説明

電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造

【課題】低圧幹線ケーブルの距離を短縮するために、変圧器装置を可能な限り負荷機器の近傍に設置し、この変圧器装置としては、専用区画を不要とし、最小限の変電設備だけを鋼製の箱体の中に収納した電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造を提供する。
【解決手段】電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造において、分電盤Bの近傍に変圧器装置Aを設け、主電気室Eから変圧器装置Aまで高圧送電し、変圧器装置Aで低圧に降圧して分電盤Bに送電する構成とし、変圧器装置Aは鋼製の箱体内に、高圧負荷開閉器、低圧開閉器を接続した高圧変圧器を収納し、箱体内に火災感知機、換気ファンを収納し、箱体の側面に給気口及び排気口を設け、これらに防火ダンパを設け、箱体は密閉構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造において、建築物や構造物の電気室以外の場所に防火対策を施した変圧器装置を設け、当該変圧器装置から各負荷機器に電力を供給する送電構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建築物内に確保された専用の電気室に変圧器は集中して設置され、当該電気室から各負荷機器へ低圧幹線ケーブルを使って電力が供給されている。特に、工場やショッピングモール等の大規模で大容量の電力が必要な施設では、主電気室に設置された特別高圧変圧器と、この特別高圧変圧器から、建物毎に設置された副電気室へ延ばされた高圧ケーブルと、前記副電気室に設置された高圧変圧器と、この高圧変圧器から各負荷機器へ延ばされた低圧幹線ケーブルによって、電力は供給されている。つまり、どの様な規模の建物であっても、高圧変圧器は電気室に設置されている。
【0003】
この様な高圧変圧器を有する変電設備は、消防法上「火を使う設備」の扱いであり、それ故、当該変電設備を設置する電気室は、専用の区画として建物側で防火対策が施されている。例えば、専用の空調・換気装置、火災感知機、排煙設備、消火設備などが設けられている。
【0004】
この様な中、大容量の電力を必要としない施設では、外部から受電し、各負荷機器へ電力供給するものとして受電設備がある。この受電設備としては、開閉器及びパワーヒューズを備えた開閉器盤と、変圧器ユニットと、遮断器を備えた配電盤とが1つのユニットとして構成されたものがある。
【特許文献1】特開2000−125424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記工場等の大規模需要家では、副電気室から各負荷機器への電力供給に使用されている低圧幹線ケーブルは、長い場合が多く、前記受電設備を使用している小規模施設でも、低圧幹線ケーブルを布設する場合が多い。その理由は、昔から、人間が出入りする建物内は、出来るだけ低電圧にして、万一、接触事故等が発生した場合であっても、人体への被害を軽減しようとするものであったと思われる。
【0006】
また、大規模施設でも小規模施設でも、負荷機器の数量が多いと、負荷機器毎に低圧幹線ケーブルを布設するため、本数が多くなる。また、負荷機器の種類によって、供給する電圧が異なるため、種々の低圧幹線ケーブルを布設する必要が生じる。このため、これらの低圧幹線ケーブルを載置して各負荷機器まで誘導するラックを設ける必要が生じ、そのためのスペースや手間・費用がかかっている。
【0007】
加えて、各負荷機器への電力供給に使用されている低圧幹線ケーブルが長い場合、この低圧幹線ケーブルは、高圧ケーブルと比べ、電圧降下による送電損失が大きく、この電圧降下を補償するために、高圧ケーブルより、断面積を格段に大きくする必要がある。さらに、この低圧幹線ケーブルは、銅製のものが多く、銅等の原材料が高騰の折には工事費が原材料のコストに左右されることがある。
【0008】
しかしながら、これまで、前記のような低圧幹線ケーブルの使用距離を短縮したり、本数を減少しようとすることは行われていない。
【0009】
そこで、この発明は、これらのことに鑑み、低圧幹線ケーブルの距離を短縮したり、低圧幹線ケーブルの本数を減らすために、変圧器装置を可能な限り負荷機器の近傍に設置すること、この変圧器装置としては、変電設備として専用区画を必要としない最小限の変電設備だけを鋼製の箱体の中に収納したものとすること等により前記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造において、前記負荷機器の近傍に変圧器装置を設け、前記電気室から前記変圧器装置まで高圧送電し、当該変圧器装置で低圧に降圧して前記負荷機器に送電する構成とし、前記変圧器装置は鋼製の箱体内に、一次側に高圧負荷開閉器、二次側に低圧開閉器又はヒューズを夫々接続した高圧変圧器を収納し、さらに、当該箱体内に火災感知機、換気ファンを収納し、当該箱体の任意の側面に給気口及び排気口を設け、これらに防火ダンパを設け、当該箱体は密閉構造とした電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造とした。
【0011】
請求項2の発明は、前記変圧器装置の箱体内に、当該箱体の側面に設けた前記給気口及び箱体内の前記低圧開閉器又はヒューズを取り囲む第一消音チャンバー、及び当該箱体の側面に設けた前記排気口を取り囲む第二消音チャンバーを夫々設け、前記第一消音チャンバーにはエアフィルタ、第二消音チャンバーには前記換気ファンを夫々設け、前記箱体外の空気を前記給気口から前記第一消音チャンバー及び前記エアフィルタを通して前記高圧変圧器及び前記高圧負荷開閉器の収納スペースに導入し、当該空気を前記換気ファン及び前記第二チャンバーを通して排気口から箱体外に導出する通風路を設けた請求項1に記載の電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造とした。
【0012】
請求項3の発明は、前記変圧器装置の箱体内の高圧負荷開閉器及び低圧開閉器又はヒューズへのケーブルの接続はプラグイン方式とした請求項1又は2の何れかに記載の電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造とした。
【0013】
請求項4の発明は、前記変圧器装置の箱体内で前記火災感知機が煙又は熱を感知した際、前記高圧負荷開閉器を開放し、また、前記給気口の防火ダンパ及び排気口の防火ダンパを夫々閉鎖する制御装置を設けた請求項1、2又は3の何れかに記載の電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造とした。
【0014】
請求項5の発明は、前記変圧器装置の箱体は、天井裏に、上方から吊り下げて設置する請求項1、2、3又は4の何れかに記載の電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造とした。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、2、3、4及び5の各発明によれば、変圧器装置として、最低限必要なものだけを、鋼製の箱体内にコンパクトに設置収納したので、例えば、工場等の大規模で大容量の電力が必要な施設において、建物毎に専用区画を必要とする副電気室を設置する必要が無い。よって、イニシャルコストを大きく減少させることが出来る。
【0016】
また、設置場所を選ばないので、電気的に最適な場所、即ち、負荷機器の近くに当該変圧器装置を設置することが出来る。それ故、負荷機器の直前まで高圧配線ケーブルで送電することが出来、低圧幹線ケーブルの使用量を極力少なくすることが出来る。よって、当該低圧幹線ケーブルを使用することにより発生する電圧降下による送電損失を大きく抑えることが出来、極めて効率よく電力供給が出来る。また、当該低圧幹線ケーブルのサイズの増大、ケーブルラックの設置等を避けることが出来る。
【0017】
さらには、前述の通り、この変圧器装置では、設置場所を選ばないので、将来、大規模改造があったとしても、容易に移設でき、設置場所の融通性に富む。また、銅製の低圧幹線ケーブルの使用量を減少させることが出来るので、銅等のケーブルの原材料の価格に工事費が影響を受けることが少なくなり、安定した工事費となり、信頼性が高まる。
【0018】
また、大規模でなく、副電気室を設けない施設の場合であっても、この変圧器装置を使用することにより、電気室において常用の高圧変圧器を設置しないので、条件が整えば、当該電気室を専用区画とする必要が無くなり、前記と同様の効果が得られる。
【0019】
また、この鋼製箱体において、万一、事故や火災が発生しても、この箱体が不燃材である鋼板から成ることに加えて、この箱体を密閉構造としたので、外部に被害を与えることはなく、また、機器から発生する騒音も外部に漏れない。
【0020】
請求項2の発明によれば、前記箱体内に消音チャンバーを二箇所設け、第一消音チャンバー内に前記給気口及び低圧開閉器等を設け、第二消音チャンバー内に前記換気ファンと前記排気口を設け、高圧開閉器、高圧負荷開閉器及び第一消音チャンバー内の低圧開閉器等を常に通風状態にして、冷却させることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、前記高圧負荷開閉器側及び低圧開閉器等側のケーブル接続はプラグイン方式としたので、当該変圧器装置に不具合が生じても当該変圧器装置を取り替える場合、容易に装置本体を取り外すことができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、箱体内において煙や熱が発生した場合、火災感知器がこれらを感知し、高圧負荷開閉器が開放され、給気口及び排気口の防火ダンパが閉鎖されるので、箱体内への電流が遮断され、かつ箱体内が密閉されて当該変圧器装置の周辺への延焼を防ぐことが出来る。万一、この様な事態となった場合は、当該変圧器装置を箱体ごと新しいものに取り替えればよい。従って、直ぐに電力供給は再開出来る。
【0023】
請求項5の発明によれば、前記鋼製箱体は、天井裏に、上方から吊り下げて設置することとしたので、電気室設置の様な専用区画はもちろん不要で、制限のある床面を占有することが無く、また、天井裏に設置するので、床面に設置するより、比較的自由に設置出来、負荷機器の近くの設置が行い易く、利便性が高いものである。また、人が接触することもなく、吊り下げ式なので、変圧器装置から発生する振動等も吸収することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明は、電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造において、前記負荷機器の近傍に変圧器装置を設け、前記電気室から前記変圧器装置まで高圧送電し、当該変圧器装置で低圧に降圧して前記負荷機器に送電する構成とし、前記変圧器装置は鋼製の箱体内に、一次側に高圧負荷開閉器、二次側に低圧開閉器又はヒューズを夫々接続した高圧変圧器を収納し、さらに、当該箱体内に火災感知機、換気ファンを収納し、当該箱体の任意の側面に給気口及び排気口を設け、これらに防火ダンパを設け、当該箱体は密閉構造とした。これにより、工場等の大規模で大容量の電力が必要な施設において、建物毎に専用区画を必要とする副電気室を設置する必要が無い。
【実施例1】
【0025】
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施例の変圧器装置を用いて分電盤に送電している状態を示す概念図である。図2は、従来の、変圧器を設置した電気室から分電盤に送電している状態を示す概念図である。前記図1において、この発明の変圧器装置Aを、負荷機器の中心に位置する分電盤Bの近くに設置し、主電気室Eから高圧ケーブル31によって、この変圧器装置Aに高圧送電し、この変圧器装置Aにおいて降圧し、近くの前記分電盤Bに低圧送電する構成とした。
【0026】
次に、この発明の実施例の変圧器装置Aと従来の設備とを実験して幹線ケーブルのサイズ(銅量を示す。)と送電損失を比較した。この発明の実施例として、大規模で大容量の電力を必要とし、電気室から負荷機器までの長い距離を有する工場等を想定し、図1に示すように、主電気室Eから高圧ケーブル31(200m)を使って、三相6,600Vの高圧電流を、副電気室に代えて設置した変圧器装置Aに送電し、その後、この変圧器装置Aから、低圧幹線ケーブル32によって、三相200Vの低圧電流を分電盤Bに送電した。負荷容量は、500kVAとした。この実施例における高圧ケーブル31のサイズ(断面積、以下同じ)は短絡容量から決定し、38mmとした。
【0027】
比較例として、図2に示すように、三相6,600Vで送電された高圧電流を、従来の電気室Fに設置した変圧器おいて、三相200Vの低圧電流に降圧し、この電気室から低圧幹線ケーブル32(200m)を使って、この三相200Vの低圧電流を分電盤Bに送電した。負荷容量は、500kVAとした。この比較例における低圧幹線ケーブル32の電圧降下は3%(6V)以下とした。
【0028】
この実験から得られた数値を以下の計算式に投入した。
計算式:ΔV=(30.8×L×I)/(1,000×A)
ΔV:電圧降下 L:亘長 I:電流 A:ケーブルのサイズ
実施例=(30.8×200m×43.74A)/(1,000×38mm
≒7.09V
比較例=(30.8×200m×1,444A)/(1,000×1,500mm
≒5.93V
【0029】
これらの数値を表1で示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1から、実施例の電流43.74Aは、従来例の電流1,444Aの約1/33であり、ケーブルのサイズは、実施例が38mm(高圧ケーブル31)、比較例が1,500mm(低圧幹線ケーブル32)であり、実施例のサイズは比較例のサイズの約1/40であった。また、電圧降下を示すと、実施例が7.09V(0.11%)、比較例が5.93V(2.97%)であり、降下率を比較すると実施例の数値は比較例の数値の約1/30であった。さらに、送電損失は、実施例が537W、比較例が14,830Wであり、実施例の数値は比較例の数値の約1/27であった。
【0032】
これらの結果、高圧電流(6,600V)で送電した場合、低圧電流(200V)で送電した場合と比べ、ケーブルのサイズ(銅量)は、約1/40になり、送電損失は、約1/27で済むことになる。
【0033】
さらに、負荷容量が小さい場合についても実験をし、比較した。前記の実験と同じ要領で、負荷容量を100kVAとした。その結果を表2に示す。
【0034】
【表2】



【0035】
表2から、実施例の電流8.75Aは、比較例の電流289Aの約1/33であり、ケーブルのサイズは、実施例が38mm(高圧ケーブル31)、比較例が325mm(低圧幹線ケーブル32)であり、実施例のサイズは比較例のサイズの約1/8であった。また、電圧降下を示すと、実施例が1.42V(0.02%)、比較例が5.48V(2.74%)であり、降下率を比較すると実施例の数値は比較例の数値の約1/130であった。さらに、送電損失は、実施例が22W、比較例が2,750Wであり、実施例の数値は従来例の数値の約1/125であった。
【0036】
これらの結果、高圧電流(6,600V)で送電した場合、低圧電流(200V)で送電した場合と比べ、ケーブルのサイズ(銅量)は、約1/8になり、送電損失は、約1/125で済むことになる。
以上の様に、高圧送電は低圧送電と比べ、使用する銅量が少なく、また、送電損失も少量であり、高圧送電は低圧送電に比べ有利であることが分かった。
【0037】
この様な結果、主電気室から副電気室へ、この副電気室から負荷機器へと言う順番で電力供給されている場合、この主電気室(特別高圧器)から副電気室(高圧変圧器)の間の高圧ケーブル長を長くし、副電気室(高圧変圧器)から負荷機器の間の低圧幹線ケーブル長を短くすることが、送電効率や費用の面からも有効であると思われる。
【0038】
次に、この発明の電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造における変圧器装置Aについて説明する。
図3は、この発明の実施例の変圧器装置の内部構造を示す平面図である。図4は、この発明の実施例の変圧器装置の内部構造を示す正面図である。図5は、この発明の実施例の変圧器装置の内部構造を示す側面図である。
【0039】
この発明の変圧器装置Aを収納する箱体1は、前記図3、図4、図5に示すように、鋼板からなる扁平で長細の直方体形状である。この箱体1内の底面2上に、モールドトランス3を設置する。このモールドトランス3の容量としては、最大で三相500kVA、単相300kVAとする。このモールドトランス3の一次側には後述の高圧負荷開閉器17を接続し、二次側には後述の低圧開閉器15が接続されている。
【0040】
この箱体1の図3における右側手前側の一区画において、二面を鍵型の板体10で区画して閉鎖し、この区画した底面2及び前記二面の板体10を除く全ての面に消音材を貼り付けて第一消音チャンバー11を形成する。また、この箱体1の底面2に給気口12を設け(図3及び図6参照)、この給気口12に防火ダンパ13を設け、前記二面の板体10のうちの一面の板体10にエアフィルタ14を設けている。さらに、この第一消音チャンバー11内に低圧開閉器15を設置して、この消音チャンバー11を低圧開閉器室とし、この低圧開閉器室を形成する箱体1の一側面には、この低圧開閉器15に接続した低圧プラグインコネクタ16を外側に突出させて4個並設する。
【0041】
また、この箱体1の図3における左側の一画部を板体4によって区画して閉鎖し、この区画した左側部の底面2及び前記板体4を除く内面の全てに消音材5を貼り付けて第二消音チャンバー6を形成する。また、この箱体1の底面2に排気口7を設け(図3及び図6参照)、この排気口7に防火ダンパ8を設け、また、前記板体4に換気ファン9を設ける。また、この換気ファン9は前記モールドトランス3の二次側から電源を取っている。
【0042】
さらに、この箱体1の右側の、前記低圧プラグインコネクタ16を設けた側と反対側の内側面に沿ってヒューズ付きの高圧負荷開閉器17を設置し、この内側面のやや上側には、高圧負荷開閉器17に接続した高圧プラグインコネクタ18を3個外側に突出させて並設する。さらに、この高圧負荷開閉器17の右側には負荷開閉器操作器19を設け、この位置の天井部分には煙、熱を感知する火災感知器20を設ける。また、この箱体1内の露出した面には、基本的に消音材又は断熱材を貼り付け、さらに、箱体1の外面全面は電気的にシールドしておく。
これらの様にして、この発明の実施例の変圧器装置Aを形成する。
【0043】
次に、この鋼製の箱体1から成る変圧器装置Aを施設内に取り付ける。図6は、この発明の実施例の変圧器装置Aを施設内の天井裏に設置している状態を示す正面図である。図7は、この発明の実施例の変圧器装置Aを天井裏に設置している状態を示す側面図である。
【0044】
これらの図6及び図7に示す様に、この変圧器装置Aを分電盤B(図示省略)の近くの天井裏に設置する。この変圧器装置Aの天井裏への設置に当たっては、建物躯体Cに支持され、当該天井裏で水平に渡されている支持鋼材(建築梁)Dに、この変圧器装置Aを吊り下げて支持する。
【0045】
まず、扁平な角材を2本、一定幅を開けて平行に設けて箱体の取り付け台座21を形成する。この取り付け台座21の上面に変圧器装置Aを載置するが、実際、載置する際には。この取り付け台座21と変圧器装置Aの間に、複数個の防振装置22及び四角形に形成したチャネル材23を載置して、これらの上に変圧器装置Aを載置する。
【0046】
棒状の吊り下げ部材24を4本前記支持鋼材Dから吊り下げ、これらの4本の各吊り下げ部材24の下端の夫々の係止部24aにおいて、前記取り付け台座21の2本の角材によって形成される四方を係止する。また、隣接する各吊り下げ部材24の間には、前記支持鋼材Dから斜行してこの取り付け台座21を支持する振止め部材25を設けている。この様にして、この変圧器装置Aを天井裏に取り付ける。
【0047】
また、この変圧器装置Aの底面2と天井板26との間には一定の距離を設けており、この変圧器装置Aの底面2に設けた給気口12及び排気口7と、天井に予め設けた給気口27及び排気口28との間をダクト29、29で夫々連結し、天井板26の給気口27及び排気口28にはガラリ30を設けている。
【0048】
また、前記取り付け台座21は、予め建築工事で、主要通路の分電盤近くの上部構造体に設けておくと便利である。この時、この取り付け台座21の長手方向の一側の位置は、設置される変圧器装置Aの高圧プラグインケーブルのプラグインホールの位置と重なるようにしておく。また、取り付け、取り外しを容易にするために、取り付け台座21に電動チェインブロック用のフックを設けておくと便利である(図示省略)。
【0049】
さらに、この変圧器装置A内で火災が発生した場合、図8に示すように、当該火災による煙又は熱を感知した火災感知器20から火災信号が発せられ、施設内の火災報知機に送信する。これにより、前記火災報知機から制御器(図示省略)を経由して高圧負荷開閉器17への開放信号及び防火ダンパ8、13の閉鎖信号が発せられ、高圧負荷開閉器17は開放され、防火ダンパ8、13は閉鎖される。この様にして当該変圧器装置Aへの電源供給を止め、かつ当該変圧器装置A内を密閉状態にし、この変圧器装置A外へ火災等の被害を及ぼさないようになっている。その際、当該変圧器装置Aへの電源供給が停止されると前記換気ファン9への電力供給も停止される。また、これと共に、高圧負荷開閉器17にはヒューズが設けられており、熱によりこのヒューズが溶融した場合も、高圧負荷開閉器17の開放は前記制御器により自動的に行われる。ここでのヒューズとしては、大容量のパワーヒューズを用いている。また、この箱体1の外面前面を電気的にシールドしているので、この箱体1は電気的に隔離された状態にあり、安全である。
【0050】
また、この変圧器装置Aをリース品とすることで、大幅な工事費のコスト圧縮とすることが出来る。さらに、工場などで、生産ラインが全く別のものとなった場合でも、この変圧器装置Aによれば、電源の対応は可能と考えられる。
【0051】
前記実施例においては、大規模で大容量の電力を必要とし、電気室から負荷機器までの長い距離を有する工場等において設けられている主電気室と副電気室との場合を想定して説明をしているが、この変圧器装置Aを使用する施設としては、この様な大規模で大容量の電力が必要な施設に限るものではなく、この変圧器装置Aを使用して本願が目的とする効果を奏することが出来る施設又は場所であるなら、規模に拘るものではなく、どこでも良い。
【0052】
また、この様な大規模ではない電気室から直接分電盤に送電されている設備にこの変圧器装置Aを使用する場合、この電気室には常用の高圧変圧器をせず、この電気室には必要最低限の装置のみの設置とする。例えば、特別高圧二次受電盤、高圧フィーダ盤4回路、保安・非常用最小限の変圧器等である。
【0053】
前記実施例においては、使用する変圧器をモールドトランス3としたが、モールドでなくても、乾式のものでもよく、また、規格としても、最大で三相500kVA、単相300kVAとしたが、これらに限定するものではない。また、変圧器装置Aを天井裏に設置したが、設置する場所としては、天井裏に限定するものではなく、分電盤Bの近くなら、他の場所でも良い。さらに、第一消音チャンバー11内に低圧開閉器15を設置しているが、この低圧開閉器15の代わりにヒューズを取り付けても良い。
【0054】
また、この変圧器装置Aの給気口12及び排気口7と、天井板26に設けた給気口27及び排気口28との間をダクト29で連結し、天井板26の給気口27及び排気口28にはガラリ30を設けているが、天井内の温度、湿度等の環境が良好な場合、例えば、天井排気方式の空調システムの場合、ダクト29、ガラリ30を省略した天井内で、給気及び排気を行うようにしても良い。さらに、これらの給気及び排気は建物の外部から直接行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施例の変圧器装置を用いて分電盤に送電している状態を示す概念図である。
【図2】従来の、変圧器を設置した電気室から分電盤に送電している状態を示す概念図である。
【図3】この発明の実施例の変圧器装置の内部構造を示す平面図である。
【図4】この発明の実施例の変圧器装置の内部構造を示す正面図である。
【図5】この発明の実施例の変圧器装置の内部構造を示す側面図である。
【図6】この発明の実施例の変圧器装置を天井裏に設置している状態を示す正面図である。
【図7】この発明の実施例の変圧器装置を天井裏に設置している状態を示す側面図である。
【図8】この発明の実施例の変圧器装置内において火災が発生し、火災報知機の信号により、高圧負荷開閉器を開放し、防火ダンパを閉鎖する各種信号が発せられている状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0056】
A 変圧器装置 B 分電盤、
C 建物躯体 D 支持鋼材
E 副電気室 F 従来の電気室
1 箱体 2 底面
3 モールドトランス 4 板体
5 消音材 6 第二消音チャンバー
7 排気口 8 防火ダンパ
9 喚起ファン 10 板体
11 第一消音チャンバー 12 給気口
13 防火ダンパ 14 エアフィルタ
15 低圧開閉器 16 低圧プラグインコネクタ
17 高圧負荷開閉器 18 高圧プラグインコネクタ
19 負荷開閉器操作器 20 火災感知器
21 取り付け台 22 防振装置
23 チャネル材 24 吊り下げ部材
25 振止め部材 26 天井板
27 給気口 28 排気口
29 ダクト 30 ガラリ
31 高圧ケーブル 32 低圧幹線ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造において、
前記負荷機器の近傍に変圧器装置を設け、前記電気室から前記変圧器装置まで高圧送電し、当該変圧器装置で低圧に降圧して前記負荷機器に送電する構成とし、
前記変圧器装置は鋼製の箱体内に、一次側に高圧負荷開閉器、二次側に低圧開閉器又はヒューズを夫々接続した高圧変圧器を収納し、
さらに、当該箱体内に火災感知機、換気ファンを収納し、当該箱体の任意の側面に給気口及び排気口を設け、これらに防火ダンパを設け、当該箱体は密閉構造としたことを特徴とする、電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造。
【請求項2】
前記変圧器装置の箱体内に、
当該箱体の側面に設けた前記給気口及び箱体内の前記低圧開閉器又はヒューズを取り囲む第一消音チャンバー、及び当該箱体の側面に設けた前記排気口を取り囲む第二消音チャンバーを夫々設け、
前記第一消音チャンバーにはエアフィルタ、第二消音チャンバーには前記換気ファンを夫々設け、
前記箱体外の空気を前記給気口から前記第一消音チャンバー及び前記エアフィルタを通して前記高圧変圧器及び前記高圧負荷開閉器の収納スペースに導入し、当該空気を前記換気ファン及び前記第二チャンバーを通して排気口から箱体外に導出する通風路を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造。
【請求項3】
前記変圧器装置の箱体内の高圧負荷開閉器及び低圧開閉器又はヒューズへのケーブルの接続はプラグイン方式としたことを特徴とする、請求項1又は2の何れかに記載の電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造。
【請求項4】
前記変圧器装置の箱体内で前記火災感知機が煙又は熱を感知した際、前記高圧負荷開閉器を開放し、また、前記給気口の防火ダンパ及び排気口の防火ダンパを夫々閉鎖する制御装置を設けたことを特徴とする、請求項1、2又は3の何れかに記載の電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造。
【請求項5】
前記変圧器装置の箱体は、天井裏に、上方から吊り下げて設置することを特徴とする、請求項1、2、3又は4の何れかに記載の電気室から負荷機器まで長い距離を有する施設の送電構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−245430(P2008−245430A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82554(P2007−82554)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【Fターム(参考)】