説明

電気化学触媒

電極において有用な組成物は、ナノ粒子触媒をその組成物中に存在させ、使用することによって、より高い電力可能出力をもたらす。マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、パラジウム、ルテニウム、金、銀および鉛などの遷移金属ならびにそれらの合金およびそれぞれの酸化物のナノ粒子が好ましい。これらのナノ粒子触媒は、ある種の電気化学反応向け触媒としての白金を実質的に代替し、もしくは無くすることができる。このような触媒を用いた、アノード、カソード、またはその両方として使用される電極は、金属−空気電池、水素燃料電池(PEMFC)、直接メタノール燃料電池(DMFC)、直接酸化燃料電池(DOFC)、および他の空気もしくは酸素通気性電気化学系、ならびにいくつかの液体拡散電極に関連した用途を有する。図1は、ニッケルナノ粒子触媒の透過電子顕微鏡写真であり、粒子の大きさおよび均質性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、金属、合金、および/またはそれらの酸化物のナノ粒子を含む触媒組成物に関し、より具体的には、電気化学デバイス、例えば金属−空気電池、直接メタノール燃料電池(DMFC)、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)、アルカリ型燃料電池、およびセンシングデバイスにおける高性能拡散電極として有用な、ナノ粒子を含む電極に関する。
【背景技術】
【0002】
白金は、燃料電池および金属−空気電池用のガス拡散電極において酸素還元のために高度な触媒作用を有する。しかし、白金は高価であり、また供給量が有限である。バルク白金黒の現在の価格は約$75.00/グラムである。これに関連した、燃料電池、金属−空気電池および他の実用的発電デバイスにおいて典型的に2〜8mg/cm表面積の割合で白金黒を配合した白金触媒電極のコストは、このようなデバイスが広い範囲で商業的に受け入れられるのに障害となる恐れがある。携帯用デバイスおよび車両向けの燃料電池および空気電池などの電力供給源を求める成長する需要があるため、このような用途において白金の代替となる効率的な触媒が、非常に望ましいものである。したがってより低いコストで、白金の性能に匹敵するまたは白金の性能を超える代替用触媒を見出す、相当な努力が傾注されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
いくつかの開示した実施形態により、空気通気系における酸素の還元、および水素または炭化水素燃料の酸化のための、電極における触媒としてより低コストの材料、例えばマンガン、ニッケル、コバルト、銀、それらの合金、およびそれらのそれぞれの酸化物の使用が可能になる。他の金属の中でクロム、ルテニウム、パラジウム、鉛、鉄、金、ならびにそれらの関連する合金および酸化物も、いくつかの実施形態において有用である。
【0004】
第1の態様において、複数の反応性金属粒子、および基材を含む組成物を提供する。この基材は高い内部表面積および外部表面積を共に有する複数の高度に多孔性の粒子を含むことが好ましく、また高い内部表面積および外部表面積を有する多孔性炭素がより好ましい。この組成物は、石炭から由来する炭素、または活性炭粒子などの炭素を含んでもよく、あるいはこの炭素は、多孔性炭素の固形塊または多孔性炭素のシートであろう。
【0005】
ある実施形態において、金属粒子および炭素の組成物は、空気との反応がなくて試薬により反応速度を特異的に制御することができるような、不活性な環境内に、好ましくはアルゴンなどの不活性ガス環境内に保持することが好ましい。しかし、より反応性の低い金属組成物を用いるある実施形態において、組成物を周囲雰囲気(例えば空気)中に保持することが許容可能であり、またはむしろ望ましい可能性がある。さらに、基材は、金属粒子が基材の内部表面上および外部表面上の両方に吸収されるような、反応性金属粒子との親和性を有することが好ましい。さらに、この基材材料は、反応性金属粒子をその内部および外部表面に付着させて、高いその反応性が保持される凝集塊を形成することが可能である。ある実施形態において、基材の外部表面上への金属粒子の吸着だけを有することを許容することができる(例えば、非多孔性基材)。
【0006】
反応性金属粒子および基材の組成物は、高度に多孔性の粒子の実質的な部分と結合することが可能なポリマー材料をさらに含むことができる。この材料は、フルオロカーボンであることが最も好ましい。
【0007】
他の実施形態において、反応性金属粒子と、高度に多孔性の基材と、結合材料とを含む組成物は、電気部品、例えば電極として使用することができる。反応性金属粒子の使用により、様々な蓄電池および燃料電池などの電気化学電池の性能が高められ、これは末端ユーザーが使用できる、利用可能なエネルギー量の増加に相当する。さらに、これらの電極は、液体拡散系における電極として使用することもでき、それにより電気化学電池の仕事率および/または寿命を増加させることもできる。
【0008】
ナノ粒子を含む反応性金属(単数または複数)は遷移金属であることが好ましく、3〜16族の金属、ランタニド系列、それらの混合物、およびそれらの合金の群から選択されることがより好ましい。金属(単数または複数)は、マンガン、コバルト、ニッケル、および銀、またはそれらの組合せからなる群から選択されることが最も好ましい。
【0009】
好ましい実施形態において、反応性金属粒子は、金属または合金の酸化物を含む。ナノ粒子は、酸化物シェル、例えば粒子の全重量の70重量%未満を含む酸化物シェルを有することができる。他の実施形態において、これらの粒子を酸化して、完全にまたは部分的に金属または合金の酸化物からなるものとすることができる。
【0010】
反応性金属粒子は、1000nm未満の直径を有する。このような粒子を一般に「ナノ粒子」と呼ぶ。これらのナノ粒子は、約100nm未満、より好ましくは約25nm未満、またはより一層好ましくは約10nm未満の直径を有することが好ましい。
【0011】
好ましい実施形態の組成物から、電極を形成することができる。一実施形態において、この電極はフルオロカーボンと、炭素と、ナノ粒子との圧縮混合物である。さらに、この電極は第1および第2の側面を有することができ、この電極の第1の側面に接合させた疎水性層をさらに含むことができる。この電極は、それに積層することができる集電板をさらに含むことができる。
【0012】
他の実施形態は、この電極の製造方法であって、流体環境(例えば水性、メタノール性など)中で炭素を混合して、混合物を形成すること、この混合物にフルオロカーボンを添加すること、フルオロカーボン含有混合物から流体を除去すること、必要に応じて軽質アルコール好ましくはメタノールの存在下で、乾燥したフルオロカーボン含有混合物をナノ粒子とブレンドしてブレンド混合物を形成すること、このブレンド混合物を圧縮して電極を形成することを含む方法を対象とする。この方法は、この電極を集電板と積層することをさらに含むことができる。好ましい電極は、活性炭粒子と、金属、合金および/またはその金属もしくは合金の酸化物を含むナノ粒子と、フィブリル化したフルオロカーボンと、内部集電板との圧縮混合物を含むガス拡散空気カソードである。
【0013】
さらに他の実施形態において、このような電極を含む燃料電池を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの電気化学的または触媒的用途において使用するのに適した組成物であって、複数の反応性金属粒子と、反応性金属粒子よりも低い反応性を有しかつその体積に対して実質的に高い表面積を有する少なくとも1種の基材とを含み、この場合、この基材の表面の少なくとも一部分が、この基材の外側寸法以内にある内部表面を含み、かつ反応性金属粒子の少なくとも一部分が、この内部表面の一部分に隣接して存在する組成物を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、この組成物を、複数の反応性金属粒子の少なくとも一部分の制御された酸化が可能であるように十分に安定した環境内に保持することが可能である。
【0016】
いくつかの実施形態において、この基材は、反応性粒子を基材と接触させると、この粒子が基材に結合され得るような、反応性金属粒子への親和性を有する材料を含む。いくつかの実施形態において、この基材は、複数の反応性金属粒子の少なくともかなりの部分を付着させて、実質的な数の反応性金属粒子の反応性に著しく影響を及ぼさずに、実質的に構造的な凝集塊とすることが可能な結合剤から本質的になる。この基材は、高度に多孔性である。いくつかの実施形態において、この基材は、複数の高度に多孔性の粒子を含む。この基材は炭素を含む。
【0017】
