説明

電気化学素子用セパレーター

【課題】本発明の課題は、耐熱性、電解液保持性及び電解液が付着した際の強度適性に優れた電気化学素子用セパレーターを提供することにある。
【解決手段】セルロース繊維のみを含有した多孔質シートからなるセパレーターにおいて、多孔質シートが、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度が0〜250mLであり、かつ長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmである溶剤紡糸セルロース繊維を含有し、該溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上であることを特徴とする電気化学素子用セパレーター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子用セパレーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電池や電気二重層キャパシターなどの電気化学素子に用いられるセパレーターとして、セルロース繊維のみからなるセパレーターが使用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。これらのセパレーターでは、叩解度をコントロールしたセルロース繊維を用いているが、同一の叩解度であっても叩解されたセルロース繊維の繊維物性が異なってくるため、耐熱性や電解液保持性及び電解液が付着した際の強度の全て満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−306352号公報
【特許文献2】特開平9−45586号公報
【特許文献3】特開2000−3834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、耐熱性、電解液保持性及び電解液が付着した際の強度適性に優れた電気化学素子用セパレーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、
(1)セルロース繊維のみを含有した多孔質シートからなるセパレーターにおいて、多孔質シートが、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度が0〜250mLであり、かつ長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmである溶剤紡糸セルロース繊維を含有し、該溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上であることを特徴とする電気化学素子用セパレーター、
(2)溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する上記(1)記載の電気化学素子用セパレーター、
を見出した。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電気化学素子用セパレーター(1)は、セルロース繊維のみを含有した多孔質シートからなる。素材としてセルロースを見た場合、230℃までの耐熱性を有していることから、セルロース繊維のみで構成することにより耐熱性の点で優れたセパレーターを作製することが可能となる。該多孔質シートは、変法濾水度が0〜250mLであり、かつ長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmである溶剤紡糸セルロース繊維を含有し、該溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上の溶剤紡糸セルロース繊維が絡み合うことで、耐熱性、電解液保持性を良好なものにすることができる。
【0007】
溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する電気化学素子用セパレーター(2)は、セパレーターとして必要な耐熱性、電解液保持性及び電解液が付着した際の強度適性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有する溶剤紡糸セルロース繊維[1]の繊維長分布ヒストグラムの例である。
【図2】最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する溶剤紡糸セルロース繊維[2]の繊維長分布ヒストグラムの例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電気化学素子用セパレーターについて詳説する。
【0010】
本発明の電気化学素子用セパレーターはセルロース繊維のみを原料とする。素材としてセルロース繊維を見た場合、230℃までの耐熱性を有していることから、セルロース繊維のみで構成することにより耐熱性の点で優れたセパレーターを作製することが可能となる。原料としたセルロース繊維には変法濾水度が0〜250mLであり、かつ長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmである溶剤紡糸セルロース繊維を含有する。該溶剤紡糸セルロース繊維は、溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上である。
【0011】
本発明における溶剤紡糸セルロース繊維とは、従来のビスコースレーヨンや銅アンモニアレーヨンのように、セルロースを一旦セルロース誘導体に化学的に変換させたのち再度セルロースに戻す、いわゆる再生セルロース繊維と異なり、セルロースを化学的に変化させることなく、アミンオキサイドに溶解させた紡糸原液を水中に乾湿式紡糸してセルロースを析出させた繊維を指す。溶剤紡糸セルロース繊維は、天然セルロース繊維やバクテリアセルロース繊維、レーヨン繊維に比べ、繊維長軸方向に分子が高度に配列しているため、湿潤状態で摩擦等の機械的な力が加えられると、微細化しやすく、細くて長い微細繊維が生成する。この微細繊維間に電解液を強固に保持するため、天然セルロース繊維、バクテリアセルロース繊維、レーヨン繊維の微細化物に比べ、微細化された溶剤紡糸セルロース繊維は、電解液の保液性に優れる。
【0012】
本発明では、変法濾水度0〜250mLの溶剤紡糸セルロース繊維が用いられる。溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度は、0〜200mLであることがより好ましく、0〜160mLであることがさらに好ましい。変法濾水度が250mLより多いと、セパレーターの緻密性が不十分になり、電解液の保液性が低下することがある。
【0013】
本発明における変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した値のことである。
【0014】
