説明

電気掃除機用吸込具

【課題】吸込具本体において発生し上面側を透過する騒音を低減することができる電気掃除機用吸込具を提供する。
【解決手段】電気掃除機用吸込具において、底面に吸込口が設けられ後部にエルボー継手が接続されたケース部を有する吸込具本体を備え、ケース部は下ケースの上側に第1の上ケースが組み合わされた上でこれらの上側に第2の上ケースが固定されて構成され、下ケースは、その下面に吸込口となる開口が設けられるとともに、この開口と連通し下ケースを上下に貫通する貫通部が設けられ、第1及び第2の上ケースの間には前記貫通部の上方に空間部を形成した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気掃除機用吸込具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における電気掃除機用吸込具においては、吸込口を有する吸込具本体に接続されたエルボー継手部において発生する騒音を軽減することを目的とするものとして、エルボー継手部の吸込経路の下部内壁に、自在継手部内の流路断面積を小さくするための凸部を形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、吸込具本体の吸込口から吸い込まれた塵埃を含む空気が、吸込具本体からホースへと通じるエルボー継手内の塵埃通路を高速で通過する際において発生する騒音を軽減することを目的とするものとして、エルボー継手の内壁に棚リブを吸込口側へと延接し、エルボー継手の傾動時に吸込部本体と摺接する摺接壁をエルボー継手に設けて、棚リブと摺動壁とで空間部を形成し、空間部と塵埃通路とを連通する複数の孔を棚リブに設けたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3528689号公報
【特許文献2】特許第3624653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1や特許文献2に示された従来における電気掃除機用吸込具は、吸込具本体に接続されたエルボー継手内の空気流を整流する凸部や棚リブを設けることで、エルボー継手で発生する騒音を軽減しようとするものである。
【0006】
しかしながら、これらの従来における電気掃除機用吸込具においては、吸込具本体の吸込口から吸い込まれた空気が吸込具本体の上面部(上ケース)内側に衝突して発生する騒音については考慮されていないという課題がある。また、吸込具本体内に内蔵された回転ブラシを回転させる際の駆動音が吸込具本体の上面側(上ケース)を透過して電気掃除機の使用者へと伝わり、うるさく感じられてしまうという課題もある。
【0007】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、吸込口から吸い込まれた空気が吸込具本体の上面部(上ケース)内側に衝突して発生する騒音や吸込具本体の上面側(上ケース)を透過する回転ブラシの駆動音を低減することができる電気掃除機用吸込具を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る電気掃除機用吸込具は、底面に吸込口が設けられ、後部にエルボー継手が接続されたケース部を有する吸込具本体を具備する電気掃除機用吸込具であって、前記ケース部は、下ケースの上側に第1の上ケースが組み合わされ、これらの第1の上ケース及び下ケースの上側に、さらに、第2の上ケースが固定されて構成され、前記下ケースは、その下面に前記吸込口となる開口が設けられるとともに、前記開口と連通し前記下ケースを上下に貫通する貫通部が設けられ、前記第1の上ケースと前記第2の上ケースとの間には、前記下ケースの前記貫通部の上方に空間部を形成した構成とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る電気掃除機用吸込具においては、吸込具本体において発生する騒音及び吸込具本体の上面側を透過する騒音を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る電気掃除機の全体構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る吸込具本体の斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る吸込具本体の平面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る吸込具本体の底面図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る吸込具本体の側面図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る吸込具本体の側方断面図