いくつかの実施形態は、複数の高度に多孔性の粒子の少なくとも実質的な部分を付着させるための結合剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、この結合剤はポリマー材料を含む。いくつかの実施形態において、このポリマー材料はフルオロカーボンを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、複数の反応性金属粒子の少なくとも実質的な部分は、約1マイクロメートル未満の直径を有するナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は約100nm未満の直径を有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は約50nm未満の直径を有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は約25nm未満の直径を有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は約10nm未満の直径を有する粒子を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子の少なくとも一部分は、酸化物シェルを有するナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、複数の反応性金属粒子は、3〜16族からの金属、ランタニド、それらの混合物、およびそれらの合金からなる群から選択される金属を含む。
【0020】
いくつかの実施形態は、前記組成物の触媒活性を高める触媒をさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの電気化学的または触媒的用途において使用するのに適した組成物を含む電気化学部材であって、この組成物が複数の反応性金属粒子と、反応性金属粒子よりも低い反応性を有しかつその体積に対して実質的に高い表面積を有する少なくとも1種の基材とを含み、この場合、この基材の表面の少なくとも一部分が、この基材の外側寸法内にある内部表面を含み、かつ反応性金属粒子の少なくとも一部分が、この内部表面の一部分に隣接して存在する電気化学部材を提供する。いくつかの実施形態において、前記部材は、前記部材と第2の部材との間の電気的接続を可能にして、それらの間に電流を流すように構成される回路の一部分を提供する集電板に連結される。
【0022】
いくつかの実施形態は、電気エネルギー発生デバイスにおいて使用するのに適し、それにより制御された形でエネルギーをもたらし得る、上記の回路部分を含む電極を提供する。いくつかの実施形態は、その表面に配置される疎水性膜であって、そのデバイス中でプロトンおよび酸素の電気化学反応により生成する水がそれを通過するのを抑止するように構成されている膜をさらに含む。いくつかの実施形態において、この電極はガス拡散電極である。
【0023】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの電気化学的または触媒的用途において使用するのに適した組成物を含み、この組成物が複数の反応性金属粒子と、反応性金属粒子よりも低い反応性を有しかつその体積に対して実質的に高い表面積を有する少なくとも1種の基材とを含み、この場合、この基材の表面の少なくとも一部分が、この基材の外側寸法内にある内部表面を含み、かつ反応性金属粒子の少なくとも一部分が、この内部表面の一部分に隣接して存在する燃料電池であって、燃料を消費し、それにより電力を発生するように構成されている燃料電池を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの電気化学的または触媒的用途において使用するのに適した組成物を含み、この組成物が複数の反応性金属粒子と、反応性金属粒子よりも低い反応性を有しかつその体積に対して実質的に高い表面積を有する少なくとも1種の基材とを含み、この場合、この基材の表面の少なくとも一部分が、この基材の外側寸法内にある内部表面を含み、かつ反応性金属粒子の少なくとも一部分が、この内部表面の一部分に隣接して存在する水素発生装置であって、水を電気分解して、酸素および水素を発生するように構成されている水素発生装置を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの電気化学的または触媒的用途において使用するのに適した組成物を含み、この組成物が複数の反応性金属粒子と、反応性金属粒子よりも低い反応性を有しかつその体積に対して実質的に高い表面積を有する少なくとも1種の基材とを含み、この場合、この基材の表面の少なくとも一部分が、この基材の外側寸法内にある内部表面を含み、かつ反応性金属粒子の少なくとも一部分が、この内部表面の一部分に隣接して存在するセンサーであって、ガスの存在を検出するように構成されているセンサーを提供する。
【0026】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの電気化学的または触媒的用途において使用するのに適した組成物を含み、この組成物が複数の反応性金属粒子と、反応性金属粒子よりも低い反応性を有しかつその体積に対して実質的に高い表面積を有する少なくとも1種の基材とを含み、この場合、この基材の表面の少なくとも一部分が、この基材の外側寸法内にある内部表面を含み、かつ反応性金属粒子の少なくとも一部分が、この内部表面の一部分に隣接して存在しており、センサーにおいて電気化学反応を受けることが可能な検体を検出するように構成されている電気化学センサーを提供する。いくつかの実施形態において、この電気化学センサーはバイオセンサーである。
【0027】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの電気化学的または触媒的用途において使用するのに適した組成物であって、複数の反応性金属粒子と、反応性金属粒子よりも低い反応性を有しかつその体積に対して実質的に高い表面積を有する少なくとも1種の基材とを含み、この場合、この基材の表面の少なくとも一部分が、この基材の外側寸法内にある内部表面を含み、かつ反応性金属粒子の少なくとも一部分が、この内部表面の一部分に隣接して存在する組成物の製造方法を提供する。この方法は、実質的に無酸素性の流体内において、複数の反応性金属粒子と基材とを接触させるステップを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、この流体は反応性金属粒子および基材への親和性を示す。いくつかの実施形態において、この基材は複数の高度に多孔性の粒子を含む。いくつかの実施形態において、この流体は、反応性金属粒子と高度に多孔性の粒子との実質的に均質な分散を提供して、混合を最適化する。いくつかの実施形態において、この流体は低級アルコールを含む。
【0029】
いくつかの実施形態は、反応性金属粒子の少なくとも実質的な部分を、この実質的部分の制御された酸化を可能にするように、酸化性環境に曝露するステップをさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態は、反応性金属粒子および基材から流体を分離するステップをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態は、電気化学的用途において使用するのに適した組成物であって、複数の金属ナノ粒子と、少なくとも1つの電気化学的用途の条件下で実質的に不活性である結合材料との複合体を含み、この場合、少なくとも1つの電気化学的用途において反応の触媒作用を行うのにその露出された表面積が使用できるように、このナノ粒子の実質的な部分の表面積の実質的な部分を十分に露出したままとする形で、結合材料によって金属ナノ粒子が一緒に結合される組成物を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態において、このナノ粒子は、約100nm未満の有効サイズを有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、このナノ粒子は約50nm未満の有効サイズを有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、このナノ粒子は約25nm未満の有効サイズを有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、このナノ粒子は約10nm未満の有効サイズを有する粒子を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子の少なくとも一部分は、酸化物シェルを有するナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、複数のナノ粒子は、3〜16族からの金属、ランタニド、それらの混合物、およびそれらの合金からなる群から選択される金属を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、この結合材料はポリマー材料を含む。いくつかの実施形態において、このポリマー材料はフルオロカーボンを含む。
【0035】
いくつかの実施形態は、前記組成物の触媒活性を高める触媒をさらに含む。
【0036】
いくつかの実施形態は、電気化学的用途において使用するのに適した組成物を含む電気化学部材であって、この組成物が、複数の金属ナノ粒子と、少なくとも1つの電気化学的用途の条件下で実質的に不活性である結合材料との複合体を含み、この場合、少なくとも1つの電気化学的用途において反応の触媒作用を行うのに露出された表面積が使用できるように、このナノ粒子の実質的な部分の表面積の実質的な部分を露出したままとするのに十分な形で、結合材料によって金属ナノ粒子が一緒に結合される電気化学部材を提供する。いくつかの実施形態において、前記部材は、前記部材と第2の部材との間の電気的接続を可能にし、それらの間に電流を流すように構成される回路の一部分を提供する集電板に連結される。
