説明

電気式脱イオン水製造装置

【課題】高温の被処理水を安定的に長期間、処理できる電気式脱イオン水製造装置を提供する。
【解決手段】一側のカチオン交換膜2bと他側のアニオン交換膜2aとで区画された空間内にイオン交換体が充填された脱塩室3と、脱塩室の外側にカチオン交換膜と対向するように設けられ陰極8を備えた陰極室6と、脱塩室の外側にアニオン交換膜と対向するように設けられ陽極7を備えた陽極室5と、を有する電気式脱イオン水製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式脱イオン水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、効率的に長期間、脱塩が可能な装置として、電気式脱イオン水製造装置が使用されている。特許文献1〜4(特開2009−241024号公報、特開2009−233537号公報、特開2009−233536号公報、特開2009−160555号公報)に開示されているように、この電気式脱イオン水製造装置の中では、イオン交換膜が使用されている。
【0003】
イオン交換膜は大きく分けて均質膜、不均質膜に分類される。不均質膜は既成のイオン交換樹脂を粉砕して得られる微粉末を、バインダーポリマーと混合した後、膜状に成型することにより作製できる。一方、均質膜は原料モノマー液を補強体に含浸させてあらかじめ膜状のポリマーを作り、これにイオン交換基を導入することにより作製される。
【0004】
イオン交換膜は、網目状の基材と、基材を被覆するように設けられ、イオン交換基を有する重合体などから構成される。
【0005】
例えば、均質アニオン交換膜に用いられる基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等を挙げることができる。これらの材料は、ポリマーとの相性や、強度の点から基材として好ましい特性を有する。
【0006】
均質アニオン交換膜の重合体としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のクロロメチル化反応後の第4級アミノ化物、クロロメチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の第4級アミノ化物、ビニルピリジン−ジビニルベンゼン共重合体およびその第4級ピリジニウム化物、などを挙げることができる。特に、スチレンまたはその誘導体の重合体を母体とし、第4級アンモニウム基またはピリジニウム基を有するものは耐薬品性、電気抵抗、膜強度の観点から好ましい材料である。その他に脂肪族アミン、芳香族アミン誘導体とアルデヒド/ケトン誘導体との縮重合体、エチレンイミン−エピクロルヒドリン系膜、ビニルピリジン−エポキシ化合物との架橋重合体、アクリルエステル系アニオン交換体を挙げることができる。その他、重合体の代わりに、無機イオン交換体等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−241024号公報
【特許文献2】特開2009−233537号公報
【特許文献3】特開2009−233536号公報
【特許文献4】特開2009−160555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術には以下に示す問題点があった。すなわち、従来の不均質アニオン交換膜はその製法上、機械的強度、化学的強度、耐熱性に劣るため、電気式脱イオン水製造装置内で使用することは困難であった。
【0009】
また、従来の均質アニオン交換膜は重合体の耐熱性が低いものであった。このため、均質アニオン交換膜を用いた電気式脱イオン水製造装置内に高温の熱水を通水すると、イオン交換容量の低下や第4級アンモニウム基から3級アミノ基への弱化、基材と重合体の剥がれによる透水性の増加と言った問題が発生していた。このイオン交換容量の低下は、電気式脱イオン水製造装置の脱塩性能を著しく低下させることとなっていた。また、弱化は電気抵抗の増大を招き、透水性の増加は脱塩水と濃縮水のシール性を低下させる為、処理水質の悪化や、水回収率の低下と言った運転上の問題も引き起こしていた。
【0010】
このため、従来の、熱水に対して使用する、アニオン交換膜を用いた電気式脱イオン水製造装置の寿命は総じて短く、安定的に長期間運転をすることが困難であった。
【0011】
特に、製薬分野の殺菌工程、発電所の復水の脱塩工程、燃料電池から回収した水の脱塩工程などでは、50〜98℃にもなる高温の熱水を電気式脱イオン水製造装置内に通水するため、上記のような問題点が顕著なものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、アニオン交換膜の重合体として、一般式(1)及び(2)の少なくとも一方で示される特定の繰り返し単位を含有する重合体は、耐熱性に非常に優れていること、イオン交換基の化学的安定性に優れること、機械的強度に優れることを発見した。この結果、この重合体を含有する均質アニオン交換膜を用いることで、より安定性が高く、長寿命の電気式脱イオン水製造装置を提供することが可能となり、本発明に到達した。
【0013】
一実施形態は、
一側のカチオン交換膜と他側のアニオン交換膜とで区画された空間内にイオン交換体が充填された脱塩室と、
前記脱塩室の外側に前記カチオン交換膜と対向するように設けられ、陰極を備えた陰極室と、
前記脱塩室の外側に前記アニオン交換膜と対向するように設けられ、陽極を備えた陽極室と、
を有する電気式脱イオン水製造装置であって、
前記アニオン交換膜は、
基材と、
下記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の少なくとも一方を含有する重合体と、
を有する電気式脱イオン水製造装置に関する。
【0014】
【化1】

【0015】
(一般式(1)において、mは0、1又は2、nは1〜6の整数、R1はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、X-は陰イオンを示す。重合体中の繰り返し単位あたりのmの平均値mavは0.3〜2である。)
【0016】
【化2】

【0017】
(一般式(2)において、R2はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、x、yはそれぞれ独立して0、1又は2、X-は陰イオンを示す。重合体中の繰り返し単位あたりのx+yの平均値(x+y)avは0.3≦(x+y)av≦2を満たす。)。
【0018】
他の実施形態は、
一側のカチオン交換膜と他側のアニオン交換膜とで区画された空間内にイオン交換体が充填された脱塩室と、
前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜と対向するように前記脱塩室内に設けられ、前記脱塩室をアニオン交換膜側の第1小脱塩室とカチオン交換膜側の第2小脱塩室に区画する中間アニオン交換膜と、
前記脱塩室の外側に前記カチオン交換膜と対向するように設けられ、陰極を備えた陰極室と、
前記脱塩室の外側に前記アニオン交換膜と対向するように設けられ、陽極を備えた陽極室と、
を有する電気式脱イオン水製造装置であって、
前記アニオン交換膜及び中間アニオン交換膜の少なくとも一方は、
基材と、
下記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の少なくとも一方を含有する重合体と、
を有する電気式脱イオン水製造装置に関する。
【0019】
【化3】

