説明

電気式床暖房パネルとそれを用いた電気式床暖房フロア

【課題】3線式ヒータ線20を組み込んだ電気式床暖房パネルAにおいて、電磁波の発生を抑制する。
【解決手段】木質基材30の裏面に電源線11,12とヒータ線20とを組み込んだ電気式床暖房パネルAにおいて、ヒータ線20は、通電により発熱する第1と第2の2本の発熱線21,22と検知線23との3線式ヒータを用いる。第1と第2の2本の発熱線21,22と電源線11,12とを接続する2本のリード線15,16を木質基材30の裏面に形成した1条の凹溝33内に互いに平行姿勢となるようにして格納して、リード線から電磁波が発生するのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱源であるヒータ線を組み込んだ電気式床暖房パネルと、その複数枚が電気的に接続して床下地面に敷き詰られて形成される電気式床暖房フロアに関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材の裏面にヒータ線による発熱回路を組み込んだ電気式床暖房パネルの複数枚を電気的に接続しながら床下地面に敷き詰め、コントローラを介して電気式床暖房パネルに所要の電力を供給するようにした電気式床暖房フロアは知られている(特許文献1等参照)。コントローラには、加熱エリアの特定、通電の開始と停止、定常運転モードでの温度レベル設定、などの機能が備えられ、電気式床暖房フロアの安全性を確保している。
【0003】
また、電気毛布や電気カーペットなどの面状採暖具に敷線するヒータ線として、第1と第2の2本の発熱線と1本の検知線とからなり、第1の発熱線と検知線との間には第1の溶断層が介在し、第1の発熱線と第2の発熱線との間には少なくとも第2の溶断層が介在し、第2の溶断層の材料の融点は第1の溶断層の材料の融点よりも高くされた、3線式ヒータ線が知られている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−308202号公報
【特許文献2】特開平10−335046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した3線式ヒータ線では、一本の3線式ヒータ線内で、実質的に平行に走る第1と第2の2本の発熱線を電流が往復で流れることから、磁界が相互に打ち消し合うようになり、通電時に3線式ヒータ線から電磁波が発生するのを抑制することができる。この3線式ヒータ線を、木質基材の裏面に電源線とヒータ線とを組み込んだ電気式床暖房パネルにおける前記ヒータ線として用いることにより、電気式床暖房パネルから電磁波が発生するのを大きく回避できることが期待できる。
【0006】
しかし、電気式床暖房パネルを製造する場合、裏面に取り付けられている電源線、すなわち外部電源からの電力が供給される電源線と3線式ヒータ線とを2本のリード線で接続することが必要となるが、リード線を流れる電流によってリード線から電磁波が発生するのを回避することはできない。より完全な電磁波対策を施した電気式床暖房フロアが求められており、そのために、リード線から発生する電磁波に対する抑制手段を講じることが電気式床暖房パネルに対する1つの解決すべき課題となっている。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、木質基材の裏面に電源線とヒータ線とを組み込んだ電気式床暖房パネルにおいて、電源線とヒータ線とを接続するリード線から発生する電磁波を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明による電気式床暖房パネルは、木質基材の裏面に電源線とヒータ線とを組み込んだ電気式床暖房パネルであって、前記ヒータ線は、第1と第2の2本の発熱線と1本の検知線とからなり、第1の発熱線と検知線との間には第1の溶断層が介在し、第1の発熱線と第2の発熱線との間には少なくとも第2の溶断層が介在し、第2の溶断層の材料の融点は第1の溶断層の材料の融点よりも高くされている3線式ヒータ線であり、前記電源線と前記3線式ヒータ線は、第1の発熱線を第1のリード線を介して、また第2の発熱線を第2のリード線を介して接続しており、かつ前記第1と第2のリード線は木質基材の裏面に形成した1条の凹溝内に格納されていることを特徴とする。格納の態様に特に限定はなく、第1と第2のリード線が水平方向に並列した姿勢で格納されていてもよく、垂直方向に並列した姿勢で格納されていてもよい。
