説明

電気掃除機用吸引ノズル

【課題】 吸引口の開口面積を大きくしても、構造を簡単にして吸引口の前後の吸引力が均等化できるようにし、清掃ムラが生じる事態を防止できるようにし、清掃効率の向上を図る。
【解決手段】 壁部2に囲繞された流路3を有するとともに基端が電気掃除機の吸引ホースに連通して接続される接続口部4として構成される本体1を備え、本体1の下側に先端から長手方向に沿って所定長さの細長状に形成された吸引口5が形成され、吸引口5の先端位置aから終端位置b側の任意の任意位置mまでの吸引口5の開口面積をQm、任意位置mにおける流路3の横断面積をSmとしたとき、本体1を、Sm=K×Qmとなり、且つ、1.2≦K≦2.5になるように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機の吸引力により塵埃等のゴミを吸引する電気掃除機用吸引ノズルに関し、特に、吸引口の前後の吸引力を均等化できるようにした電気掃除機用吸引ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気掃除機においては、吸引力を増加させて用いる着脱可能な電気掃除機用吸引ノズルが備えられている。この吸引ノズルは、壁部で囲繞され筒状に形成された本体を備え、この本体の基端に電気掃除機の吸引ホースに連通して接続される接続口部を有し、本体の下側に先端から長手方向に沿う細長の吸引口を有して形成されている。ところで、この電気掃除機用吸引ノズルにおいては、広い面積を一時に掃除できるようにするために、吸引口の開口長を長くすることが考えられるが、吸引口の開口長を長くする程、吸引口の基端側の吸引力が強くなり、相対的に吸引口の先端側の吸引力が弱くなることから、前後の吸引力が不均一になり、清掃ムラが生じるという問題があった。
【0003】
そこで、これを解消するために種々の技術があるが、例えば、先に、本願出願人が提案し、特許文献1(特開2009−273510号公報)に掲載された吸引ノズルが知られている。図8に示すように、この吸引ノズルNaは、壁部101に囲繞された流路102を有する本体100を備え、本体100の基端に電気掃除機の吸引ホース103に連通して接続される接続口部104を有し、本体100の下側に先端から長手方向に沿って所定長さの細長状に形成された吸引口105が形成されている。そして、本体100の一対の側壁間に、吸引口105を前側吸引口106と後側吸引口107とに分ける仕切り壁108を架設し、一端が後側吸引口107の後端に連設され他端が本体100の先端側であって上壁側に向けて立ち上り、他端と上壁との間に吸引開口部109を形成する隔壁110を架設し、前側吸引口106の中央から吸引開口部109の中央に至る前側吸気経路111の長さと後側吸引口107の中央から吸引開口部109の中央に至るまでの後側吸気経路112の長さとが略同じ長さになるようにしている。これにより、電気掃除機を駆動させて、吸引ノズルNaから塵埃等のゴミを吸引すると、前側吸気経路111と後側吸気経路112とが隔壁110と仕切り壁108によって、その長さが略同じに形成されているので、前側吸引口106と後側吸引口107との吸引力が略同じになり、そのため、吸引口105の前後の吸引力が均等化されるので、前後の清掃ムラが生じる事態が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−273510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来の電気掃除機用吸引ノズルNaにおいては、本体100の一対の側壁間に、仕切り壁108と隔壁110とを架設しているので、吸引口105の前後の吸引力が均等化されるものの、構造が複雑になるので、製作が煩雑で、コスト高になるという問題があった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、吸引口の開口面積を大きくしても、構造を簡単にして吸引口の前後の吸引力が均等化できるようにし、清掃ムラが生じる事態を防止できるようにし、清掃効率の向上を図った電気掃除機用吸引ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するため、本願発明者は、長年実験,研究を重ね、以下の構造の電気掃除機用吸引ノズルを発明するに至った。即ち、壁部に囲繞された流路を有するとともに基端が電気掃除機の吸引ホースに連通して接続される接続口部として構成される本体を備え、該本体の下側に先端から長手方向に沿って所定長さの細長状に形成された吸引口が形成された電気掃除機用吸引ノズルにおいて、