【0020】
(一般式(1)において、mは0、1又は2、nは1〜6の整数、R1はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、X-は陰イオンを示す。重合体中の繰り返し単位あたりのmの平均値mavは0.3〜2である。)
【0021】
【化4】

【0022】
(一般式(2)において、R2はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、x、yはそれぞれ独立して0、1又は2、X-は陰イオンを示す。重合体中の繰り返し単位あたりのx+yの平均値(x+y)avは0.3≦(x+y)av≦2を満たす。)
【発明の効果】
【0023】
耐熱性に優れ、イオン交換基の化学的安定性が高く、機械的強度に優れたアニオン交換膜を、電気式脱イオン水製造装置に適用することで、高温の被処理水を安定的に長期間、処理できる電気式脱イオン水製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施例の電気式脱イオン水製造装置を表す図である。
【図2】第2実施例の電気式脱イオン水製造装置を表す図である。
【図3】第3実施例の電気式脱イオン水製造装置を表す図である。
【図4】第4実施例の電気式脱イオン水製造装置を表す図である。
【図5】実施例1、2、比較例1のサイクル回数とリーク量の関係を表す図である。
【図6】実施例3、4、比較例2のサイクル回数とリーク量の関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
電気式脱イオン水製造装置は、アニオン交換膜を有する。このアニオン交換膜は、基材と、下記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の少なくとも一方を含有する重合体と、を有する。
【0026】
【化5】

【0027】
(一般式(1)において、mは0、1又は2、nは1〜6の整数、R1はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、X-は陰イオンを示す。重合体中の繰り返し単位あたりのmの平均値mavは0.3〜2である。)。
【0028】
【化6】

【0029】
(一般式(2)において、R2はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、x、yはそれぞれ独立して0、1又は2、X-は陰イオンを示す。重合体中の繰り返し単位あたりのx+yの平均値(x+y)avは0.3≦(x+y)av≦2を満たす。)。
【0030】
なお、一般式(1)の繰り返し単位において、m=0のとき、下記式(5)の繰り返し単位となる。
【0031】
【化7】

【0032】
一般式(1)の繰り返し単位において、m=1のとき、下記一般式(6)の繰り返し単位となる。
【0033】
【化8】

【0034】
(一般式(6)において、nは1〜6の整数、R1はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、X-は陰イオンを示す。)。
【0035】
一般式(1)の繰り返し単位において、m=2のとき、下記一般式(7)の繰り返し単位となる。
【0036】
【化9】

