説明

電気化学装置

【課題】電子機器のヒンジ部等、一方向への大きな曲率の湾曲または局所的な屈曲動作を伴う部位に搭載しても、短絡もしくは部材の破断による機能低下の起こらない薄型でフレキシビリティに優れる電気化学装置を提供すること。
【解決手段】電気化学装置としてのリチウムイオン二次電池の集合体10は、ワイヤ状もしくはロッド状のセル7がフレキシブルな繊維(または帯状体)8,12により編み込まれて連結され、シート状に成型されている。隣接するセル7間を連結する繊維(または帯状体)8,12が先行して屈曲し、該シート状構造を湾曲または屈曲させることを可能とした。セル7の外部集電体層6は、外部電極13に接続された導電体からなる繊維12に接触している。内部集電体としての芯材1は、外部電極16に接続された導電体15に接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲や屈曲させても安定的な動作が可能な電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学装置としてのリチウムイオン二次電池はニッケル−カドミウム電池等に比して高電圧特性および充放電容量が優れており、電源として携帯型電子機器等へ広く搭載されている。
また近年ではICカードや電子ペーパーといった薄型のフレキシブルデバイスの出現に伴い、これらに搭載されるリチウムイオン二次電池は、薄型でフレキシビリティを有するものが求められている。
【0003】
これまでリチウムイオン二次電池には円筒形、コイン型に加え箱型の電池パックが知られている。これらは変形による正極と負極の短絡や電解質の漏出などの防止を目的として、定型の筐体内に電池構造が構成されており、これを搭載する機器は電池の形状によって収納部位の空間容量や搭載位置等、設計の自由度が狭められている。
【0004】
このように従来のリチウムイオン二次電池は強固な筐体に収納されているため、電池を湾曲させることはできなかった。このためリストウォッチのベルトなど、湾曲する部位へリチウムイオン二次電池を直接搭載することは困難であり、変形しない部位に搭載スペースを設ける必要があった。
【0005】
上記課題の解決策として、例えば特許文献1に記載される薄膜固体二次電池が提案されている。これは正極集電体、正極活物質、無機固体電解質、負極活物質、負極集電体のそれぞれを薄膜として形成し順に積層することで、全体を数十〜数百μm程度の薄さにすることが可能であり、電池にフレキシビリティを付与することが可能となっている。
【0006】
一方で、薄膜固体二次電池では電解質層も薄膜化する必要があり、電池を湾曲させた際に正極と負極が短絡しやすいという問題がある。即ち電解質層が薄膜であるため正極活物質層と負極活物質層が接近しており、湾曲の際に電解質層に生じたクラックなどを通して短絡を起こしやすく、短絡により電池本体や最悪デバイス全体が破壊されるおそれがあった。
【0007】
上述した薄膜固体二次電池の短絡の問題を鑑みて、特許文献2に記載される技術が提案されている。即ち基板上に形成した集電体薄膜、正極活物質薄膜、固体電解質薄膜、負極活物質薄膜、集電体薄膜を順に積層した薄膜構造のうち、固体電解質薄膜中にその厚みよりも直径の小さい球状粒子を含有させる手法である。この粒子は正極と負極が短絡するのを防ぐ働きをもち、湾曲させても安全に使用することができるリチウムイオン二次電池を提供できるとしている。
【0008】
【特許文献1】特開2007−123081号公報
【特許文献2】特開2008−146917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながらこれら薄膜固体二次電池は固体電解質層に短絡防止手段を講じても、鋭角に湾曲させた際には電池積層構造の最外部が破断してしまうため、電池の入出力の低下や機能停止が起こるおそれがあった。このため大きな曲率で湾曲する部位へ搭載することは困難であり、まして鋭角に屈曲させることは困難であることから、搭載する機器やその搭載位置が制限されるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本適用例の電気化学装置は、第1芯材と第1負極活物質層と第1電解質層と第1正極活物質層と第1集電体層とを含む第1電気化学素子と、第2芯材と第2負極活物質層と第2電解質層と第2正極活物質層と第2集電体層とを含む第2電気化学素子と、前記第1電気化学素子と前記第2電気化学素子とを連結する可撓性を有する第1連結部と、前記第1芯材と前記第2芯材とに電気的に接続する第1電極と、前記第1集電体層と前記第2集電体層とに電気的に接続する第2電極と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、蓄電可能な電気化学素子(以降、セルと呼ぶ)を少なくとも2個以上第1連結部により連結させることでシート状とし、また該シート状構造を湾曲または屈曲させる際に、セルを連結する可撓性を有する第1連結部がセルに優先して屈曲する構造とすることで、セルを変形させること無く曲げ動作を行なうことができる。