説明

電気式床暖房システム

【課題】電気式床暖房システムにおいて、長時間通電を継続したときに起こりがちな床表面温度の異常上昇を通電率を下げることにより阻止すると共に、通電率低減状態での運転時に、使用者が床暖房レベルを低い方に変更したときに、使用者の意図に反して床温度が上昇するのを防止する。
【解決手段】定常運転モードでの運転が4時間、8時間と長時間にわたり継続するときに、所定時間経過した時点で、通電率を自動的に5%あるいは10%程度低減するように、コントローラ20の制御回路を構築する。また、通電率が自動的に低減されて運転している状況下において、使用者がコントローラ20を操作して予め選択されている通電率よりも低い通電率を選択したときに、選択した通電率が運転中の通電率よりも高いまたは等しい通電率の場合には、選択した通電率への通電率の変更を行わない手段をコントローラ10に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコード状電気ヒータを発熱源に持つ電気式床暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発熱源としてコード状電気ヒータを持つ電気式床暖房システムは知られている。コード状電気ヒータを床下地の上に配設した後にその上から木質系床材を置くか、あるいはコード状電気ヒータを一体に組み込んだ木質系床材を電気的に接続しながら床下地の上に置くことにより、電気式床暖房システムとされる。コード状電気ヒータには主に商用電源からの電力がコントローラを介して供給される。コントローラは、加熱エリアの特定、通電の開始と停止、定常運転時での床温度レベル設定、異常検知などの機能が備えられる(特許文献1、特許文献2など参照)。また、ヒータへの電力供給の制御を、比較制御手段により温度センサにより検出される周囲温度に応じた通電率制御で行うようにした床暖房等の制御装置も提案されている(特許文献3など参照)。
【0003】
上記の電気式床暖房システムにおいて、床温度のレベルの設定はコード状電気ヒータへの通電率を制御することによって行われる。そのために、コントローラは、通常、定常運転時におけるコード状電気ヒータへの通電率を選択する通電率選択手段と、選択された通電率に対応する目盛りを表示する目盛り表示手段とを備える。使用者は、使用開始時にコントローラの電源スイッチをONにし、通電率選択手段を操作して、定常運転モードでの希望する設定温度レベルに対応する通電率を選択する。選択した通電率に対応した目盛り(例えばM10〜M1など)が目盛り選択手段に表示される。
【0004】
電源スイッチONにより、100%通電率での立ち上げ運転モードが例えば30分程度継続し、その後、選択した通電率(ステップMi)での定常運転モードに切り替わる。床表面温度は設定温度レベルとなり、それ以降は、その温度が維持される。特許文献3に記載のように、温度センサにより検出される周囲温度に応じて通電率を制御するものでは、外気温度の変化に対応して、床表面温度を調整することもできる。
【0005】
【特許文献1】特開平7−248122号公報
【特許文献2】特開平10−185222号公報
【特許文献3】特開平5−203168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発熱源としてコード状電気ヒータを用い、床表面温度の制御方式として通電率制御方式を採用した電気式床暖房システムの場合、選択した設定温度レベルに床表面温度が達した後は、その温度が維持される。しかし、設定温度レベルが高く通電率100%近傍での定常運転が継続する場合に、特に外気温度に変化のない状態で、4〜10時間程度の長時間にわたる運転を行うと、設定温度よりも10℃程度高い温度に床表面温度が上昇することがある。
【0007】
床暖房の一般的な床表面温度は高くても27℃〜30℃前後といわれており、前記したような温度上昇が起こると、床表面温度は40℃前後という高い温度となる恐れがある。そのような温度環境は、床暖房の快適性を損なうと共に熱閉塞現象による低温火傷を引き起こす原因ともなりかねない。もちろん、電気式床暖房システムにはサーモスタットが過昇温防止手段として設けてあり、システムの安全性は確保されているが、通常、サーモスタットの作動温度は42〜50℃程度に設定されていることが多く、サーモスタットによってこの現象を回避することはできない。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、発熱源としてコード状電気ヒータを用い、床表面温度の制御方式として通電率制御方式を採用した電気式床暖房システムにおいて、外気温度に変化がない環境下で、通電率100%近傍での定常運転が長時間継続する場合であっても、予め選択した設定温度レベルを大きく超えて床表面温度が上昇するのを回避できるようにした電気式床暖房システムを提供することを目的とする。