【0037】
(一般式(7)において、nはそれぞれ独立して1〜6の整数、R1はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、X-は陰イオンを示す。)。
【0038】
以下、電気式脱イオン水製造装置及び、この装置中の各部について説明する。
【0039】
1.一般式(1)で示される繰り返し単位
一般式(1)で示される繰り返し単位(以下、「式(1)の単位」と記載する場合がある)は、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)の芳香環にアルキレンスペーサーを介して第4級アンモニウム基を導入した構造を有している(m=1、2の場合)。式(1)の単位を含む重合体が優れた耐熱性、化学的安定性及び機械的強度を示す理由を、下記(a)〜(c)に示す。
【0040】
(a)式(1)の単位は、2つのメチル基と四級アンモニウム基によって嵩高くなっており、これらの基が立体障害となって、式(1)の単位の自由回転が制限される。
(b)主鎖(特に、芳香環)の電子密度が高いため、芳香環の側鎖として導入された四級アンモニウム基の安定性が向上する。
(c)アルキレンスペーサーによって、耐アルカリ性が向上する。
【0041】
重合体中の繰り返し単位当りの第4級アンモニウム基導入量の平均値mavは、0.3〜2である。mavが0.3未満であると、アニオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。一方、第4級アンモニウム基導入量の上限は繰り返し単位当り2であり、構造上、2を越えて第4級アンモニウム基を導入することはできない。mavは0.3〜1.5が好ましく、0.4〜1.0がより好ましい。mavをこれらの範囲内とすることによって、より耐熱性及びアニオン交換容量に優れたアニオン交換膜とすることができる。
【0042】
アルキレンスペーサーの長さは炭素数で1〜6であり、炭素数1もしくは4〜6のとき、優れた耐熱性を示すため好ましい。一方、スペーサーの炭素数が6を超えて長くなると、アニオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。
【0043】
また、第4級アンモニウム基の窒素カチオンと結合している置換基R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、炭素数1のメチル基の場合、第4級アンモニウム基の塩基性度が最も高くなるため、好ましい。一方、R1の炭素数が4を越えると、第4級アンモニウム基の導入反応が定量的に進行しにくくなり、アニオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。
【0044】
2.一般式(2)で示される繰り返し単位
一般式(2)で示される繰り返し単位(以下、「式(2)の単位」と記載する場合がある)は、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)のメチル基に第4級アンモニウム基が結合した構造を有している(x、y=1、2の場合)。式(2)の単位を含む重合体が優れた耐熱性、化学的安定性及び機械的強度を示す理由を、下記(d)〜(e)に示す。
【0045】
(d)式(2)の単位は、芳香環の側鎖として第4級アンモニウム基によって置換されたメチル基を有している。このため、嵩高くなっており、これらの基が立体障害となって、式(2)の単位の自由回転が制限される。
(e)主鎖(特に、芳香環)の電子密度が高いため、芳香環の側鎖として導入された第4級アンモニウム基の安定性が向上する。
【0046】
重合体中の繰り返し単位あたりの第4級アンモニウム基導入量の平均値(x+y)avは、0.3〜2である。(x+y)avが0.3未満であると、アニオン交換容量が低下し、膜特性も悪化してしまうため好ましくない。一方、(x+y)avが2を越えると、水に対する膨潤が著しく大きくなり、溶解してしまう場合があるため、好ましくない。
【0047】
第4級アンモニウム基の窒素カチオンと結合している置換基R2は炭素数1〜4のアルキル基であり、炭素数1のメチル基の場合、第4級アンモニウム基の塩基性度が最も高くなるため、好ましい。一方、R2の炭素数が4を越えると、第4級アンモニウム基の導入反応が定量的に進行しにくくなり、アニオン交換容量が低下してしまうため、好ましくない。
【0048】
3.重合体
式(1)及び(2)のうち少なくとも一方の単位を含む重合体の分子量に特に制限はないが、機械的強度の高い膜を得るためには、10000〜100000の数平均分子量を有していることが好ましい。数平均分子量が10000未満であると、得られる膜が脆くなり機械的強度が低下する場合がある。数平均分子量が100000を超えると、製膜時の加工性が低下する場合がある。
【0049】
更に、アニオン交換膜としての特性を低下させない範囲であれば、式(1)及び(2)の単位以外の繰り返し単位を使用できる。このような繰り返し単位としては例えば、エーテルスルフォン単位、エーテルケトン単位、ビスフェノールAカーボネート単位、ポリフェニレンエーテルと相溶性を示すポリスチレンやSBS、SEBS等のスチレン系共重合体、などを挙げることができる。これらの繰り返し単位のうち、エーテルスルフォン単位、エーテルケトン単位、ビスフェノールAカーボネート単位はガラス転移温度が高く、耐熱性に優れるという特性を有する。また、ポリスチレンやSBS、SEBS等のスチレン系共重合体は、ポリフェニレンエーテルとの相溶性が高いという性質を有する。このため、重合体中にこれらの繰り返し単位を含んだ場合であっても、式(1)及び(2)の単位の優れた耐熱性を維持でき、アニオン交換膜の耐熱性を低下させない。また、アニオン交換膜としての形状安定性を更に高めるため、重合体中に架橋構造を導入しても良い。
【0050】
式(1)の単位からなる重合体の製造方法について、以下に例を説明する。この重合体の製造方法に特に制限はなく、様々な方法により重合体を製造することができる。
【0051】
例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)をジクロロエタン等の溶媒に溶解させ、ブロモメチルオクチルエーテル等でブロモメチル化した後、トリアルキルアミンと反応させることで重合体を製造することができる。
【0052】
別の製造法としては、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)をTHF等の溶媒に溶解させ、ブチルリチウム等でリチオ化した後、ジブロモブタン等のアルキルジブロマイドと反応させ、更にトリアルキルアミンと反応させることで重合体を製造することができる。
【0053】
式(2)の単位からなる重合体の製造方法についても特に制限はなく、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)をクロロベンゼンやテトラクロロエタン等の溶媒に溶解させ、N−ブロモスクシンイミド等でブロモ化した後、トリアルキルアミンと反応させることで製造することができる。
【0054】
4.基材
アニオン交換膜の基材としては、本発明の効果を阻害しない限り、特に限定されないが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が好ましい。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は高い耐熱性を有している上に、線膨張係数も小さいため、熱水に晒された際の寸法変化を小さく抑えることができる。これによって母体との剥がれも起きにくく透水性の増加も極力抑えられる。