【0009】
本発明による電気式床暖房パネルは、ヒータ線として前記した3線式ヒータ線を用いており、ヒータ線からの電磁波の発生は抑制される。さらに、木質基材の裏面に配置した電源線と前記3線式ヒータ線とを接続する2本のリード線は、木質基材の裏面に形成した1条の凹溝内に格納されており、2本のリード線は、その凹溝内で上下にまたは左右に並んだ状態で実質的に平行に走る姿勢となる。第1のリード線と第2のリード線には電流が逆方向に流れることから、2本のリード線が凹溝内で実質的に平行に走る部分では、磁界が相互に打ち消し合うようになり、結果として、リード線から発生する電磁波が大きく抑制される。
【0010】
さらに、第1と第2のリード線を1条の凹溝内に格納したことにより、電気式床暖房パネルにおける2本のリード線が占める領域を、それぞれバラバラに格納する場合と比較して、小さくすることができ、その分、有効ヒータゾーンを大きくすることが可能となり、電気式床暖房パネルの表面温度ムラも小さくなる。
【0011】
さらに、前記の3線式ヒータ線は、第1と第2の2本の発熱線の一方端は電源側に接続し、他方端は互いに接続している構成であり、木質基材の裏面に3線式ヒータ線による発熱回路を組み込む作業は、発熱線を単に木質基材の裏面に形成した溝内に埋め込んでいけばよく、閉ループを作る必要がないので、電気式床暖房パネルへの発熱線の組み込み作業は簡素化され、NCによる配線も可能となる。
【0012】
本発明による電気式床暖房パネルの一態様において、前記3線式ヒータ線の前記第2の発熱線と第2のリード線の間には、抵抗器付き温度ヒューズが介在しており、前記第2の発熱線は前記抵抗器付き温度ヒューズの温度ヒューズと接続しており、前記検知線は前記抵抗器付き温度ヒューズにおける前記温度ヒューズの電源接続側とは反対側に接続する抵抗器と接続しており、かつ、前記抵抗器は前記第1の溶断層が溶融することにより生じる前記第1の発熱線と前記検知線との短絡により前記検知線に流れる電流が流れることにより発熱し、前記抵抗器の発熱により前記温度ヒューズが溶断するようになっている。
【0013】
この態様の電気式床暖房パネルでは、通常の使用状態では、3線式ヒータ線の前記第2の発熱線側に接続している抵抗器付き温度ヒューズのヒューズには、発熱線の持つ抵抗値に応じた電流が流れており、前記ヒューズが溶断することなく、正常な運転が継続する。
【0014】
製品寿命を超えた長期の使用等により、電気式床暖房パネルに組み込まれた3線式ヒータ線の発熱線に疲労断線等による部分断線等が生じた場合、スパーク等の発生によりその近傍に設定値以上の発熱が生じ、そのまま使用を継続すると発火に至る恐れがある。前記の形態の電気式床暖房パネルは、そのようなときに、発火に至るような危険が生じるのを確実に回避することができる。
【0015】
すなわち、上記の電気式床暖房パネルでは、第1と第2の2本の発熱線と1本の検知線とからなる3線式ヒータ線を用いており、第1と第2の2本の発熱線のいずれかの箇所において断線が生じて設定以上の異常発熱が生じた場合、その発熱により、比較して融点の低い材料からなる第1の溶断層が溶融する。絶縁層として機能していた第1の溶断層が溶融することにより、第1の発熱線と検知線が短絡状態となる。この短絡により検知線には高い値の短絡電流が流れ、その電流が、電気式床暖房パネルに組み込まれた前記抵抗器付き温度ヒューズの抵抗器に流れることにより、抵抗器が発熱する。そして、この発熱により第2の発熱線に接続している抵抗器付き温度ヒューズの温度ヒューズが溶断する。このヒューズの溶断により、当該電気式床暖房パネルに対するコントローラからの電力の供給は完全に遮断されるので、それ以降は、断線箇所においてスパーク等が発生することはなく、燃焼に至るような事態となるのを確実に阻止される。すなわち、事故発生時に安全サイドに導かれる。
【0016】
なお、本発明による電気式床暖房パネルでは、3線式ヒータ線のいずれの箇所で断線による異常発熱が生じても、検知線は必ず第1の発熱線側と短絡するので、検知線に流れる電流に起因して溶断するヒューズを1個のみ第2の発熱線側に接続すればすみ、また、ダイオードも不要となる。この点からも、有効ヒータゾーンが大きくなると共に、低コストで発熱回路を構成することが可能となる。
【0017】