【0037】
いくつかの実施形態は、それにより制御された形でエネルギーをもたらし得る電気エネルギー発生デバイスにおいて使用するのに適した、上記回路部分を含む電極を提供する。電極のいくつかの実施形態は、電極表面に配置される疎水性膜であって、そのデバイス中でプロトンおよび酸素の電気化学反応により生成する水がそれを通過するのを抑止するように構成されている膜をさらに含む。いくつかの実施形態において、この電極は拡散電極である。
【0038】
いくつかの実施形態は、電気化学的用途において使用するのに適した組成物を含み、この組成物が、複数の金属ナノ粒子と、少なくとも1つの電気化学的用途の条件下で実質的に不活性である結合材料との複合体を含み、この場合、少なくとも1つの電気化学的用途において反応の触媒作用を行うのに露出された表面積が使用できるように、このナノ粒子の実質的な部分の表面積の実質的な部分を露出したままとするのに十分な形で、結合材料によって金属ナノ粒子が一緒に結合される燃料電池であって、燃料を消費し、それにより電気を発生するように構成されている燃料電池を提供する。
【0039】
いくつかの実施形態は、電気化学的用途において使用するのに適した組成物を含み、この組成物が、複数の金属ナノ粒子と、少なくとも1つの電気化学的用途の条件下で実質的に不活性である結合材料との複合体を含み、この場合、少なくとも1つの電気化学的用途において反応の触媒作用を行うのに露出された表面積が使用できるように、このナノ粒子の実質的な部分の表面積の実質的な部分を露出したままとするのに十分な形で、結合材料によって金属ナノ粒子が一緒に結合される水素発生装置であって、水を電気分解して、酸素および水素を発生するように構成されている水素発生装置を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態は、電気化学的用途において使用するのに適した組成物を含み、この組成物が、複数の金属ナノ粒子と、少なくとも1つの電気化学的用途の条件下で実質的に不活性である結合材料との複合体を含み、この場合、少なくとも1つの電気化学的用途において反応の触媒作用を行うのに露出された表面積が使用できるように、このナノ粒子の実質的な部分の表面積の実質的な部分を露出したままとするのに十分な形で、結合材料によって金属ナノ粒子が一緒に結合されるセンサーであって、ガスの存在を検出するように構成されているセンサーを提供する。
【0041】
いくつかの実施形態は、電気化学的用途において使用するのに適した組成物を含む電気化学センサーであって、この組成物が、複数の金属ナノ粒子と、少なくとも1つの電気化学的用途の条件下で実質的に不活性である結合材料との複合体を含み、この場合、少なくとも1つの電気化学的用途において反応の触媒作用を行うのに露出された表面積が使用できるように、このナノ粒子の実質的な部分の表面積の実質的な部分を露出したままとするのに十分な形で、結合材料によって金属ナノ粒子が一緒に結合され、センサーにおいて電気化学反応を受けることが可能な検体を検出するように構成されている電気化学センサーを提供する。
【0042】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの電気化学的または触媒的用途において使用するのに適した組成物であって、該組成物は複数の反応性粒子と、反応性粒子よりも低い反応性を有しかつその体積に対して実質的に高い表面積を有する少なくとも1種の基材とを含み、この場合、この基材の表面の少なくとも一部分が、この基材の外側寸法内にある内部表面を含み、かつ反応性粒子の少なくとも一部分が、この内部表面の一部分に隣接して存在し、反応性粒子が金属酸化物を含む組成物を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態は、このナノ粒子を担持する手段上に配置されたナノ粒子であって、少なくとも1種の金属、その金属の合金、またはその金属の酸化物を含むナノ粒子を提供する。これらのナノ粒子は、約4nm未満または約2nm未満の標準偏差と共に約100nm未満の、約50nm未満の、約25nm未満の、または約10nm未満の有効サイズを有する。いくつかの実施形態において、この金属は3〜16族、およびランタニドから選択される。いくつかの実施形態において、担体は、高表面積担体、例えば炭素を含む。いくつかの実施形態において、この担体はフッ素化ポリマーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、酸化物シェルを含むニッケルナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図2】図2は、ミル処理前の、活性炭およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を含む組成物の概略図である。
【図3】図3は、ミル処理後の、活性炭およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を含む組成物の概略図である。
【図4】図4は、ガス電極の概略図である。
【図5】図5は、好ましい実施形態の組成物を含むカソードの実施形態のセル電圧/電流特性のプロット図である。
【図6】図6は、5種のカソード設計のミッドターフェル(mid Tafel)CCVを示す棒グラフである:設計1は触媒添加のないNORIT(登録商標)Supra炭素を含む;設計2は触媒添加のないDarco(登録商標)G−60炭素を含む;また設計3は酸化物シェルを含むマンガンナノ粒子10重量%を有するNORIT(登録商標)Supra炭素を含む;また設計4は酸化物シェルを含むマンガンナノ粒子10重量%を有するDarco(登録商標)G−60炭素を含む;また設計5はほぼ8mg/cm配合量の白金粉末を含む。
【図7】図7は、白金触媒カソードの性能についての百分率として、図6のデータを示す棒グラフである。
【図8】図8は、図6に示した電極の完全なボルタンモグラムを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
好ましい実施形態の組成物は、担持されたナノ粒子を含むことができる。下記においてより詳細に考察するように、いくつかの実施形態では、ナノ粒子は金属、金属合金、それらの酸化物、およびそれらの組合せを含む。担体は、少なくとも1種の結合剤、高表面積基材、およびそれらの組合せを含む。例示的な結合剤を、下記においてより詳細に考察する。好ましい実施形態の組成物は、例えば、電気化学電池、蓄電池、燃料電池、センサーなどに組み込まれる電極の製造において有用である。本明細書において使用する用語「反応性(reactive)」は、化学量論的試薬として、または触媒としてのいずれかで化学反応に参加する化学種を指す。
【0046】
好ましい実施形態の組成物は、組成物についてナノ粒子約1重量%〜約98重量%および結合剤約4重量%〜約20重量%、好ましくはナノ粒子約1重量%〜約95重量%および結合剤約5重量%〜約8重量%の相対的割合による、結合剤例えばフルオロカーボンにより担持されたナノ粒子を含むことができる。
【0047】
好ましい実施形態の他の組成物は、高表面積基材上に担持されたナノ粒子を含むことができる。いくつかの実施形態において、この基材は導電性であり、例えばカーボン、黒鉛、カーボンナノチューブ、それらの組合せなどを含む。これらの組成物は結合剤、および必要に応じてベース触媒をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、この組成物は、組成物の総重量についてナノ粒子約1重量%〜約10重量%、結合剤約4重量%〜約20重量%、基材約20重量%〜約90重量%、ベース触媒約0重量%〜約15重量%の相対的割合による、ナノ粒子、結合剤、基材、およびベース触媒を含む。いくつかの実施形態において、この組成物は、ナノ粒子約1重量%〜約5重量%、結合剤約5重量%〜約8重量%、基材約87重量%〜約94重量%、およびベース触媒約0重量%〜約15重量%(組成物の総重量について)を含む。
【0048】
歴史的に白金は、広く様々な燃料電池および蓄電池における最良性能の触媒となっており、また現在まで白金は、高電力型水素および直接メタノール燃料電池カソード向けの唯一の実用可能な触媒であった。燃料電池、水素電解系および他の非石油系エネルギー発生源は、世界の白金生産量のすべてを消費し得るものと見られる。それらの合金およびそれらの対応する酸化物と共にニッケル、コバルトおよび他の遷移元素のナノ粒子など、好ましい実施形態のナノ粒子は、増加した表面積のおかげで触媒活性の増加を示しており、様々な蓄電池および燃料電池用途向けに、白金代替の有望な候補となっている。
【0049】
