説明

電気掃除機用集塵袋

【課題】フィルタ袋体の裏面部位での捕塵性を確保しつつ、フィルタ袋体の早期の目詰まりを抑制して長く使用でき、かつ、ろ過分離された塵をより多量に溜め得る電気掃除機用集塵袋を提供する。
【解決手段】塵通孔24を有した支持板23の裏面に通気性のフィルタ袋体25が固定された電気掃除機用集塵袋21を前提とする。フィルタ袋体25は、支持板23に固定された第1のフィルタ部材26と、この第1のフィルタ部材26の周縁部に接着され第1のフィルタ部材26とともにフィルタ袋体25をなす第2のフィルタ部材31とを備える。第2のフィルタ部材31は、フィルタ袋体25が膨らんだ状態で支持板23の裏面に対向するように配置される裏面部位31aを有する。第1のフィルタ部材26の通気性を第2のフィルタ部材31の通気性より高くしたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃除機本体に吸引された含塵空気をろ過して塵と空気とに分離し分離された塵を溜める電気掃除機用集塵袋に関する。
【背景技術】
【0002】
掃除機本体にセットされて、吸引送風機の起動に伴い膨張して内部に塵が収集される袋状体と、この袋状体の前壁に取付けられて掃除機本体へのセットに用いられるとともに塵吸入口が中央部に設けられた支持板とを備えた電気掃除機用集塵フィルタが、従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この集塵フィルタの袋状体は、通気性及び可撓性を有するろ材、つまり、紙等の保護シートとその内側に重なるように設けられた不織布シートとからなる単一のろ材を用いて作られている。すなわち、前記単一のろ材は、横長筒状でその長手方向両端を折り曲げて閉じるとともに、長手方向両側部にシングル又はダブルのガセット部(折込み部)を設けて形成されている。この袋状体は、横長筒状とするための貼合わせ部と、長手方向両端を閉じるための貼合わせ部を有していて、これら貼合わせ部での貼合わせは接着材を用いた接着により行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−302236号公報(第3頁右上欄第13行〜同頁左下欄第20行、第4頁右上欄第3行〜第10行、図1−図3、図7、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸引送風機の起動に伴い膨張された袋状体の裏面部位は、支持板の裏側に対向するように位置されて、支持板の塵吸入口を通って袋状体に吸込まれた気流(含塵空気流)が最も強く作用する部位であるので、この裏面部位で良好なろ過ができるようにすることが好ましい。
【0006】
そのために、特許文献1の集塵フィルタでは、塵を絡め取り易い不織布で袋状体の内面を形成して、袋状体の裏面部位での捕塵性を高めている。なお、これ以外に、裏面部位で良好なろ過ができるようにするために、袋状体を形成するろ材の使用枚数を増やして裏面部位を厚くすることで、裏面部位の捕塵性を高めることも考えられている。
【0007】
しかし、捕塵性を高めると、その工夫によって集塵袋の通気性が低下する。そのため、既述のように単一のろ材で袋状体が形成されていることにより袋状体の各部の通気性が同じである特許文献1の集塵フィルタの袋状体の通気性は、比較的よくない。
【0008】
したがって、特許文献1の集塵フィルタは、その裏面部位が塵の捕捉に伴い目詰まり状態になると、その後、比較的短期間で袋状体の裏面側部位以外も目詰まりし易く、それにより、長く使用するには好適ではない。更に、袋状体の長手方向及び長手方向の両端が夫々接着されている特許文献1の集塵フィルタでは、接着の信頼性を確保するために、接着材が塗布された面積が比較的大きく、かつ、これら3箇所の通気性がない接着部に応じて袋状体全体のろ過面積が減少されているので、より短期間に目詰まり状態となり易い。そして、袋状体全体が目詰まり状態になると、袋状体を通過する気流の量及び速度が低下する。これに伴い、袋状体を通過する気流により、袋状体内に溜められた塵を圧縮する性能も低下するので、より多くの塵を集塵するには好適ではない。
【0009】
以上のように従来の集塵フィルタは、その袋状体の裏面部位での捕塵性を確保しつつ、早期の目詰まりを抑制して長く使用するとともに、ろ過により分離された塵をより多量に溜めるには適していない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の電気掃除機用集塵袋は、塵通孔を有した支持板と、この支持板の裏面に固定された第1のフィルタ部材及びこのフィルタ部材の周縁部に接着された第2のフィルタ部材を有してなる通気性のフィルタ袋体とを備え、このフィルタ袋体が膨らんだ状態で支持板の裏面に対向するように配置される裏面部位を有した第2のフィルタ部材の通気性より、第1のフィルタ部材の通気性を高くしたことを特徴としている。