上記吸引口の先端位置aから終端位置b側の任意の任意位置mまでの吸引口の開口面積をQm、該任意位置mにおける流路の横断面積をSmとしたとき、上記本体を、Sm=K×Qmとなり、且つ、1.2≦K≦2.5になるように形成した構成としている。
但し、上記吸引口の幅をH、上記吸引口の先端位置aから任意位置mまでの長さをLm、上記吸引口の先端位置aから該吸引口の先端部の所定位置cまでの長さをLcとしたとき、少なくともLc<Lmとする。
ここで、Lc<Lmという条件にしたのは、吸引口の先端部の形状によっては、Sm=K×Qmの関係に作成することが不能であったり、可能であるが容易ではないからである。勿論、先端部においても、Sm=K×Qmとなり、且つ、1.2≦K≦2.5になるように形成できれば、より望ましい。これにより、少なくとも所定位置cよりも微小に終端位置b側の位置から終端位置bまでの区間の流路において条件を満たすことになる。
Kが1.2に満たないと、吸引口の前後の吸引力にムラが生じる。Kが2.5を超えると形状のバランスが悪くなる。望ましくは、1.3≦K≦2.2である。より望ましくは、1.4≦K≦2.1である。
【0007】
これにより、電気掃除機用吸引ノズルを用いて掃除するときは、本体の接続部を電気掃除機の吸引ホースに接続し、電気掃除機を駆動させ、例えば、畳やフローリング等の床面,床面に敷いた絨毯等に吸引口を沿わせて移動させ、あるいは、家具の裏等の狭い場所に挿入して用いる。また、床面の掃除以外に、布団,こたつ掛けや衣服等の布類に、吸引口を沿わせて移動させ、例えば、塵埃等のゴミを吸引させることも行なう。電気掃除機を駆動させると、吸引口から例えば、塵埃等のゴミが吸引され、接続部を通って電気掃除機本体内に入り、例えば、電気掃除機本体内に設けられているゴミ収納部等に収納される。
この場合、後述の実験例から分かるように、本体の吸引口の全長に亘って吸引力が略同じになり、そのため、吸引口の前後の吸引力が均等化されるので、前後の清掃ムラが生じる事態が防止される。また、吸引口の吸引力が均等化されると、吸引口の開口長を長くしても吸引口の前後の吸引力は略等しく十分な吸引力が吸引口の先端部まで出るので、吸引口の開口面積を大きくすることができ、そのため、広い面積を一時に掃除できるようになり、清掃効率を向上させることができる。
【0008】
そして、必要に応じ、上記吸引口の先端位置aから終端位置bまでの所定長さをLとしたとき、6mm≦H≦12mm、Lc=H±4mm、50mm≦L≦200mmに設定した構成としている。望ましくは、7.5mm≦H≦9mm、Lc=H±2mm、70mm≦L≦150mmに設定したことである。これにより、本体の形状バランスが極めて良くなり、特に、家庭での使用において使いやすくすることができる。
【0009】
また、必要に応じ、上記本体を先端先細りの筒状に形成し、上記吸引口を該本体の先端部を軸線に略直行する方向に切除した先端開口と、該先端開口から基端側に延びる一般開口とを備えた構成としている。これにより、例えば、家具の裏等の狭い場所に挿入して用いる際、先端開口は吸引ノズルの先端にあるので、先端開口を狭いところにあるゴミの位置に位置させやすく、そのため、狭いところの吸引を容易に行うことができる。
【0010】
この場合、上記先端開口及び一般開口の境界位置dを上記所定位置cと定めたことが有効である。本体の先端に形成される先端開口の大きさがあまり大きくならないので、先端開口での吸引を確実に保持できる。
【0011】
更にまた、必要に応じ、上記先端開口より基端側の一般開口の長手方向開口縁を、外側に凸に湾曲形成した構成としている。これにより、一般開口の長手方向開口縁が外側に凸に湾曲形成されているので、吸引面に対して点接触的に接するので、畳やフローリング等の床面,床面に敷いた絨毯,布団,こたつ掛けや衣服等の布類に、吸引口を沿わせて移動させやすくなり、清掃効率が向上させられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吸引口の全長に亘って吸引力が略同じになり、そのため、吸引口の前後の吸引力が均等化されるので、前後の清掃ムラが生じる事態を防止することができる。