説明

電気掃除機

【課題】本体構造の大幅改造を行わず、簡単な構造でしかも電動送風機の性能も現状態で、掃除機本来の性能である吸引力を向上させる電気掃除機を提供することを目的とする。
【解決手段】本体ケースと、本体ケースの後ろ側に内置される電動送風機と、前記本体ケースと前記電動送風機の中間に防振パッキンを設けた電気掃除機において、前記防振パッキンと前記電動送風機との間に、アダプタを配置し、前記アダプタと前記電動送風機との間に、環形状の気密部材を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動送風機を備える電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電気掃除機は、電動送風機の運転により吸口から吸い込んだ含塵空気を掃除機本体に導き、この掃除機本体内の集塵部を通して塵埃が捕捉され、清浄になった空気を掃除機本体外に排気する構成となっている。
【0003】
集塵部は、紙フィルタによるろ過によって塵埃を捕捉し、清浄になった空気を掃除機本体外に排気する方式と、集塵フィルタによるろ過によって塵埃を捕捉し、清浄になった空気を掃除機本体外に排気する方式と、サイクロン分離筒による遠心分離によって清浄になった空気と塵埃とを分離し、清浄になった空気は掃除機本体外へ、塵埃は集塵フィルタを備えた集塵部へ集塵するサイクロン分離方式がある。
【0004】
排気をより清浄にするためには塵埃を十分に捕捉する必要がある。電動送風機を通過した空気は掃除機本体外に排気されてしまうため紙フィルタ、及び集塵フィルタは電動送風機の前に設ける構成となっている。
【0005】
また、吸込み性能の向上と騒音低減を図るために電動送風機と防振パッキンとの間に、ファンケースに設けた吸気口と同等の高さを有する壁面を設ける構成となっている。
【0006】
また、前記電動送風機内に流入する空気の効率を高めるために例えば特許文献1に開示されているように、本体ケースと、本体ケースの後ろ側に内置される電動送風機と、本体ケースと電動送風機の中間に防振パッキンを設けた電気掃除機において防振パッキンと電動送風機との間に、アダプタを設けた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−75307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の紙フィルタ方式、及び集塵フィルタ方式の電気掃除機において、排気をより清浄に保つためには、紙フィルタ、及び集塵フィルタの目を細かいものにし、塵埃を通さないものとする必要がある。しかし目が細かいフィルタは通気抵抗が大きく、圧力損失が高くなる。圧力損失が高くなると、掃除機本来の性能である吸引力が低下し、ゴミが吸わない等の不具合が発生する恐れがある。
【0009】
このため本体構造としては、圧力損失を低減するため、本体と接続しているホースや、その先に吸口と連結している伸縮継ぎ手管の内外径を大きくする必要があるが、ホース、伸縮継ぎ手管の径拡大は使い勝手の悪さ、本体構造の大幅変更等、使う側も造る側も非常に悪影響を及ぼす。
【0010】
その他の方法として、電動送風機の性能向上による吸引力の低下防止策があるが、電動送風機の性能向上は非常に難しく、仮に性能向上しても騒音、振動大等の恐れが生じる。
【0011】
特許文献1に記載の技術では、空気の乱れを防ぐアダプタを防振パッキンと電動送風機の間に設けているが、電動送風機のファンケースを製作する際に多少歪みが生じた場合、アダプタとファンケースの接触面において気密がとれず、本来の吸気口以外から電動送風機に空気が流入してしまい、吸込仕事率が低下してしまう恐れがある。
【0012】
本発明は、吸引力を向上させる電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、本体ケースと電動送風機の間に防振パッキンを備えた電気掃除機において、前記防振パッキンと前記電動送風機の間に、アダプタを配置し、前記アダプタと前記電動送風機との間に、環形状の気密部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、本体構造の大幅改造を行わず、電動送風機の性能も現状態で、掃除機本来の性能である吸引力の向上させる電気掃除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る電気掃除機の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係る掃除機本体の斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係る掃除機本体の本体ケースユニットを上部から見た図である。
