説明

電気掃除機

【課題】被清掃面の掃除及び空中に浮遊する塵埃の除去を同時に効率よく実行可能で、人体への悪影響を抑制することのできる使い勝手のよい電気掃除機を提供する。
【解決手段】電気掃除機100は、床面近傍の空気を吸引する第1吸気口1と、塵埃が浮遊する空中の空気を吸引する第2吸気口15と、第2吸気口15での吸引を容易にするために、空気中の微細な塵埃粒子を凝集させる粒子凝集要素を外部へ放出する粒子凝集装置12と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面や絨毯等の被清掃面の掃除動作中に、掃除機本体周囲の空中に浮遊する塵埃を同時に吸引可能な機能を有する電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気掃除機に対しては、床面や絨毯等の被清掃面に存在している花粉やアレルゲン、埃等の塵埃の効率のよい除去が求められている。それに対して、被清掃面上の空中に存在している塵埃の除去については、あまり考慮されていなかった。このような塵埃は、電気掃除機の使用時における電気掃除機を操作する人の歩行動作あるいは電気掃除機からの排気といった掃除動作によって被清掃面上の塵埃が空中に再飛散されてしまったものに由来していることが多い。そして、このような塵埃は、電気掃除機に集塵されることなく、被清掃面上の空中を長時間浮遊し続けることになっていた。
【0003】
空中に浮遊する塵埃は、被清掃面上に存在する在室者の健康に悪影響を与える一つの要因になっている。このような塵埃を体内に吸い込むと、花粉症やアトピ性皮膚炎といったアレルギー症状を発症させることが知られている。また、塵埃は、被清掃面に近接している空中に多く浮遊し続けるということが分かっている。したがって、特に、体内器官が発達しておらず、口や鼻の位置が成人に比べて低い乳幼児等が、塵埃を吸い込んでしまう機会が多くなり、健康的な影響を受けやすいことになる。そのようなことを防止する対策の一つとして、被清掃面の掃除動作と同時に塵埃を除去できるようにした電気掃除機が存在している。
【0004】
そのようなものとして、「吸込口と接続した掃除機本体内の掃除用電動送風機と、この掃除用電動送風機の吸引力によって吸込口から吸引された塵埃を分離する集塵室と、塵埃を分離した後の空気を掃除機本体外へ排気する本体排気口と、掃除機本体内に掃除用電動送風機とともに装備された清浄用送風機と、この清浄用送風機の吸引力によって掃除機本体に設けた外気吸気口から吸引された塵埃を除去する外気用フィルタと、外気用フィルタにより塵埃を除去した後の空気を排気する外気排気口とを有し、前記掃除用電動送風機と清浄用送風機を同時駆動可能にした電気掃除機」が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−113468号公報(第5頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1に記載されているような電気掃除機は、掃除用電動送風機及び清浄用送風機の2つの動力を搭載しているため、拡散係数が小さく、重力沈降や慣性力の影響を受けやすい粒経が大きな粗大な塵埃に対しては十分な性能を発揮することができるものである。しかしながら、このような電気掃除機は、拡散係数が大きく、電気移動度が高い、粒経の小さい微細な塵埃については十分な性能を発揮することができず、集塵効果が不十分であるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、被清掃面の掃除及び空中に浮遊する塵埃の除去を同時に効率よく実行可能で、人体への悪影響を抑制することのできる使い勝手のよい電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気掃除機は、床面近傍の空気を吸引する第1吸気口と、塵埃が浮遊する空中の空気を吸引する第2吸気口と、前記第2吸気口での吸引を容易にするために、空気中の微細な塵埃粒子を凝集させる粒子凝集要素を外部へ放出する粒子凝集装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る電気掃除機は、掃除機本体と、ホースを介して前記掃除機本体に接続された吸込み具と、を備えた電気掃除機において、前記吸込み具は、吸込み具周囲の空気を吸い込むための第1吸気口を備え、前記掃除機本体は、前記掃除機本体周囲の空気を吸い込むための第2吸気口と、前記第1吸気口と前記第2吸気口を介して外部の空気を吸引する吸引動力部と、前記吸引動力部により吸引された空気に含まれる塵埃を集塵する集塵部と、前記吸引動力部により吸引された空気を外部へ排出する第1排気口と、前記掃除機本体周囲の空気中の微細な塵埃粒子を凝集させる粒子凝集要素を外部へ放出する粒子凝集装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電気掃除機によれば、粒子凝集装置を備えることで、掃除機本体の周囲に存在している空気に含まれ、掃除機本体の周囲に浮遊している微細な塵埃の凝集を促進することができる。