688
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Morales A M, Lieber C M. Science,1998,279(9):208〜211;Lee C S, Wang N, Tang Y H, et al. MRS. Bulletin.,1999:36〜41
【非特許文献2】Wang N L, Zhang Y J, Zhu J. Journal of Materials Science Letters,2001,20:89〜91
【非特許文献3】Zeng X B, Xu Y Y, Zhang S B, et al. Journal of Crystal Growth,2003,247(1):13〜16
【非特許文献4】Feng S Q, Yu D P, Zhang H Z, et al. Journal of Crystal Growth, 2000,209:513〜517
【非特許文献5】Holmes J D, Johnston K P, Doty R C, et al. Science,2000, 287:1471〜1473
【非特許文献6】KokKeong L, Joan M R. Journal of Crystal Growth,2003,254(1):14〜22
【非特許文献7】Pei L Z, Tang Y H, Chen Y W, et al. Journal of Crystal Growth, 2005,289:423〜427
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、生産フローが短く、汚染が無く、操作が簡単で、原料の獲得が容易で、設備が低廉であるだけでなく連続的な生産が容易である、シリコン化合物SiX或いはシリコン化合物SiXを含有する混合物から直接にシリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのいずれか一種以上を製造する、電気化学的方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、Xが、O、S、C又はNである化合物SiXを陰極とし、且つ陽極を設けて、金属化合物の溶融塩を含有する電解質中に設置すると共に、陰極と陽極の間に電圧を印加させて電解を行って、陰極でSiナノ粉末、Siナノワイヤー及びSiナノチューブのいずれか一種以上が得られる、電気化学的方法によりSi元素化合物SiXの粉末から直接にシリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのいずれか一種以上を製造する方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、陰極でSiナノワイヤー及びSiナノチューブが製造でき、陰極で単一のSiナノワイヤーも製造できる。また、陰極でSiナノ粉末、Siナノワイヤー及びSiナノチューブが製造でき、さらに、陰極で単一のSiナノ粉末が製造できる。
【0009】
また、本発明は、Xが、O、S、C又はNである化合物SiXを含有する混合物を陰極とし、且つ陽極を設けて、金属化合物の溶融塩を含有する電解質中に設置すると共に、陰極と陽極に間に電圧を印加させて電解を行って、陰極でSiナノ粉末、Siナノワイヤー及びSiナノチューブのいずれか一種以上を含有する電解産物が得られる、電気化学的方法によりSi元素化合物SiXの混合物を含有する粉末から、直接にSiナノ粉末、Siナノワイヤー及びSiナノチューブのいずれか一種以上を製造する方法を提供する。
【0010】
本発明によれば、陰極でSiナノワイヤー及びナノチューブを含有した電解産物が製造でき、陰極でSiナノワイヤーを含有した電解産物も製造できる。また、陰極でSiナノ粉末、ナノワイヤー及びナノチューブを含有した電解産物も製造でき、さらに、陰極でSiナノ粉末を含有する電解産物も製造できる。
【0011】
また、本発明の方法で使用される化合物SiX粉末の平均粒子径は1μmより小さい。
【0012】
前記化合物SiXの混合物は、化合物SiXの粉末に金属、合金、金属化合物M1Y及び非金属のいずれか一種以上を添加してなるものであり、前記金属、合金、金属化合物M1Y及び非金属は、粉末である。
【0013】
前記金属は、Au、Pt、Ag、Cu、Fe、Co、Ni、Cr、Mo、Zr、Ti、Al、Mg、Nbのいずれか一種以上である。
【0014】
前記合金は、Au、Pt、Ag、Cu、Fe、Co、Ni、Cr、Mo、Zr、Ti、Al、Mg、Nbのいずれか二種以上の金属を含有してなるものである。
【0015】
前記金属化合物M1Yにおいて、M1は、Au、Pt、Ag、Cu、Fe、Co、Ni、Cr、Mo、Zr、Ti、Al、Mg又はNbであり、Yは、O、S、C又はNである。
