説明

電気化学的腐食電位プローブアセンブリ

【課題】原子炉システム内の水化学を監視する電気化学的腐食電位プローブアセンブリを提供する。
【解決手段】高流速原子炉配管内のECPを監視するための電気化学的腐食電位(ECP)プローブアセンブリ110は、ECPセンサ100を越える、又はその周囲の流線を改善するエアフォイル形状のECPカバー114を含む。エアフォイル形状のカバーは、ECPカバー114の表面に垂直に穿孔されるフローホールを含む。従って、ECPプローブアセンブリ100内への炉水の流れ方向が変更され、ECPプローブ110への損傷を防止するのに十分にECPカバー114内部の流速を低減する。後付け部品として使用し易くするため、ECPカバー114は、既存のプローブウェルとプローブサブアセンブリの幾何形状に適合する円形セクションに隣接する楕円セクションを有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、原子炉に関し、より具体的には原子炉システム内の水化学を監視する電気化学的腐食電位プローブアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
水化学の監視は、原子炉システムの信頼性があり、安全で効率的な運転にとって不可欠であることは知られている。具体的に、オペレータは、ほとんどが原子炉の一次冷却水の高い動作温度及び一次冷却水中の汚染物に起因する腐食状態に関するデータを、オンラインとオフラインで定期的に収集する。
【0003】
沸騰水型原子炉(BWR)の場合は、原子炉冷却水浄化(RWCU)システムが核分裂生成物、腐食生成物、及びその他の溶解性及び不溶解性不純物を除去することによって原子炉冷却水の高い水質を保つ。不純物の中性子放射化や原子炉の融解物質から生ずる望ましくない化学種や放射性物質を除去するため、RWCUは腐食物のろ過や腐食軽減などの多様な手段を使用してもよい。一般に、水は方向転換のために隔離弁を、冷却のために熱交換器を、望ましくない種を除去するためにイオン交換器を通り、浄化された水は炉心内に再循環する。
【0004】
理想的には、腐食軽減は多くの場合、水素を原子炉給水系に注入することによって精密に、選択的に、且つ局部的に行われる。水素注入(HWC)が、酸素や過酸化水素などの酸化種を希釈し、中和する。そうしないと、これらの種は、ステンレス鋼の反応炉部品などの腐食の影響を受け易い材料の粒界応力腐食割れ(IGSCC)の原因になることがある。
【0005】
精密で選択的な腐食軽減が望ましいのは、1つの原子炉にとって適切な軽減レベルが別の原子炉にとっては不適切であり、不必要な措置のコストや影響が損失になるからである。例えば、過度のHWCは許容できない高放射レベルと線量を生じることがある。
【0006】
局部的な軽減が望ましいことが多いのは、流量及び放射レベルが原子炉システム内の異なる位置で変化し、それが原子炉内の材料の電気化学的な腐食電位(ECP)を低減する酸素濃度を達成するために必要な水素量に悪影響を及ぼすからである。
【0007】
ECPセンサが広く普及しており、原子炉システム全体の様々なサンプルサイトで継続的に水化学を監視して、軽減をシステム内の実際の状態に適合させ、特定の原子炉部品の性能を予測する。例えば酸素濃度を計測するため、ECPセンサは、炉水がセンサ内、及び1つ又は複数のECPプローブの周囲に流れるように、サンプルサイトでの流れと「インライン」で機能するように構成され、配置される。ECPセンサは、一次系配管(例えば原子炉再循環配管、ボトムヘッドドレン配管、及び原子炉浄化配管)内の溶接ネックフランジに設置されることが多い。本明細書で用いる「ECPセンサ」は、1つ又は複数のECPプローブを含み、更にケーブルやワイヤ、コネクタ、取付け具、及び容器を含むがそれらに限定されない追加の関連部品を含み得るECPプローブアセンブリを指す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