なお、本発明による電気式床暖房パネルの全体形状は任意であり、矩形状、長尺状の単位ピースが長手方向に位置をずらしながら雁木状に組み付けられた形状、などを例示できる。木質基材の裏面に緩衝材層が貼着されている形態であってもよく、この形態の電気式床暖房パネルは、直貼り式の床暖房パネルとして有効に用いることができる。
【0018】
本発明は、また、上記したいずれかに記載の電気式床暖房パネルの複数枚が並列接続した状態で床下地面に敷き詰められていることを特徴とする電気式床暖房フロアをも開示する。
【発明の効果】
【0019】
本願の発明によれば、通電時に電磁波がほとんど発生しない電気式床暖房パネルおよび電気式床暖房フロアが得られる。また、製品寿命を超えたときに起こる可能性のある、発熱線の断線に起因する燃焼等の不都合に対して、有効な安全設計を施した電気式床暖房パネルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態により説明する。図1は電気式床暖房フロアの全体を示す概略図、図2はそこで用いる電気式床暖房パネルの一例を説明する図、図3は電気式床暖房パネルに組み込まれる3線式ヒータ線を説明する図、図4は電気式床暖房パネルにおける発熱回路を説明する図、図5と図6は発熱回路に断線が発生したときの2つの態様を説明するための図である。
【0021】
電気式床暖房フロアFは、床下地Cの上に、図2に一例を示すような、木質基材30の裏面に3線式ヒータ線20による発熱回路を組み込んだ電気式床暖房パネルAの複数枚を電気的に並列に接続して敷き詰めて構成され、各電気式床暖房パネルAには、外部からの商用電力がコントローラDを介して供給される。コントローラDは、前記特許文献1に記載のような従来知られた電気式床暖房フロアで用いられているものであってよく、加熱エリアの特定、通電の開始と停止、定常運転モードでの温度レベル設定、などの機能が備えられる。なお、図1において、Bは電気式床暖房パネルAの周囲に配置される周辺パネルであり、ヒータ線を備えない。
【0022】
電気式床暖房パネルAは、図2(a)に緩衝材層を除去した状態の背面図の一例に示すように、木質基材30を有し、その裏面の幅方向ほぼ中央には、+側である第1の電源線11と−側である第2の電源線12が組み込まれている。それぞれの電源線11,12の端部にはコネクタ13,14が取り付けられ、複数枚の電気式床暖房パネルAは、コネクタ13,14同士が互いに接続することにより、電気的に接続される。さらに、木質基材30の裏面のほぼ全域をカバーするようにして一筆書き状の配線溝32が形成され、該配線溝32の中に、図3に示す構成の3線式ヒータ20が埋め込まれる。
【0023】
埋め込まれた3線式ヒータ線20の一方端側は、後に説明するように、抵抗器付き温度ヒューズ50および第1と第2のリード線15,16を介して、前記第1と第2の電源線11,12と接続している。そして、図2(c)に示すように、前記第1と第2のリード線15,16は、木質基材30の裏面に形成した1条の凹溝33内に、上下に重なるようにして格納されている。埋め込まれた3線式ヒータ線20の他方端側は自由端となっていて、そこにサーモスタット54が取り付けられている。
【0024】
木質基材30の裏面には、必須ではないが、図2(b)に示すように、遮音溝36が形成され、さらに、直貼り床材として用いることができるように、緩衝材層37が貼り付けられている。この例において緩衝材層37は、不織布層38と樹脂発泡体層39との2層構成とされている。
【0025】
3線式ヒータ線20について説明する。図3に示すように、3線式ヒータ線20は、第1の発熱線21と、第2の発熱線22と、発熱線21,22と比較して切れ難くかつ電気抵抗の小さい線(例えばニッケル線)である検知線23とからなる3線式ヒータであり、各線は、発熱線の異常発熱等で溶融する非導電性材料からなる被覆樹脂24,25,26でそれぞれ被覆されている。図3(b)に示すように3本の線は寄り合わされて一本の線となり、その全体が図3(a)に示すように耐熱PVCのような断熱性のある非導電性材料からなる被覆材27により覆われている。
【0026】