【0016】
前記非金属は、C、Si、Ge、S、P、Bのいずれか一種以上である。
【0017】
前記金属化合物溶融塩を含有する電解質において、金属化合物の分子式は、MY1であり、Mは、Ca、Ba、Li、Al、Cs、Na、K又はSrであり、Y1は、Cl又はFである。
【0018】
前記金属化合物溶融塩を含有する電解質は、一種以上の電解質塩である。
【0019】
前記電解質は、主に溶融塩CaCl2が高温溶融の過程で加水分解されて生成するCaOを含有する。
【0020】
陰極と陽極の間に印加される電圧は3.2Vより低い。
【0021】
陰極と陽極の間に印加される電圧は電解質の分解電圧より低い。
【0022】
電解は500〜1000℃の温度で行われる。
【0023】
前記Siナノ粉末の平均粒子径は、100nmより小さい。
前記Siナノワイヤーの直径は、100nmより小さい。
前記Siナノチューブの直径は、100nmより小さい。
前記電解産物において、Siナノ粉末を含有する粒子径は100nmより小さく、Siナノワイヤーの直径は100nmより小さく、Siナノチューブの直径は100nmより小さい。
【0024】
前記電解産物は、Siナノ粉末、ナノワイヤー及びナノチューブのいずれか一種以上を含有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の製造方法は、以下の利点がある。
(1)使用される原料が豊富で、原材料及び製造過程がいずれも環境汚染を発生しない。
(2)電解液の中でシリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのいずれか一種以上を製造するため、もつれや絡み合わせのような問題が存在しない。
(3)製造されたシリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのいずれか一種以上は、形態が制御でき、均一な粒子径を持つ。
(4)製造工程が簡単で、操作が容易で、設備も簡便である。
(5)原料と産物はいずれも固体の形で添加されるか取り出されるため、連続化の生産の実現が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】シリカを原料として、800℃の温度で、本発明によって製造されたシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブの走査型電子顕微鏡像である。
【図2】シリカを原料として、800℃の温度で、本発明によって製造された一つのシリコンナノワイヤーの透過電子顕微鏡像である。
【図3】シリカを原料として、800℃の温度で、本発明によって製造されたシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのX線回折像である。
【図4】シリカを原料として、800℃の温度で、本発明によって製造されたシリコンナノワイヤーの高分解能透過電子顕微鏡像である。
【図5】シリカを原料として、1000℃の温度で、本発明によって製造されたシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブの走査型電子顕微鏡像である。
【図6】シリカを原料として、600℃の温度で、本発明によって製造されたシリコンナノ粉末の走査型電子顕微鏡像である。
【図7】銀粉とシリカの混合物を原料として、800℃の温度で、本発明によって製造されたシリコンナノワイヤー、シリコンナノチューブ及びシリコンナノ粉末の走査型電子顕微鏡像である。
【図8】コバルト粉末とシリカの混合物を原料として、800℃の温度で、本発明によって製造されたシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブの走査型電子顕微鏡像である。
【図9】ニッケル粉末とシリカの混合物を原料として、800℃の温度で、本発明によって製造されたシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブの走査型電子顕微鏡像である。
【図10】ケイ素粉末とシリカの混合物を原料として、900℃の温度で、本発明によって製造されたシリコンナノワイヤー及びシリコンナノ粉末の走査型電子顕微鏡像である。
【図11】銅粉とシリカの混合物を原料として、800℃の温度で、本発明によって製造されたシリコンナノワイヤーの走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面と実施例を合わせて本発明について具体的に説明する。ただし、これら説明はただ本発明をさらに詳細に説明するためのもので、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0028】