代表的なBWR ECPセンサは、過酷環境、すなわち高レベルの放射線被曝、毎秒数メートルの流速、及び300℃に及ぶ高い水温環境で動作する。ECPセンサの主な脅威は、RWCU動作中のセンサプローブにおける過度の乱流、又はその周囲での流速である。ECPプローブの周囲の高い水流速によりプローブが損傷し、プローブから原子炉の水再循環ループ内にデブリが混入することがある。このデブリが重要な問題であるのは、これがポンプ羽根を損傷し、フィルタのスクリーンを詰まらせ、最悪の場合、燃料棒スペーサ内に詰まり、燃料棒被覆管のフレッティングを引き起こす可能性があるためである。ECPセンサの損傷による副次的な結果により、ECP計測が不正確に、又は不可能になるため、センサの故障によって耐用年数が単一の燃料サイクルよりも大幅に短縮することがある。最後に、ECPプローブの幾何形状及び配向によって、RWCU配管内の渦発散や、流れ励起振動を誘発したり、増大したりすることがある。従って、原子炉の稼働中にECPセンサの損傷を防止するシステム及び方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ECPプローブ又はカバー部品に応力をかける高い圧力差を生ずることなく、流線を改善し、ECPセンサを通る内部流を低減する幾何形状を有するECPカバーを含むECPセンサで有害な乱流及び流速の問題に対処する。これにより、ECPカバーは、原子炉内の水ループを汚染するプローブにデブリが発生する可能性を低くし、ECPセンサの信頼性を高める。
【0010】
本発明より前に、ECPセンサの「パーツキャッチャーカバー」を作製する技術的努力がなされていた。提案されているこのカバーは、ECPプローブ周囲の高流速の問題の結果として生ずる問題に対処するものである。すなわち、カバーはECPプローブのデブリを捕捉し、これが原子炉の水流ループ内に入るのを防止することを意図している。この問題の結果に対処する代わりに、本発明は問題の根源に対処し、ECPプローブの周囲の高い水流速を解消するものである。ECPカバーは、ECPカバー内のフローホールの改良された幾何形状及び構成を介してその目的を達成する。有利には、様々な実施形態の原理と教示によって、ECPプローブ、及びその他のECPセンサ部品の耐用年数が大幅に延び、損傷した原子炉金属部品及び燃料被覆管を交換したり補償したりする必要性が低下し、ECPプローブの修理やメンテナンスの必要性が少なくなる。
【0011】
第1の態様によれば、ECPプローブアセンブリは、導管内の流体力学にほとんど悪影響を及ぼさずにECPセンサの性能を著しく向上させる幾何形状を有するECPカバーを含む。特に、ある実施形態では、ECPカバーの少なくとも遠端部の断面はエアフォイルの形状、すなわち、一般に細長いフットボール形と呼んでもよい尖った前縁と後縁とを有する楕円形と記載してもよい形状を有する。この形状によって、炉水が流れる導管内の抵抗や望ましくない作用(渦発散)が有利に低減される。本発明で用いる「導管」と言う用語は、パイプ、管、導水路、空洞、開口、シャフト、入口などを含むがこれらに限定されない、流体が搬送される管路を指す。ある実施形態では、ECPカバーは、略円筒形の形状である既存のプローブで既存のプローブサブアセンブリと共に使用できるように構成される。そのために、ECPカバーの遠端部、すなわち導管内に延びる端部の形状は楕円形であり、一方、下部の形状はプローブと良好に適合するように円形である。これらの実施形態のある形態では、ECPカバーの楕円セクションは円形セクションに突然移行し、一方、別の実施形態では、移行部は断面形状が緩やかに変化する部分である。いずれにせよ、異なる2つのセクションは、製造上の考慮により別個に製造され、連結されてもよい。
【0012】
ある実施形態では、ECPカバーを金属薄板又はその他の適宜の材料の、互いに連結されて前縁の継目と後縁の継目とを画成する2つの概ね同じ平坦なサイドパネルから製造できる。前縁と後縁とは互いに引き寄せられてサイドパネルを撓ませ、エアフォイルの形状、すなわち継目によって画成される尖った縁部を有する楕円形の断面を画成する。当業者は、本発明の趣旨から逸脱することなく、エアフォイル形状の円筒を、押し出し加工を含むがそれに限定されない幾つかの別の方法で形成することができ、又は、対向縁部で連結されて前縁部と後縁部の一方を形成し、中央で折り曲げて前縁部と後縁部の他方を形成する一枚のサイドパネルから形成することができることを理解されよう。上部パネルはECPカバーの一方の開放端を閉鎖し、一部が閉鎖されたエアフォイル形状(楕円形)の円筒が製造される。