ナノ粒子は、例えば燃料電池または蓄電池カソードにおける電極の白金または他の触媒の代替とし、かつ/または補助するのに使用することができる。いくつかの好ましい実施形態において、ナノ粒子は、金属、金属合金、それらの酸化物、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態において、この金属は、3〜16族の遷移金属、ランタニド、それらの混合物組合せ、および/または合金を含む群から選択される。この金属は、7、8、9,10,11族、およびランタニドから選択されるのがより好ましい。好ましい実施形態には、商業的にまたは他に(例えば研究的に)重要な少なくとも1つの電解質環境において酸素を還元するのに少なくともほとんど白金同様に活性である、例えばマンガン、ニッケル、コバルトおよび/または銀の金属、金属合金、およびそれらの酸化物のナノ粒子が含まれる。それらの酸化物を含むマンガンおよびマンガン合金のナノ粒子の実施形態は、白金に対し注目に値する性能を示す。
【0050】
本明細書において使用する用語「ナノ粒子」は、約1〜約999nm(10−9メートル)の最大寸法を有する粒子を指す。いくつかの実施形態においてこれらの粒子は、他の形状も観察されるが一般に球状であるため、この寸法は、本明細書において粒子の「有効直径」とも呼ぶ。ナノ粒子が含む原子数は、ナノ粒子寸法が1から数百ナノメートルまで増加すると急速に増加する。概略で、この原子数は、粒子の有効直径の3乗の関数として増加する。例えば、ニッケルナノ粒子は、1nm粒子中に原子約34個を有し、100nm粒子中に原子約3400万個を有し、また1μm粒子中に約340億個を有する。
【0051】
好ましい実施形態において、ナノ粒子には、金属ナノ粒子、金属合金ナノ粒子、酸化物シェルを含む金属および/または金属合金ナノ粒子、実質的にもしくは完全に金属および/または金属合金の酸化物であるナノ粒子、あるいはこれらの混合物が含まれる。これらのナノ粒子は、約1μm未満の、約100nm未満の、より好ましくは約50nm未満の、より一層好ましくは約25nm未満の、また最も好ましくは約10nm未満の直径を有することが好ましい。いくつかの実施形態において、ナノ粒子直径分布の標準偏差は、約4nm未満、好ましくは約2nm未満である。物質の前に接頭辞「n」または「ナノ」を用いることは、この物質がナノ微粒子であることを示す。
【0052】
それらの高い表面積対体積比のおかげで、ナノ粒子は、同等の材料組成を有するより大きな粒子に比べて改良された触媒活性を示す。したがって、金属、金属合金および/または酸化物粒子直径がナノスケールである場合、いくつかの実施形態において関連の触媒性状は劇的に向上している。このようなナノ粒子触媒の調製は、例えば2004年5月6日出願の米国出願第10/840409号、および2004年11月8日出願の米国出願第10/983993号中において記述されている。図1は、上記で記述したように調製したニッケルナノ粒子触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、ナノ粒子の大きさの均質性を示す。示すナノ粒子のいくつかのものは、一般に球状であり、ほんの数百個の原子からなる直径を有する。
【0053】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は合金を含み、この合金は、2種以上の金属を含むことが好ましく、この場合少なくとも1種の上記において考察した金属を含むことが好ましい。この合金のいくつかの実施形態は、2種、3種、4種またはこれを超える金属を含むことができる。合金中の金属の比率は、特定の用途に応じて調節することができる。いくつかの実施形態では、合金について1種の金属を、この合金の約5重量%〜約95重量%含む。いくつかの実施形態では、1種の金属を、この合金の約10重量%を超えて、または約25重量%を超えて含む。いくつかの実施形態では、1種の金属を、この合金の約90重量%まで含む。
【0054】
好ましい実施形態のナノ粒子は、酸化物シェルおよび/または層を含む。この酸化物シェルを、ナノ粒子の全重量の約70%まで含むことができることが好ましく、また粒径に応じて、この層は約0.1nm〜約25nmを超える厚さ、好ましくは約0.1〜約10nmの厚さを有することができる。この酸化物シェルは、触媒反応を助け、安定性を付与し、かつ/または粒子の集塊化を減ずるなどの1つまたは複数の機能を提供できると考えられる。複数の酸化物種、例えば異なる酸化状態、同素体、結晶形、溶媒和物、組合せなどを使用することができる。ナノ粒子の酸化物シェルの量は、用途に基づいて調節することができる。例えば酸化物シェルを、ナノ粒子の約70重量%未満、約60重量%未満、約50重量%未満、約40重量%未満、約30重量%未満、約10重量%未満、または約5重量%未満含むことができる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は真空室内における蒸気凝縮によって生成される。しかし、当技術分野で知られている他のナノ粒子形成方法を用いることもできる。酸化物の厚さは、この粒子を形成する際、その室内に空気または酸素を導入することにより制御することができる。いくつかの実施形態において、最終デバイス、例えば電極におけるナノ粒子は、実質的にもしくは完全に酸化されている。すなわち、実質的にすべての金属または金属合金は、対応する酸化物に変換されている。他の実施形態において、合金は、酸化を受け易い第1の金属、および耐酸化性である第2の金属を含む。このような粒子の部分的もしくは完全酸化は、第1の金属の酸化物中に分散された第2の金属の未酸化および部分的酸化領域という結果になる。
【0055】
いくつかの好ましい実施形態において、ナノ粒子は、外側酸化物層またはシェルによって少なくとも部分的に被覆された金属および/または金属合金コア、例えばマンガンを含む。いくつかの実施形態において、この金属は、空気に曝露することにより酸化されて、金属および/または金属合金の酸化物を含むナノ粒子をもたらす。当技術分野で知られている他の酸化剤、例えばO、O、および窒素酸化物(例えばN、ここにx=1〜2およびy=1〜5)も有用である。他の酸化剤は、他の酸化生成物をもたらす。例えばハロゲンは金属酸化物よりもむしろ金属ハロゲン化物をもたらし、ハロゲン酸化物は金属オキシハロゲン化物、かつ/または金属酸化物と金属ハロゲン化物との混合物をもたらす。酸化剤の混合物も有用である。
【0056】
いくつかの酸化の実施形態は制御可能であり、完全な酸化までの、種々の厚さの酸化物シェルを提供する。いくつかの好ましい実施形態において、酸化物シェルを有するナノ粒子は、高表面積基材(または、かさのある金属および/または金属合金コア)上に吸着され、次いでこのナノ粒子がin situで酸化される。この酸化過程の実施形態は、吸着の前にナノ粒子が酸化される組成物に比べて改良された電極性能を示す組成物を提供することができる。いくつかの好ましい実施形態において、このナノ粒子はマンガンを含む。もっとも、in situ酸化過程には他の金属および/または金属合金ナノ粒子を使用することができ、その金属および/または金属合金の酸化物のナノ粒子をもたらす。例えばアルカリ性条件下で、例えばマンガンおよび/または銀を含むナノ粒子を使用することができる。例えば酸性条件下で、コバルトを含むナノ粒子を使用することもできる。ナノ粒子の小さいサイズが少なくともいくつかの観察された利点をもたらすと考えられ、それは、これらの粒子の非常に大きな表面積が、反応表面の増加とより大きい反応部位密度をももたらすからである。理論に拘束されることなく、酸化物シェルを有するナノ粒子は、実質的にすべてが金属酸化物であるナノ粒子に比べて、より容易に炭素内に分布されると考えられる。
【0057】
その上、いくつかの実施形態において、in situ酸化により、金属酸化物の所望の結晶形または同素体の制御された合成が可能になる。例えば、下記に記述する担持されたマンガンナノ粒子の制御された酸化により、MnOの還元における主生成物であるγ−酸化マンガン(II)よりもむしろ主としてβ−酸化マンガン(II)がもたらされると考えられる。β−酸化マンガン(II)は、優れた電極触媒である。
【0058】
結合剤は、使用する場合、有機材料、モノマー、ポリマー、コポリマー、ブレンド、組合せなどの当技術分野で知られている任意の適切な材料を含むことができる。いくつかの好ましい実施形態において、結合剤はフルオロカーボンを含む。好ましい実施形態のフルオロカーボンは、炭素およびフッ素を含む適切なモノマーおよび/またはポリマー化合物を含むことができ、それらは結合剤として作用することができる。好ましい実施形態において、このフルオロカーボンは粒子および/または繊維様構造(「フィブリル化された」)を含む。いくつかの実施形態において、この結合剤は適切な流体中の懸濁液として提供される。この結合剤を、ナノ粒子、基材および結合剤の混合物の総重量の約1%〜約20%含むことが好ましい。いくつかの実施形態において、フルオロカーボンの粒度は、約0.3μm〜約10μmである。しかしある実施形態では、より大きいおよび/またはより小さい粒度が許容可能、またはむしろ望ましい可能性がある。適切なフルオロカーボンポリマーまたはフッ素化ポリマーには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、Teflon(登録商標)、DuPont社)、ポリ(フッ化ビニリデン)、置換コポリマー、組合せなどが含まれる。適切なフルオロカーボン乳濁液の市販例には、Teflon(登録商標)30b、Teflon(登録商標)30N、およびTeflon(登録商標)TE−3857が含まれ、すべてDuPont社(ウイルミントン、デラウエア州)からのものである。適切な粉末状フルオロカーボン結合剤には、Teflon(登録商標)6c、およびTeflon(登録商標)7a(DuPont社、ウイルミントン、デラウエア州)が含まれる。適切な置換コポリマーにはスルホン化テトラフルオロエチレンコポリマー、例えばNafion(登録商標)(DuPont社、ウイルミントン、デラウエア州)が含まれる。他の実施形態において例えば例証の目的で特定の配合が使用されるが、いくつかの実施形態では、上述のフルオロカーボンを、互換的に使用することができる。