したがって、掃除機本体の周囲に浮遊している微細な塵埃を粗大化し、掃除機本体での捕集効率を向上させることができ、掃除機周囲の空気を効率よく清浄化することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る電気掃除機100の全体構成を示す概略図である。図2は、掃除機本体3の断面構成を側面からみた状態を示す縦断面図である。図3は、掃除機本体3の外観構成を示す斜視図である。図1〜図3に基づいて、電気掃除機100の構成及び動作について説明する。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図2及び図3には、掃除機本体3内に吸引された空気の流れ(実線矢印A及び破線矢印B)を併せて図示している。
【0012】
この実施の形態に係る電気掃除機100は、床面や絨毯等の被清掃面に存在している花粉やアレルゲン、埃等の塵埃を吸い込むと同時に、空中に浮遊する塵埃を吸い込むことができるものである。この電気掃除機100は、図1に示すように、後述の集塵部8及び吸引動力部9等が収容された掃除機本体3と、被清掃面の塵埃を掃除機本体3に吸引するための第1吸気口1を備えた吸込み具2と、吸込み具2に着脱自在に接続され、第1吸気口1から吸引した塵埃及び空気を掃除機本体3へと送るパイプ4と、パイプ4と掃除機本体3とを着脱自在に連結する蛇腹状のホース5と、パイプ4の一端に設けられ、使用者が手に持って吸込み具2を操作する手元ハンドル6と、手元ハンドル6の一部に設けられ、電気掃除機100の電源等を操作するための操作部7と、を有している。
【0013】
掃除機本体3は、図2に示すように、ホース5を着脱自在に接続するためのホース接続口21と、ホース5を介して吸引された塵埃を回収する集塵部8と、空気を吸入するための吸引力を発生させる吸引動力部9と、吸引動力部9により吸入された空気を排気として掃除機本体3の外部へ排出する第1排気口10と、排気の一部を排出するための第2排気口11と、第2排気口11から排気とともに放出する粒子凝集要素(たとえば、電荷や液体等の粒子凝集媒体あるいは超音波等)を発生させる粒子凝集装置12と、掃除機本体3上方の一部にヒンジ13を介して開閉可能に設けられた蓋14と、蓋14に設けられた第2吸気口15と、第2吸気口15と集塵部8とを連通させる風路16と、第2吸気口15から流入する風量を調節可能な開閉扉17と、を有している。
【0014】
ホース接続口21は、掃除機本体3の前方に形成され、ホース5及びパイプ4を介して吸込み具2の第1吸気口1と連通し、吸込み具2で吸入された塵埃及び空気を掃除機本体3内部に導通させるものである。なお、以下の説明において、第1吸気口1という場合には、ホース接続口21が含まれているものとする。集塵部8は、掃除機本体3に着脱自在に収納されるようになっており、ホース5と連通し、ホース5から送られてきた塵埃のうち粒径が比較的大きな粗大な塵埃を捕集する集塵室8aと、微細な塵埃を捕集する集塵フィルタ8bと、集塵フィルタ8bを覆い、保持している集塵フィルタケース8cと、で構成されている。吸引動力部9は、電動送風機等で構成されており、集塵部8の下流側に配置され、第1吸気口1及び第2吸気口15から空気を吸入するためのものである。
【0015】
第1排気口10は、吸引動力部9の下流側であって掃除機本体3の後方に形成され、吸引動力部9により吸入された空気の大部分を掃除機本体3の外部へ排出するものである。第2排気口11は、蓋14の後方の一部を上方に向けて開口して形成されており、粒子凝集装置12が発生した粒子凝集要素を吸引動力部9により吸入された空気の一部とともに掃除機本体3の外部へ排出するものである。粒子凝集装置12は、細塵(拡散係数が大きく、電気移動度が高い、粒経がたとえば0.5μm未満の小さい微細な塵埃)を凝集させるための粒子凝集要素を発生する機能を有している(図7で詳細に説明するものとする)。蓋14は、掃除機本体3の上部を開閉自在に覆うものであり、第2排気口11及び第2吸気口15が開口形成されている。
【0016】