【0013】
第2の態様によれば、ECPカバーは、流体が大幅に低い流速でECPプローブに接触できるように、カバーを貫いて穿孔されたフローホールを有する。フローホールの数と位置は、好ましくは製造の複雑さやコストを不必要に高めることなく所望の結果が得られるように最適化される。この最適化がなされないと、ECPカバーはECPプローブを比較的高い流速に晒すことになり、ECPプローブを破損する水圧負荷が生じ、これによって水化学計測及び制御が妨げられ、場合によっては原子炉の水流ループ内に金属片が混入し、放射線に曝され、ポンプの羽根車に影響を及ぼし、又はより重大な場合はフレッティングによって燃料被覆管の故障を引き起こすことがある。
【0014】
より具体的には、第1の実施形態では、ECPカバーのフローホールは、カバーの表面に対して垂直に穿孔される。その結果、この実施形態のフローホールの少なくとも一部は、導管を通る流れの方向には穿孔されない。従って、ECPカバーに流入してECPプローブを通過して流れる水は、フローホール内に流入するには流れの方向を変更する必要があり、それによってエネルギ損失が生じ、内部流速が低下する。付加的な利点として、ECPカバーの表面に対して垂直にフローホールを穿孔することで製造が簡単になる。前述のように、ECPカバーの側面は2枚のパネルから形成されるので、2枚のパネルを連結する前に、各パネルが平坦な状態にある間に各パネルを貫いてフローホールを穿孔する。
【0015】
これらの実施形態では、所望の結果はフローホールの以下の配置によって達成されるが、別の構成も同様に達成できることに留意されたい。単一のフローホール列は上面パネル内に形成され、エアフォイル形状のECPカバーの尖った端部の間に延びる仮想弦と位置合わせされている。フローホール群は流入するために前縁部の継目の両側に隣接して、又、両側の上に形成され、別のフローホール群は流出するために後縁部の両側に隣接して、又、両側の上に形成される。例えば、上面パネルは弦と位置合わせされた9個のフローホールを設け、側面パネルに形成される各フローホール群は4列3つに配列された12個のフローホールを含むことができる。
【0016】
代替実施形態では、フローホールは導管を通る流れ方向に平行に穿孔される。
【0017】
ECPカバーの様々な実施形態を、幾つかのECPプローブを含むECPプローブアセンブリの一部として実装できる。これらの実施形態のある形態では、3つのプローブ(例えば2つのプラチナプローブと1つの鉄プローブ)が様々なECPカバーの実施形態のうちの単一のECPカバーによって囲まれる。
【0018】
以下により詳細に記載するように、本発明の様々な態様は、動的腐食の監視を可能にするのに十分な流量を受け入れつつ、ECPプローブの過度の流体力学負荷を防止するために流量を大幅に低減する。様々な実施形態の用途には、補給水、凝縮水、供給水、蒸気、冷却塔水、ブローダウン水、及び排水の監視が含まれる。
【0019】
以上、様々な潜在的用途の単なる説明として解釈されるべき様々な実施形態の態様と特徴の幾つかを概略説明してきた。開示した情報を別の方法で適用することによって、又は開示した実施形態の様々な態様を組み合わせることによって、別の有利な結果を得ることができる。請求項により定義される範囲に加えて、添付図面を参照した例示的実施形態の詳細な説明を参照することによって、別の態様及びより包括的な理解が得られよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の例示的環境による沸騰水型原子炉の例示的原子炉圧力容器の構造を示す概略断面図である。
【図2】例示的ECPセンサと新規のECPカバーとを含む本発明のECPプローブアセンブリの一実施形態を示す断面部分斜視図であり、監視システムは例示的導管内の水化学を監視するように構成される。
【図3】図2のECPプローブアセンブリの楕円部分の斜視図である。
【図4】例示的導管とプローブウェル内に配置された図2のECPプローブアセンブリの楕円部分の部分斜視図である。
【図5】ECPカバーの楕円部分と円形部分との間の急激な移行部を示すECPカバーの第1の実施形態の斜視図である。
