説明

電気掃除機

【課題】電気掃除機運転時の本体外郭の温度上昇を低減すること。
【解決手段】前方に塵埃を蓄積する集塵室41、後方に電動送風機52を内蔵する駆動室49と電動送風機52から排出される排気の大部分を機外に排出するための排気口66を設けた掃除機本体37と、駆動室49内に配置されて電動送風機52を包着するモーターカバー55、56と、集塵室31に連通する吸込具を有する電気掃除機において、前記モーターカバー55、56には電動送風機52の排気の大部分を前記排気口66に案内する送風路63を形成した。これにより、電動送風機52を通過して高温となった排気は、モーターカバーの送風路63を経由して排気口66から掃除機本体37外に排出され、駆動室49内の室温および掃除機本体37外郭の温度上昇は排気口66周辺を除いてわずかとなり、使用中に掃除機本体37外郭に触れても熱さを感じなくなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭において使用する電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の構成を図5で説明する。掃除機本体13に内蔵される電動送風機22は、電動送風機22の発生する運転音を遮音するとともに、掃除機本体13への電動送風機22の振動伝播を抑える目的で、上下2分割の上モーターカバー28と下モーターカバー29で抱着されていた。そして電動送風機22の運転で吸引された吸気は、電動送風機22の内部を通過後、上モーターカバー28と下モーターカバー29内に排出され、続いて下モーターカバー29に形成された排出口を経由して掃除機本体13内に流入し、最後に掃除機本体13の後面に形成されたリヤカバー21より機外に排出されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また図6において、掃除機本体内に流入した排気の一部は、モーター22(電動送風機)に給電するコード24を巻き取るためのコードリール23を収容するコードリール室28に導かれ、電力供給に伴って自己発熱するコード24の空気冷却に利用されるものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−154213号公報
【特許文献2】特開平7−51190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構成の上モーターカバー28と下モーターカバー29は、電動送風機22の外周を覆うだけであり、電動送風機22から排出される排気の全量が掃除機本体13内に充満し、その後掃除機本体13の排気口であるリヤカバー21から排出される状況となる。ところで集塵室11内の紙袋10に蓄積する塵埃量が増すに従い電動送風機22を通過する排気量は減少するが、電動送風機22の巻線温度は前記排気流で冷却される構成のため、通過する排気量が減少するに従い、次第に温度上昇値が増大する。同時に排気の温度も排気量の減少に伴って上昇し、紙袋10内の塵埃が満杯近くとなって排気量が初期の半分近くになると、掃除機本体13内の排気温度も非常に高くなり、この高温の排気にさらされて掃除機本体13の外郭を手で触れると熱く感じてしまうという課題があった。特に消費電力1000Wの掃除機では顕著であった。
【0005】
また、上記のように高温になった排気をコードリール室28に導入し、コード24を冷却するため、塵埃量が満杯近くとなって吸気量が半減近くになった状態では冷却効果が低下し、この状態で必要な冷却をさせるために必要な冷却流導入面積を設定すると、塵埃がない初期状態などでは大量の排気がコードリール室28に流入し、それがコード出口25から勢いよく排出されて使い勝手の悪いものとなる課題があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するもので、吸引した塵埃量が満杯近くになった時に掃除機本体の外郭に触れても、不安に感じる熱さを感じさせないと共に、効率のよいコード冷却を行ってコード出口からの排気量を気にせずにすむ使用性を確保した、使い勝手のよい電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために本発明は、電動送風機を内蔵する駆動室と電動送風機から排出される排気の大部分を機外に排出するための排気口を設けた掃除機本体と、駆動室内に配置されて電動送風機を包着するモーターカバーを設けた電気掃除機において、前記モーターカバーには電動送風機の排気の大部分を前記排気口部に案内する送風路を形成するものである。