従ってセルの変形に伴い正極と負極が短絡することや、またセルの部材が破断するのを防止する効果を奏する。なお、第1電気化学素子および第2電気化学素子は、同じ蓄電性能を有するものでもよいし、異なる蓄電性能を有するものでもよい。
【0013】
[適用例2]上記適用例の電気化学装置であって、複数の前記第1連結部を有し、前記第2電極は、前記第1電気化学素子と前記第2電気化学素子とを連結する可撓性および導電性を有する第2連結部に接続され、前記第2連結部が前記第1連結部の間に位置することが好ましい。
【0014】
これによれば、鋭角な屈曲を行なっても第2連結部にかかる応力を複数の第1連結部によって分散させることができる。その結果、第2電極に接続される第2連結部が屈曲により破断し出力が低下することや、機能が停止することを防ぐことができる。
【0015】
[適用例3]上記適用例の電気化学装置であって、前記第1電極は、前記第1芯材と前記第2芯材とを連結する可撓性および導電性を有する第3連結部に接続されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、第1電極に接続される第3連結部が屈曲により破断し出力が低下することや、機能が停止することを防ぐことができる。
【0017】
[適用例4]上記適用例の電気化学装置において、前記第1連結部、前記第2連結部、前記第3連結部が繊維または帯状体を含むものであることが好ましい。
【0018】
これによれば、フレキシブルな繊維または帯状体によりセルを連結することで、曲げ特性に優れる薄型の電気化学装置を提供できる。
【0019】
[適用例5]上記適用例の電気化学装置において、前記第1連結部および前記第2連結部が繊維または帯状体を含むものであって、前記繊維または前記帯状体により、前記第1電気化学素子と前記第2電気化学素子とが編み込まれて連結されていることが好ましい。
【0020】
これによれば、フレキシブルな繊維または帯状体によりセルを編み込んで連結することで、屈曲に対して優れた信頼性を有する薄型の電気化学装置を提供できる。
【0021】
ここで編み込みとは、2個以上のセルを繊維または帯状体の太さ以上の間隔をおいて配置し、セル間の隙間を繊維または帯状体で縫うようにしてセル同士を連結し一体とする工程を表す。シート状に編み込まれるセルの個数を多くすることで蓄電容量を増すことができる。
【0022】
[適用例6]上記適用例の電気化学装置において、前記第1電気化学素子と前記第2電気化学素子との間に隙間があることが好ましい。
【0023】
これによれば、セル間の隙間に連結部を設けることができる。すなわち、複数本のセルを単位として連結しないので、よりフレキシブルなシート状の電気化学装置を提供できる。また、第2連結部や第3連結部のように導電性を有する連結部によりセルをシート状とすることで、多数のセルを電気的に直列または並列に接続させるための複雑な回路を省くことができる。
【0024】
さらに、第1および第2電気化学素子を棒状のセルとすることにより、缶封止した従来のセルに比して断面積を極めて小さくすることができ、電気化学装置を薄型とし滑らかに湾曲させることのできる特性を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0026】
本実施形態の電気化学装置として、リチウムイオン二次電池の集合体を例に図1及び図2を参照して説明する。図1はリチウムイオン二次電池のセルを示す概略図、図2は断面図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の電気化学素子としてのリチウムイオン二次電池のセル7は、導電性の素材を糸状または棒状の形状に成形されてなる内部集電体としての芯材1を有する。芯材1の断面形は、外郭線が曲線のみで構成される形状であっても、また少なくともひとつの直線部分を含む形状であってもよい。