【0059】
好ましい高表面積基材には、炭素粒子、例えば、石炭由来の粒子、および/または活性炭粒子が含まれる。いくつかの好ましい実施形態において、炭素粒子は、約5nm〜約1μmの直径を有する。しかしある実施形態では他の大きさのものを用いることもできる。いくつかの好ましい実施形態では、大きな内部表面積、例えば約500〜2000m/gを有する高表面積の炭素粒子が利用される。このような粒子は多数の細孔を含むことができ、市販の例には、Darco(登録商標)G−60(American Norit Corp.)が含まれ、このものは、90%を超える粒子が直径約5.5μm〜約125μmを有し、内部表面積が約1000m/gである活性炭粒子を含む。下記においてより詳細に考察するように、いくつかの実施形態において、少なくともいくらかのナノ粒子が、基材の細孔内に吸着される。いくつかの実施形態において、基材はナノ粒子よりも触媒活性が低い。
【0060】
適切なベース触媒には、酸化マンガンおよび白金が含まれる。いくつかの実施形態において、少なくとも一部分のベース触媒は多孔性基材の細孔内に配置されており、例えば、活性炭によるMnOのin situ還元によって作られる、活性炭内の酸化マンガンである。いくつかの実施形態において、少なくとも一部分のベース触媒は、組成物と混合した別個の粒子として、例えばミクロンサイズの白金粒子として存在する。例えば基材として石炭系炭素化合物を含むいくつかの実施形態において、炭素化合物それ自体がベース触媒として作用する。有機前駆体に由来して石炭にキレート化した鉄および/または他の遷移金属が細孔内に存在し、これが天然のベース触媒であると考えられる。
【0061】
いくつかの実施形態において、担持されたナノ粒子組成物は、適切な流体媒体(例えば、メタノールなどの低級アルコール)内における基材(例えば、活性炭、アルミナ、シリカゲル、ベントナイト、粘土、珪藻土、合成および天然ゼオライト、マグネシア、チタニア、セラミックス、ゾルゲル、ポリマー材料、ならびにそれらの組合せ)、フルオロカーボン(例えばTeflon(登録商標))、およびナノ粒子の処理を含む方法を使用して調製される。次いで場合によって、上記において考察したようにナノ粒子は、例えば流体媒体を除去し、ナノ粒子を適切な酸化剤と接触させることによって酸化される。
【0062】
このような方法は、例えば、非処理のカソード触媒に対して、改良された性能を有するカソードを調製するのに使用することができる。この改良された性能は、改良された触媒分布、および活性炭担体への、より効果的な触媒の結合の結果であると考えられる。上記において考察したように、いくつかの実施形態において、ナノ粒子および基材例えば活性炭は、嫌気性環境において接触し、この環境下では、例えばナノ粒子が分子状酸素と反応するゼロ価金属を含む(酸化物シェルを有し、または有しない)実施形態では、ナノ粒子の酸化状態は安定である。上記において考察したように、例えば、担持されたナノ粒子を適切な酸化剤、例えば分子状酸素と接触させることによって、ナノ粒子の制御された、in situ酸化が行われる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子および炭素は、脱酸素流体、例えばメタノールなどの軽質アルコール中に懸濁させる。この方法により、活性炭担持用基材の内部へのナノ粒子の吸着が可能になる。ナノ粒子を炭素内に吸着させる場合、吸着は混合中に定性的に観察され、流体の観察される濁度が低下することにより示される。さらに、いくつかの実施形態では、好ましい実施形態の組成物を含むカソードを電解質に曝露する場合、電解質中へのナノ粒子の損失が観察されない。これに反して、ナノ粒子が十分に炭素に吸着されていない場合、例えばある他の付着方法を使用する場合、電解質に曇りを生じるようになり、ナノ粒子が基材から放出されていることを示す。したがって、電解質に曝露した際ナノ粒子がカソード内に保有されているような、上述のようにナノ粒子が活性炭内に吸着される活性炭およびナノ粒子を含むカソードが好ましい。
【0063】
担持されている組成物が基材を含まない実施形態において、この組成物は、ナノ粒子を結合剤、必要に応じてベース触媒、かつ必要に応じて滑剤(例えば潤滑用炭素)と混合し、次いで得られた混合物をミル処理することによって作られる。必要に応じて、ナノ粒子は、上記において考察したように、ミル処理後に酸化される。
【0064】
好ましい実施形態のナノ微粒子組成物を使用して製造したいくつかの電極は、集電板に積層したナノ粒子組成物の層を含む。集電板は、導電性材料、例えば炭素および/または金属を含み、それによりナノ粒子組成物を電気的負荷に電気的に連結する。いくつかの実施形態において、集電板は、遷移金属などの金属、好ましくはニッケル、ニッケルめっき鋼、および/または金めっきニッケル、また最も好ましくはニッケルを含む。この集電板、例えば金属および/または編組み状(woven)ワイヤスクリーンの形態にある集電板は、大きな外側表面積を有することが好ましい。
【0065】
好ましい実施形態の電極は、カソード、アノード、またはこの両方として使用することができる。一実施形態において、電気化学電池を提供するため、この電極を対向電極と組み合わせる。対向電極は任意の適切な型のもの、例えば金属電極またはワイヤである。例えば、亜鉛/空気電池では、アノードは亜鉛金属であり、またこの電極は空気または酸素通気性カソードである。しかし水素またはメタノール燃料電池などのデバイスでは、この電極は、水素またはメタノールが消費されるアノード、空気または酸素が消費されるカソード、あるいはこの両方として有用である。
【0066】
好ましい実施形態の電極は、酸素の電気化学的還元による電力生産向けの拡散カソードのように、白金電極の代替物を提供することもできる。このような酸素を消費するカソードは、高電流出力、高放電電圧、および/または高電流密度を含む、数多くの利点を提示す。アルカリ型燃料電池(AFC)系を参照して本明細書において電極を記述している。しかし、当業者は、開示された電極が他の用途、例えば白金が知られている触媒であるものにも有用であることを理解するであろう。このような用途の例には、直接メタノール燃料電池(DMFC)、水素燃料電池またはプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)、および金属−空気電池ならびに他の燃料電池が含まれる。水素燃料電池のアノードで水素が酸化され、またメタノール燃料電池のアノードでメタノールが酸化される。
【0067】
いくつかの実施形態において、この電極はセンサー例えば電気化学的水素センサーとして有用である。ある実施形態の電極の優れた触媒活性により、良好な感度が提供される。この電極は、所望の用途に適合したナノ粒子触媒、例えば水素センサー向けのニッケル、パラジウム、ロジウム、または白金を含む。当業者は、他の実施形態の電極が、他の電気化学的活性化学種、例えば還元雰囲気中の酸素向けのセンサーにおいて有用であることを理解するであろう。その上、いくつかの実施形態は、液相において、例えば水試験において電気化学的活性化学種を検出するのに有用である。
【0068】
いくつかの実施形態において、カソードなどの電極は、例えばナノ粒子、フルオロカーボン、および炭素を含む担持されたナノ粒子組成物の圧縮混合物から形成される。この組成物は、任意の適切な方法を使用して、例えば圧力約10〜500lb/in(約70〜3500kPa)、最も好ましくは圧力約200 lb/in(約1400kPa)下のローラーミル上で圧縮される。いくつかの好ましい実施形態において、この組成物は、約1500ポンド(約6,600N)下において少なくとも約50mmのローラーミルで圧縮される。他の実施形態において、ローラーミルのローラーを隙間ゼロ(例えば「キッシング(kissing)」)で互いにほぼ接触するように調整し、その間でシートを成形する。他の実施形態においてローラー間に、例えば0.13mmまでの小さな隙間が存在する。本明細書において使用する用語「圧縮混合物」は、必ずしも空隙がないわけではない自己密着性、形状保持性の構造体を指す。
【0069】
いくつかの実施形態において、圧縮混合物はシートまたはリボンの形態にあり、これを使用して、ニッケル集電板への加圧積層によりアルカリ型燃料電池電極を組み立て、あるいは当業者によく知られている他の方法でPEMFCまたはDMFCカソードとすることができる。いくつかの実施形態において、ローラーミルでこの混合物をミル処理することにより、またはこの混合物をローラーミルのローラーニップに適用することにより自立型シートを作ることができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、PTFEを含むものなどの、当技術分野で知られている半透過性の疎水性層または膜を、この電極の片側または両側に、好ましくはナノ粒子組成物を積層している側に接合する。この疎水性層により、水性電解質を逃がさずに酸素が電極に入ることが可能になる。
