説明

電気又は電子機器用の発泡積層体

【課題】再剥離性に優れる電気又は電子機器用の発泡積層体を提供する。さらに、再剥離性に優れるとともに、耐熱性に優れる電気又は電子機器用の発泡積層体を提供する。
【解決手段】本発明の電気又は電子機器用の発泡積層体は、発泡体層の少なくとも一方の面側に、下記で求められる結晶融解エネルギーが50J/g以下である粘着剤層を有することを特徴とする。
結晶融解エネルギー:10℃/minの昇温速度での加熱により溶融させ(第一の加熱)、次に10℃/minの降温速度での冷却により−50℃まで降温させ(第一の冷却)、そして10℃/minの昇温速度での加熱により−50℃から昇温させる(第二の加熱)という条件で示差走査熱量測定 を行い、前記第二の加熱時に求められる融解熱(J/g)(JIS K 7122に準拠)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気又は電子機器用の発泡積層体に関する。より詳細には、発泡体層の少なくとも片面側に粘着剤層を有し、電気・電子機器(携帯電話、携帯端末、デジタルカメラ、ビデオムービー、パーソナルコンピューター、液晶テレビ、その他家電製品など)用のガスケットとして好適に用いられる発泡積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡体において、接着性やシール性を向上させるために、発泡体の表面に樹脂層を設けることは知られている。例えば、シール性の向上を目的として発泡体上に柔軟層や粘着層を形成した発泡積層体が提案されている(特許文献1、2参照)。また、防水性向上を目的として発泡体表面に易水溶層(ポリビニルアルコール層など)が設けられた発泡体(特許文献3参照)や、接着性発現のために発泡体表面をポリクロロプレン系接着剤組成物で処理された発泡体(特許文献4参照)なども提案されている。しかし、これらの発泡積層体では、発泡体上に層を形成する際に加熱乾燥工程が必要であり、耐熱性が低く密度の低い発泡体などは乾燥時に収縮してしまうおそれがある。また、上記収縮を防止するために、加熱温度が低くすると、3日から7日など長時間の加温が必要となり、効率がよくない。
【0003】
また、発泡体の表面に樹脂層を設ける際に加熱工程の必要としない方法として、発泡体上に熱可塑性エラストマーを共押し積層接着することにより樹脂層を設けることが提案されている(特許文献5参照)。しかし、このような方法で得られた樹脂積層発泡体は、樹脂層表面に多数の凹凸が存在するので、防塵性に不安があった。さらに、発泡体表面にホットメルト樹脂を塗布することが提案されている(特許文献6参照)。しかし、ホットメルト樹脂中に高結晶性樹脂が多量に添加されているので、得られた樹脂層の物性が非常に固く、折り曲げた際などに層に亀裂が入る可能性が高い。
【0004】
さらに、発泡体上に、接着力の高いアクリル系粘着剤層を設けることは知られているが、このようなアクリル系粘着剤層が積層されている発泡体では、電気・電子機器への貼り合せ時のリワークが困難となることがあった。
【0005】
さらにまた、電気又は電子機器分野では、被着体から剥離した際に被着体を汚染しない低汚染性の発泡積層体が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−131822号公報
【特許文献2】特開2002−309198号公報
【特許文献3】特開平10−37328号公報
【特許文献4】特開平5−24143号公報
【特許文献5】特開2009−184181号公報
【特許文献6】特開2004−284575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、再剥離性に優れる電気又は電子機器用の発泡積層体を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、再剥離性に優れるとともに、耐熱性に優れる電気又は電子機器用の発泡積層体を提供することにある。
さらにまた、本発明の他の目的は、再剥離性に優れ、低汚染性の電気又は電子機器用の発泡積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、発泡体層の少なくとも一方の面側に粘着剤層を有する発泡積層体において、粘着剤層を特定の値以上の結晶融解エネルギーを有する粘着剤層とすると、優れた再剥離性が得られることを見いだした。さらには、上記粘着剤層を特定のポリオレフィンを含む粘着剤層とすると優れた再剥離性とともに、耐熱性が得られることを見出した。さらにまた、上記粘着剤層をメタロセンを触媒とする重合により得られるポリオレフィンを含む粘着剤層とすると、優れた再剥離性が得られるとともに、汚染を生じさせないことを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明の電気又は電子機器用の発泡積層体は、発泡体層の少なくとも一方の面側に、下記で求められる結晶融解エネルギーが50J/g以下である粘着剤層を有することを特徴とする。
結晶融解エネルギー:10℃/minの昇温速度での加熱により溶融させ(第一の加熱)、次に10℃/minの降温速度での冷却により−50℃まで降温させ(第一の冷却)、そして10℃/minの昇温速度での加熱により−50℃から昇温させる(第二の加熱)という条件で示差走査熱量測定を行い、前記第二の加熱時に求められる融解熱(J/g)(JIS K 7122に準拠)
【0010】
上記電気又は電子機器用の発泡積層体では、上記粘着剤層が、ポリオレフィンを含むポリオレフィン系粘着剤層であることが好ましい。
【0011】
上記電気又は電子機器用の発泡積層体では、上記ポリオレフィン系粘着剤層が、結晶融解エネルギーが50J/g未満であるポリオレフィンA及び結晶融解エネルギーが50J/g以上であるポリオレフィンBを含み、ポリオレフィンBの割合がポリオレフィン全量(100重量%)に対して3〜30重量%である粘着剤層であることが好ましい。
【0012】
上記電気又は電子機器用の発泡積層体では、上記ポリオレフィンが、メタロセン化合物を触媒とする重合により得られたポリオレフィンであることが好ましい。
【0013】
上記電気又は電子機器用の発泡積層体では、上記ポリオレフィンA及びポリオレフィンBのうち少なくとも1以上のポリオレフィンが、メタロセン化合物を触媒とする重合により得られたポリオレフィンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発泡積層体は、結晶融解エネルギーが特定の値以下である粘着剤層を有するので、再剥離性に優れる。さらに、本発明の発泡積層体は、結晶融解エネルギーが特定の値以下であり且つ特定のポリオレフィンを含む粘着剤層を有していると、再剥離性に優れるとともに、耐熱性にも優れる。さらにまた、結晶融解エネルギーが特定の値以下であり且つメタロセン化合物を触媒とする重合により得られたポリオレフィンを含む粘着剤層を有していると、再剥離性に優れるとともに、低汚染性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1の示差走査熱量測定(DSC測定)により得られたチャート(DSC曲線)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の電気又は電子機器用の発泡積層体は、発泡体層の少なくとも一方の面側に粘着剤層を有する発泡積層体である。該粘着剤層は、下記で求められる融解結晶エネルギーが50J/g以下の粘着剤層である。なお、本願では、「下記で求められる融解結晶エネルギー」を単に「融解結晶エネルギー」と称する場合がある。また、本願では、「融解結晶エネルギーが50J/g以下である粘着剤層」を「特定の粘着剤層」と称する場合がある。さらに、「本発明の電気又は電子機器用の発泡積層体」を単に「本発明の発泡積層体」と称する場合がある。
【0017】
なお、本願において、結晶融解エネルギーとは、10℃/minの昇温速度での加熱により試料を溶融させ(第一の加熱)、次に10℃/minの降温速度での冷却により−50℃まで試料を降温させ(第一の冷却)、そして10℃/minの昇温速度での加熱により−50℃から試料を昇温させる(第二の加熱)という条件で示差走査熱量測定を行い、前記第二の加熱時に求められる融解熱(J/g)のことである。また、結晶融解エネルギーを求める際の示差走査熱量測定は、JIS K 7122(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠する。