また、芯材1に用いられる材料は導電性を有するものであればいかなる材料を用いてもよいが、Pt、Ti、Al、Ag、Au、Fe、Pb、Ni、Ir、Co等の金属材料や、炭素繊維や炭素族元素、導電性高分子材料等を用いることができる。
セル7は、芯材1周面に正極活物質層3、電解質層4、負極活物質層5、外部集電体層6を順に積層させて構成される。芯材1に対する正極活物質層3、電解質層4、負極活物質層5の積層の順が逆であってもよい。
【0028】
次に、セル7の製造方法について説明する。まずワイヤ状もしくはロッド状の芯材1を内部集電体として、その周面に電池材料を積層する。この際あらかじめ芯材1の軸方向の少なくとも一端部を容易に除去が可能な保護材2で被覆し図1のような構成とすることで、後に芯材1を露出させる工程を簡略化することができる。保護材2としては、セロファンなどの樹脂テープや石膏などを用いることができる。またこの保護材2は塗布、貼付け等により形成されるほか、金属または樹脂で成型される着脱が可能な治具を用いて被覆を行なってもよい。
【0029】
セル7の製造方法は、例えば以下の4工程により、芯材1周面に正極活物質層3、電解質層4、負極活物質層5、外部集電体層6を順に積層しセル7を形成するものである。
(1)少なくとも一端部を保護材2により被覆した芯材1表面に、正極活物質を積層して正極活物質層3を形成する工程。
(2)正極活物質層3表面に、電解質を積層して電解質層4を形成する工程。
(3)電解質層4表面に、負極活物質を積層して負極活物質層5を形成する工程。
(4)負極活物質層5表面に、外部集電体を積層して外部集電体層6を形成する工程。
【0030】
セル7の製造方法において工程(1)、(2)、(3)の順番を逆にして、芯材1表面上に負極活物質層5、電解質層4、正極活物質層3、外部集電体層6の順に積層した構造としてもよい。また上記(1)、(2)、(3)の各工程では、粉体ペースト、ゾルゲル材料や微粒子分散液等の液体材料を塗布または噴霧し焼成する方法、または気相成長法、スパッタリング、プラズマCVDなど気相での成膜法などの手法を用いることができる。
【0031】
上記工程(1)に使用される正極活物質は硫黄、リン等を含有したものを含むリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、具体的にはLiCoO2、LiMn24、LiMnMgO4、LiFePO4などや、これらの組成元素の比率を変化させたもの、およびその一定量をB、C、N、Na、Al、Ti、Ni、Zn、Zr等の元素で置換したものから選択される。
【0032】
上記工程(2)で積層される電解質は、正極および負極間をリチウムイオンが往来する反応の媒体として機能するものが選択され、液体、ゲル状、固体のものが知られている。
液体のものではエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等鎖状炭酸エステル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソフラン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等の鎖状エーテル、γ−ブチロラクトン等の環状エステル、酢酸メチル等の鎖状エステル等の有機溶媒の単体、もしくは二種類以上混合したものに、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23等の支持電解塩を溶解した有機電解液を用いることができる。
【0033】
またゲル状のものとしては前記電解液をポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリフルオロビニリデン、エチレングリコールエチルカーボネートメタクリレート等のゲル剤と混合し、加熱後の冷却や重合反応によってゲル化させたものを用いることができる。
【0034】
固体のものとしては高分子固体および無機固体のものが知られており、前者ではポリフェニルメタンポリイソシアネート等のポリイソチオシアネート類、ポリペンタエリスリトール等のポリオール類、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレート類を単独、或いは複数種重合したものを用いることができる。また後者の例としてはLiLaTiO3等の無機結晶質もしくはこれらの元素組成比を一定量変化させるか、Na、Zn、Zr、Fe、Pb、Cuなどの元素で置換したもの、またはLiI−Li2S−P25、Li2S−GeS2−P25、SiO2−P25、Li2O−SiO2−P25等のリチウムイオン電導性非晶質等の薄膜を用いることができる。