【0055】
5.アニオン交換膜
電気式脱イオン水製造装置において、アニオン交換膜は、脱塩室を区画するように枠体の一方の側に設けられたアニオン交換膜や、脱塩室内を第1及び第2小脱塩室に区画する中間アニオン交換膜として使用される。
【0056】
アニオン交換膜を製膜する製膜方法は、特に制限されない。例えば、重合体を溶媒に溶解させたキャスト液を調製し、基材を置いたガラス板やテフロン(登録商標)板上に、キャスト液をキャストした後、溶媒を蒸発させる等の方法で製膜することができる。
【0057】
6.カチオン交換膜
電気式脱イオン水製造装置中で使用するカチオン交換膜は、充分な脱イオン性能と耐熱性能を有していれば特に限定されないが、耐熱性の面から均質膜である事が望ましい。
【0058】
7.電気式脱イオン水製造装置
電気式脱イオン水製造装置の一実施形態は、脱塩室、陰極室、陽極室を有する。脱塩室は、カチオン交換膜とアニオン交換膜とで区画された空間内にイオン交換体が充填されたものである。陰極室は、脱塩室の外側にカチオン交換膜と対向するように設けられ、陰極を備えている。陽極室は、脱塩室の外側にアニオン交換膜と対向するように設けられ、陽極を備えている。アニオン交換膜は、基材と、式(1)及び(2)の単位の少なくとも一方を含有する重合体を有する。
【0059】
また、電気式脱イオン水製造装置の他の実施形態は、脱塩室内に中間アニオン交換膜を有する。この中間アニオン交換膜は、カチオン交換膜及びアニオン交換膜と対向するように脱塩室内に設けられ、脱塩室をアニオン交換膜側の第1小脱塩室とカチオン交換膜側の第2小脱塩室に区画する。アニオン交換膜及び中間アニオン交換膜の少なくとも一方は、基材と、式(1)及び(2)の単位の少なくとも一方を含有する重合体を有する。
【0060】
陽極室及び陰極室内にはスペーサや隔膜を配置しても、イオン交換体を充填しても良い。また、陽極室とアニオン交換膜、陰極室とカチオン交換膜の間に隔膜を介してそれぞれ、濃縮室を設けても良い。イオン交換体を充填する場合、陽極室及び陰極室は、アニオン交換体の単床、カチオン交換体の単床、又は、アニオン交換体とカチオン交換体の混床の何れの形態としても良い。このように陽極室及び陰極室にイオン交換体を充填することで、電気抵抗を低減することができる。
【0061】
電気式脱イオン水製造装置は、陽極室と陰極室の間に、一つの脱塩室を有する構造のものとしても良い。このタイプの電気式脱イオン水製造装置は、陽極室/脱塩室/陰極室の順に配置された構造となる。また、このタイプの電気式脱イオン水製造装置の変形例として、陽極室/隔膜/濃縮室/脱塩室/濃縮室/隔膜/陰極室の順に配置された構造としても良い。
【0062】
電気式脱イオン水製造装置は、複数の脱塩室を有する構造のものとして、陽極室と陰極室の間に、脱塩室と濃縮室を複数、設けても良い。すなわち、この場合、電気式脱イオン水製造装置は、陽極室/脱塩室/濃縮室/脱塩室/・・・・・/脱塩室/陰極室の構造となる。また、このタイプの電気式脱イオン水製造装置の変形例として、陽極室とアニオン交換膜、陰極室とカチオン交換膜の間に隔膜を介して濃縮室を設けることにより、陽極室/隔膜/濃縮室/脱塩室/濃縮室/脱塩室/・・・・・/脱塩室/濃縮室/隔膜/陰極室の構造としても良い。陽極室と、陰極室の間に設ける、脱塩室と濃縮室の数は特に限定されず、要求される水の処理流量及び処理能力に応じて適宜、選択することができる。
【0063】
隔膜は、配置される位置により、アニオン交換膜またはカチオン交換膜を、適宜選択できる。
【0064】
脱塩室は、中間イオン交換膜を設けない場合、カチオン交換膜、アニオン交換膜、及び枠体から構成されている。また、中間イオン交換膜を設ける場合、脱塩室は、カチオン交換膜、アニオン交換膜、中間イオン交換膜及び枠体から構成されている。中間イオン交換膜は、アニオン交換膜とカチオン交換膜のいずれも用いることができるが、本発明においては、アニオン交換膜が好適に用いられる。
【0065】
枠体は、くりぬかれた内部空間を有するリブから構成されている。枠体の一方及び他方の側には、それぞれカチオン交換膜及びアニオン交換膜が配置されている。また、中間イオン交換膜を設ける場合、枠体と枠体の間に中間イオン交換膜が配置されている。
【0066】
脱塩室内に充填するイオン交換体は、イオン交換樹脂、イオン交換膜、イオン交換繊維、モノリス状イオン交換体の形態のものを使用することができる。また、イオン交換樹脂を使用する場合、ゲル形、MR形のいずれも用いることができる。また、脱塩室は、アニオン交換体又はカチオン交換体のみを充填する単床形としても、アニオン交換体とカチオン交換体を充填する混床形としても良い。脱塩室内を第1及び第2小脱塩室に区画する場合、各小脱塩室は、アニオン交換体若しくはカチオン交換体の単床形、又はアニオン交換体とカチオン交換体の混床形の何れとしても良い。
【0067】
陽極の材料としては特に限定されないが、電気式脱イオン水製造装置の運転時に塩素が発生する場合があるため、耐塩素性を有するものが好ましい。陽極の材料としては例えば、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属、あるいはこれらの貴金属をチタン等に被覆した網状あるいは板状の電極を用いることができる。
【0068】
陰極の材料としては、陰極としての機能を発揮するものであれば特に限定されないが、例えば、板状のステンレスや網状のステンレスを用いることができる。
【0069】
以下、電気式脱イオン水製造装置の具体例を説明する。下記第1〜第5実施例では、アニオン交換膜及び中間アニオン交換膜は、基材と、式(1)及び(2)の単位の少なくとも一方を含有する重合体を有する。なお、下記具体例では、便宜上、複数の実施例に分割して説明する。しかし、特に明示した場合及び原理的に不可能な場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例の関係にある。
【0070】
(第1実施例)
図1は、第1実施例の電気式脱イオン水製造装置を表す図面である。図1に示すように、アニオン交換膜2a、カチオン交換膜2bで区画されるように、脱塩室3が設けられている。脱塩室3中には、アニオン交換樹脂4及びカチオン交換樹脂1が混床形で充填されている。また、脱塩室3の外側に、アニオン交換膜2aと対向するように陽極7を備えた陽極室5、カチオン交換膜2bと対向するように陰極8を備えた陰極室6が設けられている。陽極7及び陰極8は直流電源(図示していない)に接続されている。そして、脱塩室3内を矢印の方向に被処理水が流れ(下降水)、陽極室5および陰極室6内を矢印の方向に電極水が流れるようになっている(上昇水)。
【0071】
被処理水が脱塩室3内を流れている間に、被処理水中のアニオン成分及びカチオン成分は、それぞれアニオン交換樹脂4及びカチオン交換樹脂1に捕捉される。そして、脱塩室3を流れる被処理水に対して、陽極7及び陰極8を介して電源から直流電流を通電させる。これにより、アニオン交換樹脂4に捕捉されたアニオン成分はアニオン交換膜2aを通って陽極室5まで電気的に泳動して除去される。同様に、カチオン交換樹脂1に捕捉されたカチオン成分はカチオン交換膜2bを通って陰極室6まで電気的に泳動して除去される。このように電気式脱イオン水製造装置では、電極間に通電することによって、脱塩室3内のアニオン交換樹脂4及びカチオン交換樹脂1に捕捉されたイオン成分は、随時、陽極室5及び陰極室6内に除去される。
【0072】