【0009】
さらに本発明は、前記のように予め選択した設定温度レベルを大きく超えて床表面温度が上昇しないようにした運転を継続中に、使用者が床暖房レベルを低い方に変更しようとする場合、使用者の意図を確実に運転に反映できるようにした電気式床暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による電気式床暖房システムは、発熱源であるコード状電気ヒータと、定常運転時におけるコード状電気ヒータへの通電率を選択する通電率選択手段と、選択された通電率に対応する目盛りを表示する目盛り表示手段とを少なくとも備えたコントローラと、を少なくとも含む電気式床暖房システムであって、前記コントローラは、さらに、コード状電気ヒータへ通電を開始した後の経過時間を監視するタイマー手段と、タイマー手段で予め設定した時間tが経過したときに、通電率を自動的に所定値ΔPxだけ低減する通電率低減手段と、通電率が自動的に低減されて運転している状況下において、使用者が通電率選択手段を操作して予め選択されている通電率よりも低い通電率を選択したときに、選択した通電率が運転中の通電率よりも高いまたは等しい通電率の場合には、選択した通電率への通電率の変更を行わない手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明による電気式床暖房システムは、コントローラは上記の通電率低減手段を備えており、使用者が通電率選択手段を操作して予め所定の通電率Piを選択しておくと、その通電率での定常運転が継続する。通電開始後に所定時間tの通電が継続すると、自動的に予め設定した差分ΔPxだけ通電率が低減して、通電率Pa(=Pi−ΔPx)での運転を継続する。そのために、電気式床暖房システムが外気温度に変化のない環境下に置かれ、しかも予め選択した通電率Piが100%近傍での定常運転が長時間継続するときであっても、床表面温度が当初選択した設定温度レベル以上(すなわち、通電率Piに相当する床暖房温度以上)になるのを効果的に回避することができる。結果として、長時間の継続運転を行っても、床表面温度を一定の温度帯に維持することが可能となり、床暖房の快適性が損なわれることはなく、熱閉塞現象による低温火傷等を生じさせることもない。また、通電率を低減させることは、結果として不必要な電力使用を回避することとなり、消費電力が低減して省エネルギー効果ももたらされる。
【0012】
前記通電率Pa(=Pi−ΔPx)での運転を継続中、すなわち、通電率が自動的にΔPxだけ低減して運転されている状況下において、外気温の変化などにより、使用者が通電率選択手段を操作して前に選択した通電率Piよりも低い通電率Pbを選択することが起こり得る。そのときに、選択された通電率Pbが、現在運転中の通電率Paよりも小さな値であるときは、床暖房の温度レベルは低い方に変化することとなり問題はない。
【0013】
しかし、前記自動的に低減する通電率の差分ΔPxの値の決め方や、時間t経過による通電率差分ΔPxの低減が連続して複数回生じるような場合に、使用者によって新たに選択された通電率Pbが、現在運転中の通電率Paよりも大きな値となることが起こり得る。その場合、使用者は床温度が今よりも低い温度となるような通電率を選択したにもかかわらず、床温度が上昇してしまい、使用者は不快感を持つと共に、システムの故障を感じさせる。
【0014】
本発明によるコントローラは、自動的に低減した通電率で運転されている状況下において、使用者が通電率選択手段を操作して予め選択されている通電率Piよりも低い通電率Pbを選択したときに、選択した通電率Pbがそのとき運転中の通電率Paよりも高いかまたは等しい通電率の場合には、選択した通電率Pbへの通電率の変更を行わない手段を備えているので、使用者が現在の運転状態よりも低い床温度レベルを選択したにもかかわらず、床温度が上昇してしまうという、前記した事態が生じるのを回避することができる。
【0015】
本発明において、通電率選択手段に特に制限はないが、通電率の差分がΔPyであるn段階の目盛りからなる温度設定テーブルと、温度設定テーブルから定常運転時でのコード状電気ヒータへの通電率に対応した目盛りを選択する目盛り選択手段とを備える通電率選択手段であることは好ましい。
【0016】