【0018】
本発明の発泡積層体は、特に限定されないが、シート状やテープ状の形状を有することが好ましい。さらに、本発明の発泡積層体は、使用の際に、用いられる電気・電子機器、装置、筐体、部品等に応じて、所望の形状を有するように加工が施されていてもよい。なお、本発明の発泡積層体の粘着剤層は、使用時まで、剥離フィルム(セパレーター)により保護されていてもよい。
【0019】
本発明の発泡積層体は、発泡体層の少なくとも一方の面側に、直接的に又は他の層を介して、特定の粘着剤層を積層させた構造を有する積層物である。なお、本発明の発泡積層体は、発泡体層の片面又は両面に、直接的に特定の粘着剤層を積層させた構造を有することが特に好ましい。
【0020】
また、本発明の発泡積層体は、発泡体層の両方の面側に特定の粘着剤層を有する両面粘着タイプであってもよいし、発泡体層の一方の面側にのみ特定の粘着剤層を有する片面粘着タイプであってもよい。なお、本発明の発泡積層体が両面粘着タイプである場合、両方の粘着剤層が特定の粘着剤層であるタイプであってもよいし、一方の面側の粘着剤層が特定の粘着剤層であり、他方の面側がその他の粘着層(例えば、公知の粘着剤層など)であるタイプであってもよい。
【0021】
本発明の発泡積層体は、特定の粘着剤層を有するので、良好な再剥離性を有する。本願において、「再剥離性」とは、特定の粘着剤層が接する形態で被着体に貼付した発泡積層体を被着体から剥がすときに、発泡体層の破壊及び被着体への汚染が生じることなく、容易に剥離できる性質をいう。
【0022】
(特定の粘着剤層)
上記特定の粘着剤層は、融解結晶エネルギーが50J/g以下である粘着剤層である。上記特定の粘着剤層の融解結晶エネルギーは、50J/g以下である限り特に限定されないが、45J/g以下であることが好ましく、より好ましくは40J/g以下である。上記特定の粘着剤層の融解結晶エネルギー50J/gを超えると、再剥離性の低下という問題が生じるおそれがある。さらに、発泡積層体に衝撃が加わった際に空隙が発生し防塵性が低下するという問題や発泡積層体を変形させた際に粘着剤層で亀裂が生じるという問題が生じるおそれがある。
【0023】
また、上記特定の粘着剤層のアクリル板に対する剥離力(粘着力)(剥離角度:180°、引張速度:0.3m/min)は、特に限定されないが、0.1〜2.5N/20mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2.0N/20mmである。該剥離力が2.5N/20mmを超えると、十分な再剥離性が得られないおそれがある。
【0024】
また、上記特定の粘着剤層のヘイズ差(ヘイズB−ヘイズA)は、特に限定されないが、2.0%未満であることが好ましく、より好ましくは1.0%未満である。
ヘイズA:アクリル板のヘイズ。
ヘイズB:特定の粘着剤層を上記アクリル板に貼り合わせ、60℃で3日間保存してから、特定の粘着剤層を上記アクリル板から剥離する。該剥離後の上記アクリル板のヘイズ。
上記特定の粘着剤層において、上記ヘイズ差が2.0%以上であると、低汚染性という特性を発揮することが困難となるためである。なお、上記低汚染性とは、被着体に貼付してから剥離する際に被着体への汚染を生じない特性をいう。
【0025】
上記特定の粘着剤層としては、特に限定されないが、良好な再剥離性に加えて、良好な柔軟性及び良好な初期密着性を同時に発揮させる点から、ポリオレフィン系粘着剤層であることが好ましい。
【0026】
上記ポリオレフィン系粘着剤層は、必須の成分として、ポリオレフィンが含まれる。上記ポリオレフィン系粘着剤層中のポリオレフィンの割合は、特に限定されないが、ポリオレフィン系粘着剤層全量(100重量%)に対して、70重量%以上(例えば70〜100重量%)であることが好ましく、より好ましくは75重量%以上(例えば75〜100重量%)である。
【0027】
なお、上記ポリオレフィン系粘着剤層には、1種のポリオレフィンのみが含まれていてもよいし、2種以上のポリオレフィンが組み合わされて含まれていてもよい。また、上記ポリオレフィン系粘着剤層には、ポリオレフィン以外の樹脂や添加剤等が、本発明の効果を損なわない範囲で含まれていてもよい。
【0028】
また、上記ポリオレフィンは、低汚染性のポリオレフィン系粘着剤層を得る点から、メタロセンを触媒として重合されたポリオレフィン(メタロセン系ポリオレフィン)であることが好ましい。メタロセンを触媒としてモノマー成分を重合させて得られたポリオレフィンは分子量分布が狭いので、低分子成分のブリードが生じにくく、汚染を引き起こしにくいと考えられるからである。メタロセン触媒は均一系触媒であるので、メタロセン触媒によれば、分子量や組成が均一なポリマーを得ることができる。
【0029】
なお、上記ポリオレフィンは、低汚染性の点からは、熱分解により低分子量に調整したポリオレフィンは望ましくない。該ポリオレフィンは、分子量分布が広く、低分子量成分を含むので、該ポリオレフィンを原料として形成した粘着剤層では低分子量成分による汚染(低分子成分のブリード)が生じやすいからである。
【0030】
上記メタロセン触媒は、シクロペンタジエン環2個と遷移金属とで構成されているビスシクロペンタジエニル金属錯体[化学式:(C55)−M−(C55)、M=Cr、Fe、Co、Ni、Zr、Ti、V、Mo、W、Zn]として知られており、特に限定されないが、遷移金属がジルコニウムであるメタロセン触媒が特に好ましい。
【0031】
特に、上記ポリオレフィン系粘着剤層は、結晶融解エネルギーが50J/g未満であるポリオレフィンを含むことが好ましい。本願では、上記「結晶融解エネルギーが50J/g未満であるポリオレフィン」を「ポリオレフィンA」と称する場合がある。ポリオレフィンAは、いわゆる非晶性のポリオレフィンであり、ほとんど結晶構造を有しない。上記ポリオレフィン系粘着剤層は、ポリオレフィンAが含まれていると、再剥離性に加えて、良好な柔軟性や微粘着性を発揮しやすくなる。なお、上記ポリオレフィン系粘着剤層には、ポリオレフィンAが1種のみ含まれていてもよいし、2種以上のポリオレフィンAが含まれていてもよい。
【0032】
ポリオレフィンAは、結晶融解エネルギーが50J/g未満(例えば10J/g以上50J/g未満)であるポリオレフィンであり、好ましくは結晶融解エネルギーが45J/g未満(例えば15J/g以上45J/g未満)であるポリオレフィンであり、より好ましくは結晶融解エネルギーが40J/g未満(例えば20J/g以上40J/g未満)であるポリオレフィンである。
【0033】
ポリオレフィンAとしては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体などが挙げられる。なお、ポリオレフィンAは、単独重合体と共重合体の混合物や、複数種の共重合体の混合物であってもよい。また、ポリオレフィンAが共重合体である場合、ランダムコポリマーやブロックコポリマーであってもよい。
【0034】
上記α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセンなどが挙げられる。中でも、上記α−オレフィンは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンが好ましい。また、上記他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコールなどが挙げられる。なお、上記α−オレフィンや上記他のエチレン性不飽和単量体は、単独で用いられていてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられていてもよい。
【0035】
特に、ポリオレフィンAは、耐熱性と柔軟性の点から、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレンとプロピレンとの共重合体、プロピレンと上記他のα−オレフィンとの共重合体などのポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。
【0036】
また、ポリオレフィンAは、上記より、低汚染性の点から、メタロセンを触媒として重合されたポリオレフィン(メタロセン系ポリオレフィン)であることがより好ましい。
【0037】
さらに、ポリオレフィンAの密度は、特に限定されないが、0.84〜0.89g/cm3が好ましく、より好ましくは0.85〜0.89g/cm3である。密度が0.89g/cm3を超えると、樹脂の柔軟性や微粘着性が損なわれるおそれがある。一方、密度が0.84g/cm3未満であると、成形性低下や耐熱性低下のおそれがある。