本発明は、以下のような技術手段を提供する。
ケイ素化合物SiX或いはケイ素化合物SiXを含有する混合物から、直接にシリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのいずれか一種以上を製造する電気化学的方法において、
1.ケイ素化合物SiX或いはケイ素化合物SiXを含有する混合物を陰極として設置して、金属化合物MY1溶融塩を含有する電解質と接触させ、陽極を設置して該電解質と接触させ、陰極と陽極の間に電圧を印加して反応条件を制御する。
ケイ素化合物SiX或いはケイ素化合物SiXを含有する混合物を陰極としてする具体的な実施段階では、ケイ素化合物SiXを接着剤と混合するか、或いは、ケイ素化合物SiXを含有する混合物の粉末を、混合物粉末の総重量の40重量%〜60重量%に相当する蒸留水又は無水エタノールと混合し、混合後、プレスされて陰極を形成する。
2.上記1に記載の方法において、ケイ素化合物SiX中のXは、O、S、C又はNのいずれかである。
3.上記1に記載の方法において、ケイ素化合物SiXを含有する混合物は、ケイ素化合物SiXにAu、Pt、Ag、Cu、Fe、Co、Ni、Cr、Mo、Zr、Ti、Al、Mg、Nbのいずれか一種以上の金属を添加するか、或いは、上記の元素中のいずれか二種以上の金属を含有する合金を添加してなる。
4.上記1に記載の方法において、ケイ素化合物SiXを含有する混合物は、ケイ素化合物SiXにC、Si、Ge、S、P、Bのいずれか一種以上を含有する非金属を添加してなる。
5.上記1に記載の方法において、ケイ素化合物SiXを含有する混合物は、ケイ素化合物SiXに金属化合物M1Yを添加して形成し、該M1は、Au、Pt、Ag、Cu、Fe、Co、Ni、Cr、Mo、Zr、Ti、Al、Mg又はNbであり、Yは、O、S、C又はNである。
上記ケイ素化合物SiXを含有する混合物は、ケイ素化合物SiXに金属、合金、金属化合物M1Y及び非金属のいずれか一種以上を添加してなる。その中、添加量はケイ素化合物SiXを含有する混合物総量の30wt%より小さい。
6.上記1に記載の方法において、金属化合物MY1溶融塩の電解質におけるMは、Ca、Ba、Li、Al、Cs、Na、K又はSrであり、Y1はCl又はFである。
7.上記1、5に記載の方法において、金属化合物MY1溶融塩を含有する電解質は、一種以上の電解質塩である。
8.上記1に記載の方法において、上記電解質はCaOを含有する。
9.上記1に記載の方法において、陰極と陽極の間に印加される電圧は、3.2Vより低い。
10.上記1に記載の方法において、陰極と陽極の間に印加される電圧は、電解質の分解電圧より低い。
11.上記1に記載の方法において、電解は500〜1000℃の温度で行われる。
12.上記1に記載の方法において、電解が終わったら、産物は作動電極と一緒に溶融塩中から取り出す可能で、必要によって、新たにシリコンナノ化合物SiX又はシリコンナノ化合物SiXの混合物からなる固体電極を入れて再度電解を開始し、シリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのいずれか一種以上を連続生産できる。
13.上記1に記載の方法において、電解産物を取り出した後、不活性ガス雰囲気で室温まで冷却させ、希釈された無機酸、水及び有機溶媒の中で順次に十分に洗浄し、真空中で乾燥させる。上記希釈された無機酸は、1vol%〜3vol%(体積百分率)の塩酸にすることができる。
14.上記1に記載の方法において、電解産物としてのシリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブの平均直径は100nmより小さい。
15.上記1に記載の方法において、電気産物はシリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのいずれかの一種以上である。
【0029】
図1、図2(図2は一つのシリコンナノワイヤーの透過電子顕微鏡像である)に示すように、純粋なシリカナノメーターの二酸化珪素を原料とする場合、代表的な電解産物としてのシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブの走査型電子顕微鏡及び透過電子顕微鏡像によると、上記のシリコンナノワイヤーの直径は50〜100nmであり、長さは2〜5μmである。図3に示すように、X線回折図形によると産物はシリコン結晶である。図4(図4はシリコンナノワイヤーの高分解能透過電子顕微鏡像である)に示すように、産物の高分解能透過電子顕微鏡像は、シリコンナノワイヤーの表面に一層のアモルファスシリコンを有することを表している。また、測定によって算出されたシリコン結晶の間隔は0.31nmであることから、このシリコン面は(111)面であることがわかる。図5及び図6は、純粋なシリカを原料として、異なる温度で製造されたシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブであり(図5)、純粋なシリカを原料として、異なる温度で製造されたシリコンナノ粉末である(図6)。
