説明

電気手術器点検装置、及び電気手術器点検システム

【課題】電気メス装置をはじめとする電気手術器の高周波漏洩電流、高周波出力電流について、適切かつ効率的に点検することが可能な電気手術器点検装置、電気手術器点検システム、及び電気メス点検装置、電気メス点検システムを提供すること。
【解決手段】手術用プローブに電力を供給するための第1の電極部11と、前記手術用プローブを介して前記第1の電極部11との間で通電する第2の電極部12と、前記第1の電極部11と前記第2の電極部12の間に電力供給する電源部とを備え、前記電源部に入力信号に基づいて出力を調整可能とする電源調整部が設けられた電気手術器10、を点検する電気手術器点検装置30であって、前記電気手術器10の高周波漏洩電流と高周波出力電流の少なくともいずれか一方を、予め定めた手順に基づいて自動測定する自動測定手段を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手術用プローブに電力を供給する電気手術器を点検するための電気手術器点検装置、電気手術器点検システム、及び電気メス点検装置、電気メス点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、外科手術をはじめとする医療現場において、電気メス装置をはじめとする電気手術器が広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
かかる電気手術器を医療現場で使用する場合、電気手術器の安全を確保するために、点検、保守が義務化されている場合がある。
【0003】
例えば、電気メス装置の場合には、高周波漏洩電流(HF−LA)及び高周波出力電流(HF−A)を測定、点検し、必要に応じて保守することにより安全な運用をすることとされているが、電気メス装置で用いられる出力設定モード(例えば、切開、凝固等の処理の種類と、各処理における出力レベル)に応じた数の点検対象項目を点検することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−270535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、点検、保守をするべき電気手術器の範囲拡大につれて、点検対象台数が増加し、一方で、患者の高齢化等によって、近年、医療従事者の業務量が増加して医療従事者が不足するなか、電気手術器の点検、保守に対する技術的な問題に加え、点検、保守に要する手間や費用の増大によって、医療機関自らによる電気手術器の点検、保守が困難な状況になりつつある。また、電気手術器の製造においても、効率的な検査、点検を行いたいという技術的な要請がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、電気メス装置をはじめとする電気手術器の高周波漏洩電流、高周波出力電流について、適切かつ効率的に点検することが可能な電気手術器点検装置、電気手術器点検システム、及び電気メス点検装置、電気メス点検システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、手術用プローブに電力を供給するための第1の電極部と、前記手術用プローブに前記第1の電極部とともに電力を供給する第2の電極部と、前記第1の電極部と前記第2の電極部の間に電力供給する電源部とを備え、前記電源部に入力信号に基づいて出力を調整可能とする電源調整部が設けられた電気手術器を点検する電気手術器点検装置であって、前記電気手術器の高周波漏洩電流と高周波出力電流の少なくともいずれか一方を、予め定めた手順に基づいて自動測定する自動測定手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気手術器点検装置であって、前記電気手術器が、電気メス装置であることを特徴とする。
【0009】
この発明に係る電気手術器点検装置、電気メス点検装置によれば、電気手術器、電気メス装置の高周波漏洩電流と高周波出力電流の少なくともいずれか一方を、予め定めた点検手順に基づいて自動測定することが可能とされる。
その結果、電気手術器、電気メス装置を、適切かつ効率的に点検することができ、ひいては点検者の疲労等の抑制、及び点検コストを削減することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気手術器点検装置であって、演算部と、記憶部と、電流測定手段と、負荷抵抗とを備え、前記演算部は、前記第1の電極部又は前記第2の電極部とアースの間に前記負荷抵抗と前記電流測定手段とを直列に接続して形成される高周波漏洩電流測定回路に通電した場合に、前記電流測定手段により測定される電流に基づいて高周波漏洩電流値を算出し、前記記憶部に、前記高周波漏洩電流値を記憶することを特徴とする。
【0011】
この発明に係る電気手術器点検装置によれば、高周波漏洩電流測定回路に通電した際に流れる高周波漏洩電流値を、電流測定手段により測定し、測定した高周波漏洩電流値を記憶部に記憶するので、電気手術器の高周波漏洩電流を適切かつ効率的に自動測定することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電気手術器点検装置であって、演算部と、記憶部と、電流測定手段と、負荷抵抗とを備え、前記演算部は、前記第1の電極部と前記第2の電極部の間に前記負荷抵抗と前記電流測定手段とを直列に接続して形成される高周波出力電流測定回路に通電した場合に、前記電流測定手段により測定される電流に基づいて高周波出力電流値を算出し、前記記憶部に、前記高周波出力電流値を記憶することを特徴とする。
【0013】