溶剤紡糸セルロース繊維の場合、微細化が進むに従って、繊維長が短くなっていき、特に試料濃度が薄いと、繊維同士の絡みが少なくなり、繊維ネットワークが形成されにくくなるため、溶剤紡糸セルロース繊維自体がふるい板の穴をすり抜けてしまう。つまり、微細化した溶剤紡糸セルロースの場合は、JIS P8121の測定方法では正確な濾水度が計測できない。より詳細に説明すると、溶剤紡糸セルロース繊維は微細化処理によって繊維の長軸に平行に細かく分割されやすく、分割後の繊維1本1本における繊維径の均一性が高いため、平均繊維長が短くなるほど、繊維同士が絡みにくくなり、繊維ネットワークを形成しにくいと考えられる。そこで、本発明では、溶剤紡糸セルロース繊維の正確な濾水度を測定するために、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定する変法濾水度を用いた。
【0015】
さらに本発明では、図1に示したように、溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上である。電解液保持性の点において、繊維長分布ヒストグラムにおいて0.30〜0.70mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が55%以上であることが好ましい。1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合は高い方が望ましいが、75%程度あれば十分である。
【0016】
本発明の溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長及び繊維長分布ヒストグラムは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.52「紙及びパルプの繊維長 試験方法(光学的自動計測法)」に準じてKajaaniFiberLabV3.5(Metso Automation社製)を使用して測定した。
【0017】
本発明における「繊維長」及び「繊維長分布」とは、上記に従って測定・算出される「長さ加重繊維長」及び「長さ加重繊維長分布」を意味する。
【0018】
溶剤紡糸セルロース繊維は、ビーター、PFIミル、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、また、顔料等の分散や粉砕に使用するボールミル、ダイノミル、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に少なくとも20MPaの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより繊維に剪断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等が挙げられる。この中でも特にリファイナーが好ましい。これら叩解・分散設備の種類、処理条件(繊維濃度、温度、圧力、回転数、リファイナーの刃の形状、リファイナーのプレート間のギャップ、処理回数)の調整により、目的の溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度、繊維長及び繊維長分布を達成することが可能となる。
【0019】
溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、図2に示したように、上記の最大頻度ピーク以外に、1.50〜3.50mmの間にピークを有することが好ましく、1.75〜3.25mmの間にピークを有することがより好ましく、2.00〜3.00mmの間にピークを有することがさらに好ましい。この範囲にピークを有することにより、電解液保持性と電解液が付着した際の強度適性が両立できるため好ましい。該ピークの繊維長が1.50mmより短い場合、電解液が付着した際にセパレーターが破損することがある。また3.50mmを超えると、緻密性が向上せず、電解液保持性が低下する場合がある。
【0020】
溶剤紡糸再生セルロース繊維以外の他のセルロース繊維には特に限定はなく、針葉樹木材パルプ、広葉樹木材パルプ、エスパルトパルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、コットンパルプ等の天然セルロース繊維、あるいはこれら天然セルロース繊維を冷アルカリ処理して得たマーセル化パルプ、さらには普通レーヨン繊維、ポリノジックレーヨン繊維等の再生セルロース繊維等が挙げられるが、特にリファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に少なくとも20MPaの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより繊維に剪断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等で変法濾水度0〜1000mLにフィブリル化した天然セルロース繊維を添加することが好ましい。また、フィブリル化した天然セルロースの含有量は20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィブリル化した天然セルロースを上記含有量添加することで、電解液保持性と電解液が付着した際の強度適性が両立でき好ましい。
【0021】
本発明において、溶剤紡糸セルロース繊維の含有量は、80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上である。この含有量にすることにより、電解液保液性に優れ、電解液が付着した際の強度適性が良好となるため、好ましい。
【0022】
本発明における電気化学素子用セパレーターの坪量は、特に制限はないが、5〜100g/mが好ましく、10〜50g/mがさらに好ましく用いられる。なお、坪量は、JIS P8124(紙及び板紙−坪量測定法)に規定された方法に基づく坪量を意味する。
【0023】
本発明における電気化学素子用セパレーターの厚みは、特に制限はないが、電気化学素子が小型化できること、収容できる電極面積を大きくでき容量を稼げる点から薄い方が好ましい。具体的には電池組立時に破断しない程度の強度を持ち、ピンホールがなく、高い
均一性を備える厚みとして10〜200μmが好ましく用いられ、20〜100μmがより好ましく用いられる。10μm未満では、電気化学素子の製造時の短絡不良率が増加するため好ましくない。一方、200μmより厚くなると、電気化学素子に収納できる電極面積が減少するため電気化学素子の容量が低いものになる。なお、厚みは、JIS B7502に規定された方法により測定した値、つまり、5N荷重時の外側マイクロメーターにより測定された値を意味する。
【0024】
本発明の電気化学素子用セパレーターにおいて、セルロース繊維のみからなる原料を使用して、長網抄紙機や円網抄紙機、長網円網コンビネーションマシン、円網円網コンビネーションマシン等の抄紙機によりセパレーター抄造する。また、長網抄紙機で抄紙したセパレーター紙を2枚以上オンマシンもしくはオフマシンで積層して抄造することもできる。
【0025】
湿式抄紙法は、通常、繊維を固形分濃度が0.1〜5%程度になるように分散助剤、増粘剤などを用いて水中に均一に分散してスラリーとし、さらにスラリー中に水を追加し、固形分濃度を0.1〜0.001%に希釈して希薄水性スラリーとし、これを抄紙機を用いてシート化するものである。
【0026】
