説明

電気掃除機

【課題】簡易な構成で掃除機本体とフィルム加飾された蓋体との間の気密性を確実に保持させることができ、電気掃除機の外観品位を向上させることができる電気掃除機の提供。
【解決手段】電動送風機を内蔵する掃除機本体と、掃除機本体の上面を覆うものであって、成形基材2と、成形基材2を覆うフィルム3と、成形基材2とフィルム3との間に接着層38とより構成される蓋体9と、を備え、フィルム3は掃除機本体の意匠面側に設けられるものとし、成形基材2は外周端部においては外周方向に突起する突起部39を有するものとし内周端部36においては掃除機本体内方向に突出する突出部37を有することを特徴とする電気掃除機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムにより加飾された電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家電製品等の外観品位を向上させる手段には、塗装、光輝材の練り込みなどがあるが、その中の一つにフィルム加飾技術がある。フィルム加飾技術とは、印刷などで柄を加飾したフィルムで成形体を被覆する技術である。フィルム加飾技術の優位な点として、フィルムの状態で加飾の柄を印刷などで加飾できるため、塗装や光輝材の練り込みなどよりも、多種多様な柄や色使いが可能となり、より高い外観品位を得ることが可能となる。また、フィルムの材質を選択することで、耐傷付き性や汚れの防止といった機能を付加することも可能となる。
【0003】
図5は、特許文献1に記載された従来の加飾成形品を示すものである。図5に示すように、加飾成形品1は、裏面側が凹面形状をした成形基材2が、その表面をシート状加飾フィルム3によって被覆されている。そして、図5に示すように、従来は、フィルム3の端部4が露出しないように、フィルム3の端部4を加飾成形品1の裏面に持っていくなどにより、フィルム3の端部4が人の目に触れないような構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−284771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単に、上述の特許文献1に記載の従来のフィルム加飾技術を、従来の電気掃除機の蓋体に組み合わせただけでは、蓋体と掃除機本体との間の気密性を確実に保持させることができなかった。
【0006】
すなわち、電気掃除機は、掃除機本体内に配置された電動送風機で発生された吸引風によって被清掃面上の塵埃を吸引する構成となっているため、掃除機本体に配置された蓋体を閉塞した状態において、掃除機本体と蓋体との間の気密性を確実に保持させる必要がある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、蓋体と掃除機本体との間の気密性を確実に保持させることができ、電気掃除機の外観品位を向上させることができる電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、電動送風機を内蔵する掃除機本体と、掃除機本体の上面を覆うものであって、成形基材と、成形基材を覆うフィルムと、成形基材とフィルムとの間に接着層とより構成される蓋体と、を備え、フィルムは掃除機本体の意匠面側に設けられるものとし、成形基材は外周端部においては外周方向に突起する突起部を有するものとし内周端部においては掃除機本体内方向に突出する突出部を有することを特徴とする電気掃除機としたものである。
【0009】
これにより、簡易な構成で掃除機本体とフィルム加飾された蓋体との間の気密性を確実に保持させることができ、電気掃除機の外観品位を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気掃除機によれば、簡易な構成で掃除機本体とフィルム加飾された蓋体との間の気密性を確実に保持させることができ、電気掃除機の外観品位を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における電気掃除機の全体斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における掃除機本体の断面図
【図3】(a)本発明の実施の形態1における蓋体の縦断面図、(b)本発明の実施の形態1における蓋体の外周端部横断面図、 (c)本発明の実施の形態1における蓋体の内周端部横断面図
【図4】本発明の実施の形態2における蓋体の部分拡大図