【0011】
本発明で、第1、第2のフィルタ部材の周縁部は、接着材を用いて接着されていても、或いは溶着より接着されていてもよい。本発明で、第2のフィルタ部材の捕塵性は、第1のフィルタ部材の捕塵性と同等でも差し支えないが、より高いことが好ましい。
【0012】
本発明では、ろ過により分離された塵を溜めるフィルタ袋体が、支持板に固定された第1のフィルタ部材と、フィルタ袋体に吸込まれた気流(含塵空気流)が最も強く作用する裏面部位を有して第1のフィルタ部材の周縁部に接着された第2のフィルタ部材を備える。そのため、これらフィルタ部材をなすろ材の材質、層数、及び厚み等の選定により、フィルタ袋体の通気性を主として第1のフィルタ部材で担い、フィルタ袋体の捕塵性を主として第2のフィルタ部材で担った集塵袋を提供できる。
【0013】
この集塵袋によれば、第2のフィルタ部材の捕塵性(ろ過により塵を捕捉する性能)に起因して、フィルタ袋体全体の通気性が早期に低下されることを、第1のフィルタ部材の通気性により抑制できるとともに、第1のフィルタ部材での通気性が高められることに起因して、吸込み気流が強く作用する裏面部位を有した第2のフィルタ部材での捕塵性が低下されることがない。したがって、フィルタ袋体の裏面部位での捕塵性を確保しつつ、フィルタ袋体の早期の目詰まりを抑制して長く使用できるともに、ろ過により分離された塵を気流で圧縮する作用を継続させて、より多量の塵をフィルタ袋体内に溜めることができる。
【0014】
本発明においては、前記両フィルタ部材が熱可塑性の化学繊維からなるろ材で作られているとともに、これらフィルタ部材の周縁部が溶着により接着されていることが好ましい。この好ましい形態で溶着とは、高温のシール型をフィルタ袋体の接着予定部に押し付けて、該接着予定部を融着させることを指しており、例えばエンボス加工を伴ってもよい。更に、この好ましい形態で、両フィルタ部材の周縁部とは、溶着により形成された接着部と同じであること、又は、溶着により形成された接着部及びこの接着部から外側に食み出した末端部分からなることを指しており、前者の周縁部である場合は、集塵袋の保管や取扱いに伴ってほつれる可能性がある末端部分がない点で好ましい。
【0015】
本発明においては、前記第1のフィルタ部材をなすろ材の層数が、前記第2のフィルタ部材をなすろ材の層数より少ないことが好ましい。この好ましい形態で、ろ材の層数とは少なくとも一層であることを指しており、層数が二層以上である場合、各層を担うろ材の同種のろ材でも異種のろ材であっても差し支えない。
【0016】
本発明においては、前記第2のフィルタ部材がニ層以上のろ材で形成されているとともに、これらのろ材の内で前記フィルタ袋体の内部空間に臨んだろ材が、前記第1のフィルタ部材をなしたろ材の内で前記フィルタ袋体の内部空間に臨んだろ材とは異なる材質で形成されていて、このろ材の捕塵性が前記第1のフィルタ部材をなしたろ材の捕塵性より高いことが好ましい。
【0017】
本発明においては、前記第2のフィルタ部材がニ層以上のろ材で形成されているとともに、これらのろ材の内で前記フィルタ袋体の内部空間に臨んだろ材が、これより外側のろ材より厚くかつ捕塵性が高いことが好ましい。この好ましい形態で、第2のフィルタ部材を担うニ層以上のろ材は、同種のろ材でも異種のろ材であっても差し支えないとともに、これらのろ材の肉厚は同じでも異なっていてもよい。
【0018】
本発明においては、前記第1のフィルタ部材が前記支持板より大形な四角形状であり、前記第2のフィルタ部材が、前記第1のフィルタ部材と略同じ大きさの四角形状をなした前記裏面部位、及びこの裏面部位から夫々互いに近付くように折り込まれた少なくとも一対のガセット部を有し、前記第1のフィルタ部材の内面に前記ガセット部を対向させて前記第1、第2のフィルタ部材の周縁部が接着されていることが好ましい。この好ましい形態では、フィルタ袋体の厚み方向でのガセット部の折込み数を一としてシングルガセット型の集塵袋とすることもでき、同様に、ガセット部の折込み数を二又は三としてダブルがセット型又はトリプルガセット型の集塵袋とすることもできる。
【0019】