本発明の電気化学素子用セパレーターの厚みが所望の厚みよりも厚い場合には二次加工処理により厚みを薄くする必要がある。この二次加工処理としては、スーパーカレンダー、マシンカレンダー、熱カレンダー、ソフトカレンダー、熱ソフトカレンダーなどのカレンダーを用いてカレンダー処理を施して厚み調整が行われる。なるべく電解液保持性を損なわないようにするため、加熱しないでカレンダー処理を行うことがより好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における部や百分率は断りのない限り、全て質量によるものである。
【0028】
<溶剤紡糸セルロース繊維>
リファイナーを用いて、平均繊維径10μm、繊維長6mmの溶剤紡糸セルロース繊維を処理し、溶剤紡糸セルロース繊維を作製した。
【0029】
<溶剤紡糸セルロース繊維の物性値>
上記の方法で作製した溶剤紡糸セルロース繊維について
(1)1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合:「1.00mm以上の繊維割合」
(2)繊維長分布ヒストグラムにおける最大頻度ピークの繊維長:「最大頻度ピークの繊維長」
(3)最大頻度ピーク以外のピークの繊維長:「第2ピークの繊維長」
(4)ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した濾水度:「変法濾水度」
として、表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
<フィブリル化天然セルロース繊維>
リンターを高圧ホモジナイザーを用いて処理し、変法濾水度270mLのフィブリル化天然セルロース繊維を作製した。
【0032】
実施例1
溶剤紡糸セルロース繊維A100部をパルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量18.2g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量18.2g/m、厚さ35μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0033】
実施例2
溶剤紡糸セルロース繊維B100部をパルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量18.0g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量18.0g/m、厚さ35μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0034】
実施例3
溶剤紡糸セルロース繊維C100部をパルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量17.9g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量17.9g/m、厚さ35μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0035】
実施例4
溶剤紡糸セルロース繊維D100部をパルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量18.2g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量18.2g/m、厚さ36μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0036】
実施例5
溶剤紡糸セルロース繊維E100部をパルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量18.1g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量18.1g/m、厚さ35μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0037】
実施例6
溶剤紡糸セルロース繊維F100部をパルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量17.8g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量17.8g/m、厚さ34μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0038】
実施例7
溶剤紡糸セルロース繊維G100部をパルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量18.0g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量18.0g/m、厚さ35μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0039】
実施例8
上記で作製したフィブリル化天然セルロース繊維10部と溶剤紡糸セルロース繊維C90部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量18.1g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量18.1g/m、厚さ35μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0040】
実施例9
上記で作製したフィブリル化天然セルロース繊維20部と溶剤紡糸セルロース繊維C80部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量17.8g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量17.8g/m、厚さ34μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0041】
実施例10
上記で作製したフィブリル化天然セルロース繊維25部と溶剤紡糸セルロース繊維C75部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量17.9g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量17.9g/m、厚さ34μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0042】
実施例11
変法濾水度820mLまで高圧ホモジナイザーを用いて処理したフィブリル化マニラ麻繊維25部と溶剤紡糸セルロース繊維C75部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量18.1g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量18.1g/m、厚さ35μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0043】
(比較例1)
溶剤紡糸セルロース繊維H100部をパルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量18.0g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量18.0g/m、厚さ35μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0044】