また、吸引口の吸引力が均等化されると、吸引口の開口長を長くしても吸引口の前後の吸引力は略等しく十分な吸引力が吸引口の先端部まで出るので、吸引口の開口面積を大きくすることができ、そのため、広い面積を一時に掃除できるようになり、清掃効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気掃除機用吸引ノズルを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電気掃除機用吸引ノズルを示す底面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電気掃除機用吸引ノズルを示す側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電気掃除機用吸引ノズルを示す任意位置での横断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電気掃除機用吸引ノズルに電気掃除機の吸引ノズル用アタッチメントを取付けた状態を示す図である。
【図6】本発明の実験例に係り、吸引ノズルの吸引力を計測するための測定装置を示す図である。
【図7】本発明の実験例に係り、実施例及び比較例の吸引力分布状態を示すグラフ図である。
【図8】従来の電気掃除機用吸引ノズルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る電気掃除機用吸引ノズルについて詳細に説明する。
図1乃至図4には、本発明の実施の形態に係る電気掃除機用吸引ノズルNを示している。本吸引ノズルNは、壁部2に囲繞された流路3を有し、先端先細りの筒状に形成された本体1を備えている。本体1は、例えば、プラスチックや金属板等で形成されている。本体1の基端は円筒状に形成されており、電気掃除機の吸引ホース(図示せず)に連通して接続される接続口部4として構成されている。本体1の下側には、先端から長手方向に沿って所定長さの細長状に形成された吸引口5が形成されている。
【0015】
吸引口5は、本体1の先端部6を軸線Pに略直行する方向に切除した先端開口7と、この先端開口7から基端側に延びる一般開口8とを備えて構成されている。実施の形態では、先端開口7及び一般開口8の境界位置dを、吸引口5の先端部6の所定位置cと定めている。一般開口8の長手方向開口縁9は、外側に凸に湾曲形成されている。
【0016】
また、実施の形態では、吸引口5の幅をH、吸引口5の先端位置aから終端位置bまでの所定長さをL、吸引口5の先端位置aから吸引口5の先端部6の所定位置c(d)までの長さをLcとしたとき、6mm≦H≦12mm、Lc=H±4mm、50mm≦L≦200mmに設定している。望ましくは、7.5mm≦H≦9mm、Lc=H±2mm、70mm≦L≦150mmに設定したことである。実施の形態では、Lc=Hに設定されている。
更にまた、一般開口8の長手方向開口縁9は、例えば、その曲率半径Rを、200mm≦R≦2000mmの範囲に定めている。
【0017】
また、吸引口5の先端位置aから終端位置b側の任意の任意位置mまでの吸引口5の開口面積をQm、任意位置mにおける流路3の横断面積(軸線Pに直行する流路3の面の面積)をSmとしたとき、本体1は、Sm=K×Qmとなり、且つ、1.2≦K≦2.5になるように形成されている。但し、少なくともLc<Lmとする。
ここで、Lc<Lmという条件にしたのは、吸引口5の先端開口7のある先端部6の形状によっては、Sm=K×Qmの関係に作成することが不能であったり、可能であるが容易ではないからである。勿論、先端開口7においても、Sm=K×Qmとなり、且つ、1.2≦K≦2.5になるように形成できれば、より望ましい。これにより、任意位置mが、所定位置c(d)と終端位置bとの間の位置にあって、所定位置c(d)よりも微小に終端位置b側の位置から終端位置bまでの区間の流路において条件を満たすことになる。
Kが1.2に満たないと、吸引口5の前後の吸引力にムラが生じる。Kが2.5を超えると形状のバランスが悪くなる。望ましくは、1.3≦K≦2.2である。より望ましくは、1.4≦K≦2.1である。
【0018】
従って、この実施の形態に係る電気掃除機用吸引ノズルNを用いて掃除するときは、本体1の接続部を電気掃除機の吸引ホースに接続し、電気掃除機を駆動させ、例えば、畳やフローリング等の床面,床面に敷いた絨毯等に吸引口5を沿わせて移動させ、あるいは、家具の裏等の狭い場所に挿入して用いる。また、床面の掃除以外に、布団,こたつ掛けや衣服等の布類に、吸引口5を沿わせて移動させ、例えば、塵埃等のゴミを吸引させることも行なう。電気掃除機を駆動させると、吸引口5から例えば、塵埃等のゴミが吸引され、接続部を通って電気掃除機本体内に入り、例えば、電気掃除機本体内に設けられているゴミ収納部等に収納される。