また、脱塩室3内のアニオン交換樹脂4及びカチオン交換樹脂1の界面では水の解離反応により、水素イオン(H+)及び水酸化物イオン(OH-)が発生する。これらのイオンがアニオン交換樹脂4及びカチオン交換樹脂1とイオン交換を行うことによって、アニオン交換樹脂4及びカチオン交換樹脂1は再生される。
【0073】
このように電気式脱イオン水製造装置では、脱塩室内に充填されたイオン交換体がイオンによって飽和することを抑制することができ、長時間、安定的にイオン成分を除去できる。
【0074】
図1では、脱塩室3内の被処理水の流れと、陽極室5及び陰極室6内の電極水の流れは異なる方向とした。しかし、被処理水と電極水の流れ方向はこれに限定されるわけではなく、被処理水の流れ方向と電極水の流れ方向は同じであっても、異なっていても良い。また、陽極室5内の電極水の流れ方向と、陰極室6内の電極水の流れ方向は同じとするのが好ましい。
【0075】
(第2実施例)
図2は、第2実施例の電気式脱イオン水製造装置を表す図面である。本実施例は第1実施例の変形例であり、陽極室5と脱塩室3の間、陰極室6と脱塩室3の間にそれぞれ、濃縮室9を設けた点が第1実施例とは異なる。濃縮室9と、陽極室5及び陰極室6との間は図示していない隔膜が設けられている。その他の点については、第1実施例と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
(第3実施例)
図3は、第3実施例の電気式脱イオン水製造装置を表す図面である。本実施例の電気式脱イオン水製造装置は、脱塩室3内に中間アニオン交換膜17を有し、脱塩室がアニオン交換膜2a側の第1小脱塩室15と、カチオン交換膜2b側の第2小脱塩室16に区画されている。第1小脱塩室15にはアニオン交換樹脂4が充填され、第2小脱塩室16にはカチオン交換樹脂1が充填されている。各小脱塩室15及び16内には順に、同方向に被処理水が流れるようになっている。被処理水は、第1小脱塩室15→第2小脱塩室16の順に流しても、第2小脱塩室16→第1小脱塩室15の順に流しても良い。また、第1小脱塩室15と第2小脱塩室16内を被処理水が流れる方向は逆方向であっても良い。
【0077】
以下では、第2小脱塩室16→第1小脱塩室15の順に通水した場合を例に挙げて、電気式脱イオン水製造装置の使用方法を説明する。
【0078】
被処理水はまず、第2小脱塩室16内を流れ、この間に被処理水中のカチオン成分が除去される。この後、被処理水は第1小脱塩室15内を流れ、この間に被処理水中のアニオン成分が除去される。また、陽極室5内には電極水が流れ、アニオン交換膜2aを介して電気的に泳動してくるアニオン成分を受取る。同様に、陰極室6内には電極水が流れ、カチオン交換膜2bを介して電気的に泳動してくるカチオン成分を受け取る。
【0079】
本実施例ではまず、第2小脱塩室16においてカチオン成分が除去されるため、被処理水中にはアニオン成分が残り、これらの対イオンとして水の解離反応により生じた水素イオンが被処理水中に増えることとなる。この結果、カチオン成分除去後の被処理水のpHは、酸性寄り(例えばpH5〜6)になる。従って、この後、第1小脱塩室15に流入する被処理水は酸性寄りとなり、被処理水中において泳動しやすいアニオン成分である水酸化物イオンが少なくなる。この結果、被処理水中の水酸化物イオン以外のアニオン成分を除去しやすくなる。このようにして本実施例の電気式脱イオン水製造装置では、高純度の水を得ることができる。
【0080】
また、被処理水が第2小脱塩室16内を流れている間に、被処理水中のアニオン成分が中間アニオン交換膜17を通って第1小脱塩室15内まで泳動する。これによって、アニオン成分の除去効率を高めることができる。
【0081】
(第4実施例)
図4は、第2実施例の変形例を示す図である。図4に示すように、この電気式脱イオン水製造装置では、陽極室5と陰極室6の間に、脱塩室3と濃縮室10が交互に配置された構造を構成する点が第2実施例とは異なる。本実施例では、複数の脱塩室と濃縮室が設けられたものであるため、被処理水中のイオン交換能を高めることができる。
【0082】
濃縮室10には、陽極室5及び陰極室6と同様にイオン交換体を充填しても良い。この場合、濃縮室10は、アニオン交換体若しくはカチオン交換体の単床形、又はアニオン交換体とカチオン交換体の混床形の何れの形態としても良い。なお、上記のように脱塩室及び濃縮室を複数、設ける構造は、第3実施例の電気式脱イオン水製造装置にも適用することができる。
【0083】
上記第1〜第4実施例の電気式脱イオン水製造装置のアニオン交換膜及び中間アニオン交換膜は、式(1)及び(2)の単位の少なくとも一方を含有する重合体を有する。このため、アニオン交換膜を、耐熱性に優れ、イオン交換基の化学的安定性が高く、機械的強度に優れたものとすることができる。この結果、電気式脱イオン水製造装置が、高温の被処理水を安定的に長期間、処理可能な装置となる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の電気式脱イオン水製造装置は、半導体製造分野、医薬品製造分野、原子力や火力等の発電分野、食品分野、透析装置分野などの各種産業又は研究施設、病院において使用することができる。
【実施例】
【0085】
次に実施例、比較例を挙げて、本発明の電気式脱イオン水製造装置を具体的に説明する。なお、下記実施例は、本発明のより一層の深い理解のために示される具体例であって、本発明は、これらの具体例に何ら限定されるものではない。
【0086】
<式(1)の単位からなるアニオン交換膜の製造>
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(アルドリッチ製、数平均分子量32000)27gを、テトラクロロエタン200mlに溶解させた溶液1を調製した。この溶液1に、0.5モルのブロモメチルオクチルエーテルをテトラクロロエタン200mlに溶解させた溶液2を、室温で添加して溶液3を得た。
【0087】
続いて、30ミリモルの四塩化スズをテトラクロロエタン20mlに溶解させた溶液4を、30分間かけて溶液3中に滴下して、溶液5を得た。滴下終了後、溶液5を55℃に昇温し、24時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶液5に濃塩酸100mlを加え、2時間攪拌し、有機相を分離してメタノール中に添加してポリマーを沈殿させ、濾別して回収し、乾燥してブロモメチル化ポリフェニレンエーテル45gを単離した。
【0088】
上記ブロモメチル化ポリフェニレンエーテル45gをTHF1000mlに溶解させて溶液6を得た後、溶液6中に、30%トリメチルアミン水溶液200mlを、室温にて添加して溶液7を得た。添加後、攪拌下昇温して、溶液7を40℃で12時間、反応させ、トリメチルアンモニウム基を導入した。
【0089】
反応終了後、エバポレータにて反応液を濃縮し得られた濃縮液を、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製メッシュが配置されたテフロン(登録商標)板上にキャストし、溶媒を蒸発させて厚さ200μmのアニオン交換膜を得た。
【0090】
このアニオン交換膜のアニオン交換容量は2.2meq/gであった。一方、第4級アンモニウム基が繰り返し単位当り1個導入された際の、重合体のアニオン交換容量の理論値は3.7meq/gである。このため、重合体中の繰り返し単位あたりの平均値mavは、2.2/3.7=0.59であった。
【0091】
最終的に、基材としてPEEK製メッシュと、下記式(8)で示される繰り返し単位を有する重合体と、を有するアニオン交換膜(以下、このアニオン交換膜を「アニオン交換膜1」と記載する場合がある)が得られた。
【0092】
【化10】