本発明においては、消臭材又は抗菌材の内の少なくとも一方が前記フィルタ袋体の少なくとも一部に含浸されていることが好ましい。この好ましい形態で、消臭材又は抗菌材の内の少なくとも一方とは、消臭材単独、抗菌材単独、或いはこれら消臭材と抗菌材の双方、若しくは消臭作用及び抗菌作用がある薬剤(消臭・抗菌剤)のいずれかを指している。更に、この好ましい形態で、フィルタ袋体の少なくとも一部とは、第1のフィルタ部材、又は第2のフィルタ部材、若しくは両フィルタ部材のいずれかを指しているとともに、該当するフィルタ部材がニ層以上である場合、その内の少なくとも一層に消臭材又は抗菌材の内の少なくとも一方を含浸させればよいが、フィルタ袋体内に溜められた塵に消臭作用又は抗菌作用をより有効に作用させる上では、消臭材又は抗菌材の内の少なくとも一方を、フィルタ袋体の内部空間に臨んだろ材に含浸させるとよい。又、含浸させる代わりに塗布してもよい。
【0020】
本発明においては、消臭材又は抗菌材の内の少なくとも一方が前記第1のフィルタ部材に含浸又は塗布されていることが好ましい。この好ましい形態で、第1のフィルタ部材がニ層以上である場合、その内の少なくとも一層に消臭材又は抗菌材の内の少なくとも一方を含浸又は塗布させればよいが、フィルタ袋体内に溜められた塵に消臭性能又は抗菌性能をより有効に作用させる上では、消臭材又は抗菌材の内の少なくとも一方を、フィルタ袋体の内部空間に臨んだ第1のフィルタ部材のろ材に含浸又は塗布させるとよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電気掃除機用集塵袋によれば、フィルタ袋体の裏面部位での捕塵性を確保しつつ、フィルタ袋体の早期の目詰まりを抑制して長く使用できるとともに、ろ過により分離された塵をより多量に溜めることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る集塵袋を備えた電気掃除機を一部切欠いて示す略平面図である。
【図2】図1の電気掃除機を一部切欠いて示す略側面図である。
【図3】(A)は本発明の一実施の形態に係る集塵袋の正面図である。(B)は同集塵袋の裏面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る集塵袋の側面図である。
【図5】図3(B)中矢印F5−F5線に沿って示す集塵袋の断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る集塵袋を示す図5相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態について、図1〜図5を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1及び図2中符号1は例えばキャニスタ型の電気掃除機を示している。この電気掃除機1が備える掃除機本体2は、その前部に取付けられたキャスター3、及び後部に取付けられた一対の車輪4により掃除対象の部屋の床面上に沿って移動可能である。
【0025】
掃除機本体2には後述する集塵袋の裏面部位を支持する袋支持部材を兼ねる仕切り5が設けられ、この仕切り5を境に掃除機本体2内は、仕切り5の後側(下流側)の電動送風機室2aと前側(上流側)の集塵室2bとに分けられている。集塵室2bは例えば掃除機本体2の前部上面に開放されている。
【0026】
仕切り5は例えば合成樹脂で形成されている。従って、本実施形態では仕切り5の前面全体が集塵室2bに臨んでいる。この仕切り5の集塵室2bに臨んだ領域は通気性を有している。この通気性を得るために、仕切り5に複数の通気部例えば上下方向に延びる複数のスリット5aが形成されている。複数の通気部は円形又は長円形等の孔形状を有した小孔であってもよいとともに、これら小孔によって仕切り5の集塵室2bに臨んだ領域を格子状に構成することも可能である。なお、後述の裏面部位31aが仕切り5の前面(上流側面)に沿うように平らに変形しへばり付いてスリット5aが塞がれることを抑制するために、この前面にリブを複数設けるとよい。
【0027】
掃除機本体2は後述の電動送風機8に吸い込まれる気流を基準として仕切り5の上流側に位置する吸込み口6を有しており、本実施形態では掃除機本体2の前端部に吸込み口6が設けられている。吸込み口6はこれと仕切り5との間の集塵室2bに連通している。掃除機本体2は集塵室2bに臨んだ吸込み口6の出口端に連続する袋支持壁2cを有している。
【0028】
袋支持壁2cは、例えば仕切り5と平行に設けられていて、集塵室2bの前端を仕切っている。この袋支持壁2cに支持溝2dが形成されている。支持溝2dは、掃除機本体2を前側から見て吸込み口6の左右両側に設けられて上端が開放された左右の縦溝部(図1参照)と、これら縦溝部の下端間を連続して吸込み口6の下側に設けられた下溝部(図2参照)とを有している。
【0029】
集塵室2bにはその底壁から上向きに一体に突出された底リブ7が複数(図2に一つのみ図示する。)設けられている。これら底リブ7は、袋支持壁2cと仕切り5とにわたるように前後方向に延びており、相互間に風路を確保している。
【0030】
吸込み口6には図示しない吸込み風路体が接続される。吸込み風路体は、吸込み口6に一端部を挿入して接続される吸塵ホースと、このホースの他端部に接続された延長管と、この延長管の先端部に接続された吸込み口体を備えている。吸塵ホースの他端部には後述の電動送風機8に対する各種の指令を与えるための操作パネルを有した操作ハンドルが設けられている。したがって、電気掃除機1の運転時に駆動される電動送風機8の吸引力により、吸込み口体の下面に開口された吸込み開口から塵を伴って吸い込まれた空気(含塵空気)が、吸込み風路体内を通って吸込み口6に導入されて、集塵室2bに吸込まれる。
【0031】
電動送風機室2aには電動送風機8が収納されている。したがって、この電動送風機8と集塵室2bとの間に仕切り5が設けられている。電動送風機室2aには、電動送風機8に電源を供給するコードリール装置(図示しない)が収容されている。コードリール装置が有した電源プラグ9(図1参照)は掃除機本体2外に引き出されて図示しない商用交流電源に接続される。更に、電動送風機室2aにはインデユーサ10が設けられている。インデユーサ10は、仕切り5と電動送風機8とにわたって配置されていて、集塵室2bから仕切り5を通った空気を電動送風機8の吸気口(図示しない)に導く。なお、掃除機本体2の後端部には図示しない排気部が設けられていて、この排気部を電動送風機8から排出された空気が通って掃除機本体2外へ排気される。
【0032】
掃除機本体2はその前部に本体蓋11を有している。本体蓋11はその後端部が回動支点となるように掃除機本体2の上面部に取付けられていて、この本体蓋11を手動で回動させることにより集塵室2bの上面開口が開閉される。本体蓋11にはその内面から下向きに一体に突出された蓋リブ12が複数(図2に一つのみ図示する。)設けられている。これら蓋リブ12は、袋支持壁2cと仕切り5とにわたるように前後方向に延びており、相互間に風路を確保している。
【0033】
集塵室2bに集塵袋21が収納されている。この集塵袋21は本体蓋11が開かれた状態で出し入れ可能である。図3〜図5を参照して集塵袋21について詳しく説明する。集塵袋21は、シール材22が固定された支持板23と、通気性を有したフィルタ袋体25とを備えている。
【0034】
支持板23は、ボール紙のような厚紙からなり、図3(A)に示すように略四角形状をなしていて、支持溝2dに対して上下方向に挿脱可能な大きさに形成されている。この支持板23の中央部に塵通孔24を有している。塵通孔24は例えば円形である。支持板23の裏面に接着材(図示しない)を用いてシール材22が接着止めされている。このシール材22は、柔軟でかつ弾性を有するゴムシート等の薄い膜からなり、中央部に通孔22aを有している。通孔22aの直径は塵通孔24より小さい。シール材22の通孔22a及びこの通孔22a周りの部位は塵通孔24内に対向している。
【0035】
図5に示すようにフィルタ袋体25は、第1のフィルタ部材26と第2のフィルタ部材31とを備えている。
【0036】
第1のフィルタ部材26は、集塵袋21が掃除機本体2内にセットされた状態で、フィルタ袋体25を通過して電動送風機8に吸込まれる気流を基準として、第2のフィルタ部材31よりも上流側、具体的には第2のフィルタ部材31の前側に主として配置される。この第1のフィルタ部材26は、通気性を有したろ材例えば不織布を二層に複合して形成されており、その通気性は第2のフィルタ部材31の通気性より高い。
【0037】
第1のフィルタ部材26の内層をなす内側ろ材27は、フィルタ袋体25の内部空間に臨んでいる。この内側ろ材27は、メルトブローン法により製造された熱可塑性の化学繊維製の不織布である。第1のフィルタ部材26の外層をなす外側ろ材28は、スパンボンド法により製造された熱可塑性の化学繊維製の不織布である。
【0038】
即ち、内側ろ材27は、溶融した樹脂例えばポリプロピレンをノズルから高温で押し出し、糸状にする同時に延伸し、この糸からなる繊維をコンベアネットの上に降らせて繊維同士を絡ませた後、熱によるドットエンボス加工で圧着してシート化することで得た不織布である。外側ろ材28は、溶融した樹脂例えばポリプロピレンをノズルから高温で押し出した溶融ポリマーを、高温のエアーで吹き飛ばして繊維を細くすることで得た不織布である。