この発明に係る電気手術器点検装置によれば、高周波出力電流測定回路に通電した際に流れる高周波出力電流値を、電流測定手段により測定し、測定した高周波出力電流値を記憶部に記憶するので、電気手術器の高周波出力電流を適切かつ効率的に自動測定することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気手術器点検装置であって、前記高周波漏洩電流値と前記高周波出力電流の少なくともいずれか一方が許容範囲外である場合に、異常であることを出力する異常出力手段を備えることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る電気手術器点検装置によれば、電気手術器の高周波漏洩電流値、高周波出力電流の少なくともいずれかが許容範囲外に至った場合に、異常信号が出力される。
その結果、電気手術器を、効率的かつ確実に点検、保守することができる。また、異常のある電気手術器を、誤って手術に用いることを抑制することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5に記載の電気手術器点検装置であって、前記演算部は、前記測定された高周波出力電流値と前記電気手術器に入力された高周波出力電流の設定値に基づいて校正値を算出可能に構成されることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る電気手術器点検装置によれば、高周波出力電流の測定値と、高周波出力電流の設定値に基づいて校正値を算出するので、電気手術器の校正を効率的に行なうことができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の電気手術器点検装置と、電気手術器とを備えた電気手術器点検システムであって、前記電気手術器は、前記電気手術器点検装置が算出した校正値を入力する入力部と、前記入力された校正値に基づいて前記電源部の出力を補正する出力補正手段とを有することを特徴とする。
【0019】
この発明に係る電気手術器点検システムによれば、電気手術器が、電気手術器点検装置から入力された校正値に基づいて前記電源部の出力を補正する出力補正手段を備えているので、電気手術器の電源部の出力を適切かつ効率的に校正することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係る電気手術器点検装置によれば、電気手術器の高周波漏洩電流と、高周波出力電流の少なくともいずれかの自動測定が可能とされ、電気手術器を適切かつ効率的に点検することができる。
また、この発明に係る電気手術器点検システムによれば、電気手術器点検装置から入力された校正値に基づいて、電源部の出力を補正可能に構成されているので、電気手術器を正確かつ効率的に校正することができる。
その結果、点検者の疲労等の抑制、及び保守コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気メス点検システムの概略構成を示す図である。
【図2】一実施形態に係る電気メス装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】一実施形態に係る電気メス点検装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】一実施形態に係る電気メス点検装置で、電気メス装置のモノポーラ電気メス用回路を点検する場合の高周波漏洩電流点検回路の概略構成の一例を示す図である。
【図5】一実施形態に係る電気メス点検装置で、電気メス装置の高周波漏洩電流を点検する場合の、点検手順の概略を示すフロー図である。
【図6】一実施形態に係る電気メス点検装置で、電気メス装置のバイポーラ電気メス用回路を点検する場合の高周波漏洩電流点検回路の概略構成の一例を示す図である。
【図7】一実施形態に係る電気メス点検装置で、電気メス装置の高周波出力電流を点検する場合の高周波出力電流点検回路の概略構成の一例を示す図であり、(A)は電気メス装置の設定モードがモノポーラ電気メスに設定されている場合、(B)は電気メス装置の設定モードがバイポーラ電気メスに設定されている場合を示す図である。
【図8】一実施形態に係る電気メス点検装置で、電気メス装置の高周波出力電流を点検する場合の、点検手順の概略を示すフロー図である。
【図9】一実施形態に係る電気メス点検装置により、電気メス装置の校正値を算出する場合の手順の概略を示すフロー図である。
【図10】一実施形態に係る電気メス装置の校正値を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明に係る電気メス点検システムの一実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る電気メス点検システム1の概略構成を示す図であり、電気メス点検システム1は、電気メス装置(電気手術器)10と、電気メス点検装置(電気手術器点検装置)30とを備えている。
【0023】
また、電気メス装置10と、電気メス点検装置30とは、図1に示すように、対応する端子同士を、例えば、ケーブル3、ケーブル4、ケーブル5(ケーブル5A、ケーブル5B)、ケーブル6(ケーブル6A、ケーブル6B)のいずれか一つ又は複数のケーブルにより接続して点検回路を形成することで、予め定めた点検手順に基づいて、電気メス装置10の高周波出力電流と高周波漏洩電流を自動点検することができるように構成されている。
また、低周波漏洩電流、耐電圧(メガー)等、電気メス装置10に係る他の電気点検項目を点検可能に構成してもよい。
【0024】
また、例えば、点検対象項目のうち、切開モードを構成する詳細設定モード(例えば、純粋切開モード、混合1モード、混合2モード、混合3モード)、凝固モードを構成する詳細設定モード(ノーマル1モード、ノーマル2モード、スプレーモード、ソフトモード)や、バイポーラモードを構成する詳細設定モード(マイクロモード、ゼネラルモード、シザースモード、クランプモード)等の中から自動運転の対象モードをユーザーが任意に設定し、設定した詳細設定モードについて自動点検するように構成してもよい。
