説明

電気化学素子用セパレータ及びそれを用いてなる電気化学素子

【課題】内部短絡不良率が低く、内部抵抗特性及び容量維持率に優れた電気化学素子を実現できるセパレータと、それを用いてなる電気化学素子を提供することにある。
【解決手段】ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを30〜59質量%、合成繊維Bを41〜70質量%含有し、厚みが10〜50μm、ガーレー透気度が0.4〜20.0s/100mlの多孔質シートからなる電気化学素子用セパレータと、それを用いてなる電気化学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子用セパレータ及びそれを用いてなる電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子の1種であるキャパシタは大きな電気容量を持つとともに、充放電の繰り返しに対する安定性が高いため、車輌や電気機器に使用される給電源等の用途に広く使用されつつある。キャパシタにはセパレータが内蔵されており、セパレータはキャパシタ内において正極と負極とが直接接触しないように、つまり、内部ショートしないように正極と負極を分離している。キャパシタにおける内部抵抗を下げるためには、電解質のイオンが効率よく透過できる空孔がセパレータの内部に形成されていなければならない。従って、セパレータは多孔質である必要がある。
【0003】
キャパシタ用セパレータとしては、従来、溶剤紡糸セルロース繊維や再生セルロース繊維の叩解物を主体とする紙製セパレータ(例えば、特許文献1〜3参照)や合成繊維からなるセパレータ(例えば、特許文献4参照)が使用されている。
【0004】
有機溶媒と電解質からなる電解液を備えたキャパシタにおいては、水分がわずかでも混入すると所定の電圧にならない、電圧がふらつく、内部抵抗が大きくなるなどキャパシタ特性に悪影響を及ぼすため、電極とセパレータを一緒に高温で長時間乾燥させて、これら部材に含まれる水分を除去してからキャパシタが製造されている。しかしながら、紙製のセパレータは、150℃以上の高温で処理すると、セルロース成分の炭化や分解により機械的強度が低下するため、充電時の体積膨張率が大きい電極を用いた場合には、充放電を繰り返すうちにセパレータが破れてしまい、内部短絡不良率が高くなる問題があった。
【0005】
また、近年の電子部品の高機能化に伴い、キャパシタも低抵抗化が求められている。このため、セパレータには厚みの薄さと、電解液保液性の高さが要求されるが、合成繊維からなるセパレータは、厚みが薄くなると正極と負極との間の絶縁性が不十分となって内部短絡不良率が高くなる問題や、電解液の保液性が低いため、イオン伝導性が低く、内部抵抗が高くなる問題があった。
【0006】
電気化学素子は今後ハイブリッド自動車や電気自動車の電源や補助電源としてますます利用されていく。このことから、蓄電素子には高容量であることが求められ、特に大電流で充放電しても高い容量維持率を持つことが重要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−267103号公報
【特許文献2】特開平11−168033号公報
【特許文献3】特開2000−3834号公報
【特許文献4】特開2003−45752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情を鑑みたものであって、内部短絡不良率が低く、内部抵抗特性及び容量維持率に優れた電気化学素子を実現できるセパレータと、それを用いてなる電気化学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、この課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定の繊維材料を特定の範囲の割合で含有させることによって、内部短絡不良率が低く、内部抵抗特性及び容量維持率に優れた電気化学素子を実現できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0010】
即ち、本発明は、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを30〜59質量%、合成繊維Bを41〜70質量%含有し、厚みが10〜50μm、ガーレー透気度が0.4〜20.0s/100mlの多孔質シートからなる電気化学素子用セパレータと、それを用いてなる電気化学素子である。さらに、多孔質シートが変法濾水度0〜400mlのフィブリル化天然セルロース繊維Cを10質量%以下含有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを30〜59質量%含有させることで、電解液の保液性及びイオン伝導性を良好なものにすることができることから、電気化学素子の内部抵抗特性及び容量維持率を優れたものにすることができる。さらに、セルロース繊維より耐熱性の高い合成繊維Bを41〜70質量%含有させることで、キャパシタ製造時における高温乾燥処理後もセパレータの強度を保つことができるため、繰り返し充放電を行ってもセパレータは破れ難く、内部短絡不良率を低いものにすることができる。また、溶剤紡糸セルロース繊維はお互いの水素結合力は弱いが、変法濾水度0〜400mlのフィブリル化天然セルロース繊維Cは、繊維同士の物理的な絡みと水素結合力が強いため、セパレータの厚みが薄くても十分な強度を持たせることができる。このことから、変法濾水度0〜400mlのフィブリル化天然セルロース繊維Cを10質量%以下含有させることで、セパレータをより緻密かつ薄くすることができ、内部抵抗を低くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<電気化学素子用セパレータ>