これにより、電動送風機を通過して高温となった排気は、モーターカバーの送風路を経由して排気口から掃除機本体外に排出される結果、駆動室内の室温および本体外郭の温度上昇は排気口周辺を除いてわずかとなり、使用中に掃除機本体外郭に触れても熱さを感じなくなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、吸引した塵埃量が満杯近くになった時に本体の外郭に触れても、不安に感じる熱さを感じさせないとともに、効率のよいコード冷却を行ってコード出口からの排気量を気にせずにすむ使用性を確保した電気掃除機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、前方に塵埃を蓄積する集塵室を、後方に電動送風機を内蔵する駆動室と前記電動送風機から排出される排気の大部分を機外に排出するための排気口とを設けた掃除機本体と、前記駆動室内に配置されて前記電動送風機を包着するモーターカバーと、前記集塵室に連通する吸込具とを備え、前記モーターカバーには前記電動送風機の排気の大部分を前記排気口に案内する送風路を形成することにより、駆動室内の気温および本体外郭の温度上昇は排気口周辺を除いてわずかとなり、使用中に掃除機本体外郭に触れても熱さを感じさせなくなるものである。
【0010】
また、電動送風機の排気音、特に2000Hz以上の周波数域の高周波音がキーンと耳障りに聞こえる運転音を遮音し、良好な使用性を確保することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明のモーターカバーを、左右または上下の2部品で電動送風機を狭持する構成としたことにより、送風路形状の自由度を確保し、掃除機本体内への組み立てを容易にできる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明の送風路を、モーターカバーに一体に形成したことにより、部品価格の上昇を抑制できる。
【0013】
第4の発明は、第1または第2の発明の送風路をブロー成形で形成し、前記送風路を、モーターカバーに取着したことにより、送風路形状に蛇行があっても、排気が流れる内面側は滑らかに形成できて流路音の発生を低減できるとともに、ブロー成形によって製造コストを抑制できる。
【0014】
第5の発明は、第1の発明の排気口の掃除機本体内側に駆動室と区画する隔壁を形成し、この隔壁と送風路の外郭と嵌合して排気室を形成したことにより、駆動室側への排気の還流を無くし、排気室を形成する掃除機本体外郭以外の温度上昇をほぼ無くすることができる。
【0015】
第6の発明は、第1〜第4のいずれか一つの発明の送風路の内面に、吸音材を貼付したことにより、送風路内を流れる排気流に含まれる電動送風機が発生した運転音を吸音抑制し、電気掃除機の運転音の低減を行える。
【0016】
第7の発明は、第1〜第6のいずれか一つの発明の電動送風機の送風ファンを覆うファンケースの外周面に通気口を形成し、前記通気口を通じて排出される排気の少なくとも一部を、掃除機本体内に駆動室と区画して形成されコードを巻き取るためのコードリールを収容するコードリール室に導くことにより、電動送風機に電力を供給するコードの自己発熱を、送風ファンを通過しただけの温度上昇していない排気のみで冷却することができ、少量で効率よく冷却できるものである。
【0017】
第8の発明は、第7の発明の通気口を通じて排出される排気の少なくとも一部を、コードリールの中央部を経由してコードリール室内に排出させることにより、コードリールに巻き残って重なっているコードの冷却も効率よく行えるものである。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
以下に、本発明の第1の実施の形態を図を用いて説明する。図1〜図3において、電気掃除機31は延長管32に取り付けた塵埃を吸引する吸込具33を有し、前記延長管32は手元ハンドル34とホース継ぎ手35付きのホース36とを介して本体37に連結されている。本体37は底面に枢支された1個のキャスター38と、本体37の後部両側面に回転自在に取り付けられた一対の後輪39とを備え、電気掃除機31の使用中の本体37の移動を容易にしている。
【0020】
図2、図3に示すように、本体37の内部前方には紙袋40を収容する集塵室41が形成され、上本体42に回動自在に軸止された上蓋43が開閉自在に覆っている。集塵室41前方部には紙袋40に固着した厚紙製の支持板44に密着した吸気口弁45を狭持して前蓋46が取り付けられている。前蓋46の略中央部には吸気口47が集塵室41に連通して一体に形成され、ホース継ぎ手35を着脱自在に接続保持する。