【0071】
図2は、一実施形態によるミル処理前の、カソードを形成するのに使用する材料の混合物の概略図である。下記の例示的方法は、図2における一実施形態のカソード混合物25の製造を例証するものである。
【0072】
一実施形態において、電極例えばガス拡散カソードは、高表面積を有する、好ましくは非常に大きな内部表面積を有する直径約5nm〜約1μmの炭素粒子、例えば、Darco(登録商標)G−60(American Norit Corp.)を含む。これらの炭素粒子は、結合剤、担体およびナノ粒子を含む混合物の総重量の約1%〜約25%のフィブリル化したフルオロカーボン粒子、例えばTeflon(登録商標)30b、Teflon(登録商標)30N、もしくはTeflon(登録商標)TE−3857(DuPont社、ウイルミントン、デラウエア州)またはポリ(フッ化ビニリデン)により一緒に結合される。いくつかの実施形態において、フルオロカーボン粒子の粒度は約0.3μm〜約10μmである。この混合物を、上述の触媒ナノ粒子とさらにブレンドする。ブレンドした混合物は、例えばミル処理したシートの形態で、金属製集電板に圧着させ、この集電板は一般に、上記において考察したように、エキスパンドメタルまたは編組み状ワイヤスクリーンなどの大きい空隙体積を有するニッケルまたは貴金属である。
【0073】
図2を参照すると、活性炭粒子21は、たくさんの深いポケット22を有する不規則な卵形体として示される。これらの炭素粒子は、むしろ縮小型スポンジのように巨大な内部気孔率を有することができる。やはり近似させた大きさの割合で示したものは、Teflon(登録商標)30b乳濁液からのPTFEの半ミクロン粒子23である。小さい黒い点24は、2nm〜10nmナノ粒子を表す。これらのナノ粒子は、活性炭粒子に付着しまたその中に浸透し、または活性炭粒子の細孔に引き込まれている。この混合物25をミル処理して、上記において考察した自立型シートを形成する。
【0074】
図3を参照すると、ロール処理して自立型シートとした後、活性炭粒子31は、Teflon(登録商標)30b乳濁液の、ここでフィブリル化したPTFE粒子33により一緒に結合される。小さな黒い点34は、やはりフィブリル化した結合剤で結合された2nm〜10nmの触媒活性のある粒子を表す。このマトリックス35は自立しており、すぐに集電板に積層できる。ナノ粒子組成物のこのマトリックスシートは、カソードの活性な部材を形成する。さらに、当業者によく知られているように、最終製品に応じて、適正な金属集電板または導電性炭素シートを必要に応じて含むことができる。
【0075】
図4は、本発明の一実施形態によるカソード構造体の概略図である。ニッケル集電板41は連続しており、炭素/ナノ粒子触媒/PTFEマトリックス42および35内に埋め込まれている。アルカリ型燃料電池について、PTFE疎水性膜43を活性体44に加圧積層することができ、それにより水の移動が遮断される。この例証された実施形態は、触媒活性があり、アルカリ型燃料電池酸素還元極として機能することができる。PTFE面の反対側に、セパレータを積層すると、このカソードは金属−空気電池において有用である。
【0076】
下記の実施例は、本明細書において開示する特定の実施形態の組成物、電極、およびデバイスの製造について記述している。当業者は、これらの記述が例示的であること、および割合(proportions)および規模に関する修正が可能であることを理解するであろう。
【実施例1】
【0077】
カソード混合物の調製
蒸留水約400g〜1500gを、水の体積の約3倍の体積を有する大型ビーカーに入れた。この水に、水の重量の約1/3の活性炭Darco(登録商標)G−60(American Norit Corp.)または同等物を添加した。撹拌しながら、この混合物に、炭素の重量の約1/3の過マンガン酸カリウム(KMnO)をゆっくり添加した。KMnOの量は、無添加から炭素重量に等しくなるまでの範囲とすることができ、最終カソード中のマンガン(Mn)として約0重量%〜約15重量%という結果になる。KMnOは、乾燥結晶として、またはKMnO約20%に調製された水溶液として添加できる。上記の成分を少なくとも20分間混合して、活性炭によりin situでKMnOがMn(+2)まで還元されることを可能にした。混合物が粘稠過ぎる場合、それが撹拌し易くなるまで水を添加した。この混合物を撹拌しながら、炭素1グラム当り約0.07g〜約0.44gのPTFE懸濁液(Teflon(登録商標)30b、DuPont社)を添加し、混合物の総重量当り約3重量/重量%〜約25重量/重量%の乾燥PTFE含量という結果になった。いくつかの用途において、PTFE約50重量/重量%までを含む電極が有用である。この混合物を少なくとも30分間混合し、それによりすべてのPTFE粒子がそれら自体炭素粒子に付着することを可能にした。次いでこの混合物を、大型ブフナー漏斗で濾過し、非腐食性の平なべ(パン)に移した。湿った混合物の厚さが、約5.1cm(2インチ)以下であることが好ましかった。
【0078】
次いでこの混合物を、開放容器内で予熱した通気オーブンにおいて75℃で少なくとも24時間乾燥し、次いで開放容器内で予熱したオーブンにおいて120℃で12時間さらに乾燥した。これらの実施例では、この温度(120℃)を超えることはなかった。乾燥用平なべに蓋をし、100℃未満に冷却した後、容器をプラスチック袋内に密封した。この材料を、以下では「テフロン化(Teflonated)炭素」と呼ぶ。
【0079】
この混合物の総重量の約0.01重量/重量%〜約20重量/重量%の触媒的活性ナノ粒子を、テフロン化炭素に添加した。[それぞれ記述した、2種以上の混合物を調製した場合]上記において考察したように、ナノ粒子の好ましい平均直径は約10nm未満であるが、いくつかの実施形態において、例えばニッケル、コバルトおよび銀の金属および合金について平均直径が約50nm未満および約100nm未満の粒子も触媒的に活性であることが示されている。この乾燥混合物を非常に高剪断力のブレンダーで約30秒〜約5分間ブレンドした。
【実施例2】
【0080】
電極活性層の調製
電極活性層42の例示的組成物を調製するのに下記の調製方法を用いた(例えば、下記の表1、9番を参照されたい。)。分量は代表的なものに過ぎず、量および割合は変動できる。
【0081】
蒸留水(500g)を、大型(少なくとも約1.5リットル)ビーカーに入れた。この蒸留水に、活性炭粉末(150g、Darco(登録商標)G−60、American Norit社)または同等物をゆっくり添加し、混合物を湿らせるためゆっくり混合した。プロペラ型ミキサーを使用し、流体内に空気を引き込まずに安定な渦流を作り(すなわち渦流は混合用羽根に接触せず)、約20分間混合した。ゆっくりと(約30秒にわたって)、この混合物に約250グラムの20%KMnO溶液を添加し、混合物を30分間撹拌した。非常にゆっくりと(約1分にわたって)、PTFE懸濁液(Teflon(登録商標)30b、DuPont社)25ccを添加した。撹拌を30分間継続し、その間流体内に空気を送入させることなく渦流を維持した。混合物は最初非常に粘稠になり、次いで混合物においてPTFE粒子が活性炭に付着するにつれ粘性がより少なくなった。この混合物を、大型ブフナー漏斗で濾過し、非腐食性平なべに移した。この混合物を、開放容器内で予熱したオーブンにおいて75℃で24時間乾燥し、次いで開放容器内で予熱したオーブンにおいて120℃で12時間さらに乾燥した。乾燥用平なべに蓋をし、100℃未満に冷却した後、容器を密封プラスチック袋に入れた。
【0082】
冷却が完了した後、全混合物の約10重量%の触媒用ナノ粒子を添加した。この混合物を非常に高剪断力のブレンダーで約30秒〜約5分の間で乾式ブレンドした。
【実施例3】
【0083】
電極活性層のメタノール調製方法
下記のメタノール調製方法により、電極活性層42の例示的な、好ましい組成物を形成する(図7を参照されたい。)。分量は代表的なものに過ぎず、量および割合は変動できる。
【0084】
蒸留水約500gを、大型(少なくとも約1.5リットル)ビーカーに入れた。蒸留水に、活性炭粉末(150グラム、Darco(登録商標)G−60、American Norit社)または同等物をゆっくり添加し、混合物を湿らせるためゆっくり混合した。プロペラ型ミキサーを使用し、流体内に空気を引き込まずに安定な渦流を作り(すなわち渦流は混合用羽根に接触せず)、約20分間混合した。PTFE懸濁液(25cc)(Teflon(登録商標)30b、DuPont社)を非常にゆっくりと(約1分にわたって)添加した。撹拌を約30分間継続し、その間流体内に空気を送入させることなく渦流を保持した。混合物は最初非常に粘稠になり、次いで混合物においてテフロン粒子が炭素に付着するにつれ粘性がより少なくなった。この混合物を、大型ブフナー漏斗で濾過し、非腐食性平なべに移した。この混合物を、開放容器内で予熱したオーブンにおいて110℃で24時間乾燥した。乾燥用平なべに蓋をし、100℃未満に冷却した後、容器を密封プラスチック袋に入れ、例えば窒素および/またはアルゴンを充填した室内で、不活性雰囲気下に置いた。この材料を、以下では「テフロン化炭素粉末」と呼ぶ。
【0085】