その際に、温度設定テーブルに設定する1目盛り毎の通電率差分ΔPyとタイマー手段で予め設定した時間tが経過したときに自動的に低減する通電率差分ΔPxは、異なる値であってもよいが、好ましくは、両者は等しい値とされる。また、所定時間tが経過したとき自動的に差分ΔPxだけ通電率が低減し、以降その状態が継続するようにしてもよく、所定時間tが経過して差分ΔPxだけ通電率が低減し、その時点からさらに所定時間tが経過したときに再度差分ΔPxだけ通電率が低減するというパターンを繰り返すように設定してもよい。
【0017】
前記通電率の差分ΔPyと差分ΔPxが等しい値とされている場合であって、しかも、多段階にわたる差分ΔPxの通電率自動低減が行われる設定の場合に、例えば、使用者が目盛りM10(例えば通電率Pi=100%)を選択して運転を開始し、時間tが経過して通電率Pt1が100−ΔPx(%)となり、さらに時間tが経過して通電率Pt2が100−2ΔPx(%)となったとする。ΔPy=ΔPxなので、通電率Pt1は温度設定テーブルでの目盛りM9の通電率に相当し、通電率Pt2は温度設定テーブルでの目盛りM8の通電率に相当する。この場合、相当する目盛りM(M9またはM8)をコントローラの表示手段に表示すると、使用者は、自分で目盛りを変更した覚えがないのに当初と異なった目盛りが表示されることから、コントローラの不具合を感じ取る恐れがある。従って、自動的に通電率が低減したときの通電率に対応する目盛り表示は行わないようにすることが好ましい。
【0018】
通電開始時から通電率自動低減開始までの時間tをどの程度とするか、および通電率低減手段に設定する通電率低減差分ΔPxをどの程度にするかは、当該床暖房の使用条件や使用環境に応じて決められるが、好ましくは、外気温度が大きく変化しない環境下において通電率低減前と比較して通電率低減後の床表面温度の温度帯が低下しない範囲で設定される。
【0019】
例えば、通電開始時から通電率自動低減開始までの設定時間tは、投入後4〜10時間の範囲で設定することが通常の床暖房の使用態様から判断して実際的である。4時間よりも短い時間では、電気式床暖房システムが設置されている環境によっては、床表面温度が設定した温度レベルに達していない段階で、通電率が強制的に低減することが起こり得、床表面温度が低下して、使用者に不快感を与える。前記差分ΔPxは通電開始時に設定された通電率Piの5〜15%程度であることが望ましい。これより大きな値で低減させると、外気温度が大きく変化しない環境下であっても、通電率低減前と比較して通電率低減後の床表面温度の温度帯が、使用者が意識する程度に低下してしまう恐れがある。
【0020】
前記したように、通電率低減回数は一回であってもよい。その場合、設定時間t(例えば8時間)を経過した後に、通電開始時に設定された通電率Piから例えば10%あるいは15%低減し、90%あるいは85%の通電率で定常運転が継続する。しかし、このように一度に通電率を10%あるいは15%という大きな値ΔPxで低減させると、一時的に床表面温度の変化が大きくなり、使用者に不快感を与えることが考えられる。
【0021】
それを回避するために、好ましくは、通電率制御手段におけるタイマー手段は、同じまたは異なる間隔の設定時間(t1,t2,,tn)を経時的に連続して多段に設定できるようにされる。この場合には、例えば、通電開始後4時間(t1)を経過したとき、通電開始時に設定された通電率の5%(ΔPx1)を低減し、さらに4時間経過した後(通電開始後8時間を経過した後)(t2)は、さらに5%(ΔPx2)低減するように設定する。このように段階を追って通電率を低減させることにより、各段階での床表面温度の変化を小さくすることができ、使用者が不快感を持つことは解消される。
【0022】
本発明による電気式床暖房システムにおいて、コントローラに、通電開始時の通電率を選択できる手段をさらに備えることもできる。具体的には、例えば、同じ定格出力のコード状電気ヒータに対して、通電開始時の最大通電率Pmaxを100%通電率、90%通電率、80%通電率のように選択できるようにする。例えば、前記した温度設定テーブルに、通電開始時の最大通電率Pmaxが異なる複数枚のフィールドテーブルを格納しておき、それを適宜の手段で選択する。いずれのフィールドテーブルを選択する場合であっても、所定の設定時間tの経過後に、通電開始時に使用者が選択した通電率Piを基準として、そこから予め設定した差分ΔPxだけ通電率が低減する。
【0023】