【0093】
(式(8)において、mは0、1又は2、nは1又は2を示す。重合体中の繰り返し単位あたりのmの平均値mavは0.59である)。
【0094】
<式(2)の単位からなるアニオン交換膜の製造>
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(アルドリッチ製、数平均分子量32000)20gを、クロロベンゼン250mlに110℃で溶解させて溶液Aを得た。溶液A中に、ベンゾイルパーオキサイド2.0gとN−ブロモスクシンイミド30.0gを添加し、5時間反応させて溶液Bを得た。反応終了後、溶液Bを冷却し、メタノール中に溶液Bを添加してポリマーを沈殿させ、濾別、回収、乾燥してメチル基が臭素化されたポリフェニレンエーテル30gを単離した。
【0095】
上記臭素化ポリフェニレンエーテル30gを、THF1000mlに溶解させ溶液Cを得た後、溶液C中に30%トリメチルアミン水溶液200mlを室温にて添加して溶液Dを得た。添加後、溶液Dを攪拌下、昇温して40℃で12時間、反応させ、トリメチルアンモニウム基を導入した溶液Eを得た。
【0096】
反応終了後、エバポレータにて溶液Eを濃縮して得られた濃縮液を、PEEK製メッシュが配置されたテフロン(登録商標)板上にキャストし、溶媒を蒸発させて厚さ200μmのアニオン交換膜を得た。
【0097】
このアニオン交換膜のアニオン交換容量は1.9meq/gであった。一方、第4級アンモニウム基が繰り返し単位当り1個導入された際の、重合体のアニオン交換容量の理論値は3.88meq/gである。このため、このアニオン交換膜に導入された四級アンモニウム基は、1.9/3.88=0.49より繰り返し単位当り0.49であった。
【0098】
最終的に、基材としてPEEK製メッシュと、下記式(9)で示される繰り返し単位を有する重合体と、を有するアニオン交換膜(以下、このアニオン交換膜を「アニオン交換膜2」と記載する場合がある)が得られた。
【0099】
【化11】