【0030】
以下、実施例によって、本発明をより具体的に説明するが、実施例に記載の原料である“ナノSiO2粉末”とは、粒子径が100nm以下の粉末を言う。実施例1〜3は、純粋なSiO2粉末の電解還元によってシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブを製造することに関する。
【0031】
実施例1
75wt%の、純度99.95%、平均粒子径0.2μmのSiO2粉末を、25wt%の接着剤と混合(SiO2粉末と接着剤の総重量を100%とする)させた後、5MPaの機械的ストレスによって直径が約10mm、厚さが1.1mmになるようにプレスされる。そして、1100℃の大気中で約5時間加熱し、焼結成形されたSiO2のペレットを導電する陰極電流コレクタと複合させて陰極とし、黒鉛の棒を陽極とし、溶融CaCl2を電解質として、800℃のアルゴン雰囲気で、電圧安定装置を利用して電圧を制御しながら定電圧電解を行う。このときの槽電圧は3.0Vである。2時間の電解を行って生成された電解産物を、1vol%の希塩酸、水、無水エタノールで順次に洗浄させ、真空乾燥させて、得られた産物が、図1に示すような、直径が50nm左右、長さが2〜5μmの曲がれたシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブである。
【0032】
実施例2
75wt%の、純度99.95%、平均粒子径0.25μmのSiO2粉末を、25wt%の接着剤と混合(SiO2粉末と接着剤の総重量を100%とする)させた後、10MPaの機械的ストレスによって直径が約10mm、厚さが1.2mmになるようにプレスされる。そして、1200℃の大気中で約4時間加熱して焼結成形されたSiO2のペレットを導電する陰極電流コレクタと複合させて陰極とし、黒鉛の棒を陽極とし、溶融CaCl2を電解質として、1000℃のアルゴン雰囲気で、電圧安定装置を利用して電圧を制御しながら定電圧電解を行う。このときの槽電圧は2.0Vである。4時間の電解を行って生成された電解産物を、1vol%の希塩酸、水、無水エタノールで順次に洗浄させ、真空中で乾燥させて、得られた産物が、図5に示すような、直径が50〜100nm、長さが2〜5μmの曲がったシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブである。これ以外、産物は少量のミクロンの球状ものも含有する。
【0033】
実施例3
75wt%の、純度が99.95%のナノSiO2粉末を、25wt%の接着剤と混合(SiO2粉末と接着剤の総重量を100%とする)させた後、15MPaの機械的ストレスによって直径が約10mm、厚さが1.5mmになるようにプレスされる。そして、100℃の大気中で約1.5時間加熱して1100℃まで昇温してから3時間保温する。これにより焼結成形されたSiO2のペレットを導電する陰極電流コレクタと複合させたものを陰極とし、黒鉛の棒を陽極とし、CaCl2+NaClの混合塩(その中、CaCl2は混合塩総重量の51%、NaClは混合塩総重量の49%を占める)を電解質とし、600℃のアルゴン雰囲気で電圧安定装置を利用して電圧を制御しながら定電圧電解を行う。このときの槽電圧は2.5Vである。5時間の電解を行って生成されて電解産物を、1vol%の希塩酸、水、無水エタノールで順次に洗浄させ、真空中で乾燥させて、得られた産物が、主に図6に示すような30〜50nmのナノ球である。なお、高分解能透過電子顕微鏡像から、産物中にごくわずかな、少し曲がったシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブの存在が見られる。
【0034】
図7〜図12は、ケイ素化合物SiXを含有する混合物を原料として製造されたシリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのいずれか一種以上である。実施例4〜10は、導電性の物質を含有するSiO2粉末の電解還元によるシリコンナノ粉末、シリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブのいずれか一種以上の製造に関する。
【0035】
実施例4