本発明における溶剤紡糸セルロース繊維Aとは、セルロースをアミンオキサイドに溶解させた紡糸原液を水中に乾湿式紡糸してセルロースを析出させた繊維を指す。
【0013】
本発明における溶剤紡糸セルロース繊維Aは変法濾水度0〜250mlのものが用いられる。溶剤紡糸セルロース繊維Aの変法濾水度は、0〜200mlであることがより好ましく、0〜160mlであることがさらに好ましい。変法濾水度が250mlより多いと、電解液の保液性が落ち、内部抵抗が高くなる。
【0014】
本発明における変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した値のことである。
【0015】
本発明において、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを作製する方法としては、リファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に少なくとも20MPaの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより繊維に剪断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等が挙げられる。この中でも、特にリファイナーが好ましい。
【0016】
本発明における溶剤紡糸セルロース繊維Aの長さ加重平均繊維長は0.2〜3.0mmが好ましく、0.2〜2.0mmがより好ましく、0.2〜1.6mmがさらに好ましい。繊維長が0.2mmより短いと、セパレータから脱落する場合があり、3.0mmより長いと、繊維がもつれてダマになることがあり、厚みむらが生じる場合がある。
【0017】
本発明の電気化学素子用セパレータは、溶剤紡糸セルロース繊維Aを30〜59質量%含有する。溶剤紡糸セルロース繊維Aの含有量は、35〜55質量%がより好ましく、40〜50質量%がさらに好ましい。溶剤紡糸セルロース繊維Aの含有率が30質量%未満では、内部抵抗が高くなり、59質量%を超えると、高熱乾燥処理後の内部短絡不良率が高くなる。
【0018】
本発明における合成繊維Bとして、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの樹脂からなる単繊維や複合繊維、これらをフィブリル化したものを適量単独で含有しても良いし、2種類以上の組み合わせで含有しても良い。また、各種の分割型複合繊維を分割させたものを含有しても良い。この中でもポリオレフィン、ポリエステル、アクリル、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドが好ましく、ポリエステル、アクリルがさらに好ましい。
【0019】
本発明における合成繊維Bの平均繊維径は0.1〜20μmが好ましく、0.1〜15μmがより好ましく、0.1〜10μmがさらに好ましい。平均繊維径が0.1μm未満では、繊維が細過ぎてセパレータから脱落する場合があり、平均繊維径が20μmより太いと、セパレータの厚みを薄くすることが困難になる場合がある。
【0020】
本発明における平均繊維径は、セパレータの走査型電子顕微鏡写真より、セパレータを形成する繊維の繊維径を計測し、無作為に選んだ100本の平均値である。
【0021】
本発明における合成繊維Bの繊維長は1〜15mmが好ましく、2〜10mmがより好ましく、3〜5mmがさらに好ましい。繊維長が1mmより短いとセパレータから脱落することがあり、15mmより長いと、繊維がもつれてダマになることがあり、厚みむらが生じる場合がある。
【0022】
本発明の電気化学素子用セパレータは、合成繊維Bを41〜70質量%含有する。合成繊維Bの含有量は、45〜65質量%がより好ましく、50〜60質量%がさらに好ましい。合成繊維Bの含有率が41質量%未満では、高温乾燥処理後の内部短絡不良率が高くなり、70質量%を超えると内部抵抗が高くなる。
【0023】
本発明の電気化学素子用セパレータは、変法濾水度0〜400mlのフィブリル化天然セルロース繊維Cを10質量%以下含有していることが好ましい。フィブリル化天然セルロース繊維Cの含有量は、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。フィブリル化天然セルロース繊維Cは、溶剤紡糸セルロース繊維Aに比べ繊維1本の太さの均一性が劣る傾向にあるが、繊維間の物理的な絡みと水素結合力が強い特徴を有する。繊維Cの含有率が10質量%を超えると、セパレータが緻密になり過ぎて、イオン伝導性を阻害し、内部抵抗が高くなることがある。