【0019】
この場合、後述の実験例から分かるように、本体1の吸引口5の全長に亘って吸引力が略同じになり、そのため、吸引口5の前後の吸引力が均等化されるので、前後の清掃ムラが生じる事態が防止される。また、吸引口5の吸引力が均等化されると、吸引口5の開口長を長くしても吸引口5の前後の吸引力は略等しく十分な吸引力が吸引口5の先端部6まで出るので、吸引口5の開口面積を大きくすることができ、そのため、広い面積を一時に掃除できるようになり、清掃効率を向上させることができる。
【0020】
また、本体1は、軸線Pに略直行する方向に切除した先端開口7を備えているので、例えば、家具の裏等の狭い場所に挿入して用いる際、先端開口7は吸引ノズルNの先端にあるので、先端開口7を狭いところにあるゴミの位置に位置させやすく、そのため、狭いところの吸引を容易に行うことができる。この場合、Lc=H±4mmなので、実施の形態では、Lc=Hなので、本体1の先端に形成される先端開口7の大きさがあまり大きくならないことから、先端開口7での吸引を確実に保持できる。
【0021】
更に、吸引口5の一般開口8の長手方向開口縁9は、外側に凸に湾曲形成されているので、畳やフローリング等の床面,床面に敷いた絨毯,布団,こたつ掛けや衣服等の布類の吸引面に対して点接触的に接することになり、そのため、吸引口5を沿わせて移動させやすくなり、清掃効率が向上させられる。
【0022】
また、この電気掃除機用吸引ノズルNに、本願出願人が先に提出した電気掃除機の吸引ノズル用アタッチメント(特許3459393号公報に記載)を付けて掃除をすることができる。この場合、特に、布団,こたつ掛けや衣服等の布類の掃除をする際に有効である。
【0023】
図5に示すように、このアタッチメントSは、吸引ノズルNがその先端部6から挿通される大きさの螺線21で構成されるとともに、螺線21を構成し間隔をもって順次列設される複数の線が挿通時に吸引口5を横切るアタッチメント本体20と、アタッチメント本体20を吸引ノズルNに取付けるための取付機構22とを備えて構成されている。
このアタッチメントを本発明の電気掃除機用吸引ノズルNに取付ける。取付けは、吸引ノズルNの先端部6をアタッチメント本体20の基端側から挿入し、吸引ノズルNを螺線21内に入れて、取付機構22により取付ける。
【0024】
この状態で、掃除をしたい箇所に吸引ノズルNの吸引口5を螺線21を介して対面させ、ゴミ等を吸引して掃除を行なう。このとき、吸引ノズルNに接触する接触物が、布団,こたつ掛けや衣服等の布類である場合、これらの柔軟な接触物は、吸引口5内に入り込もうとするが、アタッチメント本体20により、吸い込まれようとする接触物が吸引口5から隔てられるとともに、接触物に対する複数の線の接触部の両側に隙間ができ、この隙間が逃がし弁として機能する。そのため、接触物の面方向に風圧に逆らう張力が発生して接触物をこわばらせるようになり、その結果、接触物が吸引口5にキッチリと纏わり付くことが防止される。即ち、接触物と吸引口5との間に隙間が確保されるので、接触物が吸引口5に吸い付かないために必要な空気の流入量が確保され接触物の吸い込みが防止されて、掃除する面を移動する際の滑りを良くして自由に動いてゴミを吸引させることができる。
【0025】
この場合においても、電気掃除機用吸引ノズルNの吸引口5の吸引力が均等化されているので、アタッチメントSの効果と相俟って、前後の清掃ムラが生じる事態が防止される。また、吸引口5の吸引力が均等化されているので、吸引口5の開口面積を大きくすることができ、そのため、広い面積を一時に掃除できるようになり、アタッチメントSの効果と相俟って、清掃効率を向上させることができる。
【実施例】
【0026】
次に、実施例について説明する。
(実施例1)
本体1を、上記の形状に形成した。そして、吸引口5の幅Hを、H=8mm、吸引口5の先端位置aから終端位置bまでの所定長Lを、L=128mm、先端位置aと所定位置c(境界位置d)との長さLcを、Lc=H=8mmに設定した。そして、開口面積Qmと横断面積Smとの関係式、Sm=K×Qmにおいて、K=1.5になるように形成した。但し、吸引口5の先端位置aから任意位置mまでの長さをLmとしたとき、Lc<Lmとする。即ち、任意位置mは,吸引口5の所定位置cより微小に終端位置b側の位置から終端位置bまでの間の位置となる。
