説明

電気抵抗の計測装置

【課題】安価で簡素な電気回路であると共に、広範囲のレンジにおいて、可変抵抗の電気抵抗値を高精度に計測できる電気抵抗の計測装置を提供する。
【解決手段】定電流を供給する定電流回路1と、定電流回路1に接続された計測対象の可変抵抗2と、可変抵抗2に並列接続されたシャント抵抗3と、可変抵抗2に直列接続されたキャリブレーション用スイッチ4を備える。このキャリブレーション用スイッチ4が接続状態の場合には可変抵抗2とシャント抵抗3とによる並列回路を形成し、遮断状態の場合には可変抵抗2に電流が供給されずシャント抵抗3に電流が供給される非並列回路を形成する。そして、抵抗値算出部7において、非並列回路においてキャリブレーションを行うと共に、並列回路において可変抵抗2の電気抵抗値Raを計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変抵抗の電気抵抗値を高精度にかつ安価に計測する計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1,2に記載されているように、可変抵抗の計測装置として、ホイーストンブリッジ回路を形成することで、計測対象の可変抵抗の電気抵抗値を高精度に計測することができる。また、近年、定電流回路が安価でかつ安定した定電流を供給可能になったことにより、電気抵抗の計測装置の電源として定電流回路を用いることが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-186103号公報
【特許文献2】特開2000-241271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ホイーストンブリッジ回路は電気回路が複雑になるため、高コストとなる。また、キャリブレーション(校正)を行うためには、ホイーストンブリッジ回路を構成する電気抵抗を調整する必要があるため、容易ではない。また、安価な定電流回路を用いて、定電流回路に計測対象の可変抵抗を配置する電気回路を構成し、当該可変抵抗の両端電圧に基づいて可変抵抗の電気抵抗値を算出することができる。しかしながら、このような電気回路においては、可変抵抗の電気抵抗値を高精度に計測できるレンジが狭い。逆に、計測可能なレンジを広くすると、計測精度が低下する。そのため、広範囲のレンジにおいて、可変抵抗の電気抵抗値を高精度に計測できることが望まれる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、安価で簡素な電気回路であると共に、広範囲のレンジにおいて、可変抵抗の電気抵抗値を高精度に計測できる電気抵抗の計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気抵抗の計測装置は、定電流を供給する定電流回路と、前記定電流回路に接続された計測対象の可変抵抗と、前記可変抵抗に並列接続されたシャント抵抗と、前記可変抵抗に直列接続されたスイッチであり、接続状態の場合に前記可変抵抗と前記シャント抵抗とによる並列回路を形成すると共に、遮断状態の場合に前記可変抵抗に電流が供給されず前記シャント抵抗に電流が供給される非並列回路を形成するキャリブレーション用スイッチと、前記並列回路の両端電圧を計測すると共に、前記非並列回路における前記シャント抵抗の両端電圧を計測する電圧計と、前記非並列回路において前記定電流回路により供給される定電流と前記電圧計による計測電圧とに基づいてキャリブレーションを行うと共に、前記並列回路において前記電圧計による計測電圧に基づいて前記可変抵抗の電気抵抗値を計測する抵抗値算出部とを備える。
【0007】
本発明によれば、例えば定電流ダイオードのような定電流回路を用いることにより、計測用の電気回路を安価に構成できる。さらに、キャリブレーション用スイッチを遮断した状態において、シャント抵抗の両端電圧を計測することで、定電流回路により供給される定電流のキャリブレーションが可能となる。そして、キャリブレーション用スイッチを接続した状態において、並列回路の両端電圧を計測することで、広範囲にかつ高精度に可変抵抗の電気抵抗値を算出できる。