第2吸気口15は、蓋14の前方の一部を上方かつ前方に向けて開口して形成されており、掃除機本体3の上方に浮遊している塵埃を掃除機本体3に吸引するものである。風路16は、図3に破線で示すように、掃除機本体3の内部で蓋14の形状に沿って形成されており、第2吸気口15と集塵部8(具体的には、集塵フィルタケース8c)とを連通させるものである。この風路16は、風路断面積16aが入口にあたる第2吸気口15の開口面積15a側から開閉扉17に向かって徐々に小さくなるように形成されている。風路16をこのような形状とすることで、より広範囲の外気を吸引できるだけでなく、第2吸気口15を通過する際の流体騒音の発生を緩和することができる。開閉扉17は、風路16の一部に設けられ、手動あるいは自動で風路16を連通・遮断するものである。
【0017】
ここで、電気掃除機100の動作について説明する。
電気掃除機100は、掃除機本体3に備えられている図示省略の電源コードが商用電源に接続され、手元ハンドル6の操作部7に設けられている図示省略の電源スイッチがオンされ、吸引動力部9が駆動されることによって掃除動作を開始する。吸引動力部9が駆動されると、掃除機本体3内に塵埃を吸引するための吸引力が発生する(実線矢印A及び破線矢印B)。これにより、被清掃面の塵埃が空気とともに吸込み具2の第1吸気口1から吸引される(実線矢印A)。第1吸気口1から吸引された塵埃及び空気は、パイプ4及びホース5を経由し、掃除機本体3に吸い込まれる。
【0018】
掃除機本体3内では、掃除機本体3内に空気とともに吸い込まれた塵埃のうち粒径が比較的大きな粗大な塵埃が上流側に設けられている集塵室8aで空気と分離して捕集され、集塵室8aを通過した微細な塵埃が下流側に設けられている集塵フィルタ8bで更に空気と分離して捕集されるようになっている。集塵室8a及び集塵フィルタ8bを通過した空気は、塵埃が取り除かれ、清浄な空気となって、吸引動力部9を経由し、掃除機本体3の後方側に開口形成されている第1排気口10から排出されるようになっている。
【0019】
一方、開閉扉17が開放されることによって、第2吸気口15からも掃除機本体3の周囲に浮遊している塵埃が空気とともに吸引される(破線矢印B)。第2吸気口15から吸引された塵埃及び空気は、風路16及び開閉扉17を経由し、集塵フィルタケース8cに吸い込まれる。集塵フィルタケース8cでは、集塵フィルタケース8cに空気とともに吸い込まれた塵埃が集塵フィルタ8bで空気と分離して捕集されるようになっている。集塵フィルタ8bを通過した空気は、塵埃が取り除かれ、清浄な空気となって、吸引動力部9を経由し、掃除機本体3の後方側に開口形成されている第1排気口10から排出されるようになっている。
【0020】
ところで、電気掃除機100の使用者の歩行動作あるいは電気掃除機100からの排気といった掃除動作によって空中に再飛散した被清掃面上の細塵を含む微細な塵埃は、空中に浮遊したままの状態となっている。そこで、電気掃除機100では、粒子凝集要素を第2排気口11から掃除機本体3の上方に向けて放出させ、微細な塵埃、特に塵を凝集するようにしている。そして、凝集された塵埃は、蓋14の上方かつ前方に開口形成されている第2吸気口15から掃除機本体3内に吸引され、集塵フィルタ8bで捕集されることになる(破線矢印B)。
【0021】
次に、空中に浮遊している微細な塵埃が人体へ及ぼす影響について説明する。
図4は、乳幼児の身長の平均値を示すグラフである(参考:「平成12年乳幼児身体発育調査」厚生労働省雇用均等・児童家庭局 2000年発行 p82)。図5は、乳幼児が立って歩くようになるまでかかる期間を示すグラフである(参考:「平成12年乳幼児身体発育調査」厚生労働省雇用均等・児童家庭局 2000年発行 p89)。図4及び図5に基づいて、まず微細な塵埃が乳幼児に与える影響について乳幼児の発育過程と併せて説明する。
【0022】
一般的に、2μm以上の微細な塵埃に含まれているダニアレルゲンや花粉は、アトピ性皮膚炎や花粉症、埃アレルギー等の先天性疾病を引き起こす原因の一つとなっていることが知られている。このような微細な塵埃は、周囲の対流によって再飛散しやすく、その飛散濃度は、高さ120cm付近と高さ30cm付近では、高さ30cm付近の方が飛散する量が多いという報告がある(参考:環境の管理「室内活動によるハウスダスト粒子の空気中挙動に関する研究」山本 尚理、熊谷 一清、柳沢 幸雄 2004年発行 p240−243)。
【0023】
