説明

電気式床暖房フロア

【課題】3線式コード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房フロアの疲労断線等で生じる異常発熱による出火等を確実に防止すること。
【解決手段】3線式コード状ヒータとして、通電により発熱する第1と第2の2本のヒータ線21、22と検知線23との3線式ヒータを用いる。第1のヒータ線と検知線は第1の被覆樹脂で被覆されており、第2のヒータ線は第1の被覆樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂で被覆されている。床暖房用コントローラに、電気式床暖房パネルに組み込んだ3線式コード状ヒータの第1と第2の2本のヒータ線に電力を供給する電力供給回路側を出力側とし、前記検知線側を入力側とするb接点を組み込む。異常時に、第1の被覆樹脂が溶融することにより生じる第1のヒータ線と検知線との短絡により検知線に短絡電流が流れると、直ちに、b接点50は電力供給回路を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気式床暖房フロア、特に、コード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルの複数枚を電気的に接続して床下地面に敷き詰め、床暖房用コントローラを介して電気式床暖房パネルに所要の電力を供給するようにした電気式床暖房フロアに関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材の裏面に形成した配線溝内にコード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルの複数枚を電気的に接続しながら床下地面に敷き詰め、床暖房用コントローラを介して電気式床暖房パネルに所要の電力を供給するようにした電気式床暖房フロアは知られている(特許文献1等参照)。床暖房用コントローラには、加熱エリアの特定、通電の開始と停止、定常運転モードでの温度レベル設定、などの機能が備えられ、電気式床暖房フロアの安全性を確保している。
【0003】
また、床下地面に敷き詰めた電気式床暖房パネルと床暖房用コントローラとの間を、一方端に電気式床暖房パネル側のコネクタに接続するコネクタをまた他方端に前記床暖房用コントローラに接続する接続部を備えた配線キットで接続するようにした電気式床暖房フロアも知られている(特許文献2参照)。このような配線キッドを用いることにより、従来使用していた貼りじまい用ヒーターパネルが不要となり、施工現場での品番の削減、施工時の作業手間の軽減、等の効果がもたらされる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−308202号公報
【特許文献2】特開2005−106301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気式床暖房フロアの安全運転は、通常の使用状態では充分に保証されている。しかし、一般に構造部材は、その構造上からくる寿命を当然に有しており、例えば電気式床暖房パネルの場合、10年程度の長期にわたって継続して使用されると、歩行等による荷重が繰り返し加わることで、内部に組み込んだコード状ヒータにひずみによる応力が繰り返しかかり、その影響で疲労断線が起こる可能性がある。断線すると断線箇所でスパークが発生し、燃焼を起こす恐れがある。
【0006】
本発明は、上記のように製品寿命を超えたときに起こる可能性のある、コード状ヒータの断線に起因する燃焼等の不都合に対して、安全設計を施した電気式床暖房フロアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明による電気式床暖房フロアは、コード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルの複数枚を電気的に接続して床下地面に敷き詰め、床暖房用コントローラを介して電気式床暖房パネルに所要の電力を供給するようにした電気式床暖房フロアであって、前記電気式床暖房パネルに組み込まれるコード状ヒータは、第1と第2の2本のヒータ線と1本の検知線とからなり、前記第1のヒータ線と前記検知線とはそれぞれが第1の被覆樹脂で被覆されており、前記第2のヒータ線は前記第1の被覆樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂で被覆されている3線式コード状ヒータであり、前記床暖房用コントローラは、前記第1と第2の2本のヒータ線に電力を供給する電力供給回路側を出力側とし、前記検知線側を入力側とするb接点を少なくとも備えることを特徴とする。