【0008】
また、前記電気抵抗の計測装置は、それぞれ直列接続された複数の前記可変抵抗と、それぞれの前記可変抵抗に並列接続された前記シャント抵抗と、前記キャリブレーション用スイッチを構成し、それぞれの前記可変抵抗の端部と前記定電流回路の一方端子との間に介装された複数のハイサイドスイッチ素子と、前記キャリブレーション用スイッチを構成し、それぞれの前記可変抵抗の端部と前記定電流回路の他方端子との間に介装された複数のローサイドスイッチ素子と、1つの前記ハイサイドスイッチ素子および1つの前記ローサイドスイッチ素子を接続状態にすることにより、当該ハイサイドスイッチ素子と当該ローサイドスイッチ素子の間に介在する1または複数の前記可変抵抗と前記シャント抵抗とにより形成される並列回路を形成すると共に、全ての前記ハイサイドスイッチ素子および全ての前記ローサイドスイッチ素子を遮断状態にすることにより、キャリブレーションを行うために前記可変抵抗に電流が供給されない非並列回路を形成する制御回路とを備えるようにしてもよい。
【0009】
この場合、以下のように表すことができる。すなわち、電気抵抗の計測装置は、定電流を供給する定電流回路と、前記定電流回路に接続され、それぞれ直列接続された計測対象の複数の可変抵抗と、それぞれの前記可変抵抗に並列接続されたシャント抵抗と、それぞれの前記可変抵抗の端部と前記定電流回路の一方端子との間に介装された複数のハイサイドスイッチ素子と、それぞれの前記可変抵抗の端部と前記定電流回路の他方端子との間に介装された複数のローサイドスイッチ素子と、1つの前記ハイサイドスイッチ素子および1つの前記ローサイドスイッチ素子を接続状態にすることにより、当該ハイサイドスイッチ素子と当該ローサイドスイッチ素子の間に介在する1または複数の前記可変抵抗と前記シャント抵抗とにより形成される並列回路を形成すると共に、全ての前記ハイサイドスイッチ素子および全ての前記ローサイドスイッチ素子を遮断状態にすることにより、キャリブレーションを行うために前記可変抵抗に電流が供給されず前記シャント抵抗に電流が供給される非並列回路を形成する制御回路と、前記並列回路の両端電圧を計測すると共に、前記非並列回路における前記シャント抵抗の両端電圧を計測する電圧計と、前記非並列回路において前記定電流回路により供給される定電流と前記電圧計による計測電圧とに基づいてキャリブレーションを行うと共に、前記並列回路において前記電圧計による計測電圧に基づいてそれぞれの前記可変抵抗の電気抵抗値を計測する抵抗値算出部とを備える。
【0010】
これにより、直列接続された複数の可変抵抗のそれぞれの電気抵抗値を計測することができる。計測する際には、1つのハイサイドスイッチ素子と1つのローサイドスイッチ素子を接続状態とすることで、それらの素子の間に介在する可変抵抗の電気抵抗値を算出することができる。また、全てのハイサイドスイッチ素子および全てのローサイドスイッチ素子を遮断状態にすることにより、キャリブレーションを行うことができる。従って、直列接続された複数の可変抵抗のそれぞれの電気抵抗値を、安価でかつ簡素であり、広範囲かつ高精度に算出できる。
【0011】
また、前記電気抵抗の計測装置は、所定幅を有する形状に形成され、変形した場合に幅方向の電気抵抗値が変化するセンサと、前記センサを幅方向に複数の前記可変抵抗としての複数の部分センサ領域に区画する複数の電極と、を備え、それぞれの前記ハイサイドスイッチ素子の一端側およびそれぞれの前記ローサイドスイッチ素子の一端側は、それぞれの前記電極に電気的に接続され、前記制御回路により形成される前記並列回路は、1または複数の前記部分センサ領域と前記シャント抵抗とにより形成されるようにしてもよい。
【0012】
変形した場合に幅方向の電気抵抗値が変化するセンサにおいて、当該センサの幅方向の部分センサ領域を可変抵抗とみなすことができる。つまり、当該センサは、複数の部分センサ領域、すなわち複数の可変抵抗が直列接続された電気回路となる。そして、当該センサについて、上述した計測装置の構成を適用することで、それぞれの部分センサ領域の電気抵抗値を、安価でかつ簡素であり、広範囲かつ高精度に算出することができる。
【0013】
また、前記電気抵抗の計測装置は、前記抵抗値算出部により算出されたそれぞれの前記部分センサ領域の電気抵抗値に基づいて、前記センサの変形状態を算出する変形状態算出部を備えるようにしてもよい。ここで、センサは、変形した場合に幅方向の電気抵抗値が変化する。すなわち、部分センサ領域は、変形量に応じて電気抵抗値が変化する。そして、上述したように、部分センサ領域の電気抵抗値を、安価かつ簡素であり、広範囲かつ高精度に算出することができる。従って、変形状態算出部を備えることにより、センサの変形状態を、安価かつ簡素であり、広範囲かつ高精度に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一実施形態:電気抵抗の計測装置を示す回路構成図である。
【図2】可変抵抗2の電気抵抗値Raと計測電圧Vとの関係を示す図である。図中、Aは、図1に示す回路構成図における関係を示し、B,Cは、Aに対する比較例であり、図1におけるシャント抵抗3を有さない回路における関係を示す。ただし、BよりCの方が、定電流回路1の電流値I0が小さい場合としている。
【図3】第二実施形態:(a)センサユニット10の平面図を示す。(b)センサユニット10の断面図を示す。
【図4】センサユニット10が外力を受けた場合のセンサユニット10の断面図を示す。
【図5】第二実施形態:電気抵抗の計測装置の回路構成図を示す。
【図6】センサ12の部分センサ領域12a〜12dにおける電気抵抗率の絶対値|ΔRa|と各部分センサ領域12a〜12dの曲率の2乗との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第一実施形態>
第一実施形態の電気抵抗の計測装置について、図1および図2を参照して説明する。電気抵抗の計測装置は、可変抵抗の電気抵抗値Raを計測するための装置である。特に、当該回路において、定電流回路(定電流素子を含む)を用いている。この電気抵抗の計測装置の構成について、図1を参照して説明する。電気抵抗の計測装置は、直流電源1aと、定電流回路1bと、計測対象の可変抵抗2と、シャント抵抗3と、キャリブレーション用スイッチ4と、制御回路5と、電圧計6と、抵抗値算出部7とを備える。
【0016】
定電流回路1bは、直流電源1aに接続され、当該直流電源1aにより供給される電流を定電流I0にするための回路である。この定電流回路1bは、例えば定電流ダイオードなどが適用される。可変抵抗2は、定電流回路1bに接続されている。つまり、可変抵抗2の一端は、定電流回路1bの一方端子側に接続され、可変抵抗2の他端は、定電流回路1bの他方端子側に(ここでは、直流電源1aを介して)接続されている。シャント抵抗3は、可変抵抗2に並列接続されている。このシャント抵抗3の電気抵抗値Rbは、可変抵抗2の電気抵抗値Raの変動範囲および後述する電圧計6の計測電圧のレンジに応じて適宜調整する。
【0017】
キャリブレーション用スイッチ4は、可変抵抗2に直列接続されたスイッチである。このキャリブレーション用スイッチ4を接続状態にすることで、可変抵抗2とシャント抵抗3とによる並列回路を形成する。一方、キャリブレーション用スイッチ4を遮断状態にすることで、可変抵抗2に電流が供給されずシャント抵抗3のみに電流が供給される非並列回路を形成する。ここで、電気回路のキャリブレーションを行う場合に、キャリブレーション用スイッチ4を遮断状態にする。なお、以下の説明において、キャリブレーション用スイッチ4が接続状態において、可変抵抗2に流れる電流をIaとし、シャント抵抗3に流れる電流をIbとする。
【0018】
制御回路5は、キャリブレーション用スイッチ4の接続状態と遮断状態との切り替えを制御する回路である。つまり、制御回路5は、キャリブレーションを行う場合にキャリブレーション用スイッチ4を遮断状態にすると共に、可変抵抗2の電気抵抗値Raを計測する場合にはキャリブレーション用スイッチ4を接続状態にする。
【0019】
電圧計6の両端子は、可変抵抗2およびキャリブレーション用スイッチ4により形成される直列回路の両端、および、シャント抵抗3の両端に接続されている。つまり、キャリブレーション用スイッチ4が接続状態の場合には、電圧計6は、可変抵抗2とシャント抵抗3とにより形成される並列回路の両端電圧Vを計測する。一方、キャリブレーション用スイッチ4が遮断状態の場合には、電圧計6は、可変抵抗2が接続されていない非並列回路におけるシャント抵抗3の両端電圧V0を計測する。
【0020】
抵抗値算出部7は、非並列回路において電圧計6によりシャント抵抗3の両端電圧V0を計測することでキャリブレーションを行う。さらに、抵抗値算出部7は、並列回路において電圧計6による計測電圧Vと非並列回路において電圧計6による計測電圧V0とに基づいて可変抵抗2の電気抵抗値Raを計測する。可変抵抗2の電気抵抗値Raの算出式は、式(1)のように表される。
【0021】
【数1】

【0022】
つまり、上記式(1)に示すように、キャリブレーション用スイッチ4が遮断状態において、電圧計6による計測電圧V0は、定電流I0とシャント抵抗3の電気抵抗値Rbとの乗算値となる。従って、キャリブレーション用スイッチ4を遮断状態として、電圧計6により電圧V0を計測することで、定電流回路1bが供給する定電流I0に関するキャリブレーションを行うことができる。また、シャント抵抗3の電気抵抗値Rbは既知である。その結果、式(1)より、可変抵抗2の電気抵抗値Raを高精度に算出できる。
【0023】
ここで、上述したように、シャント抵抗3を備えることによる効果について以下に説明する。なお、図1に示す電気回路において、シャント抵抗3を備えない構成を比較する。上記実施形態において、可変抵抗2の電気抵抗値Raと電圧計6による計測電圧Vとの関係は、図2のAで示すようになる。つまり、可変抵抗2の電気抵抗値Raが増加していくにつれて、電圧計6による計測電圧Vは大きくなる。特に、可変抵抗2の電気抵抗値Raが小さい場合には計測電圧Vの変化率が大きくなり、電気抵抗値Raが大きくなるに従って計測電圧Vの変化率が小さくなる。つまり、可変抵抗2の電気抵抗値Raに応じて、電圧計6の分解能を変化させることができる。例えば、可変抵抗2の電気抵抗値Raが小さい場合には、電圧計6により計測可能な電気抵抗値の最小変化幅は小さくなるのに対して、可変抵抗2の電気抵抗値Raが大きい場合には、電圧計6により計測可能な電気抵抗値の最小変化幅は大きくなる。従って、可変抵抗2の電気抵抗値Raの変化幅が大きいとしても、広い範囲において高精度に算出できる。
【0024】
一方、シャント抵抗3を備えない場合には、図2のB,Cに示すような関係となる。図2のBは、Cに比べて、定電流回路1bの定電流I0を大きく設定している。図2のBのように設定すると、可変抵抗2の電気抵抗値Raを広い範囲に計測することができない。一方、図2のCのように設定すると、可変抵抗2の電気抵抗値Raを広い範囲に計測することができるが、電気抵抗値Raが小さい範囲における計測精度が低下する。つまり、シャント抵抗3を備えることにより、上述したように、可変抵抗2の電気抵抗値Raの変化幅が大きいとしても、広い範囲において高精度に算出できる。また、定電流回路1bを用いて、ホイーストンブリッジ回路を構成する場合に比べて、安価で簡素な構成とすることができる。
【0025】
<第二実施形態>
第二実施形態の電気抵抗の計測装置について、図3を参照して説明する。本実施形態においては、第一実施形態の可変抵抗2として、所定幅を有し変形した場合に当該幅方向の電気抵抗値が変化するセンサ12を適用する。そして、センサ12は、電極13により幅方向に複数の部分センサ領域12a〜12dに区画されており、それぞれの部分センサ領域12a〜12dが第一実施形態の可変抵抗2に対応する。以下詳細に説明する。
【0026】
まず、センサ12および電極13を含むセンサユニット10について、図3(a)(b)および図4を参照して説明する。図3(a)(b)に示すように、センサユニット10は、所定幅(図3(a)(b)の左右方向幅)を有する面形状、例えば、長尺矩形形状に形成されている。そして、図4に示すように、センサユニット10に面法線方向(図4の上下方向)の外力Fが加えられた場合に、当該面法線方向に撓み変形可能に形成されている。
【0027】
このセンサユニット10についてさらに詳細に説明する。図3(a)(b)に示すように、センサユニット10は、基材11と、センサ12と、複数の電極13a〜13eとを備える。基材11は、絶縁性材料であって、例えば樹脂やエラストマーなどにより、センサユニット10全体と同じ面形状に形成されている。図4に示すように、この基材11自体が、面法線方向の外力Fを受けた場合に、面法線方向に撓み変形可能に形成されている。基材11は、例えば、可撓性を有する材料により形成したり、薄肉部を設けるなどして局所的に変形可能な形状に形成したりする。
【0028】
センサ12は、図3(a)(b)に示すように、導電性材料により基材11の一方面に薄膜状に形成されている。つまり、センサ12は、所定幅(図3(a)(b)の左右方向幅)を有する面形状に形成されている。図4に示すように、センサ12は、基材11が撓み変形することに伴って、伸張変形または圧縮変形などを生じる。センサ12の材料は、変形することにより電気抵抗値が変化するような材料とする。ここで、センサ12は、変形した場合に、電気抵抗値が増加する材料であってもよいし、電気抵抗値が減少する材料であってもよい。また、センサ12は、塗料、導電性エラストマーなどが適用される。つまり、基材11が撓み変形することに伴って、センサ12が面法線方向に撓み変形することにより、センサ12の幅方向の電気抵抗値が変化する。
【0029】
図3(a)(b)に示すように、複数(本実施形態においては5つ)の電極13a〜13eは、センサ12の幅方向を複数(本実施形態においては、4つ)の部分センサ領域12a〜12dに区画するように設けられている。それぞれの電極13a〜13eは、センサ12の裏面側(基材11側)に配置されることにより、センサ12に電気的に接続される。電極13a〜13eは、例えば、銅箔パターンを基材11の一方面に形成することにより形成される。
【0030】
ここで、センサ12は導電性材料により形成されているため、隣り合う電極13a〜13eにより区画された部分センサ領域12a〜12dは、それぞれ電気抵抗値Ra1〜Ra4(図5に示す)を有する。つまり、電気抵抗値Ra1〜Ra4の可変抵抗が直列接続された電気回路を構成する。さらに、センサ12の幅方向(図3,図5の左右方向)の電気抵抗値は変形に応じて変化する。従って、部分センサ領域12a〜12dの幅方向の電気抵抗値Ra1〜Ra4も、それぞれの変形に応じて変化する。
【0031】
次に、上述したセンサ12が変形した場合に部分センサ領域12a〜12dの電気抵抗値Ra1〜Ra4を計測することにより、センサ12の変形状態を算出する電気抵抗の計測装置(以下、この装置を「変形センサシステム」と称する)全体の構成について、図5を参照して説明する。
【0032】
図5に示すように、変形センサシステムは、センサ12および電極13a〜13eの他に、直流電源1a、定電流回路1b、シャント抵抗3、ハイサイドスイッチユニット30、ローサイドスイッチユニット40、制御回路50、電圧計6、抵抗値算出部7、変形状態算出部80を備える。ここで、第一実施形態と同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
ハイサイドスイッチユニット30は、電極13a〜13eの数に対応した数のハイサイドスイッチ素子30a〜30eを備える。それぞれのハイサイドスイッチ素子30a〜30eは、例えば、FET(Field effect transistor)などが適用される。FETなどの素子は、高速に接続状態と遮断状態との切り替えが可能である。そして、それぞれのハイサイドスイッチ素子30a〜30eの一端側は、それぞれの電極13a〜13eに電気的に接続され、他端側は、定電流回路1bの一方側に電気的に接続される。つまり、それぞれのハイサイドスイッチ素子30a〜30eは、部分センサ領域12a〜12dの端部と定電流回路1bの一方端子との間に介装されている。そして、それぞれのハイサイドスイッチ素子30a〜30eは、接続されている両端における電気的な遮断状態と接続状態とを切り替える。ここで、ハイサイドスイッチ素子30a〜30eは、選択された一つが接続状態となり、残りが遮断状態となるように構成されている。
【0034】
ローサイドスイッチユニット40は、電極13a〜13eの数に対応した数のローサイドスイッチ素子40a〜40eを備える。それぞれのローサイドスイッチ素子40a〜40eは、例えば、FET(Field effect transistor)などが適用される。そして、それぞれのローサイドスイッチ素子40a〜40eの一端側は、それぞれの電極13a〜13eに電気的に接続され、他端側は、定電流回路1bの他方側(ここでは、直流電源1aの負極側)に電気的に接続される。つまり、それぞれのローサイドスイッチ素子40a〜40eは、部分センサ領域12a〜12dの端部と定電流回路1bの他方端子との間に介装されている。そして、それぞれのローサイドスイッチ素子40a〜40eは、接続されている両端における電気的な遮断状態と接続状態とを切り替える。ここで、ローサイドスイッチ素子40a〜40eは、選択された一つが接続状態となり、残りが遮断状態となるように構成されている。
【0035】
ここで、シャント抵抗3は、1つのハイサイドスイッチ素子30a〜30eおよび1つのローサイドスイッチ素子40a〜40eを接続状態とすることで、それぞれの可変抵抗としての部分センサ領域12a〜12dに対して並列接続される。
【0036】
制御回路50は、接続状態とするハイサイドスイッチ素子30a〜30eおよびローサイドスイッチ素子40a〜40eを順次切り替えて、電圧計6の計測対象とする部分センサ領域12a〜12dを変更する。例えば、切り替え前の状態として、スイッチ素子30a,40bが図5において二点鎖線にて示すように接続状態であって、他のスイッチ素子30b〜30e,40a,40c〜40eが遮断状態とする。そして、切り替え後の状態として、スイッチ素子30a,40bを遮断状態とし、スイッチ素子30b,40cを接続状態とする。つまり、切り替え前には部分センサ領域12aがシャント抵抗3に対して並列接続された状態となり、切り替え後には部分センサ領域12bがシャント抵抗3に対して並列接続された状態となる。なお、計測対象とする部分センサ領域12a〜12dは、1つでも可能であるし、複数でも可能である。ただし、ここでは、部分センサ領域12a〜12dを1つずつ計測するものとしている。
【0037】
さらに、制御回路50は、全てのハイサイドスイッチ素子30a〜30eおよび全てのローサイドスイッチ素子40a〜40eを遮断状態にすることにより、キャリブレーションを行うためにセンサ12に電流が供給されずシャント抵抗3のみに電流が供給される非並列回路を形成する。この構成は、第一実施形態と同様である。
【0038】
電圧計6は、第一実施形態と同一である。ただし、制御回路50によりハイサイドスイッチ素子30a〜30eおよびローサイドスイッチ素子40a〜40eが切り替えられることにより、計測対象となる可変抵抗としての部分センサ領域12a〜12dが順次変化する。また、抵抗値算出部7は、電圧計6により計測された電圧Vに基づいて、計測対象の部分センサ領域12a〜12dの電気抵抗値Ra1〜Ra4を算出する。
【0039】
変形状態算出部80は、抵抗値算出部7により算出されたそれぞれの部分センサ領域12a〜12dの電気抵抗値Ra1〜Ra4、および、制御回路50により接続状態としたスイッチ素子30a〜30e,40a〜40eに関する情報に基づいて、センサ12の変形状態を算出する。
【0040】
ここで、部分センサ領域12a〜12dにおける電気抵抗値Ra1〜Ra4の変化率(電気抵抗率)ΔRaの絶対値と、各部分センサ領域12a〜12dの曲率の2乗(曲率半径rの2乗の逆数)との関係を図6に示す。つまり、電気抵抗率の絶対値|ΔRa|が大きくなるほど、曲率の2乗の値が大きくなる関係になる。従って、電気抵抗率の絶対値|ΔRa|が大きくなるほど、対応する部分センサ領域12a〜12dの撓み変形量が大きくなる関係となる。このような関係から、変形状態算出部80は、部分センサ領域12a〜12dの電気抵抗率の絶対値|ΔRa|に基づいて、当該部分センサ領域12a〜12dの変形状態を算出することができる。
【0041】
以上より、安価でかつ簡素であり、広範囲かつ高精度に、部分センサ領域12a〜12dの電気抵抗値Ra1〜Ra4を算出できる。ひいては、センサ12の変形状態を、安価でかつ簡素であり、広範囲かつ高精度に算出できる。なお、第二実施形態においては、幅方向に電気抵抗値Ra1〜Ra4を直列接続されたセンサ12を適用したが、単に、可変抵抗が直列接続された電気回路において、当該可変抵抗の電気抵抗値を算出する装置としても適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1b:定電流回路、 2:可変抵抗、 3:シャント抵抗
4:キャリブレーション用スイッチ、 5,50:制御回路、 6:電圧計
7:抵抗値算出部、 10:センサユニット、 11:基材、 12:センサ
12a〜12d:部分センサ領域(可変抵抗)、 13:電極
30a〜30e:ハイサイドスイッチ素子、 40a〜40e:ローサイドスイッチ素子
80:変形状態算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流を供給する定電流回路と、
前記定電流回路に接続された計測対象の可変抵抗と、
前記可変抵抗に並列接続されたシャント抵抗と、
前記可変抵抗に直列接続されたスイッチであり、接続状態の場合に前記可変抵抗と前記シャント抵抗とによる並列回路を形成すると共に、遮断状態の場合に前記可変抵抗に電流が供給されず前記シャント抵抗に電流が供給される非並列回路を形成するキャリブレーション用スイッチと、
前記並列回路の両端電圧を計測すると共に、前記非並列回路における前記シャント抵抗の両端電圧を計測する電圧計と、
前記非並列回路において前記定電流回路により供給される定電流と前記電圧計による計測電圧とに基づいてキャリブレーションを行うと共に、前記並列回路において前記電圧計による計測電圧に基づいて前記可変抵抗の電気抵抗値を計測する抵抗値算出部と、
を備える電気抵抗の計測装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記電気抵抗の計測装置は、
それぞれ直列接続された複数の前記可変抵抗と、
それぞれの前記可変抵抗に並列接続された前記シャント抵抗と、
前記キャリブレーション用スイッチを構成し、それぞれの前記可変抵抗の端部と前記定電流回路の一方端子との間に介装された複数のハイサイドスイッチ素子と、
前記キャリブレーション用スイッチを構成し、それぞれの前記可変抵抗の端部と前記定電流回路の他方端子との間に介装された複数のローサイドスイッチ素子と、
1つの前記ハイサイドスイッチ素子および1つの前記ローサイドスイッチ素子を接続状態にすることにより、当該ハイサイドスイッチ素子と当該ローサイドスイッチ素子の間に介在する1または複数の前記可変抵抗と前記シャント抵抗とにより形成される並列回路を形成すると共に、全ての前記ハイサイドスイッチ素子および全ての前記ローサイドスイッチ素子を遮断状態にすることにより、キャリブレーションを行うために前記可変抵抗に電流が供給されない非並列回路を形成する制御回路と、
を備える電気抵抗の計測装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記電気抵抗の計測装置は、
所定幅を有する形状に形成され、変形した場合に幅方向の電気抵抗値が変化するセンサと、
前記センサを幅方向に複数の前記可変抵抗としての複数の部分センサ領域に区画する複数の電極と、
を備え、
それぞれの前記ハイサイドスイッチ素子の一端側およびそれぞれの前記ローサイドスイッチ素子の一端側は、それぞれの前記電極に電気的に接続され、
前記制御回路により形成される前記並列回路は、1または複数の前記部分センサ領域と前記シャント抵抗とにより形成される電気抵抗の計測装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記電気抵抗の計測装置は、前記抵抗値算出部により算出されたそれぞれの前記部分センサ領域の電気抵抗値に基づいて、前記センサの変形状態を算出する変形状態算出部を備える電気抵抗の計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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