【0025】
ケーブル3は、電気メス装置10と電気メス点検装置30のシリアル通信部(例えば、RS−232C端子)14とシリアル通信部32とを接続して、種々の信号を双方向に通信するようになっている。
ケーブル4は、電気メス装置10と電気メス点検装置30の負極(アース端子)同士を接続するようになっている。
【0026】
ケーブル5は、ケーブル5Aと、ケーブル5Bとを備え、ケーブル5Aは、後述する電気メス装置10で、モノポーラ電気メス(手術用プローブ)7(図1には、不図示)を接続するアクティブ電極用端子(第1の電極部)11Aと、このアクティブ電極用端子11Aと対応する電気メス点検装置30のアクティブ電極点検用コネクタ37Aとを接続し、ケーブル5Bは、電気メス装置10の対極板用端子(第2の電極部)12Aと、この対極板用端子12Aと対応する電気メス点検装置30の対極板点検用コネクタ37Bとを接続するようになっており、それぞれ電気メス装置10のアクティブ電極用端子11Aに電力を供給する回路と、対極板用端子12Bに電力を供給する回路の点検に用いられるようになっている。
【0027】
ケーブル6は、ケーブル6Aと、ケーブル6Bとを備え、ケーブル6Aは、電気メス装置10で、バイポーラ電気メス(手術用プローブ)8(図1には、不図示)を用いる場合の、バイポーラ電気メス8の一方の電極に対応する端子(第1の電極部)11Bと、他方の電極と対応する(第2の電極部)12Bを、電気メス点検装置30の端子11B、12Bのそれぞれに対応する点検用コネクタ37C、37Dと接続し、それぞれ電気メス装置10の端子11B、端子12Bに電力を供給する回路の点検に用いられるようになっている。
【0028】
図2は、一実施形態に係る電気メス装置の回路構成を示すブロック図である。
電気メス装置10は、例えば、モノポーラ電気メス7とバイポーラ電気メス8のいずれかを選択して使用することができるようになっている。
【0029】
モノポーラ電気メス7は、図4の仮想線で示すように、電気メス本体(手術用プローブ)と、対極板とを有し、対極板を生体に装着し、電気メス本体から対極板に通電される電流により、生体組織に切開、凝固等の処理を行なうようになっている。
また、バイポーラ電気メス8は、図6の仮想線で示すように、電気メス本体(手術用プローブ)に、対をなす一方の電極と他方の電極を有していて、これら二つの電極が生体と接触することにより生体組織に切開、凝固等の処理を行なうようになっている。
【0030】
電気メス装置10は、モノポーラ電気メス7の電気メス本体と対応するアクティブ電極用端子11A(第1の電極部11)と、対極板と対応する対極板用端子12A(第2の電極部12)、及びバイポーラ電気メス8を電気メス本体の一方の電極に対応する端子11Bと他方の電極に対応する端子12Bと、電源部13と、電源スイッチ21とを備えている。
また、電気メス装置10は、図示しない設定モードスイッチ(又は他の入力手段)により、電気メス装置10の出力を処理の種類(切開、凝固等)及びそれらの出力レベルに合わせて調整できるようになっている。
【0031】
電源部13は、電源(例えば、100V)から、電源スイッチ21を介して電力が供給されるとともに、出力する電力を調整可能とされている。なお、図2は、モノポーラ電気メス7を用いる場合の例を示している。図2において、I1で示した白抜き矢印は、高周波出力電流を示している。
【0032】
電源部13は、シリアル通信部(例えば、RS−232C)14と、演算部15と、メモリ(記憶部)16と、D/Aコンバータ17と、出力可変電源回路18と、出力波形回路19と、出力アンプ20とからなる電源調整手段を備えている。
【0033】
シリアル通信部14は、電気メス点検装置30と接続可能とされていて、例えば、設定等、電気メス点検装置30から入力された信号を演算部15に伝送するとともに、演算部15からの信号を電気メス点検装置30に出力するようになっている。
【0034】
演算部15は、図示しないメモリ(例えば、ROM)のに格納されたプログラムにより作動し、D/Aコンバータ17及び出力波形回路19を、設定モードに基づいて駆動するようになっている。
【0035】
メモリ16は、例えば、使用する電気メスの種類(モノポーラ、バイポーラ)、処理の種類(切開、凝固等)、及び各処理の出力レベル等に対応する設定モードごとの高周波出力電流を生成するための、電圧、周波数等、補正値等の情報が、データテーブルの形式で格納されており、高周波出力電流を生成する際に、演算部15が、これら情報を参照するようになっている。
【0036】
D/Aコンバータ17は、出力可変電源回路18を作動し、出力可変電源回路18から出力アンプ20に送られた電流が、出力波形回路19により高周波電流に変換され、アクティブ電極用端子11A及び対極板用端子12Aを経由して出力されるようになっている。
【0037】
なお、電源部13には、出力補正手段が設けられており、電気メス点検装置30が算出した校正値が、シリアル通信部14を介して入力され、入力された校正値を、演算部15がメモリ16に格納するとともに、高周波出力電流を出力する際に、校正値を用いて電源部13が出力する高周波出力電流を補正(設定値に対して)するようになっている。
【0038】
電気メス点検装置30は、図3に示すように、電流計測器(電流測定手段)36と、負荷抵抗切換器(負荷抵抗)35と、制御部31と、ディスプレー41とを備え、制御部31は、外部と信号を入出力するシリアル通信部32と、演算部33と、メモリ34と、A/Dコンバータ40と、入力切換回路37と、RMS−DCコンバータ38と、ピークホールド回路39とを有している。
【0039】