【0027】
(実施例2)
本体1を、上記の形状に形成した。そして、吸引口5の幅Hを、H=8mm、吸引口5の先端位置aから終端位置bまでの所定長Lを、L=128mm、先端位置aと所定位置c(境界位置d)との長さLcを、Lc=H=8mmに設定した。そして、開口面積Qmと横断面積Smとの関係式、Sm=K×Qmにおいて、K=2になるように形成した。但し、吸引口5の先端位置aから任意位置mまでの長さをLmとしたとき、Lc<Lmとする。即ち、任意位置mは,吸引口5の所定位置cより微小に終端位置b側の位置から終端位置bまでの間の位置となる。
【0028】
そして、比較例とともに吸引試験を行った、比較例1は、上記実施例1,2において、K=1になるように形成した。比較例2は、市販のノズルで、L=40mmのもの、比較例3は、市販のノズルで、L=50mmのもの、比較例4は、市販のノズルで、L=70mmのものである。
但し、実施例1及び2と比較例1は実験に使用した電気掃除機の吸引力の強弱のスイッチを中、即ち標準を用いて実験をおこなった。これは、市販のノズルより格段に大きくなった吸引口にふさわしい吸引力を用いるためである。
吸引口の部位番号は、先端開口7を0番にして、あとは所定位置cから終端位置bまで10mm間隔に1から順に12まで番号を振った。
また、比較例2,3及び4の市販のノズルにおいては、実施例1,2及び比較例1の実験に使用した電気掃除機を用いて、この電気掃除機の吸引力の強弱のスイッチを、弱を用いてこの実験を行った。これは、比較例2,3及び4の市販のノズルを備えていた各メーカーの電気掃除機のマニュアルに、このタイプのノズルを用いるときの吸引力のスイッチは、弱にして用いるように書いてあったからで、また、実際に実験に使用した電気掃除機の吸引力のスイッチを中、即ち標準でこれら比較例2,3及び4の市販のノズルを用いると、実験に使用した電気掃除機の自由に曲がる部分の吸引パイプが異常に縮み、電気掃除機の様子が尋常でない様子になったからである。
なお、比較例2,3及び4の市販のノズルの場合、明確な先端部分の吸引口がなかったため、吸引口の部位番号0番の値はない。
【0029】
吸引試験は、図6に示すような負圧測定装置Fを作成して行った。この装置Fは、水を入れた容器30を床に置き、内径3mmの透明で適度に弾性と剛性を備えた塩化ビニールのホース31を用い、このホースの一端を容器の水中に入れて固定し、ホースを垂直に約2メートル立ち上げていきフック32に引っ掛けて折り返し、他端を床近傍に位置させて構成した。ホース31には10mm刻みにメモリ33を付した。そして、実験に係る各吸引ノズルNにおいて、吸引口5の開口先端位置aから開口終端位置bにかけて、各部位番号の部位に、ホース31の他端開口を順次あてがって容器30内の水を吸引し、吸引されて上昇する水位(吸引口5の各部分に出る負圧)を測定した。この原理では、10mm(1目盛)の水位上昇で1ヘクトパスカルとなる。
結果を図7に示す。この結果から、実施例1,2は、吸引口5の全長に亘って吸引力が略同じになり、そのため、吸引口5の前後の吸引力が均等化されていることが分かる。
【0030】
次に、上記の実験結果を得るまでに、本願発明者は、種々の実験を行い、試行錯誤した。その経過を述べる。
本発明の動作の原理の根幹は電気掃除機で発生させられた負圧すなわち低気圧を、吸引ノズルNの吸引口5の各部分のところまで張り出させるというところにある。吸引ノズルNには空気を吸引する通路は必ずある。この空気を吸引する通路を、単に吸引通路と考えず、負圧供給通路(流路3)でもあると考え、この負圧供給通路をどのように形成すると、吸引口5の各部分の負圧が略等しい吸引ノズルNが得られるのか考察して得られたものが今般の工夫である。
いま、吸引ノズルNに電気掃除機での吸引による負圧がかかっていると考えて、そのとき、m点の流路3(負圧供給通路)の断面積Smに対して、a点からm点までの吸引口5の面積Qm(=H×Lm)が十分小さいとき、どのようなことが起きるかというと、m点の負圧供給通路の断面を通って奥へと流れる空気の量に対して、m点から先端側の吸引口5の面積Qm(=H×Lm)から流入する空気の量は小さいと考えられるから、その差の分だけ、吸引ノズルNの管内上部に設けられた負圧供給通路のm点から先端側の負圧供給通路内の空気はm点の負圧供給通路の断面から吸引され、この結果、負圧は負圧供給通路全体にいきわたり、吸引ノズルNの吸引口5の各部分のところまで張り出してくる。