被覆樹脂24,25,26は、ナイロン系樹脂あるいはポリアミド系樹脂のような熱可塑性樹脂である。ただし、第1の発熱線21を被覆する第1の被覆樹脂24と第2の発熱線22を被覆する第2の被覆樹脂25には、溶融温度の異なる樹脂が用いられており、この例で、第1の被覆樹脂24の溶融温度は180℃、第2の被覆樹脂25の溶融温度は220℃である。すなわち、第2の発熱線22は第1の被覆樹脂24の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂25で被覆されている。また、検知線23を覆う被覆樹脂26には、前記した比較して溶融温度の低い第1の被覆樹脂24と同じ樹脂が用いられており、その溶融温度は180℃である。
【0027】
これらの被覆樹脂24,25,26は、通常の運転時ではそのままで存在しており、絶縁材として機能している。しかし、第1の発熱線21または第2の発熱線22に断線あるいは部分断線等が生じてスパーク等が発生して、溶融温度を超える異常加熱状態が部分的に発生したときには、溶融して絶縁機能を喪失する。
【0028】
なお、3線式ヒータ線は図3に示す構成のものに限らず、前記特許文献1に記載されるように、第1の発熱線21と第2の発熱線22と検知線23が、第1の被覆樹脂24および第2の被覆樹脂25を境界層として、同心状に巻き込んだ形状のものであってもよい。
【0029】
本発明において、各電気式床暖房パネルAにおける発熱回路は、図4に示すような構成を備える。図4において、20は上記の3線式ヒータ線を示し、50は抵抗器付き温度ヒューズを示す。図示のように、第1の発熱線21の一方端は第1のリード線15を介して一方の電源線11に直接接続しており、第2の発熱線22の一方端は前記抵抗器付き温度ヒューズ50の温度ヒューズ51を介して、さらに第2のリード線16を介して、他方の電源線12に接続している。また、前記検知線23一方端は抵抗器付き温度ヒューズ50における前記温度ヒューズ51の電源接続側(第2のリード線16に接続する側)とは反対側に接続する抵抗器53に接続している。そして、前記第1と第2の発熱線21,22の他方端はサーモスタット54を介して互いに直列に接続している。また、前記抵抗器付き温度ヒューズ50は、検知線23に流れる電流が前記した温度ヒューズ50の電源接続側とは反対側に接続する抵抗器53に流れて、抵抗器53が発熱するときに、その熱によってヒューズ51は溶断するように設計されており、この例で、抵抗器53の抵抗は1500〜1600Ωであり、また、ヒューズ51は99℃で溶断するようにされている。
【0030】
上記の発熱回路において、商用電源からコントローラDを介して前記電源線11,12に電力が供給され、その電流が3線式ヒータ線20の第1の発熱線21と第2の発熱線22を流れることにより、3線式ヒータ線20は発熱する。その際に、3線式ヒータ線20では、実質的に平行に走る第1と第2の2本の発熱線21,22を電流が往復で流れることから、各発熱線21,22で発生する磁界は相互に打ち消し合うようになり、通電時に3線式ヒータ線20から電磁波が発生するのは抑制される。
【0031】
さらに、木質基材30の裏面に配置した電源線11,12と前記3線式ヒータ線20とを接続する2本のリード線15,16は、図2(c)に示すように、木質基材30の裏面に形成した1条の凹溝33内に、上下に並列した姿勢で格納されており、それによって、2本のリード線15,16は実質的に平行に走る姿勢となる。第1のリード線15と第2のリード線16に電流が流れるときに磁界が発生するが、第1のリード線15と第2のリード線16には電流は逆方向に流れ、かつ2本のリード線15,16は前記のように、凹溝33内で実質的に平行に走っているので、発生した磁界が相互に打ち消し合うようになり、結果として、リード線15,16から発生する電磁波も大きく抑制される。
【0032】
そのために、通電時に電気式床暖房パネルAから発生する電磁波はほぼ0となり、電気式床暖房フロアFの電磁波対策は、完全なものとなる。さらに、2本のリード線15,16は1条の凹溝33内に格納されており、電気式床暖房パネルAにおける2本のリード線15,16が占める領域は、それぞれをバラバラに格納する場合と比較して小さい。その分、有効ヒータゾーンを大きくすることが可能となり、電気式床暖房パネルAの表面温度ムラも小さくすることができる。
【0033】
なお、特に図示しないが、2本のリード線15,16は木質基材30の裏面に形成した1条の凹溝33内に実質的に平行に走る姿勢で格納されていればよく、上下方向に限らす、水平方向あるいは斜め方向に並列するようにして格納させても、同じ効果が得られる。