【0024】
本発明におけるフィブリル化とは、フィルム状ではなく、主に繊維軸と平行な方向に非常に細かく分割された部分を有する繊維状で、少なくとも一部が繊維径1μm以下になっている繊維を指す。長さと巾のアスペクト比が約20〜約100000の範囲にあることが好ましい。さらに、長さ加重平均繊維長が0.1〜2mmの範囲にあるものが好ましく、0.1〜1.5mmのものがより好ましく、0.1〜1mmのものがさらに好ましい。
【0025】
本発明において、天然セルロース繊維をフィブリル化する方法としては、リファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に少なくとも20MPaの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより、繊維に剪断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等が挙げられる。この中でも特に高圧ホモジナイザーが好ましい。
【0026】
本発明における電気化学素子用セパレータは、円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、傾斜型抄紙機、これらの中から同種または異種の抄紙機を組み合わせてなるコンビネーション抄紙機などを用いて抄紙する方法によって製造することができる。原料スラリーには、繊維原料の他に必要に応じて分散剤、増粘剤、無機填料、有機填料、消泡剤などを適宜添加し、5〜0.001質量%程度の固形分濃度にスラリーを調整する。この原料スラリーをさらに所定濃度に希釈して抄紙する。抄紙して得た電気化学素子用セパレータは必要に応じて、カレンダー処理、熱カレンダー処理、熱処理などが施される。
【0027】
本発明における電気化学素子用セパレータの厚みは、10〜50μmである。電気化学素子用セパレータの厚みは、10〜40μmがより好ましく、10〜30μmがさらに好ましい。10μm未満では、十分な機械的強度が得られなかったり、正極と負極との間の絶縁性が不十分で内部短絡不良率が高くなったりする。50μmより厚いと、電気化学素子の内部抵抗が高くなる。
【0028】
本発明における電気化学素子用セパレータの坪量は、特に制限はないが、5〜40g/mが好ましく、5〜20g/mがより好ましく、5〜15g/mがさらに好ましい。5g/m未満では、十分な機械的強度が得られなかったり、正極と負極との間の絶縁性が不十分で内部短絡不良率が高くなったりする場合がある。40g/mを超えると、電気化学素子の内部抵抗が高くなる場合がある。
【0029】
本発明における電気化学素子用セパレータのガーレー透気度(JIS P8117)は、0.4〜20.0s/100mlである。電気化学素子用セパレータのガーレー透気度は、0.4〜15.0s/100mlがより好ましく、0.4〜10.0s/100mlがさらに好ましい。0.4s/100ml未満では、内部短絡不良率が高くなり、20.0s/100mlより大きいと内部抵抗が高くなる。
【0030】
本発明における電気化学素子用セパレータの厚みを10〜50μm、ガーレー透気度を0.4〜20.0s/100mlとする方法としては、電気化学素子用セパレータの坪量の調整や、カレンダー処理による方法などが挙げられる。
【0031】
本発明の電気化学素子用セパレータは、特にキャパシタに好適に用いられる。
【0032】
本発明におけるキャパシタとは、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、レドックスキャパシタを意味する。電気二重層キャパシタは、電極と電解液との界面に電気二重層が形成され、蓄電される。電極活物質としては、活性炭、カーボンブラック、カーボンエーロゲル、カーボンナノチューブ、非多孔性炭素などの炭素材料が主に用いられる。電解液としては、イオン解離性の塩を溶解させた水溶液、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルソルブ、これらの混合溶媒などの有機溶媒にイオン解離性の塩を溶解させたもの、イオン性液体(固体溶融塩)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
リチウムイオンキャパシタは、負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質であり、正極活物質がリチウムイオン及び/またはアニオンを可逆的に担持可能な物質であり、予め負極及び/または正極にリチウムイオンが担持されてなるキャパシタである。負極活物質としては、例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、ポリアセン系有機半導体、チタン酸リチウムなどが挙げられる。正極活物質としては、例えばポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレンなどの導電性高分子、活性炭、ポリアセン系有機半導体などが挙げられる。電解液としては、リチウム塩の非プロトン性有機溶媒が用いられる。リチウム塩としては、例えばLiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、Li(CSO)Nなどが挙げられる。非プロトン性有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルソルブ、これらの混合溶媒が挙げられる。