【0038】
ポリオレフィンAの市販品としては、例えば、商品名「タフセレンH5002」(住友化学社製、ポリプロピレン系エラストマー、結晶融解エネルギー:11.3J/g、密度:0.86g/cm3)、商品名「ノティオPN20300」(三井化学社製、ポリプロピレン系エラストマー、結晶融解エネルギー:23.4J/g、密度:0.868g/cm3)、商品名「リコセンPP1502」(クラリアント社製、ポリプロピレン系ワックス、結晶融解エネルギー:26.0J/g、密度:0.87g/cm3)、商品名「リコセンPP1602」(クラリアント社製、ポリプロピレン系ワックス、結晶融解エネルギー:26.9J/g、密度:0.87g/cm3)、商品名「リコセンPP2602」(クラリアント社製、ポリプロピレン系ワックス、結晶融解エネルギー:39.8J/g、密度:0.89g/cm3)、商品名「ノティオPN2060」(三井化学社製、(ポリプロピレン系エラストマー、結晶融解エネルギー:20.1J/g、密度:0.87g/cm3)、商品名「ノティオPN3560」(三井化学社製、ポリプロピレン系エラストマー、結晶融解エネルギー:21.7J/g、密度:0.87g/cm3)などが挙げられる。
【0039】
上記ポリオレフィン系粘着剤層がポリオレフィンAを含む場合、ポリオレフィンAの割合は、特に限定されないが、ポリオレフィン系粘着剤層が含むポリオレフィン全量(100重量%)に対して、70重量%以上(例えば70〜100重量%)が好ましく、より好ましくは75重量%(例えば75〜100重量%)である。なお、ポリオレフィンAの割合が70重量%未満であると、ポリオレフィン系粘着剤層において十分な再剥離性を得つつ、良好な柔軟性を得ることが難しくなる場合がある。
【0040】
また、上記ポリオレフィン系粘着剤層がポリオレフィンAを含む場合、上記ポリオレフィン系粘着剤層には、ポリオレフィンAとともに、結晶融解エネルギーが50J/g以上であるポリオレフィン(ポリオレフィンB)も含まれることが好ましい。上記ポリオレフィン系粘着剤層において、ポリオレフィンAに対してポリオレフィンBが含まれていると、再剥離性、柔軟性、微粘着性に加えて、耐熱性を発揮しやすくなる。本願では、上記「結晶融解エネルギーが50J/g以上であるポリオレフィン」を「ポリオレフィンB」と称する場合がある。ポリオレフィンBは、いわゆる結晶性のポリオレフィンであり、結晶構造を多く含む。なお、上記ポリオレフィン系粘着剤層には、ポリオレフィンBが1種のみ含まれていてもよいし、2種以上のポリオレフィンBが含まれていてもよい。
【0041】
ポリオレフィンBとしては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体などが挙げられる。なお、ポリオレフィンBは、単独重合体と共重合体の混合物や、複数種の共重合体の混合物であってもよい。また、ポリオレフィンBが共重合体である場合、ランダムコポリマーやブロックコポリマーであってもよい。
【0042】
上記α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセンなどが挙げられる。中でも、上記α−オレフィンは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンが好ましい。また、上記他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコールなどが挙げられる。なお、上記α−オレフィンや上記他のエチレン性不飽和単量体は、単独で用いられていてもよいし、2種以上用いられていてもよい。
【0043】
ポリオレフィンBは、耐熱性の点から、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレンとプロピレンとの共重合体、プロピレンと上記他のα−オレフィンとの共重合体などのポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。
【0044】
また、ポリオレフィンBは、上記より、低汚染性の点から、メタロセンを触媒として重合されたポリオレフィン(メタロセン系ポリオレフィン)であることがより好ましい。なお、上記ポリオレフィン系粘着剤層がポリオレフィンA及びポリオレフィンBの両方を含む場合、ポリオレフィンA及びポリオレフィンBは、低汚染性の点からは、両方とも、メタロセン系ポリオレフィンであることが好ましい。
【0045】
さらに、ポリオレフィンBの密度は、特に限定されないが、0.90〜0.91g/cm3が好ましい。密度が0.90g/cm3未満であると、耐熱性が低下するおそれがある。なお、密度が0.91g/cm3を超えるポリオレフィンBは、入手が困難である。
【0046】
ポリオレフィンBの市販品としては、例えば、商品名「ハイワックスNP055」(三井化学社製、ポリプロピレン系ワックス、結晶融解エネルギー:89.1J/g、密度:0.90g/cm3)、商品名「リコセンPP6502」(クラリアント社製、ポリプロピレン系ワックス、結晶融解エネルギー:87.2J/g、密度:0.90g/cm3、メタロセン系ポリオレフィン)などが挙げられる。
【0047】
上記ポリオレフィン系粘着剤層において、ポリオレフィンA及びポリオレフィンBが含まれている場合、ポリオレフィンBの割合は、特に限定されないが、特定のポリオレフィン系粘着剤層が含むポリオレフィン全量(100重量%)に対して、3〜30重量%が好ましく、より好ましくは4〜28重量%であり、さらにより好ましくは5〜25重量%である。ポリオレフィンBの割合が30重量%を超えると、ポリオレフィン系粘着剤層が硬くなりすぎて、発泡積層体の柔軟性や微粘着性が損なわれたり、ポリオレフィン系粘着剤層が脆くなるおそれがある。一方、ポリオレフィンBの割合が5重量%未満であると、ポリオレフィン系粘着剤層において十分な耐熱性が得られないおそれがある。
【0048】
また、上記ポリオレフィン系粘着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲で、粘着付与剤(粘着付与樹脂)、酸化防止剤、老化防止剤、可塑剤、着色剤、充填剤、その他の樹脂(ポリオレフィンA及びポリオレフィンB以外の樹脂)などの添加剤を含んでいてもよい。なお、添加剤は、単独で、又は2種以上組み合わせて用いられていてもよい。
【0049】
特に、上記ポリオレフィン系粘着剤層は、粘着付与剤(粘着付与樹脂)を含有することが好ましい。粘着付与剤を含んでいると、粘着剤層の粘着力を向上させることができ、例えば、本発明の発泡積層体の耐すべり性や防塵性を向上させることができる。なお、粘着付与剤は、単独で、又は2種以上組み合わせて用いられていてもよい。
【0050】
上記粘着付与剤は、軟化点(JIS K 2207に準拠)が70〜180℃である樹脂であり、より好ましくは、軟化点が80〜160℃である樹脂であり、さらにより好ましくは、軟化点が90〜150℃である樹脂である。なお、軟化点が高すぎると、再剥離性の低下や樹脂の柔軟性の低下を生じる場合がある。一方、軟化点が低すぎると、耐熱性の低下を生じる場合がある。
【0051】
上記粘着付与剤は、上記軟化点を有するものである限り特に限定されないが、例えば、脂肪族系石油樹脂、完全水添脂肪族系石油樹脂、部分水添脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、完全水添芳香族系石油樹脂、部分水添芳香族系石油樹脂などが挙げられる。
【0052】
ポリオレフィン系粘着剤層における粘着付与剤の含有量は、特に限定されないが、粘着付与剤の含有量が多すぎると再剥離性が失われるおそれがあり、一方、粘着付与剤の含有量が少なすぎると粘着付与剤が含有されることにより期待される効果(例えば、防塵性の更なる向上)が得られないおそれがある。このため、上記ポリオレフィン系粘着剤層における粘着付与剤の含有量は、ポリオレフィン100重量部(ポリオレフィンA及びポリオレフィンBが含まれる場合にはポリオレフィンA及びポリオレフィンBの合計量100重量部)に対して、25重量部以下(例えば1〜25重量部)が好ましく、より好ましくは20重量部以下(例えば3〜20重量部)である。
【0053】
