説明

電気抵抗式溶融炉における電極長の測定方法

【課題】電気気抵抗式溶融炉における電極の長さを正確に測定して、少なくとも溶融スラグ層と溶融金属層との界面を正確に検知するとともに、上熱現象や電極の折損事故等の不具合を防ぐ。
【解決手段】炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極間を通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における炭素電極の長さを測定する方法であって、少なくとも1本の炭素電極に、軸線に沿って下端まで延びる空孔を形成して上端にマイクロ波送受信器を装着するか、内部に電極下端に達する金属製パイプを挿通し、上端にマイクロ波送受信器を装着してマイクロ波を送信し、空孔または金属製パイプの下端で反射されたマイクロ波を受信して電極の長さを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみや産業廃棄物、鉄鉱石等の被溶融物を炉内に投入して溶融処理するために使用される電気抵抗式溶融炉における電極の長さを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみや産業廃棄物、鉄鉱石等の被溶融物を炉内に投入し、堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れて電極に通電し、ジュール熱により被溶融物を溶融し、溶融物を回収する電気抵抗式溶融炉が使用されている。例えば、図8に示すように、鉄鉱石を溶融する場合は、炉100の内部に堆積している鉄鉱石に炭素電極101を差し入れ、炭素電極101に電流を流して電極間に存在する鉄鉱石を抵抗としてジュール熱により鉄鉱石を溶融する。炭素電極101への給電は、電源110から炭素電極101に装着した電極ホルダー180を介して行う。そして、溶融が進むと、炉底には、上から順に未溶融の鉄鉱石102、溶融スラグ層103、溶融鉄層104の3層が形成され、スラグ排出口105から溶融スラグを回収し、出鋼口106から溶融鉄を回収する。
【0003】
このような電気抵抗式溶融炉100において、例えば特許文献1では、溶融スラグ層と溶融塩層とで電気抵抗値が変わることを利用して、炭素電極を昇降させながら電流値を測定し、電流値が大きく変化したときの電極位置から溶融スラグ層と溶融塩層との界面を検出することを提案している。従って、図8に示す鉄鉱石を溶融する場合には、電極昇降装置120により炭素電極101を図中上下方向に昇降させながら電流値を測定し、電気抵抗値が大きく変化した炭素電極101の位置から、鉄鉱石102と溶融スラグ層103との界面、並びに溶融スラグ層103と溶融鉄層104との界面を検知することができる。そして、これらの境界から、溶融鉄が出鋼口106よりも上方でスラグ排出口105よりも下方の位置まで貯まり、溶融スラグがスラグ排出口105よりも上方の位置かで貯まったかどうか判断することができる。
【0004】
しかし、炭素電極101は、金属製の円筒体からなる電極カバーの内部にカーボン塊とコールタールピッチとの混合物を充填し、溶融時の熱により焼成されたカーボン焼成体(電極本体160)で構成されているため(図2参照)、溶融に伴ってカーボン焼成体が消耗する。界面は、炭素電極101の垂下位置から求められるため、摩耗により電極長が変化していると、界面の位置を正確に検知できていない。また、カーボン焼成体が消耗すると、電極カバーの上端からカーボン塊を補給することが行われているが、カーボン焼成体の消耗の度合が分からないと、カーボン塊の適切な補給量を知ることもできない。
【0005】
また、炭素電極101の鉄鉱石102への挿入量が不足すると、鉄鉱石102の上部のみが溶融して炉100に溶融鉄が貯まらない「上熱現象」が発生し、出鋼口106から溶融鉄が回収できなくなる。更に、炭素電極101を下げすぎると、焼成されていないカーボン塊が炭素電極101の下方側に移行して炭素電極101の折損事故が起こりやくなる。そのため、炭素電極101の長さを正確に検知できないと、炭素電極101の垂下量を適切に制御できず、このような問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−94060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように電気抵抗式溶融炉では、これまで炭素電極の長さを正確に検知できておらず、それに伴う上記のような諸問題が起こっている。そこで本発明は、電気気抵抗式溶融炉における電極の長さを正確に測定して少なくとも溶融スラグ層と溶融金属層との界面を正確に検知するとともに、上熱現象や炭素電極の折損事故等の不具合を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は下記の各方法を提供する。