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る吸込具本体を構成する第1の上ケースの平面図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る吸込具本体を構成する第2の上ケースの平面図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係る第1の上ケースと第2の上ケースとを組み合わせた状態を示す平面図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係る吸込具本体を構成する下ケースの平面図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係る吸音材の斜視図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係る吸込具本体の側方断面図である。
【図13】この発明の実施の形態2に係る図3中の断面イ−イで切断した断面図に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1から図10は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1は電気掃除機の全体構成を示す図、図2は吸込具本体の斜視図、図3は吸込具本体の平面図、図4は吸込具本体の底面図、図5は吸込具本体の側面図、図6は吸込具本体の側方断面図、図7は吸込具本体を構成する第1の上ケースの平面図、図8は吸込具本体を構成する第2の上ケースの平面図、図9は第1の上ケースと第2の上ケースとを組み合わせた状態を示す平面図、図10は吸込具本体を構成する下ケースの平面図である。
【0013】
図1において、1は、吸込具本体である。この吸込具本体1の底面には、床面等の被清掃面上のごみや塵埃を含んだ空気(含塵空気)を吸い込むための吸込口1aが設けられている。吸込具本体1には、中空円筒状の吸引パイプ2の一端が接続されている。そして、この吸引パイプ2の他端には、可撓性を有する蛇腹状のホース3の一端が、中途で折曲された形状の接続パイプを介して接続されている。
【0014】
このホース3の他端は、掃除機本体4に接続されている。掃除機本体4内には、掃除機本体4の外部から内部に流入した含塵空気中のごみ(塵埃)を捕捉して集める集塵部4aが設けられている。そして、吸込具本体1の吸込口1aから掃除機本体4の集塵部4aまでが、吸引パイプ2及びホース3を経由して連通され、吸込具本体1、吸引パイプ2及びホース3は、含塵空気を掃除機本体4の外部から内部に流入させるための吸引経路を構成している。
【0015】
また、掃除機本体4には、電動送風機4bが内蔵されている。この電動送風機4bは、吸込具本体1の吸込口1aから吸引パイプ2及びホース3を経由して掃除機本体4の集塵部4aへと含塵空気を吸引する吸引動作を駆動するためのものである。なお、吸引パイプ2の他端側には、掃除機本体4の運転を制御する操作スイッチが配置された把持部5が設けられている。電気掃除機の使用者は、使用時においてこの把持部5を持つことにより掃除機本体4を引き回す。
【0016】
図2から図5に吸込具本体1の外観を示す。吸込具本体1は、第1の上ケース6及び第2の上ケース7並びに下ケース8が組み合わされて構成されたケース部と、このケース部の後部に接続されたエルボー継手9と、を有している。吸込具本体1は、エルボー継手9を介して吸引パイプ2に着脱自在に接続される。このエルボー継手9は、ケース部に対して上下方向に所定の角度で傾動が可能に取り付けられるとともに、さらに、前記傾動の軸に対して直交する軸を中心にして回動自在な構造を有している。
【0017】
ケース部は、下ケース8の上側に第1の上ケース6が組み合わされ、これらの第1の上ケース6及び下ケース8の上側に、さらに、第2の上ケース7が固定されて構成されている。また、ケース部内には、被清掃面上の塵埃を掻き取るための回転ブラシ10が、吸込口1aを臨むようにして設けられている。回転ブラシ10は、ケース部内に収容されたモータにより、その回転が駆動される。なお、回転ブラシ10を回転駆動する動力装置として、吸引力により生じる気流を活用するタービンを用いるものもあるが、本実施の形態においては、動力装置としてモータを用いたもので説明する。
【0018】
下ケース8は、図4、図6及び図10に示すように、その下面に吸込口1aとなる開口が設けられており、吸込口1aの上方に、回転ブラシ10の断面形状に沿った略アーチ状断面を有するブラシ収容部8bが設けられている。そして、下ケース8のほぼ中央には、吸込口1aと連通し下ケース8を上下に貫通する貫通部8aが穿設されている。
【0019】
第1の上ケース6は、図6及び図7に示すように、その上面のほぼ中央に、窪んだ領域が形成されている。そして、この窪んだ領域内においては、第1の上ケース6の上面側と下面側とを貫通する複数の貫通孔6aが穿設されている。