【図6】ECPカバーの楕円部分と円形部分との間の緩やかな移行部を示すECPカバーの第2の実施形態の斜視図である。
【図7】ECPカバーを通り、ECPプローブを横切って移動する流体の流速を示す、図2のECPプローブアセンブリの断面立面説明図である。
【図8】ECPプローブアセンブリを取付け可能な、様々な潜在的サンプリングサイトの例を示すBWRシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
必要に応じて、本明細書に詳細な実施形態を開示する。開示される実施形態は単なる例示であり、様々な代替形態及びその組み合わせで実施してもよいことが理解されなければならない。本明細書で用いる「例示的」と言う用語は、説明、見本、モデル又はパターンとしての役割を果たす実施形態を発展的に指すために用いられる。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、幾つかの特徴は特定の構成部品の詳細を示すために誇張又は省略されている。別の事例では、公知の構成部品、システム、材料又は当業者に知られている方法は、本開示を不明瞭にしないために詳細には記載していない。従って、本明細書に開示される特定の構造及び機能的な細部は限定的なものと解釈されるべきではなく、単に請求の範囲の根拠として、且つ当業者に教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0022】
本発明の様々な実施形態を実装する例示的環境は、沸騰水型原子炉(BWR)である。図1を参照すると、BWR10の基本構造が示されているが、全ての発電所が実質的に特有であることを当業者は容易に理解しよう。BWR10は、原子炉圧力容器20、蒸気乾燥器22、蒸気分離器24、上部ガイド26、炉心シュラウド28、炉心支持板30、燃料アセンブリ32、制御棒34、燃料支持部材36、制御棒案内管38、下部プレナム40、強化ビーム42、再循環水入口43、再循環水出口44、及び主蒸気配管46を含む。
【0023】
下部プレナム40からの冷却材(例えば水)が燃料支持部材36を通って燃料アセンブリ32内に流入するように、外部の再循環ポンプ(図示せず)によって下部プレナム40内に圧力が生成される。燃料アセンブリ32内では、冷却材が加熱されて蒸気と液体成分とを含む2相流が生成される。蒸気及び液体成分は、蒸気分離器24と蒸気乾燥器22とを含む原子炉システムによって分離される。例えば、液体は蒸気分離器24によって蒸気から分離され、液体は環(降水管)48に、次いで外部再循環ポンプ(図示せず)に戻され、(少量の残留液体を含む)蒸気が蒸気乾燥器22に送られる。残留液体は蒸気乾燥器22によって蒸気から分離され、液体は再び降水管48に戻され、蒸気は主蒸気配管46を通ってタービン50(図8)に送られる。
【0024】
図1及び2を参照すると、ECPプローブアセンブリ100は電気化学電位(ECP)プローブ110と、ECPプローブ110を横方向支持するための上部ブレース111及び下部ブレース112とを含む。ECPプローブ110は、ECPプローブ110によって検知されるデータを収集し、処理するための分析機器内の適宜のプロセッサ(図示せず)によって分析される信号を送信する。
【0025】
図示のECPプローブアセンブリ100は、(図8に示す)原子炉冷却水浄化(RWCU)システム120の上流又は下流側の導管116内の水のECPを計測するように構成される。特に、例示的なECPプローブアセンブリ100は、ECPプローブ110とECPカバー114とが導管116を通る流れ124(図7)内に部分的に延び、又は別の方法で流れに遭遇するように、導管116に取付けた(図2に示す)フランジ122内に装着される。図2では、フランジアセンブリは逆向きに示されているが、ECPプローブアセンブリはパイプ軸に対して任意の方位角配向に取付けてもよい。
【0026】
ECPプローブアセンブリ100は、原子炉再循環配管、ボトムヘッドドレン配管、原子炉浄化配管、別のフランジ位置などのBWR10の様々な部品内の流体の特性を監視するように構成される。
【0027】