【0100】
(式(9)において、x、yはそれぞれ独立して0、1又は2を示す。重合体中の繰り返し単位あたりのx+yの平均値(x+y)avは0.49である)。
【0101】
(実施例1)
下記仕様の電気式脱イオン水製造装置を準備した。
脱塩室:縦300mm、横80mm、厚さ8mm
脱塩室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)とカチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIR−120B)の混床形態
脱塩室の数:3室
濃縮室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室に充填したイオン交換体:カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIR−120B)
陰極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陰極室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)
脱塩室のカチオン交換膜:旭硝子製セレミオンCMD
脱塩室のアニオン交換膜:アニオン交換膜1
上記電気式脱イオン水製造装置を下記運転条件で運転した。
被処理水の導電率:10±1μS/cm(RO膜の透過水)
脱塩室の被処理水流量:60L/h
濃縮水の原水の導電率:10±1μS/cm(RO膜の透過水)
濃縮水流量:6L/h
電極水の原水の導電率:10±1μS/cm(RO膜の透過水)
電極水流量:10L/h
運転電流値:1.0A
被処理水の水温:(i)25℃から90℃への昇温工程、1時間
(ii)90℃での温度維持工程、1時間
(iii)90℃から25℃への降温工程、1時間
(iv)25℃での運転状態確認、24時間
上記(i)から(iv)を1サイクルとして50回実施
原水硬度成分:全硬度0.8mgCaCO3/L
原水全炭酸:11mgCO2/L
原水シリカ濃度:0.7mg/L。
【0102】
(実施例2)
下記仕様の電気式脱イオン水製造装置を準備した。
脱塩室:縦300mm、横80mm、厚さ8mm
脱塩室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)とカチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIR−120B)の混床形態
脱塩室に充填したイオン交換体の体積:アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の体積はそれぞれ、実施例1の脱塩室に充填したアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の体積と同じとした。
脱塩室の数:3室
濃縮室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室に充填したイオン交換体:カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIR−120B)
陽極室に充填したカチオン交換体の体積:カチオン交換樹脂の体積は、実施例1の陽極室に充填したカチオン交換樹脂の体積と同じとした。
陰極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陰極室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)
陰極室に充填したアニオン交換体の体積:アニオン交換樹脂の体積は、実施例1の陰極室に充填したアニオン交換樹脂の体積と同じとした。
脱塩室のカチオン交換膜:旭硝子製セレミオンCMD
脱塩室のアニオン交換膜:アニオン交換膜2
実施例1と同じ条件で、上記電気式脱イオン水製造装置を運転した。
【0103】
(実施例3)
下記仕様の電気式脱イオン水製造装置を準備した。
第1小脱塩室:縦300mm、横80mm、厚さ8mm
第2小脱塩室:縦300mm、横80mm、厚さ8mm
第1小脱塩室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)とカチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIR−120B)の混床形態
第2小脱塩室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)の単床形態
脱塩室の数:3室(小脱塩室6室)
濃縮室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室に充填したイオン交換体:カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIR−120B)
陽極室に充填したカチオン交換体の体積:カチオン交換樹脂の体積は、実施例1の陽極室に充填したカチオン交換樹脂の体積と同じとした。
陰極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陰極室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)
陰極室に充填したアニオン交換体の体積:アニオン交換樹脂の体積は、実施例1の陰極室に充填したアニオン交換樹脂の体積と同じとした。
脱塩室のカチオン交換膜:旭硝子製セレミオンCMD
脱塩室のアニオン交換膜:アニオン交換膜1
脱塩室の中間イオン交換膜:アニオン交換膜1
実施例1と同じ条件で、上記電気式脱イオン水製造装置を運転した。
【0104】
(実施例4)
下記仕様の電気式脱イオン水製造装置を準備した。
第1小脱塩室:縦300mm、横80mm、厚さ8mm
第2小脱塩室:縦300mm、横80mm、厚さ8mm
第1小脱塩室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)とカチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIR−120B)の混床形態
第1小脱塩室に充填したイオン交換体の体積:アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の体積はそれぞれ、実施例3の第1小脱塩室に充填したアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の体積と同じとした。
第2小脱塩室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)の単床形態
第2小脱塩室に充填したアニオン交換体の体積:アニオン交換樹脂の体積は、実施例3の第2小脱塩室に充填したアニオン交換樹脂の体積と同じとした。
脱塩室の数:3室(小脱塩室6室)
濃縮室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室に充填したイオン交換体:カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIR−120B)
陽極室に充填したカチオン交換体の体積:カチオン交換樹脂の体積は、実施例1の陽極室に充填したカチオン交換樹脂の体積と同じとした。
陰極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陰極室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)
陰極室に充填したアニオン交換体の体積:アニオン交換樹脂の体積は、実施例1の陰極室に充填したアニオン交換樹脂の体積と同じとした。
脱塩室のカチオン交換膜:旭硝子製セレミオンCMD
脱塩室のアニオン交換膜:アニオン交換膜2
脱塩室の中間イオン交換膜:アニオン交換膜2
実施例1と同じ条件で、上記電気式脱イオン水製造装置を運転した。
【0105】
(比較例1)
下記仕様の電気式脱イオン水製造装置を準備した。
脱塩室:縦300mm、横80mm、厚さ8mm
脱塩室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)とカチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIR−120B)の混床形態
脱塩室に充填したイオン交換体の体積:アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の体積はそれぞれ、実施例1の脱塩室に充填したアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の体積と同じとした。
脱塩室の数:3室
濃縮室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室に充填したイオン交換体:カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;陽極室に充填したカチオン交換体の体積:カチオン交換樹脂の体積は、実施例1の陽極室に充填したカチオン交換樹脂の体積と同じとした。
陰極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陰極室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)
陰極室に充填したアニオン交換体の体積:アニオン交換樹脂の体積は、実施例1の陰極室に充填したアニオン交換樹脂の体積と同じとした。
脱塩室のカチオン交換膜:旭硝子製セレミオンCMD
脱塩室のアニオン交換膜:アストム製ネオセプタAHA
実施例1と同じ条件で、上記電気式脱イオン水製造装置を運転した。
【0106】
(比較例2)
下記仕様の電気式脱イオン水製造装置を準備した。
第1小脱塩室:縦300mm、横80mm、厚さ8mm
第2小脱塩室:縦300mm、横80mm、厚さ8mm
第1小脱塩室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)とカチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIR−120B)の混床形態
第1小脱塩室に充填したイオン交換体の体積:アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の体積はそれぞれ、実施例3の第1小脱塩室に充填したアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の体積と同じとした。
第2小脱塩室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)の単床形態
第2小脱塩室に充填したアニオン交換体の体積:アニオン交換樹脂の体積は、実施例3の第2小脱塩室に充填したアニオン交換樹脂の体積と同じとした。
脱塩室の数:3室(小脱塩室6室)
濃縮室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室に充填したイオン交換体:カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIR−120B)
陽極室に充填したカチオン交換体の体積:カチオン交換樹脂の体積は、実施例1の陽極室に充填したカチオン交換樹脂の体積と同じとした。
陰極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陰極室に充填したイオン交換体:アニオン交換樹脂(ロームアンドハース社製;アンバーライトIRA−420BL)
陰極室に充填したアニオン交換体の体積:アニオン交換樹脂の体積は、実施例1の陰極室に充填したアニオン交換樹脂の体積と同じとした。
カチオン交換膜:旭硝子製セレミオンCMD
アニオン交換膜:アストム製ネオセプタAHA
中間イオン交換膜:アストム製ネオセプタAHA
実施例1と同じ条件で、上記電気式脱イオン水製造装置を運転した。
実施例1〜4、比較例1及び2において使用したアニオン交換膜の種類を表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
(結果)
図5及び6に、実施例1〜4、比較例1及び2におけるサイクル回数とリーク量の関係を示す。図5のリーク量は、流量計によって、脱塩室入口と出口の流量を測定し、(入口の流量)−(出口の流量)として算出した量(L/h)を表す。図6のリーク量は、流量計によって、第1小脱塩室入口と出口の流量を測定し、(入口の流量)−(出口の流量)として算出した量(L/h)を表す。リーク量がほぼ0の値を示す場合は、脱塩室内に流入した被処理水は濃縮室中にリークせずに、そのまま脱塩室の出口から排出されるものといえる。一方、リーク量が0よりも大きな値を示す場合は、脱塩室内に流入した被処理水はリーク量に相当する分だけ濃縮室中にリークするものといえる。
【0109】
図5より、実施例1及び2ではサイクル数が50回までリーク量がほぼ0であるため、脱塩室から濃縮室に向かってイオン交換膜を透過する被処理水のリークがほぼ皆無であることが分かる。これに対して、比較例1では、サイクル回数の増加と共にリーク量が増加し、サイクル回数50回でリーク量は約25(L/h)となっている。このため、脱塩室から濃縮室への被処理水のリークによって脱塩室内への処理水の流入が徐々に減り、サイクル回数の増加と共に運転が困難な状態になっていることが分かる。
【0110】
図6より、実施例3及び4ではサイクル数が50回までリーク量がほぼ0であるため、第1小脱塩室から、第2小脱塩室及び濃縮室に向かってイオン交換膜を透過する被処理水のリークがほぼ皆無であることが分かる。これに対して、比較例2では、サイクル回数の増加と共にリーク量が増加し、サイクル回数50回でリーク量は約32(L/h)となっている。この理由は、濃縮室側及び第2小脱塩室側に耐熱性を有さないアニオン交換膜が設置されているため、アニオン交換能が低下したためであると考えられる。
【0111】
表2に、実施例1〜4、比較例1及び2におけるサイクル回数50回後における被処理水の比抵抗及び電気式脱イオン水製造装置の処理電圧を示す。表2より、実施例1〜4の比抵抗は16MΩ・cm以上の大きな値を示し、非常に良好な水質を維持していることが分かる。
【0112】
また、比較例1の比抵抗は15.9MΩ・cmであり、良好な水質を維持している。この理由は、比較例1ではリーク量が増えたために、脱塩室に通水される被処理水の量が減り、水質に悪影響を与えなかったためと考えられる。これに対して、比較例2では比抵抗が1.1と極端に低下している。この理由は、本来、第1小脱塩室で処理されるべきイオンが充分な処理がなされないまま、第2小脱塩室内にリークしたため、極端な水質低下が発生したためと考えられる。
【0113】
表2より、実施例1〜4では、電気式脱イオン水製造装置の処理電圧を低い値に維持できることが分かる。これに対して、比較例1では処理電圧が34Vと大きな値を示している。この理由は、脱塩室から濃縮室に対して、未処理の被処理水がリークするため、濃縮水の導電率が低下して電気抵抗が上昇した結果、処理電圧が上昇したものと考えられる。また、比較例2では処理電圧が61Vと非常に大きな値を示している。比較例2の処理電圧がこのように大きな値となった理由は、比較例1の理由に加えて、第1小脱塩室から第2小脱塩室への被処理水のリークも増大しているため、第2小脱塩室の負荷が増大したためと考えられる。この結果、第2小脱塩室内のイオン交換体が電気抵抗の高いシリカ形に変化して極端な電気抵抗の上昇を引き起こしたためと考えられる。
【0114】
表3に、イオン交換容量の変化率を記す。イオン交換容量の変化率は、サイクル回数0回時、及び50回後におけるイオン交換容量を測定した後、(サイクル回数50回後のイオン交換容量)/(サイクル回数0回時のイオン交換容量)として算出したものである。表3の結果より、実施例1〜4では変化率がほぼ1に近い値を示すことが分かる。この結果、脱塩室内に、式(1)又は(2)の単位からなる重合体を含むアニオン交換膜を使用することにより、サイクル回数50回後であってもイオン交換容量の低下がほとんど起こらないことが分かる。これに対して、比較例1、2では何れのアニオン交換膜も変化率が0.8程度となっており、アニオン交換膜としてアストム製AHAを使用するとサイクル回数50回後には、イオン交換容量が大きく低下することが分かる。このイオン交換容量の低下は、表2に示した比較例1、2の処理電圧上昇の原因にもなっているものと考えられる。
【0115】
【表2】