【図5】従来の加飾成形品を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、電動送風機を内蔵する掃除機本体と、掃除機本体の上面を覆うものであって、成形基材と、成形基材を覆うフィルムと、成形基材とフィルムとの間に接着層とより構成される蓋体と、を備え、フィルムは掃除機本体の意匠面側に設けられるものとし、成形基材は外周端部においては外周方向に突起する突起部を有するものとし内周端部においては掃除機本体内方向に突出する突出部を有することを特徴とする電気掃除機としたものである。
【0013】
ここで、意匠面とは、蓋体の上面であり、蓋体を閉じた状態において使用者の目に触れる側の面である。
【0014】
これにより、簡易な構成で掃除機本体とフィルム加飾された蓋体との間の気密性を確実に保持させることができ、電気掃除機の外観品位を向上させることができる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明において、突起部の先端部が、三角形状であるものである。
【0016】
これにより、成形基材に設けた突起部に掃除機本体の端部や使用者の指等が引っ掛かった場合でも、引っ掛かりによって突起部にかかる力を小さくすることができるため、成形基材にかかる応力を小さくすることができ、成形基材の変形及び成形基材(特に、突起部)の破損を十分に防止することができる。
【0017】
第3の発明は、特に、第2の発明において、先端部の三角形状は、先端部の三角形状の頂点の高さをフィルム厚み以上、かつ、フィルム厚みの3倍以下とし、さらに、頂点から底辺への垂線との交点とフィルム裾部側の頂点との距離が、フィルム厚みの半分以上、かつ、1.5mm以下としたものである。ここで、フィルムの裾部とは、成形基材にフィルムを貼付した後に余分のフィルムを取り除いた後のカットラインの部分である。
【0018】
先端部の高さが、フィルム厚み未満であると、フィルムのカット面である裾部を使用者が指で触れるおそれがあり、剥離の原因となる。一方、フィルム厚みの3倍より大きくなると、突起部の重心にフィルム面側から力が加わるおそれがあり、突起部の破損の原因となる。さらに、先端部とフィルム裾部との間が1.5mmより大きく開いていると、使用者の爪が人為的に入るおそれがあり、剥離の原因となる。また、底辺が高さより短くなると、爪の入る隙間が小さくなるものの、突起部の割れ等の破損が発生する。
【0019】
従って、本発明は、三角形状の高さ及びフィルム裾部までの距離を適正化することによって、第2発明の特徴である三角形状の突起部の強度を保つことができ、長期間、フィルム裾部への引っ掛かりを抑え、フィルムの剥離を防止することができる。
【0020】
第4の発明は、特に、第1〜第3の発明において、突出部は掃除機本体内方向に少なくとも0.1mm以上の厚みを有する構成としたものである。
【0021】
これにより、突出部によって、フィルムをより確実に保持することができるため、蓋体からフィルムが剥がれてしまうことを十分に防止することができる。
【0022】
第5の発明は、特に、第1〜第4の発明において、内周端部はR形状に加工されているものである。
【0023】
これにより、フィルムをより確実に保持することができるため、蓋体からフィルムが剥がれてしまうことをより確実に防止することができる。
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の電気掃除機の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号付し、重複する説明は省略する。
【0025】
(実施の形態1)
本発明の電気掃除機の実施の形態1について、図1〜図4を用いて説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態1における電気掃除機の全体斜視図である。また、図2は、本発明の実施の形態1における掃除機本体の断面図である。さらに、図3(a)は、本発明の実施の形態1における蓋体の縦断面図、図3(b)は、本発明の実施の形態1における蓋体の外周端部横断面図、図3(c)は、本発明の実施の形態1における蓋体の内周端部横断面図である。そして、図4は、本発明の実施の形態2における蓋体の部分拡大図である。
【0027】
図1に示すように、電気掃除機100は、吸引風を発生させる電動送風機(図示せず)を内蔵する掃除機本体5と、被清掃面の塵埃を吸引する吸込具101と、一端が吸込具101に着脱自在に接続される伸縮自在或いは継ぎ自在の延長管102と、一端が延長管102の他端に着脱自在に接続され、他端が掃除機本体5の前部に設けられた吸入口103に着脱自在に接続されるホース104と、から構成されている。
【0028】