また、電気メス点検装置30は、図示しない点検モードスイッチ(又は他の入力手段)により、電気メス点検装置30の点検対象(モノポーラ電気メス、バイポーラ電気メス)、各測定対象(高周波漏洩電流(測定対象部位;アクティブ電極端子11A、対極板端子12A、一方の電極用端子11B、他方の電極用端子12B)、高周波出力電流)等を調整できるようになっている。
【0040】
また、電気メス点検装置30は、モノポーラ電気メス7、バイポーラ電気メス8を所定の端子11A、11B、12A、12Bに接続した場合に、電気メス点検装置30、又はモノポーラ電気メス7、バイポーラ電気メス8からの入力により、あるいは自動により点検対象(モノポーラ電気メス、バイポーラ電気メス)が検出されるようにし、モノポーラ電気メス7、バイポーラ電気メス8に設けられた図示しない点検モードスイッチ等の操作による指示を受けて、各測定対象(高周波漏洩電流(測定対象部位;アクティブ電極端子11A、対極板端子12A、一方の電極用端子11B、他方の電極用端子12B)、高周波出力電流)等を調整できるように構成してもよい。
【0041】
また、電気メス点検装置30は、ケーブル5又はケーブル6により電気メス装置10と接続された場合に、ケーブル5、ケーブル6を構成するそれぞれのケーブル5A、5B、6A、6Bに対して微弱な出力(例えば、1W以下)を発生させて、それぞれのケーブル5A、5B、6A、6Bに生じる接続不良、断線等の検出や、対極板監視モニター(スプリットモニター)のテストを行なう機能を備えていてもよい。
【0042】
演算部33は、メモリ34、シリアル通信部32と双方向の通信可能に接続されている。また、図2において、I2で示した白抜き矢印は、電気メス装置10から出力されて、高周波漏洩電流点検回路、又は高周波出力電流点検回路を通過する電流を示している。
【0043】
シリアル通信部32は、電気メス装置10と接続可能とされていて、電気メス装置10に対して信号を出力するとともに、電気メス装置10から入力された信号を演算部33に伝送するようになっている。
【0044】
演算部33は、図示しないメモリ(例えば、ROM)のに格納されたプログラムにより作動し、負荷抵抗切換器35、入力切換回路37を、設定された点検モードに基づいて駆動するとともに、予め定められた手順にしたがって電気メス装置10を自動点検するようになっている。
また、演算部33は、ディスプレー41に双方向に接続され、ディスプレー41からの設定等を入力可能とされるとともに、ディスプレー41に情報を出力、表示するようになっている。
【0045】
また、演算部33は、A/Dコンバータ40から入力された信号を、メモリ34に格納するとともに、必要に応じてメモリ34から取り出して演算するようになっている。
RMS−DCコンバータ38、ピークホールド回路39は、電流計側器36とA/Dコンバータ40との間に並列に接続され、電流計測器36からの信号を、RMS−DCコンバータ38、ピークホールド回路39のそれぞれ、及びA/Dコンバータ38を介して演算部33に入力するように構成されている。
【0046】
また、演算部33は、高周波漏洩電流、高周波出力電流の測定値が、予め設定したそれぞれの許容範囲外に至った場合に、異常信号を出力するように構成されている。
メモリ34に格納された測定値を演算して、電気メス装置10の補正値を算出するとともに、この校正値を電気メス装置10に出力可能とされている。
【0047】
メモリ34は、例えば、電気メス装置10の設定モードにおける高周波漏洩電流、高周波出力電流と対応する点検モードの点検回路を形成するための負荷抵抗切換器35、入力切換回路37に関する情報が格納されており、演算部33は、電気メス装置10の設定モードをメモリ34に参照して、負荷抵抗切換器35、入力切換回路37を作動して、各点検モードにおける高周波漏洩電流点検回路、高周波出力電流点検回路を形成するようになっている。
【0048】
また、メモリ34は、高周波漏洩電流点検回路、又は高周波出力電流回路において電流計測器36より計測された電流値(高周波漏洩電流、高周波出力電流)、及びピーク電圧等の測定データが、データテーブルの形式で格納されるようになっている。
【0049】
負荷抵抗切換器35は、演算部33からの出力により、抵抗値を変更可能とされており、演算部33は、メモリ34を参照して、例えば、高周波漏洩電流を測定する際には200Ω、高周波出力電流を測定する際には、10〜2000Ωの範囲で点検するため段階的な負荷抵抗設定値を予め設定し、段階的に切り換えるようになっている。
【0050】
なお、点検するための段階的な負荷抵抗設定値については、10〜2000Ω以外の範囲としてもよいし、例えば、モノポーラ電気メス7を50〜2000Ω、バイポーラ電気メス8を10〜2000Ωというように、それぞれの点検対象に応じて設定してもよい。
【0051】
電流計測器36は、高周波漏洩電流点検回路、又は高周波出力電流点検回路を流れる電流を、例えば、トランスの一次側又は抵抗に通電することにより電圧波形として出力し、この電圧波形をRMS−DCコンバータ38に送って実効値化(定量化)し、ピークホールド回路39を経由した後、A/Dコンバータ40を介して演算部33に入力されるようになっている。
なお、RMS−DCコンバータ38は、電流を熱に変換して定量化するために用いられ、ピークホールド回路39は、ピーク電圧を測定するために用いられる。
なお、高周波漏洩電流、高周波出力電流の測定に関しては、上記以外の測定手段を用いてもよく、ピーク電圧の測定については任意に設定されるものである。
【0052】