【0035】
上記電解質において、リチウムイオン伝導性の性質を有するものを用いる場合、液体またはゲル状の電解質では正極と負極の短絡やリチウム金属の析出による異常を抑制するため緻密な繊維から製造されるセパレーターを使用しなければならない。
一方固体電解質では短絡を起こしにくいためセパレーターを省くことができ、セル7の断面積を小さくすることができるため、より薄型の電池を得るためには固体電解質を用いることが好ましい。
【0036】
上記工程(3)で用いる負極活物質はリチウムイオンの吸蔵および放出の性質に優れるものが好ましく、グラファイトカーボン、メソフェーズカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、SnO、SnO2、GeO2、SiO等の炭素族元素酸化物、Li7MnN4、LiFeN2等のリチウム遷移金属窒化物、Cu6Sn5、Ag3Sn等の合金などから選択することができる。
【0037】
上記工程(4)では外部電極となる外部集電体層6によって負極活物質層5を被覆する。この外部集電体としては、Fe、Cu、Al、Zn、Ag、Au、Pt等の金属や、各種炭素化合物、高分子などを用いることができる。外部集電体層6はめっきや真空蒸着、金属箔または高分子フィルムの接着剤による接着、圧着により形成することができる。
【0038】
以上の工程により、図2の断面図のような断面構造を有するセル7が得られる。このセルは軸方向の長さを長くすることで1セル当たりの容量を大きくすることができる。
【0039】
次に、上記製造方法により得られたセル7を用いて構成されたシート状の電気化学装置(リチウムイオン二次電池の集合体)の実施例について説明する。
【0040】
(実施例1)
図3は実施例1のリチウムイオン二次電池の集合体を示す概略図である。
【0041】
図3に示すように、実施例1のリチウムイオン二次電池の集合体10は、セル7の保護材2を除去して芯材1を露出させ、少なくとも2個以上のセル7を隣接するセル7の軸同士が平行かつ同一の平面を成すように間隔を置いて配置する。その後、複数のセル7を第1連結部としての繊維8(または帯状体)によりセル7の軸と交差する方向(直交する方法)に編み込み、シート状とする。このとき個々の芯材1を被覆する部分の端部同士が成す直線とセル7の軸が直角になるように、複数のセル7を配置することが好ましい。
【0042】
繊維8による編み込みの方法は、図3に示すように配列したセル7が繊維8によってシート状に連結され、繊維8の屈曲または隣り合ったセル7の繊維8に対する摺動が可能であればいかなる態様であってもよい。
【0043】
ここで編み込みに用いる繊維8は、該集合体10の屈曲性能を向上するために柔軟な素材(可撓性を有する素材)を用いることが好ましい。具体的にはポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等とそれに類する合成繊維が挙げられる。
【0044】
図4は編み込みの方法の1例を示す斜視図である。図4に示される屈曲性能に優れる編み込みの方法の1例は、2つ以上の並列したセル7の軸が成す平面を基準とし、該基準平面を水平面と仮定すると、隣接するセル7間の繊維8が基準平面の上下でセル7を交互に連結する態様となっている。この方法では少なくとも3本以上の繊維8による編み込みが必要であり、且つ少なくとも3本うち1本の繊維8のセル7との接点が上記基準平面に対して他の繊維8とは上下反対になっていることが、セル7を安定的に支持するために要求される。
【0045】
このようなシート状の集合体10のひとつのセル7に着目すると、繊維8が上記基準平面の上下両方向からセル7の外周に接しており、シート状とした際にその形態を支持することができる。また本構造によれば、セル7の並列方向に対する屈曲の際には、隣接したセル7間を連結する繊維8のみが屈曲するため、セル7に曲げ応力をかけることなく繊維8の柔軟性(可撓性)に依存して屈曲させることができる。また繊維8とセル7が固着しておらずセル7が繊維8との接触面を摺動することが可能である。従って繊維8の屈曲とセル7の摺動により、本シート状のリチウムイオン二次電池の集合体10は局所的に鋭角に屈曲することが可能となっている。
【0046】
このようにして繊維8を用いた編み込みによりセル7をシート状とした構造では、セル7の並列方向への屈曲を行なってもセル7内の正極と負極が短絡することを防ぐことができ、湾曲のみならず屈曲動作させることができる。