【0034】
ハイブリッドキャパシタとは、正極と負極の反応機構または電極材料が異なっているキャパシタである。例えば、負極が酸化還元反応で、正極が電気二重層型反応といった具合である。ハイブリッドキャパシタの負極活物質としては、例えば活性炭、黒鉛、ハードカーボン、ポリアセン、LiTi12などの金属酸化物、n型導電性高分子などが挙げられる。正極活物質としては、例えば活性炭、MnO、LiCoO、酸化ルテニウムなどの金属酸化物、黒鉛、p型導電性高分子などが挙げられる。カーボンブラック、カーボンエーロゲル、カーボンナノチューブ、非多孔性炭素などが挙げられる。
【0035】
レドックスキャパシタは、蓄電と放電の機構が、電極活物質の酸化還元、電極表面でのイオンの吸脱着、電気二重層における充放電のすべてあるいは一部を利用してなるものである。レドックスキャパシタの電極活物質としては、例えば、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化コバルトなどの金属酸化物、これら金属酸化物の複合物、これら金属酸化物の水和物、これら金属酸化物と炭素材料との複合物、窒化モリブデン、窒化モリブデンと金属酸化物との複合物、リチウムイオンをインターカレートできるグラファイトやLiTi12、LiFePOなどのリチウム金属酸化物、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセン、これらの誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリインドール、サイクリックインドールポリマー、1,5−ジアミノアントラキノン、1,4−ベンゾキノン、グラファイトとこれらキノン系化合物との複合体、金属錯体高分子が挙げられる。電解液としては、イオン解離性の塩を溶解させた水溶液、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルソルブ、これらの混合溶媒などの有機溶媒にイオン解離性の塩を溶解させたもの、イオン性液体(固体溶融塩)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
キャパシタ用電極には導電剤を含むことが好ましい。導電剤としては特に制限されないが、カーボンブラック、ケッチェンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社登録商標)、アセチレンブラック、カーボンウィスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素材料、二酸化チタン、酸化ルテニウム、アルミニウム、ニッケル、銀などの粒子及び金属ファイバーなどの金属を含有するものが挙げられる。導電剤の配合量は、電極活物質100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましい。
【0037】
キャパシタ用電極に用いるバインダーとしては、電極活物質と導電剤を十分に結合する必要があり、また、電解液に対する耐性、耐電圧性、酸化還元反応に対する耐性を有するものから選ばれる。その例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイドなどの非水溶性樹脂や、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、デンプン及びその誘導体、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコールなどの水溶性樹脂、また、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムなどのゴムが挙げられる。バインダーの配合量は、電極活物質100質量部に対して、0.05〜25質量部が好ましい。
【0038】
キャパシタ用電極の厚みは、10〜300μmであることが好ましい。厚みが10μmより小さくなると、キャパシタにおいて十分な電気容量を得ることが困難になる場合があり、また、厚みが300μmを超えると内部抵抗が増加する場合がある。
【0039】
キャパシタ用電極の製法としては、一般的に、電極活物質と導電剤とバインダーを乾式混練または湿式混練し、これをプレス成形法や押出し成形法によりシート状もしくは棒状に成形し、打ち抜き、あるいはカッティングして集電体に貼り合わせる製法と、電極活物質と導電剤とバインダーを含む電極スラリーを集電体の表面に塗工、乾燥する製法が知られている。本発明においては、いずれの方法も適用できる。電極スラリーの塗工方法としては特に限定されないが、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法などを適用することができる。
【0040】