教示目的のため、ECPプローブ110は、電気化学腐食電位(ECP)に関連する電気化学的刺激の存在を検知し、それに応答するための装置として記載される。一般に、ECP測定は、不規則的な応力腐食亀裂(IGSCC)が発生しそうかどうかを判定し、許容されない亀裂進展速度などにつながる水化学変化を監視するために行われる。しかし、この原理と教示は、任意の公知の、又は今後開発される電気化学的センサ及びプローブの設計と共に利用することができる。
【0028】
図示のECPプローブアセンブリ100は、3つのECPプローブ110、すなわち主としてプラチナから形成された2つのECPプローブと、鉄から形成された1つのECPプローブとを含む。例えば、鉄/酸化鉄のECPプローブ110は水素注入なしの計測に使用され、プラチナのECPプローブ110は水素注入中の計測に使用される。代替実施形態では、ECPプローブの少なくとも一部をステンレス鋼や炭素鋼などの別の材料から製造してもよい。更に、本開示により教示される様々な実施形態の利用可能性を損なわずにECPプローブ技術を変更し、且つ発展させ得ると考えられる。
【0029】
次に図2〜4を参照すると、3つのECPプローブ110は、ECPプローブ110を高い流速とデブリから保護するECPカバー114によって囲まれ、破壊されたECPプローブ110がBWR10のシステム内に入り、これを損傷することを防止するキャッチとしての役割を果たす。ECPプローブアセンブリ100はプローブウェル126内に、且つ導管116内に延びている。3つのECPプローブ110の各々は上部ブレース111及び下部ブレース112から横方向支持と安定化を受け、ブレース111、112は柱128から縦方向支持を受ける。ECPカバー114は、ECPカバー114をカバー取付け部130でブレース111、112に溶接又はその他の方法で連結することによって取付けられ、更に安定化される。
【0030】
ECPカバー114の少なくとも遠位部は、尖った端部、すなわちエアフォイル形状の部品を有する楕円形の円筒である。以下により詳細に記載するように、ECPカバー114の反対端は、既存のプローブウェル126の形状と寸法とに適合するように、円形の円筒形状になるように先細りにされ、又は急激にこの形状に移行する。いずれにせよ、ECPカバー114の楕円セクションの少なくとも遠位端は少なくとも一部が導管116内に延び、導管を通る原子炉水の流れ124に遭遇するように導管116の内表面の面を破断する。
【0031】
次に図3を参照して、ECPカバー114の例示的製造方法を記載する。図示のECPカバー114は、第1のサイドパネル132を第2のサイドパネル134と位置合わせすることによって形成され、パネル132、134の縦縁部を接合し易くし、前端の継目136と後端の継目138とを画成する。この状態で、第1のサイドパネル132は第2のサイドパネル134と共に平坦化された筒構造を形成する。前端部の継目136と後端部の継目138とは互いに引き寄せられて、第1のサイドパネル132と第2のサイドパネル134とが互いに離れるように撓んで両者の間に空洞を画成し、且つ前述のエアフォイル形状を画成する。上部パネル140は、ECPカバー114の一端を封鎖するように取付けられる。
【0032】
ECPカバー114はECPプローブ110を高い流速から保護すると共に、RWCU配管120を通って流れる流体がECPプローブ110を越えて流れ、それによってECPプローブ110が流体の特性を計測できるように構成される。フローホールのパターンと数は、性能を最適化するように選択される。例示的実施形態では、上部パネル140は、全てがエアフォイル形状のECPカバー114の前縁と後縁の継目を結ぶ仮想縦弦線148と位置合わせされた9つの上部フローホール142の単一の列を含む。第1のサイドパネル132と第2のサイドパネル134の各々は、前縁の継目136に隣接する前部フローホール群144と、後縁の継目138に隣接する後部フローホール群146とを含む。
【0033】
図示の実施形態では、フローホール142、144、146はECPカバー114の組み立て前に第1のサイドパネル132、第2のサイドパネル134及び上部パネル140に穿孔される。このようにして、フローホール142、144、146をECPカバー114の表面と垂直に容易に穿孔することができる。
