説明

電気掃除機用吸口体および電気掃除機

【課題】起毛布が磨耗して吸口体が床面に接触することを未然に防止することができる電気掃除機を提供する。
【解決手段】床面の塵埃を吸い込む電気掃除機用吸口体300に設けられている初期状態の起毛布910の下端は、第2のローラ960の下端よりも下方に位置するように構成してある。そのため、第2のローラ960は、初期状態においては、吸口体300を床面に配置した状態で床面には接触しないようになっている。また、起毛布910は、吸口体300の下面から吸口体300の前面に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、床面の塵埃を吸い込む電気掃除機用吸口体およびそれを備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機の吸口体においては、その床面に当接する部分に摩擦を軽減するためにローラーを用いたものがある。吸口体の床面に接触する箇所の全てにローラーを用いた場合には、ローラーの方向性のため操作性が良くなかったり、掃除面が木製床など硬い床の場合にはローラーの転動による騒音が発生するという問題がある。
【0003】
このような問題に対処するため、電動掃除機の吸口体において、その床面に当接する箇所に起毛布を配置したものがある(たとえば特許文献1(特開平3−295522号公報)参照)。
【0004】
吸口体の床面に当接する部分に起毛布を用いることで、ローラーを用いた場合の方向性の問題を解消して掃除機使用時における操作性を改善することができる。また、木製床などの固い床面に接触した場合の騒音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−295522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸口体の底面に配設される起毛布は、通常、カットパイル状の紡績布から構成されている。起毛布の表面を構成する糸は使用に伴なって磨耗する。糸が磨耗すると、糸を保持する基布が露出する。さらに使用を続けると基布も磨耗し、吸口体の下面が床面に当接して床面を傷つける恐れがある。
【0007】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、起毛布が磨耗して吸口体が床面に接触することを未然に防止することができる電気掃除機用吸口体および電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に基づいた電気掃除機用吸口体に従えば、吸口体下面にその一部が配置された起毛布を備え、上記起毛布は、吸口体下面から吸口体前面に設けられている。
【0009】
上記電気掃除機用吸口体において、上記吸口体本体の下面の後方部に配置された第1のローラーと、上記吸口体本体の下面に配置された第2のローラーとをさらに備え、上記第2のローラーの下端は、初期状態の上記起毛布の下端および上記第1のローラーの下端より上方に位置すると共に上記吸口体本体の下面よりは下方に突出し、初期状態においては吸口体を床面に配置した状態において床面には接触せず、上記第2のローラーは上記第1のローラーよりも小径であってもよい。
【0010】
上記電気掃除機用吸口体を用いて電気掃除機を構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電気掃除機用吸口体および電気掃除機によると、起毛布が磨耗して吸口体が床面に接触することを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に基づいた実施の形態における電気掃除機の構造を示す斜視図である。
【図2】この発明に基づいた実施の形態における吸口体の底面の構造を示す底面図である。
【図3】この発明に基づいた実施の形態における吸口体の底面の構造を示す底面図である。
【図4】この発明に基づいた実施の形態における吸口体の構造を示す縦断面図である。
【図5】この発明に基づいた実施の形態における吸口体の起毛布付近の構造を示す拡大断面図である。
【図6】この発明に基づいた実施の形態の変形例における吸口体の底面の構造を示す底面図である。
【図7】この発明に基づいた実施の形態の変形例における吸口体の底面の構造を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明に基づいた各実施の形態における電気掃除機の構造について、図を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態の電気掃除機の構造を示す斜視図である。本実施の形態の電気掃除機は、床面の塵埃を吸い込む吸口体200と、吸口体200に接続される延長管130および延長ホース120と、延長ホース120に接続される電気掃除機本体110とを備えている。また、吸口体200は、吸口体本体300と、連結管500とで構成されている。
【0015】
電気掃除機本体110は、負圧を発生させる、図示しないモータやファンなどからなる負圧発生源を備えている。この電気掃除機本体110に接続された延長ホース120および延長管130は、この負圧発生源に連通している。負圧発生源により発生した負圧により、延長管130に接続された吸口体200から床面の塵埃を吸引することができる。
【0016】