上記の集電体の材料は導電性材料を含むものであり、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、白金などが挙げられる。集電体の形状としては、板状、繊維状、シート状、フィルム状、メッシュ状などが挙げられるが、これらに制限されない。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0042】
<繊維A1>
平均繊維径10μm、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維を、リファイナーを用いて処理し、変法濾水度0mlの溶剤紡糸セルロース繊維を繊維A1とした。
【0043】
<繊維A2>
平均繊維径10μm、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維を、リファイナーを用いて処理し、変法濾水度120mlの溶剤紡糸セルロース繊維を繊維A2とした。
【0044】
<繊維A3>
平均繊維径10μm、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維を、リファイナーを用いて処理し、変法濾水度250mlの溶剤紡糸セルロース繊維を繊維A3とした。
【0045】
<繊維A4>
平均繊維径10μm、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維を、リファイナーを用いて処理し、変法濾水度260mlの溶剤紡糸セルロース繊維を繊維A4とした。
【0046】
<合成繊維B1>
平均繊維径3μm、繊維長3mmのポリエチレンテレフタレート繊維を合成繊維B1とした。
【0047】
<合成繊維B2>
平均繊維径5μm、繊維長3mmのアクリル繊維を合成繊維B2とした。
【0048】
<合成繊維B3>
平均繊維径7μm、繊維長5mmのポリアミド繊維を合成繊維B3とした。
【0049】
<フィブリル化天然セルロース繊維C1>
高圧ホモジナイザーを用いて、リンターを処理し、変法濾水度0mlのフィブリル化天然セルロース繊維C1を作製した。
【0050】
<フィブリル化天然セルロース繊維C2>
高圧ホモジナイザーを用いて、リンターを処理し、変法濾水度270mlのフィブリル化天然セルロース繊維C2を作製した。
【0051】
<フィブリル化天然セルロース繊維C3>
高圧ホモジナイザーを用いて、リンターを処理し、変法濾水度400mlのフィブリル化天然セルロース繊維C3を作製した。
【0052】
<フィブリル化天然セルロース繊維C4>
高圧ホモジナイザーを用いて、リンターを処理し、変法濾水度500mlのフィブリル化天然セルロース繊維C4を作製した。
【0053】
<繊維D1>
平均繊維径10μmの麻繊維を繊維D1とした。
【0054】
<繊維PVA>
平均繊維径10μm、繊維長3mmのポリビニルアルコール繊維を繊維PVAとした。
【0055】
表1に示した原料と配合量に従って、抄紙用スラリーを調製した。
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例1〜16)
スラリー1〜12から円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、表2に示す実施例1〜16のセパレータを作製した。厚みは室温でカレンダー処理して調整した。
【0058】
(比較例1〜12)
スラリー1、9、13〜21から円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、表2に示す比較例1〜12のセパレータを作製した。厚みは室温でカレンダー処理して調整した。
【0059】
【表2】

【0060】
<電気二重層キャパシタ>
[電極0の作製]
ポリフッ化ビニリデン10質量部をN−メチル−2−ピロリドン90質量部に溶解し、これにフェノール樹脂を出発原料とする平均粒径5.0μm、比表面積2000m/gの粉末状活性炭80質量部と、平均粒径200nmのアセチレンブラック10質量部と、N−メチル−2−ピロリドン300質量部を添加し、混合撹拌機にて十分混合して、電極スラリーを得た。塩酸により表面をエッチング処理した厚み30μmのアルミニウム箔集電体に、アプリケータを用いて上記の電極スラリーを塗布・乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理を行い、厚み150μmの電気二重層キャパシタ用電極を作製し、これを電極0とした。
【0061】
[電気二重層キャパシタの作製]
電極0を30mm×50mm角に2枚カッティングし、実施例1〜16及び比較例1〜12のセパレータが電極間に介するようにそれぞれ積層した。これをアルミニウム製収納袋に収納し、150℃で10時間真空加熱を行った後、アルミニウム製収納袋内に電解液を注入し、注入口を密栓して実施例1〜16及び比較例1〜12の電気二重層キャパシタを作製した。電解液には、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるように(C(CH)NBFを溶解させたものを用いた。
【0062】
[DC抵抗評価]
実施例及び比較例の電気二重層キャパシタを用い、充放電電圧範囲0〜2.7V、充放電電流200mAで、定電流充放電を10サイクル繰り返し、10サイクル目の放電開始直後の電圧低下より内部抵抗を算出し、100個の平均値をDC抵抗評価として表3に示した。