【0116】
【表3】

【符号の説明】
【0117】
1 カチオン交換樹脂
2a アニオン交換膜
2b カチオン交換膜
3 脱塩室
4 アニオン交換樹脂
5 陽極室
6 陰極室
7 陽極
8 陰極
9、10 濃縮室
15 第1小脱塩室
16 第2小脱塩室
17 中間アニオン交換膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側のカチオン交換膜と他側のアニオン交換膜とで区画された空間内にイオン交換体が充填された脱塩室と、
前記脱塩室の外側に前記カチオン交換膜と対向するように設けられ、陰極を備えた陰極室と、
前記脱塩室の外側に前記アニオン交換膜と対向するように設けられ、陽極を備えた陽極室と、
を有する電気式脱イオン水製造装置であって、
前記アニオン交換膜は、
基材と、
下記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の少なくとも一方を含有する重合体と、
を有する電気式脱イオン水製造装置。
【化1】

(一般式(1)において、mは0、1又は2、nは1〜6の整数、R1はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、X-は陰イオンを示す。重合体中の繰り返し単位あたりのmの平均値mavは0.3〜2である。)
【化2】

(一般式(2)において、R2はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、x、yはそれぞれ独立して0、1又は2、X-は陰イオンを示す。重合体中の繰り返し単位あたりのx+yの平均値(x+y)avは0.3≦(x+y)av≦2を満たす。)
【請求項2】
一側のカチオン交換膜と他側のアニオン交換膜とで区画された空間内にイオン交換体が充填された脱塩室と、
前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜と対向するように前記脱塩室内に設けられ、前記脱塩室をアニオン交換膜側の第1小脱塩室とカチオン交換膜側の第2小脱塩室に区画する中間アニオン交換膜と、
前記脱塩室の外側に前記カチオン交換膜と対向するように設けられ、陰極を備えた陰極室と、
前記脱塩室の外側に前記アニオン交換膜と対向するように設けられ、陽極を備えた陽極室と、
を有する電気式脱イオン水製造装置であって、
前記アニオン交換膜及び中間アニオン交換膜の少なくとも一方は、
基材と、
下記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の少なくとも一方を含有する重合体と、
を有する電気式脱イオン水製造装置。
【化3】

(一般式(1)において、mは0、1又は2、nは1〜6の整数、R1はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、X-は陰イオンを示す。重合体中の繰り返し単位あたりのmの平均値mavは0.3〜2である。)
【化4】

(一般式(2)において、R2はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、x、yはそれぞれ独立して0、1又は2、X-は陰イオンを示す。重合体中の繰り返し単位あたりのx+yの平均値(x+y)avは0.3≦(x+y)av≦2を満たす。)
【請求項3】
前記アニオン交換膜及び中間アニオン交換膜の両方が、基材と、前記重合体とを有する、請求項2に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項4】
前記基材が、ポリエーテルエーテルケトンである、請求項1〜3の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項5】
前記一般式(1)のmavは0.3〜1.5であり、
前記一般式(2)の(x+y)avは0.3≦(x+y)av≦1.5を満たす、請求項1〜4の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項6】
前記一般式(1)の繰り返し単位が、下記一般式(3)の繰り返し単位であり、
前記一般式(2)の繰り返し単位が、下記一般式(4)の繰り返し単位である、請求項1〜5の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【化5】

(一般式(3)において、mは0、1又は2、nは1又は2、X-は陰イオンを示す。重合体中の繰り返し単位あたりのmの平均値mavは0.59である。)
【化6】

(一般式(4)において、x、yはそれぞれ独立して0、1又は2、X-は陰イオンを示す。重合体中の繰り返し単位あたりのx+yの平均値(x+y)avは0.49である。)
【請求項7】
前記重合体の数平均分子量は10000〜100000である、請求項1〜6の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項8】
一つの前記脱塩室を有する、請求項1〜7の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項9】
複数の前記脱塩室を有し、
隣り合う脱塩室の間に更に濃縮室を有する、請求項1〜7の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224440(P2011−224440A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94906(P2010−94906)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】