本発明の発泡積層体は発泡体層の少なくとも一方の面側に上記特定の粘着剤層(特に、上記ポリオレフィン系粘着剤層)を有するが、上記特定の粘着剤層の厚さ(特に上記ポリオレフィン系粘着剤層の厚さ)は、特に限定されないが、1〜50μmが好ましく、より好ましくは2〜40μmである。上記厚さが1μm未満であると、十分な密着性が得られないおそれがある。一方、厚さが50μmを超えると発泡積層体の柔軟性が低下するおそれがある。なお、上記特定の粘着剤層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0054】
(発泡体層)
本発明の発泡積層体は、発泡体層を有する。このため、本発明の発泡積層体は、柔軟性、衝撃吸収性に優れる。なお、上記発泡体層は、樹脂組成物を発泡させて成形することにより形成される。該樹脂組成物は、原料としての樹脂と、必要に応じて添加される添加剤等とを、混合することにより得られる組成物である。
【0055】
上記発泡体層は、気泡構造を有する。該気泡構造は、特に限定されないが、独立気泡構造、半連続半独立気泡構造(独立気泡構造と連続気泡構造とが混在している気泡構造であり、独立気泡構造と連続気泡構造との割合は特に限定されない)、連続気泡構造の何れであってもよい。特に、上記発泡体層は、より良好な柔軟性を得る点から、連続気泡構造又は半連続半独立気泡構造の気泡構造を有していることが好ましい。なお、半連続半独立気泡構造としては、例えば、気泡構造中の独立気泡構造部が40%(体積%)以下(好ましくは30%(体積%)以下)となっている気泡構造が挙げられる。
【0056】
上記発泡体層の密度(見掛け密度)は、使用目的などに応じて適宜設定することができるが、0.02〜0.20g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.17g/cm3であり、さらにより好ましくは0.04〜0.15g/cm3である。発泡体層の密度が0.20g/cm3を超えると、発泡が不十分となり、柔軟性が損なわれるおそれがある。一方、0.02g/cm3未満であると、発泡体層の強度が著しく低下する場合があり好ましくない。
【0057】
上記発泡体層の密度は、以下のようにして求められる。40mm×40mmの打抜き刃型にて、発泡体層を打ち抜き、打抜いた試料の寸法(たて、よこ)を測定する。また、測定端子の直径(φ)20mmである1/100ダイヤルゲージにて該試料の厚さを測定する。上記試料の寸法及び上記試料の厚さの値から上記試料の体積を算出する。次に、上記試料の重量を最小目盛り0.01g以上の上皿天秤にて測定する。上記試料の体積及び上記試料の重量の値より上記発泡体層の密度(g/cm3)を算出する。
【0058】
上記発泡体層の厚さは、特に限定されないが、例えば、防塵性能や衝撃吸収性の点から、また薄型、小型、細幅などの形状を有する電子又は電気機器に対する適用性の点から、0.1〜5mmが好ましく、より好ましくは0.2〜3mmである。
【0059】
上記発泡体層は、樹脂により構成される。上記発泡体層を構成する樹脂は、熱可塑性を示し、ガス(気泡を形成するガス)が含浸可能な樹脂であれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂が好ましい。なお、上記発泡体層は、1種の樹脂のみにより構成されていてもよいし、2種以上の樹脂により構成されていていてもよい。
【0060】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン又はプロピレンと他のα−オレフィン(例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1など)との共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコールなど)との共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリアミドイミド;ポリウレタン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニル;アルケニル芳香族樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ビスフェノールA系ポリカーボネートなどのポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。また、熱可塑性樹脂が共重合体である場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれの形態の共重合体であってもよい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0061】
上記熱可塑性樹脂は、中でも、上記ポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、該ポリオレフィン系樹脂は、分子量分布が広く且つ高分子量側にショルダーを持つタイプの樹脂、微架橋タイプの樹脂(若干架橋されたタイプの樹脂)、長鎖分岐タイプの樹脂などが好ましい。
【0062】
さらに、上記熱可塑性樹脂には、熱可塑性エラストマー(例えば、下記の熱可塑性エラストマー)も含まれる。上記発泡体層を構成する樹脂として熱可塑性エラストマーが含まれていると、熱可塑性エラストマーのガラス転移温度は室温以下(例えば20℃以下)であるため、発泡体層の柔軟性及び形状追随性が著しく優れるようになる。
【0063】
上記熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルブチルゴムなどの天然又は合成ゴム;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、及びそれらの水素添加物などのスチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリウレタン系エラストマーなどの各種熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。なお、熱可塑性エラストマーは、単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0064】
中でも、上記熱可塑性エラストマーは、上記オレフィン系エラストマーが好ましい。なお、該オレフィン系エラストマーは、ポリエチレンやポリプロピレンのようなオレフィン系樹脂成分と、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムのようなオレフィン系ゴム成分とがミクロ相分離した構造を有している。また、該オレフィン系エラストマーは、各成分を物理的に分散させたタイプや架橋剤の存在下、動的に熱処理したタイプであってもよい。さらに、該オレフィン系エラストマーは、上記熱可塑性樹脂として例示されているポリオレフィン系樹脂との相溶性が良好である。
【0065】
特に、上記発泡体層は、上記熱可塑性樹脂(上記熱可塑性エラストマーを除く上記熱可塑性樹脂)及び上記熱可塑性エラストマーから構成されていることが好ましい。また、上記熱可塑性樹脂(上記熱可塑性エラストマーを除く上記熱可塑性樹脂)と上記熱可塑性エラストマーとの割合としては、特に限定されないが、上記熱可塑性エラストマーの割合が少なすぎると発泡体層のクッション性が低下しやすくなることがあり、一方、上記熱可塑性エラストマーの割合が多すぎると気泡構造形成時にガス抜けが生じやすくなり、発泡体層で高発泡の気泡構造が得られないことがある。このため、例えば、上記発泡体層が、ポリプロピレンなどの上記ポリオレフィン系樹脂(上記オレフィン系エラストマーを除く上記ポリオレフィン系樹脂)及び上記オレフィン系エラストマーから構成されている場合、上記ポリオレフィン系樹脂と上記オレフィン系エラストマーとの比率(重量基準)は、前者/後者で、1/99〜99/1が好ましく、より好ましくは10/90〜90/10であり、さらに好ましくは20/80〜80/20である。
【0066】
上記発泡体層には、必要に応じて、各種添加剤が含まれていてもよい。該添加剤は、特に限定されないが、例えば、気泡核剤(後述の粒子など)、結晶核剤、可塑剤、滑剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、界面活性剤、張力改質剤、収縮防止剤、流動性改質剤、クレイ、加硫剤、表面処理剤、難燃剤(後述のパウダー状の難燃剤、パウダー状以外の各種形態の難燃剤など)などが挙げられる。なお、添加剤の量は、気泡の形成等を損なわない範囲で適宜選択される。
【0067】