こうなると、吸引ノズルNの吸引口5の各部分に出る負圧は略等しくなり、吸引ノズルNの吸引口5の先端部6も、吸引ノズルNの吸引口5の終端部分も略等しい吸引力を持つと考えられる。
これから、考えている吸引ノズルNについて、m点の負圧供給通路の断面積Smに対して、十分小さなa点からm点までの吸引口5の面積Qm(=H×Lm)という意味を具体的に数式にして考えた。
【0031】
即ち、上記したように、m点の負圧供給通路の断面積をSm、a点からm点までの長さをLm、吸引口5の幅をHとして
S=K×Qm=K×(H×Lm)・・・・・・・・・・・(1)
という式を考える。
ここで、m点はa点の下の吸引ノズルNの吸引口5の先端下部のc点より微小に吸引口5の後端b点側の点から吸引口5の後端b点までの任意の点である。
(1)式でKはm点の負圧供給通路の断面積Smとa点からm点までの吸引ノズルNの吸引口5の面積Qm(=H×Lm)の比例定数となる。
【0032】
今般の正確な実験に先立って、紙粘土で作成した種々の吸引ノズルについて、多数行った予備的実験によれば、m点の負圧供給通路の断面積Smに対して、十分小さなa点からm点までの吸引ノズルNの吸引口5の面積Qm(=H×Lm)という意味で、(1)式においてKが2≦KであるようにKを決定して、断面積Smを計算して、その断面積Smをm点の負圧供給通路の断面積Smとして吸引ノズルNを形成すれば、吸引ノズルNの吸引口5の各部分に略等しい負圧が得られることが分かった。
しかし、Kを、K>2であるように決定して面積Smを計算して、その面積Smをm点の負圧供給通路の断面積Smとして形成した吸引ノズルNは、吸引口5の先端に十分な負圧を張り出させるという目的、及び、吸引ノズルNの吸引口5の各部分に略等しい負圧を持たせるという目的は達せられるが、あまり大きいKを用いて面積Smを計算して、その面積Smをm点の負圧供給通路の断面積Smとして形成した吸引ノズルNは、大きすぎ重すぎて、とても使いにくい。
【0033】
そこで、吸引ノズルNをその長手方向の吸引口5の長さを約200mm以下、実験では約128mm以下の長さにして形成するとき、(1)式において1.0≦K≦2.5となるようにKを決定して、面積Smを計算して、その面積Smをm点の負圧供給通路の断面積Smとして吸引ノズルNを形成してみた。詳しくは、(1)式を用いて、KをK=1、K=1.5、K=2として各々m点の負圧供給通路の断面積Smを計算して、各々それらのm点の負圧供給通路の断面積Smを用いて形成し、幅Hが8mmの吸引口5を持つ実験用吸引ノズルNで実験したところ、Kの値をK=2とした実験用吸引ノズルNは吸引口5の先端部6の負圧と吸引口5の後端部分の負圧が略等しくなり、また、吸引口5の各部分の負圧も略等しくなり、また、吸引口5の各部分の負圧は実用上十分なものとなった。
【0034】
Kの値をK=1.5として、面積Smを計算して、その面積Smをm点の負圧供給通路の断面積Smとして形成した実験用吸引ノズルNは吸引口5の先端部6の負圧が吸引口5の後端部分の負圧より小さくなったものの、吸引口5の先端部6に実用上十分な吸引力が得られ、また吸引口5の各部分の負圧の差も実用上問題ない範囲で、実用上十分な能力を示した。
【0035】
Kの値をK=1として、面積Smを計算して、その面積Smをm点の負圧供給通路の断面積Smとして形成した実験用吸引ノズルNは吸引口5の先端部6の負圧が吸引口5の終端部分の負圧より著しく小さくなり実用上の吸引力が得られなかった。
【0036】
以上の実験が示すところは、(1)式において、Kの値を、余裕を見て1.2≦K≦2.5(実験結果のみでは、1.5≦K≦2.0)として、実験用吸引ノズルNを形成すれば、Kの値をK=1.5として形成された実験用吸引ノズルNの吸引口5の各部分に出る負圧のバランスと、Kの値をK=2として形成された実験用吸引ノズルNの吸引口5の各部分に出る負圧のバランスとの間の、中庸なバランスの負圧が、このKの値を1.2≦K≦2.5として形成された実験用吸引ノズルNの吸引口5の各部分に出ると考えられる。したがって、Kの値を1.2≦K≦2.5として形成された実験用吸引ノズルNは実用上十分な負圧が吸引口5の各部分に出る吸引ノズルNとなると考える。
【0037】