(1)炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における炭素電極の長さを測定する方法であって、
少なくとも1本の炭素電極に、軸線に沿って下端まで延びる空孔を形成し、空孔の上端にマイクロ波送受信器を装着するとともに、マイクロ波を送信し、下端で反射されたマイクロ波を受信して炭素電極の長さを求めることを特徴とする電気抵抗式溶融炉における電極長の測定方法。
(2)炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における炭素電極の長さを測定する方法であって、
少なくとも1本の炭素電極の内部に、炭素電極の下端に達する金属製パイプを挿通し、金属製パイプの上端にマイクロ波送受信器を装着するとともに、マイクロ波を送信し、金属製パイプの下端で反射されたマイクロ波を受信して金属製パイプの長さを計測し、計測した金属製パイプの長さを炭素電極の長さとして求めることを特徴とする電気抵抗式溶融炉における電極長の測定方法。
(3)空孔または金属製パイプに、窒素ガスまたは不活性ガスを流入させながらマイクロ波の送受信を行うことを特徴とする請求項1または2記載の電気抵抗式溶融炉における電極長の測定方法。
(4)炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における少なくとも溶融スラグ層と溶融金属層との界面を検出する方法であって、
少なくとも1本の炭素電極を、軸線に沿って下端まで延びる空孔の上端にマイクロ波送受信器を装着して電極長測定用電極にするとともに、
電極長測定用電極を昇降させながら該電極に流れる電流値を測定し、少なくとも電流値が階段状に変化したときにマイクロ波を送信し、下端で反射されたマイクロ波を受信して電極長を測定し、測定した電極長から界面を検出することを特徴とする電気抵抗式溶融炉における界面検出方法。
(5)炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における少なくとも溶融スラグ層と溶融金属層との界面を検出する方法であって、
少なくとも1本の炭素電極を、電極下端に達する金属製パイプを挿通して上端にマイクロ波送受信器を装着して電極長測定用電極にするとともに、
電極長測定用電極を昇降させながら該電極に流れる電流値を測定し、少なくとも電流値が階段状に変化したときにマイクロ波を送信し、下端で反射されたマイクロ波を受信して電極長を測定し、測定した電極長から界面を検出することを特徴とする電気抵抗式溶融炉における界面検出方法。
(6)炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における少なくとも溶融スラグ層と溶融金属層との界面を検出する方法であって、
少なくとも1本の炭素電極を、軸線に沿って下端まで延びる空孔の上端にマイクロ波送受信器を装着して電極長測定用電極にするとともに、
電極長測定用電極を、空孔に窒素ガスまたは不活性ガスを一定量で供給しながら昇降させ、少なくとも内圧が階段状に変化したときにマイクロ波を送信し、下端で反射されたマイクロ波を受信して電極長を測定し、測定した電極長から界面を検出することを特徴とする電気抵抗式溶融炉における界面検出方法。
(7)炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における少なくとも溶融スラグ層と溶融金属層との界面を検出する方法であって、
少なくとも1本の炭素電極を、電極下端に達する金属製パイプを挿通して上端にマイクロ波送受信器を装着して電極長測定用電極にするとともに、
電極長測定用電極を、金属製パイプに窒素ガスまたは不活性ガスを一定量で供給しながら昇降させ、少なくとも内圧が階段状に変化したときにマイクロ波を送信し、下端で反射されたマイクロ波を受信して電極長を測定し、測定した電極長から界面を検出することを特徴とする電気抵抗式溶融炉における界面検出方法。