この通電開始時の最大通電率Pmaxを選択できる手段は、同じ電気式床暖房システムを環境の異なる地域、例えば北海道と東京のような寒暖の違いのある地域に設置するときにきわめて有効となる。例えば、フィールドテーブルを選択する手段として、通常の使用状態では使用者が容易にアクセスできないコントローラ内の位置にディップスイッチを取り付けておき、北海道域に電気式床暖房システムを施工するときには、施工業者が通電開始時の最大通電率Pmax100%のフィールドテーブルに対応するディップスイッチを選択して施工を行う。一方、東京域に施工するときには、施工業者が例えば通電開始時の最大通電率Pmax80%通電率のフィールドテーブルに対応するディップスイッチを選択して施工を行う。
【0024】
北海道のように寒冷な地区では、使用者が高い設定温度を選択したときに、通電開始時通電率100%での定常運転モードが進行し、前記した27℃〜30℃前後の快適な床表面温度が得られる。一方、東京のような比較的温暖な地区では、同じ定格出力のコード状電気ヒータを用い、通電開始時通電率を80%に設定しておいても、定常運転モードで床表面温度は27℃〜30℃前後の快適な温度となる。そのために、低い通電開始時通電率を選択して施工された電気式床暖房システムにおいても、長時間運転継続時に、床表面温度が40℃程度にまで達することが起こり得るので、ここでも、本発明による通電率低減手段を採用することは有効となる。
【0025】
なお、本発明における電気式床暖房システムの全体的な構成に特に制限はなく、従来知られている任意の構成、例えば、コード状電気ヒータを床下地の上に配設した後にその上から木質系床材を置くようにして施工される形態のもの、あるいはコード状電気ヒータを一体に組み込んだ木質系床材を電気的に接続しながら床下地の上に置くようにして施工される形態のもの、などすべてが含まれる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、発熱源としてコード状電気ヒータを用い、床表面温度の制御方式として通電率制御方式を採用した電気式床暖房システムにおいて、外気温度に変化がない環境下で長時間通電を継続する場合であっても、最初に設定した設定温度帯(レベル)以上に床表面温度が上昇するのを確実に回避することができ、使用者に過昇温による不快感を与えたり、熱閉塞現象による低温火傷を生じさせたりするのを確実に回避することができる。また、消費電力を低減することもでき、省エネルギー運転が可能となる。
【0027】
さらに、予め選択した設定温度レベルを超えて床表面温度が上昇しないようにした運転を継続中、すなわち、通電率を自動的に低減した状態での継続運転中に、使用者が床暖房レベルを低い方に変更しようとする場合、使用者の意図に反して床表面温度が上昇してしまうのを防ぐことができ、使用者に不快感を与えることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施の形態により説明する。図1は本発明による電気式床暖房システムを示す概略図であり、図2は全体の制御系を示すブロック図である。
【0029】
図1において、床下地10の上に発熱源としてのコード状電気ヒータ11が配置され、その上にコード状電気ヒータ11を収容する凹溝を裏面に形成した多数枚の木質系床材12が敷設されて、電気式床暖房フロアを作っている。図示しないが、コード状電気ヒータを一体に組み込んだ木質系床材を電気的に接続しながら床下地の上に置くようにして電気式床暖房フロアを作るようにしてもよい。いずれにおいても、コード状電気ヒータ11には配線13を介して外部からの商用電力が供給され、配線途中にはコントローラ20が取り付けてある。
【0030】
図2は電気式床暖房システム全体の制御系を示すブロック図であり、本発明による電気式床暖房システムは、前記コントローラ20と該コントローラ20により制御された通電率で駆動されるコード状電気ヒータ11とからなる。コントローラ20は制御部30を備え、制御部30にはタイマー31とディップスイッチ32が接続し、さらに、操作盤40と記憶部50と駆動回路60が接続している。
【0031】
操作盤40には、システム全体のON−OFFスイッチ41、使用者が定常運転時での設定温度レベルに相当する通電率を選択するための押しボタン42,選択した通電率に対応する目盛り(例えば、M10〜M1など)や時刻等を表示するティスプレー44などが備えられる。
【0032】
記憶部50は、運転時間tと通電率低減量ΔPxとの関係を定めた通電率低減テーブルT1と、使用者が選択する定常運転時の設定温度レベルに対応する目盛りMと通電率Pとの関係を定めた温度設定テーブルT2とを格納している。通電率低減テーブルT1の一例が図3に示される。この例では、通電開始時を含むタイマーリセット時の通電率P%に対して、時間t1(例えば4時間)経過時の通電率Pt1はP−5(%)、時間t2(例えば8時間)経過時の通電率Pt2はP−10(%)、すなわち、当初通電率Pに対して、予め定めた時間tが経過するごとに、差分ΔPx=5%ずつ通電率を低減するように定めている。