【図4】本発明の実施例に係る掃除機本体の断側面図である。
【図5】本発明の実施例に係る電動送風機ユニットの斜視図である。
【図6】本発明の実施例に係る接触リブと電動送風機ユニットの断側面図である。
【図7】本発明の実施例に係る気密部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例を図面を引用して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施例を示す電気掃除機の外観斜視図である。図2は、この掃除機本体の斜視図である。図3は、この掃除機本体の本体ケースユニットを上部から見た図である。図4は、この掃除機本体の断側面図である。図5は、電動送風機ユニットの斜視図である。図6は、接触リブ本発明の気密部材と電動送風機ユニットの断側面図である。
【0018】
この実施例における電気掃除機は、図1に示すように、掃除機本体1とホース2と手元操作管3と伸縮継ぎ手4と吸口5を備え、掃除機本体1と手元操作管3をホース2で接続し、この手元操作管3に伸縮継ぎ手4を介して吸口5を接続して使用する。
【0019】
この掃除機本体1は、図2、図3に示すように、ホース2と掃除機本体1を接合するホース口継ぎ手6と電動送風機12、電源を供給する電源コード13を内部に有する本体ケース7、走行用の車輪8、本体ケース7内の気密を保持する上蓋9、掃除機本体1を手持ちするためのハンドル10、電動送風機12によって吸気した空気を機外に排気する通路である排気フィルタ11を有する。
【0020】
図3に示すように、電動送風機12の吸気力による含塵空気は、吸口5から吸気することによって吸気流と共に塵埃を吸い込み、吸い込んだ含塵空気を伸縮継ぎ手4と手元操作管3、及びホース2を介して掃除機本体1に流入する。流入した含塵空気は、ホース口継ぎ手6から集塵フィルタ14を通過し、電動送風機保護フィルタ15を介し電動送風機12に吸い込まれる。この時塵埃は集塵フィルタ14、及び電動送風機保護フィルタ15にて捕捉し、清浄になった空気は電動送風機12を通過し、電動送風機支持部材16を介し、排気フィルタ11、及び車輪8から排気される。
【0021】
図4は掃除機本体1の断側面図である。本体ケース7の下部には、走行用に車輪8とは別にキャスター17を有し、走行の補助をしている。本体ケース7と電動送風機12の間には、本体ケース7と電動送風機12の気密を保持するための防振パッキン18を有する。この防振パッキン18は電動送風機12運転時の振動を本体ケース7に伝達しないような役割も兼ねている。電動送風機12は、吸引ファン部19と電動機部20を有し、吸引ファン部19を前側に、電動機部20を後側に、かつ水平に置かれるように配置される。
吸引ファン部19の前側に備わる吸込口(電動送風機12の吸込口、後述)は、集塵フィルタ14の背面中央側に向くように置かれる。
【0022】
図5は電動送風機ユニットの斜視図である。本実施例において、電動送風機ユニットは、電動送風機12と、気密部材25と、アダプタ30と、防振パッキン18と、接触リブ24と、からなる。電動送風機12は吸引ファン部19に送風機吸込口21を有し、電動機部20に通電することにより、吸引ファン部19内部の吸引ファン回転体22を回転させ、送風機吸込口21へと吸気する。送風機吸込口21は吸引ファン回転体22との気密を保持するため、送風機吸込口21と吸引ファン回転体22の間にはシールされており、送風機吸込口21の形状はシール材を埋め込むため送風機突出部23として突出した形状となる。
【0023】
図1、図4、及び図5に示すように、電動送風機12により送風機吸込口21へと吸い込まれる吸気は、外気から直接吸い込まれるわけではなく、吸口5、伸縮継ぎ手4、ホース2、ホース口継ぎ手6を通過し、本体ケース7でその吸気流路は拡大する。本体ケース7には吸気の抵抗となる集塵フィルタ14と電動送風機保護フィルタ15が備えられており、電動送風機12の吸気力を妨げている。また本体ケース7により拡大した吸気通路は、電動送風機12の送風機吸込口21にて吸気流路は縮小し、空気は電動送風機12内部に取り込まれ、排気として機外に排出される。
【0024】
この時、電動送風機12に吸い込まれる空気は、本体ケース7による吸気流路の拡大によって空気圧拡大損失が発生し、拡大損失から電動送風機12の吸気力の低下が発生する。これと同様に、電動送風機12の送風機吸込口21に吸い込まれる空気は、本体ケース7から送風機吸込口21へと吸気流路が縮小することによって空気圧縮小損失が発生し、縮小損失から電動送風機12の吸気力の低下が発生する。吸気による流体の概念は、管路の開口端と外部の圧力差によって空気を吸い込むことになり、直接管路の開口端に向かうことはない。このことから、電動送風機12に吸い込まれる空気の流れは、本体ケース7から直接送風機吸込口21に吸い込まれるもののほかに、吸引ファン部19の表面に当たってから送風機突出部23を乗り越えて送風機吸込口21に流入する空気や、防振パッキン18と吸引ファン部19の表面に入り込んでから、送風機突出部23を乗り越えて送風機吸込口21に流入する空気がある。これら本体ケース7から直接送風機吸込口21に吸い込まれる以外の空気は、気流が乱れるため乱流となり、電動送風機12の吸気力の妨げとなる。そこで、アダプタ30を追加し流入する空気により発生する乱流を低減して空気圧縮小損失による電動送風機12の吸気力低減を回避した。しかし、アダプタ30とファンケース26の接触面において、電動送風機12のファンケース26を製作する際に歪みが生じた場合、気密が漏れて本来の吸気口以外から電動送風機12に空気が流入してしまい、吸気力の妨げとなる。
【0025】
本発明は、アダプタ30とファンケース26の接触面がファンケース26を製作する際に生じた歪みにより生じた気密漏れを防止し、電動送風機12の吸気力低減を回避するためのものである。
【0026】
図6は、本発明の実施例に係る接触リブ24と、電動送風機ユニットの断側面図である。アダプタ30は一体成形品であり、その各部は電動送風機12と防振パッキン18間に位置するアダプタ外周円30a、防振パッキン18を取り付けた時、その表面が防振パッキン18と同じ高さになるよう形成されたアダプタ表面30b、アダプタ表面30bより前に位置され、電動送風機12の送風機突出部23を隠すように構成されたアダプタ突出部30c、アダプタ突出部30cから電動送風機12の送風機吸込口21に滑らかな曲線になるよう、送風機突出部23の径よりも大きな径を形とったアダプタ吸込口30d、電動送風機12の送風機突出部23と同形状に形成されたアダプタ位置合わせ30eにより構成されている。
【0027】
アダプタ30のアダプタ外周円30aは、電動送風機12と防振パッキン18に挟まれ、本体ケース7に組み込まれた時、電動送風機12、防振パッキン18、アダプタ30いずれの個所からも漏れが発生しないよう、アダプタ外周円30aの厚さはできるだけ薄くしている。
【0028】
更にアダプタ外周円30aの先端は傾斜状になっているほうが望ましい。またアダプタ外周円30aの直径は、電動送風機12の吸引ファン部19の直径よりも小さい構成となっており、電動送風機12、防振パッキン18、アダプタ30いずれの個所からも漏れが発生しないような構成となっている。
【0029】
アダプタ30のアダプタ表面30bの高さは、防振パッキン18の横方向の厚みと同寸法とすることによって、防振パッキン18近辺に発生する乱流を低減する機能をもっている。
【0030】
アダプタ30のアダプタ突出部30cは、電動送風機12の送風機突出部23を隠すように構成され、吸引ファン部19の表面、またはアダプタ表面30bに当たってから送風機突出部23を乗り越えて、送風機吸込口21に流入する空気により発生する乱流を低減する機能をもっている。アダプタ表面30bとアダプタ突出部30cの接線は乱流が発生しないよう、流線形状とする。
【0031】
アダプタ30のアダプタ吸込口30dは、気流が電動送風機12の送風機吸込口21に滑らかに空気が入り込むよう、送風機突出部23の径よりも大きな径を形とった形状とする。またアダプタ吸込口30dの先端は、送風機吸込口21に剥離が発生しないよう、傾斜状になっているほうが望ましい。
【0032】
アダプタ30のアダプタ位置合わせ30eは、電動送風機12の送風機突出部23とアダプタ30の位置ずれをなくすために形成されており、組み立て性を考慮し、送風機突出部23よりも若干大きい径で構成されている。
【0033】
アダプタ30と電動送風機12の間には気密部材25が挟まれている。気密部材25の形状は全周から漏れの無いように円環形状であることが望ましい。また、気密部材25の径方向の大きさは、本体組み込み時において電動送風機を軸方向から見た際に、本体ケース7の接触リブ24と防振パッキン18の当接部と重なるように設けられることが望ましい。これにより、掃除機本体を運転させると電動送風機12前方に負圧がかかり、本体ケース7と電動送風機12が引き寄せあうことで防振パッキン18と気密部材25が圧縮され、確実に気密を確保することができる。
【0034】
気密部材25の材質は、例えば発砲ポリエチレンのような弾性体がよい。これにより、気密部材25が部品の歪みに対して形状を合わせることができる。更に言えば、軟らかく独立気泡体であれば、より確実に気密をとることができる。
【0035】
図7は気密部材25の正面図である。なお、アダプタ30と電動送風機の間にある気密部材25は、円環状である。円型の抜き型で材料を抜くと中央部が無駄になってしまう。よって、図7に示すように直線状(棒状)の抜き型で抜き、棒状になった気密部材25の両端を接着し円環状としたほうが、円形の抜き型で抜くよりも材料の使用量を減らすことができコスト低減となる。
【0036】
また、気密部材25の両端の接着面は斜めに切ってもよい。斜めに加工することで接着貼り付け面が増えて張りやすくなり接着力が増し確実に両端を貼り付けることができるためである。
【0037】
また、本実施例において気密部材25は1つで説明したが、異なる径の気密部材を複数設けても良い。これにより更に気密を確保することができる。
【0038】
また、本実施例において気密部材25の形状を円環形状としたが、この限りではない。
気密を確保することができればよいため、四角環形状であっても三角環形状であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 掃除機本体
2 ホース
3 手元操作管
4 伸縮継ぎ手
5 吸口
6 ホース継ぎ手
7 本体ケース
8 車輪
9 上蓋
10 ハンドル
11 排気フィルタ
12 電動送風機
13 電源コード
14 集塵フィルタ
15 電動送風機保護フィルタ
16 電動送風機支持部材
17 キャスター
18 防振パッキン
19 吸引ファン部
20 電動機部
21 送風機吸込口
22 吸引ファン回転体
23 送風機突出部
24 接触リブ
25 気密部材
30 アダプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、本体ケースの後ろ側に内置される電動送風機と、前記本体ケースと前記電動送風機の中間に防振パッキンを設けた電気掃除機において、
前記防振パッキンと前記電動送風機との間に、アダプタを配置し、
前記アダプタと前記電動送風機との間に、環形状の気密部材を設けたことを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
請求項1に記載の電気掃除機において、
前記気密部材の直径は、前記本体ケースの直径または前記防振パッキンの接触リブの直径と略同一であることを特徴とする電気掃除機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気掃除機において、
前記気密部材は複数であることを特徴とする電気掃除機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電気掃除機において、
前記気密部材は、直線状の部材の両端部を接着し環状にしたことを特徴とする電気掃除機。
【請求項5】
請求項4に記載の電気掃除機において、
前記直線状の部材は、前記両端部が長手方向に対して斜めであることを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−106744(P2013−106744A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253422(P2011−253422)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】