【0034】
次にECPカバー114の2つの代替実施形態のそれぞれ斜視図である図5及び6を参照すると、ECPカバー114は全体が楕円形の円筒であってもよいが、後付けの用途にでは組み合わせ形状が有利である。言い換えると、(且つ補足的に図2を参照すると)先行技術のECPカバー(図示せず)と共に使用された既存のプローブウェル126は円形の円筒である。上部ブレース111及び下部ブレース112も同様に円形である。従って、このような環境では、プローブウェル126とプローブサブアセンブリ(ブレース111/112及びプローブ110)の幾何形状を変更せずに楕円形状の流体力学的な利点を得ることが望ましい。図5は、ECPカバー114の底縁部154へと延びる円形セクション160への急激な移行部152を備える楕円セクション150を有するECPカバー114を示す。図6は、ECPカバー114の底縁部154へと延びる円形セクション160へのより緩やかな移行部152を備える楕円セクション150を有するECPカバー114を示す。いずれの実施形態でも、楕円セクション150は円形セクション160とは別個に形成し、次いで両方のセクションを接合して一体の構成部品を作製できる。代替として、ECPカバー114全体を単一の一体部品として製造することもできる。図2に示す実施形態では、移行部152は上部ブレース112の高さから始まり、又は生ずる。
【0035】
図7を参照すると、本発明の例示的実施形態の三次元(3D)コンピュータ流体力学(CFD)分析は、ECPカバー114がECPプローブ110を超える流体を0.3〜0.05フィート/秒の平均流速に制限し、導管116内の平均流速は約1〜4フィート/秒であることを示している。これは、ECPプローブを平均4フィート/秒の流速に晒す円形断面を有することが多いカバーの別の知られている構成と比較すると大幅な低減である。従って、例示的ECPカバー114は、ECPプローブ110が受ける水圧負荷が軽減されるため、現在の耐用年数を延ばす。加えて、例示的ECPカバー114は抵抗及び揚力を低下させる。
【0036】
前述のように、発電所は多くの面で構造的に異なっており、更に、サンプルサイトは圧力、温度及び流れ条件が大きく異なることがある。図8は、ECPプローブアセンブリ100を配置するための可能性のある幾つかのサンプルサイトを示す概略図である。ECPプローブアセンブリ100はプラント内のECPを計測するため、一つの位置、又は幾つかの位置に同時に、或いは様々な位置に取付けてもよく、例えば炉心支持板30、下部プレナム40、並びに再循環ポンプ44に連結される配管に取付けてもよい。
【0037】
本明細書は、最良の形態を含め、実施例を用いて本発明を開示し、更にいずれかの装置又はシステムの製造、使用を含めて当業者が本発明を実施できるようにしている。本発明の特許可能な範囲は請求項によって定義され、当業者が想到する別の実施例も含む。このような別の実施例は、請求項の文字言語と相違しない構造要素を有し、又は請求項の文字言語と非実体的な相違しか有さない等価の構造要素を含んでいれば、請求の範囲内に含めることを意図するものである。
【符号の説明】
【0038】
10 原子炉圧力容器
20 原子炉圧力容器ヘッド
22 蒸気乾燥器
24 蒸気分離器
26 上部ガイド
28 炉心シュラウド
30 炉心支持板
32 燃料アセンブリ
34 制御棒
36 燃料支持部材
38 制御棒案内管
40 下部プレナム
42 強化ビーム
43 再循環水入口
44 再循環水出口
46 主蒸気配管
48 環(降水管)
50 タービン
100 ECPセンサアセンブリ
110 ECPプローブ
111 上部(プローブ)ブレース
112 下部(プローブ)ブレース
114 ECPカバー
116 導管
120 RWCUシステム
122 フランジ
124 (冷却材)の流れ
126 プローブウェル
128 柱
130 カバー取付け部(ブレース111/112の開口部)
132 第1のサイドパネル
134 第2のサイドパネル
136 前端の継目
138 後端の継目
140 上部パネル
142 上部フローホール
144 前部フローホール
146 後部フローホール
148 弦線
150 楕円(エアフォイル)セクション