75wt%の、純度が99.95%のナノSiO2粉末を、25wt%の分析用試薬の300メッシュ銀粉と(SiO2粉末と銀粉の総重量を100%とする)均一に混合させた後、重量が上記固体粉末の50%に相当する蒸留水を添加する。そして、15MPaの機械的ストレスによって直径が約10mm、厚さが1.5mmになるようにプレスされたものを、100℃のアルゴン雰囲気で約1.5時間加熱して800℃まで昇温してから3時間保温する。これにより焼結成形されたSiO2の混合物を含有したペレットを導電する陰極電流コレクタと複合させたものを陰極とし、黒鉛の棒を陽極とし、CaCl2+NaClの混合塩(その中、CaCl2は混合塩総重量の51%、NaClは混合塩総重量の49%を占める)を電解質とし、800℃のアルゴン雰囲気で電圧安定装置を利用して電圧を制御しながら定電圧電解を行う。このときの槽電圧は2.5Vである。5時間の電解を行って生成された電解産物を、1vol%の希塩酸、水、無水エタノールで順次に洗浄させ、真空中で乾燥させて、得られた産物は、図7に示すような、直径30nm左右、長さが1μm左右であるシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブである。この得られたシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブは、少し曲がっていて、表面は平滑である。
【0036】
実施例5
80wt%の、純度が99.95%のナノSiO2粉末を、20wt%の粒子径が200nmである分析用試薬のコバルト粉と均一に混合(SiO2粉末とコバルト粉の総重量を100%とする)させた後、重量が上記固体粉末の50%に相当する蒸留水を添加する。そして、4MPaの機械的ストレスによって直径が約10mm、厚さが1.5mmになるようにプレスされる。そして、150℃のアルゴン雰囲気で約1.5時間加熱して1000℃まで昇温してから3時間保温する。これにより焼結成形されたSiO2の混合物を含有したペレットを導電する陰極電流コレクタと複合させたものを陰極とし、黒鉛の棒を陽極とし、CaCl2+NaClの混合溶融塩(その中、CaCl2は混合塩総重量の51%、NaClは混合塩総重量の49%を占める)を電解質とし、800℃のアルゴン雰囲気で電圧安定装置を利用して電圧を制御しながら定電圧電解を行う。このときの槽電圧は2.2Vである。4時間の電解を行って生成された電解産物を、1vol%の希塩酸、水、無水エタノールで順次に洗浄させ、真空中で乾燥させて得られた産物は、図8に示すような、直径100nm左右、長さが1μmのシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブである。且つ、この得られたシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブの表面は、10nm左右の小さい粉末がたくさん密着した極めて粗い構造となっている。
【0037】
実施例6
80wt%の、純度が99.95%のナノSiO2粉末を、20wt%の、直径が2〜3μmのニッケル繊維と均一に混合(SiO2粉末とニッケル繊維の総重量を100%とする)させた後、重量が上記の固体粉末の50%に相当する無水エタノールを添加する。そして、15MPaの機械的ストレスによって直径が約10mm、厚さが1.5mmになるようにプレスされた後、100℃のアルゴン雰囲気中で約1.5時間加熱して1000℃まで昇温してから3時間保温する。このとき、これにより焼結成形されたSiO2の混合物を含有したペレットを導電する陰極電流コレクタと複合させたものを陰極とし、黒鉛の棒を陽極とし、CaCl2+NaClの混合溶融塩(その中、CaCl2は混合塩総重量の51%、NaClは混合塩総重量の49%を占める)を電解質とし、800℃のアルゴン雰囲気で電圧安定装置を利用して電圧を制御しながら定電圧電解を行う。このときの槽電圧は2.0Vである。5時間の電解を行って生成された電解産物を、1vol%の希塩酸、水、無水エタノールで順次に洗浄させ、真空中で乾燥させて、得られた産物は、図9に示すような、直径100nm左右、長さが6μmのシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブである。且つ、この得られたシリコンナノワイヤー及びシリコンナノチューブの表面は、10nm左右の小さい粉末がたくさん密着した極めて粗い構造となっている。
【0038】
実施例7
80wt%の、純度が99.95%のナノSiO2粉末を、20wt%の、粒子径が300nmのSi粉と均一に混合(SiO2粉末とSi粉の総重量を100%とする)させた後、重量が上記固体粉末の50%に相当する無水エタノールを添加する。そして、4MPaの機械的ストレスによって直径が約10mm、厚さが1.5mmになるようにプレスされたものを100℃のアルゴン雰囲気で約1.5時間加熱して1000℃まで昇温してから3時間保温する。これにより焼結成形されたSiO2の混合物を含有したペレットを導電する陰極電流コレクタと複合させたものを陰極とし、黒鉛の棒を陽極とし、CaCl2+NaClの混合溶融塩(その中、CaCl2は混合塩総重量の51%、NaClは混合塩総重量の49%を占める)を電解質とし、900℃のアルゴン雰囲気で電圧安定装置を利用して電圧を制御しながら定電圧電解を行う。このときの槽電圧は2.0Vである。5時間の電解を行って生成された電解産物を、1vol%の希塩酸、水、無水エタノールで順次に洗浄させ、真空中で乾燥させて得られた産物は、主に図10に示すような、50〜80nmの球状の粉末である。
【0039】
実施例8
80wt%の、純度が99.95%のナノSiO2粉末を、20wt%の、分析用試薬としての300メッシュ銅粉と均一に混合(SiO2粉末と銅粉の総重量を100%とする)させた後、重量が上記固体粉末の50%に相当する蒸留水を添加する。そして、6MPaの機械的ストレスによって直径が約10mm、厚さが1.5mmになるようにプレスされたものを150℃のアルゴンガス中で約1.5時間加熱して900℃まで昇温してから3時間保温する。このとき、これにより焼結成形されたSiO2の混合物を含有したペレットを導電する陰極電流コレクタと複合させたものを陰極とし、黒鉛の棒を陽極とし、CaCl2+NaClの混合塩(その中、CaCl2は混合塩総重量の51%、NaClは混合塩総重量の49%を占める)を電解質とし、800℃のアルゴン雰囲気で電圧安定装置を利用して電圧を制御しながら定電圧電解を行う。このときの槽電圧は2.5Vである。5時間の電解を行って生成された電解産物を、1vol%の希塩酸、水、無水エタノールで順次に洗浄させ、真空中で乾燥させて得られた産物は、直径が50〜100nm左右、長さが5μmの真っすぐなシリコンナノワイヤーである。
【0040】
実施例9
80wt%の、純度が99.95%のナノSiO2粉末を、20wt%の、粒子径が5μmである分析用試薬としての黒鉛と均一に混合(SiO2粉末と黒鉛の総重量を100%とする)させた後、重量が上記固体粉末の50%に相当する蒸留水を添加する。そして、6MPaの機械的ストレスによって直径が約10mm、厚さが1.5mmになるようにプレスされたものを、150℃のアルゴン雰囲気で約1.5時間加熱して900℃まで昇温してから3時間保温する。このとき、これにより焼結成形されたSiO2の混合物を含有したペレットを導電する陰極電流コレクタと複合させたものを陰極とし、黒鉛の棒を陽極とし、CaCl2+NaClの混合塩(その中、CaCl2は混合塩総重量の51%、NaClは混合塩総重量の49%を占める)を電解質とし、800℃のアルゴン雰囲気で電圧安定装置を利用して電圧を制御しながら定電圧電解を行うことにする。このときの槽電圧は2.5Vである。5時間の電解を行って生成された電解産物を、1vol%の希塩酸、水、無水エタノールで順次に洗浄させ、真空中で乾燥させて得られた産物は、直径が150nm左右、長さが4μmのシリコンナノワイヤーである。
【0041】
実施例10
80wt%の、純度が99.95%のナノSiO2粉末を、20wt%の、粒子径が100nm左右である分析用試薬としてのCuOと均一に混合(SiO2粉末とCuOの総重量を100%とする)させた後、重量が上記固体粉末の50%に相当する蒸留水を添加する。そして、6MPaの機械的ストレスによって直径が約10mm、厚さが1.5mmになるようにプレスされたものを、150℃のアルゴンガス中で約1.5時間加熱して900℃まで昇温してから3時間保温する。このとき、これにより焼結成形されたSiO2の混合物を含有したペレットを導電する陰極電流コレクタと複合させたものを陰極とし、黒鉛の棒を陽極とし、CaCl2+NaClの混合塩(その中、CaCl2は混合塩総重量の51%、NaClは混合塩総重量の49%を占める)を電解質とし、800℃のアルゴン雰囲気で電圧安定装置を利用して電圧を制御しながら定電圧電解を行う。このときの槽電圧は2.5Vである。5時間の電解を行って生成された電解産物を、1vol%の希塩酸、水、無水エタノールで順次に洗浄させ、真空中で乾燥させて得られた産物は、直径が70nm左右、長さが6μmのシリコンナノワイヤーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Xが、O、S、C又はNである化合物SiXを陰極とし、且つ陽極を設けて、金属化合物の溶融塩を含有する電解質中に設置すると共に、陰極と陽極の間に電圧を印加させて電解を行って、陰極でSiナノ粉末、Siナノワイヤー及びSiナノチューブのいずれか一種以上が得られる、電気化学的方法によりSi元素化合物SiXの粉末から直接にSiナノ粉末、Siナノワイヤー及びSiナノチューブのいずれか一種以上を製造する方法。