実験用吸引ノズルNにおいて、(1)式を用いて、Kの値をK=1.5にして、面積Smを計算して、その断面積Smをm点の負圧供給通路の断面積Smとして形成した実験用吸引ノズルNは、紙製のゴミパックにゴミが1/4ほど溜まった通常の使用状態の電気掃除機の吸引パイプに接続して、この電気掃除機の吸引力の強、中、弱のスイッチを、中を用いてこの電気掃除機を運転し、床にこぼした砂を、吸引口5の先端部6だけ床に触れさせ、吸引口5の他の部分は浮かせた状態で吸引したところ、問題なく吸引口5の先端部6で砂を吸引した。
【0038】
また、吸引口5の長さLが128mmの実験用吸引ノズルNで実験しただけで、128mmより短い吸引口5の長さLを持つ吸引ノズルNについて、これを形成するときに(1)式と、Kに関する条件1.2≦K≦2.5が使えるとしたのは、吸引ノズルNの吸引口5の幅が変わらないとき、吸引ノズルNの吸引口5の長さLが128mmより短くなると、その吸引ノズルNの吸引口5の吸引力は、吸引ノズルNの吸引口5の長さLが128mmの吸引口5の吸引力より強くなるので、先端部6の吸引力が不足するなどの不都合が起きるということがないからである。
【0039】
また、実験用吸引ノズルNの吸引口5の幅Hを8mmとしたのは、実際の掃除において、紙を固めて作ったような、大きめの猫のトイレ用の砂などが、吸引口5に引っ掛かって吸引できない事態にならないような幅を考えたのであるが、以下に述べる理論上の理由もある。
(1)式におけるHを8mmに決めて行った実験結果だけ示して、(1)式と、Kに関する1.2≦K≦2.5という条件を、このたびの工夫で求める吸引ノズルNを形成させるための式とKの条件だと主張する理由は次のとおりである。
まず数学的に、m点はc点より微小にb点側の点からb点まで無限にあり、したがってm点の負圧供給通路の断面も無限にあり、したがってm点の負圧供給通路の断面積Smも無限にあり、またa点からm点までの長さLmも同様に無限にある。無限にある全てのm点の負圧供給通路の断面がm点から先端側の負圧供給通路内の空気を吸引する状況を具体的に示すための(1)式と、Hを、H=8とした実験から得られたKの条件1.2≦K≦2.5であった。
【0040】
実は、このとき無限にあるm点の断面の断面積Smとm点から先端側の吸引口5の面積Qm(=H×Lm)のあいだの関係式(1)式を発見するに先立って考えたことは、「吸引ノズルNに電気掃除機での吸引による負圧がかかっていると考えて、そのとき、m点の負圧供給通路の断面積Smに対して、a点からm点までの吸引ノズルNの吸引口5の面積Qm(=H×Lm)が十分小さいとき」ということであった。
この、「m点の負圧供給通路の断面積Smに対して、a点からm点までの吸引ノズルNの吸引口5の面積Qm(=H×Lm)が十分小さいとき」という意味で、実験で得られた1.2≦K≦2.5という条件は、(1)式において、Hを、H=8として実験して得られたKの条件であるが、無限にある全てのm点の負圧供給通路の断面がm点から先端側の負圧供給通路内の空気を吸引するためのKの条件という意味において、吸引ノズルNの吸引口5の幅Hには左右されない、(1)式の面積Smと面積Qm(=H×Lm)のあいだの比例定数Kの条件であることは明らかである。
【0041】
すなわち、求める吸引ノズルNを形成するとき、(1)式を用いて、Kに関する条件を、前述の実験で得た、1.2≦K≦2.5とすれば、全ての任意のm点の負圧供給通路の断面積Smは、これに対するm点から先端側の吸引口5の面積Qm(=H×Lm)のK倍であり、このKが1.2≦K≦2.5であれば、ありとあらゆるm点の負圧供給通路の断面積Smはm点から先端側の負圧供給通路内の空気を吸引し、その結果Hの値にかかわらず、この吸引ノズルNの吸引口5の各部分に負圧が張り出すことになり、(1)式とKに関する1.2≦K≦2.5という条件は、求める吸引ノズルNを形成するために、Hの値にかかわらず有効であると考えるからである。
【0042】
また、実際上の問題として考えても、実際販売されている吸引ノズルNの吸引口5の幅は、吸引口5の部分により変化しているものが多いが、約5mmから約10mmであることも考えれば、吸引ノズルNの吸引口5の幅Hが12mmを超える場合等は考えなくていいし、また幅Hを一定の幅にして吸引ノズルNを形成する場合、実際に販売する吸引ノズルNであれば、吸引口5の幅Hが6mmに満たない吸引ノズルNの幅はゴミが引っ掛かる頻度が大きそうで、これは不都合である。販売できそうな吸引ノズルNの吸引口5の幅Hは約7mmから約10mmであると考えられるから、実験用吸引ノズルNの吸引口5の幅HをH=8mmとして実験して求めた、(1)式と、(1)式におけるKに関する1.2≦K≦2.5という条件は、求める吸引ノズルNを形成するときに、現実的にも有効な式とKの条件であると考える。