【0047】
次に図5および図6を参照して、外部集電体層の取り出し配線を形成する方法を説明する。図5は外部集電体層の取り出し配線を形成する方法を示す概略図、図6は外部電極と繊維との電気的な接合方法を示す概略図である。
【0048】
本実施形態に係る外部集電体層6の取り出し配線は導電性の第2連結部としての繊維12(または帯状体)を用い、複数配列したセル7を編み込むことで得られる。より具体的には図4に示した繊維の編み込み方法と同様である。少なくとも1本以上のフレキシブルな導電性の繊維12を用いて、前述した基準平面の上下において交互に2つ以上のセル7に接するよう編み込むことで、セル7の外部集電体層6との接点において導電性の繊維12と通電することができる。
【0049】
このように外部集電体層6に接続する取り出し配線をフレキシブルな繊維12として複数のセル7を編み込むことによって形成することにより、集合体10のフレキシビリティが損なわれることを防ぐことができる。この繊維12は1本でも機能するが、屈曲させても常にセル7に接して安定的に電流を流せるようにするためには、編み込まれる繊維12が2本以上であることが好ましい。
【0050】
繊維12は、集合体10の屈曲を阻害しないよう十分に小さい断面積をも持ち、柔軟性を備えていればいかなる素材を用いても構わない。具体例としてはCu、Fe、Ni、Au、Al等の金属材料、ポリアセチレン、ポリオレフィン等の導電性高分子材料などが挙げられるが、上記条件を満たしていればこの限りでない。
【0051】
繊維12は、集合体10が搭載される外部デバイスと接続するための第2電極としての外部電極13に接続される。この外部電極13は導電性の基材より作製され、セル7の配列の末端に配置するほか、断面積および断面形をセル7と同一にしてセル7の配列中に配置してもよい。外部電極13との接点では、繊維12をはんだ付け、溶接、導電性接着剤による貼付けのほか、図6で示されるように外部電極13に突起部分14を形成し、これに繊維12を巻きつけるなどして、両者を接合させてもよい。接合方法はこれらの方法を組み合わせてもよいし、屈曲または湾曲を行なっても繊維12と外部電極13との接触が破綻しない構成であれば、いかなる方法を用いてもよい。
【0052】
続いて芯材1からの取り出し配線は以下のようにして形成される。
【0053】
本実施形態にかかるセル7の芯材1は、その一端部が保護材2で被覆された状態でその表面に電池材料が積層されている。それゆえに、まず芯材1の表面の保護材2を除き、通電する芯材1(内部集電体)の一端部を露出させる。この露出部にフレキシビリティを有する繊維または帯状体を含む第3連結部としての導電体15を少なくとも一本以上編み込むことで、両者の接点において通電することができる。
【0054】
芯材1(内部集電体)からの取り出しも外部集電体層6と同様にして、柔軟な導電体15を取り出し配線とすることでシート状の集合体10のフレキシビリティを確保することができる。また導電体15を2本以上とすることが、屈曲した際の安定的な通電性を実現する上で好ましい。
【0055】
本実施形態にかかる芯材1(内部集電体)からの取り出し配線には柔軟な導電体15が用いられ、屈曲を阻害しないよう十分に小さい断面積であることが必要である。また用いられる材料としては、例えばCu、Fe、Ni、Au、Al等の金属材料、ポリアセチレン、ポリオレフィン等の導電性の高分子材料を用いることができる。
【0056】
また、導電体15は、外部電極13とは対極の第1電極としての外部電極16に接続することで機器への搭載を簡易にすることができる。外部電極16との接続方法については屈曲または湾曲を行なっても導電体15と外部電極16の接触が破綻しなければ、いかなる方法を用いてもよい。具体的には繊維12と外部電極13との接合方法で例示された方法が挙げられる。
【0057】
芯材1(内部集電体)に接続された外部電極16は導電性の基材から製造され、これは剛体であってもよい。これをセル7の配列の末端において、配列した複数のセル7の軸が成す平面上に配置する。この平面における外部電極16の断面形はいかようであっても構わない。また断面積は、セル7の断面積より小さくても、また大きくてもよい。また芯材1(内部集電体)に接続された外部電極16は対極の外部電極13とセル7の配列方向の同端に配置しても、また反対側に配置してもよい。このとき外部電極16が対極の外部電極13およびセル7の外部集電体層6と接触しないよう、形状および配置を工夫するか、または両極間に絶縁体を設けることが好ましい。