【0039】
このスパンボンド法で製造された不織布の方が、メルトブローン法で製造された不織布よりも繊維径が細くなり易いので、塵の捕集性能(捕塵性)が高い。こうした外側ろ材28の製造においては、圧着によるシート化を伴うことなく、高温のエアーで吹き飛ばされた繊維を、既にシート状に製造された内側ろ材27に直接吹き付けて、この外側ろ材28と内側ろ材27とが複合化されている。これにより、内側ろ材27と外側ろ材28間の層間剥離をある程度可能としつつ、内外両ろ材27,28の繊維を潰すことなく、これらのろ材27,28を複合できるので、低圧損で高効率の第1のフィルタ部材26とすることができる。
【0040】
以上のようにニ層に複合された第1のフィルタ部材26の展開状態での形状は、支持板23より大形な四角形状、例えば図3(A)に示すような長方形状である。この第1のフィルタ部材26の中央部は支持板23の裏面に接着材を用いて固定されている。この場合、支持板23を周部は接着領域から外れている。
【0041】
第2のフィルタ部材31は、集塵袋21が掃除機本体2内にセットされた状態で、フィルタ袋体25を通過して電動送風機8に吸込まれる気流を基準として、第1のフィルタ部材26よりも下流側、具体的には第1のフィルタ部材26の後側に主として配置される。この第2のフィルタ部材31は、通気性を有した複数のろ材により、第1のフィルタ部材26より多層でかつ厚く形成されている。具体的には、例えば三層の不織布を用いて第2のフィルタ部材31が形成されている。この第2のフィルタ部材31の通気性は第1のフィルタ部材26の通気性より低い。
【0042】
第2のフィルタ部材31の内層をなす内側ろ材32は、フィルタ袋体25の内部空間に臨んでいる。この内側ろ材32は、第1のフィルタ部材をなしたろ材27,28とは異なる材質、例えば熱可塑性の化学繊維具体的にはポリエステル製の不織布で形成されていて、ニードルパンチ加工が施されている。ニードルパンチ加工は、内側ろ材32をなすポリエステル製の不織布に数千本の細い針を刺す加工である。それによって、ポリエステル製の不織布の繊維がふわふわとなるように起毛されていて、後述する外側ろ材33及び中間ろ材34よりも厚く形成されている。ニードルパンチ加工が施されたろ材は、同加工が施されないろ材よりも通気性が低い。
【0043】
第2のフィルタ部材31の外層をなす外側ろ材33は、スパンボンド法により製造された熱可塑性の化学繊維例えばポリプロピレン製の不織布である。第2のフィルタ部材31の中間層をなす中間ろ材34は、メルトブローン法により製造された熱可塑性の化学繊維例えばポリプロピレン製の不織布である。
【0044】
内側ろ材32、中間ろ材34、及び外側ろ材32の通気性は、これらろ材の記載順に低くなっている。更に、既述のように内側ろ材32は、中間ろ材34及び外側ろ材32よりも肉厚であり、しかも、中間ろ材34及び外側ろ材32よりも捕塵性が高い。
【0045】
図5に示すように第2のフィルタ部材31は、裏面部位31aと左右一対のガセット部31bを有している。したがって、本実施形態の集塵袋21はシングルガセット型である。図3(A)(B)の対比から明らかなように裏面部位31aは、第1のフィルタ部材26と略同じ大きさの四角形状をなしている。左右のガセット部31bは、裏面部位31aの両側縁から互いに近付くように折り込まれている。これらの折込み形状は図5に示すように断面略V形状である。
【0046】
第1のフィルタ部材26と第2のフィルタ部材31とは、互いの内側ろ材27,32を重ね合わせて組み合わされ、それらの周縁部が接着されて、フィルタ袋体25を形成している。この場合の接着は、フィルタ袋体25が熱可塑性のろ材からなるので、前記周縁部を例えば高周波熱溶着により接着することでなされており、この溶接による接着跡からなる接着部を図1〜図5中符号35で示す。この接着部35の幅は数mmと狭い。これとともに接着部35はフィルタ袋体25の周縁部をなしている。これにより、フィルタ袋体25の周縁部に、集塵袋21の保管や取扱いに伴ってほつれる可能性がある末端部分、つまり、接着部35の外側に食み出すろ材の末端部分がない点で好ましい。
【0047】
フィルタ袋体25をなす各ろ材27,28,32〜34の夫々には、図示しない消臭材又は抗菌材が含浸されている。この場合、第1のフィルタ部材26がニ層のろ材27,28からなるので、フィルタ袋体25内に溜められる塵に接する内側ろ材27に抗菌材を含浸させ、外側ろ材28に消臭材を含浸させることが好ましい。同様に、第2のフィルタ部材31が三層のろ材32〜34からなるので、その内側ろ材32に抗菌材を含浸させ、外側ろ材33及び中間ろ材34に消臭材を含浸させることが好ましい。