152 (エアフォイル形状のセクション150と円形セクション160の間)の移行部
154 ECPカバーの底端部
160 円形セクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的腐食電位(ECP)プローブアセンブリであって、
少なくとも1つのECPプローブと、
前記少なくとも1つのECPプローブを囲むプローブカバーであって、
前縁継目と後縁継目とを有し、前記少なくとも1つのECPプローブの周囲に延びる楕円形の円筒と、
エアフォイル形状の円筒の端部を封鎖する上部パネルと、
前記前縁継目の両側に形成された複数の前部フローホールと前記後縁継目の両側に形成された複数の後部フローホールとを備えるプローブカバーと、を備える電気化学的腐食電位プローブアセンブリ。
【請求項2】
前記前部フローホールと前記後部フローホールとが前記ECPカバーの表面に垂直に穿孔される、請求項1に記載のECPプローブアセンブリ。
【請求項3】
前記上部パネルに形成される上部フローホールを更に備える、請求項1に記載のECPプローブアセンブリ。
【請求項4】
前記上部フローホールが、前記上部パネルを縦に横切って延びる単一の列に配列される、請求項3に記載のECPプローブアセンブリ。
【請求項5】
前記ECPカバーは、移行部で楕円形円筒セクションに接合される円形円筒セクションを更に備える、請求項1に記載のECPプローブアセンブリ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのECPプローブを支持する上部ブレースを更に備え、前記上部ブレースが前記ECPカバーの前記円形円筒セクションによって囲まれる、請求項5に記載のECPプローブアセンブリ。
【請求項7】
ECPプローブアセンブリのECPカバーであって、
第1のサイドパネルと、
対向側縁に沿って前記第1のサイドパネルにヒンジ接合されて、前縁継目と後縁継目とを画成する第2のサイドパネルとを備え、
前記第1のサイドパネルと前記第2のサイドパネルとが、互いに離れるように撓んで、少なくとも1つのECPプローブを囲むために楕円形の円筒セクションを画成する、ECPカバー。
【請求項8】
前記楕円形の円筒セクションの一端を閉鎖する上部パネルを更に備える、請求項7に記載のECPカバー。
【請求項9】
前記前縁の継目に隣接して形成された前部フローホール群と、前記後縁の継目に隣接して形成された後部フローホール群とを更に備える、請求項7に記載のECPカバー。
【請求項10】
前記前部フローホールと前記後部フローホールとが、前記第1のサイドパネルと前記第2のサイドパネルの一方の表面に垂直に穿孔される、請求項9に記載のECPカバー。
【請求項11】
前記前部フローホール群と前記後部フローホール群とが、各々4列3つを備える、請求項9に記載のECPカバー。
【請求項12】
前記前部フローホール群が前記後部フローホール群から離隔される、請求項9に記載のECPカバー。
【請求項13】
前記上部パネルに形成されたフローホール列を更に備える、請求項8に記載のECPカバー。
【請求項14】
前記フローホール列が前記上部パネルを横切って縦に延びる、請求項11に記載のECPカバー。
【請求項15】
ECPプローブアセンブリのECPカバーであって、
前記ECPプローブアセンブリの周囲に延びるように構成された円筒と、
前記円筒の表面に垂直に、前記円筒を貫いて穿孔された複数のフローホールとを備える、ECPカバー。
【請求項16】
前記円筒の端部を閉鎖する上部パネルを更に備え、
前記上部パネルが、前記上部パネルを貫いて穿孔された複数のフローホールを更に備える、請求項15に記載のECPカバー。
【請求項17】
前記複数のフローホールが前記上部パネルの表面に垂直に穿孔される、請求項16に記載のECPカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−168176(P2012−168176A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−28164(P2012−28164)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
【Fターム(参考)】