(8)炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における電極の昇降を制御する方法であって、
請求項1〜3の何れか1項に記載の方法により炭素電極の長さ(L1)を求めるとともに、マイクロ波送受器の上方に距離計を配置して、マイクロ波送受信器と距離計との離間距離(L2)を計測し、離間距離(L2)と、求めた炭素電極の長さ(L1)とを合算して距離計から電極下端までの距離(L3)を求め、距離(L3)に基づき炭素電極の垂下位置を制御することを特徴とする電気抵抗式溶融炉における電極の昇降制御方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気抵抗式溶融炉における炭素電極の長さを正確に計測することができ、それにより少なくとも溶融スラグ層と溶融金属層との界面を正確に検出ことができる。また、被溶融物の溶融に適した位置に炭素電極を精度よく配置することができ、操業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の電極長の測定方法を実施するための電気抵抗式溶融炉の全体構造を示す図である。
【図2】炭素電極を示す断面図である。
【図3】電極ケースを示す上面図である。
【図4】図2のA部分の拡大図である。
【図5】炭素電極を昇降させたときの電気抵抗値の変化を示すグラフである。
【図6】第2のマイクロ波送受信器を備える装置を示す図である。
【図7】炭素電極の他の例を示す断面図である。
【図8】従来の電気抵抗式溶融炉の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の電極長の測定方法を実施するための電気抵抗式溶融炉の全体構造を示す図であるが、電気抵抗式溶融炉の全体構成は従来と同様で構わず、例えば図8に示した構成と同様に、炉100の内部に垂下する炭素電極101を、堆積している鉄鉱石に差し入れ、電源110から炭素電極101に給電して鉄鉱石を溶融して未溶融の鉄鉱石102、溶融スラグ層103及び溶融鉄層104の3層を形成し、スラグ排出口105から溶融スラグを回収し、出鋼口106から溶融鉄を回収する。
【0013】
炭素電極101は、図2に拡大して示すように、金属製の円筒体からなる電極ケース150の内部に、カーボン焼成体からなる電極本体160を収容したものである。電極ケース150には電極ホルダー180を通じて電源110から給電され、電極本体160に電流が流れる。電極本体160は、溶融時に消耗するため、上端の開口からカーボン塊170とコールタールピッチとの混合物を投入し、溶融に伴う熱で焼成させて消耗分を補給するように構成されている。
【0014】
電極ケース150は、図3に示すように、内壁に補強用のリブ155を放射状に設けてもよい。また、電極ケース150も溶融時に消耗するため、図4にA部分を拡大して示すように、下方の電極ケース片151に新たな別の電極ケース片152を継ぎ足すように構成されている。
【0015】
本発明では、少なくとも1本の炭素電極101aの内部に、電極本体160の軸線に沿って下端に達する金属製パイプ200を挿通し、更に金属製パイプ200の上端にマイクロ波送受信器300を装着し、電極長測定用電極として機能させる。そして、マイクロ波送受信器300からマイクロ波を送信すると、マイクロ波は金属製パイプ200の内部を伝播し、下端200aに達した時点で、外部との誘電率が大きく変わるために反射される。そして、反射されたマイクロ波が金属製パイプ200の内部を再度伝搬してマイクロ波送受信器300で受信される。そして、マイクロ波の送受信の時間差から金属製パイプ200の長さが求められる。金属製パイプ200の下端200aは、電極本体160の下端と一致するため、金属製パイプ200の長さを炭素電極101aの長さとすることができる。
【0016】
尚、測定された金属製パイプ200の長さに基づく炭素電極101aの長さは、炭素電極101aの実際の長さよりも長くなる。この長くなる割合(倍率)は、金属製パイプ200の径が大きくなるほど小さくなる。そこで、測定された炭素電極101aの長さを、金属製パイプ200の径毎に求めた倍率で割って補正する。従って、金属製パイプ200の径には制限はなく、電極ケース150の径に応じて適宜選択することができる。
【0017】
また、金属製パイプ200の下端200aは溶融時に消耗するため、マイクロ波送受信器300との間に継手210を挿入し、消耗分を継ぎ足すように構成されている。また、金属製パイプ200の下端200aは開口しているため、溶融スラグや溶融鉄が流入するのを防ぐために、パイプの上方部分、例えば継手210とマイクロ波送受信器300との間に窒素ガスや不活性ガスを供給してパイプの内圧を高めることが好ましい。内圧の調整は、圧力調整器250で行う。
【0018】
マイクロ波として、円偏波マイクロ波を利用することが好ましい。マイクロ波送受信器300の発振ダイオードからは電界が直線方向を向くマイクロ波が発振されるが、導波管内に90°位相差を生ずる位相差板を入射電界に対し45゜の方向に配置することで、電界がある方向に向かって回転する円偏波マイクロ波が発生する。この円偏波マイクロ波は、反射されると、反射のたびに電界の回転方向が逆転する性質があり、例えばマイクロ波送受信器300から左回転の円偏波マイクロ波を送信した場合、金属製パイプ200の下端200aで反射されると、右回転の円偏波マイクロ波となってマイクロ波送受信器300で受信される。金属製パイプ200の下端200a以外に他の部分で奇数回反射されると、左回転の円偏波マイクロ波となるため、マイクロ波送受信器300で右回転の円偏波マイクロ波のみを検波する構成にすることにより、偶数回反射されたマイクロ波を排除でき、金属製パイプ200の下端200aでの反射をより正確に検知できるようになる。
【0019】
ところで、電極昇降装置120により炭素電極101aを昇降させながら電流値を測定すると、溶融鉄層104、溶融スラグ層103、未溶融の鉄鉱石102を通過する際に図5に示すように階段状に導電率が変化する。それにより、炉底から高さAまで溶融鉄層104があり、高さAから高さBまで溶融スラグ層103があり、高さBから高さCまで未溶融の鉄鉱石102があることがわかる。しかし、各層の炉底からの高さは、炭素電極101aの下端の位置に対応して求められるため、炭素電極101aが消耗して測定時の炭素電極101aの長さが分からないと、各層の本当の高さが求められない。そのため、例えば溶融スラグ層103と溶融鉄層104との境界、即ち炉底からの高さAが正確でないと、スラグ排出口105から溶融スラグと共に溶融鉄も排出されることがあり、分離回収率が低下する。
【0020】
しかし、本発明によれば、炭素電極101aが消耗していたとしても、測定時の炭素電極101aの長さが正確に測定されるため、各層の界面が正確に求められて上記のような不具合がなくなる。即ち、上記に従い、伝導率が階段状に大きく変化した位置の炭素電極101aの電極長を測定することにより、界面の位置を正確に知ることができる。その際、マイクロ波は常時送信してもよいし、伝送率が階段状に大きく変化時点で送信してもよい。
【0021】
また、電流値を測定してその変化を検出する代わりに、金属製パイプ200の内圧の変化からも未溶融の鉄鉱石102、溶融スラグ層103、溶融鉄層104の界面を検出することもできる。金属製パイプ200に窒素ガスや不活性ガスを一定量で供給しながら昇降させると、溶融鉄層104に近づくほど内圧が高まり、また溶融鉱層104、溶融スラグ層103及び未溶融の鉄鉱石102では密度が異なるため、図5(但し、導電率比を内圧比とする)に示すように、各層ごとに内圧が階段状に変化する。そのため、内圧の変化を測定し、内圧が階段状に大きく変化する点を溶融鉄層104、溶融スラグ層103、未溶融の鉄鉱石102の界面と見做すことができる。
【0022】
そして、上記に従い、金属製パイプ200の内圧が階段状に大きく変化した位置の炭素電極101aの電極長を測定することにより、界面の位置を正確に知ることができる。また、窒素ガスや不活性ガスにより金属製パイプ200の内圧が高まっているため、溶融スラグや溶融鉄の浸入を防ぐこともできる。
【0023】
また、図6に示すように、マイクロ波送受信器300の上方に距離計、例えば第2のマイクロ波送受信器400を設置し、第2のマイクロ波送受信器400からマイクロ波送受信器300までの距離を測定し、マイクロ波送受信器300で測定した電極長と合算して第2のマイクロ波送受信器400から炭素電極101aの下端までの距離を求め、この距離信号に基づいて電極昇降装置120による炭素電極101aの垂下位置を制御することができる。マイクロ波送受信器300と第2のマイクロ波送受信器400との距離を測定するには、例えばマイクロ波送受信器300の金属製パイプ200との連結部位に金属板310を付設しておき、金属板310に向けて第2のマイクロ波送受信器400のアンテナ410からマイクロ波を送信し、金属板310で反射したマイクロ波をアンテナ410で受信してアンテナ410と金属板310との距離(L2)を求める。そして、アンテナ410と金属板310との距離(L2)と、マイクロ波送受信器300で測定した電極長(L1)とを合算して、第2のマイクロ波送受信器400のアンテナ410から炭素電極101aの下端までの距離(L3)が求められる。
【0024】
炭素電極101aは、溶融により消耗して徐々に短くなるため、それに合わせて炭素電極101全体を徐々に降下させる必要がある。しかし、炭素電極101aの長さが分からないと、降下量を決めることができない。そこで、炉設備の天井のように高さが変わらない場所に第2のマイクロ波送受信器400を固定して基準位置とし、この基準位置からの炭素電極101aの下端までの距離(L3)を知ることにより、炭素電極101aの垂下位置を制御することができる。
【0025】
尚、炭素電極101aの垂下位置を制御するには、第2のマイクロ波送受信器400からの距離(L2)の信号と、マイクロ波送受信器300による電極長さ(L1)の信号とを電極昇降装置120に送り、距離(L2)と電極長さ(L1)との合算値(L3)を元に電極昇降装置120による電極101aを昇降させる。
【0026】
上記では、炭素電極101aに金属製パイプ200を挿通した構成を説明したが、図7に示すように、金属製パイプ200に代えて、電極本体160に、軸線に沿って下端まで達する空孔500を形成しても同様の効果が得られる。尚、電極本体160は黒鉛の円筒体を用いることが好ましい。黒鉛は軟質で、精度良く孔開けすることができ、更には耐熱温度も3000℃程度であるため溶融時に溶解して空孔500が変形することもない。このように、電極本体160に空孔500を形成した場合も、下端では誘電率が大きく変化してマイクロ波が反射される。従って、空孔500の上端にマイクロ波送受信器300を装着してマイクロ波を送信し、下端で反射されたマイクロ波を受信することにより、炭素電極101aの長さを測定することができる。
【0027】
マイクロ波送受信器300を装着するには、導波管300の内径を空孔500の径と同径にし、空孔500の上端に導波管320の下端が近接するようにマイクロ波送受信器300を配置する。この場合も、導波管300を通じて空孔500に窒素ガスや不活性ガスを供給することにより、下端からの溶融スラグや溶融鉄の浸入を防ぐことができる。
【0028】
このように電極本体160に空孔500を形成する方式では、上記のように金属製パイプ200が不要となり、装置全体が安価になる。
【0029】
また、摩耗した際の補給は、上端面に新しい円筒状の黒鉛片を重ね、黒鉛でできたニップル(ねじをきったもの)を黒鉛片間に挟み、ねじ締して連結する。
【符号の説明】
【0030】
100 炉
101、101a 炭素電極
102 未溶融の鉄鉱石
103 溶融スラグ層
104 溶融鉄層
150 電極ケース
160 電極本体
170 カーボン塊
200 金属製パイプ
250 圧力調整器
300 マイクロ波送受信器
400 第2のマイクロ波送受信器
500 空孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における炭素電極の長さを測定する方法であって、
少なくとも1本の炭素電極に、軸線に沿って下端まで延びる空孔を形成し、空孔の上端にマイクロ波送受信器を装着するとともに、マイクロ波を送信し、下端で反射されたマイクロ波を受信して炭素電極の長さを求めることを特徴とする電気抵抗式溶融炉における電極長の測定方法。
【請求項2】
炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における炭素電極の長さを測定する方法であって、
少なくとも1本の炭素電極の内部に、炭素電極の下端に達する金属製パイプを挿通し、金属製パイプの上端にマイクロ波送受信器を装着するとともに、マイクロ波を送信し、金属製パイプの下端で反射されたマイクロ波を受信して金属製パイプの長さを計測し、計測した金属製パイプの長さを炭素電極の長さとして求めることを特徴とする電気抵抗式溶融炉における電極長の測定方法。
【請求項3】
空孔または金属製パイプに、窒素ガスまたは不活性ガスを流入させながらマイクロ波の送受信を行うことを特徴とする請求項1または2記載の電気抵抗式溶融炉における電極長の測定方法。
【請求項4】
炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における少なくとも溶融スラグ層と溶融金属層との界面を検出する方法であって、
少なくとも1本の炭素電極を、軸線に沿って下端まで延びる空孔の上端にマイクロ波送受信器を装着して電極長測定用電極にするとともに、
電極長測定用電極を昇降させながら該電極に流れる電流値を測定し、少なくとも電流値が階段状に変化したときにマイクロ波を送信し、下端で反射されたマイクロ波を受信して電極長を測定し、測定した電極長から界面を検出することを特徴とする電気抵抗式溶融炉における界面検出方法。
【請求項5】
炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における少なくとも溶融スラグ層と溶融金属層との界面を検出する方法であって、
少なくとも1本の炭素電極を、電極下端に達する金属製パイプを挿通して上端にマイクロ波送受信器を装着して電極長測定用電極にするとともに、
電極長測定用電極を昇降させながら該電極に流れる電流値を測定し、少なくとも電流値が階段状に変化したときにマイクロ波を送信し、下端で反射されたマイクロ波を受信して電極長を測定し、測定した電極長から界面を検出することを特徴とする電気抵抗式溶融炉における界面検出方法。
【請求項6】
炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における少なくとも溶融スラグ層と溶融金属層との界面を検出する方法であって、
少なくとも1本の炭素電極を、軸線に沿って下端まで延びる空孔の上端にマイクロ波送受信器を装着して電極長測定用電極にするとともに、
電極長測定用電極を、空孔に窒素ガスまたは不活性ガスを一定量で供給しながら昇降させ、少なくとも内圧が階段状に変化したときにマイクロ波を送信し、下端で反射されたマイクロ波を受信して電極長を測定し、測定した電極長から界面を検出することを特徴とする電気抵抗式溶融炉における界面検出方法。
【請求項7】
炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における少なくとも溶融スラグ層と溶融金属層との界面を検出する方法であって、
少なくとも1本の炭素電極を、電極下端に達する金属製パイプを挿通して上端にマイクロ波送受信器を装着して電極長測定用電極にするとともに、
電極長測定用電極を、金属製パイプに窒素ガスまたは不活性ガスを一定量で供給しながら昇降させ、少なくとも内圧が階段状に変化したときにマイクロ波を送信し、下端で反射されたマイクロ波を受信して電極長を測定し、測定した電極長から界面を検出することを特徴とする電気抵抗式溶融炉における界面検出方法。
【請求項8】
炉内に堆積した被溶融物に、炉内に垂下する炭素電極を差し入れ、電極に通電して被溶融物を溶融する電気抵抗式溶融炉における電極の昇降を制御する方法であって、
請求項1〜3の何れか1項に記載の方法により炭素電極の長さ(L1)を求めるとともに、マイクロ波送受器の上方に距離計を配置して、マイクロ波送受信器と距離計との離間距離(L2)を計測し、離間距離(L2)と、求めた炭素電極の長さ(L1)とを合算して距離計から電極下端までの距離(L3)を求め、距離(L3)に基づき炭素電極の垂下位置を制御することを特徴とする電気抵抗式溶融炉における電極の昇降制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−137255(P2012−137255A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290206(P2010−290206)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(593207271)株式会社ワイヤーデバイス (15)
【Fターム(参考)】