【0020】
図8に示す第2の上ケース7は、第1の上ケース6の上面全範囲を覆うのではなく、第1の上ケース6と組み合わされたときに図9に示すように第1の上ケース6の一部を覆うようにして設けられる。すなわち、第2の上ケース7は、第1の上ケース6の上面に設けられた窪んだ領域を少なくとも覆うようにして、第1の上ケース6の上面側に配置される。
【0021】
そして、組み立ての際には、まず、第1の上ケース6の上面の所定位置に第2の上ケース7を固着して図9の状態とした上で、第1の上ケース6及び第2の上ケース7の組立体と下ケース8とを組み合わせて、吸込具本体1のケース部を完成する。なお、第1の上ケース6及び第2の上ケース7の組立体と下ケース8とを組み合わせる際には、エルボー継手9及び回転ブラシ10も併せて吸込具本体1に取り付けられる。この際、回転ブラシ10は、下ケース8のブラシ収容部8b部分に収容された状態に配置される。
【0022】
このようにして組み立てられた吸込具本体1の構成を、図6の断面図を参照しながら説明する。まず、以上のようにして組み立てられた吸込具本体1においては、吸込口1aから下ケース8の貫通部8aを経由して、エルボー継手9のケース部側の端部に設けられた継手開口部9aまでが連通された状態である。
【0023】
そして、第1の上ケース6と第2の上ケース7との間には、空間部11が形成されている。この空間部11は、第1の上ケース6の上面と第2の上ケース7の端部とが接するとともに、第1の上ケース6の窪んだ領域の周縁と第2の上ケース7の下面とが接することにより、第1の上ケース6と第2の上ケース7との間に挟まれた部分に形成される。この空間部11は、下ケース8の貫通部8aの上方に配置されている。より詳しくは、吸込具本体1の底面に平行な射影面において空間部11を射影した形状が、下ケース8の貫通部8aを前記射影面に射影した形状を含むように、空間部11が配置されることが望ましい。
【0024】
このように構成された吸込具本体1においては、掃除機本体4の電動送風機4bが動作すると、電動送風機4bにより生み出された負圧が、ホース3から吸引パイプ2へと伝播して、吸込具本体1の吸込口1aにおいて被清掃面近傍の含塵空気を吸引する力が生まれる。そして、こうして吸込具本体1の吸込口1aから吸引された含塵空気は、下ケース8の貫通部8aを通過して継手開口部9aからエルボー継手9を経由して吸引パイプ2へと至って最終的に掃除機本体4へと吸引される。
【0025】
この際に、吸込口1aから吸引され継手開口部9aに至る空気流は、下ケース8の貫通部8aを通過した後、吸込具本体1の後方にある継手開口部9aに達するため、吸込口1aから貫通部8aを通過した後、空気流の方向が吸込具本体1のケース部内にて、上向きから後向きへと変えられることになる。そして、この空気流の方向の変換において、貫通部8aを通過した後、第1の上ケース6の下面に衝突する成分が少なからず存在する。
【0026】
この空気流の第1の上ケース6への衝突が、掃除機本体4の動作時に吸込具本体1における騒音の発生の一因となっているが、この貫通部8aを通過した空気流が衝突する箇所に形成された空間部11の作用により、ケース部の上面(第1の上ケース6及び第2の上ケース7)を透過する騒音を低減することができる。
【0027】
また、さらに、第1の上ケース6に設けられた貫通孔6aによって、貫通部8aから継手開口部9aに至る空気流の経路と空間部11とは接続されているため、空気流の衝突等により発生する空気圧の変動を緩和することができ、第1の上ケース6への空気流の衝突等による騒音の発生自体を抑制することが可能である。また、ここで、貫通孔6aの反空間部11側の縁端部の角を取って滑らかなR形状とすることにより、貫通部8aから継手開口部9aに至る空気流に含まれる塵埃等が貫通孔6aに引っかかることを防止することができる。
【0028】
ところで、吸込具本体1において発生する騒音としては、他に回転ブラシ10の回転に伴うものもある。この際、吸込具本体1のケース部内にある回転ブラシ10の回転により発生した騒音のうち、電気掃除機の使用者の耳にまで届くものは吸込具本体1のケース部の上面を透過してきたものが多いが、吸込具本体1のケース部の上面に第1の上ケース6及び第2の上ケース7により形成された空間部11の作用により、ケース部の上面(第1の上ケース6及び第2の上ケース7)を透過する回転ブラシ10に起因する騒音も低減することができる。
【0029】
なお、ここでは、第1の上ケース6に空間部11とケース部内の空気流の経路とを繋ぐ貫通孔6aを設けたが、この貫通孔6aは必ずしも設けなくともよい。貫通孔6aを設けない場合には、上述した空気圧の変動を緩和する効果は得られなくなるものの、空間部11が完全に密閉された空気層となるため、ケース部上面を透過しようとする音波を減衰させる効果が増すことが期待できる。
【0030】
実施の形態2.