不活性雰囲気(例えば窒素および/またはアルゴン)下にあるバイアル中において、ナノ粒子、好ましくは酸化物シェルを有するナノマンガンまたはナノマンガン合金を、それらの重量の約3倍の脱酸素メタノール(MeOH)に添加し、混合して、「インキ」(例えば、黒色の、実質的に不透明な液体)を形成させた。このインキを、必要に応じて超音波混合した。混合が終わると直ぐに、バイアルを密封した。
【0086】
不活性雰囲気下で、乾燥テフロン化炭素粉末1部とMeOH4部との混合物を調製した。
【0087】
不活性雰囲気下で、ある量のテフロン化炭素/MeOH混合物を清浄な陶器製ボウルに入れ、所望量のナノ粒子インキを添加し、この混合物を少なくとも約2分間混合した。ナノ粒子の典型的な配合量は、最終混合物においてnMnについて約5重量%〜約15重量%である。この混合物を約15分間放置し、次いで不活性雰囲気から取り出した。ナノ触媒は、炭素粒子内に吸着されており、その結果細孔を被覆していると考えられる。次いで、混合物を入れたボウルを混合物が105℃に到達するまで、十分に通気し予熱した105℃の対流オーブンに入れた。試料5グラムについて、これに約100分を要した。いくつかの実施形態において、このステップでナノ粒子の酸化が起こる。例えば、ナノマンガン粉末については、マンガンが触媒活性のあるMnO(ここにx=0〜2)までin situで酸化される。
【0088】
例示的組成物は、テフロン化炭素5グラム、ナノマンガンインキ0.555グラムの混合物を含む。混合物は少なくとも2分間撹拌し、100℃で100分間乾燥し、蓋をし、RTまで放冷する。
【0089】
この得られた粉末を、実質的に均質にローラーミルのローラーニップにかけて、自立型シートを形成させた。ミル処理の間に、混合物内のPTFEがフィブリル化して、そのミルによって混合物を圧縮している間に自立型シートのリボンを形成する。
【0090】
このシートから、ローラーミルを使用して約1500ポンド(約6,600N)下で集電板に積層することによって電極を形成した。この実施例では、集電板は、約40×40メッシュの微細メッシュニッケル網、または約0.1mm(0.004インチ)のニッケル母材から作った微細エキスパンドメタルであった。ローラーミルにおいて約1000ポンド(約4,400N)未満下で厚さ約0.1mm(0.008インチ)未満の疎水性、多孔質フィルムを、電極の一方の面に積層した。得られた電極は、例えば金属−空気電池および/またはアルカリ型燃料電池向けのガス拡散電極として有用であった。
【実施例4】
【0091】
カソード性能
カソードは、Solartron社SI−1250周波数応答解析装置およびSI−1287電気化学インターフェースならびにコンピュータを使用し、DSE半電池装置を使用して33%KOH電解質中で、亜鉛基準電極に対して試験した。すべての試験は、周囲実験室条件下で行った。図5は、比較のため1つのグラフで、1組の4種のセル電圧/電流(ボルタンモグラム)プロットを示す。最下線51は、追加的な添加触媒を含まない基準線カソードについてのものである(表1、エントリー30)。電圧/電流特性は、活性炭固有の触媒作用を示す。最上線52については、カソードは、約8mg/cmのミクロンスケールの粉末白金を含有する(表1、エントリー1)。このカソードは、白金約45重量%を含有し、一般に大量生産向けには非実用的なものとなっているが、参照として役立つことを意図する。線番号53は、MnOまたはMn(OH)としてのマンガン約5重量%を含有するカソードに対応し、金属空気電池に使用されているものと同様なカソードを表す(表1、エントリー14)。線54は、線53により表されるカソードと同一のマグネシウム配合量を有するカソードについての実験結果に対応するが、ニッケル−コバルト合金触媒(nNiCo)を含むナノ粒子10重量%添加によるものであり、このナノ粒子触媒の改良された触媒活性を実証している(表1、エントリー7)。
【0092】
定型的比較の条件として、10mA/cmにおけるミッドターフェルプロット(mid−Tafel plot)閉路電圧(CCV)を選択した。この領域は、インピーダンス相互作用がほとんどなく主として電気化学的に作動されるためである。カソードは10mA/cmに30分間保持して、定常状態を確保している。実験的に、この値は5アンペア−時にわたって、ほとんど性能低下がなく安定である。
【0093】
下記の表1は、10mA/cm試験における(CCV)によって分類した実験データの要約を示す。やはり表に記載したものは、白金またはナノ粒子触媒の配合量である。最後の欄では、このCCVを純白金触媒についての百分率として表し、nNiCo、nNiおよびnAgの活性、ならびに白金およびマグネシウムのベース触媒の増強効果に分解して示す。すべてのナノ粒子は、金属または金属合金の酸化物を含んでいた。
【0094】
【表1−1】

【0095】
【表1−2】

【0096】
図6は、実施例1の方法により調製したカソードの活性を例証している。設計3および4の電極は、触媒として酸化物シェルを有するナノ−マンガンを含み、優れた性能をもたらしたが、酸化物シェルを有するナノ−マンガン合金も良好な性能を示した。設計3のCCV性能は、白金基準カソードに対して最良の結果をもたらした。
【0097】
図7は、図6のデータの、基準(白金触媒)値についての百分率を示す。設計3は、触媒として酸化物シェルを有するマンガンを含むナノ粒子を有して実施例1の方法により調製したものであり、基準白金電極の活性の83%を示した。
【0098】
図8は、マンガンを含むナノ粒子を使用し、実施例1の方法により調製したカソードの動力学的活性を例証する。これらのカソードは、白金カソード様の性能を有する。
【0099】
引用したすべての参考文献は、参照によりそれらの全体が特に本明細書に組み込まれている。参照により組み込まれている出版物および特許または特許出願が、本明細書に含まれる開示と相反する範囲までにおいて、本明細書は、どんなこのような相反する材料にも取って代わり、かつ/またはそれらに優先するものであることを意図する。
【0100】
本明細書において使用する用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含む(containing)」、または「特徴とする(characterized by)」と同義であり、また包括的もしくは変更可能であり、追加的な、列挙されていない要素または方法ステップを排除しない。
【0101】
本明細書および特許請求範囲において使用する成分、反応条件などの量を表すすべての数は、すべての例において用語「約(about)」により修正されるものと理解されたい。したがって、そうでないと示されない限り、本明細書および添付する特許請求範囲において示される数的パラメーターは概略値であり、それらは本発明により得られるべく探求される所望の性状に応じて、変更できるものである。少なくとも、また本特許請求の範囲に対する同等物の学説の適用を制約する試みとしてではなく、それぞれの数的パラメーターは、有効数字の桁数および通常の丸めの取り組み方を考慮して解釈すべきである。
【0102】
上記の記述により、本発明のいくつかの方法および材料を開示する。本発明は、方法および材料における修正、ならびに製造方法および装置における変更の余地がある。このような修正は、本開示、または本明細書に開示されている発明の実施を考慮することから、当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明が本明細書において開示されている特定の実施形態に限定されることは意図しておらず、また添付する特許請求範囲において具現される本発明の真の範囲および精神の範囲内に当るすべての修正および変更にわたっていることも意図していない。
【符号の説明】
【0103】
21、31 活性炭粒子
22 深いポケット
23 PTFEの半ミクロン粒子
24、34 点
25 混合物
33 フィブリル化したPTFE粒子
35 マトリックス
41 ニッケル集電板
42 炭素/ナノ粒子触媒/PTFEマトリックス、電極活性層
43 PTFE疎水性膜
44 活性体
51、52、53、54 線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電気化学的または触媒的用途において使用するのに適した組成物であって、複数の反応性金属粒子と、前記反応性金属粒子よりも低い反応性を有しかつその体積に対して実質的に高い表面積を有する少なくとも1種の基材とを含み、この場合、前記基材の表面の少なくとも一部分が、前記基材の外側寸法内にある内部表面を含み、かつ前記反応性金属粒子の少なくとも一部分が、前記内部表面の一部分に隣接して存在する組成物。
【請求項2】
前記複数の反応性金属粒子の少なくとも一部分の制御された酸化が可能であるように十分に安定した環境内に保持されることが可能である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項3】