【0033】
図4は温度設定テーブルT2の一例を示す。この例では、通電率P%が差分ΔPy=5%で100%から35%まで刻まれており、それに対応して、M10(Pmax)〜M1(Pmin)の10段階の目盛りMが振られた3種のフィールドテーブル(F1,F2,F3)が設けてある。フィールドテーブルF1では最大目盛りM10が通電率Pmax=100%に対応し、以下順次5%ずつ下降していき、最小目盛りM1は通電率Pmin=55%に対応している。フィールドテーブルF2は最大目盛りM10が通電率Pmax=90%に対応し、以下順次下降して最小目盛りM1は通電率Pmin=45%に対応している。フィールドテーブルF3は最大目盛りM10が通電率Pmax=80%に対応し、以下順次下降して最小目盛りM1は通電率Pmin=35%に対応している。
【0034】
前記温度設定テーブルT2の3つのフィールドテーブルF1,F2,F3のいずれかが前記したディップスイッチ32の操作により選択され、選択されたフィールドテーブルFiにおける目盛りMiに対応する通電率Piの情報が制御部30に取り込まれる。なお、フィールドテーブルFの数は3つに限ることはなく、1つでもよく、最大目盛りM10に対応する通電率Pmaxの値を異ならせてさらに多くのフィールドテーブルFを設定してもよい。
【0035】
駆動回路60は電源線13からヒータ11へ給電するための回路であり、通電率制御を行う手段の一例としてのスイッチング回路61を内蔵する。スイッチング回路61は1個または2個以上のリレーを備え、各リレーの開閉を制御部30からの指令で可変することでヒータ11への通電率Pを制御するものであり、それ自体は公知のものである。
【0036】
制御部30は、図3に示すように、スイッチング回路61に対してリレーの開閉周期Tの信号を送出する。この信号はハイレベル期間t1でスイッチング回路61を導通状態とし、ローレベル期間t2でスイッチング回路61を非導通状態とする。t1/t2の比を適宜の回路で制御することにより、設定した通電率Pが得られる。また、制御部30は後記する比較回路33を備える。
【0037】
このコントローラ20において、使用者は、使用開始時にON−OFFスイッチ41をONにし、押しボタン42を所要回数押して、所望の温度設定レベル(通電率)に相当する目盛りMiを選択する。押した回数は制御部30のカウンターに取り込まれ、選択した目盛りMiがディスプレー44に表示される。
【0038】
スイッチ41のONにより、100%通電率での立ち上げ運転モードが開始し、例えば30分程度の時間が経過すると定常運転モードに切り替わる。制御部30は、使用者が選択した目盛りMiに対応した通電率Piに対応するハイレベル期間t1の信号をスイッチング回路61に送り込み、目盛りMiに対応した床表面温度での床暖房が継続運転する。
【0039】
コントローラ20の記憶部50には、前記したように通電率低減テーブルT1(図3)が格納されており、制御部30は時間経過と共にその通電率低減テーブルT1に設定された信号をスイッチング回路61に送り込む。それにより、通電率は経時的に自動的に低減する。このように通電率を自動的に低減する手段を持つことにより、通電率100%付近で定常運転が長時間継続しているときに起こることのある、床表面温度の異常昇温を抑制することができ、電気式床暖房システムの快適性をより高めることができる。
【0040】
上記のように自動的に通電率が低減した状態での運転が継続しているときに、使用者が操作盤40の押しボタン42を押して目盛りMをより低い方(Mb)に変更したとする。その目盛り信号は制御部30に送られ、制御部30は選択された目盛りMbに相当する通電率Pbを温度設定テーブルT2から呼び出す。制御部30は、比較回路33を備え、現在の通電率Paと呼び出した通電率Pbを比較し、PbがPaよりも大きいか等しい場合には、現在の運転状態を継続する。PbがPaよりも小さい場合には、当該通電率Pbに相当する信号をスイッチング回路61に送り込む。それにより、システムは通電率Pbでの運転に切り替わる。
【0041】
より具体的には、フィールドテーブルF1がセットされた電気式床暖房システムにおいて、使用者がM10を選択したとする。時間tが経過して、100−ΔPx(%)の通電率Pt1で運転が継続しているときに、使用者が床温度レベルを1つ下げようとして、コントローラの目盛りをM10からM9に変更したとする。この場合、目盛りM9に相当する通電率と前記通電率Pt1の値は等しいので、目盛りM9に相当する通電率への変更は起こらない。使用者が床温度レベルを2つ下げようとして、コントローラの目盛りをM10からM8に変更した場合には、目盛りM8に相当する通電率は前記通電率Pt1の値よりも小さな値となるので、通電率は目盛りM8に相当する通電率に変更され、その通電率での運転が継続する。
【0042】
時間2tが経過して、100−2ΔPx(%)の通電率Pt2で運転が継続しているときに、使用者が床温度レベルを1つ下げようとして、コントローラの目盛りをM10からM9に変更したとする。この場合、目盛りM9に相当する通電率は前記通電率Pt2の値よりも大きいので、通電率の変更は起こらない。床温度レベルを2つ下げようとして、コントローラの目盛りをM10からM8に変更した場合も、目盛りM8に相当する通電率は前記通電率Pt2の値に等しいので、ここでも、通電率の変更は起こらない。使用者が床温度レベルを3つ下げようとして、コントローラの目盛りをM10からM7に変更したときに、初めて、目盛りM7に相当する通電率が前記通電率Pt2の値よりも小さな値となるので、通電率は目盛りM7に相当する通電率に変更され、その通電率での運転、すなわち床温度レベルが従前よりも低くなった状態での運転が継続する。
【0043】
以下、上記の電気式床暖房システムのより具体的な運転操作態様の一例を図6,図7を参照して説明する。
【0044】
本発明による電気式床暖房システムの施工に際して、施工業者は、ディップスイッチ32を操作して、当該施工現場に最適な温度設定目盛り群すなわちフィールドテーブルFを温度設定テーブルT2から選択する。ここでは、フィールドテーブルF1を選択したとして、電気式床暖房システムの運転操作の一例を説明する。なお、フィールドテーブルFが1つの場合には、この工程は省略される。また、前記のように、定常運転を長時間継続したときに床表面温度に異常昇温が生じるのは、通電率が設定最大値近傍の場合がほとんどである。そのために、以下の説明では、使用者が定常運転モードでの設定温度レベルとしてフィールドテーブルF1の目盛りM10を選択した場合を例とする。
【0045】
使用者は、操作盤40のON−OFFスイッチ41をONする(ステップ301)。制御部30は予め選択してあるディップスイッチ32を読み込み、温度設定テーブルT2におけるフィールドテーブルF1についての情報を取り込む(ステップ302)。使用者は、操作盤40の押しボタン42を所要回数押して定常運転時の設定温度レベル(通電率Pi)に対応する目盛りMiを選定する(ステップ303)。それにより、記憶部50には温度設定目盛りMiが読み込まれ(ステップ304)、ディスプレー44には対応する目盛りM10が表示される。タイマーがリセットされ立ち上げ運転が始まる(ステップ305)。
【0046】
制御部30は目盛りMiがM10か、それ以外かを判断する(ステップ306)。目盛りMiがM9〜M1の場合は、100%通電率の立ち上げ運転後、M9〜M1に対応する通電率Pでの定常運転に移行して従来通りの運転を継続する(ステップ400)。目盛りMiがM10の場合は、立ち上げ運転から通電率P(10)での定常運転を継続する(ステップ307)。
【0047】
タイマー31はタイマーリセット時からの時間t1が経過したかどうかを監視する(ステップ308)。時間t1(例えば4時間)が経過した時点で、制御部30は通電率を5%低減する(ステップ309)。それにより、通電率P(10)−5%の運転が継続する(ステップ310)。通電率P(10)−5%はM9の通電率に相当するが、ディスプレー44の目盛り表示はM10のまま維持される。
【0048】
目盛りMiを変更する信号が入力されるかどうかを監視し(ステップ311)、変更信号がない場合にはそのまま運転を継続する(ステップ401)。変更信号があった場合には、制御部30は変更後の目盛りMiに対応する通電率Pbを温度設定テーブルT2から読み込み(ステップ312)、新たに読み込んだ通電率Pbと現在の通電率Paとを比較する(ステップ313)。
【0049】
Pb≧Paの場合には、通電率Paでの運転を継続する(ステップ314)。Pn<Paの場合には、制御部30は、通電率Pbに相当する信号を駆動回路60に送り、新たに選択された通電率Pbでの運転を継続する(ステップ315)。ディスプレー44の表示を新たに選択された目盛りに変更する(ステップ316)。
【0050】
タイマー31はさらに時間の経過を監視し(ステップ317)、時間t2(例えば4時間)が経過した時点で、制御部30は通電率をさらに5%低減する(ステップ318)。それにより、通電率P(10)−10%の運転が継続する(ステップ319)。通電率P(10)−10%はM(8)の通電率に相当するが、ディスプレー44の目盛り表示は以前のまま維持される。