【0008】
本発明による電気式床暖房フロアにおいて、通常の使用状態では、前記床暖房用コントローラに備えたb接点の入力側、すなわち3線式コード状ヒータを構成する検知線に接続する側には電流が流れないので、出力側は閉じており、3線式コード状ヒータを構成する前記第1と第2の2本のヒータ線に電力を供給する電力供給回路には、当該床暖房用コントローラに組み込まれた制御装置(なお、この制御装置は従来知られた暖房用コントローラに組み込まれた従来公知の制御装置であってよい)によって制御された電流が流れ、正常な運転が継続する。
【0009】
製品寿命を超えた長期の使用等により、電気式床暖房パネルに組み込まれた3線式コード状ヒータに疲労断線等による部分断線等が生じた場合、スパーク等の発生によりその近傍に設定値以上の発熱が生じ、そのまま使用を継続すると発火に至る恐れがある。本発明による電気式床暖房フロアは、発火に至るような危険が生じるのを確実に回避する。
【0010】
すなわち、本発明で用いる電気式床暖房パネルは、前記した第1と第2の2本のヒータ線と1本の検知線とからなる固有の構成の3線式コード状ヒータを用いており、第1と第2の2本のヒータ線のいずれかの箇所において断線が生じて設定以上の異常発熱が生じた場合、その発熱により、前記第1のヒータ線と検知線とを被覆している第1の被覆樹脂が溶融する。絶縁層として機能していた第1の被覆樹脂が溶融することにより、第1のヒータ線と検知線が短絡状態となる。
【0011】
この短絡により検知線に流れる短絡電流は、床暖房用コントローラに組み込んだ前記b接点の入力側に流れ込み、b接点の出力側を開く。それにより、電力供給回路は開いた状態となり、床暖房用コントローラから電気式床暖房パネルへの電力の供給は遮断される。b接点の前記出力側は、開状態をそのまま維持するようにされており、それ以降は、3線式コード状ヒータの前記断線箇所においてスパーク等が発生することはなく、燃焼に至るような事態となるのは確実に阻止される。すなわち、本発明による電気式床暖房フロアでは、事故発生時に、確実に安全サイドに導かれる。
【0012】
本発明による電気式床暖房フロアにおいて、床暖房を行う床面積の広さに応じた複数枚の電気式床暖房パネルが用いられる。複数枚の電気式床暖房パネルは、好ましくは、各電気式床暖房パネルに組み込まれた3線式コード状ヒータの2本のヒータ線と1本の検知線のそれぞれがコネクタを介して並列接続された1組以上のグループにグループ化され、各グループ化した電気式床暖房パネル群が床暖房用コントローラに並列に接続される。
【0013】
上記のように、本発明による電気式床暖房フロアでは、床暖房用コントローラの電力供給回路に前記したb接点を組み込むだけで、電気式床暖房フロアを確実に安全サイドに導くことができる。そのために、低コストで電気式床暖房フロアを構築することができる。また、各電気式床暖房パネルおよび電気式床暖房パネル群は並列接続しているので、いずれの電気式床暖房パネルにおける3線式コード状ヒータにおいて断線による異常発熱が生じても、電気式床暖房フロアは確実に安全サイドに導かれる。
【0014】
本発明で用いる各電気式床暖房パネルにおいて、3線式コード状ヒータを構成する第1と第2の2本のヒータ線の一方端は電源側に、直接もしくは必要に応じて通常の温度ヒューズを介して接続し、他方端は互いに接続する構成である。そのために、3線式コード状ヒータの一方端は開放端であってよく、従来のコード状ヒータのように閉ループとなる回路を作る必要がないので、電気式床暖房パネルへのヒータ線の組み込み作業が容易となる。NC等による配線の自動化も可能となる。さらに、ダイオードも不要となるので、有効ヒータゾーンも大きくなり、電気式床暖房パネル自体の構成も簡素化される。また、3線式コード状ヒータ内で、実質的に平行に走る第1と第2の2本のヒータ線を電流が往復で流れるので、磁界が打ち消し合うようになり、電気式床暖房パネルからの電磁波の発生もカットされる。