前記基材が、前記反応性粒子を前記基材と接触させると、前記粒子が前記基材に結合され得るような、前記反応性金属粒子への親和性を有する材料を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記基材が、前記複数の反応性金属粒子の少なくともかなりの部分を付着させて、実質的な数の前記反応性金属粒子の反応性に著しく影響を及ぼさずに、実質的に構造的な凝集塊とすることが可能な結合剤から本質的になる、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記基材が、高度に多孔性である、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記基材が、複数の高度に多孔性の粒子を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記基材が、炭素を含む、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記複数の高度に多孔性の粒子の少なくとも実質的な部分を付着させるための結合剤をさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記結合剤が、ポリマー材料を含む、請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマー材料が、フルオロカーボンを含む、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記複数の反応性金属粒子の少なくとも実質的な部分が、約1マイクロメートル未満の直径を有するナノ粒子を含む、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記ナノ粒子が、約25nm未満の直径を有する粒子を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ナノ粒子が、約10nm未満の直径を有する粒子を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記ナノ粒子の少なくとも一部分が、酸化物シェルを有するナノ粒子を含む、請求項11から13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記複数の反応性金属粒子が、3〜16族からの金属、ランタニド、それらの組合せ、およびそれらの合金からなる群から選択される金属を含む、請求項1から14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物の触媒活性を高める触媒をさらに含む、請求項1から15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の組成物を含む電気化学部材。
【請求項18】
前記部材と第2の部材との間の電気的接続を可能にして、それらの間に電流を流すように構成されている回路の一部分を提供する集電板に連結される、請求項17に記載の電気化学部材。
【請求項19】
電気エネルギー発生デバイスにおいて使用するのに適し、それにより制御された形でエネルギーを提供し得る、請求項18に記載の回路部分を含む電極。
【請求項20】
その表面に配置される疎水性膜をさらに含み、前記膜が、前記デバイス中でプロトンおよび酸素の電気化学反応により生成する水がそれを通過するのを抑止するように構成されている、請求項19に記載の電極。
【請求項21】
ガス拡散電極である、請求項20に記載の電極。
【請求項22】
燃料を消費し、それにより電力を発生するように構成されている、請求項1から16のいずれかに記載の組成物を含む燃料電池。
【請求項23】
水を電気分解して、酸素および水素を発生するように構成されている、請求項1から16のいずれかに記載の組成物を含む水素発生装置。
【請求項24】
ガスの存在を検出するように構成されている、請求項1から16のいずれかに記載の組成物を含むセンサー。
【請求項25】
センサーにおいて電気化学反応を受けることが可能な検体を検出するように構成されている、請求項24に記載のセンサー。
【請求項26】
前記電気化学センサーが、バイオセンサーである、請求項25に記載のセンサー。
【請求項27】
請求項1から16のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、実質的に無酸素性の流体内において、前記複数の反応性金属粒子と前記基材とを接触させるステップを含む方法。
【請求項28】
前記流体が、前記反応性金属粒子および前記基材への親和性を示す、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記基材が、複数の高度に多孔性の粒子を含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記流体が、前記反応性金属粒子と前記高度に多孔性の粒子との実質的に均質な分散をもたらして、混合を最適化する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記流体が、低級アルコールを含む、請求項27から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記反応性金属粒子の少なくとも実質的な部分を、前記実質的部分の制御された酸化を可能にするように、酸化性環境に曝露することをさらに含む、請求項27から30のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記流体を、前記反応性金属粒子および前記基材から分離することをさらに含む、請求項27から32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
電気化学的用途において使用するのに適した組成物であって、複数の金属ナノ粒子と、少なくとも1つの電気化学的用途の条件下で実質的に不活性である結合材料との複合体を含み、この場合、前記少なくとも1つの電気化学的用途において反応の触媒作用を行うのにその露出された表面積が使用できるように、前記ナノ粒子の実質的な部分の表面積の実質的な部分を十分に露出したままとする形で、前記結合材料によって前記金属ナノ粒子が一緒に結合される組成物。
【請求項35】
前記ナノ粒子が、約25nm未満の有効サイズを有する粒子を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記ナノ粒子が、約10nm未満の有効サイズを有する粒子を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
前記ナノ粒子の少なくとも一部分が、酸化物シェルを有するナノ粒子を含む、請求項34から34のいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
前記複数のナノ粒子が、3〜16族からの金属、ランタニド、それらの組合せ、およびそれらの合金からなる群から選択される金属を含む、請求項34から37のいずれかに記載の組成物。
【請求項39】
前記結合材料が、ポリマー材料を含む、請求項34から38のいずれかに記載の組成物。
【請求項40】
前記ポリマー材料が、フルオロカーボンを含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記組成物の触媒活性を高める触媒をさらに含む、請求項34から40のいずれかに記載の組成物。
【請求項42】
請求項34から41のいずれかに記載の組成物を含む電気化学部材。
【請求項43】
前記部材と第2の部材との間の電気的接続を可能にして、それらの間に電流を流すように構成される回路の一部分を提供する集電板に連結される、請求項42に記載の電気化学部材。
【請求項44】
電気エネルギー発生デバイスにおいて使用するのに適し、それにより制御された形でエネルギーを提供し得る、請求項43に記載の回路部分を含む電極。
【請求項45】
その表面に配置される疎水性膜をさらに含み、前記膜が、前記デバイス中でプロトンおよび酸素の電気化学反応により生成する水がそれを通過するのを抑止するように構成されている、請求項44に記載の電極。
【請求項46】
拡散電極である、請求項45に記載の電極。
【請求項47】
燃料を消費し、それにより電力を発生するように構成されている、請求項34から41のいずれかに記載の組成物を含む燃料電池。
【請求項48】
水を電気分解して、酸素および水素を発生するように構成されている、請求項34から41のいずれかに記載の組成物を含む水素発生装置。
【請求項49】
ガスの存在を検出するように構成されている、請求項34から41のいずれかに記載の組成物を含むセンサー。
【請求項50】
センサーにおいて電気化学反応を受けることが可能な検体を検出するように構成されている、請求項49に記載のセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−543674(P2009−543674A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518652(P2009−518652)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/072996
【国際公開番号】WO2008/082691
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508287253)クアンタムスフィアー インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】