【0063】
[内部短絡不良率]
実施例及び比較例の電気二重層キャパシタを用い、充放電電圧範囲0〜2.7V、充放電電流200mAで、定電流充放電を500サイクル繰り返した際の内部短絡不良率を算出し、表3に示した。
【0064】
【表3】

【0065】
表3に示した通り、実施例1〜16の電気二重層キャパシタは、変法濾水度が0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを30〜59質量%、合成繊維Bを41〜70質量%含有し、厚みが10〜50μm、ガーレー透気度が0.4〜20.0s/100mlの多孔質シートからなるセパレータを用いているため、内部短絡不良率が低く、内部抵抗特性に優れていた。
【0066】
即ち、実施例1〜16の電気二重層キャパシタは、セパレータに変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを30〜59質量%含有しているため、電解液の保液性が良く、イオン伝導性を良好なものにすることができることから、DC抵抗評価において、低い値を示した。一方、比較例2、3の電気二重層キャパシタは、セパレータにおける、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aの含有率が30質量%より少ないため、電解液の保液性に劣り、DC抵抗評価において高い内部抵抗を示した。比較例5、6、9の電気二重層キャパシタは、セパレータに変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを含有していないため、電解液の保液性に劣り、DC抵抗評価において高い内部抵抗を示した。比較例11の電気二重層キャパシタは、セパレータの厚みが50μmより厚いため、DC抵抗評価において高い内部抵抗を示した。比較例12で作製した電気二重層キャパシタは、セパレータのガーレー透気度が20.0s/100mlより大きいため、セパレータが緻密になり過ぎ、DC抵抗評価において高い内部抵抗を示した。
【0067】
実施例1〜16の電気二重層キャパシタは、セパレータに合成繊維Bを41〜70質量%含有しているため、耐熱性が良好であり、高温乾燥処理後の強度低下が少なく、内部短絡不良率は低い値を示した。一方、比較例1の電気二重層キャパシタは、セパレータに変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを59質量%より多く含有しているため、比較例4の電気二重層キャパシタは、セパレータに含有する合成繊維Bが41質量%より少ないため、比較例7、8の電気二重層キャパシタは、セパレータに合成繊維Bを含有していないため、高温乾燥処理によるセパレータの強度劣化が見られ、内部短絡不良率が高くなった。比較例10の電気二重層キャパシタは、セパレータの厚みが10μmより薄いため、正極と負極との間の絶縁性が不十分となり、内部短絡不良率が高くなった。比較例6、9の電気二重層キャパシタは、セパレータの透気度が0.4s/100mlより小さく、セパレータの空隙が大き過ぎるため、内部短絡不良率が高くなった。
【0068】
実施例7の電気二重層キャパシタは、セパレータに変法濾水度0〜400mlのフィブリル化天然セルロース繊維Cを3質量%、実施例8〜10、13の電気二重層キャパシタは、セパレータに変法濾水度0〜400mlのフィブリル化天然セルロース繊維Cを10質量%含有しているため、セパレータをより緻密かつ薄くすることができ、実施例1〜6の電気二重層キャパシタよりDC抵抗評価において、低い値を示した。
【0069】
実施例8〜11の電気二重層キャパシタは、同一の坪量、同一の厚みで、変法濾水度の異なるフィブリル化天然セルロース繊維C1〜4を配合したセパレータを用いている。変法濾水度が0〜400mlより大きいフィブリル化天然セルロース繊維C4を配合したセパレータを用いた実施例11の電気二重層キャパシタは、セパレータの厚みを薄くした際の緻密性がやや足りなく、変法濾水度が0〜400mlのフィブリル化天然セルロース繊維C1〜3を配合したセパレータを用いた実施例8〜10の電気二重層キャパシタより内部短絡不良率が若干高くなった。
【0070】
実施例12の電気二重層キャパシタは、セパレータにおける、変法濾水度0〜400mlのフィブリル化天然セルロース繊維Cの含有率が10質量%より多いため、セパレータがやや緻密になり過ぎて、イオン伝導性が若干悪くなり、実施例1〜11、13〜15の電気二重層キャパシタよりやや高い内部抵抗を示した。
【0071】
実施例14〜16の電気二重層キャパシタは、同一繊維配合率かつ同一厚みで、ガーレー透気度の値の異なるセパレータを用いている。ガーレー透気度の値が小さいほど、セパレータ中の空隙が増加し、イオン伝導性が良好になる。そのため、DC抵抗評価では、ガーレー透気度の比較的小さい実施例14の電気二重層キャパシタは、実施例15及び実施例16の電気二重層キャパシタより低い値を示し、実施例15の電気二重層キャパシタは実施例16の電気二重層キャパシタより低い値を示した。
【0072】
<リチウムイオンキャパシタ>
[電極10の作製]