図2および図3は本実施の形態の吸口体の底面の構造を示す底面図である。図2に示すように、吸口体は平面視矩形に構成される。その底面の中央部には、床面の塵埃を吸引する塵埃吸引口320が設けられている。塵埃吸引口320は、連結管500、延長管130、延長ホース120を介して掃除機本体110の負圧発生源に連通している。
【0017】
吸口体本体300は、前後方向より幅方向が長い平面視矩形に構成されている。吸口体本体300の下面側には回転ブラシ350が回動自在に取り付けられている。また、吸口体本体300の内部には、回転ブラシ350を駆動する図示しないモータが設けられている。
【0018】
吸口体本体300の底面後端部中央には、補助ローラー355が設けられている。吸口体本体の下面後方部を支持する摺動部材として、吸口体本体300の後端の両隅部にはそれぞれ自在車輪358が設けられている。自在車輪358は、ローラーを360°方向転換可能に保持したもので、転動の方向が限定されないので操作性を向上させることができる。
【0019】
また、自在車輪358の床面に接触するローラーの表面には、ウレタン樹脂などを含浸させた不織布からなるクッション材が設けられている。これにより、自在車輪358が床面上を転動したときの騒音を低減している。
【0020】
吸口体本体300の底面前端部の両隅部にはそれぞれ起毛布910を備えた、起毛布交換ユニット900が設けられている。起毛布交換ユニット900は、その表面に設けられた起毛布910と、起毛布910の直後に設けられたローラー960とを有している。起毛布交換ユニット900は、ロック部950により着脱自在に吸口体本体300の外表面を構成するケース310に取り付けられている。
【0021】
ロック部950は、表面に露出した部分をコインなどで回動させることで、起毛布交換ユニット900を固定したり固定を解除したりすることができるクランプである。ロック部950の先端は図3に示す被係合孔315に係合する。なお、ロック部950はビスで構成しても良い。
【0022】
図3に示すように、起毛布交換ユニット900は、回転ブラシ350の両端を保持しており、起毛布交換ユニット900を取り外すことで、回転ブラシ350を着脱することが
できる。
【0023】
図4は、本実施の形態の吸口体の断面構造を示す縦断面図であり、図5は、起毛布910の周辺の構造を示す拡大断面図である。図4および図5に示すように、起毛布交換ユニット900は、吸口体本体300の下面だけでなく、吸口体本体300の前面にも回り込むように設けられている。起毛布交換ユニット900の表面に設けられた起毛布910も下面から前面に回りこむように設けられている。
【0024】
起毛布910を吸口体本体300の前面にも回り込ませるようにすることで、起毛布910の剥がれを防止することができる。また、吸口体本体300の前面が壁等の表面を摺動したときは、前面の起毛布910が摩擦を軽減するので、壁等の傷を防止することができる。
【0025】
起毛布交換ユニット900は、略L型に成型された取付部材920を有している。取付部材の上端にはフック930が設けられている。フック930は、ケース310の前面上端部に設けられた窪み部に係合している。これにより取付部材920の上端は吸口体本体300に固定されている。取付部材920の下面の後端部は、上述のロック部950によりケース310に固定されている。
【0026】
取付部材920の表面に設けられた起毛布910は、カットパイル状の紡績布で構成されている。起毛布910の表面を構成する糸は、布地からなる基布915の表面から突出するように密集して設けられている。この糸としては通常ナイロン糸が用いられる。起毛布910裏面側を構成する基布915は、取付部材920に接着固定されている。起毛布910としてフェルトなどを用いてもよい。
【0027】
起毛布910の表面を構成する糸は、吸口体本体300を床面に沿って前方に移動させたときに床面上をスムーズに摺動できるよう、後ろ向きに傾斜して設けられていることが好ましい。
【0028】
取付部材920には、ローラー960が設けられている。ローラー960は、上向きに窪んだ取付部材920の窪み部にその上部が位置している。また、ローラー960は、その下端部が吸口体本体300の表面を構成するケース310の下面より下に突出するように設けられている。
【0029】
ローラー960は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの軟質系樹脂で構成されている。ローラー960の表面には、クッション材は設けられておらず、ローラー960を構成する軟質系樹脂が露出している。ローラー960は、自在車輪358よりも小径に構成されている。
【0030】
ローラー960の下端は、使用開始前の起毛布910の下端より、上方に位置している。また、ローラー960の下端は、吸口体本体300の後端部に設けられた自在車輪358の下端よりも上方に位置している。さらに、ローラー960の下端は、起毛布910の基布915の表面(下面)よりも、図4および図5に示す高さHだけ下方に位置している。この高さHは、あくまでも一例であるが、ここでは0.5mm程度としている。この高さHは、0mm以上、3mm以下とすることが好ましい。なお、本実施の形態では、基布915の表面から起毛布910の下端までの高さは、無負荷状態において約5mm、吸口体本体300を床面に載置した状態において約3.5mmに設定している。
【0031】
使用開始時は、吸口体本体300を床面に載置すると、前方に一対設けられた起毛布910と、後方に一対設けられた自在車輪358とにより吸口体本体300が支持され、ロ