上記発泡体層には、粒子が含まれていることが好ましい。粒子は樹脂組成物の発泡成形時の気泡核剤(発泡核剤)としての機能を発揮することができるので、樹脂組成物に粒子が含まれていると発泡体層で良好な発泡状態の気泡構造が得られる。該粒子としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、モンモリナイト等のクレイ、カーボン粒子、グラスファイバー、カーボンチューブなどが挙げられる。なお、粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0068】
上記粒子としては、平均粒子径(粒径)が0.1〜20μmの粒子が特に好ましい。粒子の平均粒子径が0.1μm未満では核剤として十分機能しない場合があり、一方、粒径が20μmを超えると発泡成形時にガス抜けの原因となる場合があるためである。
【0069】
上記発泡体層における粒子の含有量は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物では、樹脂全量100重量部に対して、0.1〜150重量部が好ましく、より好ましくは1〜130重量部であり、さらに好ましくは2〜50重量部である。0.1重量部未満であると、樹脂組成物の発泡成形時に気泡核剤としての機能を十分に発揮できず、発泡体層で均一な気泡構造を得ることができないおそれがあり、一方、150重量部を超えると、樹脂組成物の粘度が著しく上昇するとともに、発泡形成時にガス抜けが生じて、発泡特性を損ない、高発泡の気泡構造が得られないおそれがある。
【0070】
さらにまた、上記発泡体層には、難燃剤(パウダー状の難燃剤、パウダー状以外の各種形態の難燃剤など)が含まれていることが好ましい。本発明の発泡積層体は、電気又は電子機器用途などの難燃性の付与が不可欠な用途に用いられることが多いが、上記発泡体層は、熱可塑性樹脂により構成されているため、燃えやすいという特性を有しているからである。
【0071】
上記パウダー状の難燃剤は、無機難燃剤が好ましい。該無機難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤等が挙げられる。ここで、塩素系難燃剤や臭素系難燃剤は、燃焼時に人体に対して有害で機器類に対して腐食性を有するガス成分を発生し、また、リン系難燃剤やアンチモン系難燃剤は、有害性や爆発性などの問題がある。このため、上記無機難燃剤は、ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤が好ましい。ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム・酸化ニッケルの水和物、酸化マグネシウム・酸化亜鉛の水和物等の水和金属化合物などが挙げられる。なお、水和金属酸化物は表面処理されていてもよい。また、パウダー状の難燃剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0072】
上記発泡体層における難燃剤の含有量は、特に限定されないが、量が少なすぎると難燃化効果が得られない場合があり、逆に多すぎると高発泡の気泡構造を得ることが困難になるおそれがある。例えば、樹脂組成物での上記パウダー状の難燃剤の含有量は、樹脂全量100重量部に対して、5〜130重量部が好ましく、より好ましくは10〜120重量部である。
【0073】
なお、上記パウダー状の難燃剤は、気泡核剤として機能する場合がある。このような場合には、上記発泡体層は、十分な難燃性と高発泡の気泡構造との両立を得る点から、気泡核剤及び難燃剤の両方が含まれるより、気泡核剤としても機能するパウダー状の難燃剤のみが含まれることが好ましい。
【0074】
上記発泡体層は、原料としての樹脂と、必要に応じて添加される添加剤等とを、混合することにより得られる組成物である樹脂組成物を発泡成形することにより形成されるが、樹脂組成物を発泡成形する際に用いられる発泡方法は、特に限定されないが、例えば、物理的方法(低沸点液体(発泡剤)を樹脂組成物に分散させ、次に加熱し発泡剤を揮発することにより気泡を形成させる方法)、化学的方法(樹脂組成物に添加した化合物(発泡剤)の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法)が挙げられる。
【0075】
樹脂組成物を発泡成形する際に用いられる発泡方法は、物理的発泡方法が好ましく、特に、セル径が小さく且つセル密度の高い気泡構造を容易に得ることができる点から、発泡剤として高圧のガスを用いる物理的発泡方法がより好ましい。
【0076】
上記発泡剤としてのガスは、樹脂組成物中の樹脂に対して不活性なガスである不活性ガスがより好ましい。すなわち、上記発泡体層は、発泡剤として高圧の不活性ガスを用いる物理的発泡方法により樹脂組成物を発泡して成形することにより形成されることが好ましい。不活性ガスは、発泡体層を構成する樹脂に対して不活性で且つ含浸可能なものであれば特に限定されないが、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気などが挙げられる。特に、不活性ガスは、樹脂への含浸量が多く、含浸速度の速い点から、二酸化炭素が好ましい。なお、不活性ガスは、混合ガスであってもよい。
【0077】
さらに、含浸速度を速めるという点から、上記高圧のガス(特に不活性ガス、さらには二酸化炭素)は、超臨界状態のガスであることが好ましい。超臨界状態では、樹脂へのガスの溶解度が増大し、高濃度の混入が可能である。また、含浸後の急激な圧力降下時には、上記のように高濃度で含浸することが可能であるため、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度は気孔率が同じであっても大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0078】
上記発泡剤として高圧のガスを用いる物理的発泡方法は、樹脂組成物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て発泡させる方法が好ましく、具体的には、樹脂組成物からなる未発泡成形物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て発泡させる方法や溶融した樹脂組成物にガスを加圧状態下で含浸させた後、減圧とともに成形に付して発泡させる方法などがより好ましい。
【0079】
すなわち、上記発泡体層は、予め樹脂組成物を、シート状などの適宜な形状に成形して未発泡樹脂成形体(未発泡成形物)とした後、この未発泡樹脂成形体に、高圧のガスを含浸させ、圧力を解放することにより発泡させるバッチ方式により得られてもよく、樹脂組成物を加圧下、高圧のガスと共に混練し、成形すると同時に圧力を解放し、成形と発泡を同時に行う連続方式で得られてもよい。
【0080】
上記バッチ方式において、未発泡樹脂成形体を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を用いて成形する方法;樹脂組成物を、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型等の羽根を設けた混練機を使用して均一に混練しておき、熱板のプレスなどを用いて所定の厚さにプレス成形する方法;樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形する方法などが挙げられる。また、未発泡樹脂成形体の形状は、特に限定されないが、例えば、シート状、ロール状、板状等が挙げられる。上記バッチ方式では、所望の形状や厚さの未発泡樹脂成形体が得られる適宜な方法により樹脂組成物が成形される。
【0081】
上記バッチ方式では、未発泡樹脂成形体を耐圧容器中に入れて、高圧のガスを注入(導入)し、未発泡樹脂成形体中に高圧のガスを含浸させるガス含浸工程、十分に高圧のガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、樹脂中に気泡核を発生させる減圧工程を経て、気泡が形成される。
【0082】
一方、上記連続方式では、樹脂組成物を押出機(例えば、単軸押出機、二軸押出機等)や射出成形機を使用して混練しながら、高圧のガスを注入(導入)し、十分に高圧のガスを樹脂組成物に含浸させる混練含浸工程、押出機の先端に設けられたダイスなどを通して樹脂組成物を押し出すことにより圧力を解放し(通常、大気圧まで)、成形と発泡を同時に行う成形減圧工程により樹脂組成物が発泡成形される。