(比較例2)
溶剤紡糸セルロース繊維I100部をパルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量18.0g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量18.0g/m、厚さ35μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0045】
(比較例3)
溶剤紡糸セルロース繊維J100部をパルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、150℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、坪量18.0g/mの不織布を作製した。次に、スーパーカレンダー処理を行い、坪量18.0g/m、厚さ35μmの電気化学素子用セパレーターとした。
【0046】
<評価>
実施例及び比較例で得られた電気化学素子用セパレーターについて、下記の評価を行い、結果を表2に示した。
【0047】
【表2】

【0048】
[熱収縮率]
実施例及び比較例のセパレーターを、100mm幅、150mm長に切り揃えた。試験片をガラス板に載せ、長さ方向に直角な2辺をクリップで挟んで固定し、180℃に設定した恒温乾燥機の中に3時間静置した。幅方向の寸法を測定し、元の寸法に対する収縮による寸法変化の割合を求め、熱収縮率(%)とした。熱収縮率が1.0%未満であれば「◎」、1.0%以上2.0%未満であれば「○」、2.0%以上であれば「×」とした。
【0049】
[電解液保液率]
15cm×10cmの大きさに切り取ったセパレーター試料を200℃で3時間乾燥処理した直後の重量(W)を計測し、次いでセパレーター試料を電解液溶媒に1分間浸漬した後、ピンセットで該試料を取り出し、つるした。電解液溶媒が垂れなくなったところで該試料の重量(W)を計測した。下記の数式1より、セパレーターの自重に対する電解液保液率(%)とした。電解液溶媒としては、プロピレンカーボネートを用いた。保液率が、250%以上であれば「◎」、200%以上250%未満であれば「○」、200%未満であれば「×」とした。
【0050】
(数式1)
電解液保液率(%)=(W−W)/W×100
【0051】
[電解液が付着した際の強度]
実施例及び比較例の基材を、50mm幅、200mm長の短冊状に5本以上切り揃え、次いでセパレーター試料を電解液に1分間浸漬した後、ピンセットで該試料を取り出し、つるした。電解液が垂れなくなったところで試験片を卓上型材料試験機(商品名:STA−1150、(株)オリエンテック製)の試料ツカミで試料の両端を100mm間隔であけて挟み、上端を100mm/minの一定速度で切断するまで引き上げていき、最大荷重を計測した。その際の強度が1.0kgf/50mm以上であれば「◎」、0.5kgf/50mm以上1.0kgf/50mm未満であれば「○」、0.5kgf/50mm未満であれば「×」とした。
【0052】
実施例で得られた電気化学素子用セパレーターは、セルロース繊維からなり、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度が0〜250mLであり、かつ長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmである溶剤紡糸セルロース繊維を含有し、該溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上であるため、緻密な構造を有し、耐熱性・電解液保持性に優れるという良好な結果が得られた。
【0053】
実施例1、4、6、7の比較から、溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する場合、耐熱性・電解液保持性も高く、また、電解液が付着した場合の強度適性も見られた。最大頻度ピーク以外のピークの繊維長が1.50mmより短い実施例4では、電解液が付着した場合の強度が若干低下する傾向が見られた。また、最大頻度ピーク以外のピークの繊維長が3.50mmより長い実施例7では、電解液保持性が若干悪化する傾向が見られた。
【0054】
一方、比較例1で得られた電気化学素子用セパレーターでは、繊維長分布ヒストグラムにおける最大頻度ピークが0.00〜1.00mmの間から外れているため、電解液保持性が実施例より悪化する結果となった。
【0055】
また、比較例2で得られた電気化学素子用セパレーターでは、1.00mm以上の繊長を有する繊維の割合が50%より少ないため、耐熱性、電解液が付着した場合の強度が実施例より悪化する結果となった。
【0056】
さらに、比較例3で得られた電気化学素子用セパレーターは、変法濾水度が0〜250mLの間から外れているため、電解液保持性が実施例より悪化する結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の電気化学素子用セパレーターは、マンガン乾電池、アルカリマンガン電池、酸化銀電池、リチウム電池、鉛蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池、ニッケル−水素蓄電池、ニッケル−亜鉛蓄電池、酸化銀−亜鉛蓄電池、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、各種のゲル電解質電池、亜鉛−空気蓄電池、鉄−空気蓄電池、アルミニウム−空気蓄電池、燃料電池、太陽電池、ナトリウム硫黄電池、ポリアセン電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシターに好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維のみを含有した多孔質シートからなるセパレーターにおいて、多孔質シートが、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度が0〜250mLであり、かつ長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmである溶剤紡糸セルロース繊維を含有し、該溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上であることを特徴とする電気化学素子用セパレーター。
【請求項2】
溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する請求項1記載の電気化学素子用セパレーター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−221567(P2012−221567A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82635(P2011−82635)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】