図5から、生後1年未満の乳幼児は、大半がまだ立つことができずにハイハイをしている状態であるということがわかる。このことから、ハイハイ状態の乳幼児は、被清掃面から高さ10〜40cm程度の位置で呼吸をしていることになる。つまり、乳幼児の口や鼻付近の高さ位置において先天性疾病の原因となる微細な塵埃の濃度が高く、掃除時に微細な塵埃を再飛散させることは、乳幼児に対して悪影響を与える可能性が高くなってしまうことになる。そこで、電気掃除機100では、掃除動作中に微細な塵埃の濃度が高くなる10cm〜40cmの位置付近に第2吸気口15を設けることにより、被清掃面付近に再飛散している微細な塵埃を効率よく除去可能にしている。したがって、電気掃除機100は、掃除中における掃除機本体3の周囲環境を効果的に改善することができる。
【0024】
また、微細な塵埃を掃除中に最飛散させる大きな要因の一つとして使用者による歩行動作がある。そこで、電気掃除機100では、使用者に向けて第2吸気口15を開口形成することにより、実際には高い位置まで再飛散するはずであった微細な塵埃も効果的に吸引することができる。ところで、実際には、空中に浮遊している微細な塵埃に含まれている2μm以下の微細な塵埃の方が、個数濃度としては多く、粒径が小さくなるに従い拡散係数が高くなり、重力の影響を受けづらくなるため、浮遊時間が長いということがわかっている。
【0025】
図6は、掃除時に舞い上げられる塵埃個数濃度の時間変化を粒径別に示すグラフである。図6に基づいて、塵埃の粒径が空中に浮遊している時間に及ぼす影響について説明する。図6では、縦軸が塵埃個数濃度(個/L)を、横軸が時間(min)を示している。また、図6には、塵埃の粒径を5段階、つまり(ア)が0.3〜0.5μm程度の粒径の塵埃を、(イ)が0.5〜1.0μm程度の粒径の塵埃を、(ウ)が1.0〜2.0μm程度の粒径の塵埃を、(エ)が2.0〜5.0μm程度の粒径の塵埃を、(オ)が5.0μm以上の粒径の塵埃をそれぞれ表している。このうち(ア)が細塵を、(イ)〜(エ)が微細な塵埃を、(オ)が比較的大きな粗大な塵埃をそれぞれ表している。
【0026】
図6から、いずれの時間帯(掃除前室内空気:時間帯A、掃除中室内空気:時間帯B、掃除後室内空気:時間帯C)においても塵埃の粒経が小さくなるほど、個数濃度が高くなり、被清掃面に沈降するのに時間がかかるということがわかる。(ア)〜(エ)で示すような細塵を含む微細な塵埃は、質量としては少ないものの、人体へ入ってしまうと、肺の奥まで到達しやすく、比較的大きな塵埃と同様に人体の健康に害を与えることになる。特に、(ア)に示すような細塵は、拡散係数が高いため、風の吸引による影響を受けづらく、除去しづらいという性質を持っている。
【0027】
そこで、電気掃除機100は、掃除機本体3の周囲に浮遊している微細な塵埃に対し、粒子凝集装置12から発生させる粒子凝集要素によって微細な塵埃を粗大化させるようにしている。粒子凝集要素により粗大化された塵埃は、第2吸気口15から掃除機本体3内に吸引され、集塵フィルタ8bで捕集されるようになっている。つまり、粒子が粗大化することにより、集塵フィルタ8bによる集塵効率が向上するのである。また、粗大化された塵埃は、被清掃面に沈降しやすくなっているために、第1吸気口1を介して吸引される塵埃吸い込み率も向上することになる。
【0028】
図7は、粒子凝集要素有無の影響を、掃除を開始した時の掃除機本体3の周囲における塵埃個数濃度の経時変化により示すグラフである。図7に基づいて、0.3〜0.5μm程度の粒径の塵埃の個数濃度が粒子凝集要素の有無によって経時的にどのように変化するかについて説明する。図7では、縦時期が塵埃個数濃度を、横軸が時間(s)をそれぞれ示している。また、図7では、線(イ)が粒子凝集要素のある場合における塵埃の個数濃度変化を、線(ロ)が粒子凝集要素のない場合における塵埃の個数濃度変化をそれぞれ表している。なお、図7では、粒子凝集装置12として放電電極を用いた場合の実験結果を例として示している。
【0029】
放電電極を用いた場合、放電による電子の放出により、負電荷を有する塵埃が発生し、正電荷を帯びた周囲の粉塵と凝集することになる。そのために、0.3〜0.5μm程度の粒径を有していた塵埃を凝集し、0.5μm以上の粒径を有する塵埃にすることができる。0.5μm以上の粒径を有する塵埃になれば、吸引力及び重力の影響を受けやすくなり、掃除機本体3での除去が促進されることになる。その結果、粒子凝集要素がある場合は、粒子凝集要素がない場合に対し、塵埃除去性能が70%向上することが確認できた。つまり、粒子凝集要素による塵埃の凝集は、掃除機本体3の周囲における空中に再飛散する塵埃の除去性能の向上に大きく寄与することになるのである。
【0030】