ポリフッ化ビニリデン10質量部をN−メチル−2−ピロリドン80質量部に溶解し、これに難黒鉛化炭素粉末(クレハ製、商品名:カーボトロンP)100質量部を添加して混合撹拌機にて十分混合して、負極用スラリーを作製した。該負極用スラリーを、厚さ32μm(気孔率57%)の銅製エキスパンドメタルからなる負極集電体に、アプリケータを用いて上記の負極用スラリーを塗布・乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理を行い、厚み80μmのリチウムイオンキャパシタ用負極を作製し、これを電極10とした。
【0073】
[電極11の作製]
ポリフッ化ビニリデン10質量部をN−メチル−2−ピロリドン90質量部に溶解し、これにフェノール樹脂を出発原料とする平均粒径5.0μm、比表面積2000m/gの粉末状活性炭80質量部と、平均粒径200nmのアセチレンブラック10質量部と、N−メチル−2−ピロリドン300質量部を添加し、混合撹拌機にて十分混合して、正極用電極スラリーを得た。該正極用スラリーを厚さ38μm(気孔率47%)のアルミニウム製エキスパンド集電体に、アプリケータを用いて上記の電極スラリーを塗布・乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理を行い、厚み90μmのリチウムイオンキャパシタ用正極を作製し、これを電極11とした。
【0074】
[リチウムイオンキャパシタの作製]
電極10と電極11をそれぞれ30mm×50mm角にカッティングし、負極に電極10、正極に電極11を用い、実施例2、3、7、9、11、12、14〜16及び比較例比較例1〜12のセパレータが電極間に介するようにそれぞれ積層した。これをアルミニウム製収納袋に収納し、150℃で10時間真空加熱を行った。このアルミニウム製収納袋にリチウム金属を収納し、プロピレンカーボネートに1.0mol/lになるようにLiPFを溶解した電解液を注入後、注入口を密栓した。その後、リチウム金属と負極の間で2mAの定電流充電を12時間行うことにより、負極へのリチウムイオンの吸蔵を行い、それぞれ実施例2、3、7、9、11、12、14〜16及び比較例1〜12のリチウムイオンキャパシタを作製した。
【0075】
[DC抵抗評価]
実施例及び比較例のリチウムイオンキャパシタを用い、充放電電圧範囲2.0〜4.0V、充放電電流30mAで、定電流充放電を10サイクル繰り返し、10サイクル目の放電開始直後の電圧低下より内部抵抗を算出し、100個の平均値をDC抵抗評価として表4に示した。
【0076】
[内部短絡不良率]
実施例及び比較例のリチウムイオンキャパシタを用い、充放電電圧範囲2.0〜4.0V、充放電電流30mAで、定電流充放電を500サイクル繰り返した際の内部短絡不良率を算出し、表4に示した。
【0077】
[容量維持率]
実施例及び比較例のリチウムイオンキャパシタを用い、充放電電圧範囲2.0〜4.0V、充放電電流30mAで、定電流充放電を10サイクル繰り返し、10サイクル目の放電容量を初期放電容量とした。その後、充放電電圧範囲2.0〜4.0V、充放電電流300mAで、定電流充放電を10サイクル繰り返し、10サイクル目の放電容量を測定し、初期放電容量に対する割合、即ち容量維持率を求め、100個の平均値を表4に示した。
【0078】
【表4】

【0079】
表4に示した通り、実施例2、3、7、9、11、12、14〜16のリチウムイオンキャパシタは、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを30〜59質量%、合成繊維Bを41〜70質量%含有し、厚みが10〜50μm、ガーレー透気度が0.4〜20.0s/100mlの多孔質シートからなるセパレータを用いているため、内部短絡不良率が低く、内部抵抗特性及び容量維持率に優れていた。
【0080】
即ち、実施例2、3、7、9、11、12、14〜16のリチウムイオンキャパシタは、セパレータに変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを30〜59質量%含有しているため、電解液の保液性が良く、イオン伝導性を良好なものにすることができることから、DC抵抗評価において低い値を示した。一方、比較例2、3のリチウムイオンキャパシタは、セパレータにおける、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aの含有率が30質量%より少ないため、電解液の保液性に劣り、DC抵抗評価において高い内部抵抗を示した。比較例5、6、9のリチウムイオンキャパシタは、セパレータに変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを含有していないため、電解液の保液性に劣り、DC抵抗評価において高い値を示した。比較例11のリチウムイオンキャパシタは、セパレータの厚みが50μmより厚いため、DC抵抗評価において高い値を示した。比較例12のリチウムイオンキャパシタは、セパレータのガーレー透気度が20.0s/100mlより大きいため、セパレータが緻密になり過ぎ、DC抵抗評価において高い内部抵抗を示した。
【0081】