【0048】
なお、消臭材又は抗菌材は、第1のフィルタ部材26又は第2のフィルタ部材31のいずれか一方に含浸させることもできる。この場合、特に、消臭材は通気性が高い方の第1のフィルタ部材26の少なくとも一層のろ材に含浸させるとよい。それにより、集塵袋21内に溜められた塵に邪魔されることなく、集塵袋21から流出される空気に対する消臭作用を付与できる点で好ましい。
【0049】
前記構成の集塵袋21が折り畳まれる前の状態は図3(A)(B)、図4に示されている。この状態においてフィルタ袋体25の支持板23から上下に食み出している部分は、図4中矢印に示すように折り畳んで支持板23の裏側に配置され、こうした折畳み状態で集塵袋21は掃除機本体2の集塵室2bにセットされる。この場合、支持板23を、袋支持壁2cの支持溝2dに上方から差し込んで支持することにより、集塵袋21がセットされる。このセット状態で支持板23の塵通孔24は図1及び図2に示すように掃除機本体2の吸込み口6に正対して配置される。
【0050】
本体蓋11で集塵室2bを密閉した後に、電動送風機8を駆動して電気掃除機1を使用状態にすると、集塵袋21のフィルタ袋体25は、直ちに、フィルタ袋体25をその内部から外部に通過する空気の流れによって膨張する。
【0051】
この場合、電動送風機8の起動直後に、支持板23の塵通孔24の真後ろに対向するように位置されているフィルタ袋体25の裏面部位31aに、強い風圧が作用する。ところで、この裏面部位31aとその左右両側に一体に連続している側面部位とからなる第2のフィルタ部材31の通気性は、裏面部位31aより前側の第1のフィルタ部材26の通気性より低い。そのため、第2のフィルタ部材31を空気が流通するもその際に抵抗は比較的大きく、フィルタ袋体25を後方に向けて膨張させ易い。しかも、この際に、第2のフィルタ部材31がその左右両側に有したガセット部31bが開かれて、フィルタ袋体25の後方へ向けての膨張が許容される。したがって、フィルタ袋体25は、後方に向けて素早く、かつ、確実に膨張される。
【0052】
こうしたフィルタ袋体25の膨張は、その裏面部位31aが仕切り5に当たって支持される一方で、フィルタ袋体25の下部が底リブ7に当たって支持されるとともに、フィルタ袋体25の上部が蓋リブ12に当たって支持されることにより、制限される。それにより、フィルタ袋体25が所定形状に膨張される。こうして集塵袋21が膨張された状態を図1及び図2に示すとともに、図4及び図5中二点鎖線で示す。
【0053】
以上のようにフィルタ袋体25が膨張するに伴って、第1のフィルタ部材26の上部及び下部は図4中ニ点鎖線で示すように斜め後方へ引っ張られる。これに伴って、接着部35は、略半円弧状をなして曲げられるが、潰されることがないので、接着部35に大きな負荷が与えられることがない。これに対して、一対のガセット部31bが第1のフィルタ部材26に設けられている場合、図5中F部に接着部が形成されるが、このF部はフィルタ袋体25の既述の膨張に伴い座屈するようにグチャグチャに変形される。そのため、F部に設けられた接着部35に過大な負荷が与えられることは否めないとともに、前記F部は風圧が強く作用する部位でもある。したがって、F部に接着不良があると、そこからフィルタ袋体25がほころんでしまう恐れが考えられる。しかし、こうした恐れは前記集塵袋21においては解消できる。
【0054】
集塵袋21がセットされた状態で、電動送風機8の駆動に伴い空気とともに集塵袋21に吸込まれた塵は、フィルタ袋体25でろ過されて空気と分離されてフィルタ袋体25内に溜められる。これとともに、この塵から分離されてフィルタ袋体25を通過した空気は、フィルタ袋体25の周りを流動し支持板5のスリット5aを通って電動送風機8に吸込まれ、更に、電動送風機8外に流出した後に、掃除機本体2の排気部を通って外部に放出される。
【0055】
以上のような集塵袋21による塵の捕集において、第2のフィルタ部材31は、その厚み方向に三層のろ材32〜34で形成されていて、これら三層のろ材32〜34で塵をその大きさに適合したろ材でろ過できるので、単位面積あたりの通気性がよく、目詰まりし難い。なお、ここに通気性が良いとはいえ、その通気性は第1のフィルタ部材26の通気性より低いレベルである。更に、第2のフィルタ部材31の内側ろ材32は、ニードルパンチ加工を施されているので、比較的大きな塵を捕捉するのに適している。これに対して第2のフィルタ部材31の中間ろ材34及び外側ろ材33は、その通気性が内側ろ材32より低いので、内側ろ材32を通過した細かい塵を捕捉するのに適している。