【0015】
本発明で用いる電気式床暖房パネルの全体形状は任意であり、矩形状、長尺状の単位ピースを長手方向に位置をずらしながら雁木状に組み付けた雁木形状、などを例示できる。木質基材の裏面に緩衝材層を貼着した形態であってもよく、この形態の電気式床暖房パネルを用いることにより、直貼り式の電気式床暖房フロアを構築することができる。
【0016】
本発明による電気式床暖房フロアは、上記したように電気式床暖房パネルの複数枚が実質的に並列接続した状態で床下地面に敷き詰められた構成であり、事故発生時には、短絡が生じた電気式床暖房パネルのみを、それ単独で、新しいものと交換することができる。その際に、床暖房用コントローラに組み込んだ前記b接点は出力側が閉じた状態に戻しておく。
【0017】
本発明による電気式床暖房フロアの一つの態様では、各電気式床暖房パネルまたは各グループ化された電気式床暖房パネル群は、一方端に電気式床暖房パネル側のコネクタに接続するコネクタをまた他方端に前記床暖房用コントローラに接続する接続端を備えた配線キットを介して、前記床暖房用コントローラと接続するようにされる。
【0018】
この態様では、前記配線キットを用いることにより、従来の電気式床暖房フロアで必要であった、貼りじまい用ヒーターパネルが不要となり、施工現場での品番の削減、施工時の作業手間の軽減、等の効果がもたらされる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製品寿命を超えたときなどに起こる可能性のある、3線式コード状ヒータの断線に起因する燃焼等の不都合に対して、信頼度の高い安全設計を施した電気式床暖房フロアが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態により説明する。図1(a)は電気式床暖房フロアの全体を示す概略図、図1(b)は配線キットを用いる場合での、その取り付け状態を説明するための図、図2(a)(b)は電気式床暖房パネルの一例を示す図、図3(a)(b)は電気式床暖房パネルに組み込む3線式コード状ヒータを説明する図、図3(c)はそれを電気式床暖房パネルに組み込んだ状態の配線図である。図4は電気式床暖房パネルをグループ化したときの2つの態様を例示する図、図5は用いる場合での配線キットの一例を示す図である。図6は電気式床暖房フロアの発熱回路の一例を示す図、図7はb接点の開状態を保持する回路の一例を示す図、図8と図9は発熱回路に断線が発生したときの2つの態様を説明する図である。
【0021】
最初に、本発明による電気式床暖房フロアFの全体構成の一例を、その施工手順と共に説明する。この例において、床下地はコンクリートスラブCであり、後に説明する図2に示す電気式床暖房パネルAの複数枚が直貼りされる。なお、図2では電気式床暖房パネルAを雁木形状として示しているが、図1では図示の煩雑さを避けるために単に矩形状に示している。施工に際しては、最初に、壁面に沿ってコード状ヒータを備えない周辺パネルBを貼り、次に、貼り出し用電気式床暖房パネルA1(これは1個のコネクタのみを持つ)を取り付け、以下、必要枚数の電気式床暖房パネルAを多段に貼り付ける。その両辺には前記した周辺パネルBを貼り付ける。なお、この例で、電気式床暖房パネルAの群は2組にグループ化されており、最下段には、電気式床暖房パネルAa、Abが各グループへの電力取り入れ部として配置してある。
【0022】
前記最下段の2つの電気式床暖房パネルAa、Abに対して、図5に示すような配線キット1の2つのコネクタ2、2がそれぞれ接続され、配線キット1のケーブル3の他端側の接続端4が床暖房用コントローラDに接続される。図1(b)に示すように、配線キット1が配線された領域には、配線キット1のコネクタ2やケーブル3を収容する凹溝6を裏面に形成した第2の周辺パネルB1が貼り付けられる。
【0023】