【0058】
実施例1のリチウムイオン二次電池の集合体10の構成によれば、互いに接触することのない正極と負極を備え、セル7の配列方向への優れた屈曲性能を有する。また、屈曲を行なっても安定的に動作するシート状のリチウムイオン二次電池の集合体10が得られる。
【0059】
次に、他の実施例について図7および図8を参照して説明する。
【0060】
(実施例2)
図7(a)は実施例2のリチウムイオン二次電池の集合体を示す概略斜視図、同図(b)は封着状態を示す概略斜視図である。
図7(a)に示すように、実施例2のリチウムイオン二次電池の集合体20は、可撓性の絶縁体からなるフィルム18で実施例1の集合体10を被覆し、同図(b)に示すように正極および負極の外部電極13,16のみを露出させ封着したものである。
実施例2によれば、シート状のリチウムイオン二次電池の集合体20を機器に搭載した際に、フィルム18によって封着されているので、強い外力によって正極と負極の取り出し配線が接触し短絡することを防ぐことができる。また大気中の酸素や水分などにより集電体表面が酸化し、導電性が低下することにより出力が低下することを防止する役割を果たしている。
【0061】
ここで可撓性の絶縁体からなるフィルム18とは、天然ゴム、クロロプレンゴム等の絶縁性に優れ、かつ十分な可撓性または弾性を備える素材から選択される。また、集合体20の屈曲性を阻害しないよう十分小さい断面積を有する素材が用いられ、セル7が外気に曝されないように外部電極13,16を除く全ての部分を被覆するように成形される。
【0062】
(実施例3)
図8は、実施例3のリチウムイオン二次電池の集合体を示す概略断面図である。図8に示すように、実施例3のリチウムイオン二次電池の集合体30は、実施例2のリチウムイオン二次電池の集合体20を、内蔵するセル7の軸が成す平面に対し垂直な方向に複数積層した積層構造としたものである。
また、各リチウムイオン二次電池の集合体20の外部電極13,16にそれぞれ繋がる接続部17,19を備えている。
実施例3によれば、セル7の成す平面の面積を変えることなく、より容量の大きなフレキシブルなリチウムイオン二次電池の集合体30を得ることができる。このとき積層された集合体20をさらに可撓性の絶縁体からなる前述のフィルム18で被覆することにより、積層構造を維持することができ、また外気による部材の劣化を防ぐことができる。
【0063】
実施例3のリチウムイオン二次電池の集合体30は、ワイヤ状またはロッド状のセル7を多数備え、これらを繊維8で編み込むことでシート状とされている。このような構造としたことにより、セル7の並列方向に対する曲げ動作の際にはセル7を連結する繊維8が屈曲することで、セル7自体が変形し正極と負極が短絡することを防いでいる。またセル7の摺動を可能としたことで、従来のリチウムイオン二次電池では構造が破壊されてしまう鋭角な屈曲に対しても、その機能を損なうことなく追従できる。さらにセル7の断面径を小さくすることで、これを編み込んで得られるシート状の構造は滑らかな湾曲面を構成することが可能になっている。
【0064】
上記実施例1〜実施例3のリチウムイオン二次電池の集合体10,20,30は、各種デバイスの湾曲または屈曲する部位への搭載が可能となり、デバイスを設計する際の自由度やデザイン性が向上する。またこれらの動作を繰り返してもデバイスの安定的な作動を確保できるという効果を奏する。より具体的にはリストウォッチなどの身体へ装着する電子機器のバンド部分に搭載することで、バンド部分の柔軟な湾曲または屈曲に追従し、さらに表示部分などの本体の設計およびデザインの自由度を向上させることができる。
【0065】
リストウォッチのバンド部以外にも、例えば、身体装着型医療器具のベルト部、身体装着型パワーアシスト機器、電子機器のヒンジ部、各種フレキシブル電子デバイス、その他各種電子機器、電気機械の屈曲部位に適用することができる。
なお、本実施形態では二次電池としてリチウムイオン二次電池を例示したが、これに限られるものではなく、ニッケル・水素電池等の他の二次電池に適用することも可能である。
【0066】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0067】
(変形例1)上記実施形態のリチウムイオン二次電池の集合体10において、セル7は1本ずつ繊維8により編み込まれることに限定されない。例えば、2本のセル7を単位として編み込んでもよい。