【0083】
上記バッチ方式や連続方式では、必要に応じて、加熱により気泡核を成長させる加熱工程が設けられてもよい。なお、加熱工程を設けずに、室温で気泡核を成長させてもよい。さらにまた、気泡を成長させた後、必要により冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化させてもよい。高圧のガスの導入は、連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。なお、気泡核を成長させる際の加熱の方法は、特に限定されないが、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知乃至慣用の方法が挙げられる。
【0084】
なお、上記バッチ方式や上記連続方式において、ガスの混合量は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物中の樹脂全量に対して2〜10重量%である。
【0085】
上記バッチ方式のガス含浸工程や上記連続方式の混練含浸工程において、ガスを含浸させるときの圧力は、ガスの種類や操作性等を考慮して適宜選択されるが、例えば、ガスとして不活性ガス、特に二酸化炭素が用いられる場合には、6MPa以上(例えば、6〜100MPa)が好ましく、より好ましくは8MPa以上(例えば、8〜100MPa)である。ガスの圧力が6MPaより低い場合には、発泡時の気泡成長が著しく、気泡径が大きくなりすぎ、例えば、防塵効果が低下するなどの不都合が生じやすくなり、好ましくない。これは、圧力が低いとガスの含浸量が高圧時に比べて相対的に少なく、気泡核形成速度が低下して形成される気泡核数が少なくなるため、1気泡あたりのガス量が逆に増えて気泡径が極端に大きくなるからである。また、6MPaより低い圧力領域では、含浸圧力を少し変化させるだけで気泡径、気泡密度が大きく変わるため、気泡径及び気泡密度の制御が困難になりやすい。
【0086】
また、上記バッチ方式におけるガス含浸工程や上記連続方式における混練含浸工程で、ガスを含浸させるときの温度(含浸温度)は、用いるガスや樹脂の種類によって異なり、広い範囲で選択できるが、操作性等を考慮した場合、10〜350℃が好ましい。より具体的には、バッチ方式での含浸温度は、10〜250℃が好ましく、より好ましくは40〜240℃であり、さらにより好ましくは60〜230℃である。また、連続方式では、含浸温度は、60〜350℃が好ましく、より好ましくは100〜320℃であり、さらにより好ましくは150〜300℃である。なお、高圧のガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度(含浸温度)は32℃以上(特に40℃以上)であることが好ましい。
【0087】
さらに、上記バッチ方式や上記連続方式において、減圧工程での減圧速度は、特に限定されないが、均一な微細気泡を得るため、好ましくは5〜300MPa/秒である。さらにまた、加熱工程での加熱温度は、例えば、40〜250℃が好ましく、より好ましくは60〜250℃である。
【0088】
また、樹脂組成物の発泡・成形する際に上記発泡剤として高圧のガスを用いる物理的発泡方法を用いると、高発泡の気泡構造が得られ、発泡体層の厚さをより大きくできるという利点を有する。例えば、0.50〜5.00mmの厚さを有する発泡体層を得ることができる。
【0089】
上記発泡体層の厚さは、特に限定されないが、0.1mm〜5mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜3mmである。厚さが0.1mm未満であると、本発明の発泡積層体の防塵性能の低下やクッション性能の低下をまねくおそれがある。一方、厚さが5mmを超えると、薄型、小型、細幅などの形状を有する電子又は電気機器に本発明の発泡積層体を適用するのが困難となるおそれがある。なお、発泡体層の厚さは、あらかじめ厚さのある発泡体層を得てから、所望の厚さにスライス加工することにより調整されていてもよい。
【0090】
なお、上記発泡剤として高圧のガスを用いる物理的発泡方法において、厚さのある発泡体層を得るためには、相対密度[発泡後の密度/未発泡状態での密度(例えば、樹脂組成物の密度や未発泡成形物の密度など)]が0.02〜0.30であることが好ましく、0.03〜0.25であることがより好ましい。相対密度が0.30を超えると発泡が不十分となり、発泡体層の柔軟性の低下を生じる場合がある。また相対密度が0.02未満では発泡体層の強度が著しく低下する場合があり好ましくない。
【0091】
なお、発泡体層の気泡構造、密度、相対密度は、発泡体層を構成する樹脂の種類に応じて、樹脂組成物を発泡成形する際の発泡方法や発泡条件(例えば、発泡剤の種類や量、発泡の際の温度や圧力や時間など)を選択することにより調整される。例えば、0.02〜0.20g/cm3の密度(見掛け密度)を有する発泡体層は、上記発泡剤として高圧のガスを用いる物理的発泡方法において、150〜190℃の温度雰囲気下、10MPa〜30MPaの圧力下で、発泡剤としてのガス(好ましくは不活性ガス、より好ましくは二酸化炭素)を樹脂組成物に含浸させることにより容易に得ることができる。
【0092】
(その他の層)
本発明の発泡積層体は、上記ポリオレフィン系粘着剤層や発泡体層以外に、その他の層を有していてもよい。その他の層としては、例えば、発泡体層とポリオレフィン系粘着剤層との間に設けられる中間層(例えば、密着性を向上させる下塗り層、芯材として作用する基材層(例えば、フィルム層、不織布層など)、上記ポリオレフィン系粘着剤層以外の粘着層(その他の粘着層)が挙げられる。
【0093】
本発明の発泡積層体の作製方法としては、特に限定されないが、例えば、発泡体層の片面側又は両面側に、特定の粘着剤層を設けることにより作製される。
【0094】
例えば、発泡体層の少なくとも片面側にポリオレフィン系粘着剤層を有する発泡積層体は、発泡体層の少なくとも片面側に、ポリオレフィン系粘着剤組成物を塗布して硬化させ、ポリオレフィン系粘着剤層を形成することにより作製される。上記ポリオレフィン系粘着剤組成物は、ポリオレフィン系粘着剤層を形成する組成物のことであり、ポリオレフィン系粘着剤を形成する組成物も含む。上記ポリオレフィン系粘着剤組成物は、ポリオレフィンAやポリオレフィンBなどのポリオレフィン、必要に応じて添加される添加剤などの原料を混合することにより得られる。なお、原料を混合する際には、熱が加えられていてもよい。
【0095】
なお、上記ポリオレフィン系粘着剤組成物を塗布する際には、作業性の点から昇温して、溶融状態のポリオレフィン系粘着剤組成物とすることが好ましい。上記ポリオレフィン系粘着剤組成物の溶融粘度は、特に限定されないが、発泡体層上に精度よく塗布して粘着剤層を形成するなどの精度のよい塗布性を得る点から、例えば、200℃における溶融粘度で、1〜30Pa・sが好ましく、より好ましくは2〜20Pa・sである。30Pa・sを超えると、粘度が高く均一に塗布することが困難な場合があり、一方、1Pa・s未満であると、粘度が低すぎて塗工の際に流動し、一定の形状とすることが困難となる場合がある。なお、このポリオレフィン系粘着剤組成物の溶融粘度は、ポリオレフィン系粘着剤層の溶融粘度でもある。
【0096】
本発明の発泡積層体の厚さは、特に限定されないが、薄型、小型、細幅などの形状を有する電子又は電気機器への適用の点から、0.1mm〜5mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜3mmである。
【0097】
本発明の発泡積層体は、下記(耐熱性の評価方法)により評価される耐熱性が良好であることが好ましい。下記で評価される耐熱性が不良であると、電気・電子機器の使用中に、内部に組み込まれた発泡積層体中の粘着剤層が溶けて発泡積層体外へはみ出し、例えば、電気・電子機器の故障の原因となったり、電気・電子機器の表示部に対しての視認性に悪影響を及ぼしたりするなどの不具合を生じることがある。
【0098】
耐熱性の評価方法
厚さが圧縮前の50%となるように厚さ方向に圧縮したサンプルを、60℃の温度雰囲気下で72時間保存し、粘着剤層の発泡積層体外へのはみ出しが生じているか否かを確認する。そして、粘着剤層のはみ出しが生じていない場合を良好と評価し、一方、粘着剤層のはみ出しが生じている場合を不良と評価する。
【0099】