施工後に、各電気式床暖房パネルAには、外部からの商用電力が床暖房用コントローラDおよび配線キット1を介して供給される。床暖房用コントローラDは、前記特許文献1あるいは2に記載のような従来知られた、加熱エリアの特定、通電の開始と停止、定常運転モードでの温度レベル設定、などの機能を持つ制御装置CUに加えて、その電源供給回路には後記するb接点(常閉接点)50が備えられる(図6参照)。なお、配線キット1を用いずに、従来知られた貼りじまい用ヒーターパネル形態の電気式床暖房パネルを用いて施工してもよい。その場合には、貼りじまい用電気式床暖房パネルに取り付けたケーブルを床暖房用コントローラDに接続する。配線キット1を用いる施工態様では、現場での施工作業が容易となる。
【0024】
次に、電気式床暖房パネルAの一例を図2を参照して説明する。この例において、電気式床暖房パネルAは、図2(a)に緩衝材層を除去した状態の背面図に示すように、長尺状の木質基材31からなる単位ピース30が長手方向に位置をずらしながら雁木状に組み付けられており、その裏面にはその全面にわたるようにして連続する配線溝32が形成されている。配線溝32の中には、図3に示す3線式コード状ヒータ20が埋め込まれており、3線式コード状ヒータ20の一方端20aは、リード線、通常の温度ヒューズおよび電源線20bを介して3線式コネクタ34、35に電気的に接続している。3線式コード状ヒータ20の他方端20cは、サーモスタット28(図3(c)参照)が取り付けられる。なお、前記した貼り出し用電気式床暖房パネルA1は一方のコネクタ34を備えない。
【0025】
図2で、36は、各単位ピース30の裏面に配線溝32に交差するようにして形成される遮音溝である。また、電気式床暖房パネルAの裏面には緩衝材層37が貼り付けられており、この例において緩衝材層37は、図2(b)に示すように、不織布層38と樹脂発泡体層39との2層構成とされている。このような緩衝材層37を備えることにより、直貼り床材として用いることができる。
【0026】
次に、3線式コード状ヒータ20を説明する。図3(a)(b)に示すように、3線式コード状ヒータ20は、第1のヒータ線21と、第2のヒータ線22と、銅線のような電気抵抗の小さい線からなる検知線23とからなる3線式ヒータであり、各線は、ヒータ線の異常発熱等で溶融する非導電性材料からなる被覆樹脂24、25、26でそれぞれ被覆されている。図3(b)に示すように3本の線は寄り合わされて一本の線となり、その全体が図3(a)に示すように耐熱PVCのような断熱性のある非導電性材料からなる被覆材27により覆われている。なお、図示しないが、ポリエステル系合成繊維より糸のような耐熱芯材の周囲に、第1のヒータ線21、第2のヒータ線22および検知線23をそれぞれ巻き付けたものに対して、前記した被覆樹脂24、25、26をそれぞれ被覆したものを用意し、その3本の線を図3(b)に示すように螺旋状に巻き込み、その全体を被覆材27で被覆して、3線式コート状ヒータ20とすることもできる。
【0027】
被覆樹脂24、25、26は、ナイロン系樹脂あるいはポリアミド系樹脂のような熱可塑性樹脂である。ただし、第1のヒータ線21を被覆する第1の被覆樹脂24と第2のヒータ線22を被覆する第2の被覆樹脂25には、溶融温度の異なる樹脂が用いられており、限定されるものではないが、この例で、第1の被覆樹脂24の溶融温度はほぼ170℃程度、第2の被覆樹脂25の溶融温度はほぼ220℃程度である。すなわち、第2のヒータ線22は第1の被覆樹脂24の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂25で被覆されている。また、検知線23を覆う被覆樹脂26には、前記した比較して溶融温度の低い第1の被覆樹脂24と同じ樹脂が用いられている。
【0028】
これらの被覆樹脂24、25、26は、電気式床暖房フロアFの通常の運転時ではそのままで存在しており、絶縁材として機能している。そのために、検知線23に電流が流れることはない。しかし、第1のヒータ線21または第2のヒータ線22に断線あるいは部分断線等が生じてスパーク等が発生し、溶融温度を超える異常加熱状態が部分的に発生したときには、溶融して絶縁機能を喪失する。
【0029】