掃除機本体5の後方の両側面には、走行用の車輪105が回転自在に取り付けられている。また、掃除機本体5の下面の前部には、走行用のキャスター106が取り付けられている。さらに、掃除機本体5の前方の上部には、使用者が掃除機本体5を持ち運ぶ際に使用する本体ハンドル107が設けられている。
【0029】
吸込具101には、被清掃面の塵埃を掻きあげる回転ブラシ108と、回転ブラシ108を回転駆動する駆動モータ109と、が内蔵されている。
【0030】
ホース104の延長管102側の端部には、使用者が掃除の際に握る把手部110を有する先端パイプ111が設けられている。また、ホース104の掃除機本体5側の端部には、掃除機本体5の吸入口103に着脱自在に接続される接続パイプ112が設けられている。
【0031】
図2に示すように、掃除機本体5は、掃除機本体5の下面を形成する下部材6と、後述
する下部材6の後方の上面を形成する上部材7と、後述する集塵室8の上面及び上部材7の上面を覆うとともに、掃除機本体5の上面を形成する蓋体9と、掃除機本体5の側面を形成するカバー体10(図1参照)と、から構成されている。また、蓋体9の後部は、上部材7に回動自在に軸支されている。
【0032】
掃除機本体5の後部には、吸引風を発生させる電動送風機13を内蔵する電動送風機室14が設けられている。また、掃除機本体5の前部には、塵埃を捕集する集塵袋15が着脱自在に配置される集塵室8が設けられている。集塵袋15は、ポリプロピレン等の熱可塑性繊維で構成されるとともに、エレクトレット加工されており、空気等の摩擦で帯電するように構成されている。
【0033】
電動送風機13は、主として、吸引風を発生させるファン(図示せず)と、ファンから放出された気流を整流するエアガイド(図示せず)と、ファンを回転駆動するモータ(図示せず)と、ファン及びエアガイドを内包するファンケース20と、モータを内包するとともに、ファンケース20に機密に取り付けられるモータケース21と、から構成されている。
【0034】
また、図1,図3(C)に示すように、掃除機本体5内には、電源コード(図示せず)とこの電源コードを巻きとるコードリール(図示せず)が収納されており、蓋体9の内側には、前記コードリールの巻き取りを操作するための操作ボタン114を外部に露出させるための蓋体開口部113が設けられている。
【0035】
図3(a)に示すように、蓋体9は、成形基材2と、成形基材2の上面を覆うフィルム3と、から構成されており、成形基材2とフィルム3との間には接着層38が設けられている。また、図3(b)に示すように、蓋体9の成形基材2は、フィルム3によって加飾されており、成形基材2の外周端部には外周方向に突起する突起部39を有している。ここで、突起部39は成形基材2と一体成形することも、別部品にすることも可能である。また、突起部39は、フィルム裾部35を取り囲むように形成している。
【0036】
さらに、図3(c)に示すように、操作ボタン114を外部に露出させるための蓋体開口部113の内周における蓋体の内周端部36においては、掃除機本体内方向に突出する突出部37を有している。
【0037】
ここで、突出部37は成形基材2と一体成形することも、別部品にすることも可能である。また、突出部37は掃除機本体内方向に少なくとも0.1mm以上の厚みをもち形成しており、さらに蓋体の内周端部36はR形状に加工されている。フィルム3は、成形基材2の上面、すなわち、蓋体9を閉じた状態において使用者の目に触れる側の面に貼付されている。フィルム3は、蓋体9の開放状態において、フィルム3のカット部分であるフィルム裾部35が蓋体9の意匠面に露出するように構成されている。
【0038】
ここで、成形基材2に貼付するフィルム3は、加熱によって軟化する樹脂フィルムであれば特に限定されるものではなく、例えば、例えば、アクリル(ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチルなど)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、PC(ポリカーボネート)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン、などが使用可能であり、2種以上のフィルムを積層することも可能である。その際、下の層のフィルムであって印刷層の下部に設けたフィルムは黒系色の方が好ましい。フィルム裾部35でのカット面が目立ち難くなるからである。
【0039】
最外層としては、1層、2層以上に関わらず、アクリルフィルムが透明性、耐傷付き性、耐候性の点で優れているため、加飾目的で最外層に使用するフィルムとして好ましい。
【0040】
フィルム3に対する印刷方法では、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷など使用でき、要求する外観の意匠性、フィルムに対する印刷性、フィルム作製数量により選択することができる。
【0041】
接着層としては、ホットメルト系、感圧系、反応型、などがあるが、三次元形状に対する追従性から感圧型が望ましい。また、感圧系は、常温で接着、剥離が可能であるため、余分なフィルムの切除(トリミング)作業がし易い。さらに、剥離時は成形基材との界面で剥離するために、成形基材の表面に接着剤が残らず、外観品位を損なわない。
【0042】
ここで、接着層の材質は、特に指定するものではなく、例えば、アクリル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系などがある。特に、密着性、耐候性、耐熱性、耐溶剤性に優れるアクリル系が望ましい。
【0043】
成形基材2としては、特に指定するものではなく、例えば、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、PC樹脂、アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、PET樹脂、ポリプロピレン樹脂などが使用できる。特に、ABS樹脂が、機械強度(表面硬度)、表面平滑性(ひけが生じ難い)などから好ましい。
【0044】
以上のように構成された電気掃除機について、以下、その動作、作用を説明する。
【0045】
使用者により電気掃除機100の運転が開始されると、電動送風機13のモータ(図示せず)が駆動され、ファン(図示せず)が回転駆動される。
【0046】
モータによってファンが回転駆動されると、電動送風機13に設けられた吸気口(図示せず)から電動送風機13の内部に外気が吸気され、電動送風機13で吸引風が発生する。そして、被清掃面上の塵埃は、電動送風機13の吸引風により、吸込具101の下面に設けられた吸込口(図示せず)から吸引され、延長管102及びホース104を介して、掃除機本体5の内部へと流入し、集塵袋15によって捕集される。
【0047】
ここで、蓋体9の外周端部のフィルム裾部35の周囲に突起部39を設けることで、フィルム裾部35において、フィルム3をより確実に保持することができるため、蓋体9からフィルム3が剥がれてしまうことをより確実に防止することができる。また、蓋体9の内周端部36に突出部37を設けることにより、フィルム3を保持する距離が長くなり、フィルム3をより確実に保持することができるため、蓋体9からフィルム3が剥がれてしまうことを十分に防止することができる。これにより、蓋体9の外周端部および、内周端部36のいずれにおいても余分なフィルム3を使用することなく確実にフィルム3を保持することができ、簡易な構成で掃除機本体5とフィルム加飾された蓋体9との間の気密性を確実に保持させることができ、電気掃除機100の外観品位を向上させることができる。
【0048】
(実施の形態2)
本発明の電気掃除機の実施の形態2について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態2における蓋体9の部分拡大図を示している。蓋体9の成形基材2は、フィルム3によって加飾されており、成形基材2の外周端部には外周方向に突起する突起部39を有している。また、突起部39は、フィルム裾部35を取り囲むように形成している。ここで、突起部39は成形基材2と一体成形することも、別部品にすることも可能である。さらに、突起部39の形状は、先端部を三角形状としている。
【0049】
三角形状とは、鋭角の頂点40を有する構造体で、フィルム裾部35を保護するように配置されている。次に、先端部の頂点40の高さをHとし、頂点から底辺に下ろした垂線と底辺との交点と、フィルム裾部35側との角41との距離をXとし、フィルム3の厚みをTとした場合の、三角形状の寸法について説明する。
【0050】
高さHは、フィルム3の厚みT以上であり、Tの3倍以下であることが好ましい。厚み以上あることによって、フィルム裾部35に対して、指の引っ掛かりを防ぐことができる。しかし、先端部の割れなどの破損の原因となるため、Hが高すぎても良くない。後述する実験によって、フィルム3の厚みが三角形状の重心程度の位置以上であれば、破損を抑えることが可能となることが分かった。
【0051】
頂点40とフィルム3との距離Xは、開きすぎていると、爪(厚みはおよそ1.5mm)が入るため、意図的な剥離の原因となる。一方、距離Xは小さいほど良いが、三角形状を二等辺三角形程度に想定した場合、Xが短くなると底辺が短くなり、Hに比べて底辺が短くなると、頂点40が著しく鋭角となり、先端部の割れなどの破損の原因となる。後述する実験によって、底辺が高さHと同等、すなわち、距離Xが高さの1/2程度であれば、破損を抑えられることが分かった。
【0052】
以下、三角形状の寸法適正値について、実験により導き出した結果について説明する。
【0053】
実験に使用する成形基材2はABS樹脂製であり、突起部39も同時成形した。また突起部39の形状は二等辺三角形に近い形状となるよう研磨調整した。フィルム3はアクリル製であり、フィルム裾部35の厚みは0.4mmとした。トリミングは突起部39の角41の位置でカッターによって行った。
【0054】
評価実験は、往復可動試験機による引掻き試験によって行った。試験機の可動部には、アクリル製の擬似爪(厚さ1.5mm)を設置し、錘によって、荷重500g重の力がフィルム面に対して垂直に掛かるように調節した。擬似爪は、突起部39を越えて往復することとなる。判定は、420往復回数可動させたとき、フィルム3の剥がれ、破損、突起の破損がなく継続して使用が可能な場合は○、使用可能であるが剥離の兆候が見られる等の場合は△、破損等、外観異常が発生により明らかに使用ができない場合は×とした。
【0055】
ここで、420回とは、1週間に1度ゴミを取り出し、8年間使用することを想定した場合の回数である。
【0056】
以下、実験結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
実験結果に示すように、フィルム3の厚みが0.4mmの場合において、高さHを0.
2mm(フィルム3の厚みの1/2に相当)とした場合には、距離Xをいかように変更しようとも、フィルム3が剥離している箇所が見られた。一方、高さHを0.4mm(フィルム3の厚みに相当)とした場合には、距離Xに依存し、距離Xが0.2mm(フィルムの厚みの1/2に相当)以上であって、1.5mm以下であれば、良好な結果を示した。
【0059】
また、高さHを0.8mm(フィルム3の厚みの2倍に相当)および1.2mm(フィルム3の厚みの3倍に相当)にした場合には、高さHを0.4mm(フィルム3厚みに相当)とした場合と同様の結果を示した。一方、高さHを1.6mm(フィルム3の厚みの4倍に相当)にした場合、および、高さHを2.0mm(フィルム3の厚みの5倍に相当)にした場合には、距離Xへの依存性は示さず、いずれの場合であっても破損箇所が見られた。
【0060】
上記の要素について考察をしてみると、高さHが0.1mm(フィルム3の厚みの1/2に相当)とした場合には、フィルム3よりも突起部39の形状が低い位置に配置されることになり、指が触れる等の突起部39側からの力に対して、フィルムの端面で受ける形になると考えられるため、剥離や破損が生じると考えられる。
【0061】
また、高さHを1.6mm(フィルムの厚みの4倍に相当)とした場合には、逆に、フィルム3の破損は抑えられるものの、フィルム3側からの力に対して突起部39の重心付近で受けることになるため、突起部39が破損しやすくなると考えられる。従って、高さHはフィルム3との関係において厚さT以上であって、かつ、3T以下であることが必要であるといえる。
【0062】
また、距離Xについては、高さHとの兼ね合いはあるものの、0.1mm(フィルム3の厚みの1/2以下に相当)の場合は、三角形状の傾斜が急峻すぎることにより、周方向において部分的に密着性が弱い部分が見られ、耐久性において劣ると考えられる。また、距離Xを2.0mmにした場合には、三角形状の傾斜が緩やか過ぎることによって、突起部39側から爪などが入り易くなるとともに、三角形状の頂点40部が成形基材2部分の縁側によるので、破損が生じやすくなると考えられる。従って、距離Xについては1/2以上であって、かつ、1.5mm以下である必要があるといえる。
【0063】
なお、今回の実験では、フィルム3の厚みが0.4mmであったが、それ以外の厚みであっても(フィルム厚みTの値の範囲)、三角形状はフィルム3の厚みを基準とした相似形となるため、上述の条件が当てはまることは明らかである。
【0064】
以上のように構成された蓋体9について、以下その作用を説明する。
【0065】
成形基材2は端部において、フィルム裾部35を取り囲むように突起部39を備えたことにより、蓋体9にフィルム3を貼付した後、フィルム3が蓋体9と掃除機本体5との間に介在しない位置でフィルム3をカットした場合であっても、蓋体9の開閉動作時にフィルム3の端部4が掃除機本体5の外郭の端部に引っ掛かったり、蓋体9の開放時にフィルム3の端部4に使用者の指が引っ掛かったりすることを十分に防止することができ、フィルム3が蓋体9から剥がれることを防止できる。
【0066】
また、突起部39の先端部を三角形状としたことにより、成形基材2に設けた突起部39に掃除機本体5の端部や使用者の指などが引っ掛かった場合でも、引っ掛かりによって突起部39にかかる力を小さくすることができるため、成形基材2にかかる応力を小さくすることができ、成形基材2の変形及び成形基材2(特に、突起部39)の破損を十分に防止することができる。
【0067】
先端部の高さが、フィルム3の厚み未満であると、フィルム3のカット面であるフィルム裾部35を使用者が指で触れるおそれがあり、剥離の原因となる。一方、フィルム3の厚みの3倍より大きくなると、突起部39の重心にフィルム3面側から力が加わるおそれがあり、突起部39の破損の原因となる。さらに、先端部とフィルム裾部35との間が1.5mmより大きく開いていると、使用者の爪が人為的に入るおそれがあり、剥離の原因となる。また、底辺が高さより短くなると、爪の入る隙間が小さくなるものの、突起部39の割れ等の破損が発生する。
【0068】
従って、本発明は、三角形状の高さ及びフィルム裾部35までの距離を適正化することによって、三角形状の突起部39の強度を保つことができ、長期間、フィルム裾部35への引っ掛かりを抑え、フィルム3の剥離を防止することができるため、簡易な構成で掃除機本体5とフィルム加飾された蓋体9との間の気密性を確実に保持させることができ、電気掃除機100の外観品位を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の電気掃除機は、簡易な構成で掃除機本体とフィルム加飾された蓋体との間の気密性を確実に保持させることができ、電気掃除機の外観品位を向上させることができるため、家庭用電気掃除機及び産業用電気掃除機の分野・用途に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 加飾成形品
2 成形基材
3 フィルム
4 端部
5 掃除機本体
6 下部材
7 上部材
8 集塵室
9 蓋体
10 カバー体
13 電動送風機
14 電動送風機室
15 集塵袋
20 ファンケース
21 モータケース
35 フィルム裾部
36 内周端部
37 突出部
38 接着層
39 突起部
40 頂点
41 角
100 電気掃除機
101 吸込具
102 延長管
103 吸入口
104 ホース
105 車輪
106 キャスター
107 本体ハンドル
108 回転ブラシ
109 駆動モータ
110 把手部
111 先端パイプ
112 接続パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機を内蔵する掃除機本体と、前記掃除機本体の上面を覆うものであって、成形基材と、前記成形基材を覆うフィルムと、前記成形基材と前記フィルムとの間に接着層とより構成される蓋体と、を備え、前記フィルムは前記掃除機本体の意匠面側に設けられるものとし、前記成形基材は外周端部においては外周方向に突起する突起部を有するものとし内周端部においては前記掃除機本体内方向に突出する突出部を有することを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記突起部の先端部が、三角形状である請求項1記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記先端部の三角形状は、先端部の頂点の高さをHとし、頂点から底辺に下ろした垂線と底辺との交点とフィルムの裾部側の角点との距離をXとし、フィルムの厚みをTとした場合に、下記条件(1)及び、(2)を満たすことを特徴とする請求項2記載の電気掃除機。
条件(1) a<=H<=b (a=Tmm、b=3×Tmm)
条件(2) c<=X<=d (c=1/2×Tmm、d=1.5mm)
【請求項4】
前記突出部は前記掃除機本体内方向に少なくとも0.1mm以上の厚みを有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記内周端部はR形状に加工されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−239679(P2012−239679A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113169(P2011−113169)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】