【0056】
集塵袋21の使用期間が長くなるにしたがって、第2のフィルタ部材31の目詰まりが進行するので、それに伴い第2のフィルタ部材31を通過する風量が減る。そして、ある程度目詰まりが進行すると、フィルタ袋体25に吸込まれた気流が、主として裏面部位31aで前側に向けて反射されるようになる。
【0057】
しかし、集塵袋21は、裏面部位31aを有した第2のフィルタ部材31とは別にこれより前側に第1のフィルタ部材26を備えている。そのため、第2のフィルタ部材31の目詰まりが進行し、裏面部位31aで前側に向けて反射される気流が多くなった状態では、フィルタ袋体25内の空気は主として第1のフィルタ部材26を通過するようになる。この第1のフィルタ部材26の通気性は既述のように第2のフィルタ部材31よりも通気性が良いので、この第1のフィルタ部材26の目詰まりの進行は、第2のフィルタ部材31の目詰まりの進行よりも遅い。これにより、フィルタ袋体25全体が比較的早期に目詰まりすることが抑制されるので、集塵袋21を長く使用することができる。
【0058】
更に、フィルタ袋体25は、その第1のフィルタ部材26と第2のフィルタ部材31の周縁部を、熱融着による接着、つまり、溶着することで形成されているので、接着材を用いて形成された接着部と比較して、接着部35に数mm程度の狭い幅しか要さないで、確実な接着ができる。そのため、フィルタ袋体25のろ過面積を多く確保できるに伴い、フィルタ袋体25の目詰まりの進行を遅くできる。この点でも、フィルタ袋体25が短期間に目詰まり状態になり難いので、集塵袋21を長く使用できる。
【0059】
加えて、第2のフィルタ部材31は第1のフィルタ部材26より厚いだけではなく、その内側ろ材32は他のろ材より厚くかつ略起毛状態を呈しているので、この内側ろ材32は既述のように粗い塵を捕捉するだけではなく、細かな塵も内側ろ材32の厚み内に捕捉できる。そのため、第2のフィルタ部材31の裏面部位31aに吹き当たった細塵が前側に反射されて第1のフィルタ部材26で捕捉される量が少なくなり、それに伴い、第1のフィルタ部材26の目詰まりの進行を遅らせることができるので、この点でも集塵袋21を長く使用できる。
【0060】
しかも、以上のように第1のフィルタ部材26よりも通気性が低い第2のフィルタ部材31の目詰まりの進行に拘らず、フィルタ袋体25全体での通気性を、第1のフィルタ部材26により良好に維持できるに伴い、フィルタ袋体25を通過して電動送風機8に吸込まれる気流の量及び速度が大きく低下することを抑制できる。そのため、フィルタ袋体25内に集塵された塵を吸込み気流で圧縮する機能も長期間にわたり持続でき、それに伴って、より多くの塵をフィルタ袋体25内に溜めることができる。
【0061】
以上のように前記構成の集塵袋21によれば、そのフィルタ袋体25の裏面部位31aでの捕塵性を確保しつつ、フィルタ袋体25の早期の目詰まりを抑制して長く使用できるとともに、ろ過により分離された塵をより多量に溜めることができる。
【0062】
図6は本発明の他の実施形態を示している。この他の実施形態の集塵袋は以下説明する事項以外は、一実施形態で説明した集塵袋と同じであるので、一実施形態と同じ構成については一実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0063】
他の実施形態の集塵袋21の第1のフィルタ部材26は、一実施形態と同じくメルトブローン法で作られた内側ろ材27と、スパンボンド法で作られた外側ろ材28との複合品からなる。これに対して第2のフィルタ部材31は、ニードルパンチ加工を施されたポリエステル製の不織布で作られて他のろ材より厚くかつ略起毛状態を呈した内側ろ材32と、メルトブローン法で作られて内側ろ材32の外面に直接吹き付けられた外側ろ材33の二層構造である。外側ろ材33は、スパンボンド法で作られたろ材よりも通気性が低くかつ捕塵性が高い。そのため、第1のフィルタ部材26の通気性はこれよりも厚い第2のフィルタ部材31の通気性より高い。第2のフィルタ部材31をなすろ材32,33の内でフィルタ袋体25の内部空間に臨んだ内側ろ材32は、第1のフィルタ部材26をなしたろ材27,28とは異なる材質で形成されている。この内側ろ材32の捕塵性が第1のフィルタ部材26をなしたろ材27,28の捕塵性より高いので、この内側ろ材32を有した第2のフィルタ部材31の捕塵性は第1のフィルタ部材26の捕塵性より高い。