図11から図13は、この発明の実施の形態2に係るもので、図11は吸音材の斜視図、図12は吸込具本体の側方断面図、図13は図3中の断面イ−イで切断した断面図に相当する図である。
【0031】
ここで説明する実施の形態2は、前述した実施の形態1の構成において、吸込具本体ケース部上面に設けられた空間部に吸音材を配置したものである。
【0032】
すなわち、図12及び図13に示すように、第1の上ケース6及び第2の上ケース7の間に形成された空間部11には、図11に示すような吸音材12が配置されている。この吸音材12には、独立発泡材等の多孔質の素材(例えば、ウレタンやフェルト等)や、防振ゴム等の防振材の素材が用いられている。その他の構成については実施の形態1と同様であって、その詳細説明は省略する。
【0033】
このように構成された吸込具本体1においては、実施の形態1と同様に、空間部11の作用により、ケース部の上面(第1の上ケース6及び第2の上ケース7)を透過する騒音(空気流の衝突に起因するものや回転ブラシ10に起因するものを含む)を低減することができる。そして、この際、空間部11に収容された吸音材12により透過しようとする音波を吸収する、あるいは、減衰させることができ、さらなる騒音低減効果を得ることができる。
【0034】
また、第1の上ケース6の空間部11部分には貫通孔6aが設けられているため、貫通部8aから継手開口部9aに至る空気流の経路における空気圧の変動が、貫通孔6aを通じて空間部11に導入され、この空間部11に配置された吸音材12により空気圧の変動(すなわち音波)を効果的に吸収するこが可能である。従って、この実施の形態2においては、第1の上ケース6に貫通孔6aを設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0035】
1 吸込具本体
1a 吸込口
2 吸引パイプ
3 ホース
4 掃除機本体
4a 集塵部
4b 電動送風機
5 把持部
6 第1の上ケース
6a 貫通孔
6b リブ
7 第2の上ケース
8 下ケース
8a 貫通部
8b ブラシ収容部
9 エルボー継手
9a 継手開口部
10 回転ブラシ
11 空間部
12 吸音材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に吸込口が設けられ、後部にエルボー継手が接続されたケース部を有する吸込具本体を具備する電気掃除機用吸込具であって、
前記ケース部は、下ケースの上側に第1の上ケースが組み合わされ、これらの第1の上ケース及び下ケースの上側に、さらに、第2の上ケースが固定されて構成され、
前記下ケースは、その下面に前記吸込口となる開口が設けられるとともに、前記開口と連通し前記下ケースを上下に貫通する貫通部が設けられ、
前記第1の上ケースと前記第2の上ケースとの間には、前記下ケースの前記貫通部の上方に空間部を形成したことを特徴とする電気掃除機用吸込具。
【請求項2】
前記空間部は、前記吸込具本体の底面に平行な射影面において前記空間部を射影した形状が、少なくとも前記貫通部を前記射影面に射影した形状を含むように配置されることを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機用吸込具。
【請求項3】
前記第1の上ケースの前記空間部が配置された部分に設けられた貫通孔を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電気掃除機用吸込具。
【請求項4】
前記空間部の内部に配置された吸音材を備えたことを特徴とする請求項3に記載の電気掃除機用吸込具。
【請求項5】
前記貫通孔の反前記空間部側の縁端部は滑らかなR形状であることを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の電気掃除機用吸込具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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