図3(c)に示すように、電気式床暖房パネルAにおいて、第1のヒータ線21、第2のヒータ線22、および検知線23の一方端は、通常の温度ヒューズ28aを介して、前記した3線式コネクタ34、35に並列的に接続し、第1のヒータ線21と第2のヒータ線22の他方端は、サーモスタット28を介して互いに接続している。なお、温度ヒューズ28aとサーモスタット28は省略することもできる。
【0030】
上記した形態の電気式床暖房パネルAの複数枚がコネクタ34、35を介して互いに接続することにより、グループ化された電気式床暖房パネル群AGとされる。電気式床暖房パネル群AGでは、各電気式床暖房パネルAに組み込まれた3線式コード状ヒータ20の2本のヒータ線と21、22と1本の検知線23のそれぞれは並列接続されている。なお、図4(a)に示す電気式床暖房パネル群AGは、3枚の電気式床暖房パネルAで構成されており、上位の電気式床暖房パネルAは、図1でいう貼り出し用電気式床暖房パネルA1に相当し、下段の電気式床暖房パネルAは電気式床暖房パネルAaに相当する。何枚の電気式床暖房パネルAで電気式床暖房パネル群AGを構成するかは任意である。
【0031】
電気式床暖房フロアFを施工するに当たっては、図1に基づき説明したように、電気式床暖房パネル群AGが、周辺パネルBと共に、床下地面に貼り付けられ、下段の電気式床暖房パネルAaに対して、前記したように、図5に示す配線キット1のコネクタ2が接続され、該配線キット1のケーブル3の他端側の接続端4が床暖房用コントローラDに接続される。その後、第2の周辺パネルB1を貼り付けて施工は終了する。
【0032】
図5に示すように配線キット1は、VVFケーブルを基本構成としており、電気式床暖房パネルAの3線式コネクタ35に接続するコネクタ2と、3本のケーブル線3a、3b、3cと、床暖房用コントローラDに接続するやはり3線式の接続端4とを備える。ケーブル線3a、3bは電源線であり、前記した3線式コード状ヒータ20の2本のヒータ線と21、22に接続し、ケーブル線3cは検知線23に接続する。なお、接続端4は、ケーブル3の他端側を床暖房用コントローラD側に電気的に接続できれば任意の手段でよく、コネクタを用いる態様、電線同士を直接結線できるように床暖房用コントローラD側に速結端子台を取り付ける態様、さらには両者の電線同士を直接結線する態様などであってよい。後ろの2者の場合には、ケーブル3の端部が接続端4を構成する。また、配線キット1を用いない場合には、従来知られた貼りじまい用ヒーターパネル形態の電気式床暖房パネルに上記した3線式ケーブルを取り付ける。
【0033】
次に、図6に示す電気式床暖房フロアFの発熱回路を参照して、床暖房用コントローラDを説明する。床暖房用コントローラDは従来知られた暖房用コントローラに組み込まれた従来公知の制御装置CUに加えて、前記3線式コード状ヒータ20の2本のヒータ線と21、22に電力を供給する電力供給回路側を出力側とし、前記検知線23に接続する側を入力側とするb接点50を備える。図示の例では、電気式床暖房パネルAに埋め込んだ3線式コード状ヒータ20の第2のヒータ線22側(配線キット1のケーブル線3a側)にb接点50の出力側接点51が接続し、前記検知線23側(配線キット1のケーブル線3c側)がb接点50の入力側52に接続している。
【0034】
上記の床暖房フロアFにおいて、各電気式床暖房パネルAが正常に運転している環境では、b接点50の出力側51は電源供給回路を閉じた状態としており、床暖房用コントローラDから供給される電力は、各電気式床暖房パネルAに組み込んだ3線式コード状ヒータ20の第1のヒータ線21と第2のヒータ線22とを循環するように流れ、その発熱により床暖房が行われる。正常運転での温度制御等は前記した床暖房用コントローラDの制御装置CUにより行われる。正常運転時には3線式コード状ヒータ20の検知線23には電流は流れず、b接点50の入力側52は電気信号OFFの状態であり、連続した床暖房が進行する。
【0035】
なお、図6に示す例では、電気式床暖房フロアFは3枚の電気式床暖房パネルAからなる1組の電気式床暖房パネル群AGによって暖房面が形成されるが、図1に示したように2組の暖房面を形成する場合には、図6に仮想線で示すように、もう1組の電気式床暖房パネル群AGが並列接続される。また、図4(b)に示すように3組の電気式床暖房パネル群AGが並列接続されて暖房面を形成してもよく、暖房面を構成する電気式床暖房パネル群AGの数は任意である。その場合に、各電気式床暖房パネル群AGごとに、前記b接点50を設けることもできる。