ーラー960は床面に接触しない。掃除機の使用を繰り返すと、起毛布910は磨耗する。起毛布910が所定の厚み以上磨耗すると、磨耗が基布915に達する前に、ローラー960が床面に接触する。
【0032】
ローラー960は、表面にクッション材が設けられておらず、また比較的小径であるので、ローラー960が床面上を転動することにより、比較的大きな騒音が発生する。これにより、起毛布910が磨耗して交換が必要となっていることを、ユーザーに知らせることができる。
【0033】
また、起毛布910が所定の厚み以上磨耗した後は、ローラー960により吸口体本体300の前方部が支持される。これにより、床面に吸口体本体300のケース310が接触して床面が傷つくことを未然に防止することができる。
【0034】
図6および図7は、本実施の形態の変形例の吸口体の下面の構造を示す底面図である。上記実施の形態では、ローラー960を起毛布910の直後に設けたが、図6に示すように、ローラー960を起毛布910の直前に設けるようにしてもよい。
【0035】
ローラー960は、起毛布910の直前、直後や、起毛布910に隣接する位置などの、起毛布910の近傍に設ければよい。これにより、起毛布910が磨耗した場合でも、起毛布910が完全に磨耗する前にローラー960と床面とが接触し、吸口体本体300のケース310が床面に接触することを未然に防止することができる。
【0036】
また、ローラー960は、図7に示すように、一対の起毛布910の間に設けるようにしてもよい。この場合には、必ずしも起毛布910の近傍に設ける必要はない。通常起毛布910は、両側が均等に磨耗する。したがって、吸口体本体300の前端部は床面と平行を保ちながら徐々に床面に近づく。ローラー960が起毛布910の間に位置していれば、必ずしも起毛布910の近傍に位置していなくても、起毛布910の磨耗が進行した場合ローラー960が吸口体本体300のケース310よりも先に床面に当接する。
【0037】
これにより、起毛布910の交換時期を知らせることができると共に、床の傷を未然に防止することができる。ただし、吸口体本体300に偏った力が加わったような場合にもより確実に床の傷を防止するためには、一対の起毛布910の間にローラー960を設ける場合でも、起毛布910の近傍にローラー960を設けることがより好ましい。
【0038】
本実施の形態では、吸口体本体300の下面の前方の一対の起毛布910を設け、後方に一対の自在車輪358を設けたが、後方の自在車輪358に代えて起毛布を設けても良い。ただし、操作性を確保するためには、後方は自在車輪358を用いることがより好ましい。
【0039】
後方の自在車輪358に代えて起毛布を用いた場合、起毛布は、通常前方の起毛布が、後方の起毛布より先に磨耗する。そこで、前方の起毛布の近傍にローラー960を取り付けておき、前方の起毛布と後方の起毛布とを同じ取付部材により吸口体本体300のケース310に取り付けておく。このようにすることで、前方の起毛布の交換時に後方の起毛布も同時に交換されるので、後方の起毛布の近傍にはローラー960を設ける必要は無い。
【0040】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるのではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0041】
110 電気掃除機本体、120 延長ホース、130 延長管、200 吸口体、300 吸口体本体、310 ケース、315 被係合孔、320 塵埃吸引口、350 回転ブラシ、355 補助ローラー、358 自在車輪、500 連結管、900 起毛布交換ユニット、910 起毛布、915 基布、920 取付部材、930 フック、950 ロック部、960 ローラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面の塵埃を吸い込む電気掃除機用吸口体であって、
吸口体下面にその一部が配置された起毛布を備え、
前記起毛布は、吸口体下面から吸口体前面に設けられている、電気掃除機用吸口体。
【請求項2】
前記吸口体本体の下面の後方部に配置された第1のローラーと、前記吸口体本体の下面に配置された第2のローラーと、をさらに備え、
前記第2のローラーの下端は、初期状態の前記起毛布の下端および前記第1のローラーの下端より上方に位置すると共に前記吸口体本体の下面よりは下方に突出し、初期状態においては吸口体を床面に配置した状態において床面には接触せず、
前記第2のローラーは前記第1のローラーよりも小径である、請求項1に記載の電気掃除機用吸口体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気掃除機用吸口体を有する、電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−194338(P2010−194338A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112025(P2010−112025)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【分割の表示】特願2006−228124(P2006−228124)の分割
【原出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】