図8は、外気吸引風量(第2吸気口15からの吸引風量)に対する床面吸引風量(第1吸気口1からの吸引風量)の変化を示すグラフである。図8に基づいて、外気吸引風量と、床面吸引風量との関係について説明する。図8では、縦軸に床面吸引風量を、横軸に外気吸引風量をそれぞれ示している。図8から、電気掃除機100のように1つの吸引動力部9のみで被清掃面の掃除と掃除機本体3の周囲における空中の清浄化を同時に行なう場合、一方の吸引風量が増加すると、他方の吸引風量が減少することがわかる。
【0031】
この実施の形態に係る電気掃除機100については、1つの吸引動力部9のみで被清掃面の掃除と掃除機本体3の周囲における空中の清浄化を行なっている。そのため、被清掃面の掃除効率を低下させずに、掃除機本体3の周囲における空中の清浄化の効率を向上させる工夫が要求される。そこで、電気掃除機100では、掃除機本体3内部に粒子凝集装置12を設け、粒子凝集要素により細塵を凝集するということで、吸引動力部9のみによる細塵除去能力を補助し、被清掃面の掃除の清掃能力を低下させずに、第2吸気口15からの吸引力のみで掃除機本体3の周囲における空中の清浄化を効率よく実行可能にしているのである。
【0032】
次に、第2吸気口15及び第2排気口11の最適な設置位置について説明する。
図9は、掃除動作の際に掃除機本体3の周囲に飛散している塵埃の量を各部位で測定した結果を示すグラフである。図10は、電気掃除機100を実際に使用する際の電気掃除機100と使用者18との位置関係を示す模式図である。図9及び図10に基づいて、掃除機本体3の周囲に浮遊している塵埃を吸引する第2吸気口15、及び、粒子凝集装置12から発生した粒子凝集要素を一部の排気とともに放出する第2排気口11の最適な設置位置について説明する。
【0033】
図9では、縦軸に塵埃濃度を、横軸に電気掃除機100全体の位置関係をそれぞれ示している。図9から、電気掃除機100が動いていない場合(図で示す(a))に比べ、動いている場合(図で示す(b))の方が、掃除機本体3の周囲に浮遊している塵埃の量が増加しているということがわかる。また、掃除機本体3が動いている際には、掃除機ヘッド付近(図で示す(b1))及び掃除機本体3付近(図で示す(b3))に比べて、使用者付近(図で示す(b2))が最も塵埃の量が増加していることがわかる。これは、電気掃除機100を操作する使用者が最もよく動くため、被清掃面から塵埃を再飛散させることが多くなるととともに、衣服を擦り、新たな埃を発生させるからである。したがって、第2吸気口15は、使用者に向けて開口形成されていることが望ましい。
【0034】
図10に示すように、電気掃除機100を使用する際、使用者18は、手元ハンドル6を持って掃除をすることが通常である。また、掃除機本体3の前部分と手元ハンドル6とは、ホース5を介して連結されているので、掃除機本体3は手元ハンドル6の方向を向くことになる。つまり、実際に電気掃除機100を用いて掃除をする場合、通常、吸込み具2が先頭(掃除機ヘッド)に位置し、掃除機本体3が後尾に位置し、その間に使用者18が位置するような配置になる。なお、図10で示すb1〜b3は、図9で示したb1〜b3に対応しているものとする。
【0035】
したがって、図10から、第2吸気口15は、電気掃除機100の動作中における手元ハンドル6(第1吸気口1)の方向、つまり掃除機本体3の前方向に向かって設置することが望ましいということがわかる。このような位置に第2吸気口15を設置すれば、第2吸気口15を常に使用者18の方向に向けて開口させることができるからである。そして、電気掃除機100の動作中に再飛散する塵埃のうち最も量が増加する使用者18付近に再飛散する塵埃を第2吸気口15から効果的に吸引することができ、快適な掃除環境を保つことができることになる。
【0036】
第2排気口11については、掃除機本体3の前方向に向かって設置すると、排気の一部が使用者に向かって直接排出されることになってしまう。そのため、第2排気口11からの排気は、上方向に向けて放出するのが望ましい。つまり、第2排気口11は、掃除機本体3の上方向に向けて開口形成されていることが望ましいのである。こうすることによって、第2吸気口15では吸引力の影響を与えることができず、除去しきれず、掃除機本体3上方の高い位置に舞い上がった微細な塵埃を凝集させ、沈降させることができるようになる。通常、電気掃除機100の使用者18の背丈は、掃除機本体3よりも高いため、上半身から舞い上がる塵埃も多量に存在する。このことからも、第2排気口11は、第2吸気口15よりも上方向に向けて開口し、設置されていることが望ましい。
【0037】
