説明

電気掃除機

【目的】 集塵室又は集塵袋に溜った塵埃を任意の時期に自動的に圧縮することのできる使い勝手のよい温風循環形の電気掃除機を得ること。
【構成】 集塵室3を構成する少なくも1つの壁(13a,13b,16)に対向して格子状の圧縮壁20を前後に移動可能に配設し、この圧縮壁20とこれに対向する壁との間に形状記憶合金からなるコイル状のばね21を介装したもの。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電気掃除機に係り、さらに詳しくは、集塵室や集塵袋に溜った塵埃の処理手段を備えた電気掃除機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図9は従来の電気掃除機の一例を示す側面図である。図において、1は電動送風機2や集塵室3などを備えた掃除機本体で、4は開閉自在な上蓋、5は一対の車輪、6は集塵室4の前面に設けられた吸込口である。7は一端に掃除機本体1の吸込口6に連結されるジョイント部8を有し、他端に操作部を備えた手元パイプ9が設けられたホース、10は手元パイプ9に連結された延長パイプ、11はパワーブラシ等を有し、延長パイプ10の先端部に装着された床ブラシである。なお、12は集塵室3内に着脱自在に設置された集塵袋である。
【0003】電気掃除機の使用にあたっては、集塵室3に集塵袋12を装着して上蓋4を閉じ、コード(図示せず)を電源に差込んで吸込口6にホース7を連結し、床ブラシ11が装着された延長パイプ10を手元パイプ9に連結する。そして、使用者は手元パイプ9を握って手元スイッチを操作し、床ブラシ11を床面Fに沿って移動させ、床面上の塵埃などを吸引させて掃除を行なう。吸引された塵埃などは塵埃袋12内に溜るので、塵埃などが一杯になると塵埃袋12を取外し、ごみ箱等に捨てて新らしい塵埃袋を装着する。なお、塵埃袋12を使用せず、吸引した塵埃等を直接塵埃室3に溜めるような構造のものもある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の電気掃除機は、集塵室3又は集塵袋12内には吸込まれたままの状態で塵埃が溜っているため比較的短時間で一杯になり、度々捨てなければならない。このため、集塵袋12を数多く必要とするので不経済であるばかりでなく、集塵室3内の塵埃を捨てたり集塵袋12を取出して捨てる際、塵埃で手が汚れ、その上粉塵が舞上って不衛生であった。
【0005】このような問題を解決するため、例えば実公昭57−45967号公報に示すように、筒状のフィルター内に、フィルターの粉塵を押出す押圧体を摺動自在に設け、粉塵を押し固めて排出するようにした電気掃除機である。この電気掃除機は、集塵容器内の粉塵を固めて排出するようにしたのでその容積を小さくできる、排出の際粉塵が舞上るのを防止できる等の特徴を有するが、押圧体を手で操作しなければならないので面倒であり、しかも粉塵が一杯になって捨てるときに圧縮するので集塵室や集塵袋の利用効率は不充分であった。
【0006】本発明は、上記の課題を解決すべくなされたもので、集塵室又は集塵袋内に溜った塵埃を任意の時期に自動的に圧縮することのできる使い勝手のよい電気掃除機を得ることを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る電気掃除機は、集塵室を構成する少なくとも1つの壁に対向して格子状の圧縮壁を前後に移動可能に配設し、こ圧縮壁と圧縮壁が対向する壁との間に、形状記憶合金からなるコイル状のばねを介装したものである。
【0008】
【作用】集塵室又は集塵袋にある程度塵埃が溜ったときは、ホースを吸込口に連結すると共に、手元パイプを掃除機本体に設けた温風循還口に接続し、温風を循還させる。これにより集塵室内の温度が上昇し、それ迄収縮していたばねが伸張する。ばねの伸張に伴って圧縮壁は中心部に向って移動し、集塵室内の塵埃又は塵埃袋内の塵埃を圧縮する。温風の循還を停止して集塵室内の温度が常温に戻るとばねが収縮して圧縮壁は元の位置に戻り、塵埃は圧縮された状態を保持する。
【0009】
【実施例】
実施例1図1は本発明の第1の実施例の平断面図である。なお、図9の従来例と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。13a,13bは掃除機本体1の側壁、14は多数の排気孔を有する後壁で温風循還口15が設けられている。16は多数の通気孔を有し、集塵室3を形成する隔壁で、電動送風機2が取付けられている。
【0010】20,20は集塵室3内において、集塵袋12の両側に側壁13a,13bと対向して前後に移動可能に配設された圧縮壁で、図2に示すように格子状に構成されている。21,21は側壁13a,13bと圧縮壁20,20との間に介装された形状記憶合金からなるコイル状のばねである。
【0011】ところで、本発明は集塵した塵埃内のダニを死滅させるために開発された温風循還形の電気掃除機を対象としたものである。この電気掃除機は図3に示すように、掃除機本体1の吸込口6にホース7のジョイント部8を連結すると共に温風循還口15に手元パイプ9を連結して空気の循還路を構成する。そして電動送風機2を駆動すると、これによって生ずる空気流は矢印のようにホース7、塵埃袋12、ホース7の経路を循還して温度が上昇し、塵埃袋12内のダニを死滅させるようにしたものである。