【0034】
また、上記の発熱回路において、電気式床暖房フロアAが正常に運転している環境では、前記したように、供給される電力は、第1の発熱線21と第2の発熱線22とを循環するように流れ、その発熱により床暖房が行われる。正常運転での温度制御等は前記したコントローラDにより行われる。正常運転時に検知線23には電流は流れず、またヒューズ51を流れる電流は、発熱線21,22の抵抗値に依存する小さな値であり、ヒューズ51が溶断することはない。
【0035】
製品寿命を超えてもなお継続使用していると、使用者が知らないうちに第1の発熱線21と第2の発熱線22のいずれかに部分断線が生じ、接触抵抗が異常に増加してスパーク等による異常加熱が生じる場合がある。図5は、そのような断線が第1の発熱線21において起こった場合の状態を説明している。第1の発熱線21のいずれかの箇所Pでスパーク等による異常加熱が生じたときに、その箇所の第1の被覆樹脂24は溶融し、そこに近接する検知線23を被覆する被覆樹脂26も溶融する。
【0036】
双方の被覆樹脂が溶融することにより、図5に領域Qで示すように、第1の発熱線21と検知線23とが短絡した状態となり、電流は、その短絡箇所から検知線23側に流れる。検知線23に電流が流れることにより、前記のように抵抗器53は発熱し、その熱によってヒューズ51は溶断する。ヒューズ51が溶断することよりコントローラDから発熱回路への電力供給は完全に遮断されるので、断線箇所Pでのそれ以上の発熱やスパークは起こらない。それにより、電気式床暖房パネルAの裏面に積層した不織布層38や樹脂発泡体層39からなる緩衝材層37が着火するという事態は確実に回避される。
【0037】
図6は、断線が第2の発熱線22において起こった場合の状態を説明している。第2の発熱線22のいずれかの箇所でスパーク等による異常加熱が生じたときに、その箇所の第2の被覆樹脂25が昇温する。第2の被覆樹脂25の溶融温度は、第1の発熱線21および検知線23を被覆している第1の被覆樹脂24,26の溶融温度よりも高く設定してあるので、第2の被覆樹脂25が溶融する前に、第1の発熱線21および検知線23を被覆している第1の被覆樹脂24,26が溶融する。それにより、図5において説明したと同様に、領域Qにおいて、第1の発熱線21と検知線23とが短絡した状態となる。それにより、検知線23に電流が流れ、抵抗器53が発熱して、ヒューズ51は溶断する。
【0038】
上記のように、本発明による電気式床暖房パネルAおよび電気式床暖房フロアFでは、断線等により異常事態が生じたときに、常に安全サイドに導かれるようになり、そのことからも、電気式床暖房の安全性が一層向上する。
【0039】
なお、電気式床暖房パネルAにおいて、抵抗器付き温度ヒューズ50を省略することもできる。その場合には、第2の発熱線22の一方端は、直線第2のリード線16を介して電源線12に接続される。その形態の電気式床暖房パネルにおいても、電磁波の発生を抑制できるという、作用効果は上記した電気式床暖房パネルAの場合と同様である。ただし、この形態の電気式床暖房パネルを用いて、断線等により異常事態が生じたときに常に安全サイドに導かれる電気式床暖房フロアを構築する場合には、例えば、コントローラDの中に前記した抵抗器付き温度ヒューズ50を組み込むなどの手段を講じる必要がある。
【0040】
図7は、その場合の電気式床暖房フロアFの一例を説明する回路図であり、ここでは、コントローラDとして、従来知られた暖房用コントローラに組み込まれた従来公知の制御装置CUに加えて、前記した抵抗器付き温度ヒューズ50を備えている。この抵抗器付き温度ヒューズ50は、電気式床暖房パネルAに埋め込んだ3線式ヒータ線20の前記第2のヒータ線22側にケーブル線3aを介して接続する温度ヒューズ51と、前記検知線23側にケーブル線3cを介して接続する第3のケーブル52線を備え、該第3のケーブル線52は前記温度ヒューズ51に近接して設けられる抵抗器53を介して、前記温度ヒューズ51の第2のヒータ線22側に接続している。
【0041】
図7に示す例では、電気式床暖房フロアFは3枚の電気式床暖房パネルAからなる1組の電気式床暖房パネル群AGによって暖房面が形成されるが、図7に仮想線で示すように、さらに多くの電気式床暖房パネル群AGを並列接続してもよい。
【0042】