この実施の形態では、第2吸気口15及び第2排気口11の望ましい設置位置について説明したが、第2吸気口15及び第2排気口11の設置位置や開口方向を説明したものに限定するものではない。たとえば、使用者の要望に応じて第2吸気口15や第2排気口11の高さを調整できる機能や、ルーバー等により第2吸気口15及び第2排気口11の吸引角度を用途に応じて変更できる機能を持たせるようにしてもよい。また、掃除機本体3の周囲の塵埃のムラをセンシングし、塵埃量が多いところに対し、第2吸気口15及び第2排気口11の向き、高さを自動的に調整する機能を持たせるようにしてもよい。
【0038】
次に、粒子凝集装置12から発生する粒子凝集要素とその発生方式について説明する。
図11は、粒子凝集装置12の構成例の一つを示す概略構成図である。図11に基づいて、粒子凝集装置12の構成例の一つについて動作と併せて説明する。図11に示すように、粒子凝集装置12は、高電圧を印加する電極で構成されており、放電によって粒子凝集要素の一つである負イオンを生成することを特徴としている。つまり、粒子凝集装置12は、放電電極部19と対向電極部20とで構成されており、これらの電極間に高電圧を印加し、コロナ放電を発生させて、この放電エネルギーによって負イオンを発生させるようになっている。
【0039】
具体的には、粒子凝集装置12では、放電電極部19に対し、負極性の高電圧を印加し、対向電極部20をアースに取り、電極間でコロナ放電を発生させることにより、電子と空気が衝突し、O- 、OH- 、NO3 - 、CO3 - といった負イオンを発生する。これらの負イオンが粒子凝集要素として作用することになる。これらの負イオンが浮遊する塵埃と衝突することで、塵埃は負に帯電する。一般的には、室内に浮遊する塵埃は正に帯電しているものが多い。そのため、発生させた負イオンにより負に帯電した塵埃と、空気中に存在する正に帯電した塵埃とが静電気力により凝集を起こすことになる。
【0040】
粒子凝集装置12は、第2吸気口15の開閉扉17の動作と連動させるようにしておくのが好ましい。図11に示すように、粒子凝集装置12に放電を用いた場合、動作時間とともに放電電極部19が磨耗し、徐々に負イオンの発生量が低下していく。また、粒子凝集装置12に液体を用いる場合、液体がなくなると、使用者が液体を補充しなければならない。つまり、粒子凝集装置12に放電や液体を用いると、粒子凝集装置12の動作時間が長いと使用者の手間が増えることになる。そのため、粒子凝集装置12の動作時間を可能な限り短く設定しておくのが好ましい。たとえば、掃除機本体3の周囲の塵埃を吸引しないとき等には、粒子凝集装置12の動作を停止可能にしておくとよい。
【0041】
ここでは、粒子凝集装置12の一例としてコロナ放電を用いて負イオンを発生させた場合を例に説明したが、負イオンを発生させる放電方式を特に限定するものではなく、たとえばバリア放電や、沿面放電、マイクロプラズマ等を用いて負イオンを発生させてもよく、電極形状も採用する放電方式に合わせて最適な形状とすればよい。また、印加する電圧を負極性に限定するものではなく、たとえば正極性の電圧を印加したり、正負両方を交互に正弦波や矩形波、方形波等の形で印加したりしてもよい。
【0042】
なお、上述したように、室内に浮遊する塵埃は正に帯電している状況が多いが、塵埃の帯電状態は、塵埃の存在している環境により左右され、たとえば塵埃が帯電していない状況もあれば、塵埃が負に帯電している状況も考えられる。したがって、周囲の塵埃の帯電状態をセンシングし、その帯電状況に合わせて印加電圧を変更できるようにしておくのが望ましい。たとえば、正に帯電している塵埃が多ければ負の電圧を印加し、電荷を帯びていなければ両方の電荷を交互に印加するのが好ましい。
【0043】
放電電極部19の材質には、たとえばAu(金)やPt(白金)、Sn(スズ)、Cu(銅)、Pd(パラジウム)、Al(アルミニウム)といった金属、これらを含んだ合金、あるいは、これらをメッキしたものを用いるのが適している。対向電極部20に、ペルチェ素子や吸湿材料を用い、水を破砕し、帯電水粒子を放出する形状とし、帯電水粒子を粒子凝集要素としてもよい。これにより、より遠くまで粒子凝集要素を飛散させることができ、除去効果が更に向上する。
【0044】
また、粒子凝集装置12から水やアルコール等の液体をミストとして発生させて粒子凝集要素として用いてもよい。この場合、粒子凝集装置12には、超音波霧化装置や、ヒータ等の加熱装置、アトマイザやピストンのような圧力噴霧装置を採用し、ミストを粒子凝集要素として発生させればよい。ミストは、ミストそのものが塵埃との凝集を起こし、塵埃を成長させるため、非常に効果的であることがわかっている。ただし、ミストを粒子凝集要素とする場合、塵埃との接触は、イオンのように静電気力に左右されず、その接触確率のみに依存することになるため、高濃度の放出が要求される。