【0051】
設定温度レベル(通電率P)に対応する目盛りMiを変更する信号が入力されるかどうかを監視し(ステップ320)、変更信号がない場合にはそのまま運転を継続する(ステップ402)。変更信号があった場合には、制御部30は変更後の目盛りMiに対応する通電率Pbを温度設定テーブルT2から読み込み(ステップ321)、新たに読み込んだ通電率Pbと現在の通電率Paとを比較する(ステップ322)。
【0052】
Pb≧Paの場合には、通電率Paでの運転を継続する(ステップ323)。Pn<Paの場合には、通電率Pbでの運転を継続する(ステップ324)。ディスプレー44の表示を新たに選択された目盛りに変更する(ステップ325)。
【0053】
なお、上記の説明では、温度設定テーブルT2におけるフィールドテーブルF(F1,F2,F3)の選択手段としてディップスイッチ32を例示したが、ディップスイッチ32は例示であり、任意の選択手段を用いることができる。また、通電率を制御するための回路としてリレーを用いたスイッチング回路61を示したが、これも例示であり従来知られた任意の通電率制御手段を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による電気式床暖房システムの一例を示す概略図。
【図2】電気式床暖房システム全体の制御系を示すブロック図。
【図3】運転継続時間tと通電率低減量ΔPxとの関係を定めた通電率低減テーブルT1。
【図4】フィールドテーブルF(F1〜F3)の目盛りMと通電率Pとの関係を定めた温度設定テーブルT2。
【図5】システムにおける通電率制御を示す波形を説明する図。
【図6】制御のフロー図。
【図7】制御のフロー図(続き)。
【符号の説明】
【0055】
10…床下地、11…コード状電気ヒータ、12…木質系床材、13…配線、20…コントローラ、30…制御部、31…タイマー、32…ディップスイッチ、33…比較回路、40…操作盤、42…設定温度レベル設定用の押しボタン、44…ディスプレー、50…記憶部、60…駆動回路、61…スイッチング回路、T1…通電率低減テーブル、T2…温度設定テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱源であるコード状電気ヒータと、定常運転時におけるコード状電気ヒータへの通電率を選択する通電率選択手段と、選択された通電率に対応する目盛りを表示する目盛り表示手段とを少なくとも備えたコントローラと、を少なくとも含む電気式床暖房システムであって、
前記コントローラは、さらに、
コード状電気ヒータへ通電を開始した後の経過時間を監視するタイマー手段と、
タイマー手段で予め設定した時間tが経過したときに、通電率を自動的に所定値ΔPxだけ低減する通電率低減手段と、
通電率が自動的に低減されて運転している状況下において、使用者が通電率選択手段を操作して予め選択されている通電率よりも低い通電率を選択したときに、選択した通電率が運転中の通電率よりも高いまたは等しい通電率の場合には、選択した通電率への通電率の変更を行わない手段と、
を備えていることを特徴とする電気式床暖房システム。
【請求項2】
通電率選択手段は、通電率の差分がΔPyであるn段階の目盛りからなる温度設定テーブルと、温度設定テーブルから定常運転時でのコード状電気ヒータへの通電率に対応した目盛りを選択する目盛り選択手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の電気式床暖房システム。
【請求項3】
温度設定テーブルに設定する1目盛り毎の通電率の差分ΔPyとタイマー手段で予め設定した時間tが経過したときに自動的に低減する通電率の差分ΔPxが等しい値に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の電気式床暖房システム。
【請求項4】
目盛り表示手段は、通電率低減手段が通電率を自動的に所定値ΔPxだけ低減したときにその通電率に対応する目盛りを表示せずに、従前の目盛り表示を維持するようにされていることを特徴とする請求項3に記載の電気式床暖房システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−93088(P2007−93088A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282098(P2005−282098)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】