上記の電気式床暖房フロアFにおいて、各電気式床暖房パネルAが正常に運転している環境では、コントローラDから供給される電力は、すべての電気式床暖房パネルAに組み込んだ3線式コード状ヒータ20の第1のヒータ線21と第2のヒータ線22とを循環するように流れ、その発熱により床暖房が行われる。正常運転での温度制御等は前記したコントローラDの制御装置CUにより行われる。いずれかの電気式床暖房パネルAにおいて、検知線23に高電流が流れる事態が発生したとき、その電流は、コントローラD内に組み込んだ抵抗器付き温度ヒューズ50内の抵抗器53を加熱させ、温度ヒューズ51を溶断する。それにより、すべての電気式床暖房パネルAへの電力の供給は遮断され、床暖房フロアFは安全サイドに導かれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】電気式床暖房フロアの全体を示す概略図。
【図2】本発明に係る電気式床暖房パネルの一例を説明する図。
【図3】電気式床暖房パネルに組み込まれる3線式ヒータ線を説明する図。
【図4】電気式床暖房パネルにおける発熱回路を説明する図
【図5】発熱回路に異常発熱が生じたときの第1の態様を説明する図。
【図6】発熱回路に異常発熱が生じたときの第2の態様を説明する図。
【図7】電気式床暖房フロアの他の態様を説明する回路図。
【符号の説明】
【0044】
A…電気式床暖房パネル、B…周辺パネル、C…床下地、D…コントローラ、F…電気式床暖房フロア、11、12…電気式床暖房パネルに取り付けられる電源線、13,14…コネクタ、15…第1のリード線、16…第2のリード線、20…3線式ヒータ線、21…第1の発熱線、22…第2の発熱線、23…検知線、27…被覆材、24、26…第1の被覆樹脂、25…第2の被覆樹脂、30…木質基材、33…木質基材の裏面に形成したリード線を格納するための凹溝、36…遮音溝、37…緩衝材層、50…抵抗器付き温度ヒューズ、51…温度ヒューズ、53…抵抗器、54…サーモスタット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の裏面に電源線とヒータ線とを組み込んだ電気式床暖房パネルであって、
前記ヒータ線は、第1と第2の2本の発熱線と1本の検知線とからなり、第1の発熱線と検知線との間には第1の溶断層が介在し、第1の発熱線と第2の発熱線との間には少なくとも第2の溶断層が介在し、第2の溶断層の材料の融点は第1の溶断層の材料の融点よりも高くされている3線式ヒータ線であり、
前記電源線と前記3線式ヒータ線は、第1の発熱線を第1のリード線を介して、また第2の発熱線を第2のリード線を介して接続しており、かつ前記第1と第2のリード線は木質基材の裏面に形成した1条の凹溝内に格納されていることを特徴とする電気式床暖房パネル。
【請求項2】
前記3線式ヒータ線の前記第2の発熱線と第2のリード線の間には、抵抗器付き温度ヒューズが介在しており、前記第2の発熱線は前記抵抗器付き温度ヒューズの温度ヒューズと接続しており、前記検知線は前記抵抗器付き温度ヒューズにおける前記温度ヒューズの電源接続側とは反対側に接続する抵抗器と接続しており、かつ、前記抵抗器は前記第1の溶断層が溶融することにより生じる前記第1の発熱線と前記検知線との短絡により前記検知線に流れる電流が流れることにより発熱し、前記抵抗器の発熱により前記温度ヒューズが溶断するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の電気式床暖房パネル。
【請求項3】
木質基材の裏面に緩衝材層が貼着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気式床暖房パネル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電気式床暖房パネルの複数枚が並列接続した状態で床下地面に敷き詰められていることを特徴とする電気式床暖房フロア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−2141(P2010−2141A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162351(P2008−162351)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】