入力切換回路37は、アクティブ電極点検用コネクタ37A、対極板点検用コネクタ37B、バイポーラ電気メス電極(A)点検用コネクタ37C、バイポーラ電気メス電極(B)点検用コネクタ37Dと、これらコネク37A、37B、37C、37Dと対応するアクティブ電極点検用スイッチSA、対極板点検スイッチ用SB、バイポーラ電気メス電極(A)点検用スイッチSC、バイポーラ電気メス電極(B)点検用スイッチSDと、負荷抵抗切換器35、電流測定器36を介してこれらスイッチSA、SB、SC、SDと接続される接地側スイッチSEとを備えている。
【0053】
アクティブ電極点検用スイッチSA、対極板点検スイッチ用SB、バイポーラ電気メス電極(A)点検用スイッチSC、バイポーラ電気メス電極(B)点検用スイッチSD、接地側スイッチSEは、開閉制御可能な、例えば、リレー等により構成されており、演算部33からの信号によって、電気メス装置10の各設定モードにおける電気メス7、8に対応する入力端子を設定するようになっている。
【0054】
また、演算部33から出力されるアクティブ電極点検用スイッチSA、対極板点検スイッチ用SB、バイポーラ電気メス電極(A)点検用スイッチSC、バイポーラ電気メス電極(B)点検用スイッチSD、接地側スイッチSEの開閉制御信号は、接続したケーブル5、6を検出し、又は電気メス装置10、電気メス点検装置30に設けられた設定モードスイッチと対応して作動、切換えられるようになっている。
【0055】
(1)高周波漏洩電流の点検について
図4は、電気メス装置10の高周波漏洩電流点検回路の概略構成の一例を示す図であり、図4(A)は、モノポーラ電気メス7のアクティブ電極用端子11Aに電力を供給する回路の高周波漏洩電流を、図4(B)は、対極板用端子12に電力を供給する回路の高周波漏洩電流を点検するための高周波漏洩電流点検回路である。
図5は、電気メス点検装置30により高周波漏洩電流を点検する際の作動手順の一例を示すフロー図である。
【0056】
(1−1)アクティブ電極用端子11A側回路の点検
次に、図4(A)を参照して、アクティブ電極用端子11A側回路の点検について説明する。
まず、電気メス装置10の設定モードを「モノポーラ電気メスのアクティブ電極用端子」に設定して、アクティブ電極用端子11Aと電気メス装置10の負極の間を、アクティブ電極用端子11A側からケーブル5A、電気メス点検装置30の負荷抵抗切換器35、電流計測器36、ケーブル4の順に直列に接続して高周波漏洩電流点検回路を形成する。この場合、対極板用端子12A側の高周波漏洩電流点検回路については形成する必要はない。
【0057】
次に、図5を参照して、電気メス点検装置30により、図4(A)に示すアクティブ電極用端子11A側回路の高周波漏洩電流を点検する手順を説明する。
なお、点検に先立って、電気メス点検装置30の点検対象モード(図示せず)を、モノポーラ電気メス7のアクティブ電極として、ディスプレー41から入力、設定する。
メモリ34には、設定された点検対象モードにおける点検対象項目(切開、凝固、及び各処理における出力レベル)、および出力設定数(点検対象項目数)Kが格納されている。
【0058】
1)まず、電気メス点検装置30のスタートボタン(図示せず)を押して、自動点検を開始する。
2)次に、演算部33は、メモリ34から出力設定数Kを読み出すとともに、出力設定数をカウントするための変数i(iは、自然数)に初期値(=1)を設定する(S1)。
3)次に、電気メス点検装置30から、シリアル通信部14を介して電気メス装置10に信号を送信するとともに電気メス装置10から返信された信号を受信することにより、電気メス点検装置30と電気メス装置10との通信が可能であることを確認する(S2)。
電気メス点検装置30と電気メス装置10との通信が可能である場合は、S3に移行し、通信が不可能である場合は、点検を終了(中止)する。
3)次いで、演算部33は、負荷抵抗切換器35と、入力切換回路37に点検対象モード設定信号を出力して、点検対象モードをモノポーラのアクティブ電極に設定して、電気メス装置10の入力切換回路37にアクティブ電極用端子11Aと対応するアクティブ電極点検用スイッチSAが接続される(S3)。
4)次に、演算部33は、負荷抵抗切換器35に負荷抵抗設定信号を出力して、負荷抵抗切換器35の負荷抵抗を予め定められた設定値(例えば、200Ω)に設定する(S4)。
5)次いで、演算部33は、出力設定信号を出力して、電気メス装置10を、例えば、最大出力に設定する(S5)。
6)次に、演算部33は、シリアル通信部14を介して電気メス装置10に点検用信号を出力する。その結果、電気メス装置10のアクティブ電極用端子11A側回路の高周波漏洩電流点検回路に通電される(S6)。
7)電気メス装置10のアクティブ電極用端子11Aとアース間に流れる電流を、電流計測器36により電圧波形として出力し、RMS−DCコンバータ38で定量化するとともにA/Dコンバータ40を介して演算部33に入力する。このとき、ピークホールド回路39を用いて、ピーク電圧を測定してもよい。
演算部33は、AD変換された値から高周波漏洩電流を算出する(S7)。
8)演算部33は、算出した高周波漏洩電流値を、メモリ34に格納する(S8)。
9)演算部33は、i≧Kであるかどうかを判断し、予め定めた点検対象がすべて完了したかどうかを確認する(S9)
予め定めた点検対象項目の点検がすべて完了した場合は、点検を終了し、点検対象項目が残っている場合には、S10に移行する。
10)点検対象項目を一つ終了するごとに、iをi+1に置き換えてS5に移行する(S10)。
S5では、電気メス装置10の点検対象項目(設定出力)を次の処理に対応する段階レベルに設定する。
上記5)から10)を、予め定められた点検対象項目が全て完了するまで繰返して実行する。
なお、演算部33は、メモリ34に格納した高周波漏洩電流値を、例えば、ディスプレーに出力、表示する。この場合、例えば、高周波漏洩電流値が、所定の許容範囲外であるものについて、表示色、マーク等によって識別表示し、点検者が異常値を確認し易くしてもよい。
【0059】
(1−2)対極板用端子12A側回路の点検