【0021】
集塵室41の後方には前隔壁48にて集塵室41と前後に区画された駆動室49、コードリール室50が並列に形成されている。駆動室49とコードリール室50は後輪39を取り付けた下本体51と上本体42とで外郭を構成されている。
【0022】
電動送風機52は前後を緩衝材A53、緩衝材B54を介してモーターカバーA55、モーターカバーB56で左右より狭持されている。またモーターカバーA55、モーターカバーB56は支持ゴム57を介し下本体51に保持されている。電動送風機52のファンを覆っているファンケース58の外周面には複数の通気口59が開口していて、ファンで吸引される排気の一部を緩衝材A53、電動送風機52と、モーターカバーA55およびモーターカバーB56内部の分離壁60で構成されるファン室61に排出する。
【0023】
モーターカバーA55、モーターカバーB57の分離壁60前方はファンケース58を囲い、分離壁60後方には、電動送風機52を囲ったモーター室62と、モーター室62の下側の送風路63の2室が形成されている。送風路63は下本体51の底面に沿って後方に伸び、上本体42と下本体51の隔壁64と嵌合して形成される排気室65に開口している。66は上本体42の後面に複数個形成された排気口で排気フィルター67を通過する電動送風機52の排気を本体37外に排出する。送風路63内面には吸音パッキン68が貼り付けられている。
【0024】
69はコードリールでリールA70とリールB71とを結合して構成され、上本体42と下本体51で略垂直状態で狭持された保持板72と下本体51で支持されるリール軸73を回転軸としてコードリール室50内でコード74を巻き取り収容している。リールA70とリールB71にはそれぞれ通気口A75、通気口B76が形成されていて、保持板72の排気孔77と連通している。77は排気孔77とファン室61とを連通する通気パイプ、78は電動送風機52の上方に配置された電動送風機52の動作を制御する制御装置である。
【0025】
次に、上記構成による動作、作用について説明する。
【0026】
電動送風機52を運転状態にすると、吸込具33から吸塵される含塵気流は、延長管32、ホース36、吸気口47を経由して紙袋40内に流入し、塵埃だけが紙袋40で捕集され、清浄化された気流は集塵室41から電動送風機52に吸引される。電動送風機52を通過した気流の大部分は、モーター室62、送風路63を経路として排気室65内に流れ、上本体42の後面に形成した排気口66より本体37外に排出される。(図2、図3の矢印(イ)で示す経路)この状態では、紙袋40内に満杯近くの塵埃が堆積して電動送風機52が吸引する風量が低下し、電動送風機52の発熱した巻線によって排気は温度上昇する。しかしながらこの温度上昇した排気はモーターカバーA55、同B56で覆われて駆動室49とは遮断されているとともに隔壁64と送風路63の嵌合組み合わせで排気室65とも遮断状態となり、駆動室49内の気温の上昇はごくわずかとなり、したがって本体37の外郭温度も排気室65を形成する一部を除いて熱くなることがない。
【0027】
また、本体37内の排気が流れる部分は送風路63で覆われているため、排気に含まれる電動送風機52の運転音や送風路63を流れる気流音が送風路63と本体37の2重構造で遮音される結果、電気掃除機31の騒音が低下する。特にキーンと耳障りに聞こえる高周波音が低減し、使用中の不快感がなくなる。
【0028】
さらに、上記送風路63は、左右2分割構成のモーターカバーA55、同B56で一体に形成しているため、部品単価の上昇もなく形成できるとともに、送風路63形状を本体37形状との組み合わせに応じた形状とでき、本体37内への組み立てを容易に行えることとなる。
【0029】
加えて、送風路63内に吸音パッキン68を貼り付けていることによって、送風路63内を通過する排気に含まれる音をより一層減衰し、運転音の低減が行えるものである。
【0030】
一方ファンケース58の通気口59より排出される一部の排気は、ファン室61、通気パイプ78、排気孔77、通気口B76、通気口A75を経路(図2、図3の矢印(ロ)で示す経路)としてコードリール室50に流入し、コード出口79から本体37外に排出される。この排気はファンケース58より排出される排気のため、集塵室41内を通過する気流とほぼ同温度の低温であるため、コード74の冷却を効率よく行え、またコードリール69の内側から排気をコードリール室50内に排出するため、より一層効率よく冷却が行えるものである。そして冷却効率を高くできるために逆に風量は小さく抑えることができ、コード出口79から出る風速も小さくでき、使用性を向上できるものである。