実施例2、3、7、9、11、12、14〜16のリチウムイオンキャパシタは、合成繊維Bを41〜70質量%含有しているため、耐熱性が良好であり、高温乾燥処理後の強度低下が少なく、内部短絡不良率は低い値を示した。一方、比較例1のリチウムイオンキャパシタは、セパレータに変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを59質量%より多く含有しているため、比較例4のリチウムイオンキャパシタは、セパレータに含有する合成繊維Bが41質量%より少ないため、比較例7、8のリチウムイオンキャパシタは、セパレータに合成繊維Bを含有していないため、高温乾燥処理によるセパレータの強度劣化が見られ、内部短絡不良率が高くなった。比較例10のリチウムイオンキャパシタは、セパレータの厚みが10μmより薄いため、正極と負極との間の絶縁性が不十分となり、内部短絡不良率が高くなった。比較例6、9のリチウムイオンキャパシタは、セパレータの透気度が0.4s/100mlより小さく、セパレータの空隙が大き過ぎるため、内部短絡不良率が高くなった。
【0082】
実施例2、3、7、9、11、12、14〜16のリチウムイオンキャパシタは、セパレータに変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを30〜59質量%含有しているため、電解液の保液性が良く、イオン伝導性を良好なものにすることができることから、大電流で充放電させても容量維持率が高く優れていた。一方、比較例2、3のリチウムイオンキャパシタは、セパレータにおける、変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aの含有率が30質量%より少ないため、比較例5、6、9のリチウムイオンキャパシタは、セパレータに変法濾水度0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを含有していないため、電解液の保液性に劣り、容量維持率は低くなった。
【0083】
実施例7、9のリチウムイオンキャパシタは、セパレータに変法濾水度0〜400mlのフィブリル化天然セルロース繊維C1をそれぞれ3質量%、10質量%含有しているため、セパレータをより緻密、かつ薄くすることができ、実施例2、3のリチウムキャパシタよりDC抵抗評価において、低い値を示した。
【0084】
実施例9、11のリチウムイオンキャパシタは、同一の坪量、同一の厚みで、それぞれ変法濾水度の異なるフィブリル化天然セルロース繊維C2、C4を配合したセパレータを用いている。変法濾水度が0〜400mlより大きいフィブリル化天然セルロース繊維C4を配合したセパレータを用いた実施例11のリチウムイオンキャパシタは、セパレータの厚みを薄くした際の緻密性がやや足りなく、変法濾水度が0〜400mlのフィブリル化天然セルロース繊維C2を配合したセパレータを用いた実施例9のリチウムイオンキャパシタより内部短絡不良率が若干高くなった。
【0085】
実施例12のリチウムイオンキャパシタは、セパレータにおける、変法濾水度0〜400mlのフィブリル化天然セルロース繊維Cの含有率が10質量%より多いため、セパレータがやや緻密になり過ぎて、イオン伝導性が若干悪くなり、実施例2、3、7、9、11、14、15のリチウムイオンキャパシタよりやや高い内部抵抗を示した。
【0086】
実施例14〜16のリチウムイオンキャパシタは、同一繊維配合率かつ同一厚みで、ガーレー透気度の値の異なるセパレータを用いている。ガーレー透気度の値が小さいほど、セパレータ中の空隙が増加し、イオン伝導性が良好になるため、DC抵抗評価では、ガーレー透気度の比較的小さい実施例14のリチウムイオンキャパシタは、実施例15、実施例16のリチウムイオンキャパシタより低い値を示し、実施例15のリチウムイオンキャパシタは実施例16のリチウムイオンキャパシタより低い値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の活用例としては、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどの電気化学素子用セパレータが好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度が0〜250mlの溶剤紡糸セルロース繊維Aを30〜59質量%、合成繊維Bを41〜70質量%含有し、厚みが10〜50μm、ガーレー透気度が0.4〜20.0s/100mlの多孔質シートからなる電気化学素子用セパレータ。
【請求項2】
さらに、多孔質シートが変法濾水度0〜400mlのフィブリル化天然セルロース繊維Cを10質量%以下含有してなる請求項1記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項3】
請求項1記載の電気化学素子用セパレータを用いてなる電気化学素子。

【公開番号】特開2011−187515(P2011−187515A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48530(P2010−48530)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】