【請求項2】
Xが、O、S、C又はNである化合物SiXを含有する混合物を陰極とし、且つ陽極を設けて、金属化合物の溶融塩を含有する電解質中に設置すると共に、陰極と陽極に間に電圧を印加させて電解を行って、陰極でSiナノ粉末、Siナノワイヤー及びSiナノチューブのいずれか一種以上を含有する電解産物が得られる、電気化学的方法によりSi元素化合物SiXの混合物を含有する粉末から、直接にSiナノ粉末、Siナノワイヤー及びSiナノチューブのいずれか一種以上を製造する方法。
【請求項3】
前記化合物SiXの混合物は、化合物SiXの粉末に金属、合金、金属化合物M1Y及び非金属のいずれか一種以上を添加してなるものであり、
前記金属、合金、金属化合物M1Y及び非金属は粉末であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属は、Au、Pt、Ag、Cu、Fe、Co、Ni、Cr、Mo、Zr、Ti、Al、Mg、Nbのいずれか一種以上であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記合金は、Au、Pt、Ag、Cu、Fe、Co、Ni、Cr、Mo、Zr、Ti、Al、Mg、Nbのいずれか二種以上の金属を含有することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記金属化合物M1Yにおいて、M1はAu、Pt、Ag、Cu、Fe、Co、Ni、Cr、Mo、Zr、Ti、Al、Mg又はNbであり、Yは、O、S、C又はNであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記非金属は、C、Si、Ge、S、P、Bのいずれか一種以上であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
前記金属化合物の溶融塩を含有する電解質において、金属化合物の分子式は、MY1であり、Mは、Ca、Ba、Li、Al、Cs、Na、K又はSrであり、Y1は、Cl又はFであることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記金属化合物の溶融塩を含有する電解質は、一種以上の電解質塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項10】
前記電解質はCaOを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項11】
前記陰極と陽極の間に印加される電圧は、3.2Vより低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項12】
前記陰極と陽極の間に印加される電圧は、電解質の分解電圧より低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項13】
電解は、500〜1000℃の温度で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項14】
前記Siナノ粉末の平均粒子径は、100nmより小さいことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
前記Siナノワイヤーの直径は、100nmより小さいことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
前記Siナノチューブの直径は、100nmより小さいことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項17】
前記電解産物に含有されているSiナノ粉末の粒子径は100nmより小さく、前記電解産物に含有されているSiナノワイヤーの直径は100nmより小さく、前記電解産物に含有されているSiナノチューブの直径は100nmより小さいことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−507622(P2012−507622A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533525(P2011−533525)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/CN2009/074801
【国際公開番号】WO2010/051759
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(508283439)ジェネラル リサーチ インスティテュート フォア ノンフェラス メタルス (2)
【Fターム(参考)】