【0043】
また、吸引ノズルNを形成するときm点の位置によってKの値を変えることは、これをしない。吸引ノズルNを形成するとき、吸引口5の幅Hは吸引口5の先端aから吸引口5終端bまで変化させない。この結果、吸引ノズルNはm点の面積すなわち、m点の負圧供給通路の断面積Smが吸引口5の先端から吸引口5の終端に向かって、ゆらぐことなく次第に大きくなっていく形状となる。この吸引ノズルNの形状は吸引ノズルN内を奥の電気掃除機へと流れる空気流に不都合な渦や回流が生ずることなく、ゴミがよどみなく電気掃除機のほうに運搬される形状で、また、不都合な騒音となる共鳴現象が起きない形状である。
【0044】
尚、上記実施の形態において、吸引ノズルNの材質は適宜に定めてよい。
【符号の説明】
【0045】
N 電気掃除機用吸引ノズル
1 本体
2 壁部
3 流路
4 接続口部
5 吸引口
6 先端部
P 軸線
7 先端開口
8 一般開口
9 開口縁
a 先端位置
b 終端位置
c 所定位置
d 境界位置
m 任意位置
H 幅
L 吸引口5の先端位置aから終端位置bまでの所定長さ
Lc 吸引口5の先端位置aから所定位置c(d)までの長さ
Lm 吸引口5の先端位置aから任意位置mまでの長さ
Qm 吸引口5の先端位置aから任意位置mまでの開口面積
Sm 任意位置mにおける流路3の横断面積
K 定数
S アタッチメント
20 アタッチメント本体
21 螺線
22 取付機構
F 負圧測定装置
30 容器
31 ホース
32 フック
33 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部に囲繞された流路を有するとともに基端が電気掃除機の吸引ホースに連通して接続される接続口部として構成される本体を備え、該本体の下側に先端から長手方向に沿って所定長さの細長状に形成された吸引口が形成された電気掃除機用吸引ノズルにおいて、
上記吸引口の先端位置aから終端位置b側の任意の任意位置mまでの吸引口の開口面積をQm、該任意位置mにおける流路の横断面積をSmとしたとき、上記本体を、Sm=K×Qmとなり、且つ、1.2≦K≦2.5になるように形成したことを特徴とする電気掃除機用吸引ノズル。
但し、上記吸引口の幅をH、上記吸引口の先端位置aから任意位置mまでの長さをLm、上記吸引口の先端位置aから該吸引口の先端部の所定位置cまでの長さをLcとしたとき、少なくともLc<Lmとする。
【請求項2】
1.3≦K≦2.2にしたことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機用吸引ノズル。
【請求項3】
上記吸引口の先端位置aから終端位置bまでの所定長さをLとしたとき、6mm≦H≦12mm、Lc=H±4mm、50mm≦L≦200mmに設定したことを特徴とする請求項1または2記載の電気掃除機用吸引ノズル。
【請求項4】
7.5mm≦H≦9mm、Lc=H±2mm、70mm≦L≦150mmに設定したことを特徴とする請求項3記載の電気掃除機用吸引ノズル。
【請求項5】
上記本体を先端先細りの筒状に形成し、上記吸引口を該本体の先端部を軸線に略直行する方向に切除した先端開口と、該先端開口から基端側に延びる一般開口とを備えたことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の電気掃除機用吸引ノズル。
【請求項6】
上記先端開口及び一般開口の境界位置dを上記所定位置cと定めたことを特徴とする請求項5記載の電気掃除機用吸引ノズル。
【請求項7】
上記一般開口の長手方向開口縁を、外側に凸に湾曲形成したことを特徴とする請求項5または6記載の電気掃除機用吸引ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−111268(P2013−111268A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260333(P2011−260333)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(500238893)
【Fターム(参考)】