【0068】
(変形例2)上記実施形態のリチウムイオン二次電池の集合体10において、複数のセル7を連結する繊維8や繊維12の編み込み方法は、これに限定されない。例えば、複数本の繊維により1つの連結部を構成し、そのうちの1本によりセル7間で他の繊維を巻回するように編み込んでもよい。これによれば、セル7間での屈曲を可能としつつ、屈曲による剪断に強い構造とすることができる。
【0069】
(変形例3)上記実施形態のリチウムイオン二次電池の集合体10において、セル7における芯材1は、正極であることに限定されない。例えば、芯材1が正極であるセル7と、芯材1が負極であるセル7とを交互に配列させることにより、複数のセル7を電気的に直列に連結することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】リチウムイオン二次電池のセルを示す概略図。
【図2】リチウムイオン二次電池のセルを示す概略断面図。
【図3】実施例1のリチウムイオン二次電池の集合体を示す概略図。
【図4】編み込みの方法の1例を示す斜視図。
【図5】外部集電体層の取り出し配線を形成する方法を示す概略図。
【図6】外部電極と繊維との電気的な接合方法を示す概略図。
【図7】(a)は実施例2のリチウムイオン二次電池の集合体を示す概略斜視図、(b)は封着状態を示す概略斜視図。
【図8】実施例3のリチウムイオン二次電池の集合体を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0071】
1…芯材、6…集電体層としての外部集電体層、7…電気化学素子としてのリチウムイオン二次電池のセル、8…連結部としての繊維、10,20,30…電気化学装置としてのリチウムイオン二次電池の集合体、13…第2電極としての外部電極、16…第1電極としての外部電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1芯材と第1負極活物質層と第1電解質層と第1正極活物質層と第1集電体層とを含む第1電気化学素子と、
第2芯材と第2負極活物質層と第2電解質層と第2正極活物質層と第2集電体層とを含む第2電気化学素子と、
前記第1電気化学素子と前記第2電気化学素子とを連結する可撓性を有する第1連結部と、
前記第1芯材と前記第2芯材とに電気的に接続する第1電極と、
前記第1集電体層と前記第2集電体層とに電気的に接続する第2電極と、
を備えることを特徴とする電気化学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学装置であって、
複数の前記第1連結部を有し、
前記第2電極は、前記第1電気化学素子と前記第2電気化学素子とを連結する可撓性および導電性を有する第2連結部に接続され、
前記第2連結部が前記第1連結部の間に位置することを特徴とする電気化学装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気化学装置であって、
前記第1電極は、前記第1芯材と前記第2芯材とを連結する可撓性および導電性を有する第3連結部に接続されていることを特徴とする電気化学装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気化学装置であって、
前記第1連結部、前記第2連結部、前記第3連結部が繊維または帯状体を含むものであることを特徴とする電気化学装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気化学装置において、
前記第1連結部および前記第2連結部が繊維または帯状体を含むものであって、
前記繊維または前記帯状体により、前記第1電気化学素子と前記第2電気化学素子とが編み込まれて連結されていることを特徴とする電気化学装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気化学装置において、
前記第1電気化学素子と前記第2電気化学素子との間に隙間があることを特徴とする電気化学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−129412(P2010−129412A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303769(P2008−303769)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】