なお、本発明の発泡積層体は、耐熱性が良好であると、寸法安定性(温度や時間が変化しても寸法変化が少ない特性)に優れる。また、本発明の発泡積層体は、電気・電子機器の内部に組み込まれることが多く、電気・電子機器の使用により電気・電子機器の内部では60〜100℃の温度雰囲気下が想定されるが、耐熱性が良好であると、該温度雰囲気下で、性能の低下や劣化を生じることはない。
【0100】
本発明の発泡積層体は、粘着剤層として、メタロセンを触媒とする重合により得られたポリオレフィン系粘着剤層を有していれば、再剥離性に加えて、低汚染性を発揮する。さらに、本発明の発泡積層体は、粘着剤層として、メタロセンを触媒とする重合により得られたポリオレフィンA及びメタロセンを触媒とする重合により得られたポリオレフィンBにより形成されるポリオレフィン系粘着剤層を有していれば、再剥離性に加えて、耐熱性に優れ、さらに低汚染性を発揮する。
【0101】
本発明の発泡積層体が低汚染性であると、例えば、発泡積層体が組み込まれた電気又は電子機器を解体する際や発泡積層体を電気又は電子機器に組み込む場合におけるリワーク時において、発泡積層体を機器筐体の樹脂面や金属面、画像表示部のガラス面などから剥離する際に、機器筐体の樹脂面や金属面、画像表示部のガラス面などへの汚染を生じにくい。このため、本発明の発泡積層体が低汚染性であると、発泡積層体を電気又は電子機器に組み込む場合におけるリワーク時に有利であり、また、電気又は電子機器を構成する部品、部材、筐体等のリサイクルに有利である。
【0102】
本発明の発泡積層体は、粘着剤層として上記特定の粘着剤層を有するので、再剥離性(リワーク性)に優れる。なお、本発明の発泡積層体は、再剥離性に優れるので、部材のリサイクルや省資源化を促すことができる。
【0103】
本発明の発泡積層体は、例えば、携帯電話、携帯端末、デジタルカメラ、ビデオムービー、パーソナルコンピューター、液晶テレビ、その他家電製品などに好ましく用いられる。より詳細には、本発明の発泡積層体は、電気又は電子機器において、電気又は電子機器を構成する各種部材又は部品を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられる際のガスケットとして好ましく用いられる。
【0104】
本発明の発泡積層体を利用して取付(装着)可能な上記電気又は電子機器を構成する各種部材又は部品としては、特に限定されないが、例えば、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置に装着される画像表示部材(特に、小型の画像表示部材)や、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等の移動体通信の装置に装着されるカメラやレンズ(特に、小型のカメラやレンズ)等の光学部材又は光学部品などが挙げられる。
【0105】
(電気又は電子機器類)
本発明の発泡積層体により、電気又は電子機器用の発泡積層体を含む電気又は電子機器類を得ることができる。該電気又は電子機器類は、電気又は電子機器用の部材又は部品が、上記電気又は電子機器用の発泡積層体を介して所定の部位に取り付けられた(装着された)構成を有している。
【0106】
上記電気又は電子機器類としては、例えば、光学部材又は部品としての液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置(特に、小型の画像表示部材が光学部材として装着されている画像表示装置)や、カメラやレンズ(特に、小型のカメラ又はレンズ)が、上記電気又は電子機器用の発泡積層体を介して装着された構成を有している電気又は電子機器類(例えば、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等の移動体通信の装置など)が挙げられる。このような電気又は電子機器類は、従来のものより薄型化の製品であってもよく、その厚さや形状などは特に限定されない。
【実施例】
【0107】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0108】
(発泡体層の製造例1)
ポリプロピレン(メルトフローレート(MFR):0.35g/10min):50重量部、ポリオレフィン系エラストマー(メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°):55重量部、カーボンブラック(商品名「旭♯35」、旭カーボン株式会社製):6重量部、及び、水酸化マグネシウム(平均粒子径:0.7μm):10重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。なお、ペレットの軟化点は155℃であった。
このペレットを、日本製鋼所(JSW)社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、混練しながら、22(注入後19)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。
二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押し出して、半連続半独立構造を有する発泡体を得た。なお、この発泡体は、シート状の形状を有し、密度は0.05g/cm3であり、厚さは2.0mmであった。
そして、この発泡体をスライスして、厚さが0.5mmの発泡体層(発泡体層A)(シート状の発泡体)を得た。
【0109】
(実施例)
東洋精機製作所社製のラボプラストミル(混練押出機)に、下記表1に示す各実施例の材料を投入し、回転数:30rpm、温度:140℃の条件で5分間混練して、さらに温度:200℃に昇温して10分間混練し、各実施例の粘着剤組成物を得た。
次に、該粘着剤組成物を、溶融温度:200℃の条件下、コーティングマシン(装置名「GPD−300」、由利ロール機械株式会社製)を用いて、上記発泡体層A上に30μmの厚さで塗工して、各実施例の発泡積層体を作製した。なお、この発泡積層体は、シート状の形状を有し、発泡体層/粘着剤層の層構成を有する。
【0110】
(比較例1)
上記発泡体層の製造例1で得た発泡体層を、そのまま使用した。
【0111】
(比較例2及び3)
東洋精機製作所社製のラボプラストミル(混練押出機)に、下記表1に示す各比較例の材料を投入し、回転数:30rpm、温度:140℃の条件で5分間混練して、さらに温度:200℃に昇温して10分間混練し、各比較例の粘着剤組成物を得た。
次に、該粘着剤組成物を、溶融温度:200℃の条件下、コーティングマシン(装置名「GPD−300」、由利ロール機械株式会社製)を用いて、上記発泡体層A上に30μmの厚さで塗工して、各比較例の発泡積層体を作製した。なお、この発泡積層体は、シート状の形状を有し、発泡体層/粘着剤層の層構成を有する。
【0112】
【表1】

【0113】
表1において、「タフセレンH5002」はポリプロピレン系エラストマー(商品名「タフセレン H5002」、住友化学株式会社製、結晶融解エネルギー:11.3J/g)であり、「ノティオPN20300」はポリプロピレン系エラストマー(商品名「ノティオPN20300」、三井化学株式会社製、結晶融解エネルギー:23.4J/g)であり、「リコセンPP1502」はポリプロピレン系ワックス(商品名「リコセンPP1502」、クラリアント社製、結晶融解エネルギー:26.0J/g)であり、「リコセンPP2602」はポリプロピレン系ワックス(商品名「リコセンPP2602」、クラリアント社製、結晶融解エネルギー:39.8J/g)であり、「リコセンPP6502」はメタロセン系のポリプロピレン系ワックス(商品名「リコセンPP6502」、クラリアント社製、結晶融解エネルギー:89.1J/g)であり、「ハイワックスNP055」は「ポリプロピレン系ワックス(商品名「ハイワックスNP055」、三井化学株式会社製、結晶融解エネルギー:87.2J/g)であり、「アルコンP125」は「水素化石油樹脂(商品名「アルコン P125」、荒川化学工業株式会社製、軟化点:125℃)」である。
【0114】
(評価)
実施例及び比較例について、粘着剤層の結晶融解エネルギー、アクリル板に対する粘着力、粘着剤層の溶融粘度、ヘイズ差、汚染性、耐熱性を測定又は評価した。その結果を表2にまとめた。
【0115】
(粘着剤層の結晶融解エネルギー)
発泡積層体の粘着剤層を3.0mgサンプリングし、試料とした。
該試料を用いて、下記条件で示差走査熱量測定(DSC測定)を行い、DSC曲線を得た(例えば、図1)。なお、JIS K 7122に準拠して測定を行った。