【0036】
上記の発熱回路において、製品寿命を超えてもなお継続使用していると、使用者が知らないうちに3線式コード状ヒータ20を構成する第1のヒータ線21と第2のヒータ線22のいずれかに部分断線が生じ、接触抵抗が異常に増加してスパーク等による異常加熱が生じる場合がある。図8は、そのような断線が第1のヒータ線21において起こった場合の状態を説明している。第1のヒータ線21のいずれかの箇所Pでスパーク等による異常加熱が生じたときに、その箇所の第1の被覆樹脂24は溶融し、そこに近接する検知線23を被覆する被覆樹脂26も溶融する。
【0037】
双方の被覆樹脂が溶融することにより、図8に領域Qで示すように、第1のヒータ線21と検知線23とが短絡した状態となり、電流は、その短絡箇所から検知線23側に流れる。検知線23に電流が流れることにより、床暖房用コントローラDに組み込んだb接点50の入力部52に電流が流れ、b接点50の出力側51は開、すなわちOFFとなり、電源供給回路を開く。それにより、床暖房用コントローラDから3線式コード状ヒータ20への電力供給は遮断される。
【0038】
b接点50は、一度出力側51が開状態となると、その姿勢が保持される。図7は、そのための床暖房用コントローラD内の回路の一例を示す。この例において、検知線23側に断線検知リレーRが、また、第1のヒータ線21と第2のヒータ線22との間に、並列接続した2つのa接点(常開接点)55,56と自己保持型である検出制御リレーR1が設けてある。断線検知リレーRはa接点55を作動させ、検出制御リレーR1はa接点56とb接点50を作動させる。前記のようにして検知線23に電流が流れると、断線検知リレーRが作動する。断線検知リレーRが作動したことで、a接点55が閉じて検出制御リレーR1の回路に電流が流れる。電流が流れることで検出制御リレーR1が作動し、その作動により、a接点56が閉じて自己保持されるとともに、b接点50が開いて3線式コード状ヒータ20への通電は止まる。電源側からの電流は、閉じているa接点56と検出制御リレーR1を通る回路を流れる。
【0039】
そのために、再び、床暖房用コントローラDから3線式コード状ヒータ20へ電力が供給されることはなく、断線箇所Pでのそれ以上の発熱やスパークは起こらない。それにより、各電気式床暖房パネルAの裏面に積層した前記した不織布層38や樹脂発泡体層39からなる緩衝材層37が着火するという事態は確実に回避される。
【0040】
図9は、断線が第2のヒータ線22において起こった場合の状態を説明している。第2のヒータ線22のいずれかの箇所Pでスパーク等による異常加熱が生じたときに、その箇所の第2の被覆樹脂25が昇温する。第2の被覆樹脂25の溶融温度は、第1のヒータ線21および検知線23を被覆している第1の被覆樹脂24、26の溶融温度よりも高く設定してあるので、第2の被覆樹脂25が溶融する前に、第1のヒータ線21および検知線23を被覆している第1の被覆樹脂24、26が溶融する。それにより、図8において説明したと同様に、領域Qにおいて、第1のヒータ線21と検知線23とが短絡した状態となる。
【0041】
図8に基づき説明したと同様に、第1のヒータ線21と検知線23との短絡により、検知線23側に短絡電流が流れるようになり、この場合にも、第1のヒータ線21側で断線が起こった場合と同様に、床暖房用コントローラDに組み込んだb接点50が作動して、電源供給回路を開く。それにより、床暖房用コントローラDから3線式コード状ヒータ20への電力供給は遮断される。
【0042】
上記したように、本発明による電気式床暖房フロアFでは、異常時での安全性が確実に確保される。さらに、電気式床暖房パネルAの木質基材31の裏面に3線式コード状ヒータ20を埋め込む作業は、閉ループを作る必要がないので、きわめて容易である。場合によっては、NCによる配線も可能となる。また、床暖房時には、一本の3線式コード状ヒータ20内で、実質的に平行に走る第1と第2の2本のヒータ線21、22を電流が往復で流れることから磁界が打ち消し合うようになり、電気式床暖房パネルAからの電磁波の発生もカットされる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1(a)は電気式床暖房フロアの全体を示す概略図であり、図1(b)は配線キットを用いる場合での、その取り付け状態を説明するための図である。