【0012】次に、本実施例の作用を説明する。数回の掃除を行なった適宜の時期に、ホース7のジョイント部8を掃除機本体1の吸込口6に連結すると共に、手元パイプ9を温風循還口15に連結し、手元パイプ9に設けた操作スイッチをONして電動送風機2を駆動する。このときばね21は図4に示すように収縮状態にあり、圧縮壁20は側壁13aからLの位置にある。
【0013】温風が循還して集塵室3内の温度が高くなると、ばね21は図5に示すように伸張し、これにより圧縮壁20は側壁13aからL1 の位置まで前進する。圧縮壁20,20の前進により集塵袋12は両側から押されて縮小し、中に溜った塵埃が圧縮されると共に、塵埃内のダニは死滅する。所望の時間経過したときは電動送風機2をOFFし、ホース7を吸込口6及び温風循還口15から抜いて掃除機本体1を格納する。そして集塵室3内の温度が常温に戻ると、ばね21は収納し、圧縮壁20は後退して再び図4の状態に戻り、集塵袋12内の塵埃は圧縮された状態を保持する。
【0014】次に、電気掃除機を使用するときは、塵埃袋12内に溜った塵埃は圧縮されて小さい容積になっているので、床面の塵埃を効率よく吸引することができる。このような操作を何回か行なうことにより、塵埃袋12内に従来に比べて大量の塵埃を溜めることができるので、集塵袋12の交換頻度を大幅に減すことができる。また、集塵袋12内の塵埃は圧縮されているので、集塵袋の交換に際して粉塵が舞上ったり手が汚れたりすることがなく、きわめて衛生的である。
【0015】実施例2第1の実施例では両側壁3a,13bに対向してそれぞれ圧縮壁20,20を配設した場合を示したが、本実施例は図6に示すように一方の側壁(例えば13a)に対向して圧縮壁20を配設し、側壁13aと圧縮壁20との間に形状記憶合金からなるコイル状のばね21を介装したもので、その作用、効果は第1の実施例の場合と同じである。
【0016】実施例3図7は本発明の第3の実施例を示す平断面図で、本実施例は隔壁16に対向して圧縮壁20を配設し、隔壁16と圧縮壁20との間に形状記憶合金からなるコイル状のばね22を介装したものである。
【0017】実施例4図8は本発明の第4の実施例を示す平断面図である。本実施例においては、両側壁13a,13b及び隔壁16に対向してそれぞれ圧縮壁20を配設すると共に、両側壁13a,13b及び隔壁16と各圧縮壁20との間にそれぞれ形状記憶合金からなるコイル状のばね22を介装したものである。
【0018】実施例5第1〜第4の実施例では集塵室3内に集塵袋12を設置した電気掃除機に本発明を実施した場合について説明したが、集塵袋12を設置せず、集塵室3に直接塵埃を集塵する型式の電気掃除機にも本発明を実施することができる。
【0019】上記の説明では、図2に示す構造の圧縮壁20を使用した例を示したが、本発明はこれに限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。また、掃除機本体の側壁13a,13b又は隔壁16と圧縮壁20との間に形状記憶合金からなるコイル状のばね22をそれぞれ1個ずつ介装した場合を示したが、それぞれ複数個ずつ介装してもよい。
【0020】
【発明の効果】以上詳記したように、本発明は集塵室を構成する少なくとも1つの壁に対向して圧縮壁を設けると共に、前記壁と圧縮壁との間に形状記憶合金からなるばねを介装し、電動送風機の排熱を利用した温風循還運転を行なうことにより、ばねを伸張させて圧縮壁を前進させ、集塵室又は集塵袋内に溜った塵埃を自動的に圧縮するようにしたので、効率よく塵埃を吸引することができる。
【0021】また、集塵室又は集塵袋内の塵埃は圧縮されているので、これを捨てるときに手を汚したり粉塵が舞い上ったりすることがなく、衛生的であり、使い勝手のよい電気掃除機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の平断面図である。
【図2】本発明の要部をなす圧縮壁の実施例の斜視図である。
【図3】温風循還形電気掃除機の説明図である。
【図4】本発明の作用説明図である。
【図5】本発明の作用説明図である。
【図6】本発明の第2の実施例の平断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例の平断面図である。
【図8】本発明の第4の実施例の平断面図である。
【図9】従来の電気掃除機の一例の説明図である。
【符号の説明】
1 掃除機本体
2 電動送風機
3 集塵室
6 吸込口
7 ホース
12 集塵袋
13a,13b 側壁
14 後壁
15 温風循還口
16 隔壁
20 圧縮壁
21 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部に集塵室、電動送風機等を備え、前部に吸込口がまた後部に温風循環口が設けられた掃除機本体及びホース等からなる温風循還形の電気掃除機において、前記集塵室を構成する少なくとも1つの壁に対向して格子状の圧縮壁を前後に移動可能に配設し、該圧縮壁と前記集塵室を構成する壁との間に形状記憶合金からなるコイル状のばねを介装したことを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開平5−317215
【公開日】平成5年(1993)12月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−128574
【出願日】平成4年(1992)5月21日
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)