そして、2nd Run heating時の融解エネルギーの総和を算出し、結晶融解エネルギーとした。
DSC測定条件
サンプル量:3.0mg
パン:Tzeroパン(ティー・エイ・インスツルメント社製)(直径:4mm)、Tzeroフタ(ティー・エイ・インスツルメント社製)
昇温速度:10℃/min
降温速度:10℃/min
温度条件
1st Run heating(第一の加熱):−50℃から200℃に昇温
1st Run cooling(第一の冷却):200℃から−50℃に降温
2nd Run heating(第二の加熱):−50℃から200℃に昇温

なお、比較例1は、粘着剤層を有しないので、粘着剤層の結晶融解エネルギーの測定を行わなかった。
【0116】
粘着剤層の結晶融解エネルギーの測定方法について、実施例1の場合を挙げて、さらに説明する。図1は、実施例1の示差走査熱量測定(DSC測定)により得られたチャート(DSC曲線)を示す。
最初に、試料を、昇温速度:10℃/minでの加熱により、−50℃から200℃まで昇温させて、溶融させた。次に、該溶融した試料を、降温速度:10℃/minでの冷却により、200℃から−50℃まで降温させて、固化させた。次に、該固化した試料を、再度、昇温速度:10℃/minでの加熱により、−50℃から200℃まで昇温させて、溶融させた。そして、示差走査熱量測定(DSC測定)によるDSC曲線を得た(図1のチャート参照)。
次に、このDSC曲線から、融解ピーク(図1のピークC(図1の斜線のピーク))前後のベースラインから離れる点(図1の点A)とベースラインに戻る点(図1の点B)とを結ぶことに得られる直線と融解ピークとに囲まれている部分の面積(図1の斜線のピークの面積)から、結晶融解エネルギーを求めた。
なお、融解ピークのベースラインは、DSC曲線の階段状変化部(図1の階段状変化部D)からガラス転移温度を決める際の低温側ベースライン(図1のベースラインE)と高温側ベースライン(図1のベースラインF)のうち、高温側ベースライン(ベースラインF)である。
【0117】
(アクリル板に対する粘着力)
発泡積層体を、幅:20mm、長さ:100mmに裁断し、試験片とした。
該試験片を、1kgローラー、一往復の条件で、アクリル板(商品名「アクリライト(品番001)」、三菱レイヨン株式会社製)に圧着することにより、貼り合わせ、室温(23±2℃)で30分間放置した。
放置後、引張試験機(装置名「TG−1kN」、ミネベア社製)を使用して、温度:23±2℃、湿度:50±5RHの雰囲気下、引張速度:0.3m/min、剥離角度:180°の条件で剥離試験(JIS Z 0237に準拠)を行い、アクリル板に対する粘着力(アクリル板に対する引き剥がし接着強さ)を測定した。
なお、比較例1は、粘着剤層を有しないので、アクリル板に対する粘着力の測定を行わなかった。また、比較例2及び3は、アクリル板に圧着しても密着性を発揮せず、アクリル板に対する粘着力の測定を行うことができなかったので、「密着せず」と評価した。
【0118】
(粘着剤層の溶融粘度)
発泡積層体の粘着剤層を20gサンプリングして、試験片とした。次に、該試験片をサンプルチャンバー内で200℃で溶解させ、30分間ローターで攪拌し、溶融物を得た。そして、その溶融物の粘度を測定し、溶融粘度を求めた。
なお、比較例1は、粘着剤層を有しないので、粘着剤層の溶融粘度の測定を行わなかった。
溶融粘度装置:「DV−II+ VISCOMETER」(BROOK FILD社製)
サンプルチャンバー:HT−2DB
ローター:SC4−27
【0119】
(ヘイズ差)
アクリル板(商品名「アクリライト」、三菱レイヨン株式会社製)のヘイズを測定し、ヘイズAとした。
発泡積層体を、幅:20mm、長さ:100mmに裁断し、試験片とした。次に、該試験片を、1kgローラー、一往復の条件で、上記アクリル板に圧着することにより貼り合わせ、60℃の温度雰囲気下で72時間放置し、保存した。保存後、引張試験機(装置名「TG−1kN」、ミネベア社製)を使用して、温度:23±2℃、湿度:50±5RHの雰囲気下、引張速度:0.3m/min、剥離角度:180°の条件で、アクリル板から試験片を引き剥がした。そして、引き剥がした後のアクリル板のヘイズを測定し、ヘイズBとした。
そして、ヘイズA及びヘイズBより、ヘイズ差(ヘイズB−ヘイズA)を求めた。
また、ヘイズの測定はJIS K 7105に準拠して行い、また、測定装置として、ヘイズメーター(装置名「HM−150」、村上色彩技術研究所社製)を使用した。
なお、比較例1は、粘着剤層を有しない。このため、比較例1では、アクリル板上に位置させてから、1kgローラー、一往復の条件で圧着させたこと、及び、保存後に手でアクリル板から除いたこと以外は、同様にヘイズ差を求めた。
【0120】
(低汚染性)
上記ヘイズ差(ヘイズA−ヘイズB)から、下記基準により、低汚染性を評価した。
とても良好(◎):上記ヘイズ差が1.0%未満の場合、見かけ汚染がないとして、低汚染性はとても良好と評価した。
良好(○):上記ヘイズが1.0%以上であり2.0%未満である場合、実用上、見かけ汚染がないと判断できるので、低汚染性は良好と評価した。
不良(×):上記ヘイズが2.0%以上の場合、見かけ汚染があるとして、低汚染性は不良と評価した。
【0121】
(耐熱性)
発泡積層体を幅:30mm×長さ:30mmに切断し、測定用サンプルとした。測定用サンプルを、治具を使用して、厚さが圧縮前の50%となるように厚さ方向に均一に圧縮した。次に、測定用サンプルを、厚さ方向に50%圧縮した状態を維持しつつ、80℃の温度雰囲気下で72時間保存した。そして、保存後の測定用サンプルを観察し、発泡積層体中の粘着剤層が流動し、粘着剤層が発泡積層体外にはみ出している否かを確認した。
粘着剤層のはみ出しが生じていない場合を耐熱性良好と評価し、一方、粘着剤層のはみ出しが生じている場合を耐熱性不良と評価した。
なお、何れにおいても、保存前に厚さ方向に50%圧縮した段階で、発泡積層体外に粘着剤層のはみ出しが生じることはなかった。
また、比較例1は、粘着剤層を有しない。このため、比較例1では、保存後に構造の変化が生じているか否かにより耐熱性を評価した。
【0122】
【表2】

【0123】
なお、実施例の発泡積層体は、何れも、上記(アクリル板に対する粘着力)の測定時のアクリル板からの剥離の際に、発泡体層の破壊が生じることはなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体層の少なくとも一方の面側に、下記で求められる結晶融解エネルギーが50J/g以下である粘着剤層を有することを特徴とする電気又は電子機器用の発泡積層体。
結晶融解エネルギー:10℃/minの昇温速度での加熱により溶融させ(第一の加熱)、次に10℃/minの降温速度での冷却により−50℃まで降温させ(第一の冷却)、そして10℃/minの昇温速度での加熱により−50℃から昇温させる(第二の加熱)という条件で示差走査熱量測定を行い、前記第二の加熱時に求められる融解熱(J/g)(JIS K 7122に準拠)
【請求項2】
前記粘着剤層が、ポリオレフィンを含むポリオレフィン系粘着剤層である請求項1記載の電気又は電子機器用の発泡積層体。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系粘着剤層が、結晶融解エネルギーが50J/g未満であるポリオレフィンA及び結晶融解エネルギーが50J/g以上であるポリオレフィンBを含み、ポリオレフィンBの割合がポリオレフィン全量(100重量%)に対して3〜30重量%である粘着剤層である請求項2記載の電気又は電子機器用の発泡積層体。
【請求項4】
前記ポリオレフィンが、メタロセン化合物を触媒とする重合により得られたポリオレフィンである請求項2記載の電気又は電子機器用の発泡積層体。
【請求項5】
ポリオレフィンA及びポリオレフィンBのうち少なくとも1以上のポリオレフィンが、メタロセン化合物を触媒とする重合により得られたポリオレフィンである請求項3記載の電気又は電子機器用の発泡積層体

【図1】
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【公開番号】特開2012−152955(P2012−152955A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12250(P2011−12250)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】