【図2】電気式床暖房パネルの一例を示す図であり、図2(a)は緩衝材層を除去した状態の背面図、図2(b)は断面図。
【図3】図3(a)(b)は電気式床暖房パネルに組み込む3線式コード状ヒータを説明するための図、図3(c)はそれを電気式床暖房パネルに組み込んだ状態の配線図。
【図4】電気式床暖房パネルの複数枚をグループとして組み込んだ電気式床暖房パネル群の2つの態様を説明する図。
【図5】用いる場合での配線キットを説明する図。
【図6】本発明による電気式床暖房フロアの発熱回路の一例を示す図であり、特に、床暖房用コントローラを説明している。
【図7】床暖房用コントローラに組み込まれる、b接点の開状態を保持するための回路の一例を示す図。
【図8】発熱回路に異常発熱が生じたときの第1の態様を説明する図。
【図9】発熱回路に異常発熱が生じたときの第2の態様を説明する図。
【符号の説明】
【0044】
A…電気式床暖房パネル、AG…グループ化された電気式床暖房パネル群、C…コンクリートスラブ(床下地)、D…床暖房用コントローラ、CU…床暖房用コントローラ内の制御装置、1…配線キット、2…配線キットのコネクタ、3a、3b、3c…配線キットのケーブル、4…配線キットの他端側の接続端、20…3線式コード状ヒータ、20c…3線式コード状ヒータの自由端、21…第1のヒータ線、22…第2のヒータ線、23…検知線、24、26…第1の被覆樹脂、25…第2の被覆樹脂、27…被覆材、30…単位ピース、31…木質基材、32…配線溝、34、35…電気式床暖房パネルのコネクタ、36…遮音溝、37…緩衝材層、50…床暖房用コントローラ内に組み込まれたb接点、51…b接点の出力側、52…b接点の入力側、R…断線検知リレー、R1…検出制御リレー(自己保持型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルの複数枚を電気的に接続して床下地面に敷き詰め、床暖房用コントローラを介して電気式床暖房パネルに所要の電力を供給するようにした電気式床暖房フロアであって、
前記電気式床暖房パネルに組み込まれるコード状ヒータは、第1と第2の2本のヒータ線と1本の検知線とからなり、前記第1のヒータ線と前記検知線とはそれぞれが第1の被覆樹脂で被覆されており、前記第2のヒータ線は前記第1の被覆樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂で被覆されている3線式コード状ヒータであり、
前記床暖房用コントローラは、前記第1と第2の2本のヒータ線に電力を供給する電力供給回路側を出力側とし、前記検知線側を入力側とするb接点を少なくとも備える、
ことを特徴とする電気式床暖房フロア。
【請求項2】
前記複数枚の電気式床暖房パネルは、各電気式床暖房パネルに組み込まれた3線式コード状ヒータの2本のヒータ線と1本の検知線のそれぞれがコネクタを介して並列接続された1組以上のグループにグループ化されていることを特徴とする請求項1に記載の電気式床暖房フロア。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気式床暖房フロアであって、各電気式床暖房パネルまたは各グループ化された電気式床暖房パネル群は、一方端に電気式床暖房パネル側のコネクタに接続するコネクタをまた他方端に前記床暖房用コントローラに接続する接続端を備えた配線キットを介して、前記床暖房用コントローラと接続していることを特徴とする電気式床暖房フロア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−92312(P2009−92312A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263531(P2007−263531)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】