次に、図4(B)を参照して、対極板用端子12A側回路の点検について説明する。
まず、電気メス装置10の点検モードを「モノポーラ電気メスの対極板用端子」に設定し、対極板用端子12Aと電気メス装置10の負極の間を、対極板用端子12A側から、ケーブル5A、負荷抵抗切換器35、電流計測器36、ケーブル4の順に直列に接続して高周波漏洩電流点検回路を形成する。このとき、アクティブ電極用端子11Aの高周波漏洩電流点検回路については形成する必要はない。
なお、対極板用端子12A側回路の点検手順は、図5のフロー図に示した手順にしたがって、アクティブ電極用端子11A側回路の点検の場合と同様に行なうことができる。
【0060】
(1−3)バイポーラ電気メス8の一方側電極端子11B側回路の点検
次に、図6(A)を参照して、一方側電極端子11B側回路の点検について説明する。
まず、電気メス装置10の点検モードを「バイポーラ電気メスの電極A」に設定し、一方側電極端子11Bと電気メス装置10の負極の間を、一方側電極端子11B側から、ケーブル6A、負荷抵抗切換器35、電流計測器36、ケーブル4の順に直列に接続して高周波出力点検回路を形成する。このとき、他方側電極端子12Bの高周波漏洩電流点検回路については形成する必要はない。
なお、一方側電極端子11B側回路の点検手順は、図5のフロー図に示した手順にしたがって、アクティブ電極用端子11A側回路の点検の場合と同様により行なうことができる。
【0061】
(1−4)バイポーラ電気メス8の他方側電極端子12B側回路の点検
次に、図6(B)を参照して、他方側電極端子12B側回路の点検について説明する。
電気メス装置10の他方側電極端子12B側回路の点検が一方側の電極端子11B側回路の点検と異なるのは、メス装置10の点検モードを「バイポーラ電気メスの電極B」に設定するとともに、他方側電極端子12Bと電気メス装置10の負極の間を、ケーブル6B及びケーブル4を介して、他方側電極端子12B側から順番に、電気メス点検装置30の負荷抵抗切換器35、電流計測器36を直列に接続する点である。その他は、バイポーラ電気メス8の他方側電極端子12B側回路の点検と同様であるので、説明を省略する。
【0062】
(2)高周波出力電流の点検について
次に、電気メス装置10の高周波出力電流の点検について説明する。
図7は、電気メス装置10の高周波出力電流点検回路の概略構成の一例を示す図であり、図7(A)は、モノポーラ電気メス7を用いる際の電源部13の高周波出力電流を、図7(B)は、バイポーラ電気メス8を用いる際の電源部13の高周波出力電流を点検するための高周波出力電流点検回路である。
図8は、電気メス点検装置30により高周波出力電流を点検する際の作動手順の一例を示すフロー図である。
【0063】
(2−1)モノポーラ電気メス7の点検
まず、図7(A)に示すように、電気メス装置10のモードを「モノポーラ電気メスの高周波出力電流」に設定し、アクティブ電極用端子11Aと対極板用端子12Aの間を、アクティブ電極用端子11A側から、ケーブル5A、負荷抵抗切換器35、電流計測器36、ケーブル5Bを直列に接続して高周波出力点検回路を形成する。
【0064】
次に、図8を参照して、電気メス点検装置30によるモノポーラ電気メス7の高周波出力電流を点検する手順を説明する。
なお、点検に先立って、電気メス装置10の設定モードをモノポーラ電気メス7に設定する。
また、電気メス点検装置30の点検対象モード(図示せず)を、モノポーラ電気メス7の高周波出力電流に設定する。
メモリ34には、設定された点検対象モードにおける点検対象項目(切開、凝固、及び各処理における出力レベル)、各出力レベルにおいて電流値を切り換えるための負荷抵抗設定値、および出力設定数(点検対象項目数)K、負荷抵抗設定数Nが格納されている。
【0065】
1)まず、電気メス点検装置30のスタートボタン(不図示)を押して、自動点検を開始する。
2)メモリ34から出力設定数K及び負荷抵抗設定数Nを読み出すとともに、出力設定数をカウントするための変数i(iは、自然数)、及び負荷抵抗設定数をカウントするための変数jに初期値(=1)を設定する(S1)。
3)次に、電気メス点検装置30から、シリアル通信部14を介して電気メス装置10に信号を送信するとともに電気メス装置10から返信された信号を受信することにより、電気メス点検装置30と電気メス装置10との通信が可能であることを確認する(S22)。
電気メス点検装置30と電気メス装置10との通信が可能である場合は、S23に移行し、通信が不可能である場合は、点検を終了(中止)する。
3)次いで、演算部33は、負荷抵抗切換器35と、入力切換回路37に点検対象モード設定信号を出力して、点検対象モードを、モノポーラ電気メス(高周波出力電流)に設定して、電気メス装置10の入力切換回路37にモノポーラ電気メス(高周波出力電流)7と対応するアクティブ電極点検スイッチSA、対極板点検スイッチSBが接続される(S23)。
4)次に、演算部33は、負荷抵抗切換器35に負荷抵抗設定信号を出力して、負荷抵抗切換器35の負荷抵抗を、予め設定した負荷抵抗設定値(例えば、50〜2000Ωの範囲のいずれかの抵抗値)に順次切り換える(S24)。
5)次いで、演算部33は、出力設定信号を出力して、電気メス装置10の出力レベル(電圧)を設定する(S25)。
6)次に、演算部33は、シリアル通信部14を介して電気メス装置10に点検用信号を出力する。その結果、電気メス装置10のモノポーラ電気メスの高周波出力電流点検回路が通電される(S26)。
7)高周波出力電流点検回路に流れる電流を、電流計測器36によって計測し、RMS−DCコンバータ38で定量化するとともにA/Dコンバータ40を介して演算部33に入力する。このとき、ピークホールド回路39を用いて、ピーク電圧を測定してもよい。
演算部33は、AD変換された値から高周波出力電流を算出する(S27)。
8)演算部33は、算出した高周波出力電流値を、メモリ34に格納する(S28)。
9)演算部33は、i≧Kであるかどうかを判断し、各負荷抵抗設定値におけるすべての出力レベルでの点検が完了したかどうかを判断する(S29)
予め定めた出力レベルでの点検がすべて完了した場合は、S31に移行し、残っている場合は、S30に移行する。
10)各出力レベルでの点検を完了するごとに、iをi+1に置き換えてS25に移行する(S30)。
S25では、電気メス装置10の出力レベルを、段階的に、順次切換える。
11)演算部33は、i≧Nであるかどうかを判断し、各負荷抵抗設定値での点検がすべて完了したかどうかを判断する(S31)
予め定めた負荷抵抗設定値での点検がすべて完了した場合は、点検を終了し、まだ点検していない負荷抵抗値が残っている場合には、S32に移行する。
12)各負荷抵抗設定値での点検を完了するごとに、jをj+1に置き換えてS24に移行する(S32)。
S24では、負荷抵抗設定値を、段階的に、順次切換える。
上記5)から10)、及び上記4)から12)を、予め定められた点検項目が全て完了するまで繰返し実行する。
なお、演算部33は、メモリ34に格納した高周波出力電流値を、例えば、ディスプレーに出力、表示する。この場合、例えば、高周波出力電流値が所定の許容範囲の外にあるものについて、表示色、マーク等によって識別表示し、点検者が異常値を確認し易くしてもよい。
【0066】
(2−2)バイポーラ電気メス8の点検
次に、図7(B)を参照して、バイポーラ電気メス8の電源部13を点検する場合について説明する。
まず、電気メス装置10の設定モードを「バイポーラ電気メスの高周波出力電流」に設定し、一方側電極端子11Bと他方側電極端子12Bの間を、一方側電極端子11B側から、ケーブル6A、負荷抵抗切換器35、電流計測器36、ケーブル6Bを直列に接続して高周波出力電流点検回路を形成する。
なお、バイポーラ電気メス8の電源部13の点検手順は、上記図8のフロー図に示した手順にしたがい、モノポーラ電気メス7をバイポーラ電気メス8に代えて同様の手順により点検可能である。
【0067】
次に、図9、図10を参照して、電気メス点検システム1における電気メス点検装置30による電気メス装置10を校正する手順について説明する。
この場合、メモリ34には、既に測定した高周波出力電流値が格納されている。
【0068】
1)まず、電気メス点検装置30のスタートボタン(図示せず)を押して、自動点検を開始する。
2)次に、電気メス点検装置30から、シリアル通信部14を介して電気メス装置10に信号を送信するとともに電気メス装置10から返信された信号を受信することにより、電気メス点検装置30と電気メス装置10との通信が可能であることを確認する(S101)。
電気メス点検装置30と電気メス装置10との通信が可能である場合は、S102に移行し、通信が不可能である場合は、校正作業を終了(中止)する。
3)次いで、演算部33は、高周波出力電流の測定値の中に許容範囲外のものがあるかどうかを判断する(S102)。
許容範囲外の測定値がない場合には、校正作業を終了し、許容範囲外の測定値がある場合には、S103に移行する。
4)演算部33は、例えば、最小二乗法を用いて、図10に示すような高周波出力電流の近似直線を求め、基準値と対比して補正値(補正係数)を算出する(S103)。
5)次いで、演算部33は、補正値を電気メス装置10に伝送する(S104)。
6)次に、演算部33は、演算部15に、校正値をメモリ16に格納するように信号出力をする。演算部15は、校正値をメモリ16に格納する(S105)。
【0069】
電気メス点検装置30によれば、電気メス装置10の高周波漏洩電流と高周波出力電流を、予め定めた点検手順に基づいて自動測定することが可能とされるので、電気メス装置10を、適切かつ効率的に点検することができ、ひいては点検者の疲労等の抑制、及び点検コストを削減することができる。
【0070】
また、電気メス点検装置30によれば、高周波漏洩電流測定回路の高周波漏洩電流、及び高周波出力電流測定回路に通電した際に流れる高周波出力電流値をメモリ34に記憶するので、電気メス装置10の高周波漏洩電流及び高周波出力電流を適切かつ効率的に自動測定することができる。
【0071】
また、電気メス点検装置30によれば、電気メス装置10の高周波漏洩電流、高周波出力電流が許容範囲外に至った場合に、異常信号が出力されるので、電気メス装置10の点検を、効率的かつ確実に行なうことができ、異常がある電気メス装置10を誤って手術に用いることを抑制することができる。
【0072】
また、電気メス点検装置30によれば、高周波出力電流の測定値と、高周波出力電流の設定値に基づいて校正値を算出するので、電気メス装置10の校正を効率的に行なうことができる。
【0073】
また、電気手術器点検システム1によれば、電気メス装置10が、電気メス点検装置30から入力された校正値に基づいて電源部13の出力を補正するように構成されているので、電気メス装置10の電源部13の出力を適切かつ効率的に校正することができる。
【0074】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、高周波出力電流と、高周波漏洩電流の双方を自動で測定する場合について説明したが、例えば、高周波出力電流と、高周波漏洩電流のうち、いずれか一方のみを自動で測定するように構成してもよいし、自動で測定する場合の設定条件についても、必要に応じて任意に設定することができる。
【0075】
また、上記実施の形態においては、電気メス点検装置30で測定した結果に基づいて、異常信号の出力、及び校正値の算出を行ない、電気手術器点検システム1において、電気メス装置10に出力して、電気メス装置10が出力を自動補正する場合について説明したが、例えば、異常信号出力、補正値の算出、電気メス装置10への出力及び自動補正については、電気メス装置10、電気メス点検装置30がこれらのうちどれを備えるかは、組合せ可能な範囲で任意に設定することが可能である。
【0076】
また、上記実施の形態においては、電気手術器が電気メス装置10であり、手術用プローブがモノポーラ電気メス7、バイポーラ電気メス8である場合について説明したが、例えば、モノポーラ電気メス7、バイポーラ電気メス8以外の電気メスや、電気メス装置10以外の生体に低周波電流を通電する手術器(手術器には通電式マッサージ器等の治療器を含む)のほか、超音波プローブ、レーザ手術器等、生体への通電をともなわない電気手術器を対象として、電気手術器点検装置、電気手術器点検システムを構成してもよい。
【0077】
また、上記実施の形態においては、図5、図7、図9のフロー図に示した手順に基づいて点検する場合について説明したが、上記以外のアルゴリズムに基づいて、演算部33が作動してもよいことはいうまでもない。
【0078】
また、上記実施の形態においては、プログラムを格納するための記憶媒体がROMである場合について説明したが、メモリカード等、ROM以外の記憶手段に格納してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
電気手術器を自動点検することにより、電気手術器の適切かつ効率的な点検を可能とし、ひいては、点検者の疲労等の抑制、低コストでの点検を行なうことが可能となるので産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 電気メス点検システム(電気手術器点検システム)
7、8 電気メス(電気手術器プローブ)
10 電気メス装置(電気手術器)
11 アクティブ電極用端子(第1の電極部)
12 対極板用端子(第2の電極部)
13 電源部
14 出力設定部(出力設定手段)
15 演算部(電気手術器)
16 メモリ(電気手術器の記憶部)
30 電気メス点検装置(電気手術器点検装置)
32 演算部(電気手術器点検装置)
33 メモリ(電気手術器点検装置の記憶部)
35 負荷抵抗切換器(負荷抵抗)
36 電流計側器(電流測定手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術用プローブに電力を供給するための第1の電極部と、
前記手術用プローブに前記第1の電極部とともに電力を供給する第2の電極部と、
前記第1の電極部と前記第2の電極部の間に電力供給する電源部とを備え、前記電源部に入力信号に基づいて出力を調整可能とする電源調整部が設けられた電気手術器、を点検する電気手術器点検装置であって、
前記電気手術器の高周波漏洩電流と高周波出力電流の少なくともいずれか一方を、予め定めた手順に基づいて自動測定する自動測定手段を備えることを特徴とする電気手術器点検装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気手術器点検装置であって、
演算部と、
記憶部と、
電流測定手段と、
負荷抵抗と、を備え、
前記演算部は、
前記第1の電極部又は前記第2の電極部とアースの間に前記負荷抵抗と前記電流測定手段とを直列に接続して形成される高周波漏洩電流測定回路に通電した場合に、前記電流測定手段により測定される電流に基づいて高周波漏洩電流値を算出し、前記記憶部に、前記高周波漏洩電流値を記憶することを特徴とする電気手術器点検装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気手術器点検装置であって、
演算部と、
記憶部と、
電流測定手段と、
負荷抵抗と、を備え、
前記演算部は、
前記第1の電極部と前記第2の電極部の間に前記負荷抵抗と前記電流測定手段とを直列に接続して形成される高周波出力電流測定回路に通電した場合に、前記電流測定手段により測定される電流に基づいて高周波出力電流値を算出し、前記記憶部に、前記高周波出力電流値を記憶することを特徴とする電気手術器点検装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気手術器点検装置であって、
前記高周波漏洩電流値と前記高周波出力電流の少なくともいずれか一方が許容範囲外である場合に、異常であることを出力する異常出力手段を備えることを特徴とする電気手術器点検装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気手術器点検装置であって、
前記電気手術器が、電気メス装置であることを特徴とする電気手術器点検装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載の電気手術器点検装置であって、
前記演算部は、
前記測定された高周波出力電流値と前記電気手術器に入力された高周波出力電流の設定値に基づいて校正値を算出可能に構成されることを特徴とする電気手術器点検装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気手術器点検装置と、電気手術器とを備えた電気手術器点検システムであって、
前記電気手術器は、
前記電気手術器点検装置が算出した校正値を入力する入力部と、前記入力された校正値に基づいて前記電源部の出力を補正する出力補正手段と、を有することを特徴とする電気手術器点検システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−10752(P2012−10752A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147579(P2010−147579)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】