【0031】
(実施の形態2)
以下に、本発明の第2の実施の形態を図4を用いて説明する。なお、上記実施の形態1と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0032】
モーターカバーA55とモーターカバーB56は上下2分割構成で電動送風機52を狭持している。モーターカバーB56の底面には排出口80が形成されている。81は上本体42後面に形成された排気口66と前記排出口80を気密に連通する送風路で、ブロー成形によって形成されている。
【0033】
上記構成によって電動送風機52を運転状態にすると、電動送風機52を通過した排気は、モーター室62、排出口80、送風路81、排気フィルター67、排気口66を経由して本体37外に排出される。ところで送風路81はブロー成形で形成されているため内面が滑らかに構成され、従って排気が流れる際に内面で気流が乱れることが起こらず、流路音の発生を低減できる。また、排出口80と排気口66を気密につなげるため本体37の外郭温度が高くなる部分を排気口66部だけの最小範囲とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明にかかる電気掃除機は、本体外郭の温度上昇を感じさせないものとして使用性を著しく向上でき、家庭用、業務用等の用途に、また床移動型だけでなく、縦型、携帯型などの形態を問わず幅広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1を示す電気掃除機の全体外観図
【図2】同電気掃除機の断面図
【図3】同電気掃除機の図2のZ−Z断面図
【図4】本発明の実施の形態2を示す電気掃除機の断面図
【図5】従来の電気掃除機の断面図
【図6】従来の他の電気掃除機の断面図
【符号の説明】
【0036】
33 吸込具
37 本体
41 集塵室
49 駆動室
50 コードリール室
52 電動送風機
55 モーターカバーA
56 モーターカバーB
58 ファンケース
59 通気口
63 送風路
64 隔壁
65 排気室
66 排気口
68 吸音パッキン(吸音材)
69 コードリール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に塵埃を蓄積する集塵室を、後方に電動送風機を内蔵する駆動室と前記電動送風機から排出される排気の大部分を機外に排出するための排気口とを設けた掃除機本体と、前記駆動室内に配置されて前記電動送風機を包着するモーターカバーと、前記集塵室に連通する吸込具とを備え、前記モーターカバーには前記電動送風機の排気の大部分を前記排気口に案内する送風路を形成してなる電気掃除機。
【請求項2】
モーターカバーを、電動送風機を左右または上下で狭持する2部品で構成してなる請求項1記載の電気掃除機。
【請求項3】
送風路を、モーターカバーに一体に形成してなる請求項1または2記載の電気掃除機。
【請求項4】
送風路をブロー成形で形成し、前記送風路を、モーターカバーに取着してなる請求項1または2記載の電気掃除機。
【請求項5】
排気口の掃除機本体内側に、駆動室と区画する隔壁を形成し、前記隔壁は、送風路の外郭と嵌合して排気室を形成してなる請求項1記載の電気掃除機。
【請求項6】
送風路の内面に、吸音材を貼付してなる請求項1〜4のいずれか1項記載の電気掃除機。
【請求項7】
電動送風機の送風ファンを覆うファンケースの外周面に通気口を形成し、前記通気口を通じて排出される排気の少なくとも一部を、本体内に駆動室と区画して形成されコードを巻き取るためのコードリールを収容するコードリール室に導いてなる請求項1〜6のいずれか1項記載の電気掃除機。
【請求項8】
通気口を通じて排出される排気の少なくとも一部を、コードリールの中央部を経由してコードリール室内に排出させてなる請求項7記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−218149(P2006−218149A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35604(P2005−35604)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】