【0045】
さらに、粒子凝集装置12から超音波を発生させて粒子凝集要素として用いてもよい。この場合、粒子凝集装置12には、超音波発生装置を採用し、超音波を粒子凝集要素として発生させればよい。超音波は、疎密波である超音波の「密」の部分では、強い音圧放射によって、空気同士が摩擦を起こして静電効果が発生し、疎密波の「疎」の部分の塵埃が「密」の部分に移動して塵埃を凝集させることができる(超音波凝集)。ただし、超音波凝集を発生させるには、強力な超音波(たとえば、140dB以上)が空中に放射されることが要求される。
【0046】
ここで、集塵フィルタ8bに関する効果について説明する。
集塵フィルタ8bは、第1吸気口1及び第2吸気口15の両方から吸入した微細な塵埃を捕集するものである。よって、特に微細な塵埃の捕集性能が高いもの集塵フィルタ8bとして使用するのが好ましい。たとえば、HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルタやULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)フィルタといった0.3μmの粒子径に対する集塵効率が99.99%以上のものを集塵フィルタ8bとして使用するとよい。
【0047】
または、集塵フィルタ8bにエレクトレット繊維を用いたフィルタを使用することで、静電気によって捕集性能を高めるようにしてもよい。このようなフィルタを集塵フィルタ8bに使用した場合、負イオンを粒子凝集要素として発生させる粒子凝集装置12と組み合わせることによって、凝集せずに電荷を帯びるだけに留まってしまった塵埃を、集塵フィルタ8bの有する静電気力で捕集することができることになり、さらに塵埃の除去性能が向上する。
【0048】
ただし、集塵性能の高いフィルタは、使用し続けると捕集した塵埃によって目詰まりすることになるため、圧損が上がり、吸引動力部9の外気の吸引力や被清掃面の吸引力が低下してしまう。したがって、電気掃除機100の性能を維持するために、集塵フィルタ8bの交換・洗浄等のメンテナンスを定期的にするとよい。具体的には、集塵フィルタ8bを取り外してメンテナンスしたり、塵埃を自動的に落とすような機構を駆動させてメンテナンスしたりするとよい。なお、使用者の使い勝手を考慮した場合、塵埃を自動的に落とすような機構、たとえば集塵フィルタ8bを振動させて付着した塵埃を落とす機構や集塵フィルタ8bを回転させて遠心力で塵埃を落とす機構、集塵フィルタ8bに風を当てて塵埃を吹き飛ばす機構等を備えていることが好ましい。
【0049】
また、集塵フィルタ8bに捕集された塵埃は、菌を含み、臭いを有している。このような菌及び臭いは、集塵フィルタ8bの自動清掃を実施しても完全には除去できず、集塵フィルタ8bに残留してしまう。したがって、使用者が集塵フィルタ8bを取り外してメンテナンスする際に、使用者に不快感を与えないようにしておくのが好ましい。具体的には、集塵フィルタ8bに脱臭材や抗菌剤を付与し、集塵フィルタ8b上での臭いの放出や菌の繁殖を抑制する性能を集塵フィルタ8bに備えるようにしておくとよい。
【0050】
脱臭材については、たとえば化学添着剤や活性炭、ゼオライト、シリカゲルといった吸着材、あるいは、金属酸化物や貴金属といった触媒等を使用することができる。抗菌剤については、たとえば銀やゼオライトといった無機物、イチョウや茶の葉等の自然由来の物、あるいは、PHMG(ポリヘキサメチレンリン酸グアニジン)等の化学薬品といったものを使用することができる。このような脱臭材や抗菌材を組み合わせて集塵フィルタ8bに付与しておくとよい。
【0051】
掃除機本体3内にオゾン発生部やイオン発生部を設け、オゾン発生部やイオン発生部からオゾンやイオンを発生させ、オゾンやイオンを集塵フィルタ8bに導いて脱臭・除菌を行なうようにしてもよい。また、集塵フィルタ8bに光触媒を塗布し、集塵フィルタケース8cあるいは蓋14にランプ放射部を設け、紫外光や可視光を放射して、集塵フィルタ8bの光触媒により、集塵フィルタ8bの脱臭・除菌を行なうようにしてもよい。上述した脱臭・除菌(抗菌)を任意に組み合わせて集塵フィルタ8bに適用するようにしてもよい。なお、図示した電気掃除機100を例に実施の形態を説明したが、他の構造の電気掃除機にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態に係る電気掃除機の全体構成を示す概略図である。