【0064】
以上説明した事項以外は、図示されない構成を含めて一実施形態と同じである。したがって、この他の実施の形態の集塵袋21によれば、一実施の形態で既に説明した理由によって、本発明の課題を解決して、フィルタ袋体25の裏面部位31aでの捕塵性を確保しつつ、フィルタ袋体25の早期の目詰まりを抑制して長く使用できるとともに、ろ過により分離された塵をより多量に溜めることができる。更に、図6に示した他の実施形態では、第2のフィルタ部材31も二層に組み合わされたろ材で作られているので、フィルタ袋体25をなすろ材の層数が減らすことができる。それに伴い、フィルタ袋体25を折り畳み易く、かつ、吸込み気流によるフィルタ袋体25の膨張を円滑かつ素早く行わせ易い点で好ましい。
【符号の説明】
【0065】
21…集塵袋、23…支持板、24…塵通孔、25…フィルタ袋体、26…第1のフィルタ部材、27…第1のフィルタ部材の内側ろ材、28…第1のフィルタ部材の外側ろ材、31…第2のフィルタ部材、31a…第2のフィルタ部材の裏面部位、31b…ガセット部、32…第2のフィルタ部材の内側ろ材、33…第2のフィルタ部材の外側ろ材、34…第2のフィルタ部材の中間ろ材、35…接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵通孔を有した支持板の裏面に通気性のフィルタ袋体が固定された集塵袋において、前記フィルタ袋体が、前記支持板に固定された第1のフィルタ部材と、前記フィルタ袋体が膨らんだ状態で前記支持板の裏面に対向するように配置される裏面部位を有して前記第1のフィルタ部材の周縁部に接着され前記第1のフィルタ部材とともに前記フィルタ袋体をなす第2のフィルタ部材とを備え、前記第1のフィルタ部材の通気性が前記第2のフィルタ部材の通気性より高いことを特徴とする電気掃除機用集塵袋。
【請求項2】
前記両フィルタ部材が熱可塑性の化学繊維からなるろ材で作られているとともに、これらフィルタ部材の周縁部が溶着により接着されていることを特徴とする請求項1の記載の電気掃除機用集塵袋。
【請求項3】
前記第1のフィルタ部材をなすろ材の層数が、前記第2のフィルタ部材をなすろ材の層数より少ないことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気掃除機用集塵袋。
【請求項4】
前記第2のフィルタ部材がニ層以上のろ材で形成されているとともに、これらのろ材の内で前記フィルタ袋体の内部空間に臨んだろ材が、前記第1のフィルタ部材をなしたろ材の内で前記フィルタ袋体の内部空間に臨んだろ材とは異なる材質で形成されていて、このろ材の捕塵性が前記第1のフィルタ部材をなしたろ材の捕塵性より高いことを特徴とする請求項3に記載の電気掃除機用集塵袋。
【請求項5】
前記第2のフィルタ部材がニ層以上のろ材で形成されているとともに、これらのろ材の内で前記フィルタ袋体の内部空間に臨んだろ材が、これより外側のろ材より厚くかつ捕塵性が高いことを特徴とする請求項1から3の内のいずれか一項に記載の電気掃除機用集塵袋。
【請求項6】
前記第1のフィルタ部材が前記支持板より大形な四角形状であり、前記第2のフィルタ部材が、前記第1のフィルタ部材と略同じ大きさの四角形状をなした前記裏面部位、及びこの裏面部位から夫々互いに近付くように折り込まれた少なくとも一対のガセット部を有し、前記第1のフィルタ部材の内面に前記ガセット部を対向させて前記第1、第2のフィルタ部材の周縁部が接着されていることを特徴とする請求項1から5の内のいずれか一項に記載の電気掃除機用集塵袋。
【請求項7】
消臭材又は抗菌材の内の少なくとも一方が前記フィルタ袋体の少なくとも一部に含浸又は塗布されていることを特徴とする請求項1から6の内のいずれか一項に記載の電気掃除機用集塵袋。
【請求項8】
消臭材又は抗菌材の内の少なくとも一方が前記第1のフィルタ部材に含浸又は塗布されていることを特徴とする請求項7に記載の電気掃除機用集塵袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−273975(P2010−273975A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131186(P2009−131186)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【出願人】(000205823)大昭和紙工産業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】