説明

電気式床暖房システム

【課題】電力使用量の上限が設定されている住宅に電気式床暖房を設置する際に、その上限を超えることなく快適に運転することを可能とし、かつより広い範囲に床暖房構造を設置することを可能とする。
【解決手段】電気式床暖房システムSは、一定量以上の電流が流れたときにアラームを出力する機能を備えた分電盤10と、電圧制御機能付きコントローラ20と、熱源が線ヒータである床暖房具30とを備える。電圧制御機能付きコントローラ20は、床暖房具30の暖房立ち上げ時は例えば200Vの高い電圧で線ヒータに通電し、立ち上がり後の定常ON−OFF運転時には、160Vのように暖房立ち上げ時よりも低い電圧で線ヒータへの通電を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気式床暖房システムに関し、特に、電力使用量の上限が設定されている住宅において、その上限を超えることなく快適に床暖房を使用できるようにした電気式床暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
床暖房システムとして温水式のものと電気式のものが知られている。温水式のものは、床下地上に温水が循環するパイプが敷設され、その上に木質系の床材が配置されるとともに、ボイラなどで加熱された温水が熱源として温水パイプに供給される。電気式のものは、発熱源として線ヒータあるいはPTCヒータが用いられ、それを床下地の上に配置した後、その上から木質系床材を置くようにするか、あるいはヒータを一体に組み込んだ木質系床材を電気的に接続しながら床下地の上に置くようにされる。ヒータには、主に商用電源からの電力が、室内に配置した分電盤およびコントローラなどを介して供給される。電気式床暖房システムの構築や使用環境を快適なものとするために、特許文献1あるいは特許文献2に記載のような種々の提案がなされている。
【0003】
ところで、一般の住宅では、電力会社との間で電力使用量についての契約が交わされており、それに応じたブレーカを備えた分電盤が商用電源からの取り入れ口に配置されている。電力使用量があらかじめ設定した上限を超えると、ブレーカが落ちて電気の流れを遮断し、安全性が確保される。近年、一般家庭へのパソコンなどの普及により、使用している途中で電源が落ちるのを回避することが求められるようになり、それに答えるものとして、ブレーカが作動する直前の容量となった時点で、何らかのアラームを出力する機能を備えた分電盤が使用されるようになっている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
電気式床暖房システムを導入する場合、電力使用量の上限が設定されている住宅において安定した運転を行うために、前記のように一定量以上の電流が流れたときにアラームを出力する機能を備えた分電盤とともに用いることが望ましい。電力の総使用量が上限値に近づいたとき、分電盤からアラームが出力されるので、使用者は、他の電力使用機器の使用を中止して電力使用量を下げることにより、床暖房を継続して使用することが可能となる。なお、熱源としてPTCヒータを用いる場合には、ヒータの昇温によりヒータ自身の抵抗値が上がることで、電流値が下がり電力量を抑えることができる。しかし、熱源が線ヒータの場合には、ヒータ自身での電力量を抑えることはできないので、上記のようなアラーム機能付きの分電盤を用いることは、特に有効となる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−115890号公報
【特許文献2】特開平7−248122号公報
【特許文献3】特開平6−20582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
床暖房の場合、部屋が暖まるまでの立ち上がり運転時は多くのエネルギーを必要とするが、暖まった後の定常運転時には比較的少ないエネルギーで快適な暖房効果を得ることができる。熱源が線ヒータである電気式床暖房システムの従来の運転方法では、スイッチを入れてから一定時間(すなわち部屋が所要の温度に暖まるまでの立ち上がり時)は連続運転を行い、その後の定常運転時には、コントローラで設定された時間に合わせて、ON−OFFを繰り返す運転を採用している。
【0007】
上記の運転方法において、長時間運転した場合の平均した単位時間当たりの電力量は立ち上がり時が大きく、定常運転時は少なくなるが、瞬間での使用電力量は同じであり、電気式床暖房システムとしては、その設定出力を立ち上げ時に必要とされる値に合わせる必要がある。そのために、他の電化製品と同時使用した場合に、分電盤のブレーカが作動して電気の供給が停止してしまうような事態が生じるのを回避するために、床暖房面積を小さくして最大使用電力量を抑制気味に設計するのが通常となっている。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、立ち上げ時の暖房能力は従来通りに維持しながら、従来よりも広い床暖房面積をとることができ、かつ安定した運転環境を長時間にわたって維持することのできる、改良された電気式床暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による電気式床暖房システムは、一定量以上の電流が流れたときにアラームを出力する機能を備えた分電盤と、電圧制御機能付きコントローラと、熱源が線ヒータである床暖房具とを少なくとも備えており、分電盤の1つの出力側端子が電圧制御機能付きコントローラに接続しており、電圧制御機能付きコントローラの出力側端子が床暖房具の線ヒータに接続しており、かつ、電圧制御機能付きコントローラは床暖房具の暖房立ち上がり電圧よりも低い電圧で立ち上がり後の定常運転を行うよう床暖房具の線ヒータへの通電量を制御するようになっていることを特徴とする。
【0010】
本発明において、「一定量以上の電流が流れたときにアラームを出力する機能を備えた分電盤」(以下、アラーム付き分電盤ということがある)および「電圧制御機能付きコントローラ」はともに従来知られたものであり、それ自体に新規なものはなく、そのまま使用することができる。「熱源が線ヒータである床暖房具」も従来からの電気式床暖房システムで用いられているものであってよく、床下地の上にあらかじめ所定のパターンで配置した線ヒータを上から木質系床材で覆うようにしたものや、線ヒータを埋め込んだ木質系床材を電気的に接続しながら床下地の上に敷き詰めたものなどが含まれる。
【0011】
本発明による電気式床暖房システムでは、アラーム付き分電盤を備えており、電力の総使用量が上限に近づいたときに分電盤からのアラームにより、使用者はそれを知ることができ、他の電化製品の使用を停止するなど、適宜の対処策を取ることができる。そのために、床暖房の立ち上げ時に100%の電圧を供給することができ、暖房立ち上がり時に快適な昇温環境を得ることができる。事情によっては、電圧制御機能付きコントローラを制御して暖房立ち上げ時の電圧を低くして運転することももちろん可能である。
【0012】
暖房立ち上げ時の運転が終了した時点で、電圧制御機能付きコントローラを制御し、暖房立ち上がり電圧よりも低い電圧(例えば80%電圧)で、立ち上がり後の定常運転を行うように床暖房具の線ヒータへの通電量を制御する。線ヒータの抵抗値は一定であり、電圧を下げることにより、定常運転時の使用電力量は低下する。低下した分の電力を床暖房以外の電化製品に回すことができるとともに、床暖房の出力の上限が定常状態の電力量で決まるので、従来よりも広い面積に床暖房具を設置することも可能となる。
【0013】
床暖房具の暖房立ち上がり状態の終了は、種々の方法で判定することができる。例えば、床暖房を設置している部屋の温度であってもよく、床温や床暖房具そのものの温度であってもよい。床暖房の設置環境条件下で試験を行い、それらの温度がどのような温度になったときに、立ち上がり運転が終了したものとするか、をあらかじめ設定しておく。そして、あらかじめ設定した温度に室温あるいは床温が達した時点に、電圧制御機能付きコントローラは暖房立ち上がり電圧から定常運転電圧に自動的に切り替わるようにしておく。
【0014】
室温や床温を検知して電圧を切り替える方法は、高い精度での制御が得られることが期待できるが、システムとして複雑となる。より簡素化したものとして、床暖房具の暖房立ち上がり状態の終了を、通電時間で判定するようにしてもよい。例えば、スイッチを入れてから室温が所定温度となるまでの時間を、実際に床暖房が設置された部屋において測定しておき、その時間を電圧制御機能付きコントローラに備えたタイマーに読み込ませるようにしてもよい。
【0015】
定常運転電圧をどの程度とするかは、当該電気式床暖房システムの設置環境によって適宜選択すればよいが、例えば、100%出力の電圧が200Vの場合に、その80%程度の電圧、すなわち160V程度に設定することが実際的であり、その場合、従来の方法による場合よりも20%程度広い面積に床暖房具を敷設しても、快適な運転を継続することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力使用量の上限が設定されている住宅に電気式床暖房を設置する際に、その上限を超えることなく快適に運転することが可能となり、かつより広い範囲に床暖房構造を設置することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明による電気式床暖房システムの一例を、従来の電気式床暖房システムと比較しながら説明する。図1は、電気式床暖房システムの一例を模式的に示す回路図であり、図2は、図1に対応するようにして描いた従来の手法による電気式床暖房システムの回路図である。
【0018】
図1に示す電気式床暖房システムSおいて、10は従来知られたアラーム付き分電盤であり、複数個の出力側端子11・・を備える。それらには、コンセント、照明機器、エアコンなどが接続しており、そのうちの一つには、電圧制御機能付きコントローラ20が接続している。電圧制御機能付きコントローラ20も従来知られたものであり、電圧をトランスで制御する形態のものでもよく、サイリスタで制御する形態のものであってもよい。電圧制御機能付きコントローラ20の出力側には、線ヒータを備えた床暖房具30が接続している。
【0019】
上記電気式床暖房システムSの運転状況を具体例に則して説明する。アラーム付き分電盤10は主幹40Aのものとし、床暖房以外で、すなわち、コンセント、照明機器あるいはエアコン側で、31Aの電気を使用していると仮定する。電圧制御機能付きコントローラ20は、床暖房の立ち上げ電圧が200V、定常運転電圧が160Vにセットされており、床暖房具30の線ヒータ抵抗は20Ωとする。
【0020】
この前提下で床暖房のスイッチを入れる。電気ヒータ側に200V÷20Ω=10Aの電流が流れ、他に31Aの電気を使用していることから、トータルの電流量は41Aとなり、アラーム付き分電盤10はアラームを発する。使用者は他の電気使用機器のスイッチを切り、トータルの電流量を40A以下として、床暖房の立ち上がりの連続運転を行う。この状態での、床暖房側の使用電流は10A、使用電力量は200V×10A=2000Wとなる。
【0021】
経過時間あるいは温度などで設定される所要の立ち上がり条件が満足した時点で、電圧制御機能付きコントローラ20は定常運転に切り替わる。ここでは、160VのON−OFF運転とする。それにより、定常運転時での床暖房側の使用電流は160V÷20Ω=8A、使用電力量は200V×8A=1600Wとなるので、定常運転での使用電力量を20%カットすることができる。さらに、床暖房側で使用する電流は8Aであり、先に切っておいて電気機器のスイッチを入れても、アラーム付き分電盤10を流れるトータル電流は、31A+8A=39A<40A、となり、すべての電気機器を支障なく使用することができる。
【0022】
図2に示す従来の手法による電気式床暖房システムSAでは、コントローラ20Aが通電制御型コントローラであり、電圧制御機構を備えない。他の条件は、図1に示した電気式床暖房システムSと同じとして、以下考察する。ここでも、立ち上がり運転開始時には41Aの電流が流れるので、使用者は、アラーム付き分電盤10からのアラームを受けて、他の電化製品のスイッチを切り、トータルの電流量を40A以下として、床暖房の立ち上がりの連続運転を行う。床暖房側の使用電流は10A、使用電力量は200V×10A=2000Wである。
【0023】
立ち上がり後、定常運転にはいるが、ここでは、200VのON−OFF運転であり、定常運転時での床暖房側の使用電流は200V÷20Ω=10A、使用電力量は200V×10A=2000Wとなる。すなわち、定常運転にはいっても使用電力量は立ち上げ時と同じ、すなわち、瞬間での電力量は変わらない。そのために、定常運転に入り、先に切っておいて電気機器のスイッチを入れると、床暖房具30に通電されたときに容量がオーバー(31A+10A=41A>40A)してアラーム付き分電盤10からアラームが出力されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による電気式床暖房システムの一例を模式的に示す回路図。
【図2】従来の手法による電気式床暖房システムにおける図1に対応する回路図。
【符号の説明】
【0025】
S,SA…電気式床暖房システム、10…一定量以上の電流が流れたときにアラームを出力する機能を備えた分電盤(アラーム付き分電盤)、11…出力側端子、20…電圧制御機能付きコントローラ、30…線ヒータを備えた床暖房具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式床暖房システムであって、一定量以上の電流が流れたときにアラームを出力する機能を備えた分電盤と、電圧制御機能付きコントローラと、熱源が線ヒータである床暖房具とを少なくとも備えており、分電盤の1つの出力側端子が電圧制御機能付きコントローラに接続しており、電圧制御機能付きコントローラの出力側端子が床暖房具の線ヒータに接続しており、かつ、電圧制御機能付きコントローラは床暖房具の暖房立ち上がり電圧よりも低い電圧で立ち上がり後の定常運転を行うよう床暖房具の線ヒータへの通電量を制御するようになっていることを特徴とする電気式床暖房システム。
【請求項2】
床暖房具の暖房立ち上がり状態の終了を床温度で判定することとし、あらかじめ設定した温度に床温が達した時点に、電圧制御機能付きコントローラは暖房立ち上がり電圧から定常運転電圧に自動的に切り替わるようにされていることを特徴とする請求項1に記載の電気式床暖房システム。
【請求項3】
床暖房具の暖房立ち上がり状態の終了を通電時間で判定することとし、あらかじめ設定した時間が経過した時点で、電圧制御機能付きコントローラは暖房立ち上がり電圧から定常運転電圧に自動的に切り替わるようにされていることを特徴とする請求項1に記載の電気式床暖房システム。
【請求項4】
暖房立ち上がり電圧が200Vであり、定常運転電圧が160Vであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気式床暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−234200(P2006−234200A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45510(P2005−45510)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】