【図2】掃除機本体の断面構成を側面からみた状態を示す縦断面図である。
【図3】掃除機本体の外観構成を示す斜視図である。
【図4】乳幼児の身長の平均値を示すグラフである。
【図5】乳幼児が立って歩くようになるまでかかる期間を示すグラフである。
【図6】掃除時に舞い上げられる塵埃個数濃度の時間変化を粒径別に示すグラフである。
【図7】粒子凝集要素有無の影響を、掃除を開始した時の掃除機本体の周囲における塵埃個数濃度の経時変化により示すグラフである。
【図8】外気吸引風量に対する床面吸引風量の変化を示すグラフである。
【図9】掃除動作の際に掃除機本体の周囲に飛散している塵埃の量を各部位で測定した結果を示すグラフである。
【図10】電気掃除機を実際に使用する際の電気掃除機と使用者との位置関係を示す模式図である。
【図11】粒子凝集装置の構成例の一つを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0053】
1 第1吸気口、2 吸込み具、3 掃除機本体、4 パイプ、5 ホース、6 手元ハンドル、7 操作部、8 集塵部、8a 集塵室、8b 集塵フィルタ、8c 集塵フィルタケース、9 吸引動力部、10 第1排気口、11 第2排気口、12 粒子凝集装置、13 ヒンジ、14 蓋、15 第2吸気口、15a 開口面積、16 風路、16a 風路断面積、17 開閉扉、18 使用者、19 放電電極部、20 対向電極部、21 ホース接続口、100 電気掃除機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面近傍の空気を吸引する第1吸気口と、
塵埃が浮遊する空中の空気を吸引する第2吸気口と、
前記第2吸気口での吸引を容易にするために、空気中の微細な塵埃粒子を凝集させる粒子凝集要素を外部へ放出する粒子凝集装置と、を備える
ことを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記粒子凝集装置は、
イオン、ミスト、超音波の少なくともいずれか一つを前記粒子凝集要素として発生する
ことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記粒子凝集装置は、
前記第2吸気口の開閉扉の動作と連動するように制御される
ことを特徴とする請求項1又は2記載の電気掃除機。
【請求項4】
掃除機本体と、ホースを介して前記掃除機本体に接続された吸込み具と、を備えた電気掃除機において、
前記吸込み具は、
吸込み具周囲の空気を吸い込むための第1吸気口を備え、
前記掃除機本体は、
前記掃除機本体周囲の空気を吸い込むための第2吸気口と、
前記第1吸気口と前記第2吸気口を介して外部の空気を吸引する吸引動力部と、
前記吸引動力部により吸引された空気に含まれる塵埃を集塵する集塵部と、
前記吸引動力部により吸引された空気を外部へ排出する第1排気口と、
前記掃除機本体周囲の空気中の微細な塵埃粒子を凝集させる粒子凝集要素を外部へ放出する粒子凝集装置と、を備える
ことを特徴とする電気掃除機。
【請求項5】
前記掃除機本体は、
前記粒子凝集装置から発生された粒子凝集要素を、前記吸引動力部により吸引された空気の一部とともに外部に排出する第2排気口を有している
ことを特徴とする請求項4に記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記第2吸気口は、
前記掃除機本体の上方かつ前記第1吸気口側に向けて開口形成されている
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の電気掃除機。
【請求項7】
前記粒子凝集装置は、
イオン、ミスト、超音波の少なくともいずれか一つを前記粒子凝集要素として発生する
ことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の電気掃除機。
【請求項8】
前記粒子凝集装置は、
前記第2吸気口の開閉扉の動作と連動するように制御される
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の電気掃除機。
【請求項9】
前記第2排気口は、
前記掃除機本体の上方に向けて開口形成されている
ことを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載の電気掃除機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate